説明

電車の改札システム

【課題】携帯電話端末が電子切符や電子回数券としても機能する電車の改札システムを提供する。
【解決手段】人が通過する改札口とICカード機能部6aを備えた携帯電話端末機5とからなる電車の改札システムであって、前記改札口には電磁波を発信する発信回路と、前記電磁波が影響する磁界内に前記ICカード機能部が存在した場合にそれを検知するアンテナを備えた通信部を有するリーダ/ライタ装置が設けられ、前記携帯電話端末機5は提携会社と情報データの送受信をするための携帯電話端末用アンテナ14と、前記通信部と送受信をするためのICカード機能部用アンテナ18を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカード機能を具備した携帯電話端末を含んだ電車の改札システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカードの本格的な普及を目的として、各業界で様々な事業化が予定されている。例えば、JR東日本が予定している電子切符(IC定期券)である。これらのICカードは、信頼性及び用途の面から非接触タイプのICカードが使用される。
【0003】
また、非接触型のICカードは通信距離、方式(使用周波数等)により「密着型」「近接型」「近傍型」に分類されており、それぞれについて、国際標準規格ISO/IEC10536、ISO/IEC14443、ISO/IEC15693として規格化が進められている。例えば、「密着型」のリーダ装置との最大通信距離は約2mmである。同様に、「近接型」は約10cm、「近傍型」は約70cmである。
【0004】
また、通常、非接触型のICカードは、形状が名刺大で、電源を持っていない。そのため、ICカードが動作するための電力は、リーダ/ライタ装置からの電磁波にて供給される。
【0005】
また、通常、ICカードに情報を入力及び出力する場合は、リーダ/ライタ装置を介して行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に示すように、通常、ICカードは電源を備えておらず、リーダ/ライタ装置からの電磁波にてICが動作するための電力が供給され、しかも電波法で定められている電力にしようとすると通信距離が短くなってしまう欠点がある。
【0007】
また、ICカードは表示機能を備えていないため、ICカードに記録されている情報データを見る場合は、別個にリーダ/ライタ装置を介さなければならないという欠点がある。
【0008】
更に、電子定期券の情報を持つ場合は、入金等の情報データを入力するたびにリーダ/ライタ装置を介して行う必要があり、不便である。
【0009】
そこで本発明の第1の目的は、必要な情報の入力と、その情報の確認又は認証と、が容易にできるICカード及びICカード機能を具備した携帯電話端末を提供することである。また、第2の目的は、形状等を変えることなく通信距離を伸ばすことが可能なICカード機能を具備した携帯電話端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明に係る電車の改札システムは、人が通過する改札口とICカード機能部(6a)を備えた携帯電話端末機(5)とからなる電車の改札システムであって、前記改札口には電磁波を発信する発信回路(37)と、前記電磁波が影響する磁界内に前記ICカード機能部が存在した場合にそれを検知するアンテナを(40)を備えた通信部(38)を有するリーダ/ライタ装置(35)が設けられ、前記携帯電話端末機(5)は提携会社と情報データの送受信をするための携帯電話端末用アンテナ(14)と、前記通信部(38)と送受信をするためのICカード機能部用アンテナ(18)を有し、また前記携帯電話端末機(5)はCPU(13)を内蔵し、前記ICカード機能部(6a)はCPU(17)を内蔵し、前記CPU(13)は、前記ICカード機能部と情報データの入出力を行うためのI/O装置(7)、携帯電話端末の操作を行うための操作部(10)、携帯電話端末機(5)内の通信部(11)および情報を表示するための表示部(12)を制御し、前記CPU(17)は前記携帯電話端末機(5)と情報データの入出力を行うためのI/O装置(8)、前記アンテナ(18)を備えた送受信部(16)及びメモリ(15)を制御し、前記メモリ(15)には定期券の有効期限または残金が記憶され、前記ICカード機能部(6a)の送受信部(16)は前記リーダ/ライタ装置(35)が発信する電磁波を検出し、前記電源供給装置(20)は前記検出信号を受けて前記ICカード機能部(6a)の各部への電源供給を開始し、前記ICカード機能部用アンテナ(18)が前記リーダ/ライタ装置の磁界領域内に存在するときのみ作動し、且つ前記CPU(17)が決定する通信時間相当のみ前記電源(9)からの電力を前記ICカード機能部の各部へ供給するとともに、前記CPU(17)の指示に基づいて前記電源供給を停止することを特徴とする。
