説明

電解洗浄装置及び電解洗浄方法

【課題】洗浄効果を向上させることができる電解洗浄装置及び電解洗浄方法を提供する。
【解決手段】電解洗浄装置1及び電解洗浄方法は、陽極10と洗浄対象物Mを保持する陰極20とを電解洗浄液中に浸漬し、陽極10及び陰極20間に通電して洗浄対象物を電解洗浄する電解洗浄装置1及び電解洗浄方法であって、前記陽極10は、陰極20に対する通電量を変更可能な陽極10を備え、前記陽極10と前記陰極20との通電量が時間的に変化するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解洗浄装置及び電解洗浄方法に関し、より詳しくは、Feや鋼、ステンレス鋼、Ni、Ti、希金属類を材質とする精密金型等の金属部品を腐食又は溶解させることなく、樹脂、ガラス、ゴム、研磨剤、スマット等の付着汚れや、錆、酸化皮膜等の金属酸化物、変色等の汚れを好適に除去することのできる電解洗浄装置及び電解洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金型を用いて高温・高圧下で樹脂成形を繰り返すと、金型に樹脂や添加剤が熱分解して発生したガスが焼きついたり、焼けただれた樹脂が付着したりし、場合によっては腐食性物質を含む酸化皮膜が形成されることがある。これを適切な方法でメンテナンスせずに放置すると、金型が腐食して破損してしまうこともある。従来、これらの汚れが付着した金型等の金属部品は、手作業で磨いて取り除くといった方法や超音波洗浄によりメンテナンスされることが多かった。しかし、これらの方法は、作業が面倒であり、しかも、結合力の強い汚れは充分に除去することができなかった。
【0003】
そこで、このような結合力の強い汚れをも効果的に除去することのできる洗浄方法として、電解を利用した洗浄方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0004】
電解洗浄は、電解洗浄液を電解したときに発生するガスによって汚れを押し上げて剥離することが基本原理となっている。また、一般的に、電解洗浄液にはキレート剤等の添加剤が加えられており、これら添加剤が電解洗浄液中に溶解した金属イオンを配位して封鎖することで、金属イオンが洗浄対象物に焼けや変色等の損傷を与えるのを防止している。
【0005】
ところが、これら添加剤は、電解反応によって徐々に分解・消耗されていくものであり、一定量以上洗浄液成分が分解・消耗すると、上述したような金属イオンを封鎖する機能が急速に失われ、洗浄対象物に損傷が生じるようになる。従って、使用前の状態からこの状態になるまでの期間が電解洗浄液の寿命となる。なお、電解洗浄液の寿命と通電量は、ファラデーの電気分解の法則に従い、反比例の関係にあることが知られている(例えば、非特許文献1)。即ち、通電量を増やせば寿命は短くなり、逆に通電量を減らせば寿命は長くなる。
【0006】
【特許文献1】特開平11−128853号公報
【特許文献2】特開平7−214570号公報
【特許文献3】特開平9−164533号公報
【非特許文献1】「プラスチックス」 日本プラスチックス工業連盟、58巻(2007年12月号)、p55−57
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、現在まで、洗浄効果と通電量とは比例関係にあると考えられてきた。従って、洗浄効果を高めるために、通電量を増加させる方法が採られていた。
【0008】
しかしながら、電解洗浄においては、ある通電量を超えると洗浄対象物に焼けや変色等の損傷が生じる可能性が急激に高まる場合があり、増加させることのできる通電量には限界があった。従って、洗浄効果を高める方法として、単純に通電量を増加させる従来法とは異なる方法が必要とされている。
【0009】
そこで、本発明は、洗浄効果を向上させることができる電解洗浄装置及び電解洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電解洗浄装置は、陽極と洗浄対象物を保持する陰極とを電解洗浄液中に浸漬し、陽陰極間に直流で通電して洗浄対象物を電解洗浄する電解洗浄装置であって、陽陰極間の通電量が時間的に変化するように制御可能に構成されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る電解洗浄方法は、陽極と洗浄対象物を保持する陰極とを電解洗浄液中に浸漬し、陽陰極間に直流で通電して洗浄対象物を電解洗浄する電解洗浄方法であって、前記陽陰極間の通電量が時間的に変化するように制御することを特徴とする。
【0012】
上記構成からなる電解洗浄装置及び電解洗浄方法によれば、陽陰極間の通電量が常時一定である従来の電解洗浄装置及び電解洗浄方法の場合に比べて、洗浄効果を向上させることができる。かかる効果が発揮される理由の一つとしては、通電量が常時変化することで、陰極に保持された洗浄対象物における気体の発生状態が常時変化するため、剥離作用等の洗浄作用を洗浄対象物に付着した汚れに対して効果的に加えることができるということが考えられる。
【0013】
また、前記通電量は、前記陽陰極間に印加する電圧によって制御される構成が好ましい。
【0014】
このようにすれば、通電量の制御を電圧の制御によって行うことができるため、通電量の制御が容易となる。
【0015】
