説明

電装品のシール構造

【課題】本発明は、配線の周囲に対して封止する割合を高めた電装品のシール構造を提供することを目的とする。
【解決手段】電装品10は、電子部品が収納された筐体12、筐体12の内部から外部に引き出された配線14、配線14を接続する端子台16、筐体12の内部を外部から封止するためのシール板18を備える。シール板18は、方形の板体32の一辺に複数の帯状部34を設け、帯状部34同士の間を凹部36にしたものである。配線14はシール板18の凹部36を通過する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内に収納された電子部品を外部に対して封止するための電装品のシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機では、圧縮機のモーターの制御のためにインバーター回路が使用される。モーターやインバーター回路は室外機に収納される。インバーター回路は防水および防塵のために筐体に収納される。図8の電装品100のように、筐体102は容器104と蓋体106からなる。容器104に電子部品を収納し、蓋体106によって容器104の開口を閉じる。インバーター回路への給電やインバーター回路とモーターとの接続のために、筐体102の内部から外部へ配線108が施される。配線108が筐体102を通過するために、容器104の配線108の通過位置に開口部110を設ける。
【0003】
筐体102内の防水および防塵のためには、開口部110に配線108を通した後、開口部110を封止する必要がある。図8では、蓋体106に柔軟性の封止部材112を取り付けている。開口部110の形状と封止部材112の形状が同じである。封止部材112は、蓋体106を閉じたとき、封止部材112で配線108の周囲を封止することを目的としている。
【0004】
しかし、実際には封止部材112が配線108の周囲を完全に塞ぐことはできない。図9のように配線108の周囲に隙間114ができる。配線108の太さや間隔によっては、配線108同士の間が完全にふさがらない。
【0005】
配線108の位置と形状に合わせて筐体102の開口部110と封止部材112を形成した場合、完全な封止が可能になる。しかし、回路などの設計変更で開口部110の位置と形状も設計変更しなくてはならない。汎用性が無くなり、コストアップにつながる。筐体102に穴を形成し、穴に柔軟性のグロメットを取り付けて配線を通す方法もあるが、製造工程が多くなり、汎用性がない。
【0006】
また、筐体102に収納されたインバーター回路を冷却するために、筐体102に通風孔を設ける場合がある。通風孔はインバーター回路のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やFWD(Free Wheeling Diode)などの高発熱のパワー半導体に対して特に風が当たるように設計される。しかし、上記のように配線108の周囲に隙間114が生じると、設計とは異なる気流となり、電子部品を設計通りに冷却できなくなる。
【0007】
下記の特許文献1は、筐体の一部を開口し、その開口に二層構造の塩化ビニルシートが配置されている。塩化ビニルシートには切り込みが設けられている。1層ごとに切り込みの方向が異なっており、配線が切り込みを通過する。しかし、図9と同様に、配線の周囲の隙間が大きくなるおそれがある。また、配線に応じて切り込みを設けているため、回路の設計変更に対応できず、汎用性がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公平3−17552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、配線の周囲に対して封止する割合を高めた電装品のシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
電装品は、電子部品が収納された筐体と、筐体の内部から外部に引き出された配線と、筐体の内部に収納され、電子部品と配線とを接続する端子を備えた端子台と、筐体における配線の通過部分に形成された開口部を備える。開口部を封止するためのシール構造は、開口部を封止するシール板を備える。シール板は、配線の通過する位置に凹部が形成され、端子台における筐体の開口部側に取り付けられる。
【0011】
端子台に複数の端子が並べられており、複数の配線が並べられて接続される。各配線に合わせて凹部が並べて形成される。配線ごとに凹部を通過し、シール板の他の部分は開口部の封止をおこなう。
【0012】
筐体の内面からシール板の端部に配置された板状部を備える。開口部からシール板までを板状部で封止する。
【0013】
筐体に通気孔を設ける。通気孔を介して筐体の内外を気流が通過し、電子部品を冷却する。
【0014】
