説明

電解質中の水除去方法、その装置、及び水分量測定装置

【課題】本発明は、電解質中に混入した水を電気化学的手法によって除去する方法、その装置及び水分量測定装置に関するものであり、特に水の混入が問題となる電解質を用いた電気化学素子において、素子内の水を処理する技術を提供する。
【解決手段】電解質と2つ以上の電極からなる電気化学セルにおいて、不活性ガス雰囲気で陽極と陰極間に水の理論分解電圧以上の電圧を印加して水を電気化学的に分解し酸素気体と水素気体を生成することで、電解液内から水を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質中の水除去方法、その装置、及び水分量測定装置に関する。特に、水の混入が問題となる非水電解液を用いた電気化学素子において、素子内の水を処理する技術に関する。また、本発明は電気化学的酸素生成素子に関するものであり、特に、イオン液体を用いた、少なくとも2つの電極を有する電気化学素子に関し、空気中の酸素を1電子還元により活性酸素を生成させ、それを酸化することにより高濃度酸素を生成する電解化学的酸素発生素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギーデバイス等の分野において、非水電解質を用いた素子が注目を集めている。これらの素子がその能力を最大限に発揮するために非水電解質の純度は非常に重要であり、特に製造工程及び駆動時に大気中から混入する水分は素子の能力を不可逆に減少させることから大きな問題となっている。
【0003】
非水電解質中の不純物、特に水の除去については、数々の方法が試みられている。溶液を構成している溶媒にあらかじめ溶解せしめた後に水分を蒸発除去せしめることを特徴とする方法(特許文献1)、ゼオライト中のナトリウムイオンをリチウムカチオン等の他の金属カチオンで置換して得られる金属置換型ゼオライトを非水電解液に接触させる方法(特許文献2)、非水電解質溶液を還流させながら、還流液をゼオライト層と接触処理させる方法(特許文献3)が知られている。しかしながら、特許文献1記載の脱水方法では、得られる水分レベルがいまだ不充分である上、電解液用の溶媒に溶解後に長時間の加熱を行うことによる劣化や、溶媒として使用しているプロピレンカーボネートと水との反応による副生物の生成等の品質劣化を起こす問題がある。特許文献2の脱水方法では、ゼオライト中の金属イオンが溶液中に溶出したり、また、電解液が酸性を呈する場合は、ゼオライトが被毒されて脱水能力が著しく低下して、事実上脱水ができなかったり、また、ゼオライト自体が崩壊して溶液中に懸濁し、ろ過が困難になったりする問題点がある。特許文献3に記載の脱水方法では電解液用の溶媒に溶解後長時間の加熱を行うことによる着色や、溶媒として使用しているプロピレンカーボネートと水との反応による副生物の生成等の品質劣化を起こす問題がある。
【0004】
また、水分を含んだ非水系電解液にプロトン性極性溶媒を添加した後、この溶媒を蒸留により留去することに伴い水分を除去する方法(特許文献4)、非多孔性炭を用いて作製された複数の炭素電極間に、電解質イオンのインターカレーション開始電圧よりも低い電圧を印加しながら、炭素電極と電解液とを接触させて電解液中の水分を主体とする電解液中の低電位反応性物質を除去する電解液の精製方法(特許文献5)、活性炭を用いて非水電解液中の水分等を吸着させて電解液の再生を図る方法(特許文献6)が開示されている。
【0005】
上記方法はいずれも低水分の非水電解液を得るために、電解液を作製後、電解質に保持されていた水分を、蒸発又は吸着除去等する方法である。しかしながら、これらの方法による電解液の水分処理を行う場合、電気化学セルを構築した後では、セルを分解して電解液を取出さなくてはならず、実際の作業を考えた際、効率的な方法であるとは言えない。
【0006】
セルを分解せずに電解液中の水分を処理する方法としては、電池系内に脱水剤等を混入する方法として試みられている。例えば、特許文献7に開示された発明においては、非水電解液に無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸やそれらの誘導体等の酸無水物を添加することにより、電池系内の水分を酸無水物と反応させて対応するカルボン酸とし、水分を除去する。特許文献8に開示された発明では、ゼオライト、活性アルミナ、活性炭、シリカゲル、多孔性ガラスに代表される水分吸着剤を電池内に予め添加しておくことにより水分を除去する。しかしながら、これらの方法においては、添加物と溶媒の反応による副生成物の生成や、吸着剤中の成分の溶出等により、電解液の劣化が起こる可能性がある。また、電気化学素子の駆動原理となっている酸化還元体の活性が高い場合、水分処理に用いた物質が酸化還元体と反応してしまうことも考えられる。
【0007】
また、近年、イオン伝導性を持ち、300℃以上の高温でも安定であるイオン液体を用いた電気化学素子が注目されている。特許文献9においてはイオン液体を用いた電気二重層キャパシタが開示されている。
【0008】
また、非特許文献1や2においてはイオン液体中で酸素を電気化学的に還元して活性酸素を安定に発生させる技術が開示されている。更に、電気化学的に酸素から活性酸素を発生する技術や、発生した活性酸素を再度酸素に酸化することで大気中の酸素を濃縮する技術については、特許文献10〜12で開示されている。一方、イオン液体を電解液として用い、空気中の酸素を電気化学的に還元して活性酸素を発生させ、それを再度酸素に酸化することで大気中の酸素を濃縮する技術については、特許文献13で開示されている。
【0009】
つまり、従来技術では、酸素気体を還元し活性酸素種を発生させ、活性酸素種を酸化させ再度酸素気体に戻すことで空気中の酸素を濃縮することが可能である。
+e→O (1)
→O+e (2)
【0010】
また、酸素気体を1電子還元して生成される活性酸素であるスーパーオキサイド(O)はプロトン(H)と速やかに反応し、以下の(3)式及び(4)式に従い、過酸化水素と酸素に変化する。
+H→HO・ (3)
2HO・→H+O (4)
【0011】
さらに、電気化学反応として、以下の(5)式に従う反応経路も知られている。
HO・+e→HO (5)
【0012】
始めに発生するスーパーオキサイドは反応性が高く、非特許文献3によるとpH7の水中では平均寿命は5秒程度である。プロトンは電解質内での水の電離平衡によっても供給されるため、使用する電解質が吸湿性を有していると、時間経過と共に空気中の水分を吸蔵してしまい、電解質中にプロトンを存在させる原因となりうる。1電子還元によって発生したスーパーオキサイドが失われると酸素生成の効率が減少するため、電解質中の水分を除去、あるいは無害な化合物に変化させることが必要となる。
【0013】
そこで、電気化学素子、特にイオン液体を電解液として用い、空気中の酸素を電気化学的に還元して活性酸素を発生させ、それを再度酸素に酸化することで大気中の酸素を濃縮する技術においては、使用する電解液の水分を電解液にダメージを与えることなくオンサイトで処理できる方法が望まれていた。特に、電気化学セルを分解することなく、かつ添加物を使用することなく、電解液中の水分を処理する方法が望まれていた。
【0014】
非水電解液を用いた電気化学素子においては、電解液が空気と接触することにより水分が混入し、素子の劣化や不具合を引き起こすという問題があった。そのため、使用前の非水電解液は厳重な管理の下に保存しなければならない。また、一度水分が混入してしまうと除去が困難であるため、場合によっては電解質の廃棄等も有りうる。
【0015】
また、空気中の酸素を一方の電極で還元し活性酸素を生成し、もう一方の電極で活性酸素を酸化して再度酸素気体に戻す電気化学的酸素濃縮素子においては、空気中の水分が電解質に混入することによってプロトンは容易に生成されることから、水蒸気を含む空気中では素子の反応効率が不可逆に低下するという問題があった。
【0016】
これを防ぐため、乾燥空気を電気化学素子に送るには、既知の乾燥空気生成素子を複合させる必要があり、装置が大掛かりで複雑なものとなってしまう。また、電解質内の水分を除去するには、電解質への乾燥剤の添加や電解質の減圧乾燥、前述の特許公報等に示された手段の使用等が考えられるが、空気中から水分が連続的に供給される以上、電解液のメンテナンスが必要となる。特に、素子を構造的に分解して作業を行う方法は非常に煩雑である。
【0017】
【特許文献1】特開昭58−28174号公報
【特許文献2】特開昭59−224071号公報
【特許文献3】特開平7−235309号公報
