説明

電線接続構造

【課題】端子と芯線とを溶接固定することで、充分な電気特性を確保し、かつ、溶接時の加圧力に対抗し得る端子強度を有すると共に、溶接時の芯線の逃げを防止して、端子に対する芯線の密着性向上を図る電線接続構造を提供する。
【解決手段】芯線10を絶縁被覆11で被覆した被覆電線12を設け、被覆電線12の先端に露出させた芯線10を導電性の端子20に接続するものにおいて、端子20はその基部に端子20の長手方向に沿って芯線10をかしめ保持するかしめ部23と、芯線10を溶接固定する溶接部22とを有し、端子20の溶接部22は、芯線10を配置する配置部24と、配置部24の内底面24aに対して配置部24の内底面24aよりも上方に隆起して溶接時に芯線10を両側から保持する保持壁25とを備え、溶接部22に配置された芯線10が溶接部22に溶接固定されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、芯線を絶縁被覆で被覆した被覆電線を設け、該被覆電線の先端に露出させた芯線を導電性の端子に接続するような電線接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数本の芯線を絶縁被覆した被覆電線を、平型ブレードまたはピン型ブレードなどの導電性の端子に電気接続する構造としては、被覆電線先端側の絶縁被覆を剥がして芯線を露出させる一方、端子のかしめ部に芯線を配置して一対のダイス(アンビルとクリンパ)で該かしめ部を加締めて塑性変形させ、複数本の芯線をかしめ加工されたかしめ部に圧着するものが知られている。
【0003】
しかしながら、かしめ部で芯線を圧着するのみでは、かしめ部と芯線との間、並びに芯線相互間に微細な隙間が残るため、充分な電気特性を確保することができない問題点があった。
【0004】
このような問題点を解決するためには、端子のかしめ部に近接する部位に、溶接部を形成し、この溶接部に芯線を配置し、一対の電極間に溶接部および芯線(つまり被溶接材)を挟んで加圧し、電流を流して抵抗発熱によって加圧部を融合させるというスポット溶接を施すことが考えられるが、スポット溶接を行なうには、強大な加圧力と電流を与えるので、端子それ自体に加圧力に対する充分な強度が要求され、特に、端子としてピン型ブレードを用いる場合には、該ピン型ブレードは鉛含有量が比較的多い快削黄銅で形成される関係上、スポット溶接時の加圧力に対する充分な強度が得られない問題点があった。
【0005】
ところで、特許文献1には、断面円形状の端子の基端部に、円筒状のかしめ部を一体形成し、このかしめ部に芯線を配置して、上下一方のダイスで該かしめ部を加締めて塑性変形させ、複数本の芯線をかしめ固定する構成が開示されている。
【0006】
しかしながら、該特許文献1に開示された従来構造においては、単にかしめ部で芯線をかしめ固定するのみであるから、前述同様に充分な電気特性を得ることができないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−21543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、かしめ部で芯線をかしめ固定すると共に、溶接部で端子と芯線とを溶接固定することで、充分な電気特性を確保することができ、しかも、溶接時の加圧力に対抗し得る端子強度を有すると共に、溶接時の芯線の逃げ(溶接時において溶接装置の電極の加圧力により芯線の位置がずれること)を防止して、端子に対する芯線の密着性向上を図ることができる電線接続構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による電線接続構造は、芯線を絶縁被覆で被覆した被覆電線を設け、
該被覆電線の先端に露出させた芯線を導電性の端子に接続する電線接続構造であって、上記端子はその基部に該端子の長手方向に沿って上記芯線をかしめ保持するかしめ部と、上記芯線を溶接固定する溶接部とを有し、上記端子の溶接部は、上記芯線を配置する配置部と、該配置部の内底面に対して該配置部の内底面よりも上方に隆起して溶接時に芯線を両側から保持する保持壁とを備え、上記溶接部に配置された芯線が該溶接部に溶接固定されたものである。
上述の端子としては、ピン型ブレードや平型ブレードを用いることができる。
