説明

電鋳ノズル装置および溶液コーティング法

電子デバイスの基板上に層を液相コーティングするための装置および方法。本体およびディスクを含む電鋳ノズルが、基板上への多重堆積を遂行するために、アレイに配置される。低固形分の混合物が電子材料の非常に薄い乾燥膜を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連技術の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)項に基づいて、2008年12月27日に出願された米国仮特許出願第61/140,945号からの優先権を主張するものであり、この仮特許出願第61/140,945号の内容は、その全体が参照によって本願に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般的には、電子デバイスの製作方法に関し、具体的には、低固形分含有量の液体混合物用の特殊なノズルアセンブリを用いて液相の層を連続的にコーティングするための方法およびノズル装置に関する。
【背景技術】
【0003】
電子装置における活性有機分子の利用が増大している。この活性有機分子は、エレクトロルミネッセンスを含む電子特性または電気放射特性を有する。有機活性材料を組み込む電子デバイスは電気エネルギーを放射に変換するのに用いることができ、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイまたはダイオードレーザがそれに包含され得る。
【0004】
有機発光ダイオード(「OLED」)ディスプレイを作製するには、一般的に、2つの方法が用いられる。すなわち、真空蒸着法および液相処理法である。(後者は、真の溶液または懸濁液のような流体から層を形成するすべての形態を包含する。)真空蒸着設備は、通常、非常に高い投資コストを要し、材料の利用率が劣る(高い運転コスト)ので、特に大面積のディスプレイには液相処理法が好まれる。
【0005】
有機活性層を堆積させるための液相処理法には、基板上の層の厚さを制御するためのいくつもの技術が包含される。これらの技術のいくつかには、厚さを制御するための自己調整型の方法が包含される。例えば、スピンコーティング、ロッドコーティング、浸漬コーティング、ロールコーティング、グラビアコーティングまたは印刷、リソグラフィーまたはフレクソグラフィー印刷、スクリーンコーティングまたは印刷などである。これらの技術以外には、制御された堆積技法を用いて堆積厚さを制御する方式が探索されている。これには、インクジェット印刷、スプレーコーティング、ノズルコーティング、スロットダイコーティング、カーテンコーティング、バーまたはスライドコーティングなどが包含される。
【0006】
自己調整型の技法はいくつかの欠点を有する。OLEDディスプレイをコーティングするのに用いられる流体は、多くの場合、微細構造―すなわち、電極、接点パッド、薄膜トランジスタ、フォトレジストから形成されるピクセルウェル、カソードセパレータ構造など―を有する表面上に塗布される。自己調整型の技法によって堆積される湿式層の一様性は、コーティング間隙とそれによって生じる圧力分布とに依存している。そのため、基板の微細構造における変化によって、湿式コーティング厚さの好ましくない変化がもたらされる。自己調整型の技法は、一般的に、基板に供給される流体のすべてが堆積されるわけではないという点で高い運転コストを余儀なくされる。いくらかの流体は、流体浴に循環される(例えば、浸漬コーティング)か、塗布器に循環される(例えば、ロールコーティングまたはグラビアコーティング)か、浪費される(例えば、スピンコーティング)かのいずれかである。循環される流体から溶媒が蒸発するので、プロセスの安定を維持するために調整が必要である。洗浄材料と、循環および調整材料とがコストに加算される。
【0007】
制御された技法は低い運転コストを提供できる。しかし、いくつかの場合には、ノズルのような精密機器における摩耗によって、乾燥時には僅か数ナノメートルである層の制御が難しくなる。精密に機械加工されたノズルは製造費用が高く、そして、大型基板の面積をカバーするノズルアレイを設けることは制御の問題を増幅するであろう。有機層が不的確に形成されると、通常、デバイスの性能が劣り、デバイス製造プロセスにおける歩留まりが低下する結果が生じる。
【0008】
OLED塗布用の有機材料の液相堆積のための改良された方法に対する必要性が継続して存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
制御されたコーティング法においては、コーティングノズルに供給されるすべての流体が基板または加工品に塗布される。湿式コーティングの平均厚さは、コーティング流体の容積流量と、コーティング幅と、基板がノズルを通り過ぎる速度とから推測的に計算することが可能である。流体の特性(例えば、粘度、表面張力)および外部の力(例えば、重力)がコーティングの品質に影響を及ぼすことがあり得るが、それらは平均の湿式厚さには影響しない。制御されたコーティング法の内で特に興味深いのは、連続ノズルコーティング法であり、特に、ノズル本体の末端部における凹部に接合されたディスクを有する電鋳法である。
【0010】
連続ノズル操作は多くの変形態を有する。この変形態には、ノズル自体の設計、「パッチコーティング」対「連続コーティング」、「ストライプコーティング」、および、液体をノズルから押出す圧力を発生させる方法、が包含される。連続ノズルコーティングは、一般的に、基板または加工品からの間隙によって分離されるノズルによるコーティングであると認められる。
【0011】
ノズルに関わる通常の厚さのレベルは湿状態において数10ミクロンの程度であり、それを、数ミクロン程度の最終的な膜に乾燥できる。対照的に、OLEDディスプレイ製造用の有機層の連続ノズルコーティングは、一般的に、約0.1〜500ナノメートルの厚さの層を生成する。容認し得る層の性能をこのような薄い寸法において作り出すための方法の改善が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ノズルから発出する流れはピラーとも呼称されるが、この流れの劣化は、乾燥層中における有機材料の受け入れ難い堆積および性能をもたらす。複数ノズルの配置において使用する場合、16個のノズルの配置におけるただ1つのノズルの流れの劣化が、受け入れ難い生産の損失をもたらす可能性がある。この配置の運転時には多数のデバイスがコーティングされるからである。本発明の一実施形態においては、電鋳されたディスクをノズル本体に取り付けて、流れが容認可能なパラメータを超えて劣化した時にディスクの簡易な変更を行うことができる。ノズルアセンブリ全体を取り替える代わりに、ノズル末端におけるディスクのみを取り替えればよいのである。
【0013】
