説明

電話交換装置及びミラーリング制御方法

【課題】通信ネットワークの使用帯域が限られていたとしても、ミラーリング先にて重要度に応じた交換サービスを提供し得る。
【解決手段】電話交換装置BT1において、ミラーリング元とミラーリング先との間のIP網1の使用帯域ごとに、ミラーリング先へのサービス処理データの転送方法を表す帯域対転送テーブルを記憶部14に備えるようにしたことにより、呼制御部にて判定部132で判定されたIP網1の使用帯域と帯域対転送テーブルとに基づいて、重要度の高い呼データについてはリアルタイムでミラーリング先の電話交換装置BT3へ転送し、重要度の低い課金データについては非リアルタイムでミラーリング先の電話交換装置BT3へ転送もしくは送信しないようにして、IP網1の使用帯域を有効に利用するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばIP(Internet Protocol)網を介して接続される電話交換装置間で、交換サービスのための処理情報を転送するミラーリングを実行する電話交換装置及びミラーリング制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IP網を介して、双方向に画像や音声をパケットデータとして、リアルタイムに送受信するIP電話システムが普及している。このIP電話システムでは、IP網に接続される各電話交換装置ごとに内線間通信や外線発着信を行えることは勿論のこと、IP網を経由した電話交換装置間での内線通信や外線発着信を行うことができる。
【0003】
ところで、IP電話システムでは、電話交換装置で使用される呼に係わるデータ、ユーザ設定に係わるデータ、システム動作のための保守設定データ、課金データ、トラフィックデータ、デバック用データ等の交換サービスのためのサービスデータを、他の電話交換装置に転送するミラーリング機能がある。すなわち、ミラーリング元で保持しているサービスデータをミラーリング先へ転送することで、ミラーリング先でもミラーリング元と同等のサービスを提供できる。また、ミラーリング元に障害が発生すると、ハートビート検出等によりミラーリング先へ切り替わり、ミラーリング先のサービスデータを用いてミラーリング先にて運用を行うようにしている。
【0004】
ところで、電話交換装置間を接続するIP網にあっては、使用時間帯や使用環境等によって処理負荷やトラフィック負荷が大きくなることが十分に予想される。この場合、電話交換装置間のミラーリング実行にエラーが発生し、どの交換サービスも提供できなくなる可能性がある。
【0005】
なお、関連する技術として、主系のストレージから副系のストレージへのログの転送の応答時間を監視し、応答時間が予め定めた閾値に達したとき、同期転送によるコピー方式と非同期転送によるコピー方式とを切り替えるディザスタリカバリ方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−338064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記方法では、IP網上の通信トラフィック負荷が大きい場合に、重要度の高いサービスデータの転送をリアルタイムに転送できないことがあり、万一ミラーリング元で障害が発生した時にミラーリング先にてミラーリング元と同等のサービスを提供できない。
【0008】
そこで、この発明の目的は、通信ネットワークの使用帯域が限られていたとしても、ミラーリング先にて重要度に応じた交換サービスを提供し得る電話交換装置及びミラーリング制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明に係る電話交換装置は、複数の電話端末間の交換処理を実行し、通信ネットワークを接続可能な電話交換装置において、通信ネットワーク上に接続される他の電話交換装置に対し、交換処理に係わるサービスを実行するために必要な処理情報を転送するミラーリングを実行するミラーリング実行手段と、ミラーリング元とミラーリング先との間の通信ネットワークの使用帯域ごとに、ミラーリング先への処理情報の転送方法を表す管理テーブルを記憶する記憶手段と、予め設定される条件に基づいて、ミラーリング元とミラーリング先との間の通信ネットワークの使用帯域を判定する判定手段と、この判定手段により判定された使用帯域及び管理テーブルに基づいて、ミラーリング先に対し処理情報の転送制御を行う転送制御手段とを備えるようにしたものである。