上記構成によれば、かしめ部で芯線をかしめ固定すると共に、溶接部で端子と芯線とを溶接するので、充分な電気特性を確保することができ、しかも上記保持壁を設けたことで、溶接時の加圧力に対抗し得る端子強度を有すると共に、該保持壁で溶接時の芯線の逃げを防止して、端子に対する芯線の密着性向上を図ることができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記端子は切削加工によりその先端を丸めた円柱形状に形成され、上記配置部は円柱形状の端子の直径に対して薄肉状に形成されると共に、上記配置部の前後には端子の直径よりもその外形が大きい位置規制部が一体形成され、上記保持壁は配置部の内底面よりも上方に隆起すると共に、前後の位置規制部間にわたって一体形成されたものである。
上述の位置規制部は、四角形や六角形などの多角形状の位置規制部であってもよい。また、上述の端子はピン型ブレードに設定してもよい。
上記構成によれば、端子を切削性のよい材料(例えば、切削黄銅)で構成することが可能となり、切削加工により容易に上述の溶接部を確保しつつ、端子強度(溶接部の強度)の向上を図ることができる。
特に、上記保持壁は端子の直径よりも大きい前後の位置規制部間にわたって一体形成されたものであるから、配置部を溶接条件との関係上、薄肉状となしても、保持壁による位置規制部間の連結構造により、溶接部の強度を高めることができ、溶接時の加圧力に対し、充分な耐力を備えることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記端子は打抜き加工された平型ブレードで形成され、上記配置部は、溶接部を窪ませた凹部で形成されると共に、該凹部の両側を保持壁と成したものである。
上述の凹部は、端子の打抜き加工時に同時に形成してもよく、打抜き加工後に切削により形成してもよい。
上記構成によれば、端子を打抜き加工に適した材料(例えば、黄銅)で構成することが可能となり、平型ブレードで形成された端子においても凹部両側の保持壁で芯線の逃げを防止して、端子に対する芯線の密着性向上を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記かしめ部は上記端子の基端部に位置し、該かしめ部の直前部に上記溶接部が形成されたものである。
上述の端子の基端部とは、端子の被覆電線に近い側の端部を意味する。
上記構成によれば、溶接部で端子に対する芯線の密着性つまり導電性を確保することができ、上記かしめ部で引抜き外力に対する抵抗力を発揮することができる。
よって、上記構成の電線接続構造を備えたプラグが乱暴に扱われる等して、被覆電線に引抜き方向の外力が付勢されても、上記かしめ部で被覆電線の引抜きを防止することができ、溶接部における芯線密着性を維持することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、かしめ部で芯線をかしめ固定すると共に、溶接部で端子と芯線とを溶接固定することで、充分な電気特性を確保することができ、しかも、溶接時の加圧力に対抗し得る端子強度を有すると共に、溶接時の芯線の逃げを防止して、端子に対する芯線の密着性向上を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の電線接続構造を示す斜視図
【図2】端子の斜視図
【図3】(a)は端子の側面図、(b)は端子を長手方向に沿って縦断して示す断面図
【図4】(a)は図3(a)の左側面図、(b)は図3(a)の右側面図、(c)は図3(a)のA‐A線矢視断面図
【図5】(a)は端子と被覆電線の分解図、(b)は芯線を端子に配設した状態の断面図
【図6】(a)はかしめ部で芯線をかしめ保持した状態を示す断面図、(b)は図6(a)のB‐B線矢視断面図
【図7】(a)は溶接部に芯線を溶接固定した状態の断面図、(b)は図7(a)のC‐C線矢視断面図
【図8】実施例品と比較例品とに対し、加熱時間経過による接触抵抗値の変化を対比して示す特性図
【図9】実施例品と比較例品とに対し、通電に対する温度上昇値の変化を対比して示す特性図
【図10】実施例品と比較例品とに対し、通電に対する温度上昇値の変化を対比して示す特性図
【図11】実施例品と比較例品とに対し、通電ON,OFFのサイクル回数に対する温度上昇値の変化を対比して示す特性図