【0012】
また、有効期限が切れる場合には、自動的に所定の場所(電子定期発行所)に入金して、電子定期券の有効期限を更新する処理が行われるようにするとよい。
【発明の効果】
【0013】
以上に説明したように、本発明によれば、ICカード又はICカード機能を具備する携帯電話端末のメモリに記録されている情報データの内容が容易に確認でき、電子定期券としても機能する携帯電話端末とすることができ便利である。また、ICカード機能部のメモリへの記録がリーダ/ライタを使用しなくても、携帯会社に接続して情報データを受信するのみで、その情報データをICカード機能部のメモリに記録できる。更にICカード機能部の電源回路に外部より外部電源としてICカードを動作させるための電力を供給することにより通信距離を伸ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の電子定期券としても機能する携帯電話端末の実施形態について詳細に説明する。図1は携帯電話端末を利用した無線通信システムのシステム図である。
【0015】
無線通信システム1は、携帯電話端末2と提携会社3と店舗4とから構成される。本発明にあっては、店舗4の代わりに電車の改札口にリーダ/ライタ装置35を備えている。
【0016】
携帯電話端末2は、携帯電話端末機5と、前記携帯電話端末機5に内蔵されるICカード機能部6と、から構成される。このICカード機能部6は非接触式である。この携帯電話端末機5とICカード機能部6には、双方で情報データの交換(移動)するための入出力手段としての入出力装置(以下、「I/O装置7、8」と呼ぶ。)を備える。この携帯電話端末機5とICカード機能部6とは、このI/O装置7、8を介して接続される。
【0017】
I/O装置7、8は、例えば、ISO/IEC7816やISO/IEC14443やISO/IEC15693規格に準拠しているものを使用することも可能である。
【0018】
この携帯電話端末機5は、ICカード機能部6と情報データの入出力を行うためのI/O装置7と、電源9と、携帯電話端末機の操作を行うための操作部10と、外部から情報データを受信するためのアンテナ14を有する通信部11と、情報を表示するための表示部12と、CPU13と、から構成される。この携帯電話端末機5は、例えば携帯電話等である。また、通信部11は提携会社3の各端末3a〜3cと通信回線を介して接続される。
【0019】
また、ICカード機能部6は、携帯電話端末機5と情報データの入出力を行うためのI/O装置8と、情報データを記憶するためのメモリ15と、情報データの送受信を行うためのアンテナ18を有する送受信部16と、集積回路を含むCPU17と、から構成される。また、送受信部16は、リーダ/ライタ装置35と無線回線を介して情報の送受信が行われる。
【0020】
このように携帯電話端末2は、提携会社と情報データの送受信をするための通信手段としての通信部11と情報データを表示するための表示手段としての表示部12とを有する携帯電話端末2の内部に、情報データを移動するための入出力手段としてのI/O装置7、8を介して、情報データを記憶するための記憶手段としてのメモリ15とを有するICカード機能部6を備えているので、通信部11により受信する情報データを直接ICカード機能部6のメモリ15に記憶することができる。また、ICカード機能部6に記憶されている情報データをI/O装置7、8を介して、携帯電話端末5の表示部12に表示することができる。
【0021】
また、携帯電話端末機5及びICカード機能部6のCPU13、17は、接続されている装置等の全体の制御を行うコントローラである。また、CPU13、17は、例えば、CPUにROM、RAM、EEPROM等を有する1チップマイコンから構成される。
【0022】
また、携帯電話端末機5及びICカード機能部6のアンテナ14、18は、巻線コイルや埋込コイル、プリント配線コイル、印刷コイル、エッチングコイル、オンチップコイル等が使用される。
【0023】