【0010】
この構成によれば、ミラーリング元とミラーリング先との間の通信ネットワークの使用帯域ごとに、ミラーリング先への処理情報の転送方法を表す管理テーブルを用意したことにより、判定された通信ネットワークの使用帯域と管理テーブルとに基づいて、重要度の高い処理情報についてはリアルタイムでミラーリング先へ転送し、重要度の低い処理情報については非リアルタイムでミラーリング先へ転送もしくは送信しないようにして、通信ネットワークの使用帯域を有効に利用することができる。
【0011】
従って、通信ネットワークの使用帯域が限られていたとしても、重要度の高い処理情報をミラーリング先へリアルタイムで転送することができる。
【0012】
また、この発明に係る電話交換装置において、判定手段は、条件の判断に、時間帯と前記使用帯域とを対応付けたテーブルを用いるようにしている。
【0013】
この構成によれば、テーブルを用いて、簡単な手順により通信ネットワークの使用帯域を判定することができる。
【0014】
また、この発明に係る電話交換装置において、判定手段は、条件の判断に、通信ネットワークの使用帯域を検出する検出器による検出結果を用いるようにしている。
【0015】
この構成によれば、通信ネットワークの使用帯域を検出する検出器による検出結果を用いるようにしているので、使用帯域の判定上の信頼性を向上できる。
【0016】
さらに、この発明に係る電話交換装置において、転送制御手段は、非リアルタイム転送を実行する場合に、処理情報を記録媒体に記録しておき、予め設定された日時に、記録媒体に記録された処理情報を読み出してミラーリング先に転送するようにしている。
【0017】
この構成によれば、記録媒体に保存された処理情報の転送日時を、通信ネットワークの帯域をあまり使用しない夜間等に設定することで、通信ネットワークの使用帯域の有効利用率を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
上記発明によれば、通信ネットワークの使用帯域が限られていたとしても、ミラーリング先にて重要度に応じた交換サービスを提供し得る電話交換装置及びミラーリング制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の第1の実施形態に係わるIP電話システムを示す概略構成図。
【図2】上記図1に示した電話交換装置BT1〜BTnの機能構成を示すブロック図。
【図3】上記図2に示した帯域対転送テーブルの記憶内容の一例を示す図。
【図4】上記図2に示した時間対帯域テーブルの記憶内容の一例を示す図。
【図5】同第1の実施形態において、ミラーリング元の電話交換装置とミラーリング先の電話交換装置との間で、サービス処理データを転送する動作を示すシーケンス図。
【図6】同第1の実施形態における電話交換装置の呼制御部の制御処理手順を示すフローチャート。
【図7】この発明の第2の実施形態に係る電話交換装置の機能構成を示すブロック図。
【図8】この発明の他の実施形態において、保守端末により設定されるIP網の使用帯域を示す図。
【図9】この発明の他の実施形態において、非リアルタム転送の対象データをミラーリング先へ転送する時刻を記憶する例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
この発明の第1の実施形態は、通信ネットワークの使用帯域の判定に、時間と帯域とを対応付けたテーブルを用いるようにしたものである。
【0021】
図1は、この発明の第1の実施形態に係わるIP電話システムを示す概略構成図である。
このシステムは、通信ネットワークとしてパケット通信用のIP網1を有する。IP網1には、複数の電話交換装置BT1〜BTn(nは自然数)が接続されている。また、電話交換装置BT1〜BTnには、電話端末T11〜T1i(iは自然数),T21〜T2m(mは自然数),T31〜T3p(pは自然数),Tn1〜Tnk(kは自然数)が接続されている。また、電話交換装置BT1,BTnは公衆網NW1,NW2に局線Lを介して接続されている。
【0022】
電話交換装置BT1〜BTnは、電話端末T11〜T1i,T21〜T2m,T31〜T3p,Tn1〜Tnk相互間、公衆網NW1,NW2と電話端末T11〜T1i,T21〜T2m,T31〜T3p,Tn1〜Tnkとの間の発着信に係わる通常の交換制御機能を有する。