【図12】電線接続構造の使用形態の一例を示すプラグの断面図
【図13】(a)は平型ブレードの斜視図、(b)は図13(a)の凹部構造を示す断面図、(c)は凹部構造の他の実施例を示す断面図
【図14】(a)は図13(b)の凹部に芯線を溶接固定した状態を示す断面図、(b)は図13(c)の凹部に芯線を溶接固定した状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
充分な電気特性を確保し、かつ溶接時の加圧力に対抗し得る端子強度を有し、また溶接時の芯線の逃げを防止して、端子に対する芯線の密着性向上を図るという目的を、芯線を絶縁被覆で被覆した被覆電線を設け、該被覆電線の先端に露出させた芯線を導電性の端子に接続する電線接続構造において、上記端子はその基部に該端子の長手方向に沿って上記芯線をかしめ保持するかしめ部と、上記芯線を溶接固定する溶接部とを有し、上記端子の溶接部は、上記芯線を配置する配置部と、該配置部の内底面に対して該配置部の内底面よりも上方に隆起して溶接時に芯線を両側から保持する保持壁とを備え、上記溶接部に配置された芯線を該溶接部に溶接固定するという構成にて実現した。
【実施例】
【0016】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は電線接続構造を示し、図1は該電線接続構造を示す斜視図であって、複数の芯線10…を絶縁被覆11で被覆した被覆電線12(図5の(a)参照)を設け、この被覆電線12の先端側の絶縁被覆を剥がして芯線10を露出させ、この露出させた芯線10を導電性の端子20(図2参照)に接続したものである。
【0017】
図2は端子の斜視図、図3の(a)は端子の側面図、図3の(b)は端子を長手方向に沿って縦断して示す断面図、図4の(a)は図3の(a)の左側面図、図4の(b)は図3の(a)の右側面図、図4の(c)は図3の(a)のA‐A線矢視断面図である。
【0018】
図2〜図4に示すように、上述の端子20はその先端(図2の左端)から基端(図2の右端)にかけて、先端を半球形状に丸めた中実円柱形状の端子部21と、芯線10を溶接固定する溶接部22と、芯線10をかしめ保持する円筒形状(いわゆるパイプ形状)のかしめ部23と、を切削加工により一体形成したピン型ブレードで構成している。
つまり、上述の端子20は、その基部に該端子20の長手方向に沿って、芯線10をかしめ保持するかしめ部23と、芯線10を溶接固定する溶接部22とを有し、この実施例では、図2,図3に示すように、かしめ部23が端子20の基端部に位置し、該かしめ部23の直前部に上述の溶接部22が形成されたものである。
ここで、上述の端子20は、例えば、JIS規格C3601で示される快削黄銅(Pb1.8〜3.7wt%含有)を用いて形成される。
【0019】
図3,図4に示すように、端子20の溶接部22は、該溶接部22の下部に位置して芯線10を配置する配置部24と、この配置部24の内底面24aに対して該配置部24の内底面24aよりも上方に隆起して溶接時に複数の芯線10が逃げないように該芯線10をその両側から包み込むように保持する一対の保持壁25,25とを備えている。
上述の配置部24は、図4に示すように、中実円柱形状の端子部21の直径Dに対して、薄肉状となる肉厚L(L<D)に形成されると共に、配置部24の下面24bは、スポット溶接時の諸条件を考慮して、フラットに形成されている。
また、上述の配置部24の前後には、図3に示すように、端子部21の直径Dよりもその外形が大きい六角形状の位置規制部26,27が一体形成されており、上記一対の保持壁25,25は配置部24の内底面24aよりも上方に隆起すると共に、前後の位置規制部26,27間にわたって一体形成されたものである。ここに上述の位置規制部26,27は、端子20を図12に示すインサート部材31に組付ける時、該端子20の前後左右方向の位置を規制するためのものである。
前側の位置規制部26は、その中央に貫通孔を有さない六角柱状に形成される一方で、後側の位置規制部27は芯線10を貫通させる関係上、その中央に貫通孔27aを有するように形成されている。
【0020】
図3の(b)および図4の(c)に示すように、かしめ部23の貫通孔23aと、六角形状の後側の位置規制部27の貫通孔27aと、配置部24の内底面24aおよび保持壁25,25の内周面とは、前後方向に段差なく連続するように形成されている。