この携帯電話端末2には、種々のクレジットカード会社、銀行等の提携会社3の各端末3a〜3cから決済等に必要な情報データが受信される。情報データの受信は、携帯電話端末2を利用して提携会社3に接続後、操作部10により暗証番号等の必要な情報を入力又は選択して行う。受信した情報データは、CPU13でICカード機能部6への伝送に適した信号形式に変換して伝送する。ICカード機能部6のCPU17は、I/O装置7、8を介して、記憶するのに適した信号形式に変換してICカード機能部6のメモリ15に記憶される。
【0024】
メモリ15に、定期券等の期間情報を記憶することにより、定期券として利用することができる。
【0025】
記憶した情報データは、携帯電話端末機5の入力装置10等から情報データを指定することにより、ICカード機能部6のCPU17によりメモリ15に記憶された情報データを読み出して携帯電話端末機5への伝送に適した信号形式に変換後、I/O装置7、8を介して携帯電話端末機5に伝送される。伝送された情報データは、携帯電話端末機5のCPU13により表示部12に表示するための信号形式に変換後、表示部12により表示される。
【0026】
リーダ/ライタ装置35と端末機36とは電気的に接続されている。リーダ/ライタ装置35は、発信回路37と通信部38と復調回路39とアンテナ40とを有する。この発信回路37により所定の電磁波が発信され、その電磁波が影響する磁界内に存在するICカード機能部6を通信部38により検知し、そのICカード機能部6に記憶されている情報データが受信される。受信された情報データは、復調回路39により、ICカード機能部6から変調されて送信された情報データが復調されるとともに、端末機36においてその情報データを読み取るために適した信号形式に変換される。変換された情報データは、端末機36で読み取られるとともに、所定の表示形式に変換後、画面上に表示される。
【0027】
また、クレジット会社等から情報をICカード機能部6のメモリ15に記憶する場合やICカード機能部6とリーダ/ライタ装置35により情報の送受信をする場合等においては、データの漏洩、偽造等の不正使用を防止するための暗号化や暗号化されたデータの複合化等が行われる。具体的には、例えば、データの漏洩等による不正使用を防ぐために、ICカード機能部6とは別の個人識別用IDカード等との併用が行われる。また、暗号としてピンコードやDES等を利用する場合もある。その使用形態によって、使い分ければよい。
【0028】
ここで、例えば、通信端末を利用し店舗で商品を購入し決済を行う処理について説明する。
【0029】
図3は、決済処理のフローチャート図である。なお、理解しやすいように、図1の装置と関連する符号を付するがこれにより限定されるものではない。
【0030】
店舗4において商品を購入するための決済を行う場合は、店舗4に備えられているリーダ/ライタ装置35近傍(磁界領域45内)に、通信端末2をかざす。リーダ/ライタ装置35は、発信手段としての発信回路37により所定の電磁波が発信されており(ステップS1)、磁界領域45内において通信端末2がかざされると、通信端末2に備えられているICカード機能部6がその電磁波を受信する(ステップS2)。電磁波を受信したICカード機能部6は、必要な情報データをメモリ15から抽出し(ステップS3)、情報データを変調してリーダ/ライタ装置35に送信する(ステップS4)。リーダ/ライタ装置35は、情報データを受信し(ステップS5)、復調する。復調された情報データは所定の形式に変換後、端末機36に表示される(ステップS6)。店舗4の店員は端末機36に表示された情報データを確認し、決済がされる(ステップS7)。決済後、支払方法(1回払い、分割払い)などの決済情報データが通信端末2に送信される(ステップS8)。通信端末2はその決済情報データを受信し(ステップS9)、ICカード機能部6のメモリ15に記憶する(ステップS10)。記憶した情報データは、表示部12により確認できる(ステップS11)。
【0031】
図2は本実施形態のシステム図である。なお、図2において、図1と共通する部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
【0032】
図示のように、ICカード機能部6aは電源供給装置20を備える。電源供給装置20は、携帯電話端末機5の電源9からICカード機能部6aが動作するための電力を受けて、ICカード機能部6aの各部へその電力を供給するための装置である。電源供給装置20は、ICカード機能部6aのアンテナ18がリーダ/ライタ装置の磁界領域45内に存在する時のみ作動し、ICカード機能部6aの各部に電力が供給される。
【0033】
