説明

電線端末に接続した圧着端子のメッキ方法

【課題】電線端末に接続した圧着端子の表面に高品質のメッキ層を形成する。
【解決手段】電線端末の露出させた芯線に圧着端子の芯線バレルを加締め圧着し、その後、噴流メッキ装置の上方に設置したマスキング装置の端子固定台に、前記電線に圧着した圧着端子の芯線バレル圧着部を下向きとして水平配置し、該芯線バレル圧着部のみ又は該芯線バレル圧着部から電気接触部の先端までを前記端子固定台の下部に設けたマスキングプレートの開口に位置させて下方に露出させ、前記マスキングプレートの下方に配置する噴流メッキ槽の口金部に前記マスキングプレートの開口を位置合わせし、前記端子圧着部を錫100%の噴流メッキ処理でメッキする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線端末に接続した圧着端子のメッキ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線端末に接続する端子として圧着端子が汎用されている。図7(A)〜(C)に示すように、圧着端子1は導電性金属板を打ち抜いた後に屈曲加工して形成しており、相手型端子等の導電材と接触させる電気接触部2に連続して断面U形状とした芯線バレル3と絶縁被覆バレル4を設けている。該芯線バレル3は電線10の端末の絶縁被覆11を剥離して芯線12を露出させ、露出させた芯線12を芯線バレル3の底部3a上に載置し、両側部3b、3cを芯線12に対して両側から覆うように加締めて圧着している。絶縁被覆バレル4も同様で、芯線バレル3の加締め圧着時に同時に電線10の絶縁被覆11に加締め圧着している。
図示の圧着端子1はボルト締めする丸端子であり、電気接触部2は円環形状の平板からなり、中央にボルト穴となる貫通穴2aを設けている。なお、圧着端子1は電気接触部を長方形の平板形状としたオス端子、電気接触部をボックス形状に屈曲したメス端子がある。また、芯線バレル3のみを設け、絶縁被覆バレルを設けない場合もある。
【0003】
前記圧着端子1は芯線バレル3を電線10の露出させた芯線12に加締め圧着しているため、芯線12との導電性を確保することができるが、さらに、該圧着端子と電線との電気接続信頼性を高めると共に芯線12を保護するため、端子圧着部に半田メッキを施す場合がある。
【0004】
従来、端子圧着部を半田メッキする場合、図8に示すように、芯線に加締め圧着した芯線バレル3に半田コテ101を当てて300℃〜380℃に加熱した後、糸半田102を芯線バレル3に4〜7秒接触させて糸半田102を溶かして芯線バレル3を半田メッキしている。
しかしながら、前記半田メッキ方法であると、加熱された圧着端子から電線10の絶縁被覆11へと伝わり、絶縁被覆11の剥離端近傍では300℃〜380℃の高温となり絶縁被覆11のF部分が熱で溶融変形する問題がある。さらに、半田メッキされる領域にバラツキが発生しやすい問題もある。
【0005】
前記半田コテを用いて糸半田で半田メッキする方法に代えて、図9に示すように、電線10を下向きに吊り下げて、静半田槽105に圧着端子1を沈め、溶融半田を4〜7秒接触させて半田メッキするドブ浸けメッキ方法も用いられる。
このドブ浸けメッキ方法では、静半田槽105から引き上げた状態で、作業員の手振りによる遠心力で余分の半田を除去すると共に、最下端部に突出する残渣突起60も除去しようとしている。しかしながら、手振り時に、端子表面に均一に濡れ広がっていた半田も手振りによる遠心力でばらつき、半田表面に凹凸が発生しやすい問題がある。
【0006】
なお、電線に接続した端子の圧着部をメッキをして電気接続信頼性を高める場合、前記した問題が発生するが、従来、該問題を解消する方法は提案されていない。
端子に関するメッキ方法に関しては、特開2002−9424号公報等に記載のプリント基板の回路パターンに端子を半田付けする方法がある。
【0007】
また、電線に接続した端子圧着部を半田メッキした場合、半田を鉛フリー半田とすることが好ましい。しかしながら、鉛フリー半田は表面張力が高いため、半田表面が盛り上がりやすく、相手方端子との嵌合時問題が生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−9424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のように、電線端末に接続した圧着端子の圧着接続部にメッキを施す場合、下記の問題等が発生している。
