説明

電線支持装置

【課題】電線の捩(ねじ)れが両端に伝わることがなく、電線とコネクタとの接続部に力が掛かることを防止することができるようにする。
【解決手段】機器の第1部分と、該第1部分に対して複数の回転軸周りに回転可能となるように接続された前記機器の第2部分とを接続する回転接続部に配設されるとともに、両端が前記第1部分及び第2部分に各々配設される電線を支持する電線支持装置であって、前記電線が通過する貫通孔を有し、該貫通孔の少なくとも一つが前記回転軸上に存在し、前記電線は、少なくとも一つのほぼ180度の曲がり部、及び、該ほぼ180度の曲がり部と両端との間に各々少なくとも一つのほぼ90度の曲がり部が形成されるように支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant:個人用携帯情報端末)、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレーヤ、ゲーム機、車両用ナビゲーション装置等の電子機器においては、筐(きょう)体全体の小型化とディスプレイの大型化とを両立させるため、筐体を折畳むことができるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図9は従来の折畳式電子機器における基板を接続する配線を示す図である。
【0004】
図において、301は折畳式電子機器としての携帯電話機の一方の筐体に実装される第1の回路基板であり、302は前記一方の筐体に対して回転可能に取付けられる他方の筐体に実装される第2の回路基板である。また、303は、前記第1の回路基板301と第2の回路基板302とを接続する電線としてのフレキシブル配線板である。そして、該フレキシブル配線板303の一端に取付けられた第1の配線側コネクタ304は第1の回路基板301に実装された第1の基板側コネクタ305に接続され、前記フレキシブル配線板303の他端に取付けられた第2の配線側コネクタ306は第2の回路基板302に実装された第2の基板側コネクタ307に接続されている。
【0005】
また、前記フレキシブル配線板303の中間部は、長手方向にスリットが形成された円筒状の固定チューブ308に巻付けられて支持されている。そして、電線支持装置としての固定チューブ308は、一方の筐体と他方の筐体とを回転可能に接続するヒンジ部の内部に配設される。これにより、一方の筐体を他方の筐体に対して、矢印Aで示される軸周りに回転させることができる。そのため、例えば、通話をするために携帯電話機のディスプレイ部分が折畳まれた状態から開いた状態とするような場合に、一方の筐体を他方の筐体に対して回転させても、電線としてのフレキシブル配線板303が無理なく変形することができるので、第1の回路基板301と第2の回路基板302とが電気的な接続を維持することができる。
【特許文献1】特開2003−258961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の電線支持装置は、一軸周りの回転運動にしか対応しておらず、二軸周りの回転運動には対応していないので、複数の筐体の複雑な接続形態に対応することができない。近年、携帯電話機等の電子機器においては、ディスプレイの視認性をより高めるために、ディスプレイが取付けられた筐体を他方の筐体に対して回動させて開いた状態から、さらに、他の軸周りに回転させことができるようになっている。これにより、電子機器の使用者は、ディスプレイを任意の向きにすることができる。これに対し、図9に示されるような電線支持装置の場合、例えば、矢印Aで示される軸と垂直な軸周りに回転させることができるようなヒンジ部を使用したとしても、矢印Aで示される軸と垂直な軸周りに回転させると、フレキシブル配線板303が捩(ねじ)られることになるので、二軸周りの回転運動に対応することができない。もっとも、フレキシブル配線板303に代えて複数本の線から成るケーブルを使用すれば、該ケーブルはある程度の捩れを許容するのであるから、二軸周りの回転運動に対応することができる。しかし、この場合、ケーブルに捩れが発生すると、該ケーブルの両端に配線側コネクタとの接続部、いわゆるケーブルの首部に力が掛かり、ケーブルが断線したり伝達される信号に乱れが生じたりしてしまう。
【0007】