また、上記構成においては、大きさの異なる複数の電圧を前記陽陰極間に印加可能に構成され、これら複数の電圧がが所定時間毎に交互に切り替えられる構成が好ましい。
【0016】
このようにすれば、通電量を容易に数値制御することができる。
【0017】
なお、前記陽陰極間に印加される電圧の時間平均値は、3.25V以上6.25V以下となるように設定される構成が好ましい。
【0018】
このようにすれば、電解洗浄液の寿命をより長く維持することができる。
【0019】
また、前記陽極は、Fe,Pt,Pd,Ir,Ru若しくはこれらの合金を用いて形成されること構成が好ましい。
【0020】
或いは、前記陽極は、Tiからなる陽極本体をPt,Pd,Ir,Ru若しくはこれらの合金によって被覆して形成される構成であってもよい。
【0021】
また、前記電解洗浄装置は、前記電解洗浄液を超音波振動させる超音波発生器を備える構成が好ましい。
【0022】
このようにすれば、電解洗浄液が超音波振動することにより洗浄対象物に付着した汚れの剥離を促進することができる。
【0023】
また、前記電解洗浄液は、電解質として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸ナトリウムの少なくともいずれか一つを含有し、キレート剤として、カルボキシレート基(COO−)及び窒素(N)原子で金属イオンを配位するキレート剤と、グルコン酸塩とを含有し、界面活性剤として、中性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン界面活性剤の少なくともいずれか一つを含有する構成が好ましい。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、洗浄効果を向上させることができる。従って、短い洗浄時間で電解洗浄を行うことができるため、長時間に亘って電解洗浄液を使用することが可能であるので、ランニングコストを低減でき、また、廃液の発生頻度を少なくして環境への負荷をも低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明に係る電解洗浄装置及び電解洗浄方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0026】
第一実施形態に係る電解洗浄装置1は、図1及び図2に示すように、陽極10と洗浄対象物Mを保持する陰極20とを電解洗浄液中に浸漬し、陽極10及び陰極20間に直流電流を流して洗浄対象物Mを電解洗浄するものである。以下では、まず、電解洗浄装置1自体の構成について概略的な説明を行う。前記電解洗浄装置1は、前記陽極10及び陰極20の他、筐体2と、該筐体2の上部に配置され、電解洗浄液を収容する洗浄槽3と、陽陰極(陽極10及び陰極20)間の通電量を時間的に変化させて給電できるように制御可能な電源4を筐体2の内部に備える。
【0027】
前記陽極10は、後述する金属の放電部分12aが洗浄槽3の内部に位置するように設けられ、電解洗浄の際には前記放電部分12aが電解洗浄液に浸漬される。具体的には、図2に示すように、前記陽極10は、洗浄槽3の上端の開口部から吊り下げられる。
【0028】
陽極10は、前記放電部分12aが水平面に沿う平面上に位置するように配置され、具体的には、前記放電部分12aを有する陽極体12と、該陽極体12を支持する支持体13とを備えて構成される。また、前記陽極10は、図3(A)にも示されるような部材であり、陽極体12を複数(例えば、4〜10個)有する。陽極体12としては、円形状の平面部分を有する円盤状金属(直径36mm)が用いられる。なお、陽極体12は、二つ一組で設けられる。また、陽極体12は、図3(b)に示すように、前記放電部分12aを除き、電解洗浄液中に浸漬される部分は外周を樹脂等の絶縁体12bによって被覆される。
【0029】
前記陽極体12は、支持体13に対する高さ位置を調整可能に構成され、任意の高さ方向位置で固定される。また、陽極体12は、金属の放電部分12aと洗浄対象物Mの上端面との間隔が20〜50mmとなるように配置され、特に、30mmが好ましい。このようにすると、洗浄対象物Mに焼けや変色等の損傷を発生されることなく、好適に洗浄を行うことができる。
【0030】
なお、前記陽極10(即ち、陽極体12)は、Feを用いて形成される。Feは、安価なため、電解洗浄装置1のコストダウンを図ることができる。ただし、電解洗浄液中に金属イオンが蓄積すると、酸化物などに変化して洗浄対象物Mに吸着する可能性が高まるため、これを防止する観点からは、陽極10(即ち、陽極体12)は、Pt,Pd,Ir,Ru等のイオン化傾向が小さい白金族金属、若しくはこれらの合金を用いて形成することが好ましい。さらに、陽極体12は、Tiからなる陽極本体をPt,Pd,Ir,Ru若しくはこれらの合金によって被覆して形成したものであってもよい。このようにすれば、高価な白金族金属の使用量を少なくすることができるため、経済的である。
【0031】
前記陰極20は、図2及び図4、図5に示すように、洗浄対象物と電気的に接続した状態で該洗浄対象物Mを支持する支持部材21と、該支持部材21を吊り下げる吊下部材22とを備えて構成される。また、前記支持部材21は、洗浄対象物Mと接触するように構成される金属の導電部分21aを有する。さらに、前記支持部材21は、該支持部材21の両面間を連通する空間部23を有する。このようにすれば、電解洗浄液が前記支持部材21に形成された空間部23を流通することができるため、支持部材21と洗浄対象物Mの隙間に消耗した電解洗浄液が滞留して電解洗浄液の分解成分が洗浄対象物Mに焼き付くのを好適に防止することができる。