【特許文献4】特開2000−277125号公報
【特許文献5】特開2005−302950号公報
【特許文献6】特開平9−232008号公報
【特許文献7】特開平7−122297号公報
【特許文献8】特開2001−126766号公報
【特許文献9】特開2003−261540号公報
【特許文献10】特公平6−174号公報
【特許文献11】特公平8−30276号公報
【特許文献12】特許第3419656号公報
【特許文献13】特開2006−225218号公報
【非特許文献1】Electrochemical and Solid−State Letters,4(11)D16−D18(2001)
【非特許文献2】Ind.Eng.Chem.Res.2002,41,4475−4478
【非特許文献3】日本化学会編「活性酸素種の化学」(季刊 化学総説 NO.7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、オンサイトで、かつ簡便な機構にて電解質中の水分を除去することが可能な方法及びそれを実現する装置を提供することである。
また本発明は、電気化学的に電解質中の水分を除去する方法及びそのための装置を提供することを目的とする。
さらに本発明は、電気化学素子に、電解液中の水を電気化学的に分解し、酸素気体と水素気体を生成して電解質内から水を除去する機構を付加することで、素子の反応効率の低下を防ぐ手段を提供することを目的とする。
さらに本発明は、空気中の酸素を一方の電極で還元し活性酸素を生成し、もう一方の電極で活性酸素を酸化して再度酸素気体に戻す電気化学的酸素濃縮素子において、素子の反応効率を上昇させ、長寿命化を図ることのできる素子の運転方法を提供することを目的とする。
さらに本発明は、簡便な機構にて電解質中の水分量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
かかる課題に対して本発明者らは鋭意検討した結果、電解質と二つ以上の電極からなる電気化学セルにおいて、不活性ガスを電解質に溶解させて、陽極と陰極間に水の理論分解電圧以上の電圧を印加して水を電気化学的に分解し酸素気体と水素気体を生成して電解液内から水を除去する手段及び装置を見出した。
【0020】
すなわち、本発明は下記である。
(1)少なくとも2つの電極、及び該電極が接する電解質を備える電気化学セルの電解質中の水を除去する方法において、少なくとも1種類以上の成分からなる不活性ガスを、該電解質に溶解させて、該電極の陰極と陽極の間に水の理論分解電圧以上の直流電圧を印加することで、該電解質中の水を電気化学的に水素と酸素に分解し、該電解質中の水を除去することを特徴とする、水除去方法。
(2)該電極が参照電極を含む3つの電極を具備することを特徴とする(1)に記載の水除去方法。
(3)該陰極の少なくとも表面が金もしくは白金であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の水除去方法。
(4)該陰極の少なくとも表面が白金であることを特徴とする(3)に記載の水除去方法。
(5)該陽極の少なくとも表面が金、白金、もしくは炭素を主成分とする電極であることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の水除去方法。
(6)該陽極の少なくとも表面がグラッシーカーボンであることを特徴とする(5)に記載の水除去方法。
(7)該電解質が非水電解液である(1)から(6)のいずれかに記載の水除去方法。
(8)該電解質がイオン液体である(7)に記載の水除去方法。
(9)該イオン液体のアニオンが、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、もしくはテトラフルオロボレートであることを特徴とする(8)に記載の水除去方法。
(10)該イオン液体が、N−N−N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、もしくはN−N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレートであることを特徴とする(9)に記載の水除去方法。
(11)非水系電解液を電解質として用いた電気化学素子の非水電解液中の水を除去する方法において、少なくとも1種類以上の成分からなる不活性ガスを電解質に溶解させて、該電気化学素子が有する2つ以上の電極を用いて、少なくとも水の理論分解電圧の電圧を該電極の陰極と陽極の間に印加することで該非水電解液中の水を水素と酸素に分解し、該非水電解液中の水を除去することを特徴とする、水除去方法。
(12)少なくとも2つの電極、該電極が浸漬されるように電解質を満たすことのできる容器、該容器に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段、及び該電極の陰極と陽極の間に水の理論分解電圧以上の直流電圧を印加する電源を有し、該電極において該容器内の該電解質中の水を電気化学的に水素と酸素に分解することで、該電解質中の水を除去する水除去装置。
(13)該電極が参照電極を含む3つの電極を具備することを特徴とする(12)に記載の水除去装置。
(14)該陰極の少なくとも表面が金もしくは白金であることを特徴とする(12)又は(13)に記載の水除去装置。
(15)該陰極の少なくとも表面が白金であることを特徴とする(14)に記載の水除去装置。
(16)該陽極の少なくとも表面が金、白金、もしくは炭素を主成分とすることを特徴とする(12)から(15)のいずれかに記載の水除去装置。
(17)該陽極の少なくとも表面がグラッシーカーボンであることを特徴とする(16)に記載の水除去装置。
(18)該電解質が非水系電解液である(12)から(17)のいずれかに記載の水除去装置。
(19)該電解質がイオン液体である(12)から(17)のいずれかに記載の水除去装置。
(20)該イオン液体のアニオンが、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、もしくはテトラフルオロボレートであることを特徴とする(19)に記載の水除去装置。
(21)該イオン液体が、N−N−N−トリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、もしくはN−N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレートであることを特徴とする(20)に記載の水除去装置。
(22)イオン液体を電解質とし、該イオン液体を含浸した多孔質膜からなるセパレータ、該セパレータに接して設けられた陰極及び陽極、該陰極側に該陰極と酸素を含有する気体が接するための酸素を含有する気体の供給手段、及び該陽極側に該陽極から生成される気体収集手段を備え、該陰極において供給気体中の酸素を一電子還元し活性酸素を生成し、該陽極において該活性酸素を酸化し高濃度の酸素を生成して取り出す電気化学的酸素発生素子であって、不活性ガス供給手段によって少なくとも1種類以上の成分からなる不活性ガスを該電解質に溶解させ、該電極に水の理論分解電圧以上の電圧を印加して該イオン液体中の水を水素気体と酸素気体に分解し、該電極から水素気体及び酸素気体を除去する手段を備える電気化学的酸素発生素子。
(23)該不活性ガス供給手段は、該不活性ガス導入管及び不活性ガス排出管を有し、該不活性ガス導入管及び不活性ガス排出管は不活性ガスの供給を制御するための電磁弁を有することを特徴とする(22)に記載の電気化学的酸素発生素子。
(24)該陽極及び該陰極が三次元的な多孔構造を有する電極であることを特徴とする(22)又は(23)に記載の電気化学的酸素発生素子。
(25)該陽極及び該陰極が気体拡散電極であることを特徴とする(22)〜(24)のいずれかに記載の電気化学的酸素発生素子。
(26)該イオン液体のアニオンが、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、もしくはテトラフルオロボレートであることを特徴とする(22)〜(25)のいずれかに記載の電気化学的酸素発生素子。
(27)該イオン液体が、N−N−N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、もしくはN−N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレートであることを特徴とする(26)に記載の電気化学的酸素発生素子。