少なくとも1つの実施形態はノズルアセンブリを包含し、そのノズルアセンブリは、末端部に凹部領域を含む本体と、中心に位置付けられた開口を有するディスクとを含む。この開口の直径はdAであり、ディスクの直径はdDである。さらに、ディスクは、第1面および第2面を有するように特徴付けられ、第1面は本体の凹部領域に取り付けられ、第2面は、凹部領域内に位置付けられた開口を有する。ディスクの第2面におけるこの凹部領域の直径はd2であり、dDはd2よりも大きい。
【0014】
一実施形態においては、開口直径dAが0.05mm以下である。別の実施形態においては、dAが0.01mm以下である。さらに別の実施形態においては、dAがディスクの第1面とディスクの第2面との間で変化している。また別の実施形態においては、dAが第2面よりも第1面において大きい。さらに別の実施形態においては、半径rAが第1面および第2面の間の開口の表面を画定している。一実施形態においては、この半径が0.05mmより小さく、別の実施形態においては、この半径rAが0.04mmより小さい。さらに別の実施形態においては、この半径rAが0.03mmより小さい。
【0015】
少なくとも1つの実施形態は、末端部に凹部領域を含む本体を準備するステップのようないくつかのステップを含む液相のコーティング方法を包含する。中心に位置付けられた開口を有するディスクを準備する。この開口はdAの開口直径を有し、このディスクは、直径dDと、第1面および第2面とを有する。ディスクの第2面は、直径d2の凹部領内に位置する開口を有し、ディスク直径dDはd2よりも大きい。ディスクの第1面は、本体の凹部領域に取り付けられてノズルアセンブリを形成し、液体および固体を含む混合物が提供される。この混合物がノズルアセンブリを通して導かれて層を生成する。一実施形態においては、液体は有機溶媒であり、別の実施形態においては、液体は水である。一実施形態においては、混合物が固形分含有量10%未満の溶液であり、別の実施形態においては、混合物が固形分含有量10%未満の懸濁液である。
【0016】
一実施形態においては、加工品が、有機電子デバイス用として有用な基板(ガラスのような)を含む。「有機電子デバイス(organic electronic device)」という用語、時には単に「電子デバイス(electronic device)」と言われる用語は、1つ以上の有機半導体層または材料を包含するデバイスを意味するものとする。有機電子デバイスには、次の各項が包含されるが、これに限定されない。すなわち、(1)電気エネルギーを放射に変換するデバイス(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、ダイオードレーザ、または発光パネル)、(2)電子プロセスを利用して信号を検出するデバイス(例えば、光検出器、光導電セル、光抵抗器、光スイッチ、フォトトランジスタ、光電管、赤外線(「IR」)検出器、またはバイオセンサー)、(3)放射を電気エネルギーに変換するデバイス(例えば、光起電力デバイス、または太陽電池)、(4)1つ以上の有機半導体層(例えば、トランジスタまたはダイオード)を包含する1つ以上の電子部品を包含するデバイス、あるいは、(1)〜(4)項のデバイスの任意の組合せ、である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電子デバイスの図解である。
【図2】中心に位置する開口を備えた本発明のディスクの一実施形態の図解である。
【図3】図2の本発明のディスクの線3−3に沿って取られた端部の図解である。
【図4】本発明のノズル本体の末端部における凹部領域の一実施形態の図解である。
【図5】本発明のノズル配置の一実施形態の図解である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
有機発光ダイオード(「OLED」)を含む電子デバイスの1つの例が図1に符号100として示されている。このデバイスは、アノード層110と、バッファ層120と、光活性層130と、カソード層150とを有する。カソード層150には、オプションとしての電子注入/輸送層140が隣接している。バッファ層120および光活性層130の間には、オプションとしての正孔注入/輸送層が設けられる(図示なし)。
【0019】
本明細書で用いる「バッファ層(buffer layer)」または「バッファ材料(buffer material)」という用語は、導電性または半導電性の材料を意味するものとするが、これは、有機電子デバイスにおいて1つ以上の機能を有することができる。この機能には、下層の平坦化、電荷輸送および/または電荷注入特性、酸素または金属イオンのような不純物の排除、および、有機電子デバイスの性能を促進するまたは改善する他の機能が包含されるが、これに限定されない。バッファ材料は、ポリマー、オリゴマーまたは小分子とすることができ、さらに、溶液、分散系、懸濁液、エマルジョン、コロイド性混合物または他の組成物の形態とすることができる。「正孔輸送(hole−transport)」という用語は、層、材料、部材または構造について言う場合は、その層、材料、部材または構造の厚さを通過する正電荷の移動を、比較的高い効率でかつ電荷の損失が低い条件において容易にする層、材料、部材または構造のことを意味するものとする。「電子輸送(electron transport)」という用語は、層、材料、部材または構造について言う場合は、負の電荷が、その層、材料、部材または構造を通って他の層、材料、部材または構造に移動するのを促進または容易にする層、材料、部材または構造のことを意味するものとする。「正孔注入(hole−injection)」という用語は、層、材料、部材または構造について言う場合は、その層、材料、部材または構造の厚さを通過する正電荷の注入および移動を、比較的高い効率でかつ電荷の損失が低い条件において容易にする層、材料、部材または構造のことを意味するものとする。「電子注入(electron−injection)」という用語は、層、材料、部材または構造について言う場合は、その層、材料、部材または構造の厚さを通過する負の電荷の注入および移動を、比較的高い効率でかつ電荷の損失が低い条件において容易にする層、材料、部材または構造のことを意味するものとする。
【0020】