本発明は、前記従来の電線支持装置の問題点を解決して、複数の回転軸周りに回転可能なヒンジ支持具に形成された貫通孔(こう)を通過するように電線を配設し、前記貫通孔の少なくとも一つが回転軸上に存在し、前記電線にほぼ180度の曲がり部が少なくとも一つ形成されるとともに、該ほぼ180度の曲がり部と両端との間に、それぞれ、少なくとも一つのほぼ90度の曲がり部が形成されるようにして、電線の捩れが両端に伝わることがなく、電線とコネクタとの接続部に力が掛かることを防止することができる電線支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、本発明の電線支持装置においては、機器の第1部分と、該第1部分に対して複数の回転軸周りに回転可能となるように接続された前記機器の第2部分とを接続する回転接続部に配設されるとともに、両端が前記第1部分及び第2部分に各々配設される電線を支持する電線支持装置であって、前記電線が通過する貫通孔を有し、該貫通孔の少なくとも一つが前記回転軸上に存在し、前記電線は、少なくとも一つのほぼ180度の曲がり部、及び、該ほぼ180度の曲がり部と両端との間に各々少なくとも一つのほぼ90度の曲がり部が形成されるように支持される。
【0009】
本発明の他の電線支持装置においては、さらに、前記第1部分に取付けられる第1支持部材と、該第1支持部材に対して第1回転軸周りに回転可能な結合部によって取付けられた第2支持部材と、該第2支持部材に対して第2回転軸周りに回転可能な結合部によって取付けられた第3支持部材とを有する。
【0010】
本発明の更に他の電線支持装置においては、さらに、前記第3支持部材は前記第2部分に取付けられる。
【0011】
本発明の更に他の電線支持装置においては、さらに、前記第1回転軸周りに回転可能な結合部及び/又は第2回転軸周りに回転可能な結合部には、前記電線が通過する貫通孔が形成されている。
【0012】
本発明の更に他の電線支持装置においては、さらに、前記第1支持部材、第2支持部材及び/又は第3支持部材における前記第1回転軸周りに回転可能な結合部及び第2回転軸周りに回転可能な結合部以外の部位には、前記電線が通過する貫通孔が形成されている。
【0013】
本発明の更に他の電線支持装置においては、さらに、前記第1回転軸と第2回転軸とは互いに直交する。
【0014】
本発明の更に他の電線支持装置においては、機器の第1部分と、該第1部分に対して複数の回転軸周りに回転可能となるように接続された前記機器の第2部分とを接続する回転接続部に配設されるとともに、両端が前記第1部分及び第2部分に各々配設される電線を支持する電線支持装置であって、前記第1部分に取付けられる第1支持部材と、該第1支持部材に対して第1回転軸周りに回転可能な結合部によって取付けられた第2支持部材と、該第2支持部材に対して第2回転軸周りに回転可能な結合部によって取付けられた第3支持部材とを有し、前記第1回転軸周りに回転可能な結合部及び第2回転軸周りに回転可能な結合部には貫通孔が形成され、前記電線は、前記第1回転軸周りに回転可能な結合部及び/又は第2回転軸周りに回転可能な結合部に形成された貫通孔を通過し、少なくとも一つのほぼ180度の曲がり部、及び、該ほぼ180度の曲がり部と両端との間に各々少なくとも一つのほぼ90度の曲がり部が形成されるように支持される。
【0015】
本発明の更に他の電線支持装置においては、さらに、前記第3支持部材は前記第2部分に取付けられる。
【0016】
本発明の更に他の電線支持装置においては、さらに、前記第1支持部材、第2支持部材及び/又は第3支持部材における前記第1回転軸周りに回転可能な結合部及び第2回転軸周りに回転可能な結合部以外の部位には、前記電線が通過する貫通孔が形成されている。
【0017】
本発明の更に他の電線支持装置においては、さらに、前記第1回転軸と第2回転軸とは互いに直交する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電線支持装置は、複数の軸周りに回転可能なヒンジ支持具に形成された貫通孔を通過するように電線を配設し、前記貫通孔の少なくとも一つが回転軸上に存在し、前記電線にほぼ180度の曲がり部が少なくとも一つ形成されるとともに該ほぼ180度の曲がり部と両端との間に、それぞれ、少なくとも一つのほぼ90度の曲がり部が形成されるようになっている。そのため、電線の捩れが両端に伝わることがなく、電線とコネクタとの接続部に力が掛かることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の実施の形態における電線支持装置が使用される機器を示す第1の斜視図、図2は本発明の実施の形態における電線支持装置が使用される機器を示す第2の斜視図である。
【0021】
図1において、10は本実施の形態における機器としての携帯電話機であり、後述されるヒンジ支持具30が内部に配設されている。なお、本実施の形態において、前記機器は、筐体が複数の部分に分割され、隣接する各部分が回転可能に連結されている機器であればいかなる種類の機器であってもよく、例えば、パーソナルコンピュータ、PDA、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレーヤ、ゲーム機、車両用ナビゲーション装置等であってもよいが、ここでは、携帯電話機10である場合について説明する。
【0022】
