説明

電解質及びその製造方法、並びに、電池

【課題】プロトン伝導性、耐熱性、耐久性、製膜性、及び、熱水溶解性に優れた電解質及びその製造方法、並びに、このような電解質を用いた電池を提供すること。
【解決手段】−E2−[Rf1−E1]m−で表される親水性セグメントAと、−[Rf2−Ar]n−Rf3−で表される疎水性セグメントBとが化学結合を介して、交互に結合している構造を備えた電解質及びその製造方法、並びに、このような電解質を用いた電池。
但し、Rf1、Rf2、Rf3は、それぞれ、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。E1、E2は、それぞれ、一般式:−(CONM)i1(CO)i2(SO2NM)i3(SO2)i4−で表されるプロトン伝導部位(0≦i1、0≦i2≦1、0≦i3、0≦i4≦1、0<i1+i3。i1〜i4は、それぞれ、整数。Mは、プロトン又は金属元素。)。Arは、アリレン基。0≦m(mは、整数)、1≦n(nは、整数)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質及びその製造方法、並びに、電池に関し、さらに詳しくは、燃料電池などの各種電気化学デバイスに用いられる電解質膜や触媒層内電解質に使用することができる電解質及びその製造方法、並びに、このような電解質を用いた電池(例えば、太陽電池、一次電池、二次電池など)に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体(MEA)を基本単位とする。また、固体高分子型燃料電池において、電極は、一般に、拡散層と触媒層の二層構造をとる。拡散層は、触媒層に反応ガス及び電子を供給するためのものであり、カーボンペーパー、カーボンクロス等が用いられる。また、触媒層は、電極反応の反応場となる部分であり、一般に、白金等の電極触媒を担持したカーボンと固体高分子電解質(触媒層内電解質)との複合体からなる。
【0003】
このようなMEAを構成する電解質膜あるいは触媒層内電解質には、耐酸化性に優れた炭化フッ素系電解質(例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成(株)製)、フレミオン(登録商標、旭硝子(株)製)等。)を用いるのが一般的である。また、炭化フッ素系電解質は、耐酸化性に優れるが、一般に極めて高価である。そのため、固体高分子型燃料電池の低コスト化を図るために、炭化水素系電解質の使用も検討されている。
【0004】
しかしながら、固体高分子型燃料電池を車載用動力源等として用いるためには、解決すべき課題が残されている。例えば、固体高分子型燃料電池において、高い性能を得るためには、電池の作動温度は高い方が好ましく、そのためには、電解質膜の耐熱性が高いことがこのましい。しかしながら、従来の電解質膜は、高温におけるプロトン伝導度が低いという問題がある。
【0005】
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、F−C64−SO2NKSO2−(CF2)4−SO2NKSO2−C64−Fと、Cl−C64−SO2−C64−Clと、HO−C64−C64−OHとを共重合させることにより得られる共重合体が開示されている。
同文献には、このような方法により得られる共重合体は、温度:85℃、相対湿度:95%における伝導率が156mS/cmである点が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−331972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一端にパーフルオロアルキル鎖が結合し、他端に芳香族環が結合しているスルホンイミド基は、両端にパーフルオロアルキル鎖が結合しているスルホンイミド基に比べて、プロトンの解離度が低い。そのため、芳香族環が結合しているスルホンイミド基を含む電解質は、酸性度が低くなり、プロトン伝導性が低下する。
一方、パーフルオロアルキル鎖とスルホンイミド基のみからなる電解質は、高いプロトン伝導性を示すが、耐熱性、耐熱水溶解性に問題がある。また、主鎖の大半が芳香族環からなる電解質は、剛直であるため、成形性に劣る。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、プロトン伝導性、耐熱性、耐久性、製膜性、及び、熱水溶解性に優れた電解質及びその製造方法、並びに、このような電解質を用いた電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る電解質は、
(1)式で表される親水性セグメントAと、(2)式で表される疎水性セグメントBとが、化学結合を介して交互に結合している構造を備えたものからなる。
A: −E2−[Rf1−E1]m− ・・・(1)
但し、Rf1は、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
1、E2は、それぞれ、一般式:−(CONM)i1(CO)i2(SO2NM)i3(SO2)i4−で表されるプロトン伝導部位(0≦i1、0≦i2≦1、0≦i3、0≦i4≦1、1≦i1+i3。i1〜i4は、それぞれ、整数。Mは、プロトン又は金属元素。)。
0≦m(mは、整数)。
B: −[Rf2−Ar]n−Rf3− ・・・(2)
但し、Rf2、Rf3は、それぞれ、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
Arは、アリレン基。
1≦n(nは、整数)。
Rf1、Rf2、Rf3、E1、E2、Arは、それぞれ、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【0010】
本発明に係る電池は、本発明に係る電解質を用いたことを要旨とする。
【0011】
本発明に係る電解質の製造方法の1番目は、
末端にアミド系官能基及び/又はハライド系官能基を有する1種又は2種以上のモノマー又はポリマーを用いて、縮合反応により本発明に係る電解質を得る縮合反応工程を備えていることを要旨とする。
さらに、本発明に係る電解質の製造方法の2番目は、
末端に−Rf−X基(但し、Rfは、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。Xは、ハロゲン。)を有する1種又は2種以上のモノマー又はポリマーを用いて、カップリング反応により本発明に係る電解質を得るカップリング反応工程を備えていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電解質は、スルホンイミド基の両端にパーフルオロ鎖が結合しているので、スルホンイミド基のプロトンの解離度が高くなり、高いプロトン伝導性を示す。また、疎水部がパーフルオロ鎖と芳香族環からなっているので、耐熱性が高く、耐熱水溶解性も高い。また、疎水部にパーフルオロ鎖及び芳香族環を含むので、化学的安定性も高い。さらに、芳香族環はハードセグメントであるのに対し、芳香族環に結合しているパーフルオロ鎖はソフトセグメントであるため、電解質に適度な成形性や融点を持たせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 電解質]
