説明

電解コンデンサ劣化診断システムおよび電解コンデンサ劣化診断方法

【課題】制御装置に組み込まれた電解コンデンサを回路から取り外さず外部から劣化診断ができ、また、制御装置内の複数個の被診断コンデンサを短時間に効率よく診断を自動的に行う電解コンデンサ劣化診断システムおよび電解コンデンサ劣化診断方法を提供する。
【解決手段】複数の異なる誘電正接の電解コンデンサ2sを用いて、単体での誘電正接tanδsとそれぞれの構成回路3に搭載された状態での誘電正接tanδsmとの相関関係から推定式を構成回路3毎にそれぞれ予め求めて記憶し、構成回路3に搭載された状態で被診断電解コンデンサ2の静電正接tanδmを測定し、測定値とその構成回路3を特定する情報から被診断電解コンデンサ2単体時の誘電正接tanδを推定式に基づいて推定し、予め記憶している劣化判定値と比較することにより劣化度を診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサの劣化度を診断する電解コンデンサ劣化診断システムおよび電解コンデンサ劣化診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電解コンデンサの劣化度診断は、電解コンデンサに流れる電流リップル、および電圧リップルの大小により劣化度を診断している(たとえば、特許文献1参照)。
また、電解コンデンサ単体の状態で、予め電解コンデンサの特性である静電容量、tanδ、インピーダンスのいずれかを時系列に測定したデータを準備し、被診断電解コンデンサの測定値と比較し、電解コンデンサの劣化度を診断するものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
図5は、第1従来技術を示す電解コンデンサの劣化診断システムの機能ブロック図である。
図5において、52は順変換回路、53は逆変換回路、54は電解コンデンサ、55は電流検出用ホール素子、56aは電圧検出部、56bは電流検出部、57a、57bは比較器、58a、58bはANDである。
以下、図5を用いて、第1従来技術である電解コンデンサの劣化診断システムの機能を説明する。
電圧検出部56aは、電圧リップルを検出し、電流検出部56bは、電流リップルを検出している。比較器57aは、検出した電圧リップル値と電圧リップル判定値を比較し、比較器57bは、検出した電流リップル値と電流リップル判定値を比較している。
【0004】
図6は、第2従来技術を示す電解コンデンサの劣化診断システムの構成図である。
図6において、62は被診断電解コンデンサ、63は計測部、64は劣化判定部、65は時系列に測定された測定値のデータベース、66は診断部、67は判定結果の表示部である。
以下、図6を用いて、第2従来技術である電解コンデンサの劣化診断システムの動作を説明する。
計測部63で単体の電解コンデンサ62の静電容量、tanδ、漏れ電流、インピーダンスのいずれかの電気的特性値を計測した結果を時系列的にデータベース65に記憶する。
劣化判定部64は、被測定電解コンデンサ62を単体の状態で測定し、測定値とデータベース65に記憶された計測結果と比較して電解コンデンサの劣化を判定している。
【0005】
このように、従来の電解コンデンサ劣化診断システムでは、電圧と電流のリップル値を判定値と比較して診断している。あるいは、電解コンデンサが単体の状態で測定し、時系列の記録されたデータと比較し、判定しているものもある。
【特許文献1】特開平7−222436号公報(第2−3頁、第1図)
【特許文献2】特開2002−267708号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電解コンデンサ劣化診断システムは、電解コンデンサ単体において診断するもので、制御装置に組み込まれている状態では、診断不可能であるという問題があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、制御装置に組み込まれた電解コンデンサを回路から取り外すことなく、制御装置の外部から劣化診断を可能とする電解コンデンサ劣化診断システムおよび電解コンデンサ劣化診断方法を提供することを目的とする。さらに、制御装置内の複数個の被診断コンデンサを短時間に効率よく自動的に診断を行う電解コンデンサ劣化診断システムおよび電解コンデンサ劣化診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するため、本発明は、次のようにしたのである。