【0032】
より具体的には、支持部材21は、図4に示すように、複数の棒状体24と、該複数の棒状体24を取り囲む枠体25とを備えて構成される。前記複数の棒状体24は、間隔を空けて平行に配置される。ただし、陰極としては、上述のものに限定されず、ステンレス等の金属製のトレイやかごとして設けられるものであってもよい。なお、支持部材21は、開口上端部(具体的には、枠体25の上端部)を樹脂等の絶縁体21bによって縁取りされている。また、吊下部材22は、支持部材21との接続部分22a及び電源4との接続部分22bを除き、樹脂等の絶縁体22cによって被覆されている。
【0033】
また、陰極20は、特に平板状の洗浄対象物Mを保持するのに適しており、具体的には、図5に示すような前記洗浄対象物Mを固定するための固定部材30が備えられる。該固定部材30は、前記支持部材21に着脱可能に取り付けられる取付部31と、前記洗浄対象物Mを固定する固定部32とを備え、該固定部32が洗浄対象物Mを前記支持部材21との間に挟み込むように構成される。
【0034】
前記取付部31は、前記支持部材21の下面に当接する当接部33a及び外周面に螺子部が形成され前記支持部材21の空間部23に挿通される挿通部33bを有する下側部材33と、下側部材33の挿通部33bが挿通される挿通孔を有し、前記支持部材21の上面に当接する上側部材34と、前記下側部材33及び上側部材34が前記支持部材21を挟み付けた状態で固定するためのナット35とを備える。また、前記固定部32は、前記下側部材33の挿通部33bが挿通される挿通孔を有し、挿通部33bに挿通された状態でナット36によって取付部31側に固定される。
【0035】
前記電解洗浄装置1には、電解洗浄以外にも前記電解洗浄液を超音波振動させて洗浄対象物の超音波洗浄を行うための超音波発生器(図示しない)が備えられている。該超音波発生器は、前記洗浄槽3の下部に設けられる。超音波洗浄は、電解洗浄と同時に又は交互に行うことができるが、電解洗浄と同時に行われるのが好ましい。
【0036】
このようにすれば、電解洗浄液が超音波振動することにより洗浄対象物Mに付着した汚れの剥離を促進することができる。具体的には、超音波振動によってキャビテーションが発生し、これによって汚れの剥離が促進されるとともに、電解反応が活性化される。従って、陽極体12と対面していない箇所や、凹んだ部分に対しても洗浄効果を高く発揮することができる。
【0037】
また、前記電解洗浄装置1は、前記電解洗浄液を加熱する加熱装置(図示しない)を備える構成が好ましい。なお、電解洗浄を行う液温は、20〜70℃が好ましく、この場合には、洗浄対象物Mが焼けや変色を生じることなく好適に洗浄を実施することができる。さらに、液温が50〜60℃の場合には、金属酸化皮膜、錆、樹脂付着物、ガス焼けなどの比較的結合の強い金型汚れに対しても、洗浄対象物Mに損傷を与えることなく短時間で最も効率よく洗浄することができる。
【0038】
また、前記電解洗浄装置1は、電解洗浄液を洗浄槽3から排出し、夾雑物を除去し、再度洗浄槽3内に投入する循環機構(図示しない)を備える。ここで、循環機構について具体的に説明する。前記洗浄槽3は、底部分から電解洗浄液が供給されるように構成されており、洗浄槽3が満杯となると、所定の高さ位置に設けられた排出部から電解洗浄液がオーバーフローするようになっている。電解洗浄の際には、洗浄対象物Mから剥離した付着物などの夾雑物や泡が発生するものであるが、電解洗浄液をオーバーフローさせることで、これら夾雑物や泡も電解洗浄液とともに洗浄槽3から排出される。排出された電解洗浄液は、例えばフィルターによる濾過等の周知の方法によって浄化処理され、浄化された電解洗浄液は再度前記洗浄槽3に供給される。
【0039】
なお、前記電解洗浄装置1によって洗浄される洗浄対象物Mは、例えば、フラットパネルディスプレイの導光板やシート状光学レンズ、携帯電話の超小型精密なカメラレンズ、車両用リフレクター等を射出成型する金型である。
【0040】
また、電解洗浄液としては、電解質と、キレート剤と、界面活性剤とを含有するものが用いられる。電解質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸ナトリウムの少なくともいずれか一つを含有するものが好ましい。キレート剤としては、カルボキシレート基(COO−)及び窒素(N)原子で金属イオンを配位するキレート剤を含有するもの、及び、グルコン酸塩が好ましい。界面活性剤としては、中性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン界面活性剤の少なくともいずれか一つを含有するものが好ましく、特に、両性界面活性剤が好ましい。また、電解洗浄液は、pHが8〜14のアルカリ性水溶液であり、pH値が高いほど洗浄効果が高くなる。また、このpH範囲で洗浄を行えば、Feや鋼、ステンレス鋼、Ni、Ti、希金属類を材質とする洗浄対象物の腐食は無視できる。
【0041】