本発明に係る電解質は、親水性セグメントAと疎水性セグメントBとが化学結合を介して交互に結合している構造を備えている。
【0014】
[1.1. 親水性セグメント]
親水性セグメントAは、次の(1)式で表される構造を持つ。
A: −E2−[Rf1−E1]m− ・・・(1)
但し、Rf1は、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
1、E2は、それぞれ、一般式:−(CONM)i1(CO)i2(SO2NM)i3(SO2)i4−で表されるプロトン伝導部位(0≦i1、0≦i2≦1、0≦i3、0≦i4≦1、1≦i1+i3。i1〜i4は、それぞれ、整数。Mは、プロトン又は金属元素。)。
0≦m(mは、整数)。
Rf1、E1、E2は、それぞれ、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【0015】
Rf1は、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖を表す。パーフルオロ鎖とは、C−F結合を含み、C−H結合を含まない2価の基をいう。炭素数及び分子構造が等しい1種類のモノマーのみを用いて電解質を合成した場合、繰り返し単位中に含まれる各Rf1の炭素数や分子構造はすべて同一となるが、炭素数や分子構造の異なる2種以上のモノマーを用いた場合、繰り返し単位中に含まれる各Rf1の炭素数や分子構造は、繰り返し単位毎に異なる場合がある。
Rf1は、具体的には、次の(1.1)式で表されるものが好ましい。
−(CFpRf'q)r− ・・・(1.1)
但し、p、qは、1以上の整数で、p+q=2。rは、1以上の整数。
Rf'は、パーフルオロアルキル鎖又はパーフルオロアルコキシ鎖であり、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【0016】
各繰り返し単位中に含まれるプロトン伝導部位E1、E2は、合成に使用するモノマーの種類に応じて、すべて同一となる場合と、繰り返し単位毎に異なる場合とがある。
親水性セグメントに含まれるプロトン伝導部位E1、E2は、上述した一般式で表されるものの中でも、特に以下の構造を有するものが好ましい。
(1) −CONM−、−CONMCO−、
−(CONM)i1−(2≦i1)、−(CONM)i1CO−(2≦i1)。
(2) −SO2NM−、−SO2NMSO2−、
−(SO2NM)i3−(2≦i3)、−(SO2NM)i3SO2−(2≦i3)、
−(SO2NM)i3(SO2)i4−(2≦i3、2≦i4)。
(3) −SO2NHCO−、
−(SO2NM)i3CO−(2≦i3)、−(CONM)i1SO2−(2≦i1)。
(4) −CONMSO2NM−、−(CONM)i1SO2NM−(2≦i1)、
−CONM(SO2NM)i3−(2≦i3)、
−(CONM)i1(SO2NM)i3−(2≦i1、2≦i3)。
(5) −CONMSO2NMCO−、−(CONM)i1SO2NMCO−(2≦i1)、
−CONM(SO2NM)i3CO−(2≦i3)、
−(CONM)i1(SO2NM)i3CO−(2≦i1、2≦i3)。
(6) −CONMSO2NMSO2−、−(CONM)i1SO2NMSO2−(2≦i1)、
−CONM(SO2NM)i3SO2−(2≦i3)、
−(CONM)i1(SO2NM)i3SO2−(2≦i1、2≦i3)。
なお、本発明において、「−SO2NM−」というときは、「−NMSO2−」も含まれる。左右非対称の構造を有する他のプロトン伝導部位E1、E2も同様である。また、CONM、CO、SO2NM及びSO2は、必ずしも上述した一般式に示す順序で結合している必要はなく、順序が入れ替わっていても良い。
【0017】
親水性セグメントAは、特に、次の(1.2)式で表されるものが好ましい。
−(SO2)i5(NMSO2)i6−[(CFpRf'q)r−(SO2NM)i3(SO2)i4]m
・・・(1.2)
但し、p、qは、1以上の整数で、p+q=2。rは、1以上の整数。
Rf'は、パーフルオロアルキル鎖又はパーフルオロアルコキシ鎖。
Mは、プロトン又は金属元素。
1≦i3、0≦i4≦1、0≦i5≦1、1≦i6、0≦m。
Rf'、Mは、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【0018】
[1.2. 疎水性セグメント]
疎水性セグメントBは、次の(2)式で表される構造を持つ。
B: −[Rf2−Ar]n−Rf3− ・・・(2)
但し、Rf2、Rf3は、それぞれ、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
Arは、アリレン基。
1≦n(nは、整数)。
Rf2、Rf3、Arは、それぞれ、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【0019】
Rf2、Rf3は、それぞれ、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖を表す。炭素数及び分子構造が等しい1種類のモノマーのみを用いて電解質を合成した場合、繰り返し単位中に含まれる各Rf2、Rf3の炭素数や分子構造はすべて同一となるが、炭素数や分子構造の異なる2種以上のモノマーを用いた場合、繰り返し単位中に含まれる各Rf2、Rf3の炭素数や分子構造は、繰り返し単位毎に異なる場合がある。
Rf2、Rf3は、それぞれ、次の(2.1)式で表されるものが好ましい。
−(CFpRf'q)r− ・・・(2.1)
但し、p、qは、1以上の整数で、p+q=2。rは、1以上の整数。
Rf'は、パーフルオロアルキル鎖又はパーフルオロアルコキシ鎖であり、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【0020】
アリレン基Arとは、芳香族環、又は、これらが直接結合を介して連結したものからなる2価の基をいう。繰り返し単位中に含まれるアリレン基Arは、合成に使用するモノマーの種類に応じて、すべて同一となる場合と、繰り返し単位毎に異なる場合とがある。
アリレン基Arとしては、具体的には、以下のようなものがある。疎水性セグメントBには、以下のいずれか1種のアリレン基Arのみが含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
(1) ベンゼン(−C64−)、ビフェニル(−(C64)2−)、ターフェニル(−(C64)3−)、テトラフェニル(−(C64)4−)。
(2) ナフタレン(−C106−)、アントラセン(−C148−)、ナフタセン(−C1810−)、ペンタセン(−C2212−)、フェナントレン(−C148−)、ピレン(−C168−)などの縮合環類。
(3) ピリジン(−C53N−)、ピラジン(−C422−)、ピリミジン(−C422−)などの複素環類。
(4) ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾールなどの複素環類。