シール板は絶縁体で構成される。配線や端子に対するシール板の絶縁を確保する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、シール板によって封止をおこなっている。シール板の凹部を配線が通過し、その他の部分で封止をおこなっており、配線同士の間が隙間になることはなく、従来よりも封止割合を高くできる。封止割合を高くできることによって、通気孔を通った気流による電子部品の冷却が設計通りになりやすい。凹部を種々の配線に適用できる形状にすることにより、汎用性の高いシール板となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電装品の構成を示す図である。
【図2】電装品のシール構造を示す図であり、(a)は側面図、(b)は上面図である。
【図3】シール板を示す図であり、(a)は方形の凹部を有するシール板、(b)は円弧の凹部を有するシール板の図である。
【図4】シール板をスライドさせて取り付けるための溝を設けた図である。
【図5】シール板を開口部に隣接させた電装品の構成を示す図である。
【図6】シール板を開口部にはめ込んだ電装品の構成を示す図である。
【図7】シール板に柔軟性の部材を取り付けた図であり、(a)はシール板の正面図、(b)はシール板を端子台に取り付けた図である。
【図8】従来の電装品のシール構造を示す図である。
【図9】従来の配線の周囲にできる隙間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の電装品のシール構造について図面を用いて説明する。
【0018】
図1、図2に示す電装品10は、電子部品が収納された筐体12、筐体12の内部から外部に引き出された配線14、配線14を接続する端子台16、筐体12の内部を外部から封止するためのシール板18を備える。
【0019】
筐体12は、電子部品が収納される容器20および容器20の上部開口を閉じる蓋体22とを備える。筐体12は容器20を蓋体22で閉じることによって箱形になる。筐体12内に収納される電子部品は、IGBTやFWDなどの高発熱のパワー半導体が挙げられる。なお、図1では電子部品を省略している。
【0020】
容器12の側壁に開口部24が設けられ、配線14が開口部24を通過する。配線14は、筐体12内の電子部品と外部の電源や回路とを接続するものである。例えば筐体12内のインバーター回路と筐体12外のモーターの巻線とが接続される。配線14の端部は平坦であり、かつ環状またはU字形状になっている。配線14は、ワイヤーハーネスの接続端子が取り付けられるピンであっても良い。
【0021】
端子台16は、筐体12の開口部24付近に設けられる。端子台16としては中継端子台が挙げられる。端子台16を介して外部から電子部品に配線14が接続される。端子台16は、箱形の台26に端子28を取り付けたものである。
【0022】
台26における筐体12の開口部24側の側部は完全な板状にして、開口などの空間を設けない。台26は、後述するシール板18の凹部36の位置であっても、空間がないことによって外部に対する封止機能を備えることになる。
【0023】
端子28が2列に並んでおり、対向する端子28同士が台26の内部で電気的に接続されている。ネジが端子28の一部になっており、配線14の端部がネジによって端子28に取り付けられる。各端子28を絶縁性の仕切り板30で区切り、配線14同士が短絡しないようにしている。台26の両端にも仕切り板30を有し、外部からの短絡を防止する。台26の上方と配線14の方向のみ仕切り板30なしで開放されている。
【0024】
端子28はネジを使用した端子以外に、差し込み式の端子など、他の端子であっても良い。対向する端子28が1対1で対応する以外に、1対2などの他の対応であっても良い。さらに、端子28の並び方も2列ではなく、1列に端子28が並べられても良い。
【0025】
端子台16の側部における筐体12の開口部24側にシール板18が取り付けられる。シール板18は、方形の板体32の一辺に複数の帯状部34を設け、帯状部34同士の間を凹部36にしたものである(図3(a))。帯状部34によって、シール板18の一部が櫛歯状になっている。帯状部34の先端は、容器12の底面の方向を向いている。板体32は蓋体22に接する高さにして、外部に対する防水および防塵機能を高める。板体32および帯状部34によって、端子台16の設けられた位置における筐体21の外部と通じる空間を封止する。
【0026】
配線14はシール板18の凹部36を通過する。凹部36の幅は配線14とほぼ同じか、少し大きくする。凹部36の底40(板体32の一辺)が配線14の上部に接するか、配線14の上部から少し隙間が形成される位置になるようにする。配線14とシール板18との間に隙間38が生じるが、配線14同士の間には帯状部34があり、従来のように配線14同士の間が隙間になることはなく、従来よりも隙間38が小さい。種々の配線14に適用した場合に、配線14によってはシール板18と接する場合もある。種々の配線14に使用でき、汎用性の高いシール板18になるようにする。
【0027】