上記電解洗浄液において、キレート剤は、電解洗浄液中に溶解した金属イオンを配位して封鎖するため、金属イオンに由来する洗浄対象物の変色を好適に防止することができる。また、界面活性剤は、電解洗浄液の表面張力を小さくするため、汚れの隙間に対する浸透性を高めて洗浄効果を高めることができる。また、界面活性剤によって電解洗浄液の液面に泡が発生するため、電解洗浄によって発生した気体が液面で弾けるときに発生するアルカリ性のミストが飛散するのを好適に防止することができる。
【0042】
さらに、長時間に亘って電解洗浄を行うと、電解洗浄液の蒸発や水の電気分解によって液量が減少するため、電解洗浄開始時の液量を維持すべく、補充液を適宜補充する。補充液は、水であってもよいが、電解質とキレート剤とグルコン酸塩とを含有するものが好ましく、界面活性剤を含有するものがさらに好ましい。なお、上述の電解洗浄液と同様に、電解質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸ナトリウムの少なくともいずれか一つを含有するものが好ましい。キレート剤として、カルボキシレート基(COO−)及び窒素(N)原子で金属イオンを配位するキレート剤を含有するものが好ましい。界面活性剤としては、中性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン界面活性剤の少なくともいずれか一つを含有するものが好ましく、特に、両性界面活性剤が好ましい。
【0043】
次に、本実施形態に係る電解洗浄装置1及び電解洗浄方法の特徴的部分である電圧(通電量)の制御について説明する。
【0044】
前記電解洗浄装置1は、図6に示すように、前記陽極10と前記陰極20との通電量が時間的に変化するように制御可能に構成される。具体的には、前記通電量は、前記陽極10と前記陰極部20間に印加する電圧によって制御される。
【0045】
また、前記電解洗浄装置1は、大きさの異なる複数の電圧を前記陽極10と前記陰極20間に印加可能に構成され、これら複数の電圧の間で陽極10と陰極20間に印加する電圧が交互に切り替えられる。また、前記電解洗浄装置1は、前記陽極10と前記陰極20間に印加する電圧が所定時間毎に切り替えられる。
【0046】
なお、印加される電圧が約2V(いわゆる過電圧)を下回ると電流が流れなくなり、電解ガスを発生させることができない状態となるため、時間変動する印加電圧の最大値は、少なくとも過電圧以上に設定される。また、印加電圧が大きくなると通電過多となり、電解洗浄液の寿命が急激に短くなる上に、洗浄対象物Mに焼けや変色等の損傷が発生しやすくなる。従って、陽極10と陰極20間に印加される電圧は、少なくとも12Vを超えないように設定されるのが好ましく、10Vを超えないことがより好ましい。
【0047】
ところで、電解洗浄液は、一般に高価である上にランニングコストに占める割合が高いため、寿命が短いとランニングコストが高くなってしまうという問題もある。また、使用済みの電解洗浄液を頻繁に廃棄しなければないことは、廃液量が増えることによって環境負荷を増大させるため好ましくない。さらに、交換頻度が高いと、電解洗浄全体の作業効率が低下するという問題がある。従って、電解洗浄液の寿命を長く維持することができることが好ましい。このため、前記電解洗浄装置1は、前記陽陰極間に印加される電圧の時間平均値が3.25V以上6.25V以下となるように設定される。
【実施例1】
【0048】
以下、試験例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの試験例のみの記載に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において適宜変更することができる。
【0049】
<試験例1>
試験例1では、図7に示すような実験装置を使用し、Fe板41の表面の4箇所に円形状(φ6mm)の樹脂Rを付着させた試料Sを電解洗浄する試験を行った。なお、洗浄力評価に用いる試料Sは、樹脂Rの付着状態(大きさや形状)によって剥離しやすさに差が生じるため、正確な洗浄力評価を行うために、均質な試料を次の方法によって作製した。まず、Fe板(長さ100mm、幅25mm、厚さ0.25mm)を、5重量%水酸化ナトリウム水溶液中で数秒間陰極電解して脱脂洗浄し、流水で水洗・乾燥した。次に、直径6mmの穴が10mm間隔で4箇所に設けられたマスキングテープをFe板に貼り付け、その上からアクリルーシリコン樹脂(アサヒペン株式会社製の油性スーパーコート)を塗布した後、マスキングテープを剥がし、常温・常圧下で14時間以上乾燥させた。
【0050】
そして、図7に示すように、上記試料S(樹脂を付着させたFe板41)を陰極とし、何も付着していないFe板42を陽極とし、これら陽極及び陰極を50mm離して対面させた状態で、100mLの電解洗浄液を収容する100mLビーカー内に配置した。
【0051】
電解洗浄液としては、4.5重量%水酸化ナトリウム、5重量%エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム、2%グルコン酸ナトリウム、及び微量(例えば、1重量%以下)の両性界面活性剤を含むアルカリ性水溶液からなる電解洗浄液(pH13.6)を用いた。
【0052】