このデバイスは、アノード層110またはカソード層150に隣接させることが可能な支持体または基板(図示なし)を包含することができる。殆どの場合、支持体はアノード層110に隣接する。支持体は、柔軟なものまたは剛性のもの、有機または無機のものとすることができる。一般的に、ガラスまたは柔軟な有機膜が支持体として用いられる。アノード層110は、カソード層150に比べて正孔注入に対してより効率的な電極である。アノードは、金属、混合金属、合金、金属酸化物または混合酸化物を含む材料を包含できる。適切な材料には、第2族の元素(すなわち、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)の混合酸化物、第11族の元素、第4、5および6族の元素、並びに第8〜10族の遷移元素が包含される。アノード層110が光透過性であるべきならば、酸化インジウムスズのような第12、13および14族の元素の混合酸化物を用いることができる。本明細書で用いる「混合酸化物(mixed oxide)」という語句は、第2族の元素あるいは第12、13または14族の元素から選択される2つ以上の異なるカチオンを有する酸化物のことを言う。アノード層110用の材料の非制限的ないくつかの具体的な例として、酸化インジウムスズ(「ITO」)、酸化アルミニウムスズ、金、銀、銅およびニッケルが包含されるが、これに限定されない。アノードは、ポリアニリン、ポリチオフェンまたはポリピロールのような有機材料を含むこともできる。本明細書全体にわたって、IUPACの番号システムを用いている。すなわち、周期律表の族については、左から右に第1〜18族として付番されている(「CRC Handbook of Chemistry and Physics」、第81版、2000年)。
【0021】
一実施形態において、バッファ層120は正孔輸送材料を含む。層120用の正孔輸送材料の例は、例えば、「Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology」、第4版、1996年、第18巻、p837−860のY.Wangによる記述に要約されている。正孔輸送性の分子およびポリマーの両方を用いることができる。一般的に用いられる正孔輸送性の分子には次のようなものが包含されるが、これに限定されない。すなわち、4,4',4''−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)−トリフェニルアミン(TDATA);4,4',4''−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ)−トリフェニルアミン(MTDATA);N,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミン(TPD);1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC);N,N'−ビス(4−メチルフェニル)−N,N'−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1'−(3,3'−ジメチル)ビフェニル]−4,4'−ジアミン(ETPD);テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N',N'−2,5−フェニレンジアミン(PDA);α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS);p−(ジエチルアミノ)ベンゾアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH);トリフェニルアミン(TPA);ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP);1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP);1,2−トランス−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB);N,N,N',N'−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1'−ビフェニル)−4,4'−ジアミン(TTB);N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)ベンジジン(α−NPB);および、フタロシアニン銅のようなポルフィリン化合物、である。一般的に用いられる正孔輸送性のポリマーには、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−N−(4−ブチルフェニル)ジフェニルアミン)など、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(ジオキシチオフェン)、ポリアニリン、およびポリピロールが包含されるが、これに限定されない。上記のような正孔輸送性分子を、ポリスチレンおよびポリカーボネートのようなポリマーにドープすることによって、正孔輸送性のポリマーを得ることも可能である。
【0022】
光活性層130は、通常、任意の有機エレクトロルミネッセンス(「EL」)材料とすることができる。この材料には、小分子の有機蛍光化合物、蛍光性およびリン光性の金属錯体、共役ポリマー、およびこれらの混合物が包含されるが、これに限定されない。蛍光化合物の例としては、ピレン、ペリレン、ルブレン、クマリン、これらの誘導体、およびこれらの混合物が包含されるが、これに限定されない。金属錯体の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラート)アルミニウム(Alq3)のような金属キレート化オキシノイド化合物と、イリジウムのフェニルピリジン配位子、フェニルキノリン配位子またはフェニルピリミジン配位子との錯体のようなシクロメタル化イリジウムおよび白金エレクトロルミネッセンス性化合物であって、Petrovらに付与された米国特許第6,670,645号明細書、および公刊されたPCT出願の国際公開第03/063555号パンフレットおよび同第2004/016710号パンフレットに開示されている化合物と、例えば、公刊されたPCT出願の国際公開第03/008424号パンフレット、同第03/091688号パンフレットおよび同第03/040257号パンフレットに開示されている有機金属錯体と、これらの混合物とが包含されるが、これに限定されない。電荷担持ホスト材料および金属錯体を含むエレクトロルミネッセンス性の放出層は、Thompsonらによって米国特許第6,303,238号明細書において、および、BurrowsおよびThompsonによって公刊されたPCT出願の国際公開第00/70655号パンフレットおよび同第01/41512号パンフレットにおいて記述されている。共役ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリ(スピロビフルオレン)、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、これらのコポリマー、およびこれらの混合物が包含されるが、これに限定されない。
【0023】