(5) キノリン(−C95N−)、イソキノリン(−C95N−)、キノキサリン(−C842−)などの複素環類。
(6) カルバゾール、オキサゾール、オキサチアゾール、フラン(−C42O−)、チオフェン(−C42S−)、ピロール(−C43N−)などの複素環類。
(7) フルオレン、スチルベンなどの多環芳香族。
(8) (1)〜(7)の置換誘導体。
(9) (1)〜(8)のいずれか2個以上が直接結合を介してつながったもの。
【0021】
疎水性セグメントBは、特に、次の(2.2)式で表されるものが好ましい。
−[(CFpRf'q)r−Ar]n−(CFp'Rf"q')r'− ・・・(2.2)
但し、
p、qは、1以上の整数で、p+q=2。rは、1以上の整数。
p'、q'は、1以上の整数で、p'+q'=2。r’は、1以上の整数。
Rf'、Rf"は、それぞれ、パーフルオロアルキル鎖又はパーフルオロアルコキシ鎖。
1≦n(nは、整数)。
Rf'、Rf"、Arは、それぞれ、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【0022】
[1.3. 分子量]
親水性セグメントA及び疎水性セグメントBの分子量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。
すなわち、本発明に係る電解質は、相対的に小さな分子量を持つ親水性セグメントAと、相対的に小さな分子量を持つ疎水性セグメントBとが交互に結合しているコポリマーであっても良い。
また、本発明に係る電解質は、相対的に小さな分子量を持つ親水性セグメントAと、相対的に大きな分子量を持つ疎水性セグメントBとが交互に結合しているコポリマーであっても良く、あるいは、その逆であっても良い。
さらに、本発明に係る電解質は、相対的に大きな分子量を持つ親水性セグメントAと、相対的に大きな分子量を持つ疎水性セグメントBとが交互に結合しているブロックコポリマーであっても良い。ブロックコポリマーとは、2個のセグメントからなるジブロックコポリマー(A−B)、3個のセグメントからなるトリブロックコポリマー(A−B−A、B−A−B)、及び、4個以上のセグメントからなるマルチブロックコポリマー(−(A−B)n−)のいずれも含まれる。
【0023】
本発明に係る電解質において、親水性セグメントAの分子量をある一定値に固定し、疎水性セグメントBの分子量を大きくしていくと、疎水性セグメントBの分子量があるしきい値以上になった時に、電解質は水に対して不溶になる。電解質を不溶性にするための疎水性セグメントBの分子量は、親水性セグメントAの分子量や分子構造等に応じて異なる。高プロトン伝導性と耐膨潤性とを両立させるためには、親水性セグメントAの分子量(Ma)は相対的に大きく、かつ、Maに対する疎水性セグメントBの分子量(Mb)の比(Mb/Ma)は、電解質が水に対して不溶となる臨界値以上が好ましい。
【0024】
なお、本発明において、「モノマー」というときは、単量体をいう。また、「ポリマー」というときは、2量体以上の分子量の大きい重合体をいう。
【0025】
[2. 電解質の製造方法(1)]
次に、本発明に係る電解質の製造方法について説明する。
本発明の第1の実施の形態に係る電解質の製造方法は、所定の分子構造を有するモノマー又はポリマーを用いて、縮合反応により本発明に係る電解質を得る縮合反応工程を備えている。
【0026】
[2.1 縮合反応に使用するモノマー又はポリマー]
縮合反応に使用するモノマー又はポリマーには、末端にアミド系官能基及び/又はハライド系官能基を有するものを用いる。電解質の合成には、このようなモノマー又はポリマーのいずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0027】
アミド基又はその誘導体(アミド系官能基)と、ハライド基又はその誘導体(ハライド系官能基)とを直接、又は、後述する他のモノマー(例えば、XO2SNHSO2Xなど)とともに縮合反応させると、上述したプロトン伝導部位Eを形成することができる。
ここで、アミド系官能基とは、一般式:−SO2NZ12、−CONZ12、又は、−NZ12で表される官能基をいう。但し、Z1、Z2は、それぞれ、H、M、又は、SiMe3を表す。また、Mは、金属イオンを表す。特に、(Z、Z2)の組み合わせが、(H、H)、(H、M)、(SiMe3、M)、又は、(H、SiMe3)からなるものは、高い反応性を有しているので、アミド系官能基として好適である。
ハライド系官能基とは、一般式:−SO2X又は−COXで表される官能基をいう。但し、Xは、F、Cl、Br、I、又はOHを表す。特に、XがF、Cl、Br、又は、Iからなるものは、高い反応性を有しているのでハライド系官能基として好適である。
【0028】
縮合反応に使用するモノマー又はポリマーの第1の具体例は、次の(3)式で表されるもの(以下、これを「モノマーA又はポリマーA」という)からなる。
1−[Rf1−E1]m'−Rf4−S2 ・・・(3)
但し、
1、S2は、それぞれ、−NZ12、−SO2NZ12、−SO2X、−CONZ12、又は、−COX(Z1、Z2は、それぞれ、H、M、SiMe3。Mは、金属元素。Xは、ハロゲン又はOH)。
Rf1、Rf4は、それぞれ、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
Arは、アリレン基。
0≦m'(m'は、整数)。
Rf1、E1は、それぞれ、繰り返し単位中において任意に選択することができる。
【0029】
縮合反応に使用するモノマー又はポリマーの第2の具体例は、次の(4)式で表されるもの(以下、これを「モノマーB又はポリマーB」という)からなる。
3−[Rf2−Ar]n−Rf3−S4 ・・・(4)
但し、
3、S4は、それぞれ、−NZ12、−SO2NZ12、−SO2X、−CONZ12、又は、−COX(Z1、Z2は、それぞれ、H、M、SiMe3。Mは、金属元素。Xは、ハロゲン又はOH)。
Rf2、Rf3は、それぞれ、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
Arは、アリレン基。
1≦n(nは、整数)。
Rf2、Arは、それぞれ、繰り返し単位中において任意に選択することができる。
【0030】
[2.2 縮合反応に使用するモノマー又はポリマーの製造方法]
縮合反応に用いるモノマー又はポリマーは、市販されているか、あるいは、市販されているモノマーを出発原料に用いて、公知の方法により製造することができる。
例えば、(3)式で表されるポリマーA(m'≧1)は、(3)式で表されるモノマーA(m'=0)を用いて、縮合反応により合成することができる。次の(3.1)〜(3.4)式に、末端がアミド系官能基からなる各種ポリマーAの合成反応式の一例を示す。但し、Xは、ハロゲンである。
いずれの場合も、末端がアミド系官能基からなるポリマーAは、塩基存在下でモノマーを反応させた後、過剰のアミド系モノマー又はNH3と反応させることにより得られる。また、式中のmは、式中のa及びb、並びに、反応時間及び温度により制御することができる。
【0031】
【化1】