【0023】
ここでは、電話交換装置BT1は例えば東京に位置し、電話交換装置BT3は例えば大阪に位置するものとする。
【0024】
図2は、上記電話交換装置BT1〜BTnの機能構成を示すブロック図である。ここでは、電話交換装置BT1を代表して説明する。
【0025】
電話交換装置BTは、IP制御部11と、メディア変換部12と、呼制御部13と、記憶部14と、公衆網インタフェース部17とを備えている。これらIP制御部11と、メディア変換部12と、呼制御部13と、記憶部14と、公衆網インタフェース部17は、データハイウェイ15を介して互いに接続されている。
【0026】
IP制御部11には、LAN1が必要に応じて接続される。IP制御部11は、接続されたLAN1との間でインタフェース処理を行う。また、IP制御部11は、上記インタフェース処理に係わる種々の制御情報の授受を、データハイウェイ15を介して呼制御部13との間で行う。
【0027】
メディア変換部12には、タイムスイッチ16が接続される。メディア変換部12は、IP制御部11で受信した制御パケット及び音声パケットを処理するもので、パケットをPCM信号に変換してタイムスイッチ16に出力し、タイムスイッチ16からのPCM信号をパケットに変換してIP制御部11に出力する。タイムスイッチ16は、各電話端末T11〜T1i間の通信パスを形成する。
【0028】
公衆網インタフェース部17には、公衆網NW1が必要に応じて接続される。公衆網インタフェース部17は、接続された公衆網NW1との間でインタフェース処理を行う。また、公衆網インタフェース部17は、上記インタフェース処理に係わる種々の制御情報の授受を、データハイウェイ15を介して呼制御部13との間で行う。
【0029】
呼制御部13は、CPU、ROM、RAMなどを有して構成され、ソフトウェア処理により電話交換装置BT1の各部の制御を行う。
【0030】
記憶部14は、呼制御部13の接続制御に必要なルーティング情報等を格納している。
【0031】
ところで、記憶部14には、帯域対転送テーブル141と、時間対帯域テーブル142が設けられている。帯域対転送テーブル141には、図3に示すように、サービス処理データのミラーリングのための伝送に使用可能な帯域(幅)と交換サービスを提供するためのサービス処理データの種類毎の転送方式とを関連付けたデータが記憶されている。帯域毎に、転送方法「リアルタイム転送」、「非リアルタイム転送」、「送らない」とデータ種別が関連付けて記憶されている。例えばデータaは呼に関わるデータであり、データbはユーザ設定に関わるデータ(転送設定や着信拒否設定等)であり、データcはシステム動作の為の保守設定データであり、データdは課金データであり、データeはトラフィックデータであり、データfはデバッグ用データ(errログ、traceログ)である。これらのデータa〜gはデータベース18に保存されている。これらのデータa〜gはミラーリング先へ転送されることで、ミラーリング先でもミラーリング元と同等のサービスを提供できる。
【0032】
時間対帯域テーブル142には、図4に示すように、時間帯と帯域(幅)との対応関係を表すデータが記憶されている。この対応テーブルは、普段の時間毎の平均的なトラヒック量の状態から、サービスデータのミラーリングに使用できる帯域を予め求めておいて、テーブル化したものである。
【0033】
一方、呼制御部13は、この発明に係る機能として、ミラーリング実行部131と、判定部132と、転送処理部133とを備えている。ミラーリング実行部131は、サービス処理データ(データa〜g)をデータベース18から読み出して、予め転送先として登録してある電話交換装置BT3へIP網1を介して転送するミラーリングを実行する。
【0034】
判定部132は、タイマTMで計時される現在日時と時間対帯域テーブル142に記憶された時間帯とを比較し、この比較結果に基づいてミラーリング元となる電話交換装置BT1とミラーリング先となる電話交換装置BT3との間のIP網1の使用帯域を判定する。
【0035】
転送処理部133は、上記判定部132により判定された使用帯域と、帯域対転送テーブル141とに基づいて、ミラーリング先となる電話交換装置BT3に対しサービス処理データの転送制御(「リアルタイム転送」、「非リアルタイム転送」、「送らない」の選択)を行う。
【0036】
次に、上記構成における動作について説明する。