そして、前記陽極としてのFe板42に印加する電圧として、第1の電圧E1と第2の電圧E2とを設定し、この二つの電圧値を所定の時間T内に所定の割合で切り替えて印加した。第2の電圧E2での印加時間は、前記所定の時間(即ち、周期T)に対してX%とした。(従って、第1の電圧E1での印加時間は周期Tに対して100%−X%となる。)かかる印加電圧の時間平均は、Ea=E1×(100%−X%)+E2×X%で求めることができる。なお、液温は25〜35℃に維持した。
【0053】
そして、前記Fe板41に付着した樹脂Rが剥離したことが確認される時間を測定した。樹脂Rの剥離時間は、4つの樹脂Rが剥離した時間の平均とした。具体的には、表1に示すように、第1の電圧E1、第2の電圧E2、周期Tの設定を変更して、試験例1a〜1qとした。これらを表1に示す。
【0054】
<比較例1>
比較例1は、陽極としてのFe板42に印加する電圧に関するものを除いて、各種の条件は基本的に上記試験例1と同様である。比較例1では、印加する電圧を変化させることなく、一定の電圧を常時印加した。そして、前記Fe板41に付着した樹脂Rが剥離したことが確認される時間を測定した。具体的には、印加する電圧の設定を変更して、比較例1a〜1dとした。これらを表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
上記測定の結果、電解洗浄力は、試験例1の方が比較例1に比べて高いことが確認された。特に、試験例1bの印加電圧の時間平均と比較例1bの印加電圧とは同じ値(6V)である(即ち、通電量は同じ)にもかかわらず、試験例1bの方が樹脂の剥離時間が短い(即ち、洗浄効果が高い)ことが確認された。
【0057】
<試験例2>
試験例2は、電解洗浄液に関するものを除いて、各種の条件は基本的に上記試験例1と同様である。試験例2では、電解洗浄液に含まれる電解質として、10重量%炭酸カリウムを用いた。電解洗浄液のpHは、12.3であった。具体的には、表2に示すように、第1の電圧E1、第2の電圧E2、周期Tの設定を変更して、試験例2a〜2hとした。
【0058】
<比較例2>
比較例2は、陽極としてのFe板42に印加する電圧に関するものを除いて、各種の条件は基本的に上記試験例1と同様であり、比較例1では、印加する電圧を変化させることなく、一定の電圧を常時印加した。そして、これら試験例2及び比較例2において、前記Fe板41に付着した樹脂が剥離したことが確認される時間を測定した。具体的には、印加する電圧の設定を変更して、比較例1a〜1dとした。これらを表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
上記測定の結果、電解洗浄力は、試験例2の方が比較例2に比べて高いことが確認された。特に、試験例2b及び試験例2dの印加電圧の時間平均と比較例2bの印加電圧とは同じ値(6V)である(即ち、通電量は同じ)にもかかわらず、試験例2b及び試験例2dの方が樹脂の剥離時間が短い(即ち、洗浄効果が高い)ことが確認された。
【0061】
<試験例3>
試験例3は、電解洗浄液に関するものを除いて、各種の条件は基本的に上記試験例1aと同様である。試験例3では、電解洗浄液に含まれる電解質として、表3に示すようなものを用いた。具体的には、表3に示すように、電解洗浄液に含まれる電解質を変更するとともに、第1の電圧E1、第2の電圧E2、周期Tの設定を変更して、試験例3a〜3jとした。なお、上記試験例3eと上記試験例2a、及び、上記試験例3jと上記試験例2bとは、同一の実験条件である。
【0062】
<比較例3>
比較例3は、電解洗浄液に関するものを除いて、各種の条件は基本的に上記比較例1と同様であり、比較例1では、印加する電圧を変化させることなく、一定の電圧を常時印加した。なお、上記比較例3eと上記比較例2aとは、同一の実験条件である。そして、これら試験例2及び比較例2において、前記Fe板41に付着した樹脂が剥離したことが確認される時間を測定した。具体的には、表3に示すように、電解洗浄液に含まれる電解質を変更して、比較例3a〜3eとした。これらを表3に示す。
【0063】
【表3】

【0064】
上記測定の結果、pHが高いほど、電解洗浄力も高くなる傾向が確認された。また、試験例3a〜3eと試験例3f〜3jとを比較した場合、試験例3f〜3jの方が印加電圧の平均値が6Vと小さい(即ち、通電量が少ない)にもかかわらず、印加電圧の平均値が6.25Vである試験例3a〜3eよりも剥離時間が短い(即ち、洗浄効果が高い)ことが確認された。
【0065】
<試験例4>
試験例4では、図8に示す電解洗浄装置50を使用した。陽極51は、円盤状の陽極体(直径36mm)によって構成され、陰極52は、メッシュ構造を有するステンレス製のかごを用いて構成される。洗浄対象物Mとしては、金型や金属部品の素材に利用される鋼材(幅30mm、長さ30mm、高さ10mm)を用いた。そして、洗浄対象物Mを陰極52に載置し、陽極51の放電部分と前記洗浄対象物Mの上端面との間隔が30mmとなるように対面させた状態で、1Lの電解洗浄液を収容する1Lビーカー内に配置した。
【0066】
電解洗浄液としては、4.5重量%水酸化ナトリウム、5重量%エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム、2%グルコン酸ナトリウム、及び微量(例えば、1重量%以下)の両性界面活性剤を含むアルカリ性水溶液からなる電解洗浄液(pH13.6)を用いた。
【0067】