(1)メッキ領域にバラツキが発生する;
(2)絶縁被覆部に溶融が生じる;
(3)手振りによる余剰メッキの除去時にメッキ厚さにバラツキが生じる:
また、半田メッキをする場合には鉛を含有する問題があり、鉛フリー半田を用いると、半田表面が盛り上がる問題がある。
【0010】
本発明は前記した問題に鑑みてなされたものであり、半田および鉛フリー半田を用いずにメッキすると共に、均一な厚さで高品質のメッキ層を形成するメッキ方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、第1の発明として、
電線端末の絶縁被覆を剥離して芯線を露出させ、露出させた芯線に圧着端子の電気接触部に連続して設けた芯線バレルを加締め圧着し、その後、
噴流メッキ装置の上方に設置したマスキング装置の端子固定台に、前記電線に圧着した圧着端子の芯線バレル圧着部を下向きとして水平配置し、該芯線バレル圧着部のみ又は該芯線バレル圧着部から電気接触部の先端までを前記端子固定台の下部に設けたマスキングプレートの開口に位置させて下方に露出させ、
前記マスキングプレートの下方に配置する噴流メッキ槽の口金部に前記マスキングプレートの開口を位置合わせし、前記端子圧着部を錫100%の噴流メッキ処理でメッキすることを特徴とする電線端末に接続した圧着端子のメッキ方法を提供している。
【0012】
前記圧着端子が絶縁被覆バレルを有する場合には、芯線バレル加締め圧着時に同時に絶縁被覆バレルを加締め圧着している。
前記メッキ方法によれば、メッキする芯線バレル圧着部のみ又は該芯線バレル圧着部から電気接触部先端までをマスキングプレートの開口に位置させるため、メッキ領域にバラツキが発生せず、かつ、メッキ部分に隣接する部分(芯線バレルに連続して絶縁被覆バレルがある場合は絶縁被覆バレル圧着部および、バレル圧着部に隣接する電線の絶縁被覆部分)はマスキングされているため溶融錫が付着せず、絶縁被覆に損傷が生じない。また、噴流メッキするため、メッキ層を均一な厚さで、表面を凹凸の無い平滑面として品質を高めることができる。
さらに、錫100%のメッキを施しているため、半田あるいは鉛フリー半田を用いる場合に生じる問題を解決できる。かつ、錫は相手方端子を含めた相手方導電材と接触抵抗を減らして良好な電気的接触を確保できる物性を有する。
【0013】
なお、電線の長さ方向の中間で絶縁被覆を剥離して芯線を露出させ、他の電線端末の絶縁被覆を剥離した芯線を前記中間露出した芯線と重ね、中間圧着端子でスプライス接続する場合も、該中間圧着端子の圧着部分を前記第1の発明と同様に、マスキングプレートの開口部に位置させて錫メッキしてもよい。
【0014】
第2の発明として、
電線端末の絶縁被覆を剥離して芯線を露出させ、露出させた芯線に圧着端子の電気接触部に連続する芯線バレルを加締め圧着し、その後、
噴流メッキ装置の上方に設置したドブ浸け用の端子固定プレートに、前記圧着端子を圧着した電線を固定すると共に該端子固定プレートの下端から前記圧着端子を下方へ突出させて吊り下げ、
前記端子固定プレートの下方に配置する静メッキ槽の口金部に前記吊り下げた圧着端子の電気接触部の下端から前記芯線バレル圧着部までを沈め、該口金部に満たしている溶融した錫100%のメッキ液でドブ浸けメッキすることを特徴とする電線端末に接続した圧着端子のメッキ方法を提供している。
【0015】
第1の発明と同様に、前記圧着端子が絶縁被覆バレルを有する場合には、芯線バレル加締め圧着時に同時に絶縁被覆バレルを加締め圧着している。
前記第2の発明のメッキ方法では、圧着端子の芯線バレル圧着部と共に電気接触部も錫メッキを施している。このように、電気接触部も錫メッキすると、前記のように相手方端子との接触抵抗を低減し、相手方端子と良好な電気的接触を確保できる。
また、該第2のメッキ方法を用いた場合も、芯線バレル圧着部に隣接する部分に溶融メッキが付着せず、絶縁被覆の損傷を防止でき、かつ、均一厚さのメッキ層を得ることができる。
【0016】