(28)少なくとも2つの電極、該電極が浸漬されるように電解質を満たすことのできる容器、該容器に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段、及び該電極の陰極と陽極の間に水の理論分解電圧以上の直流電圧を印加する電源を有し、測定時間における、該電極によって該容器内の該電解質中の水を電気化学的に水素と酸素に分解する間の電流を時間積分することで移動電子量を求め、電解質中の測定時間の含有水分量を測定する手段を有する、水分量測定装置。
(29)該電解質を攪拌する手段を有することを特徴とする、(28)に記載の水分量測定装置。
(30)該電解質が非水電解液であることを特徴とする(28)又は(29)に記載の水分量測定装置。
(31)該電解質がイオン液体であることを特徴とする(30)の水分量測定装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、オンサイトで、かつ簡便な機構にて電解質中の水分を除去することが可能な方法及びそれを実現する装置を提供することができる。また、本発明によって、電解質中の水分を除去することにより、電解質が空気と接触することにより水分が混入して素子の劣化や不具合を引き起こすという問題が解決できる。また、使用時に電解質を再生できることで、電解質の管理を容易にすることができると共に、水分が混入してしまった電解質の再利用等も可能となる。
【0022】
また、本発明は、電気化学的に電解質中の水分を除去する方法及びそのための装置を提供する。さらに本発明は、電気化学素子に、電解質中の水を電気化学的に分解し、酸素気体と水素気体を生成して電解質内から水を除去する機構を付加することで、素子の反応効率の低下を防ぐ手段を提供する。
【0023】
さらに、本発明は、空気中の酸素を一方の電極で還元し活性酸素を生成し、もう一方の電極で活性酸素を酸化して再度酸素気体に戻す電気化学的酸素濃縮素子において、素子の反応効率を上昇させ、長寿命化を図ることのできる素子の運転方法を提供する。
さらに本発明は、簡便な機構にて電解質中の水分量測定装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明における電気化学セルとは、電気化学反応を行うため、あるいは電気化学反応からエネルギーを取り出すためのユニットであって、少なくとも2つの電極及び該電極が接する電解質を備える。電気化学セルとしては、例えば、大きなものでは、金属の電解精製装置や電解採取装置の電解室、水酸化ナトリウムの製造で用いられる電解槽等が挙げられる。他の例としては、マンガン電池、アルカリマンガン電池、塩化銀電池、塩化銅電池等の一次電池、さらには、鉛蓄電池、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池、ニッケル−水素蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池、ニッケル−鉄蓄電池、ニッケル−亜鉛蓄電池、酸化銀−亜鉛蓄電池等の二次電池、レドックスフロー電池、アルミニウム・空気電池、空気・亜鉛電池、空気・鉄電池等の電池、さらには燃料電池、さらには電気二重層キャパシタが挙げられる。また、小さいものの例としては、電気回路に用いられる電解コンデンサが挙げられる。さらに、pHセンサや、ガルバニ式酸素センサ、固体電解質式酸素センサ、セバリングハウス式二酸化炭素センサの構成も例として挙げられる。また、電気化学セルであれば、どのような態様のものでも、本発明の水除去方法及び装置を適用できる。電極及び電解質を備えている電気化学的酸素発生素子においても適用可能である。
【0025】
本発明における陰極及び陽極としては、導電性を有し、電解質中のイオンと電子をやり取りできる材料であればよい。電極としては、三次元的な多孔構造を有する電極を用いることが望ましく、メッシュ状の金属電極や気体拡散型の電極の使用が好適である。また、プレート状の形状をした電極が適している。
【0026】
電極の材料としては、金、白金、銀、ニッケル、鉄、タングステン、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、チタン、モリブデン、コバルト、スズ、ビスマス、鉛、亜鉛などの金属もしくはこれらを1つ以上含む合金、導電性を持つ金属酸化物、又はグラッシーカーボン、グラファイト、カーボンブラック、カーボンペースト、カーボンファイバー、アセチレンブラック、不純物としてホウ素をドープしたダイアモンドなどの、炭素を主成分とする電極を用いることができる。炭素を主成分とする電極としては、電極として用いる材料が炭素を含む結晶もしくはアモルファスであり、かつ自由電子を有して導電性を示すものであればよい。なお、電極の表面に、触媒として金属や金属酸化物の粒子を修飾したもの、官能基を形成したもの、酵素などの機能高分子を修飾したものなども利用することができる。また、炭素を主成分とする電極においては、電極が酸化によって消耗しても、発生する成分は二酸化炭素等の気体成分が主であるため、電解質を汚染しにくいため、水の電気分解の陽極として好適である。さらに、電極における水の電気分解の過電圧減少を鑑み、該陰極には白金、該陽極にはグラッシーカーボンを使用することが望ましい。
【0027】
本発明の水除去装置における、電解質を満たすことのできる容器とは、電解質と化学反応しない材料で形成されていることが好ましい。例えば、形状としては、電解質を立体的に保持できる形状、封をする形状や封をしない形状、円筒形や角筒形の形状などが挙げられ、材料としてはガラスや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂、陶器や磁器などのセラミックス、ステンレスなどの金属などが挙げられる。
【0028】
本発明における不活性ガス供給手段は、不活性ガスを供給できる手段であればよい。例えば、不活性ガスを充填したボンベもしくは不活性ガス生成装置、そのボンベ又は生成装置と連結した不活性ガス導入管からなる。また、不活性ガスを排出するための、不活性ガス排出管を付属してもよい。該不活性ガス導入管及び不活性ガス排出管は不活性ガスの供給を制御するための電磁弁を有することが好ましい。
【0029】
また、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドアニオン等のイオン液体を多孔膜に含浸させ、三次元多孔構造を有する電極を陰極及び陽極に用いる電気化学的酸素生成素子において、例えば酸素生成を開始する前に、不活性ガス雰囲気下で水の理論分解電圧以上の電圧を印加して、イオン液体中の水を電気化学的に分解し、酸素気体と水素気体を生成して電解液内から水を除去することで、主反応である(1)・(2)式の反応を阻害する因子を排除できる。本発明では、該陰極及び該陽極として、気体透過性を持つ電極を用いることができる。特に三次元的な多孔構造を有する電極を用いることが望ましく、メッシュ状の金属電極の使用が好適であり、気体拡散電極の使用がより好適である。
【0030】
電極の材料としては、金、白金、銀、ニッケル、鉄、タングステン、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、チタン、モリブデン、コバルト、スズ、ビスマス、鉛、亜鉛などの金属もしくはこれらを1つ以上含む合金、導電性を持つ金属酸化物、又はグラッシーカーボン、グラファイト、カーボンブラック、カーボンペースト、カーボンファイバー、活性炭、アセチレンブラック、不純物としてホウ素をドープしたダイアモンドなどの、炭素を主成分とする電極を用いることができる。炭素を主成分とする電極としては、電極として用いる材料が炭素を含む結晶もしくはアモルファスであり、かつ自由電子を有して導電性を示すものであればよい。なお、電極の表面に、触媒として金属や金属酸化物の粒子を修飾したもの、官能基を形成したもの、酵素などの機能高分子を修飾したものなども利用することができる。活性酸素生成効率の観点、及びビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドアニオンを有するイオン液体の濡れ性の観点からは、公知の形態からなる炭素電極を用いることが望ましい。
【0031】