請求項1に記載の発明は、被診断電解コンデンサを有する複数の構成回路を備えた制御装置と、前記被診断電解コンデンサの誘電正接を測定する計測器と、前記被診断電解コンデンサの誘電正接の劣化判定値を記憶し、前記被診断電解コンデンサの誘電正接と前記劣化判定値を比較して劣化度を判定するパーソナルコンピュータと、を備えた電解コンデンサ劣化診断システムにおいて、前記複数の構成回路が有する前記被診断電解コンデンサの誘電正接測定用の出力部を前記制御装置に有し、前記被診断電解コンデンサの誘電正接測定時に前記出力部と接続する測定専用治具と、前記測定専用治具を介して接続される前記複数の構成回路を切り替えて前記計測器の測定入力部に出力する入力切替装置と、を備える構成とし、前記パーソナルコンピュータは、予め、複数の異なる誘電正接の電解コンデンサについて単体で測定した誘電正接と前記複数の構成回路に装着して前記計測器で測定した誘電正接に基づいて、前記単体での誘電正接とそれぞれの前記構成回路に搭載された状態での誘電正接との相関関係から推定式を前記構成回路毎にそれぞれ求めて記憶し、前記計測器は、前記入力切替装置からの信号に基づいて前記構成回路に搭載された状態での前記被診断電解コンデンサの静電正接を測定し、前記パーソナルコンピュータは、前記計測器で測定した前記被診断電解コンデンサの誘電正接と測定時の前記構成回路を特定する情報から前記被診断電解コンデンサ単体時の誘電正接を前記推定式に基づいて推定し、前記劣化判定値と比較することにより劣化度を診断することを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電解コンデンサ劣化診断システムにおいて、前記パーソナルコンピュータは、前記入力切替回路に対して前記測定器へ出力する前記構成回路を選択する動作と、前記測定器に誘電正接の測定開始及び終了の指示および選択した前記構成回路と誘電正接測定値から成るデータを送信する指令を行い前記データを記憶する動作と、前記データと前記推定式に基づいて前記被診断電解コンデンサ単体時の誘電正接を推定し、前記劣化判定値と比較して劣化判定する動作と、を自動的に前記構成回路の数だけ実行するプログラムを備えたことを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、各仕様の電解コンデンサについて単体での誘電正接の劣化判定値を記憶し、被診断電解コンデンサの誘電正接と前記劣化判定値を比較して劣化度を判定する手順を備え、前記被診断電解コンデンサを有する複数の構成回路を備えた制御装置における電解コンデンサ劣化診断方法において、予め、複数の異なる誘電正接の電解コンデンサをサンプルとして用い単体で第1の誘電正接を測定するステップと、予め、前記複数の異なる誘電正接の電解コンデンサを前記構成回路に装着した状態で第2の誘電正接を測定するステップと、予め、全ての前記構成回路について、前記第1の誘電正接と前記第2の誘電正接との相関関係から推定式を求めて記憶するステップと、前記被診断電解コンデンサの誘電正接を前記構成回路に装着されたままの状態で測定するステップと、測定した前記被診断電解コンデンサの誘電正接および測定時の前記構成回路を特定する情報から前記被診断電解コンデンサ単体時の誘電正接を前記推定式に基づいて推定するステップと、推定した前記被診断電解コンデンサ単体時の誘電正接と前記劣化判定値と比較することにより劣化度を診断するステップと、を備えたことを特徴としている。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項3に記載の電解コンデンサ劣化診断方法において、前記被診断電解コンデンサの誘電正接を前記構成回路に装着されたままの状態で測定する前記ステップ、測定した前記被診断電解コンデンサの誘電正接および測定時の前記構成回路を特定する情報から前記被診断電解コンデンサ単体時の誘電正接を前記推定式に基づいて推定する前記ステップ、推定した前記被診断電解コンデンサ単体時の誘電正接と前記劣化判定値と比較することにより劣化度を診断する前記ステップ、を予め定めた順番に従って、前記被診断電解コンデンサを搭載した前記構成回路の数だけ自動的に繰り返すステップを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によると、制御装置に組み込まれた電解コンデンサを回路から取り外すことなく、制御装置の外部から劣化診断を可能とする電解コンデンサ劣化診断システムが得られる