このような連続構造と成すことで、かしめ部23の貫通孔23aおよび後側の位置規制部27の貫通孔27aを介して配置部24の内底面24aに芯線10を配置する時、芯線10が引っ掛ることなく挿入配置することができるので、該芯線10の配置操作性の向上を図ることができる。
また、上述の保持壁25は前後の位置規制部26,27の高さの1/2の高さまで上方に延びると共に、一対の保持壁25,25および配置部24は、これら位置規制部26,27の六角形状の外形面より外方に突出しないように、その外側面は六角形の形状面に沿うように形成されている。
さらに、上述の配置部24のフラットな下面24bと位置規制部26,27の六角形の1つの辺とが前後方向に連続するように形成されている。
加えて、上述の保持壁25の上部において前後の位置規制部26,27間には、スポット溶接時に上側の電極が配設される空間部28が形成されている。
【0021】
次に、図5の(a)〜図7の(b)を参照して、被覆電線12の芯線10を端子20に接続する接続方法について説明する。
まず、図5の(a)に示すように、被覆電線12の先端に露出させた芯線10を、端子20におけるかしめ部23の貫通孔23aと対向させ、次に、図5の(b)に示すように、芯線10をかしめ部23の貫通孔23a、六角形状の後側の位置規制部27の貫通孔27aを介して配置部24に配置する。
ここで、芯線10を各貫通孔23a,27aを介して配置部24の内底面24aに配置する時、芯線10の先端を、図5の(b)に示すように六角形状の前側の位置規制部26の後面に当接させてもよい。
次に、図5の(b)に示す状態から図6の(a),(b)に示すように、かしめ装置(図示せず)を用いて、端子20のかしめ部23を加締め、複数の芯線10をかしめ部23にかしめ固定する。
この実施例では、図6の(b)に示すように、かしめ部23をその内径中心部に対して120度の等間隔で径方向内方に窪む3つのかしめ凹部23b…が形成されるように塑性変形させて、これら3つのかしめ凹部23bにより複数の芯線10をかしめ保持し、被覆電線12に引抜き方向の外力が付勢された場合においても、上述のかしめ部23で芯線10の引抜きを防止することができるものである。
【0022】
次に、図7に示すように、かしめ加工後においてスポット溶接装置(図示せず)の上下一対の電極間に溶接部22および芯線10(つまり被溶接材)を挟んで加圧し、電流を流して抵抗発熱によって加圧部を融合させるというスポット溶接を施すと、図7の(a),(b)に示すように、溶接部22と芯線10とに融合部29(いわゆる、ナゲットで図面においては図示の便宜上、黒色の塗りつぶしで示す)が形成され、このような溶接により充分な電気特性を確保することができる。ここで、上述のスポット溶接時には、一対の保持壁25,25より上部に位置する芯線10を上側の電極またはスポット溶接治具で保持壁25,25間に押込んで溶接するものである。
上述のスポット溶接時には強大な加圧力と電流が付加されるが、溶接部22には一対の保持壁25,25を設けて、該溶接部22の強度を高めているので、鉛が含有された快削黄銅により端子20が形成された場合においても、該端子20が溶接時の加圧力により曲がり変形するのを防止することができる。
また、上述のスポット溶接時において、複数の芯線10は配置部24の内底面24aより上方に隆起する一対の保持壁25,25で包み込むように保持され、上側のスポット溶接電極の加圧時においても外方に位置ずれしない所謂逃げることがないので、端子20に対する複数の芯線10の密着性向上を図ることができる。
【0023】
図8〜図11は図7で示した本実施例品と、かしめ部による圧着のみで、溶接を全く行なわない比較例品とをそれぞれ設け、これら本実施例品と比較例品とに対し諸種の実験を行なった実測結果を対比して示す特性図である。
【0024】
図8は加熱温度100℃で端子を加熱し、加熱経過時間後における端子と芯線との接触抵抗値を実測したものであり、本実施例品のものは加熱時間が経過しても接触抵抗値をほぼ一定に保つことができるが、比較例品のものは加熱時間の経過に従って接触抵抗値が過度に大きくなることが明らかとなった。
【0025】