また、本実施の形態において、携帯電話機10及びヒンジ支持具30の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、携帯電話機10及びヒンジ支持具30又はその部品が図に示される姿勢である場合に適切であるが、携帯電話機10及びヒンジ支持具30又はその部品の姿勢が変化した場合には、姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0023】
そして、前記携帯電話機10は、第1部分としての操作部筐体11、及び、該操作部筐体11にヒンジ部17を介して回転可能に接続された第2部分としての表示部筐体12を有する。この場合、前記ヒンジ部17は、操作部筐体11と表示部筐体12との間に介在する中間部17a及び操作部筐体11から突出する二本の支持腕部17bを含んでいる。そして、前記操作部筐体11は、押しボタン等から成る複数の操作具13を備え、前記表示部筐体12は、液晶ディスプレイ、LEDディスプレイ等から成り、文字や画像を表示する表示部14を備える。さらに、前記表示部筐体12は、図1における上端近傍にラウドスピーカ等から成る音声出力部15を備え、操作部筐体11は、図1における下端近傍にマイクロホン等から成る音声入力部16を備える。
【0024】
なお、図1に示される状態において、携帯電話機10は、通話、電子メール送受信等を行うために使用することができるように、表示部筐体12が開いた状態になっている。該表示部筐体12は、ヒンジ部17を中心として矢印18aで示されるように回転させることによって、具体的には、中間部17aを支持腕部17bに対して矢印18aで示されるように回転させることによって、操作部筐体11に対して閉じたり開いたりすることができる。
【0025】
また、携帯電話機10は、撮影した写真や受信したテレビ放送画像の表示等を行うために使用することができるように、表示部筐体12を図2に示されるように開いてもよい。この場合、該表示部筐体12は、ヒンジ部17を中心として矢印18bで示されるように回転させることによって、具体的には、表示部筐体12を中間部17aに対して矢印18bで示されるように回転させることによって、操作部筐体11に対して閉じたり開いたりすることができる。すなわち、ヒンジ部17は、二本の回転軸周りの回転を許容するものであり、表示部筐体12の操作部筐体11に対する二本の回転軸周りの回転運動に対応するようになっている。これにより、表示部14の視認性を高めることができる。
【0026】
次に、ヒンジ部17内に配設されたヒンジ支持具30の構成について説明する。
【0027】
図3は本発明の実施の形態における電線支持装置の第1の姿勢を示す斜視図、図4は本発明の実施の形態における電線支持装置の第1の姿勢を示す三面図である。なお、図4において(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【0028】
本実施の形態において、ヒンジ支持具30は、ヒンジ部17内に配設され、該ヒンジ部17内を通過するように配設された電線としてのケーブル51を支持する電線支持装置としても機能する。前記ケーブル51は、通常、複数本、例えば、30本の電線から成るものであるが、一本の電線から成るものであってもよく、また、複数本の電線から成るものである場合、複数本の電線は束ねられた状態であってもよいし、束ねられておらず、ばらばらの状態であってもよい。ここでは、説明の都合上、ケーブル51が、複数本の電線から成り、該複数本の電線は束ねられた状態でほぼ全長に亘(わた)って絶縁性被覆部材によって被覆され、あたかも一本の太い線状体として取扱うことができるようになっている場合についてのみ説明する。
【0029】
そして、ケーブル51は、操作部筐体11内に配設された配線基板等と、表示部筐体12内に配設された配線基板等とを電気的に接続するものであり、前記ケーブル51の操作部筐体11側の端部には第1コネクタ52aが接続され、表示部筐体12側の端部には第2コネクタ52bが接続されている。なお、第1コネクタ52a及び第2コネクタ52bを統合的に説明する場合には、コネクタ52として説明する。そして、前記ケーブル51の両端においては、各電線をコネクタ52の図示されない端子の各々に接続する都合上、絶縁性被覆部材が除去されている。図において、前記ケーブル51における絶縁性被覆部材が除去されている部分は、他の部分より幅広に描かれている。
【0030】
図示される例において、ヒンジ支持具30は、操作部筐体11に取付けられる第1支持部材31、該第1支持部材31に対して第1回転軸周りに回転可能に取付けられた第2支持部材32、及び、該第2支持部材32に対して第2回転軸周りに回転可能に取付けられた第3支持部材33を有する。なお、該第3支持部材33は表示部筐体12に取付けられる。前記ヒンジ支持具30は、複数本の回転軸周りに回転可能なものであればいかなる構成のものであってもよく、いくつの部材から成るものであってもよいが、本実施の形態においては、説明の都合上、第1回転軸及び第2回転軸の二本の回転軸周りに回転可能であり、第1支持部材31、第2支持部材32及び第3支持部材33の三つの支持部材を有するものである場合についてのみ説明する。