【0032】
他のプロトン伝導部位Eを有するポリマーAも同様であり、分子の末端に−SO2X基又は−COX基を有するモノマー又はポリマーと、分子の末端に−SO2NZ12基、−CONZ12基、又は、−NZ12基を有するモノマー又はポリマーとを縮合反応させることにより、上述したプロトン伝導部位E1を備えたポリマーAを得ることができる。
また、この時、
(1) XO2SNMSO2X、H2NO2SNMSO2NH2、XOCNMCOX、H2NCONMCONH2(Mは、プロトン又は金属元素、Xは、ハロゲン)、
(2) H2NSO2X、H2NCOX(Xは、ハロゲン)、
(3) H2NCONH2、H2NSO2NH2
(4) COX2、SO22(Xは、ハロゲン)
などのモノマーを併用すると、i1又はi3の一方又は双方が2以上であるプロトン伝導部位E1を備えたポリマーAを合成することができる。(3.5)〜(3.10)式に、その合成反応の一例を示す。
【0033】
【化2】

【0034】
また、例えば、(4)式で表されるモノマーB又はポリマーBは、X−Rf2−X、X−Ar−X、X−Rf3−S3(又は、X−Rf3−S4)などの末端ハロゲン化物を用いて、脱ハロゲン化カップリング反応により合成することができる。次の(4.1)〜(4.2)式に、モノマーB又はポリマーBの合成反応の一例を示す。但し、Xは、ハロゲン(例えば、I)、ボロン酸、又は、ボロン酸環状エステルである。
【0035】
【化3】