図9は芯線に19.2Aの電流を流し、横軸に通電時間をとり、縦軸に端子の温度上昇値をとった特性図であって、本実施例品のものは比較例品のものに対して温度上昇値が低く抑えられていることが明白となった。
【0026】
図10は芯線に24Aの電流を流し、図9と同様に、横軸に通電時間をとり、縦軸に端子の温度上昇値をとった特性図であって、本実施例品のものは比較例品のものと比較して、温度上昇値を低く抑えることができた。
【0027】
図11は芯線に24Aの電流を45分間通電し、その後45分間通電OFF(休止)として、この通電、休止を1サイクルとし、横軸にサイクル回数をとり、縦軸に端子の温度上昇値をとった特性図(いわゆるヒートサイクル結果)を示すものであり、本実施例品のものは比較例品のものに対して温度上昇値が低く抑えられていることが明らかとなった。
【0028】
図8〜図11から明らかなように本実施例品においては加熱時間に対する接触抵抗値の大きな変化もなく、また、通電による温度上昇値も充分低く抑えることができた。
【0029】
このように、図1〜図7で示した実施例の電線接続構造は、芯線10を絶縁被覆11で被覆した被覆電線12を設け、該被覆電線12の先端に露出させた芯線10を導電性の端子20に接続する電線接続構造であって、上記端子20はその基部に該端子20の長手方向に沿って上記芯線10をかしめ保持するかしめ部23と、上記芯線10を溶接固定する溶接部22とを有し、上記端子20の溶接部22は、上記芯線10を配置する配置部24と、該配置部24の内底面24aに対して該配置部の内底面24aよりも上方に隆起して溶接時に芯線10を両側から保持する保持壁25,25とを備え、上記溶接部22に配置された芯線10が該溶接部22に溶接固定されたものである(図7参照)。
【0030】
この構成によれば、端子20と芯線10とを溶接するので、充分な電気特性を確保することができ、しかも上記保持壁25,25を設けたことで、溶接時の加圧力に対抗し得る端子強度を有すると共に、該保持壁25,25で溶接時の芯線10の逃げを防止して、端子20に対する芯線10の密着性向上を図ることができる。
また、上記端子20は切削加工によりその先端を丸めた円柱形状に形成され、上記配置部24は円柱形状の端子20の直径Dに対して薄肉状に形成されると共に、上記配置部24の前後には端子20の直径Dよりもその外形が大きい位置規制部26,27が一体形成され、上記保持壁25,25は配置部24の内底面24aよりも上方に隆起すると共に、前後の位置規制部26,27間にわたって一体形成されたものである(図1,図4,図7参照)。
【0031】
この構成によれば、端子20を切削性のよい材料で構成することが可能となり、切削加工により容易に上述の溶接部22を確保しつつ、端子強度(溶接部22の強度)の向上を図ることができる。
特に、上記保持壁25,25は端子20の直径Dよりも大きい前後の位置規制部26,27間にわたって一体形成されたものであるから、配置部24を溶接条件との関係上、薄肉状となしても、保持壁25,25による位置規制部26,27間の連結構造により、溶接部22の強度を高めることができ、溶接時の加圧力に対し、充分な耐力を備えることができる。
さらに、上記かしめ部23は上記端子20の基端部に位置し、該かしめ部23の直前部に上記溶接部22が形成されたものである(図7参照)。
ここに、端子20の基端部とは、端子20の被覆電線12に近い側の端部を意味する。
【0032】
この構成によれば、溶接部22で端子20に対する芯線10の密着性つまり導電性を確保することができ、上記かしめ部23で引抜き外力に対する抵抗力を発揮することができる。
よって、上記構成の電線接続構造を備えたプラグが乱暴に扱われる等して、被覆電線12に引抜き方向の外力が付勢されても、上記かしめ部23で被覆電線12の引抜きを防止することができ、溶接部22における芯線密着性を維持することができる。
【0033】
図12は、図1〜図7で示した電線接続構造の使用形態の一例を示し、ピン型ブレードにより形成した端子20を被覆電線12に接続したものと、平型ブレードにより形成した2つの端子40,40(但し、図面では図示の便宜上1つのみを示す)を被覆電線12に接続したものと、を設け、合計3本の被覆電線12…を、絶縁外被で被覆してコード30を形成すると共に、ピン型ブレードによる端子20の端子部21基部および溶接部22と、平型ブレードによる端子40の基部と、をメラミン樹脂などの熱硬化性プラスチックで形成されるインサート部材31に予め組付けた後に、図示の各要素をポリ塩化ビニルなどの熱可塑性プラスチックで形成されるプラグボディ32で一体化して、電気自動車充電用のプラグ33を構成したものである。