【0031】
また、図示される例において、第1支持部材31は打抜加工及び折曲加工を施して形成された一枚の金属板から成り、第2支持部材32は打抜加工及び折曲加工を施して形成された三枚の金属板から成り、第3支持部材33は打抜加工及び折曲加工を施して形成された一枚の金属板から成るものであるが、第1支持部材31、第2支持部材32及び第3支持部材33は、単数の部品から成るものであってもよいし、複数の部品から成るものであってもよいし、金属以外の材料、例えば、セラミクス、樹脂等から成るものであってもよい。
【0032】
前記第1支持部材31は、第1回転軸と平行に延在する底板部と、該底板部の両端から垂直方向に突出して延在する二枚の軸支持板部とを有する。また、前記第2支持部材32は、第1回転軸と平行に延在する底板部と、該底板部から垂直方向に突出して延在する二枚の軸支持板部とを有する。そして、第1支持部材31の二枚の軸支持板部と、第2支持部材32の二枚の軸支持板部とは、各々の先端部において、第1ピボット結合部35a及び第2ピボット結合部35bによって、相互に回転可能に結合されている。
【0033】
ここで、前記第1ピボット結合部35a及び第2ピボット結合部35bは、第1回転軸上に存在し、第1回転軸周りに回転運動を行う回転可能な結合部である。これにより、第1支持部材31及び第2支持部材32は、相互に第1回転軸周りに回転可能に取付けられた状態となる。なお、前記第1ピボット結合部35a及び第2ピボット結合部35bには、第1支持部材31及び第2支持部材32の各々の軸支持板部を貫通する貫通孔36が形成され、ケーブル51は、第1ピボット結合部35aの貫通孔36を通過するように配設されている。
【0034】
また、前記第1ピボット結合部35a及び第2ピボット結合部35bには、第1支持部材31の軸支持板部と第2支持部材32の軸支持板部との間に介在する合成樹脂から成る円筒形状の第1スペーサ部材38a及び第2スペーサ部材38bが配設されている。なお、該第1スペーサ部材38a及び第2スペーサ部材38bの厚さ、すなわち、第1回転軸の軸方向の長さ寸法は、適宜設定することができる。また、前記第1スペーサ部材38a及び第2スペーサ部材38bを必要に応じて省略することもできる。
【0035】
前記第2支持部材32の底板部の一端は第2ピボット結合部35bを備える軸支持板部との接合部で終端するが、前記底板部の他端は第1ピボット結合部35aを備える軸支持板部との接合部よりも外方に突出し、第3ピボット結合部35cによって第3支持部材33に回転可能に結合されている。ここで、該第3支持部材33は、第2回転軸と垂直な方向に延在する底板部と、該底板部の長手方向側端を垂直に折曲げ、底板部と同一方向に延在する軸支持板部とを有する。そして、第2支持部材32の底板部と、第3支持部材33の軸支持板部とは、各々の端部において、第3ピボット結合部35cによって、相互に回転可能に結合されている。
【0036】
ここで、前記第3ピボット結合部35cは、前記第1回転軸と垂直な方向に延在する第2回転軸上に存在し、第2回転軸周りに回転運動を行う回転可能な結合部である。これにより、第2支持部材32及び第3支持部材33は、相互に第2回転軸周りに回転可能に取付けられた状態となる。なお、前記第3ピボット結合部35cには、軸支持板部を貫通する貫通孔36が形成され、ケーブル51は、第3ピボット結合部35cの貫通孔36を通過するように配設されている。
【0037】
また、前記第3ピボット結合部35cには、第2支持部材32の底板部と第3支持部材33の軸支持板部との間に介在する合成樹脂から成る円筒形状の第3スペーサ部材38cが配設されている。なお、該第3スペーサ部材38cの厚さは、前記第1スペーサ部材38a及び第2スペーサ部材38bの厚さよりも厚くなっているが、適宜変更することができる。また、前記第3スペーサ部材38cを必要に応じて省略することもできる。さらに、前記第3ピボット結合部35cの位置も適宜変更することができる。図示される例において、前記第3ピボット結合部35cは、第2ピボット結合部35bの図4(a)における右側の軸支持部よりも外方に突出した位置に配設されているが、左側の軸支持部よりも外方に突出した位置に配設されていてもよいし、左右の軸支持板部の間の位置に配設されていてもよい。
【0038】