シール板18の凹部36は方形だけでなく、凹部36の底40を配線14の形状に合わせて湾曲させても良い(図3(b))。シール板18と配線14との隙間38を狭くすることができる。凹部36の数は、配線14の本数に応じて適宜変更する。
【0028】
端子28が複数並べられていても、使用しない端子28が存在する場合がある。使用しない端子28には配線14がないため、使用しない端子28に対応する位置の凹部36は形成せずに、帯状部34同士の間を塞ぐ。配線14ごとに凹部36が設けられる。
【0029】
シール板18は、配線14や端子28との絶縁を確保するために、絶縁体で構成されることが好ましい。シール板18は、配線14を端子28に取り付けた後、帯状部34を台26の側部にネジ止めで取り付ける。また、筐体12または端子台16に溝42を設け、シール板18をスライドさせながら溝42にはめ込んでも良い(図4)。
【0030】
筐体12の内面からシール板18の端部まで板状部44が設けられる。また、板状部44は、容器20の底面から蓋体22までの高さを有する。開口部24からシール板18までの封止をおこなう。シール板18の端部ではなく、端子台16に板状部44が取り付けられてもよい。
【0031】
また、端子台16に設けられた仕切り板30がシール板18、板状部44および蓋体22に接するようにしても良い。シール板18と仕切り板30によって封止をおこなうことができる。
【0032】
電子部品を冷却する気流を通すための通気孔46が筐体12に設けられる。図1では容器20に通気孔46を設けているが、電子部品の位置によっては蓋体22に設けても良い。従来に比べて配線14の周囲の隙間38が小さいため、設計と異なる気流が起きにくい。設計通りに電子部品を冷却することができる。
【0033】
以上のように、本発明はシール板18によって従来よりも封止の割合を高くできる。種々の配線14にあうようにシール板18の凹部36を形成することによって、汎用性の高いシール板18になる。従来よりもシール板18による封止性能が高いため、電子部品の冷却のための通風も設計通りにおこなうことができる。
【0034】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。シール板18を開口部24に隣接させ、板状部44を廃止した電装品50であっても良い(図5)。また、端子台16を容器20の側壁に沿うように収納し、開口部24にシール板18が嵌められた電装品52であっても良い(図6)。板状部44を設けないため、製造が簡単である。
【0035】
シール板18'の凹部36の底40およびその近傍に柔軟性の部材54を取り付けても良い(図7(a))。シール板18'を端子台16に取り付けたとき、柔軟性の部材54が配線14に押し当てられ、柔軟性の部材54が配線14の外形に応じて変形する(図7(b))。柔軟性の部材54によって、配線14の周囲の隙間を塞いだり、小さくしたりする。配線14の種類に関係なく、板体32と配線14との間の隙間を塞ぐことができ、汎用性が高い。
【0036】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【符号の説明】
【0037】
10、50、52:電装品
12:筐体
14:配線
16:端子台
18、18':シール板
20:容器
22:蓋体
24:開口部
26:台
28:端子
30:仕切り板
32:板体
34:帯状部
36:凹部
38:隙間
40:凹部の底
42:溝
44:板状部
46:通気孔
54:柔軟性の部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が収納された筐体と、
前記筐体の内部から外部に引き出された配線と、
前記筐体の内部に収納され、電子部品と配線とを接続する端子を備えた端子台と、
前記筐体における配線の通過部分に形成された開口部と、
前記配線の通過する位置に凹部が形成され、端子台における筐体の開口部側に取り付けられた板状のシール板と、
を備えた電装品のシール構造。
【請求項2】
前記端子台に複数の端子が並べられて配線が接続されており、配線ごとに凹部を形成した請求項1の電装品のシール構造。
【請求項3】
前記筐体の内面からシール板の端部に配置された板状部を備えた請求項1または2の電装品のシール構造。
【請求項4】
前記筐体に設けられ、電子部品を冷却する気流の通る通気孔を備えた請求項1から3のいずれかの電装品のシール構造。
【請求項5】
前記シール板が絶縁体で構成された請求項1から4のいずれかの電装品のシール構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−105965(P2013−105965A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250239(P2011−250239)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】