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明によると、請求項1に記載の発明の効果に加え、制御装置内の複数個の被診断コンデンサを短時間に効率よく自動的に診断を行う電解コンデンサ劣化診断システムが得られる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明によると、制御装置に組み込まれた電解コンデンサを回路から取り外すことなく、制御装置の外部から劣化診断を可能とする電解コンデンサ劣化診断方法が得られる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明によると、請求項3に記載の発明の効果に加え、制御装置内の複数個の被診断コンデンサを短時間に効率よく自動的に診断を行う電解コンデンサ劣化診断方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の方法の具体的実施例について、図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の第1実施例を示す電解コンデンサ劣化診断システムの構成図である。
図1において、1は制御装置、2は 被診断電解コンデンサ、3は構成回路、4は測定用専用治具、5は入力切替装置、6は電解コンデンサの誘電正接を測定するLCRメータなどの測定器、7は パーソナルコンピュータ、8は出力端子、9は測定ケーブル、10はRS232Cの通信ケーブル、11は通信用端子、15は出力部である。
以下、図1を用いて、本実施例の電解コンデンサ劣化診断システムの構成を説明する。
制御装置1は、被診断電解コンデンサ2が組み込まれた構成回路3を複数備えている。
測定用専用治具4は、複数の構成回路3と入力切替装置5の接続を容易にするものである。
入力切替装置5の出力端子8は測定ケーブル9により測定器6に入力するようになっている。
パーソナルコンピュータ7は、RS232Cの通信ケーブル10により、測定器6の通信用端子11と、入力切替装置5の通信用端子11に繋がっている。また、パーソナルコンピュータ7は、仕様の異なる被診断電解コンデンサ2毎に、それぞれ単体での誘電正接tanδの劣化判定値を記憶している。
【0017】
図2は、本発明の第1実施例を示す電解コンデンサ劣化診断方法のフローチャートであり、制御装置1内に組み込まれた被診断電解コンデンサ2の誘電正接tanδを推定する処理手順を示すフローチャートである。
以下、図1、2を用いて本発明の電解コンデンサ劣化診断方法について順を追って説明する。尚、誘電正接の記号として、被診断電解コンデンサ2の単体時の誘電正接をtanδ、被診断電解コンデンサ2を構成回路3に搭載した状態で測定した誘電正接をtanδm、複数の異なる誘電正接の電解コンデンサをサンプルとして用いその単体時の誘電正接をtanδsすなわち、n個の時はそれぞれtanδs1、tanδs2・・・tanδsn、複数の異なる誘電正接の電解コンデンサをサンプルとして用い構成回路3に搭載した状態で測定した誘電正接をtanδsmすなわち、n個の時はそれぞれtanδsm1、tanδsm2・・・tanδsmnとする。
先ず、予め、ステップST1で、複数の異なる誘電正接の電解コンデンサをサンプルとして用い単体で誘電正接tanδsを測定し、ステップST2で、測定用専用時具4で制御装置1と入力切替装置5を接続し、全ての構成回路3に対してそれぞれ、入力切替装置5の端子出力8から測定器6で、複数の異なる誘電正接の電解コンデンサについて誘電正接tanδsmを測定し、ステップST3で、全ての構成回路3各々について、誘電正接tanδsと誘電正接tanδsmとの相関関係からtanδの推定式を求めて記憶する。すなわち、予め、サンプル電解コンデンサ単体の tanδsと構成回路3の容量、抵抗と 測定専用治具4と入力切替装置5の抵抗の影響を受けた制御装置1の外部の測定結果であるtanδsmを複数個測定し、その相関関係から被診断電解コンデンサ2のtanδと制御装置外部の測定結果tanδsmに関するtanδの推定式を次式のように作成する。
tanδの推定式=(tanδsm−D)/A、但し、DおよびAは定数である。
尚、このようにして作成した推定式は、実験によって、寄与率が1に近い(通常0.98以上)ことを確認しており、統計的に信頼できる推定式である。