【0036】
いずれの場合においても、Rf、Ar、及び、末端の官能基が等価である原料のみを用いると、繰り返し単位中に含まれるRf1、Rf2、Ar、及び、E1が同一であるポリマーA、Bが得られる。
一方、Rf、Ar、又は、末端の官能基が異なる2種以上の原料を用いると、繰り返し単位中に含まれるRf1、Rf2、Ar、及び/又は、E1が異なるポリマーA、Bが得られる。
【0037】
[2.3 縮合反応を用いた電解質の製造方法]
本実施の形態において、電解質は、末端にアミド系官能基及び/又はハライド系官能基を有する1種又は2種以上のモノマー又はポリマーを用いて、縮合反応により合成することができる。この場合、縮合反応する一方の官能基はアミド系官能基からなり、他方の官能基はハライド系官能基が好ましい。また、出発原料には、モノマーのみを用いても良く、ポリマーのみを用いても良く、あるいは、モノマーとポリマーの混合物を用いても良い。次の(5.1)〜(5.3)式に、上述したモノマーA又はポリマーAと、モノマーB又はポリマーBを用いた縮合反応の一例を示す。
【0038】
【化4】

【0039】
(5.1)〜(5.3)式において、式中のkは、式中のa及びb、並びに、反応時間及び温度により制御することができる。
また、(5.1)式において、縮合反応によりプロトン伝導部位E1を形成するためには、S3又はS4の一方がアミド系官能基であり、他方がハライド系官能基であればよい。
また、(5.2)式及び(5.3)式において、縮合反応によりプロトン伝導部位E1を形成するためには、S1、S2がアミド系官能基であり、S3、S4がハライド系官能基であるか、あるいは、その逆であればよい。
さらに、(5.1)〜(5.3)式において、上述したXO2SNMSO2Xなどのモノマーを併用すると、i1又はi3の一方又は双方が2以上であるプロトン伝導部位E1を備えた電解質を合成することができる。この場合、XO2SNMSO2Xなどのモノマーと、モノマーA、B又はポリマーA、Bからプロトン伝導部位E1が形成されるように、最適な官能基S1〜S4を選択すれば良い。
【0040】
また、縮合反応は、塩基存在下で行うのが好ましい。塩基存在下で縮合反応を行うと、縮合反応を促進させることができる。触媒作用を有する塩基としては、具体的には、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、DBU(ジアザバイシクロウンデセン)、金属アルコキシドなどがある。この点は、縮合反応を用いてポリマーAを合成する場合も同様である。
【0041】
さらに、いずれの場合においても、Rf等が等価であるモノマー又はポリマーを用いると、繰り返し単位中に含まれるRf等が同一である電解質が得られる。
一方、Rf等の異なる2種以上のモノマー又はポリマーを用いると、繰り返し単位中に含まれるRf等の異なる電解質が得られる。
【0042】
[3. 電解質の製造方法(2)]
本発明の第2の実施の形態に係る電解質の製造方法は、所定の分子構造を有するモノマー又はポリマー(末端ハロゲン化物)を用いて、脱ハロゲン化カップリング反応により、本発明に係る電解質を得るカップリング反応工程を備えている。
【0043】
[3.1 カップリング反応に用いるモノマー又はポリマー]
カップリング反応に使用するモノマー又はポリマーには、末端に−Rf−X基(但し、Rfは、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。Xは、ハロゲン、ボロン酸、又は、ボロン酸環状エステル。)を有するものを用いる。電解質の合成には、このようなモノマー又はポリマーのいずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0044】
カップリング反応に使用するモノマー又はポリマーの第1の具体例は、次の(6)式で表されるもの(以下、これを「モノマーC又はポリマーC」という)からなる。
X−[Rf1−E1]m'−Rf5−X ・・・(6)
但し、
Rf1、Rf5は、それぞれ、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
Xは、ハロゲン、ボロン酸、又は、ボロン酸環状エステル。
1≦m'(m'は、整数)。
Rf1、E1は、それぞれ、繰り返し単位中において任意に選択することができる。
【0045】
カップリング反応に使用するモノマー又はポリマーの第2の具体例は、次の(7)式で表されるもの(以下、これを「モノマーD又はポリマーD」という)からなる。
X−[Rf2−Ar]n'−Rf6−X ・・・(7)
但し、
Rf2、Rf6は、それぞれ、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
Arは、アリレン基。Xは、ハロゲン、ボロン酸、又は、ボロン酸環状エステル。
1≦n'(nは、整数)。
Rf2、Arは、それぞれ、繰り返し単位中において任意に選択することができる。
【0046】
[3.2 カップリング反応に使用するモノマー又はポリマーの製造方法]
カップリング反応に用いるモノマー又はポリマーは、市販されているか、あるいは、市販されているモノマーを出発原料に用いて、公知の方法により製造することができる。
例えば、(6)式で表されるモノマーC又はポリマーCは、縮合反応により合成することができる。次の(6.1)〜(6.2)式に、モノマーC又はポリマーCの合成反応の一例を示す。
【0047】
【化5】