図3及び4に示されるヒンジ支持具30は、表示部筐体12が操作部筐体11に対して閉じた状態に対応する姿勢としての第1の姿勢になっている。そして、前記第1支持部材31の底板部には取付孔(あな)41が二個形成され、前記底板部は、取付孔41を貫通するビス、ボルト等の図示されない取付部材によって、操作部筐体11内に取付けられる。なお、前記取付孔41の数及び位置は、適宜変更することができる。また、図4に示される前記底板部は左右に分離されているが、左右の軸支持板部を接続する連続した部材であってもよい。そして、左右の軸支持板部は、ヒンジ部17の左右の支持腕部17b内に各々収容されている。
【0039】
一方、前記第3支持部材33の底板部には取付孔42が二個形成され、前記底板部は、取付孔42を貫通するビス、ボルト等の図示されない取付部材によって、表示部筐体12内に取付けられる。なお、前記取付孔42の数及び位置は、適宜変更することができる。また、図3及び4に示される前記底板部は連続した部材であるが、左右に分離されていてもよい。
【0040】
さらに、前記第2支持部材32はヒンジ部17の中間部17a内に取付けられている。なお、第2支持部材32の両方の軸支持板部には、貫通孔としての電線支持孔43が形成され、ケーブル51は、第3ピボット結合部35c寄りの軸支持板の電線支持孔43を通過するように配設されている。
【0041】
図示される例において、ケーブル51は、複数箇所で曲がるように配設され、ほぼ180度の曲がり部としてのU字部53、及び、ほぼ90度の曲がり部としてのL字部54a〜54gを備える。ここで、U字部53は、全体にほぼ180度曲がっていればU字状である必要はなく、例えば、コ字状であってもよく、また、L字部54a〜54gも、ほぼ90度曲がっていればL字状である必要はなく、例えば、円弧状であってもよい。なお、L字部54a〜54gを統合的に説明する場合には、L字部54として説明する。
【0042】
本実施の形態におけるケーブル51は、少なくとも一つのほぼ180度の曲がり部を備え、かつ、該ほぼ180度の曲がり部と両端部との間に、それぞれ、少なくとも一つのほぼ90度の曲がり部を備えるものであればよい。そして、図示されるようなケーブル51の曲がり方、すなわち、取回しの仕方は、一例に過ぎないものであり、本実施の形態におけるケーブル51は、これに限定されるものではない。
【0043】
ケーブル51の取回しの仕方は、操作部筐体11、表示部筐体12、ヒンジ部17等の内部形状やそこに配設された他の部材の配置の仕方によって変化する。例えば、図示される例においては、第2コネクタ52bが、その長手方向が第3支持部材33の底板部の延在する方向と平行するような向きに配設されているが、第2コネクタ52bの向きは表示部14に取付けられた相手側コネクタと嵌(かん)合するように決定されるのであるから、表示部14に取付けられた相手側コネクタが、その長手方向が第3支持部材33の底板部の延在する方向と直交するようになっている場合には、第2コネクタ52bも、その長手方向が第3支持部材33の底板部の延在する方向と直交するような向きに配設される。そのため、ケーブル51のほぼ180度の曲がり部は、一つ以上であればいくつであってもよく、また、ケーブル51のどの部位に形成されていてもよい。また、ケーブル51のほぼ90度の曲がり部は、ほぼ180度の曲がり部とコネクタ52に接続された両端部との間に、それぞれ一つ以上ずつあればいくつであってもよく、また、ケーブル51のどの部位に形成されていてもよい。
【0044】
さらに、図示される例において、ケーブル51は、第1ピボット結合部35aの貫通孔、第3ピボット結合部35cの貫通孔36及び第2支持部材32の軸支持板の電線支持孔43を通過するように配設されているが、本実施の形態において、ケーブル51が通過する貫通孔36及び貫通孔としての電線支持孔43は、その中の少なくとも一つが回転軸上に存在するのであれば、いくつであってもよい。また、ケーブル51はいずれの貫通孔36及び電線支持孔43を通過してもよく、例えば、第2ピボット結合部35bの貫通孔36を通過してもよい。ここでは、説明の都合上、図示されるように、ケーブル51が一つのU字部53、及び、七つのL字部54を備え、第1ピボット結合部35aの貫通孔36、第3ピボット結合部35cの貫通孔36及び第2支持部材32の軸支持板の電線支持孔43を通過する場合についてのみ説明する。
【0045】
次に、表示部筐体12を操作部筐体11に対して開いた状態におけるヒンジ支持具30の状態について説明する。
【0046】
図5は本発明の実施の形態における電線支持装置の第2の姿勢を示す斜視図、図6は本発明の実施の形態における電線支持装置の第2の姿勢を示す三面図である。なお、図6において(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【0047】
図5及び6に示されるヒンジ支持具30は、表示部筐体12が操作部筐体11に対して90度開いた状態に対応する姿勢としての第2の姿勢になっている。該第2の姿勢においては、図6(c)に最も明瞭(りょう)に示されるように、第2支持部材32の軸支持板部の突出方向と、第1支持部材31の軸支持板部の突出方向とのなす角度が180度になっている。これに対し、図3及び4に示される第1の姿勢においては、第2支持部材32の軸支持板部の突出方向と、第1支持部材31の軸支持板部の突出方向とのなす角度が90度になっている。