そして、前記陽極に対して、第1の電圧E1と第2の電圧E2とを設定し、この二つの電圧値を所定の時間T内に所定の割合で切り替えて印加した。具体的には、第2の電圧E2での印加時間を前記所定の時間(即ち、周期T)に対してX%とした。(第1の電圧E1での印加時間は周期Tに対して100%−X%となる。)かかる印加電圧の時間平均は、Ea=E1×(100%−X%)+E2×X%で求めることができる。なお、液温は50〜60℃に維持した。
【0068】
そして、1時間ごとに、洗浄対象物Mに損傷(具体的には、焼けや変色)が発生しているか否かの検証を行い、洗浄対象物Mに損傷が確認されるまでの時間を測定した。検証としては、洗浄対象物Mを電解洗浄装置50から取り出し、流水で水洗して電解洗浄液を取り除いた後、アルゴンガスを吹き付けて乾燥させ、照明等のある明るい環境下で肉眼及び光学顕微鏡を用いて損傷(具体的には、焼けや変色)の有無を調べる作業を行った。具体的には、表1に示すように、第1の電圧E1、第2の電圧E2、周期Tの設定を変更して、試験例4a〜4pとした。これらを表4に示す。
【0069】
<比較例4>
比較例4は、陽極に印加する電圧に関するものを除いて、各種の条件は基本的に上記試験例1と同様である。比較例4では、印加する電圧を変化させることなく、一定の電圧を常時印加した。具体的には、印加する電圧の設定を変更して、比較例4a〜4eとした。これらを表4に示す。
【0070】
【表4】

【0071】
全ての試験例4a〜4pにおいて、最も寿命の短い比較例4dよりも寿命が長いことが確認された。また、上記測定の結果、印加電圧の時間平均が6.25V以下の場合、6.5Vより大きい場合に比べて寿命が長くなることが確認された。また、印加電圧の時間平均が3.75V以上の場合、3.5Vより小さい場合に比べて寿命が長くなることが確認された。従って、印加電圧の時間平均は、3.75V以上、6.25V以下に設定されると好適であることが確認された。
【0072】
<試験例5>
試験例5は、電解洗浄液に関するものを除いて、各種の条件は基本的に上記試験例4と同様である。試験例5では、電解洗浄液に含まれる電解質として、10重量%炭酸カリウムを用いた。電解洗浄液のpHは、12.3であった。また、比較例5は、陽極に印加する電圧に関するものを除いて、各種の条件は基本的に試験例5と同様であり、比較例5では、印加する電圧を変化させることなく、一定の電圧を常時印加した。そして、洗浄対象物Mに損傷が発生していることが確認されるまでの時間を測定した。これらを表5に示す。
【0073】
【表5】

【0074】
<試験例6>
洗浄対象物Mとして、金型や金属部品に利用される鋼材(幅30mm、長さ30mm、高さ10mm)を用いた。また、測定に際しては、4つの洗浄対象物Mを用いた。
【0075】
試験例6では、図1に示す電解洗浄装置1を使用した。具体的には、陽極10は、円盤状の陽極体12(直径36mm)を6つ有する。そして、上記洗浄対象物Mを前記トレイ上に並べて電解洗浄装置にセットした。また、前記陽極は、金属の放電部分と前記洗浄対象物Mの上端面との間隔が30mmとなるように配置した。
【0076】
電解洗浄液としては、4.5重量%水酸化ナトリウム、5重量%エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム、2%グルコン酸ナトリウム、及び微量(例えば、1重量%以下)の両性界面活性剤を含むアルカリ性水溶液からなる電解洗浄液(pH13.6)を用いた。なお、電解洗浄装置1の洗浄槽3は10Lの容量を有するものであり、この電解洗浄液を前記洗浄槽に9L投入した。
【0077】
なお、電解洗浄中に電解洗浄液が減少するため、補充液として水を適宜補充した。測定が終了するまでに補充した補充液の量は約1500mLであった。また、電解洗浄と同時に40kHzの超音波を照射した。なお、液温は45〜60℃に維持した。
【0078】
そして、1時間ごとに、洗浄対象物Mに損傷(具体的には、焼けや変色)が発生しているか否かの検証を行い、洗浄対象物Mに損傷が確認されるまでの時間を測定した。検証としては、洗浄対象物Mを電解洗浄装置から取り出し、流水で水洗して電解洗浄液を取り除いた後、アルゴンガスを吹き付けて乾燥させ、照明等のある明るい環境下で肉眼及び光学顕微鏡を用いて損傷(具体的には、焼けや変色)の有無を調べる作業を行った。この結果を表6に示す。
【0079】
<比較例6>
比較例6は、陽極に印加する電圧に関するものを除いて、各種の条件は基本的に上記試験例2と同様である。比較例6では、陽極に印加する電圧を変化させることなく、5Vの電圧を常時印加した。測定が終了するまでに補充した補充液(水)の量は約1500mLであった。この結果を表6に示す。
【0080】
【表6】

【0081】
また、参考例として、次のような試験を行った。
【0082】
<参考例1>
試験例4で用いたものと同様の鋼材及びステンレス鋼(幅25mm、長さ25mm、高さ2mm)を試料とし、酸性水溶液中に浸漬した際の影響を検証した。具体的には、100mLビーカー中に、2重量%アニリンを含む10重量%塩酸水溶液100mLを加え、温度を40℃に保ち、各試料の表面の変化を観察した。その結果、浸漬後約10分の段階において、鋼材及びステンレス鋼の両方の表面から水素ガスが発生していることが確認された。また、約60分浸漬した後に資料を取り出して肉眼及び光学顕微鏡によって観察すると、鋼材とステンレス鋼の両方が腐食して薄灰色に変色していることが確認された。