選択される特定の材料は、具体的な用途、運転中に使用される可能性、または他の因子によって変わることがあり得る。エレクトロルミネッセンス性の有機材料を含むEL層130は、液相処理法を包含するいくつもの技法を用いて塗布できる。別の実施形態においては、ELポリマーの前駆体を塗布して、続いて、通常熱または他の外部エネルギー源(例えば、可視光またはUV放射)によってそれをポリマーに転化することが可能である。
【0024】
オプションとしての層140は、電子の注入/輸送の両者を容易にするように機能することが可能であり、層の界面におけるクエンチ反応を防ぐための閉じ込め層としても作用し得る。より具体的には、層140は、電子の動きを促進して、層130および150が層140なしに直接接触していると生じる可能性があるクエンチ反応を低減することができる。オプションとしての層140用の材料の例として次のようなものが包含されるが、これに限定されない。すなわち、トリス(8−ヒドロキシキノラート)アルミニウム(Alq3)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラフェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlQ)およびテトラキス−(8−ヒドロキシキノラート)ジルコニウム(IV)(ZrQ)のような金属キレート化オキシノイド化合物;2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンゾイミダゾール)ベンゼン(TPBI)のようなアゾール化合物;2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリンのようなキノキサリン誘導体;4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)のようなフェナントロリン;およびこれらの混合物である。代替的に、オプションとしての層140を無機のものとしてもよく、BaO、LiF、Li2Oなどがこれに含まれる。
【0025】
カソード層150は、電子または負の電荷の担体の注入に対して特に効率的な電極である。カソード層150は、第1の電気接点層(この場合アノード層110)よりも低い仕事関数を有する任意の金属または非金属とすることが可能である。本明細書で用いる「より低い仕事関数(lower work function)」という用語は、約4.4eV以下の仕事関数を有する材料を意味するものとし、本明細書で用いる「より高い仕事関数(higher work function)」という用語は、少なくとも約4.4eVの仕事関数を有する材料を意味するものとする。
【0026】
カソード層用の材料は、第1族のアルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Rb、Cs)、第2族の金属(例えば、Mg、Ca、Baなど)、第12族の金属、ランタニド(例えば、Ce、Sm、Euなど)、およびアクチニド(例えば、Th、Uなど)から選択できる。アルミニウム、インジウム、イットリウム、およびこれらの組合せのような材料も使用することができる。カソード層150用の材料の非制限的な具体例として、バリウム、リチウム、セリウム、セシウム、ユーロピウム、ルビジウム、イットリウム、マグネシウム、サマリウム、および、これらの合金および組合せが包含されるが、これに限定されない。
【0027】
他の実施形態においては、有機電子デバイスの内部に、1つまたは複数の追加の層が存在することができる。例えば、バッファ層120およびEL層130の間の層(図示なし)は、正電荷の輸送、層のエネルギー準位のマッチング、保護層としての機能などを促進することができる。同様に、EL層130およびカソード層150の間の付加層(図示なし)は、負電荷の輸送、層間のエネルギー準位のマッチング、保護層としての機能などを促進することができる。当分野で知られている層を利用することが可能である。さらに、上記の層の任意の層を2つ以上の層から構成することが可能である。また代替的に、無機アノード層110、バッファ層120、EL層130、およびカソード層150のいくつかまたはすべてを、電荷担体の輸送効率を高めるために表面処理することができる。各構成要素の層に対する材料の選択は、高いデバイス効率を有するデバイスを供給するという目標と、製造コスト、製造の複雑さ、あるいは他の潜在的な因子とを比較考量することにより決定することができる。
【0028】
種々の層は任意の適切な厚さを有することができる。一実施形態においては、無機アノード層110は通常約500nm以下、例えば約10〜200nmであり、バッファ層120は通常約250nm以下、例えば約50〜200nmであり、EL層130は通常約100nm以下、例えば約50〜80nmであり、オプションとしての層140は通常約100nm以下、例えば約20〜80nmであり、カソード層150は通常約100nm以下、例えば約1〜50nmである。アノード層110またはカソード層150が、少なくともいくらかの光を透過する必要がある場合は、これらの層の厚さは約100nmを超える必要はない。
【0029】
有機発光ダイオードにおいては、それぞれカソード層150およびアノード層110からEL層130に注入される電子および正孔が、ポリマー中に負および正に荷電された極性イオンを形成する。この極性イオンは、印加された電界の影響の下に移動して、逆に荷電された化学種と極性イオン励起子を形成し、引き続いて放射再結合を受ける。通常約12ボルト未満、多くの例では約5ボルト以下のアノードおよびカソード間の十分な電位差をデバイスに印加することができる。実際の電位差は、より大きな電子部品におけるデバイスの使用に応じて変化する可能性がある。多くの実施形態において、アノード層110は正電圧にバイアスをかけられ、カソード層150は、電子デバイスの運転中、実質的に接地電位またはゼロボルトにある。バッテリまたは他の電源を回路の一部として電子デバイスに電気接続してもよいが、これは図1には示されていない。
【0030】
図2は、ディスク200の一実施形態を示す。このディスク200は、第1面202(図3に示す)および第2面204を有する。開口206がディスク200を貫通しており、第2面204において開口直径dAを有する。第2面204はさらに凹部領域208を含む。この凹部領域208は、基板(図示なし)とノズルアセンブリ502(図5参照)との間の相対的な運動の間に発生する風動から流れ(図示なし)を遮蔽するように作用する。凹部領域208の内部には、より制御された堆積条件を生成するために静止域が形成される。本発明の一実施形態においては、ディスクの直径dDを10cm以下とすることでき、別の実施形態においては、dDを5cm以下とすることができる。さらに別の実施形態においては、開口直径dAを0.05mm以下とすることができ、さらに別の実施形態においては、dAを0.01mm以下とすることができる。またさらに別の実施形態においては、凹部領域の直径d2を1.0mm以下とすることができ、さらに別の実施形態においては、d2を0.05mm以下とすることができる。比tD/d2は、凹部領域208内に静止域を形成するのに十分なものとする。一実施形態においては、tDを0.05mm、d2を0.5mmとすることができる。