【0048】
すなわち、第1の姿勢から、第2支持部材32を第1支持部材31に対して第1回転軸の周りに、図4(c)における時計回り方向に90度回転させると、第2の姿勢を得ることができる。なお、第3支持部材33と第2支持部材32との位置関係は、第1の姿勢においても第2の姿勢においても同一である。
【0049】
そして、ケーブル51は、第1ピボット結合部35aの貫通孔36及び第2支持部材32の軸支持板部の電線支持孔43を通過するように取回され、U字部53からL字部54eまでの範囲は第2支持部材32とともにヒンジ部17の中間部17a内に取付けられ、かつ、L字部54cから第1コネクタ52aまでの範囲は第1支持部材31とともに操作部筐体11内に取付けられている。そのため、ヒンジ支持具30が第1の姿勢から第2の姿勢に変化する際に、ケーブル51の第1ピボット結合部35aの貫通孔36を通過する部位には、捩れが加えられる。しかし、ケーブル51は、第1ピボット結合部35aの貫通孔36を通過する部位に隣接したU字部53を備え、かつ、該U字部53と第1コネクタ52aに接続された端部との間にL字部54a〜54dを備えるとともに前記U字部53と第2コネクタ52bに接続された端部との間にL字部54e〜54gを備えている。そのため、第1ピボット結合部35aの貫通孔36を通過する部位におけるケーブル51の捩れが、第1コネクタ52a及び第2コネクタ52bに接続された両端部に伝わることがないので、これら両端部に力が掛かることがない。
【0050】
また、第2の姿勢から、第2支持部材32を第1支持部材31に対して第1回転軸の周りに、図6(c)における時計回り方向に更に90度回転させることもできる。これにより、ヒンジ支持具30の姿勢は、図1に示されるように、表示部筐体12が操作部筐体11に対してほぼ180度開いた状態に対応する。この場合、ケーブル51の第1ピボット結合部35aの貫通孔36を通過する部位には、更に捩れが加えられるが、前述のように、第1ピボット結合部35aの貫通孔36を通過する部位におけるケーブル51の捩れが、第1コネクタ52a及び第2コネクタ52bに接続された両端部に伝わることがないので、これら両端部に力が掛かることがない。
【0051】
次に、表示部筐体12を他の回転軸周りに回転させて操作部筐体11に対して開いた状態におけるヒンジ支持具30の状態について説明する。
【0052】
図7は本発明の実施の形態における電線支持装置の第3の姿勢を示す斜視図、図8は本発明の実施の形態における電線支持装置の第3の姿勢を示す三面図である。なお、図8において(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【0053】
図7及び8に示されるヒンジ支持具30は、表示部筐体12が操作部筐体11に対して約110度開いた状態に対応する姿勢としての第3の姿勢になっている。該第3の姿勢は、図2に示されるように、表示部筐体12が操作部筐体11に対して開いた状態に対応する。そして、前記第3の姿勢においては、図8(b)に最も明瞭に示されるように、第2支持部材32の底板部の長手方向と、第3支持部材33の底板部の長手方向とのなす角度が約110度になっている。これに対し、図3及び4に示される第1の姿勢においては、第2支持部材32の底板部の長手方向と、第3支持部材33の底板部の長手方向とのなす角度が0度になっている。
【0054】
すなわち、第1の姿勢から、第3支持部材33を第2支持部材32に対して第2回転軸の周りに、図4(b)における時計回り方向に約110度回転させると、第3の姿勢を得ることができる。なお、第1支持部材31と第2支持部材32との位置関係は、第1の姿勢においても第3の姿勢においても同一である。
【0055】
そして、ケーブル51は、第1ピボット結合部35aの貫通孔36及び第2支持部材32の軸支持板部の電線支持孔43を通過するように取回され、U字部53からL字部54eまでの範囲は第2支持部材32とともにヒンジ部17の中間部17a内に取付けられ、かつ、L字部54fから第2コネクタ52bまでの範囲は第3支持部材33とともに表示部筐体12内に取付けられている。そのため、ヒンジ支持具30が第1の姿勢から第3の姿勢に変化する際に、ケーブル51の第2ピボット結合部35bの貫通孔36を通過する部位には、捩れが加えられる。しかし、ケーブル51は、第2ピボット結合部35bの貫通孔36を通過する部位にL字部54eを挟んで隣接したU字部53を備え、かつ、該U字部53と第1コネクタ52aに接続された端部との間にL字部54a〜54dを備えるとともに前記U字部53と第2コネクタ52bに接続された端部との間にL字部54e〜54gを備えている。そのため、第2ピボット結合部35bの貫通孔36を通過する部位におけるケーブル51の捩れが、第1コネクタ52a及び第2コネクタ52bに接続された両端部に伝わることがないので、これら両端部に力が掛かることがない。