次に、ステップST4で、測定用専用時具4で制御装置1と入力切替装置5を接続し、入力切替装置5の端子出力8から測定器6で、被診断電解コンデンサ2の誘電正接を構成回路3に装着されたままの状態で測定する。この被診断電解コンデンサ2単体の tan δは、構成回路の容量、抵抗と 測定専用治具4と入力切替装置5の抵抗の影響をうけて、制御装置外部の測定結果であるtanδmとなる。
次に、ステップST5で、測定した被診断電解コンデンサ2の誘電正接tanδmおよび測定時の構成回路3を特定する構成回路番号などの情報から被診断電解コンデンサ2単体時の誘電正接tanδをtanδの推定式に代入して求める。
次に、ステップST6で、推定した被診断電解コンデンサ2単体時の誘電正接tanδと予め記憶している対象とするコンデンサの劣化判定値と比較することにより劣化度を診断する。
次にステップST7で、診断結果を画面表示あるいは印刷出力する。
以上のステップST4からステップST7を、被診断電解コンデンサ2を搭載している構成回路3の数だけ繰り返す。
【0018】
図3は、本発明の第1実施例を示す電解コンデンサ劣化診断システムにおける推定式作成方法の説明図である。
図3において、2sはサンプル電解コンデンサ、13はサンプル電解コンデンサ単体で測定した誘電正接tanδsのデータ、14は入力切替装置5の出力端子8で測定したサンプル電解コンデンサ2sの誘電正接tanδsmのデータ、16は誘電正接tanδの構成回路毎の推定式である。尚、図1と同じ説明符号のものは図1と同じ構成要素を示すものとし、その説明は省略する。
以下、図3を用いて本実施例の電解コンデンサ劣化診断システムにおける誘電正接tanδの推定式の作成方法を説明する。
先ず、異なる誘電正接tanδsのサンプル電解コンデンサ2sを複数個(例えば、n個のC1、C2、・・・Cn)用意し、測定器6で誘電正接を測定し、サンプル電解コンデンサ2s単体の誘電正接tanδsのデータ13を複数個(tanδs1、tanδs2、・・・tanδsn)を得る。
次に、制御装置1の被診断電解コンデンサ2を有する構成回路3の被診断電解コンデンサ2の取付位置に、先に単体で誘電正接tanδsを測定したサンプル電解コンデンサ2s(C1、C2、・・・Cn)を順に取付け、制御装置1の構成回路3の出力部と入力切替装置5を接続する測定用専用治具4を装着し、測定器6により制御装置1に実装した状態で測定した誘電正接tanδsmのデータ14を複数個(tanδsm1、tanδsm2、・・・tanδsmn)得る。
サンプル電解コンデンサ2s単体のtanδsのデータ13(tanδs1、tanδs2、・・・tanδsn)と、測定器6により制御装置1に実装した状態で測定したtanδsmのデータ14(tanδsm1、tanδsm2、・・・tanδsmn)の相関関係から、被診断電解コンデンサ2を制御装置に実装した状態で測定した誘電正接tanδmから被診断電解コンデンサ2単体時での誘電正接tanδを推定する推定式16を求める。これを構成回路3の数だけ繰り返し、構成回路3の識別番号とともにその推定式を記憶する。
このように、本実施例に係る電解コンデンサ劣化診断システムは、サンプルコンデンサ2s単体でのtanδsと構成回路3および測定用専用ケーブル4を介して実測したtanδmにより推定式16を求めているので、いかなる構成回路3においても被診断電解コンデンサ2のtanδを推定することができ、前述したように寄与率が1に近いので、信頼度の高い推定が可能になるのである。
尚、本実施例では、複数の異なる誘電正接の電解コンデンサをサンプルとして用いたが、1つの電解コンデンサに直列に抵抗、例えば0.1オーム〜1オーム程度を接続して、単体のtanδを変更したものをサンプルとして用いてもよい。
【実施例2】
【0019】
本実施例は第1実施例における電解コンデンサ劣化診断の処理手順のうち、ステップST4からステップST7を被診断電解コンデンサ2を搭載した構成回路3の数だけ自動的に繰り返し実施するようにしたものである。
図4は、本発明の第2実施例を示す電解コンデンサ劣化診断方法の処理手順の説明図である。
図4において、12は記憶装置、18は被診断電解コンデンサのtanδ推定部、20は劣化判定部、21は出力部、22はプログラム、23は回路切替制御部、24は測定オン/オフおよびデータ送信の指令、26は構成回路と測定データ、27は構成回路毎の推定式、28は電解コンデンサの仕様毎の劣化判定値である。尚、図1と同じ説明符号のものは、図1と同じ構成要素を示すものとし、その説明は省略する。
以下、図4を用いて本実施例の電解コンデンサ劣化診断方法の処理手順を説明する。