【0031】
図3は、図2に線3−3として示すディスク200の端部形状の一実施形態を示す。第1表面202および第2表面204は、ディスク厚さtDとして示されるディスクの厚さによって分離されており、この場合、tDは0.1mm以下とすることができる。本発明の一実施形態においては、ディスク厚さtDを0.05mm以下とすることができ、さらに別の実施形態においては、tDを0.03mm以下とすることができる。一実施形態においては、開口の厚さtAを50μm以下とすることができ、別の実施形態においては、tAを10μm以下とすることができる。開口の厚さを薄くすることによって、圧力損失が低減し、噴流の流出速度が維持され、かつ、流れが分裂して液滴になる可能性が低下する結果がもたらされる。このような実施形態は、バッファ層、電荷ブロック層、電荷注入層、電荷輸送層、エレクトロルミネッセンス層、またはこれらの組合せを堆積するのに有用であり得る。
【0032】
図4は、肩部402および開口404を含む凹部領域を有する本体400の一実施形態を示す。ディスク200は本体400に接合され、その場合、第1表面202が肩部402に接合されてノズルアセンブリ502(図5に示される)を形成する。接合方式には、ファスナ、クリップまたは他の機械的手段のような機械的接合法、接着、ハンダ付け、溶接、溶着などが包含され得る。一実施形態においては、本体400がアルミニウムであってニッケル被膜処理されており、ディスク200は本体400の凹部領域の中にハンダ付けされる。他の材料および方法を、本発明の範囲を変更することなく使用することが可能である。例えば、本体400の末端部が凹部を含まなくてもよく、ディスク200を、本体400の末端表面に直接接合することが可能である(図示なし)。
【0033】
図5は、ノズルアセンブリ502の直線配置500の一実施形態を示す。配置500は、合計16個のノズルアセンブリ502を含む直線構造であるが、任意の個数を用いることができ、それも本発明の教示の範囲内に留まる。基板上に制御された堆積を形成するために、混合物がノズルアセンブリを通して供給される。混合物は液体および固体材料を含み、溶液、懸濁液、分散系、エマルジョン、コロイド性混合物、または他の組成物を生成する。液体は、本明細書において以下に述べるように有機溶媒または水とすることができる。固体は、バッファ層120、EL層130、あるいはオプションとしての層140において使用される任意の1つ以上の材料である。
【0034】
電子デバイスの歩留まりおよび最終性能を改善するため、ノズルコーティング法においていくつかの変数が用いられる。すなわち、200〜800μmのコーティング間隙、2〜10m/sのコーティング速度、並びに、混合物における、2〜15%の固形分含有量、0.5〜10cpの粘度、および、20〜100ダイン/cmの表面張力である。
【0035】
別の実施形態においては、液体混合物が5センチポアズ以下の粘度を有する。さらに別の実施形態においては、液体混合物が液体の溶媒を包含し、その場合、この液体の溶媒は2種以上の溶媒を包含することができる。さらに別の実施形態においては、少なくとも1つの溶媒は水である。
【0036】
付加的な機器がノズルアセンブリ502の範囲内に存在してもよいし、あるいは、それをノズルアセンブリ502と共に用いることができる。このような付加的な機器として、液相混合物を形成するいくつもの構成成分を受け入れるための、容器と、ノズルアセンブリ502に流体連結される供給ラインとが包含される。さらに他の機器として、1つ以上のステップモータ、ポンプ、フィルタ、制御電子装置、他の電気的、機械的または電気機械的アセンブリまたはサブアセンブリ、設備接続器具、あるいは、これらの任意の組合せが包含され得る。
【0037】
コーティング操作の間、ノズルアセンブリ502内部の圧力は約100〜500KPaの範囲とすることができる。一実施形態においては、この圧力を一定に保持することが可能で、流量は質量流量制御器によって制御される。ノズルアセンブリ502からの液体混合物の流量は、毎分50〜600マイクロリットルの範囲とすることができる。別の実施形態においては、より高いまたはより低い圧力、より高いまたはより低い流量、またはこれらの任意の組合せを用いることも可能である。当業者は、本明細書を読了後、彼らの特定の用途用の圧力および流量を実現するために、コーティング操作を調整または修正することができるであろう。
【0038】
3.液体組成物
ノズルアセンブリ502は、液体溶液を包含する種々の異なる材料の堆積用として用いることが可能である。以下の段落は、使用し得る材料のすべてではなくいくつかのみを包含する。一実施形態においては、電子デバイス内部の有機層用の1つ以上の材料が、ノズルアセンブリ502を用いて形成される。
【0039】
ノズルアセンブリ502は、液体組成物の印刷用としてよく適している。ノズルアセンブリ502は、従来型のインクジェットプリンタに比べて、使用し得る操作パラメータおよび液体組成物の範囲が拡大される。一実施形態においては、1つ以上のパラメータが液体組成物の流れの特性に影響を及ぼす可能性がある。粘度は流れの特性に影響し得る1つのパラメータである。粘度は、液体媒体の選択、液体媒体内の固形分含有量、液体組成物の温度、または可能性のある1つ以上の他の因子、またはこれらの任意の組合せによって影響を受ける可能性がある。また、粘度は、温度によって直接的に(液体媒体の粘度は温度の低下と共に増大し、温度の上昇と共に低下する)、あるいは、液体組成物内の液体媒体の蒸発速度を変化させること(すなわち、より低沸点またはより高沸点の液体媒体の使用、液体組成物の温度の変化、またはこれらの組合せ)によって間接的に影響を受ける可能性がある。当業者は、本明細書を読了後、液体媒体のきわめて大きな選択範囲、使用される液体組成物の固形分濃度の大きな範囲、またはこれらの組合せを可能にする多くの異なる方法を有していることを理解するであろう。
【0040】
液体混合物は、溶液、分散系、エマルジョンまたは懸濁液の形態にすることができる。以下の段落においては、固体材料および液体媒体の非制限的な例を述べる。固体材料は、結果的に形成される層に関する電子的特性または電気放射特性に基づいて選択できる。液体媒体は、本明細書において以下に記述する基準に基づいて選択できる。
【0041】