参照電極としては、使用する電解質中で安定な電位を示す電極を用いることが望ましい。一般的に、電気化学反応にあずかる化学種の濃度が一定であり、電流が流れたときの分極が小さく、液間電位差も小さく、平衡に達する時間が短いものが適しており、例えば、水素電極、カロメル電極、銀/塩化銀電極が望ましいが、本発明ではこれらの使用に限定するものではない。参照電極の材料としては、金、白金、銀、ニッケル、鉄、タングステン、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、チタン、モリブデン、コバルト、スズ、ビスマス、鉛、亜鉛などの金属もしくはこれらを1つ以上含む合金、グラッシーカーボン、グラファイト、カーボンブラック、カーボンペースト、カーボンファイバー、活性炭、アセチレンブラック、不純物としてホウ素をドープしたダイアモンドなどの、炭素を主成分とする電極を用いることができる。炭素を主成分とする電極としては、電極として用いる材料が炭素を含む結晶もしくはアモルファスであり、かつ自由電子を有して導電性を示す公知の形態の炭素電極、又は導電性を持つ金属酸化物を用いることができる。参照電極電位の安定性と、参照電極内部電解質の被処理電解質中への流出を防ぐ観点から、電解質自身のアニオンとの平衡が利用できる金属を用いることが望ましく、銀を用いることが特に好適である。
【0032】
電解質は、それ自身又は水に代表される溶媒に溶かしたときにイオン導電性を示す物質であり、非水電解質と水溶液等に分けられる。非水電解質としては、イオン液体や溶融塩、有機溶媒に支持電解質を溶解させたものが用いられる。有機溶媒としては、ジクロロエタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、アセトニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、γ−ブチルラクトン、メトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、メチルフォメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート、ジメチルスルフォキシド、ピリジンなどが挙げられ、支持電解質としては、テトラアルキルアンモニウムの過塩素酸塩やテトラフルオロホウ酸塩が代表的であるが、有機溶媒に溶け、イオン伝導性を示す組み合わせであれば、いかなる組み合わせでもよい。代表的な非水電解質としては、エチレンカーボネートなどのカーボネートを溶媒として6フッ化リン酸リチウムなどリチウムイオンを有する塩を加えたものが挙げられる。本発明において、電解質として水溶液を使用する場合は、水溶液中の水の除去、すなわち溶媒を分解除去し、水溶液の濃度を上昇させることに他ならない。なお、純水においても、解離平衡にあるプロトンと水酸化物イオンによって伝導性がわずかに得られるため、本発明を実施できる。
【0033】
また使用するイオン液体としては、疎水性を示すイオン液体を用いることで、空気中の水分が電解質層に混入してプロトンが生成されることを避け、スーパーオキサイドがより安定な系を作ることにより、電極間の抵抗値を低減させることができる。使用する電解質としては、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドアニオンを有するイオン液体を用いることが望ましい。
【0034】
しかしながら、本発明によると、イオン液体中の水を除去できる。よって、アニオンとしては、疎水性が強くないものでも使用できる。すなわち、好ましいアニオンとして、塩素イオン、ホウ素イオン、ヨウ素イオン、硝酸イオン、硫酸水素イオン、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロフォスフェート、トリフルオロメタンスルフォネート、メチルスルフェート、エチルスルフェート、パーフルオロブタンスルフォネート、L−ラクテート、ジシアナミド、p−トルエンスルホナート、テトラクロロフェラート、及びジメチルホスフェート等が挙げられる。
【0035】
該イオン液体のカチオンとしては、プロトン供与性の大きなイオンは好ましくない。すなわち、好適な塩は、アルキルイミダゾリウム塩やアリルイミダゾリウム塩、アルキルピリジニウム塩、トリアルキルフェニルアンモニウム塩、脂環式アンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルフォスフォニウム塩、及びトリアルキルスルフォニウム塩を1種類以上含んだ塩が望ましい。
【0036】
より好ましくは、カチオンとして、N−N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム、N−ブチル−N−メチルピリジニウム、N−メチル−N−プロピルピリジニウム、N−N−N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム、N−N−N−トリメチル−N−ブチルアンモニウム、N−N−N−トリメチル−N−ペンチルアンモニウム、N−N−N−トリメチル−N−ヘキシルアンモニウム、N−N−N−トリメチル−N−オクチルアンモニウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウム、1−アリル−3−エチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム、1,3−ジアリルイミダゾリウム、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、N−ヘキシルピリジニウム、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、3−メチル−1−オクタデシルイミダゾリウム、3−メチル−1−オクチルイミダゾリウム、メチルトリオクチルアンモニウム、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム、及びトリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムを1種類以上含むイオン液体が望ましい。
【0037】
更に、酸素の1電子酸化還元反応の可逆性より、N−N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム、N−ブチル−N−メチルピリジニウム、及びN−メチル−N−プロピルピリジニウムより選ばれることがより望ましい。
【0038】
上記に示す疎水性の強いイオン液体を用いたとしても、水蒸気を含む空気に常に触れる素子であることから、微量の水の混入は起こる。混入した水は、酸素発生素子であれば、その主目的である酸素生成を行う前に、電気化学的に水を分解することで、電解液の純度を保つことが可能である。
【0039】
すなわち、本発明における電気化学的酸素発生素子は、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドアニオンを有するイオン液体を電解質とするのが好ましく、該イオン液体を含浸した高分子多孔膜からなるセパレータと、該セパレータに接して設けられた還元極及び酸化極を備えた電気化学素子であり、還元極側に酸素を含有する気体供給手段を備え、該還元極において供給気体に存在する酸素を1電子で還元し活性酸素を生成すると共に、酸化極側に気体収集手段を備え、酸化極側において該活性酸素を酸化し高濃度の酸素を生成して、さらにはイオン液体中に混入した水を所望のタイミングで電気分解によって除去することのできる機構を備える。
活性酸素にはスーパーオキサイド、1重項酸素、ヒドロキシラジカルなどが含まれるが、ここでいう1電子還元により生成する活性酸素はスーパーオキサイドのことである。
【0040】
また、本発明は、還元極における電気化学反応が以下の式で表される酸素の1電子酸化還元反応プロセスを利用したものである。
【数1】

【0041】
本発明における酸素発生素子によれば、イオン液体を用いた、少なくとも2つ以上の電極を用いた電気化学素子を構成するにあたって、イオン液体中の水分を電気化学的に分解して水素気体と酸素気体を生成し、スーパーオキサイドの失活原因となる水を除去することで、生成したスーパーオキサイドをより高濃度に保つことができ、その結果酸素をより効率よく生成することができる。このような、化学的に安定でかつイオン伝導性に優れ、空気中から混入した水分を除去できる電気化学素子は、電気化学的に一方の電極で酸素から1電子還元により活性酸素を発生させるための電気化学素子として、スーパーオキサイドが安定に存在することができる環境を整えられるという点で好適に使用することができる。
【0042】
本発明における陰極及び陽極に、気体拡散型の電極を利用すると、原料空気の供給及び生成酸素の回収を容易にすると共に、反応面を大きくすることができ、好ましい。
また、気体拡散型の電極の使用により、空気中の水分はイオン液体層へ到達し、不可逆に吸蔵されるが、本発明を用いることで、素子の性能低下の原因となる水分の影響を減じることが可能である。