先ず、診断をスタートすると、パーソナルコンピュータ7の プログラム22により、回路切替制御がなされ最初の構成回路3を選択し、測定器6に測定オン/オフおよびデータ送信の指令24 を行う。測定器6により測定された誘電正接のデータは、構成回路3毎に付けられた構成回路番号25とともに構成回路と測定データ26として、パーソナルコンピュータ7の記憶装置12に記憶される。
次に、被診断電解コンデンサtanδ推定部18は、構成回路と測定データ26と予め第1実施例で述べた手順で作成され記憶している構成回路毎の推定式27を読み出し、被診断電解コンデンサ2のtanδを推定する。
次に、劣化判定部20は、記憶装置12より電解コンデンサの仕様毎の劣化判定値28を読み出し、被診断電解コンデンサ2の劣化判定を行う。
以上の動作を自動的に被診断電解コンデンサを搭載した構成回路3の数だけ実行し、出力部21は、判定結果を画面表示または印刷出力する。
【0020】
このように、本実施例に係る電解コンデンサ劣化診断システムおよび電解コンデンサ劣化診断方法は、自動的に被診断電解コンデンサ2を搭載した構成回路3の数だけ診断する手順をとるので、短時間に診断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の電解コンデンサ劣化診断システムおよび電解コンデンサ劣化診断方法は、被診断電解コンデンサと測定点までの様々な測定値を変化させる要因をことごとく含めた条件で推定式を作るという手順をとるため、いかなる構成回路に組み込まれた電解コンデンサにも適用することができて、統計的に高い寄与率を有する推定式を作成可能なため、新製品や既設の制御盤の電解コンデンサに寿命劣化診断機能を組み込むという用途にも適用できる。電解コンデンサを有する新設および既設いずれの制御盤の予防診断装置にも好適である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施例を示す電解コンデンサ劣化診断システムの構成図
【図2】本発明の第1実施例を示す電解コンデンサ劣化診断方法のフローチャート
【図3】本発明の第1実施例を示す電解コンデンサ劣化診断システムにおける推定式作成方法の説明図
【図4】本発明の第2実施例を示す電解コンデンサ劣化診断方法の処理手順の説明図
【図5】第1従来技術を示す電解コンデンサの劣化診断システムの機能ブロック図
【図6】第2従来技術を示す電解コンデンサの劣化診断システムの構成図
【符号の説明】
【0023】
1 制御装置
2 被診断電解コンデンサ
2s サンプル電解コンデンサ
3 構成回路
4 測定用専用治具
5 入力切替装置
6 測定器
7 パーソナルコンピュータ
8 出力端子
9 測定ケーブル
10 通信ケーブル
11 通信用端子
12 記憶装置
13 サンプル電解コンデンサ単体で測定したtanδsのデータ
14 入力切替装置5の出力端子8で測定したtanδsmのデータ
15 出力部
16、27 構成回路毎の推定式
18 被診断電解コンデンサのtanδ推定部
20、64 劣化判定部
21 出力部
22 プログラム
23 回路切替制御部
24 測定オン/オフおよびデータ送信の指令
26 構成回路と測定データ、
28 電解コンデンサの仕様毎の劣化判定値
52 順変換回路
53 逆変換回路
54 電解コンデンサ
55 電流検出用ホール素子
56a 電圧検出部
56b 電流検出部
57a、57b 比較器
58a、58b AND
62 被診断電解コンデンサ
63 計測部
65 データベース
66 診断部
67 判定結果の表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被診断電解コンデンサ(2)を有する複数の構成回路(3)を備えた制御装置(1)と、
前記被診断電解コンデンサ(2)の誘電正接(tanδ)を測定する計測器(6)と、
前記被診断電解コンデンサ(2)の誘電正接(tanδ)の劣化判定値を記憶し、前記被診断電解コンデンサ(2)の誘電正接(tanδ)と前記劣化判定値を比較して劣化度を判定するパーソナルコンピュータ(7)と、
を備えた電解コンデンサ劣化診断システムにおいて、
前記複数の構成回路(3)が有する前記被診断電解コンデンサ(2)の誘電正接(tanδ)測定用の出力部(15)を前記制御装置(1)に有し、
前記被診断電解コンデンサ(2)の誘電正接(tanδ)測定時に前記出力部(15)と接続する測定専用治具(4)と、
前記測定専用治具(4)を介して接続される前記複数の構成回路(3)を切り替えて前記計測器(6)の測定入力部に出力する入力切替装置(5)と、を備える構成とし、