前記ドブ浸けメッキ処理後に、前記端子固定プレートを上昇させて圧着端子表面から余剰の溶融した錫を落下させ、該落下時に発生する圧着端子の電気接触部の下端の溶融錫の残渣突起にフラックスを塗布し、該フラックスに含有している水と溶融錫との反応で前記残渣突起を除去することが好ましい。
【0017】
電線端末に圧着端子を吊り下げた状態で端子固定プレートを上昇させると、圧着端子の表面から余剰の溶融錫を垂れ落として除去することができる。しかしながら、圧着端子の最下端に残渣が垂れ下がって鋭角状に突出した突起が生じる。この突起を除去するために、耐熱ブラシによりフラックスを塗布すると、フラックスが含有している水分の影響で水蒸気爆発が発生し、残渣突起が吹っ飛び圧着端子から簡単に除去できる。
【0018】
なお、芯線バレルの圧着部に、前記第1の発明の方法で錫メッキを施した後、電線端末に接続した圧着端子を下端として下向きに支持し、該圧着端子の電気接触部の下端から芯線バレルの加締圧着部までをメッキ槽に浸けてドブ浸けメッキする場合も、メッキ後に電線を吊り上げて上昇させる際に圧着端子の最下端に残渣突起が生成されるため、前記と同様にフラックスを塗布して残渣突起を除去することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
前述したように、本発明の電線に接続する圧着端子のメッキ方法によれば、メッキ領域を特定でき、かつ、メッキ層を均一厚さで表面平滑に形成できる。また、メッキ部分に隣接する絶縁被覆に損傷が発生するのを防止できる。さらに、メッキは錫メッキとしているため、電気接続する相手方端子や相手方導電材との接触抵抗を低減して良好な電気接続性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態の電線端末に接続した圧着端子を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は(B)のIII−III線断面図、(D)は(B)のIV−IV線断面図である。
【図2】第1実施形態で用いるメッキ装置を示し、(A)はマスキング装置を噴流メッキ装置から上昇させた状態の要部断面分解斜視図、(B)はマスキング装置を噴流メッキ装置上に搭載した状態の要部断面斜視図、(C)はマスキング装置の下面図である。
【図3】第2実施形態の電線端末に接続した圧着端子を示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図4】第2実施形態で用いるメッキ装置を示し、(A)は圧着端子をドブ浸け前の要部断面斜視図 (B)は圧着端子のドブ浸け時の要部断面斜視図である。
【図5】第2実施形態で用いる端子固定プレートを示し、(A)は斜視図、(B)は側面図、(C)は背面図である。
【図6】第3実施形態を示す斜視図である。
【図7】(A)〜(C)は電線端末に接続する圧着端子を示す図面である。
【図8】(A)(B)は従来の糸半田を用いて半田している状態を示す図面である。
【図9】従来のドブ浸け半田している状態を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
実施形態で用いる圧着端子はいずれも前記図7に示す丸端子の圧着端子1とし、電気接触部2の首下部に連続して断面U字形状とした芯線バレル3と絶縁被覆バレル4を有する形状としている。該圧着端子1に接続する電線は自動車またはバイクに配線する電線10であり、該電線10の端末に接続する丸端子の圧着端子1は車体パネル(図示せず)にボルト締めして車体パネルにアース接続するものとしている。
【0022】
図1および図2に示す第1実施形態は、前記第1の発明の実施形態である。
第1実施形態では図1(A)〜(D)に示すように、丸端子からなる圧着端子1の芯線バレル3による加締め圧着部分(芯線バレル圧着部A)のみに錫メッキ30Aを施している。
【0023】
該第1実施形態では図2に示す噴流メッキ装置20と、その上方に配置したマスキング装置21とを用いている。
マスキング装置21は、電線10の端末に接続した圧着端子1を固定する平板状の端子固定台22と、該端子固定台22に圧着端子1を固定した状態で圧着端子1および電線端末10に被せるマスキングプレート23とからなる。端子固定台22には圧着端子1の電気接触部2のボルト穴2aにボルトBを通し、端子固定台22に設けたネジ穴に螺着している。