【0043】
本発明は、下記式に示される電気化学反応を含むことを特徴としている。また、本発明における電気化学的に水素と酸素に分解するとは、下記の(7)及び(8)に示す電気化学反応によって、水素と酸素に分解することを意味する。
陽極反応:2HO→O+4H+4e (7)
陰極反応:2H+2e→H (8)
【0044】
すなわち、水の電気分解であり、(7)、(8)式の電気化学反応を陽極及び陰極で行うことにより、電解質中のHOを酸素気体及び水素気体に変換することができ、電解質中のHOを大きく減じることが可能となる。
【0045】
水の理論分解電圧は以下のように計算できる。水のギブス自由エネルギーをΔG、水1分子が分解されるときの反応電子数をn、ファラデー定数をFとし、理論分解電圧をΔEとすると、
−ΔG=nFΔE (9)
となる。また、ΔGの値は、反応のエンタルピーΔH、絶対温度T、反応のエントロピーΔSによって以下のように求められる。
−ΔG=ΔH−TΔS (10)
【0046】
ΔHやΔSの値は公知の文献によって調べられるため、当業者であれば、ある温度における水の理論分解電圧を求めることは容易である。例えば、25℃であれば、ΔG=−237.2kJ/molである。式(7)、(8)から分かる通り、水2モルの分解に4モルの電子が使われるため、n=2となる。また、Fは定数で96485C/molである。これらの値から計算すると、ΔE=1.229Vとなる。
【0047】
本発明の方法においては、温度の制限はない。前述の計算の通り、高温において水の理論分解電圧は低下する。電解質の熱安定性を考慮の上、適切な温度を選ぶことが好ましい。例えば、有機溶媒では揮発や発火を防ぐため、実際には80℃以下で行われることが好ましい。この場合、ΔE=1.183V以上において、本発明は実施可能である。さらに、イオン液体では、高温でも安定であるため、300℃以下で本発明を行うことができる。この場合、ΔEを0.996V以上に設定することにおいて本発明は実施可能である。
【0048】
本発明においては、電気分解は不活性ガスを電解質に溶解させた状態で行われなければならない。また、本発明における不活性ガス下とは、電解質が不活性ガスと接し、電解質中に溶解している状態のことである。
【0049】
不活性ガスとしては、窒素分子、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、ラドン等の化学的に安定なガスが挙げられる。使用される不活性ガスは1種であっても、2種以上であってもよい。
【0050】
本発明においては、不活性ガスの割合は容量にして80%以上であれば少なくとも一部の水の除去を実施できる。電解質に溶解している酸素の少なくとも一部が、導入した不活性ガスと置き換わっていれば良いと考える。不活性ガスの割合が大きいほど除去可能な水の割合も大きくなるため、好ましくは容量にして90%以上、より好ましくは99%以上、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0051】
本発明における不活性ガスを電解質に溶解させた状態、又は不活性ガス下とは、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、及びラドン等の不活性ガスが電解質に溶解し、溶存酸素の少なくとも一部と置き換わっている状態である。使用する不活性ガスとしては、ガス入手の経済性より、窒素を用いることが望ましい。
【0052】
不活性ガス下ではなく、酸素含有ガス下の場合、酸素が陰極で還元されてスーパーオキサイドが発生し、(3)〜(5)式に従い、過酸化水素が生成される反応が進行するため、水素気体の生成が妨げられる。さらに、酸素と水の存在化で生じる電気化学反応としては、(11)式の酸化還元反応が知られている。
【数2】

【0053】
(11)式の左辺から右辺への反応が陰極で、右辺から左辺への反応が陽極で起こり得るため、酸素の存在下では水を形外へ除去することはできないことがわかる。よって、本方法においては、酸素を含まず、化学的に安定な不活性ガスの使用が必須となる。
【0054】
すなわち、前電解時の電圧の条件としては、不活性ガス雰囲気において、陰極と陽極の間に与えられる電位差が、「2HO→O+4H+4e」の酸化還元電位と、「2H+2e→H」の酸化還元電位の差よりも大きい値を設定することが適切である。混入する水の量と電解時間、素子の消費電力等を考慮し、前記範囲内で自由に設定することが可能である。なお、酸化還元電位については、Nernstの式によって表されるとおり、温度依存性がある。また、使用する電解質のイオン強度や電極材料や電極形状、電極間距離によっては過電圧が大きくなることも考えられ、本発明を実施するのに必要な電位差は、一般的に理論値の水の理論分解電圧よりも大きくなる。しかしながら、当業者であれば、これらの補正を理論的もしくは実験的に行うことは容易である。ただし、本発明において、水よりも電気化学的に酸化あるいは還元しやすいイオン又は分子を含む電解液において本発明を実施することはできない。
不活性ガスを溶解させる方法としては、電解質を不活性ガス下とする方法、電解質に直接導入管を使って不活性ガスを導入する方法等が挙げられる。
【0055】
本発明の実施のための電極の本数は、陽極と陰極を含む2つ以上であればよい。参照極を含む3電極系であれば、陰極及び陽極の電位を測定しつつ、その電位を制御できるため、確実な電解を行うことが可能である。2電極系での実施の場合においては、2極間の電圧を上記電位差より大きく設定すればよい。
【0056】
また、電気化学セルにおいて、電解質中の水を電気化学的に電極で水素と酸素に分解する間、電気分解時の電流を時間積分することで移動電子量を求め、電解質中の含有水分量を測定することも可能である。このとき、電気分解時の電流を時間積分することで移動電子量を求め、電解質中の含有水分量を測定する手段としては、クーロンメーターが挙げられる。
【0057】
本発明の電気化学セルである非水電解液水分除去装置の実施態様例を以下の図面を用いて説明する。なお、本発明は図示のものに限定されるものではない。
図1は本発明の一実施形態を例示した概略装置構成図である。容器16に入った非水電解液11に、陽極131と陰極132を浸漬し、不活性ガス導入管142及び不活性ガス排出管143を有し、陽極端子122及び陰極端子123を通した容器蓋15によって密封される。陽極131としては、グラッシーカーボンのプレートや気体拡散型のカーボン電極、活性炭等の多孔電極など、導電性が高く、大きな表面積を持つ公知のカーボン電極が用いられる。陰極132としては、白金プレート、コイル状の白金線、白金の目メッシュなど、大きな表面積を利用でき、表面に白金を有する構造体が用いられる。これらの白金電極は、白金金属の機械的加工のみならず、鍍金、蒸着、スパッタリング等によって作製されてもよい。このような電気化学セルに、不活性ガス141を不活性ガス導入管142から導入する。セル内が不活性ガス雰囲気になった後、直流電源121によって、該陽極と該陰極の間に電圧を印加して、水の電気分解を行う。電気分解時の電圧と電流の制御方法は問わないが、電解質の分解が起こらない範囲の定電圧を設定して処理を行うことが望ましい。なお、処理した水の量は、流れた電流値の積算あるいはクーロン量を直接測定することにより算出することができる。あるいは、予め所定のクーロン量あるいは電流の積分値を設定しておくことによって、所望の量の水を処理することが可能となる。電気分解によって、陽極からは酸素が、陰極からは水素が発生する。以上の工程によって、非水電解液11中の水が除去される。
【0058】
次に、本発明の電気化学素子である酸素発生素子の実施態様例を説明する。
図2は本発明の一実施形態を例示した概略装置構成図である。イオン液体層21は、多孔質膜をセパレータとしてその空孔内にイオン液体を含浸させる、あるいはイオン液体自身を重合させポリマーとする、あるいはゲル中にイオン液体を含ませる等の手段によって作製することができる。このイオン液体層21の両面には炭素よりなる気体拡散電極221、222が密着される。さらにこの気体拡散電極221、222の外側には、気体拡散電極221、222への電子移動を促進するための集電体231、232が形成される。このような集電体にはアルミニウムメッシュやチタンメッシュなどの導電性の高く、気体拡散電極を支持できる強度を有する金属メッシュが用いられる。そして集電体231、232に、端子241、242が接続される。このような構成の電気化学素子の気体拡散電極221側へ、送風ファン25を用いて空気を送る。次いで端子241と242間に、端子241がマイナスとなるように、かつ酸素の1電子還元により活性酸素が生成し、該活性酸素が酸化される電位差を印加する。空気中の酸素は気体拡散電極221において1電子還元され、イオン液体層21中のイオン液体中に活性酸素を生成させる。この活性酸素はもう一方の気体拡散電極222まで拡散し、そこで酸化され酸素ガスに戻る。これにより集気容器26中に酸素が溜まる。この酸素は高濃度酸素回収管262より、高濃度酸素282として取出すことができる。