前記パーソナルコンピュータ(7)は、予め、複数の異なる誘電正接の電解コンデンサ(2s)について単体で測定した誘電正接(tanδs)と前記複数の構成回路(3)に装着して前記計測器(6)で測定した誘電正接(tanδsm)に基づいて、前記単体での誘電正接(tanδs)とそれぞれの前記構成回路(3)に搭載された状態での誘電正接(tanδsm)との相関関係から推定式を前記構成回路(3)毎にそれぞれ求めて記憶し、
前記計測器(6)は、前記入力切替装置(5)からの信号に基づいて前記構成回路(3)に搭載された状態での前記被診断電解コンデンサ(2)の静電正接(tanδm)を測定し、
前記パーソナルコンピュータ(7)は、前記計測器(6)で測定した前記被診断電解コンデンサ(2)の誘電正接(tanδm)と測定時の前記構成回路(3)を特定する情報から前記被診断電解コンデンサ(2)単体時の誘電正接(tanδ)を前記推定式に基づいて推定し、前記劣化判定値と比較することにより劣化度を診断することを特徴とする電解コンデンサ劣化診断システム。
【請求項2】
前記パーソナルコンピュータ(7)は、
前記入力切替回路(5)に対して前記測定器(6)へ出力する前記構成回路(3)を選択する動作と、
前記測定器(6)に誘電正接の測定開始及び終了の指示および選択した前記構成回路(3)と誘電正接測定値から成るデータを送信する指令を行い前記データを記憶する動作と、
前記データと前記推定式に基づいて前記被診断電解コンデンサ(2)単体時の誘電正接(tanδ)を推定し、前記劣化判定値と比較して劣化判定する動作と、を自動的に前記構成回路(3)の数だけ実行するプログラム(22)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ劣化診断システム。
【請求項3】
各仕様の電解コンデンサについて単体での誘電正接(tanδ)の劣化判定値を記憶し、
被診断電解コンデンサ(2)の誘電正接(tanδ)と前記劣化判定値を比較して劣化度を判定する手順を備え、
前記被診断電解コンデンサ(2)を有する複数の構成回路(3)を備えた制御装置(1)における電解コンデンサ劣化診断方法において、
予め、複数の異なる誘電正接の電解コンデンサ(2s)をサンプルとして用い単体で第1の誘電正接(tanδs)を測定するステップ(ST1)と、
予め、前記複数の異なる誘電正接の電解コンデンサ(2s)を前記構成回路(3)に装着した状態で第2の誘電正接(tanδsm)を測定するステップ(ST2)と、
予め、全ての前記構成回路(3)について、前記第1の誘電正接(tanδs)と前記第2の誘電正接(tanδsm)との相関関係から推定式を求めて記憶するステップ(ST3)と、
前記被診断電解コンデンサ(2)の誘電正接(tanδm)を前記構成回路(3)に装着されたままの状態で測定するステップ(ST4)と、
測定した前記被診断電解コンデンサ(2)の誘電正接(tanδm)および測定時の前記構成回路(3)を特定する情報から前記被診断電解コンデンサ(2)単体時の誘電正接(tanδ)を前記推定式に基づいて推定するステップ(ST5)と、
推定した前記被診断電解コンデンサ(2)単体時の誘電正接(tanδ)と前記劣化判定値と比較することにより劣化度を診断するステップ(ST6)と、を備えたことを特徴とする電解コンデンサ劣化診断方法。
【請求項4】
前記被診断電解コンデンサ(2)の誘電正接(tanδm)を前記構成回路(3)に装着されたままの状態で測定する前記ステップ(ST4)、測定した前記被診断電解コンデンサ(2)の誘電正接(tanδm)および測定時の前記構成回路(3)を特定する情報から前記被診断電解コンデンサ(2)単体時の誘電正接(tanδ)を前記推定式に基づいて推定する前記ステップ(ST5)、推定した前記被診断電解コンデンサ(2)単体時の誘電正接(tanδ)と前記劣化判定値と比較することにより劣化度を診断する前記ステップ(ST6)、を予め定めた順番に従って、前記被診断電解コンデンサ(2)を搭載した前記構成回路(3)の数だけ自動的に繰り返すステップを有することを特徴とする請求項3に記載の電解コンデンサ劣化診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−224533(P2008−224533A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65497(P2007−65497)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】