【0056】
このように、本実施の形態において、ヒンジ支持具30は、ケーブル51が通過する貫通孔36及び貫通孔としての電線支持孔43を有し、貫通孔36及び電線支持孔43の少なくとも一つが回転軸上に存在し、前記ケーブル51は、少なくとも一つのU字部53、及び、該U字部53と両端との間に各々少なくとも一つのL字部54が形成されるように支持されている。
【0057】
そのため、ヒンジ支持具30を前記回転軸周りに回転させても、回転軸上に存在する貫通孔36を通過する部位におけるケーブル51の捩れが、両端部に伝わることがないので、これら両端部に力が掛かることがない。したがって、ケーブル51が断線したり、ケーブル51によって伝達される信号に乱れが生じたりしてしまうことがない。
【0058】
また、前記ヒンジ支持具30は、操作部筐体11に取付けられる第1支持部材31と、該第1支持部材31に対して第1回転軸周りに回転可能な第1ピボット結合部35a及び第2ピボット結合部35bによって取付けられた第2支持部材32と、該第2支持部材32に対して第2回転軸周りに回転可能な第3ピボット結合部35cによって取付けられた第3支持部材33とを有する。なお、第2支持部材32はヒンジ部17の中間部17aに取付けられ、第3支持部材33は表示部筐体12に取付けられる。そのため、操作部筐体11に対する表示部筐体12の複雑な運動を可能にし、表示部14の視認性を高めることができる。
【0059】
さらに、第1ピボット結合部35a、第2ピボット結合部35b及び第3ピボット結合部35cには貫通孔36が形成され、任意の貫通孔36にケーブル51を通過させることができる。また、第2支持部材32及び第3支持部材33には電線支持孔43が形成され、ケーブル51が前記電線支持孔43を通過するように配設されている。そのため、ケーブル51の取回しの仕方を任意に設定することができ、前記ケーブル51に負荷をかけることなく、曲げることができる。
【0060】
なお、本実施の形態においては、ヒンジ支持具30が第1支持部材31、第2支持部材32及び第3支持部材33の三つの支持部材を有する場合について説明したが、前記ヒンジ支持具30は、四つ以上の支持部材を有するものであってもよい。また、ヒンジ支持具30が第1回転軸及び第2回転軸の二本の回転軸を有する場合について説明したが、前記ヒンジ支持具30は、三本以上の回転軸を有するものであってもよい。さらに、ケーブル51に一つのU字部53が形成される場合について説明したが、ケーブル51に形成されるU字部53は二つ以上であってもよい。
【0061】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態における電線支持装置が使用される機器を示す第1の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における電線支持装置が使用される機器を示す第2の斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態における電線支持装置の第1の姿勢を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態における電線支持装置の第1の姿勢を示す三面図である。
【図5】本発明の実施の形態における電線支持装置の第2の姿勢を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態における電線支持装置の第2の姿勢を示す三面図である。
【図7】本発明の実施の形態における電線支持装置の第3の姿勢を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態における電線支持装置の第3の姿勢を示す三面図である。
【図9】従来の折畳式電子機器における基板を接続する配線を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
10 携帯電話機
11 操作部筐体
12 表示部筐体
13 操作具
14 表示部
15 音声出力部
16 音声入力部
17 ヒンジ部
17a 中間部
17b 支持腕部
18a、18b 矢印
30 ヒンジ支持具
31 第1支持部材
32 第2支持部材
33 第3支持部材
35a 第1ピボット結合部
35b 第2ピボット結合部
35c 第3ピボット結合部
36 貫通孔
38a 第1スペーサ部材
38b 第2スペーサ部材
38c 第3スペーサ部材
41、42 取付孔
43 電線支持孔
51 ケーブル
52 コネクタ
52a 第1コネクタ
52b 第2コネクタ
53 U字部