図12は電線接続構造の使用形態の一例であって、図1〜図7で示した電線接続構造は各種のプラグに適用できることは云うまでもない。
【0034】
本発明は図1〜図7で示したピン型ブレードによる端子20の他に、図12で例示した平型ブレードによる端子40にも適用できるので、以下、図13,図14を参照して平型ブレードによる端子に適用した実施例について説明する。
図13の(a)は平型ブレードによる端子の斜視図、図13の(b)は図13の(a)における溶接部の断面図、図13の(c)は溶接部の他の実施例を示す断面図、図14の(a)は図13の(b)に対応する芯線の溶接固定状態を示す断面図、図14の(b)は図13の(c)に対応する芯線の溶接固定状態を示す断面図である。
【0035】
図13に示すように、端子40はその先端(図13の(a)の左端)から基端(図13の(a)の右端)にかけて、平板状の端子部41と、芯線10(図12参照)を溶接固定する溶接部42と、芯線10をかしめ片43a,43bでかしめ保持するかしめ部43と、を打抜き加工により一体形成した平型ブレードで構成している。
つまり、上述の端子40は、その基部に該端子40の長手方向に沿って、芯線10をかしめ保持するかしめ部43と、芯線10を溶接固定する溶接部42とを有し、この実施例では、図13の(a)に示すように、かしめ部43が端子40の基端部に位置し、該かしめ部43の直前部に上述の溶接部42が形成されたものである。
ここで、上述の端子40は、例えば、JIS規格C2680で示される黄銅(Cu64.0〜68.0wt%Pb含有率が0.05wt%以下と僅小な黄銅)を用いて形成される。
【0036】
図13の(b)に示すように、端子40の溶接部42は、該溶接部42の下部に位置して芯線10を配置する配置部44と、この配置部44の内底面44aに対して該配置部44の内底面44aよりも上方に隆起して溶接時に複数の芯線10が逃げないように該芯線10をその両側から包み込むように保持する一対の保持壁45,45とを備えている。
【0037】
この実施例では、配置部44は、溶接部42を窪ませた凹部46で形成されると共に、該凹部46の両側を保持壁45,45と成したものである。
ここで、上述の凹部46は、図13の(b)に示すように角張った凹形状であってもよく、または、図13の(c)に示すように半円形状に窪む溝形状であってもよい。
また、この実施例においても、上述の配置部44の下面44bはフラットに形成されている。
そして、被覆電線12の先端に露出させた芯線10を、端子40における溶接部42およびかしめ部43に配置し、まず、一対のかしめ片43a,43bを加締めて、かしめ部43により複数の芯線10をかしめ固定した後に、図示しないスポット溶接装置の上下一対の電極間に溶接部42および芯線10(つまり被溶接材)を挟んで加圧し、電流を流して抵抗発熱によって加圧部を融合させるというスポット溶接を施して、図14に示すように溶接部42と芯線10とに融合部49(いわゆる、ナゲットで図面では図示の便宜上、黒色の塗りつぶしで示す)を形成して、このような溶接により電気特性を確保するものである。ここで、上述のスポット溶接時には、一対の保持壁45,45により上部に位置する芯線10を上側の電極またはスポット溶接治具で保持壁45,45間つまり凹部46内に押込んで溶接するものである。
【0038】
このように、図13,図14で示した実施例の電線接続構造は、芯線10を絶縁被覆11で被覆した被覆電線12を設け、該被覆電線12の先端に露出させた芯線10を導電性の端子40に接続する電線接続構造であって、上記端子40はその基部に該端子40の長手方向に沿って上記芯線10をかしめ保持するかしめ部43と、上記芯線10を溶接固定する溶接部42とを有し、上記端子40の溶接部42は、上記芯線10を配置する配置部44と、該配置部44の内底面44aに対して該配置部44の内底面44aよりも上方に隆起して溶接時に芯線10を両側から保持する保持壁45とを備え、上記溶接部42に配置された芯線10が該溶接部42に溶接固定されたものである(図13,図14参照)。