図5は、ミラーリング元の電話交換装置BT1とミラーリング先の電話交換装置BT3との間で、サービス処理データを転送する動作を示すシーケンス図である。
【0037】
いま例えば電話端末T11のユーザが公衆網NW1上の外部電話端末TT1に対する発信操作を行なったとする(図5(1))。そうすると電話端末T11からその要求信号が電話交換装置BT1に送られる。この要求信号を受信すると電話交換装置BT1は、公衆網NW1宛の要求信号を生成してこの信号を公衆網NW1へ送信する(図5(2))。
【0038】
公衆網NW1は、上記要求信号を受信すると着信先の外部電話端末TT1を呼び出し(図5(3))、この外部電話端末TT1が応答すると(図5(4))、当該電話端末T11と外部電話端末TT1との間を接続する。
【0039】
電話交換装置BT1の呼制御部13は、電話端末T11と外部電話端末TT1との間に通信リンクが形成されると、その通話に係わるデータaをデータベース18に保存し、以後、RTP等により通話が続けられる。その後、いずれかの端末から終話の操作を行われると、呼制御部13は前記通信リンクの切断の処理を行う。このようにして、電話端末T11と外部電話端末TT1との間に通信リンクが切断されると、その終話の旨のデータaをデータベース18に保存し、通話に関する課金データdを求めてデータベース18に保存する(図5(5))。
【0040】
そして、呼制御部13は、図6に示す制御処理手順を実行する。
呼制御部13は、データベース18から該当するサービス処理データを読み出し(ステップST6a)、タイマTMで計時される現在日時と時間対帯域テーブル142とを比較照合し(ステップST6b)、この比較照合結果から、その時点でミラーリングに使用できる帯域、例えば「帯域xx」(例えば、帯域上限の10%)を決定する(ステップST6c)。そして、この決定された「帯域xx」をもとに帯域対転送テーブル141を参照する(ステップST6d)。ここでは、「帯域xx」が帯域n−1〜帯域nの範囲にあるとして説明する。
【0041】
続いて、呼制御部13は、帯域対転送テーブル141上に帯域n−1〜帯域nの範囲に属するリアルタイム転送対象データがあるか否かの判断を行う(ステップST6e)。ここでは、呼に係わるデータaが存在するので、このデータaをデータベース18に保存すると共に、ミラーリング先の電話交換装置BT3へ転送する(ステップST6f)。
【0042】
一方、帯域対転送テーブル141上で「非リアルタイム転送」となっている課金データdも存在するので、呼制御部13はステップST6gからステップST6hに移行してここで課金データdをデータベース18に保存する。そして、リアルタイム転送の呼に係わるデータaの転送が終了するか否かを監視し(ステップST6i)、データaの転送が終了した場合に(Yes)、データベース18に課金データdがリアルタイム転送されているか否かの判断を行う(ステップST6j)。
【0043】
ここで、課金データdがリアルタイム転送されていなければ(Yes)、呼制御部13はデータベース18から課金データdを読み出してIP網1を介してミラーリング先の電話交換装置BT3へ転送する(ステップST6k)。
【0044】
また、帯域対転送テーブル141上で「送らない」となっているデータcが存在する場合、呼制御部13はステップST6gからステップST6lに移行してここでデータcをデータベース18に保存して処理を終了する。
【0045】
なお、帯域対転送テーブル141の記憶内容及び時間対帯域テーブル142の記憶内容は、IP網1に接続される保守端末M1により設定され、また変更される。
【0046】
以上のように上記第1の実施形態では、電話交換装置BT1において、ミラーリング元とミラーリング先との間のIP網1で使用可能な帯域ごとに、ミラーリング先へのサービス処理データの転送方法を表す帯域対転送テーブル141と、時間毎に使用可能な帯域幅を対応つけた時間対帯域テーブル142とを記憶部14に備えるようにしたことにより、サービス処理データの転送方法を変更するようにした。このため、呼制御部13にて判定されたIP網1の使用帯域と帯域対転送テーブル141とに基づいて、重要度の高い呼データaについてはリアルタイムでミラーリング先の電話交換装置BT3へ転送し、重要度の低い課金データdについては非リアルタイムでミラーリング先へ転送もしくは送信しないようにして、IP網1の使用帯域を有効に利用するようにしている。
【0047】