ノズルアセンブリ502を用いる場合は、液体組成物は、閉塞に関する懸念の必要なしに、約2.0重量パーセントより多い固形分を有することができる。一実施形態においては、固形分含有量は約2.0〜3.0重量パーセントの範囲にある。従って、ノズルアセンブリ502は、従来型のインクジェットプリンタに比べて、より高い粘度またはより低い沸点を有する液体組成物を用いることができる。さらに、ノズルアセンブリ502は、従来型のインクジェットプリンタに比べて、より低い粘度またはより高い沸点を有する液体組成物を用いることができる。またさらに、液体組成物内の液体媒体は印刷前に脱気する必要はない。例えば、水溶液中の導電性有機材料を塗布処理するのに用いられる従来型のインクジェットプリンタの場合は、水性溶媒を脱気する必要がある。しかし、ノズルアセンブリ502はより大きな処理上の余裕を有しているので、ノズルアセンブリ502の適正な操作のために液体媒体を脱気する必要はない。
【0042】
ノズルアセンブリ502を用いて印刷される有機層には、有機活性層(例えば、放射放出有機活性層または放射応答有機活性層)、フィルタ層、バッファ層、電荷注入層、電荷輸送層、電荷ブロック層、またはこれらの任意の組合せが包含され得る。有機層は、抵抗器、トランジスタ、キャパシタ、ダイオードなどの一部として用いることができる。
【0043】
放射放出有機活性層については、適切な放射放出材料として、1つ以上の小分子材料、1つ以上のポリマー材料、またはこれらの組合せが包含される。小分子材料には、例えば、米国特許第4,356,429号(「Tang」)明細書、同第4,539,507号(「Van Slyke」)明細書、米国特許出願公開第2002/0121638号(「Grushin」)明細書、または米国特許第6,459,199号(「城戸」)明細書に記載される材料の任意の1つ以上の材料が包含され得る。また、小分子材料の代わりのポリマー材料には、米国特許第5,247,190号(「Friend」)明細書、同第5,408,109号(「Heeger」)明細書、または同第5,317,169号(「中野」)明細書に記載される材料の任意の1つ以上の材料が包含され得る。1つの典型的な材料種は半導電性の共役ポリマーであり、このようなポリマーの例として、ポリ(パラフェニレンビニレン)(PPV)、PPVのコポリマー、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン、ポリ(n−ビニルカルバゾール)(PVK)などが包含される。1つの特定の実施形態においては、いかなるゲスト材料も含まない放射放出活性層が青色の光を放出することができる。
【0044】
放射応答有機活性層については、適切な放射応答材料として、共役ポリマーまたはエレクトロルミネッセンス材料が包含され得る。このような材料には、例えば、共役ポリマー、または、エレクトロルミネッセンス性およびフォトルミネッセンス性の材料が包含される。具体的な例として、ポリ(2−メトキシ,5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(「MEH−PPV」)、または、CN−PPVを含むMEH−PPV組成物が包含される。
【0045】
正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、またはこれらの任意の組合せについては、適切な材料として、ポリアニリン(「PANI」)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(「PEDOT」)、ポリピロール、例えばテトラチアフルバレンテトラシアノキノジメタン(「TTF−TCQN」)のような有機電荷移動化合物、「城戸」に記載されるような正孔輸送材料、またはこれらの任意の組合せが包含される。
【0046】
電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層、またはこれらの任意の組合せについては、適切な材料として次のようなものが包含される。すなわち、金属キレート化オキシノイド化合物(例えば、Alq3、またはアルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナート)4−フェニルフェノレート)(「BAlq」));フェナントロリンベースの化合物(例えば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(「DDPA」)または9,10−ジフェニルアントラセンス(「DPA」));アゾール化合物(例えば、2−tert−ブチルフェニル−5−ビフェニル−1,3,4−オキサジアゾール(「PBD」)または3−(4−ビフェニル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(「TAZ」));「城戸」に記載されるような電子輸送材料;ジフェニルアントラセン誘導体;ジナフチルアントラセン誘導体;4,4−ビス(2,2−ジフェニルエテン−1−イル)−ビフェニル(「DPVBI」);9,10−ジ−ベータ−ナフチルアントラセン;9,10−ジ−(ナフェンチル)アントラセン;9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(「ADN」);4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(「CBP」);9,10−ビス−[4−(2,2−ジフェニルビニル)−フェニル]−アントラセン(「BDPVPA」);アントラセン、N−アリールベンゾイミダゾール(「TPBI」のような);1,4−ビス−[2−(9−エチル−3−カルバゾイル)ビニレニル]ベンゼン;4,4’−ビス−[2−(9−エチル−3−カルバゾイル)ビニレニル]−1,1’−ビフェニル;9,10−ビス[2,2−(9、9−フルオレニレン)ビニレニル]アントラセン;1,4−ビス−[2,2−(9,9−フルオレニレン)ビニレニル]ベンゼン;4,4’−ビス[2,2−(9,9−フルオレニレン)ビニレニル]−1,1’−ビフェニル;ペリレン、置換ペリレン;テトラ−tert−ブチルペリレン(「TBPe」);ビス(3,5−ジフルオロ−2−(2−ピリジル)フェニル−(2−カルボキシピリジル))イリジウムIII(「F(Ir)Pic」);ピレン、置換ピレン;スチリルアミン;フッ素化フェニレン;オキシダゾール;1,8−ナフタルイミド;ポリキノリン;PPV中の1つ以上のカーボンナノチューブ、またはこれらの任意の組合せ、である。
【0047】
抵抗器、トランジスタ、キャパシタなどのような電子部品については、有機層は、チオフェン(例えば、ポリチオフェン、ポリ(アルキルチオフェン)、アルキルチオフェン、ビス(ジチエンチオフェン)、アルキルアントラジチオフェンなど)、ポリアセチレン、ペンタセン、フタロシアニン、またはこれらの任意の組合せの1つ以上を包含することができる。
【0048】
有機染料の例としては、4−ジシアンメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)、クマリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、これらの誘導体、またはこれらの任意の組合せが包含される。