【0083】
<参考例2>
試験例4で用いたものと同様の電解洗浄装置50(図8参照)を準備し、試料として試験例4で用いたものと同様の試料に対して、5V一定の直流電圧を印加して電解洗浄を行なった。その結果、電解洗浄を開始して30分後に鋼材の表面が黒褐色に変色した。また、陰極として用いたステンレス製のかごの表面も黒褐色に変色した。
【0084】
これらの結果から、酸性水溶液中で鋼材やステンレス鋼が腐食・溶解されにくいのは比較的短時間に限られることが分かった。また、該酸性水溶液と接触させるだけでステンレス鋼が徐々に腐食することから、洗浄装置の洗浄槽がステンレス製であると洗浄槽が徐々に腐食されるため取扱いが困難であることが分かった。
【0085】
以上のように、本実施形態に係る電解洗浄装置1及び電解洗浄方法によれば、洗浄効果を向上させることができる。従って、短い洗浄時間で電解洗浄を行うことができるため、長時間に亘って電解洗浄液を使用することが可能であるので、ランニングコストを低減でき、また、廃液の発生頻度を少なくして環境への負荷をも低減することができる。
【0086】
即ち、本実施形態に係る電解洗浄装置1及び電解洗浄方法によれば、陽極10及び陰極20間の通電量が常時一定である従来の電解洗浄装置及び電解洗浄方法の場合に比べて、洗浄効果を向上させることができる。かかる効果が発揮される理由の一つとしては、陰極20に対する陽極10と前記陰極20間の通電量が常時変化することで、陰極20に保持された洗浄対象物Mにおける気体の発生状態が常時変化するため、剥離作用等の洗浄作用を洗浄対象物Mに付着した汚れに対して効果的に加えることができるということが考えられる。
【0087】
さらに、通電量が多い状態から少ない状態に変化すると気体の発生が抑制される。ここで、電解洗浄液は、前記循環手段による流れや、超音波振動による振動や、温度差によって発生する対流や、気体の上昇によって発生する対流等によって、常時撹拌される状態となっている。従って、気体の発生が抑制されている間に電解洗浄液の撹拌によって洗浄対象物Mの表面から気体が除去されるため、洗浄対象物Mの表面に電解洗浄液を好適に供給することができ、電解洗浄効果がさらに高まる。
【0088】
しかも、常時一定の電圧を印加する場合に比べて通電量を抑えることができ、その分電解洗浄液の寿命を長くできる。また、通電量が減少することにより、陽極10からの発熱量が小さくなることで電解洗浄液の急速な温度上昇を抑えることができる。従って、電解洗浄液の温度制御を容易に行うことができるとともに、電解洗浄液に添加されている界面活性剤による泡が過剰に発生することも好適に防止することができる。
【0089】
また、前記通電量は、前記陽極10と前記陰極20間に印加する電圧の制御によって行うことができるため、通電量の制御が容易となる。
【0090】
また、前記電解洗浄装置1では、大きさの異なる複数の電圧を前記陽極10と前記陰極20間に印加可能に構成され、これら複数の電圧の間で陽極10と前記陰極20間に印加する電圧が交互に切り替えられる。従って、通電量を容易に数値制御することができる。
【0091】
特に、前記陽極10と前記陰極20間に印加される電圧の時間平均値が3.25V以上6.25V以下となるように設定される構成によれば、電解洗浄液の寿命をより長く維持することができる。
【0092】
なお、本発明に係る電解洗浄装置及び電解洗浄方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0093】
例えば、陽陰極間に印加される電圧の波形は、図6に示したもの以外にも、図9に示すようなものを例示することができる。図9(A)に示すものは、大きさの異なる3つの電圧を陽陰極間に印加可能に構成され、これら3つの電圧値の間で陽陰極間に印加する電圧が交互に切り替えられるものである。また、図9(B)に示すものは、印加される電圧値が一定ではなく、低い状態から高い状態まで連続的に変動するものである。また、前記陽陰極間に印加される電圧が瞬間的に変化するものであってもよく、例えば、図9(C)に示すものは、電圧が瞬間的に立ち上がった後、連続的に下がるものであり、図9(D)に示すものは、電圧が連続的に上昇した後、瞬間的に立ち下がるものである。また、図9(E)に示すものは、電圧が一定に保たれることなく常時変化するものである。図9(F)に示すものは、電圧が低い一定値から最大値を経て最大値よりも低い値まで急激に変化した後、その値を所定の時間維持し、その後、前記低い一定値まで急激に変化するものである。
【0094】
また、上記実施形態においては、前記通電量は前記陽陰極間に印加する電圧によって制御されるものとして説明したが、前記陽極と前記陰極との通電量が時間的に変化するように制御可能なものであればこれに限定されるものではなく、例えば、電流を変化させるものであってもよい。このことから、上記波形など、電圧を変化させることで達成されるものとして説明された事項は、原則として、通電量を変化させる方法でも達成することができる。
【0095】
また、上記実施形態においては、超音波洗浄を併せて行い、電解洗浄液を循環し、電解洗浄液を濾過し、電解洗浄中に補充液を補充するものであったが、これに限定されるものではなく、これらの付随的な操作は、電解洗浄の際に行われないものであってもよく、これらの付随的な操作の中の一部が行われるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施形態に係る電解洗浄装置の平面図を示す。