従って、IP網1の使用帯域に影響されることなく、重要度の高いサービス処理データをミラーリング先へリアルタイムで転送することができる。これにより、例えばデータa,bを必要とするサービスはミラーリング先でも提供できる。また、障害発生タイミングにもよるが、データd,e,fが転送された後の障害発生であればデータd,e,fを必要とするサービスも提供できる。
【0048】
また、上記第1の実施形態では、時間帯と使用帯域とを対応付けた時間対帯域テーブル142を用いるようにしているので、簡単な手順でしかもコストをかけることなくIP網1の使用帯域を判定することができる。
【0049】
(第2の実施形態)
この発明の第2の実施形態は、IP網1の使用帯域を直接に検出可能な検出器を用いて判定するようにしたものである。
【0050】
図7は、この発明の第2の実施形態に係る電話交換装置BT1の機能構成を示すブロック図である。図7において、上記図2と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0051】
この電話交換装置BT1は、記憶部14から時間対帯域テーブル142を削除し、代わりにIP網1の使用帯域を検出するセンサ19を呼制御部13とデータハイウェイ15との間に接続するようにしている。
【0052】
上記判定部132は、センサ19で検出される実効帯域に基づいてミラーリング元となる電話交換装置BT1とミラーリング先となる電話交換装置BT3との間のIP網1の使用帯域を判定する。
【0053】
以上のようにこの第2の実施形態によれば、IP網1の使用帯域を検出するセンサ19による検出結果を判定部132の判定に用いるようにしている。その後、帯域対転送テーブル141を参照して、前記判定部132のこの検出結果に対応する帯域幅における、データの転送方法を決定し、説明した図5の処理手順にそって、データの転送を行う。
【0054】
このようにして、IP網1の使用帯域を直接得ることができ、これにより使用帯域の判定上の信頼性を向上できるため、その時点でネットワークのトラヒック状態に沿った、データの転送が行えるようになる。
【0055】
(その他の実施形態)
なお、この発明は上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、上記第1の実施形態では、IP網の使用帯域の判定に、時刻と帯域とを対応付けた時刻対帯域テーブルの記憶内容を用いる例について説明した。しかしこれに限ることなく、図8に示すように、保守端末M1により予め設定された使用帯域を判定に用いるようにしてもよい。帯域が時間帯によらずほぼ一律であることが分かっている場合には、図8のように一意の値をあらかじめ設定するだけで十分である。
【0056】
また、上記第2の実施形態では、IP網の使用帯域の判定に、センサにより検出される実効帯域を用いる例について説明したが、実効帯域の履歴に従って帯域を判断しても良い。これは、センサによりリアルタイムで検出した実行帯域を判定に使用するのではなく、まず実効帯域を履歴として記憶しておき、その記憶情報を元に使用帯域判定を行うものである。これにより常にセンサによって実行帯域を検出する際の負荷を減らすことができる。
【0057】
また、転送処理部における転送量に基づく使用帯域または使用帯域の履歴に従って帯域を判断しても良い。
【0058】
また、上記第1の実施形態では、リアルタイム転送の対象データの転送終了後に、非リアルタム転送の対象データをミラーリング先へ転送する例について説明したが、図9に示すように、転送時刻を記憶しておき、その時刻になった際に、非リアルタイム転送の対象データを転送するようにしてもよい。図9のテーブルでは複数の時刻が設定できるようにしてあるが、例えば時刻1になった際に非リアルタイム転送の対象データを送る。また別の時刻2になった際に再び非リアルタイム転送の対象データを送る。このようにすれば、非リアルタイム転送の対象データの転送時刻または転送日時を、IP網の帯域をあまり使用しない夜間等に設定することで、IP網の使用帯域の有効利用率を高めることができる。
【0059】