マスキングプレート23は図中下面となる閉鎖板部23aと外周板部23bを備え、圧着端子1を端子固定台22に固定した後に、該端子固定台22の下面側に外周板部23bを下向きに固定するものである。該マスキングプレート23には、圧着端子1の芯線バレル3を電線10の芯線12に加締め圧着した部分(以下、芯線バレル圧着部Aと称す)のみを露出させる開口23cを囲む両側壁23d、23eを設け、圧着端子1の先端側の電気接触部2、および芯線バレル圧着部Aに隣接する絶縁被覆バレル4および電線10の絶縁被覆11を覆う形状としている。
【0024】
前記噴流メッキ装置20は、従来から使用されている噴流半田装置の貯溜槽26を用い、該貯溜槽26内に溶融半田に代えて溶融した錫30を溜めている。該貯溜槽26の上部カバー28の中央に設けた開口28aの周縁から角筒形状の口金部27を突設し、該口金部27内で前記溶融した錫30を吹き上げるようにしている。
【0025】
前記口金部27は前記マスキング装置21の外周板部23bおよび両側壁23d、23eに囲まれた開口23c内に突出し、口金部27の上端枠27a内で、図2中に太実線Jで示すように、芯線バレル圧着部Aのみを囲むようにしている。また、口金部27が突出する上部カバー28はボックス状とし、貯溜槽26内の溶融錫の熱で電線10の絶縁被覆11が加熱されるのを抑制している。
【0026】
次に、前記メッキ装置を用いたメッキ方法について説明する。
電線10の端末で絶縁被覆11を皮剥ぎして芯線12を露出させて、圧着端子1の芯線バレル3を芯線12、絶縁被覆バレル4を絶縁被覆11にそれぞれ加締め圧着する。
ついで、圧着端子1を圧着接続した電線10の端末を、マスキング装置21の端子固定台22に載置し、電気接触部2の貫通穴にボルトBを通し端子固定台22に固定する。
前記圧着端子1を固定した端子固定台22にマスキングプレート23を被せ、該マスキングプレート23の開口23cに芯線バレル圧着部Aを位置させる。
【0027】
ついで、マスキング装置21を下降させ、噴流メッキ装置20の上部カバー28の上面にマスキングプレート23の下面の閉鎖板部23aを搭載し、口金部27をマスキングプレート23の開口23c内に挿入する。該口金部27の上端枠27aで芯線バレル圧着部Aを囲む。該口金部27で囲まれる芯線バレル圧着部Aでは、芯線バレル3の両側片3b、3cの境界部が下面中央に位置する。
該口金部27の外面と開口23cを囲む側壁23eとの間の空隙に芯線バレル3と絶縁被覆バレル4との間に位置する電線10の露出させた芯線12を位置させる。絶縁被覆バレル4との圧着部は口金部27の外部に位置させ、マスキングプレート23で覆っている。
【0028】
その後、噴流メッキ装置20内の溶融した錫30を口金部27内で噴流させて上方に吹き上げ、露出させた芯線バレル圧着部Aに溶融した錫30を付着してメッキする。この噴流する溶融錫の温度は300℃〜380℃とし、その吐出時間(吹き上げ時間)は3〜5秒としている。該メッキ時に芯線バレル圧着部Aは噴流側に面して芯線バレル3の両側片3bと3cの境界部を位置させているため、芯線バレル3で覆われない芯線12が境界に位置した場合、該芯線12の表面も錫メッキできる。
【0029】
前記溶融した錫30の噴流時に、噴流される錫30は口金部27から外部へ飛散せず、口金部27によりメッキする領域Jを明確に区画できるため、図1(A)(B)に示すように、芯線バレル圧着部Aのみを噴流メッキ装置で自動的に錫メッキすることができる。よって、作業員のハケ塗りでメッキする場合と比較して、錫メッキ層30Aの表面を凹凸のない平滑面にできると共にメッキ厚さを均等にでき、高精度のメッキ層を形成することができる。
一方、芯線バレル圧着部を挟む圧着端子1の電気接触部2と隣接した絶縁被覆11には噴流した溶融錫は付着しないため、絶縁被覆11に加熱による損傷は発生しない。かつ、マスキングプレート23の下面の閉鎖板部23aも噴流する溶融錫と接触させないため、前記メッキしない電気接触部2および絶縁被覆11への熱伝導が抑制され、この点からも、加熱による損傷発生を防止できる。
【0030】
特に、芯線バレルによる芯線12を加締め圧着した部分に錫メッキ層30Aを設けているため、相手方導体との接触抵抗を低減でき、電気接続性の信頼度を高めることができると共に、露出させた芯線保護を図ることもできる。かつ、半田あるいは鉛フリー半田を用いる場合に生じる環境上の問題もない。