【0048】
(6.1)式において、縮合反応によりプロトン伝導部位E1を形成するためには、S3又はS4の一方がアミド系官能基であり、他方がハライド系官能基であればよい。
また、(6.2)式において、縮合反応によりプロトン伝導部位E1を形成するためには、S1、S2がアミド系官能基であり、S3、S4がハライド系官能基であるか、あるいは、その逆であれば良い。
【0049】
また、例えば、(7)式で表されるモノマーD又はポリマーDは、カップリング反応により合成することができる。次の(7.1)式に、モノマーD又はポリマーDの合成反応の一例を示す。
【0050】
【化6】

【0051】
(7.1)式において、式中のn'は、式中のa及びb、並びに、反応時間及び温度により制御することができる。また、X−Rf2−XとX−Ar−Xを反応させる場合において、X−Rf2−Xを過剰に加えると、両末端が−Rf−XであるモノマーD又はポリマーDが得られる。
【0052】
[3.3 カップリング反応を用いた電解質の製造方法]
本実施の形態において、電解質は、末端に−Rf−X基(但し、Rfは、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。Xは、ハロゲン、ボロン酸、又は、ボロン酸環状エステル。)を有する1種又は2種以上のモノマー又はポリマーを用いて、カップリング反応により合成することができる。この場合、出発原料には、モノマーのみを用いても良く、ポリマーのみを用いても良く、あるいは、モノマーとポリマーの混合物を用いても良い。次の(8.1)式に、上述したモノマーC又はポリマーCと、モノマーD又はポリマーDを用いたカップリング反応の一例を示す。
【0053】
【化7】

【0054】
(8.1)式において、式中のkは、式中のa及びb、並びに、反応時間及び温度により制御することができる。
また、この場合、Rf等が等価であるモノマー又はポリマーを用いると、繰り返し単位中に含まれるRf等が同一である電解質が得られる。
一方、Rf等の異なる2種以上のモノマー又はポリマーを用いると、繰り返し単位中に含まれるRf等の異なる電解質が得られる。
さらに、カップリング反応は、触媒及び還元剤存在下で行う。触媒には、Cn、Pd、Ni等の遷移金属を用いるのが好ましい。また、還元剤としてZn等の金属を添加したり、あるいは、反応を促進させるために、NaI、Et4NI等の塩を添加するのが好ましい。この点は、カップリング反応を用いてモノマ−B又はポリマーBを合成する場合も同様である。
【0055】
[4. 本発明に係る電解質及びその製造方法の作用]
本発明に係る電解質は、スルホンイミド基の両端にパーフルオロ鎖が結合しているので、スルホンイミド基のプロトンの解離度が高くなり、高いプロトン伝導性を示す。また、疎水部がパーフルオロ鎖と芳香族環からなっているので、その疎水性相互作用により、耐熱性が向上するだけでなく、耐熱水溶解性も高い。また、疎水部にパーフルオロ鎖及び芳香族環を含むので、化学的安定性も高い。さらに、芳香族環はハードセグメントであるのに対し、芳香族環に結合しているパーフルオロ鎖はソフトセグメントであるため、電解質に適度な成形性や融点を持たせることが可能となる。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
[1. 試料の作製]
[1.1. スルホニルアミドモノマー(BPC12A)の作製]
スルホニルアミドモノマー(BPC12A)は、スキーム1に従って合成した。まず、中間体1(I−(CF2)6−SO2NH2)は、文献(Weiming Qiu and Donald J. Barton, Journal of Fluorine Chemistry, 60, 93-100(1993))に従って合成した。
次に、500mgの中間体1、166mgの4,4’−ジヨードビフェニル、活性化Cuブロンズ280mg、DMSO2mLの混合物を不活性雰囲気下で140℃で1.5日反応させた。濃硫酸で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、有機相を水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥、エバポレーションした後、カラムクロマトグラフィー(シリカ、酢酸エチル/ヘキサン1:2)で精製し、318mgのBPC12Aを得た。
【0057】
【化8】

【0058】
[1.2. 重合]
重合実験は、脱水、脱酸素条件で行った。溶媒は、CaH2で脱水して用いた。重合には、パーフルオロスルホンアミド(BPC12A)と、パーフルオロスルホニルフロリド(FO2S−(CF2)8−SO2F、C8F)を用いた。BPC12AとC8Fの重合で生成するポリスルホンイミドをBPC12A−C8Fと呼ぶ。スキーム2に、BPC12A−C8Fの合成反応式を示す。
【0059】
【化9】