その他、IP電話システムの構成、電話交換装置の機能構成、ミラーリング先に転送するサービス処理データの種類、IP網の使用帯域の判定に用いる条件の種類、ミラーリングを実行するための各制御の制御手順とその内容等についてもこの発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…IP網、11…IP制御部、12…メディア変換部、13…呼制御部、14…記憶部、15…データハイウェイ、16…タイムスイッチ、17公衆網インタフェース部、18データベース、19センサ、131ミラーリング実行部、132判定部、133転送処理部、141帯域対転送テーブル、142時間対帯域テーブル、BT1〜BTn…電話交換装置、T11〜T1i,T21〜T2m,T31〜T3p,Tn1〜Tnk…電話端末、NW1,NW2…公衆網。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電話端末間の交換処理を実行し、通信ネットワークを接続可能な電話交換装置において、
前記通信ネットワーク上に接続される他の電話交換装置に対し、前記交換処理に係わるサービスを実行するために必要な処理情報を転送するミラーリングを実行するミラーリング実行手段と、
ミラーリング元とミラーリング先との間の通信ネットワークの使用帯域ごとに、前記ミラーリング先への処理情報の転送方法を表す管理テーブルを記憶する記憶手段と、
予め設定される条件に基づいて、ミラーリング元とミラーリング先との間の通信ネットワークの使用帯域を判定する判定手段と、
この判定手段により判定された使用帯域及び前記管理テーブルに基づいて、前記ミラーリング先に対し前記処理情報の転送制御を行う転送制御手段とを具備したことを特徴とする電話交換装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記条件の判断に、時間帯と前記使用帯域とを対応付けたテーブルを用いることを特徴とする請求項1記載の電話交換装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記条件の判断に、前記通信ネットワークの使用帯域を検出する検出器による検出結果を用いることを特徴とする請求項1記載の電話交換装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記条件の判断に、前記検出器による検出された帯域履歴を用いることを特徴とする請求項3記載の電話交換装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記条件の判断に、保守端末により設定された帯域を用いることを特徴とする請求項1記載の電話交換装置。
【請求項6】
前記転送制御手段は、前記処理情報の種類ごとにリアルタイム転送、非リアルタイム転送、送信しないのうちの少なくとも1つを実行することを特徴とする請求項1記載の電話交換装置。
【請求項7】
前記転送制御手段は、非リアルタイム転送を実行する場合に、前記処理情報を記録媒体に記録しておき、リアルタイム転送する処理情報の転送が終了した場合に、前記記録媒体に記録された処理情報を読み出してミラーリング先に転送することを特徴とする請求項6記載の電話交換装置。
【請求項8】
前記転送制御手段は、非リアルタイム転送を実行する場合に、前記処理情報を記録媒体に記録しておき、予め設定された日時に、前記記録媒体に記録された処理情報を読み出してミラーリング先に転送することを特徴とする請求項6記載の電話交換装置。
【請求項9】
複数の電話端末間の交換処理を実行しかつ通信ネットワークを接続可能な電話交換装置で使用され、前記通信ネットワーク上に接続される他の電話交換装置に対し、前記交換処理に係わるサービスを実行するために必要な処理情報を転送するミラーリングを実行するミラーリング制御方法において、
ミラーリング元とミラーリング先との間の通信ネットワークの使用帯域ごとに、前記ミラーリング先への処理情報の転送方法を表す管理テーブルをメモリに記憶し、
予め設定される条件に基づいて、ミラーリング元とミラーリング先との間の通信ネットワークの使用帯域を判定し、
この判定された使用帯域及び前記管理テーブルに基づいて、前記ミラーリング先に対し前記処理情報の転送制御を行うようにしたことを特徴とするミラーリング制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−139149(P2011−139149A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296321(P2009−296321)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】