【0059】
さらに、高濃度酸素回収容器26は不活性ガス導入管261及び不活性ガス排出管263を具備し、それぞれの管は弁271、272、273を有する。これらの弁は、好ましくは電磁弁であり、酸素回収と不活性ガス導入を制御することができる。
【0060】
図2に示した本素子に混入した水の処理方法を、以下の図を用いて説明する。
図3は、電解液中の水を除去中の酸素発生素子を表す。すなわち、弁371及び弁373を開き、かつ弁372を閉じ、不活性ガス381を高濃度酸素回収容器中に、ファン、ブロワなど公知の気体輸送手段にて導入する。ボンベ等の圧力を利用して直接的に送り込んでも良い。また同時に陰極側にも送風ファン35を用いて不活性ガス381を導入する。これにより、素子内を不活性ガスで置換する。その後、電源34にて、気体拡散電極321と気体拡散電極322の間に電圧を印加して水の電気分解を行う。この際、どちらの電極を陽極にしても良い。この場合においてもクーロン量あるいは電流を測定するなどして、所定量の水の処理を確認した後、弁371及び弁373を閉じ、不活性ガス381の供給を停止する。これにより、電解質層に混入した水を除去することが可能であり、素子の性能を再生及び維持することが可能である。
【0061】
その後は図4に示すとおり、酸素発生素子として酸素を発生させることができる。すなわち、空気などの酸素含有気体451を素子に供給することで、酸素は気体拡散電極421において1電子還元され、イオン液体層21中のイオン液体中に活性酸素を生成させる。この活性酸素はもう一方の気体拡散電極422まで高効率で拡散し、そこで酸化され酸素ガスに戻る。これにより集気容器46中に酸素が溜まる。この酸素は高濃度酸素回収管462より、高濃度酸素482として取出すことができる。
【0062】
また、本発明の実施を素子にプログラムし、例えば素子の起動時など、所定のタイミングに水処理を行うことも可能である。これにより、自動的に電解液のメンテナンスを行う素子を提供することもできる。この場合は、不活性ガス481の供給停止後、弁471及び弁472を閉じ、弁473を開いた状態で運転することによって生成酸素回収容器を高濃度酸素で満たす。その後、弁473を閉じ弁472を開くことにより、導入した不活性ガス481が高濃度酸素回収管462に流れることを防ぐことができる。
【0063】
なお、前述の弁の開閉タイミングは、酸素回収容器46の体積と酸素生成によって流れる電流値の時間積分(クーロン量)から容易に計算できるため、素子に開閉タイミングを予めプログラミングすることも可能である。その場合のシステム構成図を図5に示す。電気系統制御手段52及び不活性ガス供給手段53を具備することによって、弁551〜556の開閉タイミング及び電極間電圧を制御することで、不活性ガスを電気化学的酸素発生素子5に送り電解液中の水を分解することができ、さらに、毎起動時あるいは一定時間素子が運転したあとなど、所望の時点で素子能力の再生をオンサイトで行うことが可能となる。
【0064】
本発明においては、他の実施例も考えられる。例えば、図6に示す構成のように、定電圧を印加可能で、さらに電極間に流れた電流を計測し、その値を積算することが可能な装置制御手段62を具備することで、含有水分量計測装置として実施可能である。水と非水電解質の混合物においては、水の理論分解電圧以上かつ非水電解質の耐電圧未満の電圧印加条件では、選択的に水を分解可能なことが理論的にわかっている。水1モルの分解において移動する電子は4モルであり、これにファラデー定数を乗じた値が移動した電荷量(クーロン量)である。よって、電流の時間積分によってクーロン量を求めることで反応した水のモル数を逆算することができる。定電圧による電気分解において得られる電流値は反応物の拡散によって決まるため、その電流値は反応物の濃度と拡散係数に依存し、反応物が枯渇したとき、すなわち濃度がゼロになったときは電流値がゼロになる。よって、電気分解の開始から電流値がゼロになるまでに流れた電流値の積算値を求めることで含有水分量を知ることができる。本実施例では、反応した水分子数を直接計測しているため、極めて正確に水分量を計測することが可能であり、さらにその量をオンサイトで知ることができる点に特徴がある。
【実施例】
【0065】
[非水電解質中に混入した水の除去試験]
イオン液体中での水分解挙動を、イオン液体の1つであるN−N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレートを用いて調べた。まずは、窒素ガス供給下におけるN−N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート中で、作用極として金、白金、グラッシーカーボン電極を、参照電極として銀電極を用いたサイクリックボルタモグラムを測定した。次に、N−N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート中に1.8mol/Lの水を加え、作用極として金、白金、グラッシーカーボン電極を、参照電極として銀電極を用いたサイクリックボルタモグラムを窒素ガス供給下で測定した。
【0066】
水を加える前後の測定結果を図7A〜Cに示す。図7において、水を加える前の測定結果は、図中のa,a’(破線)であり、水を加えた後の結果は図中のb、b’(実線)である。金電極においては図7(A)の結果を得た。水を加えた場合(b,b’)のみ+1.6V vs.Ag付近より酸素発生の電流が流れ、また−1.6V vs.Ag付近より水素発生の電流が流れた。白金電極においては図7(B)の結果を得た。水を加えた場合(b,b’)のみ+1.4V vs.Ag付近より酸素発生の電流が流れ、−1.2V vs.Ag付近より水素発生の電流が確認された。グラッシーカーボン電極においては図7(C)の結果を得た。水を加えた場合(b,b’)のみ+1.4V vs.Ag付近から酸素発生の電流が流れたが、水素発生の電流は認められなかった。
【0067】
よって、電気分解のための陽極としては、白金、金、グラッシーカーボンすべての電極を使用することが可能であり、陰極としては、白金、金が適しており、各電流発生電位の差よりも大きな電位差を陽極と陰極の間に印加することで水分解を進行させることができる。さらに、コスト面等を考慮すると、陽極にはグラッシーカーボン、陰極に白金を用いることがより好適である。電極素材、使用する電解質において水素発生電位、酸素発生電位は異なるが、その電位差は理論上水の理論分解電圧であることが知られている。また、電気化学実験により陽極と陰極のそれぞれの印加必要電位を求め、水分解に必要な電圧を見積もることは本実施例が示すとおり行うことで可能である。
【0068】
[非水電解質中に混入した水の除去例]
本発明の実施例として、図8に示す装置でイオン液体N−N−N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドに混入した水の電気分解を行った。すなわち、グラッシーカーボンプレート82(1.5cm×1.5cm)と円筒形の白金面メッシュ83(直径0.5cm、高さ1.2cm)を有し、窒素ガスの供給管841・排出管842を有する電気分解槽84と、液絡851によって前記電気分解槽84に接し、さらにAg/AgCl参照電極として機能する塩化銀ワイヤー852を有する参照電極槽85に分かれた電気化学セルにおいて、1.8mol/Lの水を予め混入させたN−N−N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドを電極が浸漬されるように電気分解槽84中を満たした。水の電気分解は、グラッシーカーボンプレートを作用極、円筒形の白金メッシュを対極とし、Ag/AgCl参照電極に対して+1.2Vの電位(銀参照電極では+1.7Vに相当)を作用極に60分間印加することによって行った。電位の制御は公知のポテンシオスタット81によって行った。なお、電気分解中は窒素ガス843のバブリングを行い、非処理電解液86に窒素ガスを溶解させると共に電気分解槽84を窒素ガスで満たした。窒素ガスとしては、純度99.99%の窒素ガスをボンベから調圧弁を介して供給した。さらに、電気分解中には磁気攪拌子871を回転させて水の拡散を促した。