【0049】
有機金属材料の例としては、少なくとも1つの金属に配位結合された1つ以上の官能基を含む官能基化ポリマーが包含される。使用し得ると考えられる典型的な官能基には、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸基、スルホン酸塩、OH部分を有する基、アミン、イミン、ジイミン、N−オキシド、ホスフィン、ホスフィンオキシド、β−ジカルボニル基、またはこれらの任意の組合せが包含される。使用し得ると考えられる典型的な金属には、ランタニド金属(例えば、Eu、Tb)、第7族の金属(例えば、Re)、第8族の金属(例えば、Ru、Os)、第9族の金属(例えば、Rh、Ir)、第10族の金属(例えば、Pd、Pt)、第11族の金属(例えば、Au)、第12族の金属(例えば、Zn)、第13族の金属(例えば、Al)、またはこれらの任意の組合せが包含される。このような有機金属材料には、トリス(8−ヒドロキシキノラート)アルミニウム(Alq3)のような金属キレート化オキシノイド化合物と、イリジウムのフェニルピリジン配位子、フェニルキノリン配位子またはフェニルピリミジン配位子との錯体のようなシクロメタル化イリジウムまたは白金エレクトロルミネッセンス性化合物であって、公刊されたPCT出願の国際公開第02/02714号パンフレットに開示されている化合物と、例えば、公刊された米国特許出願公開第2001/0019782号明細書、欧州特許出願公開第1191612号明細書、国際公開第02/15645号パンフレット、同第02/31896号パンフレットおよび欧州特許出願公開第1191614号明細書に開示されている有機金属錯体と、これらの任意の混合物とが包含される。
【0050】
共役ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリ(スピロビフルオレン)、これらのコポリマー、またはこれらの任意の組合せが包含される。
【0051】
液体媒体の選択も、液体混合物の1つ以上の適切な特性を達成するための重要な因子であり得る。液体媒体を選択する際に考慮するべき因子には、例えば、結果として得られる溶液、エマルジョン、懸濁液または分散系の粘度、ポリマー材料の分子量、固形分のローディング、液体媒体のタイプ、液体媒体の沸点、下層の基板の温度、ゲスト材料を受け取る有機層の厚さ、またはこれらの任意の組合せが包含される。
【0052】
いくつかの実施形態においては、液体媒体は少なくとも1つの溶媒を包含する。典型的な有機溶媒としては、ハロゲン化溶媒、コロイド形成ポリマー酸、炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル溶媒、環状エーテル溶媒、アルコール溶媒、グリコール溶媒、ケトン溶媒、ニトリル溶媒、スルホキシド溶媒、アミド溶媒、またはこれらの任意の組合せが包含される。
【0053】
典型的なハロゲン化溶媒としては、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ビス(2−クロロエチル)エーテル、クロロメチルエチルエーテル、クロロメチルメチルエーテル、2−クロロエチルエチルエーテル、2−クロロエチルプロピルエーテル、2−クロロエチルメチルエーテル、またはこれらの任意の組合せが包含される。
【0054】
典型的なコロイド形成ポリマー酸としては、フッ素化スルホン酸(例えば、ペルフルオロ化エチレンスルホン酸のようなフッ素化アルキルスルホン酸)、またはこの任意の組合せが包含される。
【0055】
典型的な炭化水素溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカヒドロナフタレン、石油エーテル、リグロイン、またはこれらの任意の組合せが包含される。
【0056】
典型的な芳香族炭化水素溶媒としては、ベンゼン、ナフタレン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン(イソプロピルベンゼン)、メシチレン(トリメチルベンゼン)、エチルトルエン、ブチルベンゼン、シメン(イソプロピルトルエン)、ジエチルベンゼン、イソブチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、アニソール、4−メチルアニソール、3,4−ジメチルアニソール、またはこれらの任意の組合せが包含される。
【0057】
典型的なエーテル溶媒としては、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、グリム、ジグリム、ベンジルメチルエーテル、イソクロマン、2−フェニルエチルメチルエーテル、n−ブチルエチルエーテル、1,2−ジエトキシエタン、sec−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、エチルn−プロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、n−ヘキシルメチルエーテル、n−ブチルメチルエーテル、メチルn−プロピルエーテル、またはこれらの任意の組合せが包含される。
【0058】
典型的な環状エーテル溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、テトラヒドロピラン、4メチル−1,3−ジオキサン、4−フェニル−1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン、2,5−ジメトキシ−2,5−ジヒドロフラン、またはこれらの任意の組合せが包含される。
【0059】
典型的なアルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール(すなわち、イソブタノール)、2−メチル−2−プロパノール(すなわち、tert−ブタノール)、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−ヘキサノール、シクロペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、3−ヘキサノール、2−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エチルブタノール、2,4−ジメチル−3−ペンタノール、3−ヘプタノール、4−ヘプタノール、2−ヘプタノール、1−ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、またはこれらの任意の組合せが包含される。
【0060】