【0031】
図3乃至図5に第2実施形態を示す。該第2実施形態は前記第2の発明の実施形態である。
第2実施形態では、図3に示すように、芯線バレル圧着部Aおよび電気接触部2、該電気接触部2の首下部分で芯線バレル3との連続部分6の表面にも錫メッキ層30Aを設けている。
【0032】
該第2実施形態では、圧着端子1の芯線バレル3を芯線12に、絶縁被覆バレル4を絶縁被覆11にそれぞれ加締め圧着した電線10を吊り下げ、芯線バレル圧着部Aから最下端となる電気接触部2の先端まで静メッキ装置50の口金部51に上方から沈め、所謂ドブ浸け方法でメッキしている。以下に該方法を詳述する。
【0033】
図5に示すように、前記圧着端子1を接続した電線10の端末を固定するドブ浸け用の端子固定プレート55を設け、該端子固定プレート55の下端背面に端子原点位置調整プレート56を回転軸57を介して連結している。
【0034】
前記端子固定プレート55は最下端と上方位置とにそれぞれ左右一対の挟持片55aと55b、55cと55dを設け、これらの挟持片55a〜55dを背面側からネジ止めして電線径に応じて固定できるようにしている。かつ、背面部に端子原点位置調整プレート56を固定する磁石58を取り付けている。
前記端子原点位置調整プレート56は鉄製でL字形状とし、垂直板56aの下端に水平板56bが突出している。電線10を端子固定プレート55に固定する時は、垂直板56aを端子固定プレート55に連続させて下垂させ、水平板56bに圧着端子1の電気接触部2の下端を突き当てた状態で、下端側の前記挟持片55aと55bで圧着端子1の上端側の絶縁被覆バレル4と絶縁被覆11との圧着部に隣接する絶縁被覆11の下端部分を挟持固定できるようにしている。
【0035】
図5(A)に示すように、電線10を端子固定プレート55に固定した後に、図5(B)に示すように、端子原点位置調整プレート56を回転軸57を支点として背面側で上向きに回転させて、端子固定プレート55の背面側に設けた磁石58で磁着して端子原点位置調整プレート56保持する。
この状態で、端子固定プレート55の下端から電線10に接続した圧着端子1が吊り下げられた状態となる。その際、絶縁被覆バレル4との圧着部A−Aも端子固定プレート55の下端から下方へ突出させて吊り下げている。
【0036】
図4に示す静メッキ装置50は第1実施形態の噴流メッキ装置20の構造と同様であり、口金部51内で溶融した錫30を噴流させず、液面を上昇させている点だけを相違させており、上部カバー28を備えている点を含め他の構成は噴流メッキ装置20と略同等である。
【0037】
前記静メッキ装置50の口金部51内に、端子固定プレート55に固定した電線10の下端から吊り下げられる圧着端子1を挿入して沈めていく。
その際、溶融した錫30の液面を口金部51の上端位置としているため、圧着端子1は図4(B)に示すように、圧着端子1の最下端の電気接触部2の下端から芯線バレル圧着部A、該芯線バレル圧着部Aと絶縁被覆バレル4の圧着部の間の芯線12aまでを溶融した錫30内に浸けるが、絶縁被覆バレル4の圧着部A−Aは浸けていない。
【0038】
前記口金部51内の溶融した錫30は第1実施形態と同様に300℃〜380℃であり、ドブ浸け時間は3〜5秒としている。該ドブ浸けメッキで、圧着端子1の絶縁被覆バレル4を除いた芯線バレル圧着部A、電気接触部2の全体を均一な厚さで錫メッキしている。
前記第2実施形態のメッキ方法の作用上の利点およびメッキされた圧着端子の利点は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0039】
図6に第3実施形態を示す。
該第3実施形態は、第2実施形態で静メッキ装置50の口金部51内に圧着端子を吊り下げてドブ浸けメッキした場合の後処理方法に関するものである。
前記のように、電線10の端末に接続した圧着端子1を吊り下げて口金部51内に沈めてドブ浸けメッキした場合、所要時間経過後に口金部51から圧着端子1を引き上げる。引き上げ時に圧着端子1の表面に付着する溶融した錫30は自重により過剰部分は流れ落ちる。
【0040】