【0069】
水除去の確認は、水添加前、水添加後、水の電気分解後においてそれぞれ酸素飽和下において、N−N−N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド中でのO/Oの酸化還元反応のサイクリックボルタモグラムを測定し、その結果を比較することで行った。直径1mmのグラッシーカーボン電極で得られたサイクリックボルタモグラム(Scan Rate:50mV/sec)を図9に示す。
【0070】
図9中の(a)はコントロール、(b)は1.8mol/Lの水を加えた後、(c)は水の電気分解後のボルタモグラムである。(b)においては(a)と異なり、酸素の還元電位が正にシフトし、−1.4V付近のOの酸化電流値が小さくなり、−1.1V vs.Ag/AgCl付近に酸化電流ピークが現れた。これはそれぞれ、(5)式に従うHOの発生、(3)〜(4)式に従う発生Oの消滅、生成した過酸化水素種の電極での酸化反応であり、イオン液体に水が混入していることが見て取れる。しかしながら、水の電気分解を行った後の(c)においては、(b)にあった特徴が無くなり、一対の酸化還元反応のみが確認でき、(a)のボルタモグラムと一致する。このことから、電気化学的に活性の高い副産物を生成することなく、水の除去が選択的に行われていることを確認できた。
【0071】
水の電気分解中は陽極の電位を操作し、電流源として陰極を用いた。すなわち、一般的な電気化学の三電極系の作用極を陽極とし、対極を陰極としている。通常の電気化学実験で作用極と対極の間の電位差を測定しないが、図7に示した結果にあるように、対極(陰極)が電流源として働くためにはその電位が約−1.2Vよりも負となる必要がある。電気分解が進行したということは、対極(陰極)の電位はそれよりも負になっていたことにほかならない。
【0072】
さらに、N−N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート中に混入した水の除去を図8の装置によって同様の手順で行い、同様の方法によって評価した結果を図10に示す。図10内の(a)はコントロール、(b)は1.8mol/Lの水を加えた後、(c)は水の電気分解後のボルタモグラムである。(b)においては、水との反応によって生じた過酸化水素種により電極での酸化還元反応が変化していることを見て取ることができるが、水除去後の(c)においては(b)にあった特徴が無くなり、一対の酸化還元反応のみが確認でき、(a)のボルタモグラムと一致する。
【0073】
以上より、N−N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレートを用いた場合においても、電気化学的に活性の高い副産物を生成することなく、水の除去が選択的に行われていることを確認できた。疎水的性質の強いビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドを有するイオン液体のみならず、親水的性質の強いテトラフルオロボレートを有するイオン液体においても、本発明の同様の手順で水を除去することが可能である。
【0074】
[空気導入による比較試験]
本発明の比較例として、図8に示す装置で、窒素ガスに代わり空気、すなわち容量にして窒素を約78.03%、酸素を約20.83%含む混合ガスを導入して、イオン液体N−N−N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドに混入した水の電気分解を行った。すなわち、グラッシーカーボンプレート82(1.5cm×1.5cm)と円筒形の白金面メッシュ83(直径0.5cm、高さ1.2cm)を有し、窒素ガスの供給管841・排出管842を有する電気分解槽84と、液絡851によって前記電気分解槽84に接し、さらにAg/AgCl参照電極として機能する塩化銀ワイヤー852を有する参照電極槽85に分かれた電気化学セルにおいて、あらかじめ水蒸気を含む空気の長期間の暴露により水を混入させたN−N−N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドを電極が浸漬されるように電気分解槽84中を満たした。水の電気分解は、グラッシーカーボンプレートを作用極、円筒形の白金メッシュを対極とし、Ag/AgCl参照電極に対して+1.2Vの電位(銀参照電極では+1.7Vに相当)を作用極に60分間印加することによって行った。電位の制御は公知のポテンシオスタット81によって行った。なお、電気分解中は空気のバブリングを行い、非処理電解液86に空気を溶解させると共に電気分解槽84を空気で満たした。
【0075】
水除去の評価は、水の電気分解前後でそれぞれ、N−N−N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド中でのO/Oの酸化還元反応のサイクリックボルタモグラムを測定し、その結果を比較することで行った。直径1mmのグラッシーカーボン電極で得られたサイクリックボルタモグラム(Scan Rate:100mV/sec)を図11に示す。図11中の(a)はイオン液体中のボルタモグラムであり、(b)は水の電気分解後のボルタモグラムである。図9(a)又は(c)と比較すると、図11(a)においては、−1.4V vs.Ag付近のOの酸化電流値が消え、−1.1V vs.Ag付近に酸化電流ピークが現れており、水が混入していることが確認された。
【0076】
また、図11(b)は電気分解を行った後のサイクリックボルタモグラムであるが、図10(c)のようにO/Oの酸化還元反応が観測できない。すなわち、水の除去はできていない。特に、−0.8V vs.Ag付近、−0.3V vs.Ag付近に新たなピークが発生している。これは、式(3)〜(5)ないし(11)による反応によって生成した過酸化水素種がさらに電極で電気分解された結果生じた生成物によるピークであると推測でき、空気を用いた場合では、水除去が不可能であることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態を例示した概略装置構成図
【図2】本発明の一実施形態を例示した概略装置構成図
【図3】本発明の一実施形態である酸素発生素子内の水除去の説明図
【図4】本発明の一実施形態である酸素発生素子内の水除去の説明図
【図5】本発明の一実施形態を例示した酸素生成システム構成図
【図6】本発明の一実施形態として例示した含有水分量計測装置
【図7】本発明の原理を実証するボルタモグラム
【図8】本発明の一実施形態である酸素発生素子内の水除去装置
【図9】本発明の実施例の効果を示すボルタモグラム
【図10】本発明の実施例の効果を示すボルタモグラム
【図11】本発明の比較例を示すボルタモグラム
【符号の説明】
【0078】
1.非水電解液水分除去装置
5.電気化学的酸素発生素子
6.非水電解液混入水分測定装置
8.水除去装置実施例
11.被処理電解液
15.密封用蓋
16.電解液容器
21.イオン液体層
24.電源
25.送風ファン
26.生成酸素収集容器
31.イオン液体層
34.電源
35.送風ファン
36.生成酸素収集容器
41.イオン液体層
44.電源
45.送風ファン
46.生成酸素収集容器
51.電源
52.電気系統制御手段
53.不活性ガス供給手段
54.送風ファン
61.被測定電解液
62.装置制御手段
64.不活性ガス供給手段
65.密封用蓋
66.電解液容器
81.ポテンシオスタット
82.グラッシーカーボンプレート(陽極)
83.円筒形白金メッシュ(陰極)
84.電気分解槽
85.参照電極槽
86.非処理電解液
121.直流電源
122.陽極端子
123.陰極端子
131.陽極
132.陰極
141.不活性ガス
142.不活性ガス導入管
143.不活性ガス排出管
221.気体拡散電極
222.気体拡散電極
231.集電体
232.集電体
241.陰極端子
242.陽極端子
251.供給ガス
261.不活性ガス導入管
262.高濃度酸素回収管
263.不活性ガス排出管
271、272、273.弁
281.不活性ガス
282.高濃度酸素
321.気体拡散電極
322.気体拡散電極
331.集電体
332.集電体
341.陰極端子
342.陽極端子
361.不活性ガス導入管
362.高濃度酸素回収管
363.不活性ガス排出管
371、372、373.弁
381.不活性ガス
382.高濃度酸素
421.気体拡散電極
422.気体拡散電極