【0060】
[2. 試験方法]
生成物の確認は、1H−NMR、19F−NMR及びIRで行った。
[3. 結果]
図1、図2及び図3に、それぞれ、BPC12A−C8Fの1H−NMR、19F−NMR及びIRを示す。NMRの末端基分析より、分子量は、約3万と見積もられた。アセトニトリルを用いてキャスト法により製膜した後、硫酸中でプロトン型に変換し、水中で伝導度を測定した。BPC12A−C8Fの伝導度は、0.02S/cmであった。
【0061】
(実施例2)
[1. 試料の作製]
BPC12A、パーフルオロスルホニルフロリド(FO2S−(CF2)3−SO2F、C3F)、及び、パーフルオロスルホンアミド(H2NO2S−(CF2)3−SO2NH2、C3A)を用いて、ポリスルホンイミド(BPC12A−C3x、xは、C3ユニット鎖の数)を合成した。重合反応は、窒素雰囲気下で行い、溶媒は、すべてCaH2で脱水したものを用いた。
反応は、ポリテトラフルオロエチレンコック付きシュレンクチューブ内で行った。アセトニトリル中、ジイソプロピルエチルアミン(C3Fに対して5当量)存在下、混合物を80℃で加熱攪拌した。反応後は、溶媒を減圧留去させ、そこへ水酸化ナトリウム水溶液(ca.2mol/L)を20mL加え、溶液をシャーレに移し、ホットプレート上で加熱乾固させた。これを室温で放置後、得られた固体に対して硫酸水溶液30mLを加えた結果、黄白色の固体が得られた。この黄白色の固体を減圧乾燥することで目的とするイミド電解質BPC12A−C3xを得た。スキーム3に、BPC12A−C3xの合成反応式を示す。
【0062】
【化10】

【0063】
[2. 試験方法]
生成物の確認は、1H−NMR、及び、19F−NMRで行った。
[3. 結果]
BPC12A−C3xの1H−NMRを測定した結果、アミンが完全に除去されていることがわかった。図4に、BPC12A−C3xの19F−NMRを示す。スペクトルの帰属を行った結果、得られたポリスルホンイミドは、末端がスルホンアミド(−SO2NH2)と、スルホン酸(−SO3H)の混合体であることがわかった。スルホン酸が得られたのは、C3Fが系中に存在する微量の水分と反応したことにより、加水分解が進行したためであると考えられる。また、ポリスチレン換算によるGPCのリテンションタイムから、得られた数平均分子量は、約2万程度であった(表1)。
【0064】
【表1】

【0065】
(実施例3)
[1. 試料の作製]
[1.1. スルホニルアミドモノマーの作製]
スキーム4に従い、スルホニルアミドモノマーを合成した。4,4’−ビフェニル:166mg、1:500mg、Cu:280mg、DMSO:2mLを不活性雰囲気下、140℃で30時間加熱した。放冷後、濃塩酸:20mLを加え、攪拌した後、酢酸エチルで抽出した。抽出液を水、飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、エバポレーションした。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン)で精製し、317gの2を得た。
【0066】
2:100mg、3:30mg、Pd(TPP)2Cl2:1mg、DME(ジメトキシエタン):0.8mL、水:0.2mL、炭酸ナトリウム:66mgを混合し、100℃で1日加熱した。希塩酸で中和し、酢酸エチルで抽出、有機層を水洗し、硫酸ナトリウムで有機層を乾燥し、エバポレーションした。カラムクロマトグラフィーで精製し、80mgの4(スルホニルアミドモノマー)を得た。
【0067】
【化11】

【0068】
[1.2. 重合]
スキーム5に従い、ポリスルホンイミドを合成した。4:145mg、C3F:32mg、トリエチルアミン:0.2mL、アセトニトリル:3mLを不活性雰囲気下で混合、加熱(80℃)した。2日後、放冷し、エバポレーション後、濃硝酸で洗浄、水洗し、102mgのポリマー5を得た。
【0069】
【化12】