前記過剰な溶融錫は流下するが、最下端となる電気接触部2の下端中央に溶融錫の残渣が鋭角状に突出し、前記従来例に記載した残渣突起60が生じる。この残渣突起60を除去する必要があるため、本実施形態では圧着端子1の最下端が口金部51から出た時に、図6に示すように、フラックス80を塗布した耐熱ブラシ70を口金部51の上端面に搭載して移動させ、圧着端子1の下端面に生成する前記溶融錫の残渣突起60にフラックス80を塗布する。
【0041】
フラックス80が前記残渣突起60に塗布されると、フラックス80が含有している水により残渣突起60が水蒸気爆発する。これにより、残渣突起60が吹っ飛び、残渣突起60を電気接触部2の先端から除去している。
【0042】
従来は図9に示すように、手振りにより残渣突起60を除去しているが、手振りした場合に、メッキ表面に凹凸が生じて平滑面とならず品質が低下する問題があるが、前記のようにフラックスを塗布して残渣突起を粉砕して除去する方法を用いると、他の塗布面に影響を与えずに残渣突起の除去を行うことができ、高品質に保つことができる。
【0043】
残渣突起60へのフラックスの塗布は前記耐熱ブラシを用いた方法に限定されず、他の適宜な方法で残渣突起60にフラックスを塗布してもよい。
さらに、前記第1実施形態のように、芯線バレル圧着部Aのみに錫メッキを施した後、電線端末に接続した圧着端子を下端として下向きに支持し、該圧着端子の電気接触部の下端から芯線バレルの加締圧着部までをメッキ槽に浸けてドブ浸けメッキする場合も、前記第3実施形態と同様にフラックスを塗布して残渣突起を除去することが好ましい。
【符号の説明】
【0044】
1 圧着端子
2 電気接触部
3 芯線バレル
4 絶縁被覆バレル
10 電線
11 絶縁被覆
12 芯線
20 噴流メッキ装置
21 マスキング装置
23 マスキングプレート
23c 開口
27 口金部
30 錫
30A 錫メッキ層
70 耐熱ブラシ
80 フラックス
A 芯線バレル圧着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線端末の絶縁被覆を剥離して芯線を露出させ、露出させた芯線に圧着端子の電気接触部に連続して設けた芯線バレルを加締め圧着し、その後、
噴流メッキ装置の上方に設置したマスキング装置の端子固定台に、前記電線に圧着した圧着端子の芯線バレル圧着部を下向きとして水平配置し、該芯線バレル圧着部のみ又は該芯線バレル圧着部から電気接触部の先端までを前記端子固定台の下部に設けたマスキングプレートの開口に位置させて下方に露出させ、
前記マスキングプレートの下方に配置する噴流メッキ槽の口金部に前記マスキングプレートの開口を位置合わせし、前記端子圧着部を錫100%の噴流メッキ処理でメッキすることを特徴とする電線端末に接続した圧着端子のメッキ方法。
【請求項2】
電線端末の絶縁被覆を剥離して芯線を露出させ、露出させた芯線に圧着端子の電気接触部に連続する芯線バレルを加締め圧着し、その後、
噴流メッキ装置の上方に設置したドブ浸け用の端子固定プレートに、前記圧着端子を圧着した電線を固定すると共に該端子固定プレートの下端から前記圧着端子を下方へ突出させて吊り下げ、
前記端子固定プレートの下方に配置する静メッキ槽の口金部に前記吊り下げた圧着端子の電気接触部の下端から前記芯線バレル圧着部までを沈め、該口金部に満たしている溶融した錫100%のメッキ液でドブ浸けメッキすることを特徴とする電線端末に接続した圧着端子のメッキ方法。
【請求項3】
前記ドブ浸けメッキ処理後に、前記圧着端子を上昇させて該圧着端子表面から余剰の溶融した錫を落下させ、かつ、該圧着端子の電気接触部の下端に発生する溶融錫の残渣突起にフラックスを塗布し、該フラックスに含有している水と溶融錫との反応で前記残渣突起を破砕除去する請求項2に記載の電線端末に接続した圧着端子のメッキ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−59680(P2012−59680A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204928(P2010−204928)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】