431.集電体
432.集電体
441.陰極端子
442.陽極端子
451.酸素含有気体
461.不活性ガス導入管
462.高濃度酸素回収管
463.不活性ガス排出管
471、472、473.弁
481.不活性ガス
482.高濃度酸素
551、552、553、554、555、556.弁
561.不活性ガス導入管
562.高濃度酸素回収管
563.不活性ガス排出管
631.陽極
632.陰極
641、642.不活性ガス制御弁
643.不活性ガス
644.不活性ガス導入管
645.不活性ガス排出管
841.窒素ガス導入管
842.窒素ガス排出管
843.窒素ガス
851.液絡
852.塩化銀ワイヤー
871.磁気攪拌子
872.磁気攪拌子制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの電極、及び該電極が接する電解質を備える電気化学セルの電解質中の水を除去する方法において、
少なくとも1種類以上の成分からなる不活性ガスを、該電解質に溶解させて、該電極の陰極と陽極の間に水の理論分解電圧以上の直流電圧を印加することで、該電解質中の水を電気化学的に水素と酸素に分解し、該電解質中の水を除去することを特徴とする、水除去方法。
【請求項2】
該電極が参照電極を含む3つの電極を具備することを特徴とする請求項1に記載の水除去方法。
【請求項3】
該陰極の少なくとも表面が金もしくは白金であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水除去方法。
【請求項4】
該陰極の少なくとも表面が白金であることを特徴とする請求項3に記載の水除去方法。
【請求項5】
該陽極の少なくとも表面が金、白金、もしくは炭素を主成分とする電極であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の水除去方法。
【請求項6】
該陽極の少なくとも表面がグラッシーカーボンであることを特徴とする請求項5に記載の水除去方法。
【請求項7】
該電解質が非水電解液である請求項1から6のいずれかに記載の水除去方法。
【請求項8】
該電解質がイオン液体である請求項7に記載の水除去方法。
【請求項9】
該イオン液体のアニオンが、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、もしくはテトラフルオロボレートであることを特徴とする請求項8に記載の水除去方法。
【請求項10】
該イオン液体が、N−N−N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、もしくはN−N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレートであることを特徴とする請求項9に記載の水除去方法。
【請求項11】
電気化学素子の電解質中の水を除去する方法において、
少なくとも1種類以上の成分からなる不活性ガスを電解質に溶解させて、該電気化学素子が有する2つ以上の電極を用いて、少なくとも水の理論分解電圧の電圧を該電極の陰極と陽極の間に印加することで該非水電解液中の水を水素と酸素に分解し、該非水電解液中の水を除去することを特徴とする、水除去方法。
【請求項12】
少なくとも2つの電極、該電極が浸漬されるように電解質を満たすことのできる容器、該容器に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段、及び該電極の陰極と陽極の間に水の理論分解電圧以上の直流電圧を印加する電源を有し、該電極において該容器内の該電解質中の水を電気化学的に水素と酸素に分解することで、該電解質中の水を除去する水除去装置。
【請求項13】
該電極が参照電極を含む3つの電極を具備することを特徴とする請求項12に記載の水除去装置。
【請求項14】
該陰極の少なくとも表面が金もしくは白金であることを特徴とする請求項12又は13に記載の水除去装置。
【請求項15】
該陰極の少なくとも表面が白金であることを特徴とする請求項14に記載の水除去装置。
【請求項16】
該陽極の少なくとも表面が金、白金、もしくは炭素を主成分とすることを特徴とする請求項12から15のいずれかに記載の水除去装置。
【請求項17】
該陽極の少なくとも表面がグラッシーカーボンであることを特徴とする請求項16に記載の水除去装置。
【請求項18】
該電解質が非水系電解液である請求項12から17のいずれかに記載の水除去装置。
【請求項19】
該電解質がイオン液体である請求項12から17のいずれかに記載の水除去装置。
【請求項20】
該イオン液体のアニオンが、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、もしくはテトラフルオロボレートであることを特徴とする請求項19に記載の水除去装置。
【請求項21】
該イオン液体が、N−N−N−トリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、もしくはN−N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレートであることを特徴とする請求項20に記載の水除去装置。
【請求項22】
イオン液体を電解質とし、該イオン液体を含浸した多孔質膜からなるセパレータ、該セパレータに接して設けられた陰極及び陽極、該陰極側に該陰極と酸素を含有する気体が接するための酸素を含有する気体の供給手段、及び該陽極側に該陽極から生成される気体収集手段を備え、該陰極において供給気体中の酸素を一電子還元し活性酸素を生成し、該陽極において該活性酸素を酸化し高濃度の酸素を生成して取り出す電気化学的酸素発生素子であって、
不活性ガス供給手段によって少なくとも1種類以上の成分からなる不活性ガスを該電解質に溶解させ、該電極に水の理論分解電圧以上の電圧を印加して該イオン液体中の水を水素気体と酸素気体に分解し、該電極から水素気体及び酸素気体を除去する手段を備える電気化学的酸素発生素子。
【請求項23】
該不活性ガス供給手段は、該不活性ガス導入管及び不活性ガス排出管を有し、該不活性ガス導入管及び不活性ガス排出管は不活性ガスの供給を制御するための電磁弁を有することを特徴とする請求項22に記載の電気化学的酸素発生素子。
【請求項24】
該陽極及び該陰極が三次元的な多孔構造を有する電極であることを特徴とする請求項22又は23に記載の電気化学的酸素発生素子。
【請求項25】
該陽極及び該陰極が気体拡散電極であることを特徴とする請求項22〜24のいずれかに記載の電気化学的酸素発生素子。
【請求項26】
該イオン液体のアニオンが、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、もしくはテトラフルオロボレートであることを特徴とする請求項22〜25のいずれかに記載の電気化学的酸素発生素子。
【請求項27】
該イオン液体が、N−N−N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、もしくはN−N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレートであることを特徴とする請求項26に記載の電気化学的酸素発生素子。
【請求項28】
少なくとも2つの電極、該電極が浸漬されるように電解質を満たすことのできる容器、該容器に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段、及び該電極の陰極と陽極の間に水の理論分解電圧以上の直流電圧を印加する電源を有し、
測定時間における、該電極によって該容器内の該電解質中の水を電気化学的に水素と酸素に分解する間の電流を時間積分することで移動電子量を求め、電解質中の測定時間の含有水分量を測定する手段を有する、水分量測定装置。
【請求項29】
該電解質を攪拌する手段を有することを特徴とする、請求項28に記載の水分量測定装置。
【請求項30】
該電解質が非水電解液であることを特徴とする請求項28又は29に記載の水分量測定装置。
【請求項31】
該電解質がイオン液体であることを特徴とする請求項30の水分量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−18840(P2010−18840A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180170(P2008−180170)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】