【0070】
[2. 試験方法]
生成物の確認は、1H−NMR、及び、19F−NMRで行った。
[3. 結果]
図5及び図6に、それぞれ、スルホニルアミドモノマー4の1H−NMR及び19F−NMRを示す。図5及び図6より、目的物が得られていることがわかる。
得られたポリマー5の分子量は、GPCのポリスチレン換算で3万であった。また、ポリマー5の電導度は、水中で0.03S/cmであった。
【0071】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る電解質及びその製造方法は、固体高分子型燃料電池、水電解装置、ハロゲン化水素酸電解装置、食塩電解装置、酸素及び/又は水素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等の各種電気化学デバイスに用いられる電解質膜や触媒層内電解質、及びその製造方法として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】BPC12A−C8Fポリマーの19F−NMRスペクトルと帰属である。
【図2】BPC12A−C8Fポリマーの1H−NMRスペクトルと帰属である。
【図3】BPC12A−C8FポリマーのIRスペクトルと帰属である。
【図4】BPC12A−C315ポリマーの19F−NMRスペクトルと帰属である。
【図5】スルホニルアミドモノマー4の1H−NMRスペクトルと帰属である。
【図6】スルホニルアミドモノマー4の19F−NMRスペクトルと帰属である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)式で表される親水性セグメントAと、(2)式で表される疎水性セグメントBとが、化学結合を介して交互に結合している構造を備えた電解質。
A: −E2−[Rf1−E1]m− ・・・(1)
但し、Rf1は、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
1、E2は、それぞれ、一般式:−(CONM)i1(CO)i2(SO2NM)i3(SO2)i4−で表されるプロトン伝導部位(0≦i1、0≦i2≦1、0≦i3、0≦i4≦1、1≦i1+i3。i1〜i4は、それぞれ、整数。Mは、プロトン又は金属元素。)。
0≦m(mは、整数)。
B: −[Rf2−Ar]n−Rf3− ・・・(2)
但し、Rf2、Rf3は、それぞれ、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
Arは、アリレン基。
1≦n(nは、整数)。
Rf1、Rf2、Rf3、E1、E2、Arは、それぞれ、繰り返し単位の中で任意に選択することができる。
【請求項2】
前記プロトン伝導部位E1又はE2は、−(SO2NM)i3SO2−(但し、1≦i3)である請求項1に記載の電解質。
【請求項3】
前記アリレン基Arは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペンタセン、フェナントレン、ピレン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、カルバゾール、オキサゾール、オキサチアゾール、フラン、チオフェン、ピロール、テトラフェニル、ターフェニル、ビフェニル、フルオレン、及び、スチルベン、並びに、これらの置換誘導体から選ばれるいずれか1以上を含む請求項1又は2に記載の電解質。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の電解質を用いた電池。
【請求項5】
末端にアミド系官能基及び/又はハライド系官能基を有する1種又は2種以上のモノマー又はポリマーを用いて、縮合反応により請求項1に記載の電解質を得る縮合反応工程を備えた電解質の製造方法。
【請求項6】
前記モノマー又はポリマーは、
(3)式で表される1種又は2種以上のモノマーA又はポリマーAと、
(4)式で表される1種又は2種以上のモノマーB又はポリマーBと、
を含む請求項5に記載の電解質の製造方法。
1−[Rf1−E1]m'−Rf4−S2 ・・・(3)
3−[Rf2−Ar]n−Rf3−S4 ・・・(4)
但し、
1〜S4は、それぞれ、−NZ12、−SO2NZ12、−SO2X、−CONZ12、又は、−COX(Z1、Z2は、それぞれ、H、M、SiMe3。Mは、金属元素。Xは、ハロゲン又はOH)。
Rf1〜Rf4は、それぞれ、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
Arは、アリレン基。
1≦n(nは、整数)、0≦m'(m'は、整数)。
Rf1、Rf2、Ar、E1は、それぞれ、繰り返し単位中において任意に選択することができる。
【請求項7】
前記モノマー又はポリマーは、(4)式で表される1種又は2種以上のモノマーB又はポリマーBを含む請求項5に記載の電解質の製造方法。
3−[Rf2−Ar]n−Rf3−S4 ・・・(4)
但し、
3、S4は、それぞれ、−NZ12、−SO2NZ12、−SO2X、−CONZ12、又は、−COX(Z1、Z2は、それぞれ、H、M、SiMe3。Mは、金属元素。Xは、ハロゲン又はOH)。
Rf2、Rf3は、それぞれ、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
Arは、アリレン基。
1≦n(nは、整数)。
Rf2、Arは、それぞれ、繰り返し単位中において任意に選択することができる。
【請求項8】
末端に−Rf−X基(但し、Rfは、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。Xは、ハロゲン、ボロン酸、又は、ボロン酸環状エステル。)を有する1種又は2種以上のモノマー又はポリマーを用いて、カップリング反応により請求項1に記載の電解質を得るカップリング反応工程を備えた電解質の製造方法。
【請求項9】
前記モノマー又はポリマーは、
(6)式で表される1種又は2種以上のモノマーC又はポリマーCと、
(7)式で表される1種又は2種以上のモノマーD又はポリマーDと、
を含む請求項8に記載の電解質の製造方法。
X−[Rf1−E1]m'−Rf5−X ・・・(6)
X−[Rf2−Ar]n'−Rf6−X ・・・(7)
但し、
Rf1、Rf2、Rf5、Rf6は、それぞれ、炭素数が1以上の直鎖状又は分岐状パーフルオロ鎖。
Arは、アリレン基。Xは、ハロゲン、ボロン酸、又は、ボロン酸環状エステル。
1≦m'(m'は、整数)、1≦n'(nは、整数)。
Rf1、Rf2、Ar、E1は、それぞれ、繰り返し単位中において任意に選択することができる。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−140832(P2009−140832A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317772(P2007−317772)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】