54、54a、54b、54c、54d、54e、54f、54g L字部
301 第1の回路基板
302 第2の回路基板
303 フレキシブル配線板
304 第1の配線側コネクタ
305 第1の基板側コネクタ
306 第2の配線側コネクタ
307 第2の基板側コネクタ
308 固定チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)機器の第1部分(11)と、該第1部分(11)に対して複数の回転軸周りに回転可能となるように接続された前記機器の第2部分(12)とを接続する回転接続部に配設されるとともに、両端が前記第1部分(11)及び第2部分(12)に各々配設される電線(51)を支持する電線支持装置(30)であって、
(b)前記電線(51)が通過する貫通孔(36、43)を有し、該貫通孔(36、43)の少なくとも一つが前記回転軸上に存在し、
(c)前記電線(51)は、少なくとも一つのほぼ180度の曲がり部(53)、及び、該ほぼ180度の曲がり部(53)と両端との間に各々少なくとも一つのほぼ90度の曲がり部(54)が形成されるように支持されることを特徴とする電線支持装置(30)。
【請求項2】
前記第1部分(11)に取付けられる第1支持部材(31)と、該第1支持部材(31)に対して第1回転軸周りに回転可能な結合部(35a、35b)によって取付けられた第2支持部材(32)と、該第2支持部材(32)に対して第2回転軸周りに回転可能な結合部(35c)によって取付けられた第3支持部材(33)とを有する請求項1に記載の電線支持装置(30)。
【請求項3】
前記第3支持部材(33)は前記第2部分(12)に取付けられる請求項2に記載の電線支持装置(30)。
【請求項4】
前記第1回転軸周りに回転可能な結合部(35a、35b)及び/又は第2回転軸周りに回転可能な結合部(35c)には、前記電線(51)が通過する貫通孔(36)が形成されている請求項2に記載の電線支持装置(30)。
【請求項5】
前記第1支持部材(31)、第2支持部材(32)及び/又は第3支持部材(33)における前記第1回転軸周りに回転可能な結合部(35a、35b)及び第2回転軸周りに回転可能な結合部(35c)以外の部位には、前記電線(51)が通過する貫通孔(43)が形成されている請求項3に記載の電線支持装置(30)。
【請求項6】
前記第1回転軸と第2回転軸とは互いに直交する請求項2に記載の電線支持装置(30)。
【請求項7】
(a)機器の第1部分(11)と、該第1部分(11)に対して複数の回転軸周りに回転可能となるように接続された前記機器の第2部分(12)とを接続する回転接続部に配設されるとともに、両端が前記第1部分(11)及び第2部分(12)に各々配設される電線(51)を支持する電線支持装置であって、
(b)前記第1部分(11)に取付けられる第1支持部材(31)と、該第1支持部材(31)に対して第1回転軸周りに回転可能な結合部(35a、35b)によって取付けられた第2支持部材(32)と、該第2支持部材(32)に対して第2回転軸周りに回転可能な結合部(35c)によって取付けられた第3支持部材(33)とを有し、
(c)前記第1回転軸周りに回転可能な結合部(35a、35b)及び第2回転軸周りに回転可能な結合部(35c)には貫通孔(36)が形成され、
(d)前記電線(51)は、前記第1回転軸周りに回転可能な結合部(35a、35b)及び/又は第2回転軸周りに回転可能な結合部(35c)に形成された貫通孔(36)を通過し、少なくとも一つのほぼ180度の曲がり部(53)、及び、該ほぼ180度の曲がり部(53)と両端との間に各々少なくとも一つのほぼ90度の曲がり部(54)が形成されるように支持されることを特徴とする電線支持装置(30)。
【請求項8】
前記第3支持部材(33)は前記第2部分(12)に取付けられる請求項7に記載の電線支持装置(30)。
【請求項9】
前記第1支持部材(31)、第2支持部材(32)及び/又は第3支持部材(33)における前記第1回転軸周りに回転可能な結合部(35a、35b)及び第2回転軸周りに回転可能な結合部(35c)以外の部位には、前記電線(51)が通過する貫通孔(43)が形成されている請求項8に記載の電線支持装置(30)。
【請求項10】
前記第1回転軸と第2回転軸とは互いに直交する請求項8に記載の電線支持装置(30)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−122195(P2007−122195A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310616(P2005−310616)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレーテッド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】