このように、ICカード機能部6aには、電源供給手段としての電源供給装置20が備えられ、所定の通信距離を得るのに必要な電力が携帯電話端末2aの電源から供給される。また、無駄な電力の消耗を避けるため、必要最低限の時間(通信時間相当)のみ、電力がICカード機能部6aの各部に供給されるようにした。そのため、ICカード機能部6aとリーダ/ライタ装置35との通信距離を伸ばすことが可能であるとともに、無駄な電力を使用することがない。また、ICカード機能部6aに供給する電力と通信距離の設定によりICカード機能部6aのアンテナ18を小さくすることも可能である。
【0034】
本発明においては、リーダ/ライタ装置35を電車の改札口に備えることにより、電子切符や電子回数券としても機能する。また予め、通信端末2のICカード機能部6のメモリ15に定期券の有効期限などの情報を記憶させることにより、電子定期券として機能する。
【0035】
また、この通信端末2を電子財布として使用する場合は、ICカード機能部6のメモリ15に記憶されている電子財布としての残金がゼロ又は一定金額以下となった場合には、提携している銀行等に通信回線を通じて自動的に入金するようにするとよい。また、電子定期券として使用する場合は、有効期限が切れる場合には、自動的に所定の場所(電子定期発行所)に入金して、電子定期券の有効期限を更新する処理が行われるようにするとよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】通信端末を利用した無線通信システムのシステム図である。
【図2】ICカードを具備した通信端末の他の実施形態のシステム図である。
【図3】決済処理のフローチャート図である。
【符号の説明】
【0037】
2… 携帯電話端末
3… 提携会社
4… 店舗
6、6a… ICカード機能部
7、8… I/O装置
9… 電源
11… 通信部
12… 表示部
15… メモリ
16… 送受信装置
17… CPU
18、40… アンテナ
20… 電源供給装置
35… リーダ/ライタ装置
37…発信回路
38…通信部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が通過する改札口とICカード機能部(6a)を備えた携帯電話端末機(5)とからなる電車の改札システムであって、前記改札口には電磁波を発信する発信回路(37)と、前記電磁波が影響する磁界内に前記ICカード機能部が存在した場合にそれを検知するアンテナを(40)を備えた通信部(38)を有するリーダ/ライタ装置(35)が設けられ、前記携帯電話端末機(5)は提携会社と情報データの送受信をするための携帯電話端末用アンテナ(14)と、前記通信部(38)と送受信をするためのICカード機能部用アンテナ(18)を有し、また前記携帯電話端末機(5)はCPU(13)を内蔵し、前記ICカード機能部(6a)はCPU(17)を内蔵し、前記CPU(13)は、前記ICカード機能部と情報データの入出力を行うためのI/O装置(7)、携帯電話端末の操作を行うための操作部(10)、携帯電話端末機(5)内の通信部(11)および情報を表示するための表示部(12)を制御し、前記CPU(17)は前記携帯電話端末機(5)と情報データの入出力を行うためのI/O装置(8)、前記アンテナ(18)を備えた送受信部(16)及びメモリ(15)を制御し、前記メモリ(15)には定期券の有効期限または残金が記憶され、前記ICカード機能部(6a)の送受信部(16)は前記リーダ/ライタ装置(35)が発信する電磁波を検出し、前記電源供給装置(20)は前記検出信号を受けて前記ICカード機能部(6a)の各部への電源供給を開始し、前記ICカード機能部用アンテナ(18)が前記リーダ/ライタ装置の磁界領域内に存在するときのみ作動し、且つ前記CPU(17)が決定する通信時間相当のみ前記電源(9)からの電力を前記ICカード機能部の各部へ供給するとともに、前記CPU(17)の指示に基づいて前記電源供給を停止することを特徴とする電車の改札システム。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−251024(P2008−251024A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119572(P2008−119572)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【分割の表示】特願2001−255154(P2001−255154)の分割
【原出願日】平成13年8月24日(2001.8.24)
【出願人】(398061359)
【Fターム(参考)】