【0039】
この構成によれば、かしめ部43で芯線10をかしめ固定すると共に、溶接部42で端子と芯線とを溶接するので、充分な電気特性を確保することができ、しかも上記保持壁45を設けたことで、溶接時の加圧力に対抗し得る端子強度を有すると共に、該保持壁45で溶接時の芯線10の逃げを防止して、端子40に対する芯線10の密着性向上を図ることができる。
また、上記端子40は打抜き加工された平型ブレードで形成され、上記配置部44は、溶接部42を窪ませた凹部46で形成されると共に、該凹部46の両側を保持壁45と成したものである(図13参照)。
上述の凹部46は、端子40の打抜き加工時に同時に形成してもよく、打抜き加工後に切削により形成してもよい。
【0040】
この構成によれば、端子40を打抜き加工に適した材料(例えば、黄銅)で構成することが可能となり、平型ブレードで形成された端子40においても凹部46両側の保持壁45で芯線10の逃げを防止して、端子40に対する芯線10の密着性向上を図ることができる。
さらに、上記かしめ部43は上記端子40の基端部に位置し、該かしめ部43の直前部に上記溶接部42が形成されたものである(図13の(a)参照)。
【0041】
この構成によれば、溶接部42で端子40に対する芯線10の密着性つまり導電性を確保することができ、上記かしめ部43で引抜き外力に対する抵抗力を発揮することができる。
よって、上記構成の電線接続構造を備えたプラグが乱暴に扱われる等して、被覆電線12に引抜き方向の外力が付勢されても、上記かしめ部43で被覆電線12の引抜きを防止することができ、溶接部42における芯線密着性を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上説明したように、本発明は、芯線を絶縁被覆で被覆した被覆電線を設け、該被覆電線の先端に露出させた芯線を導電性の端子に接続する電線接続構造について有用である。
【符号の説明】
【0043】
10…芯線
11…絶縁被覆
12…被覆電線
20,40…端子
22,42…溶接部
23,43…かしめ部
24,44…配置部
24a,44a…内底面
25,45…保持壁
26,27…位置規制部
46…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線を絶縁被覆で被覆した被覆電線を設け、
該被覆電線の先端に露出させた芯線を導電性の端子に接続する電線接続構造であって、
上記端子はその基部に該端子の長手方向に沿って上記芯線をかしめ保持するかしめ部と、
上記芯線を溶接固定する溶接部とを有し、
上記端子の溶接部は、上記芯線を配置する配置部と、
該配置部の内底面に対して該配置部の内底面よりも上方に隆起して溶接時に電線を両側から保持する保持壁とを備え、
上記溶接部に配置された芯線が該溶接部に溶接固定された
電線接続構造。
【請求項2】
上記端子は切削加工によりその先端を丸めた円柱形状に形成され、
上記配置部は円柱形状の端子の直径に対して薄肉状に形成されると共に、
上記配置部の前後には端子の直径よりもその外形が大きい位置規制部が一体形成され、
上記保持壁は配置部の内底面よりも上方に隆起すると共に、前後の位置規制部間にわたって一体形成された
請求項1記載の電線接続構造。
【請求項3】
上記端子は打抜き加工された平型ブレードで形成され、
上記配置部は、溶接部を窪ませた凹部で形成されると共に、
該凹部の両側を保持壁と成した
請求項1記載の電線接続構造。
【請求項4】
上記かしめ部は上記端子の基端部に位置し、該かしめ部の直前部に上記溶接部が形成された
請求項1〜3の何れか1項に記載の電線接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−62052(P2013−62052A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198129(P2011−198129)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(391018732)富士電線工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】