【図2】同実施形態に係る電解洗浄装置の断面図を示す。
【図3】同実施形態に係る電解洗浄装置の陽極を示し、(A)は、陽極全体の斜視図を示し、(B)は、陽極の陽極体の斜視図を示す。
【図4】同実施形態に係る電解洗浄装置の陰極の斜視図を示す。
【図5】同実施形態に係る電解洗浄装置の陰極に備えられる固定部材を説明する図を示し、(A)は、固定部材を用いて洗浄対象物を陰極に固定した状態の正面図、(B)は固定部材を構成する下側部材の上面図、(C)は下側部材の正面図、(D)は下側部材の側面図を示す。
【図6】同実施形態に係る電解洗浄装置及び電解洗浄方法において、陽極に印加される電圧の波形のグラフを示す。
【図7】本発明の効果を検証するための試験例に係る実験装置を示す。
【図8】本発明の効果を検証するための試験例に係る電解洗浄装置を示す。
【図9】本発明の他の実施形態に係る電解洗浄装置及び電解洗浄方法において、陽陰極間に印加される電圧の波形のグラフを示す。
【符号の説明】
【0097】
1…電解洗浄装置、2…筐体、3…洗浄槽、4…電源、10…陽極、12…陽極体、12a…放電部分、12b…絶縁体、13…支持体、20…陰極、21…支持部材、21a…導電部分、21b…絶縁体、22…吊下部材、22a…支持部材との接続部分、22b…電源との接続部分、22c…絶縁体、23…空間部、24…棒状体、25…枠体、30…固定部材、31…取付部、32…固定部、33…下側部材、33a…当接部、33b…挿通部、34…上側部材、35…ナット、36…ナット、41…陰極としてのFe板、42…陽極としてのFe板、50…電解洗浄装置、51…陽極、52…陰極、E1…第1の電圧、E2…第2の電圧、M…洗浄対象物、R…樹脂、S…試料、T…周期

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と洗浄対象物を保持する陰極とを電解洗浄液中に浸漬し、陽陰極間に直流で通電して洗浄対象物を電解洗浄する電解洗浄装置であって、
陽陰極間の通電量が時間的に変化するように制御可能に構成されることを特徴とする電解洗浄装置。
【請求項2】
前記通電量は、前記陽陰極間に印加する電圧によって制御されることを特徴とする請求項1に記載の電解洗浄装置。
【請求項3】
大きさの異なる複数の電圧を前記陽陰極間に印加可能に構成され、
これら複数の電圧が所定時間毎に交互に切り替えられることを特徴とする請求項2に記載の電解洗浄装置。
【請求項4】
前記陽陰極間に印加される電圧の時間平均値が3.25V以上6.25V以下となるように設定されることを特徴とする請求項2又は3に記載の電解洗浄装置。
【請求項5】
前記陽極は、Fe,Pt,Pd,Ir,Ru若しくはこれらの合金を用いて形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電解洗浄装置。
【請求項6】
前記陽極は、Tiからなる陽極本体をPt,Pd,Ir,Ru若しくはこれらの合金によって被覆して形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電解洗浄装置。
【請求項7】
前記電解洗浄液を超音波振動させる超音波発生器を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電解洗浄装置。
【請求項8】
陽極と洗浄対象物を保持する陰極とを電解洗浄液中に浸漬し、陽陰極間に直流で通電して洗浄対象物を電解洗浄する電解洗浄方法であって、
前記陽陰極間の通電量が時間的に変化するように制御することを特徴とする電解洗浄方法。
【請求項9】
前記陽陰極間に対して、所定時間毎に大きさの異なる複数の電圧を交互に切り替えて印加することを特徴とする請求項8に記載の電解洗浄方法。
【請求項10】
前記陽陰極間に印加される電圧の時間平均値が3.25V以上6.25V以下であることを特徴とする請求項9に記載の電解洗浄方法。
【請求項11】
前記電解洗浄液は、アルカリ性水溶液からなるものであることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の電解洗浄方法。
【請求項12】
前記電解洗浄液は、
電解質として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸ナトリウムの少なくともいずれか一つを含有し、
キレート剤として、カルボキシレート基(COO−)及び窒素(N)原子で金属イオンを配位するキレート剤と、グルコン酸塩とを含有し、
界面活性剤として、中性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン界面活性剤の少なくともいずれか一つを含有することを特徴とする請求項11に記載の電解洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−242931(P2009−242931A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94552(P2008−94552)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(593047415)ソマックス株式会社 (8)
【Fターム(参考)】