アルコールエーテル溶媒も使用することができる。典型的なアルコールエーテル溶媒としては、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−ブタノール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、1−エトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−1−ブタノール、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチルブタノール、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、またはこれらの任意の組合せが包含される。
【0061】
典型的なグリコール溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGME)、またはこれらの任意の組合せが包含される。
【0062】
典型的なケトン溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソプロピルメチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−ヘキサノン、ジイソプロピルケトン、2−ヘキサノン、シクロペンタノン、4−ヘプタノン、イソアミルメチルケトン、3−ヘプタノン、2−ヘプタノン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2−メチルシクロヘキサノン、ジイソブチルケトン、5−メチル−2−オクタノン、3−メチルシクロヘキサノン、2−シクロヘキセン−1−オン、4−メチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、4−tert−ブチルシクロヘキサノン、イソホロン、ベンジルアセトン、またはこれらの任意の組合せが包含される。
【0063】
典型的なニトリル溶媒としては、アセトニトリル、アクリロニトリル、トリクロロアセトニトリル、プロピオニトリル、ピバロニトリル、イソブチロニトリル、n−ブチロニトリル、メトキシアセトニトリル、2−メチルブチロニトリル、イソバレロニトリル、N−バレロニトリル、n−カプロニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、3−エトキシプロピオニトリル、3,3’−オキシジプロピオニトリル、n−ヘプタンニトリル、グリコロニトリル、ベンゾニトリル、エチレンシアノヒドリン、スクシノニトリル、アセトンシアノヒドリン、3−n−ブトキシプロピオニトリル、またはこれらの任意の組合せが包含される。
【0064】
典型的なスルホキシド溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジ−n−ブチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、メチルフェニルスルホキシド、またはこれらの任意の組合せが包含される。
【0065】
典型的なアミド溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アシルアミド、2−アセトアミドエタノール、N,N−ジメチル−m−トルアミド、トリフルオロアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルドデカンアミド、エプシロン−カプロラクタム、N,N−ジエチルアセトアミド、N−tert−ブチルホルムアミド、ホルムアミド、ピバルアミド、N−ブチルアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−ホルミルエチルアミン、アセトアミド、N,N−ジイソプロピルホルムアミド、1−ホルミルピペリジン、N−メチルホルムアニリド、またはこれらの任意の組合せが包含される。
【0066】
考えられるクラウンエーテルとしては、本発明によって処理される組合せの一部としてのエポキシ化合物出発材料の塩化物含有量の低減を補助するように機能することが可能な任意の1つ以上のクラウンエーテルが包含される。典型的なクラウンエーテルとしては次のようなものが包含される。すなわち、ベンゾ−15−クラウン−5;ベンゾ−18−クラウン−6;12−クラウン−4;15−クラウン−5;18−クラウン−6;シクロヘキサノ−15−クラウン−5;4’,4''(5'')−ジtert−ブチルジベンゾ−18−クラウン−6;4’,4''(5'')−ジtert−ブチルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6;ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6;ジシクロヘキサノ−24−クラウン−8;4’−アミノベンゾ−15−クラウン−5;4’−アミノベンゾ−18−クラウン−6;2−(アミノメチル)−15−クラウン−5;2−(アミノメチル)−18−クラウン−6;4’−アミノ−5’−ニトロベンゾ−15−クラウン−5;1−アザ−12−クラウン−4;1−アザ−15−クラウン−5;1−アザ−18−クラウン−6;ベンゾ−12−クラウン−4;ベンゾ−15−クラウン−5;ベンゾ−18−クラウン−6;ビス((ベンゾ−15−クラウン−5)−15−イルメチル)ピメレート;4−ブロモベンゾ−18−クラウン−6;(+)−(18−クラウン−6)−2,3,11,12−テトラカルボン酸;ジベンゾ−18−クラウン−6;ジベンゾ−24−クラウン−8;ジベンゾ−30−クラウン−10;ar−ar’−ジ−tert−ブチルジベンゾ−18−クラウン−6;4’−ホルミルベンゾ−15−クラウン−5;2−(ヒドロキシメチル)−12−クラウン−4;2−(ヒドロキシメチル)−15−クラウン−5;2−(ヒドロキシメチル)−18−クラウン−6;4’−ニトロベンゾ−15−クラウン−5;ポリ−[(ジベンゾ−18−クラウン−6)−コ−ホルムアルデヒド];1,1−ジメチルシラ−11−クラウン−4;1,1−ジメチルシラ−14−クラウン−5;1,1−ジメチルシラ−17−クラウン−5;シクラム;1,4,10,13−テトラチア−7,16−ジアザシクロオクタデカン;ポルフィン;またはこれらの任意の組合せである。
【0067】
別の実施形態においては、液体媒体として水が包含される。水不溶性のコロイド形成ポリマー酸と複合された導電性ポリマーを、基板上に堆積させて、電荷輸送層として用いることが可能である。
【0068】
以上においては、多くの異なる種類の液体媒体(例えば、ハロゲン化溶媒、炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、水など)が記述されている。異なる種類からの2つ以上の液体媒体の混合物も使用することができる。
【0069】
液体混合物は、また、バインダ材料、充填剤材料、またはこれらの組合せのような不活性材料を包含することができる。液体混合物に関しては、不活性材料が、その液体混合物の少なくとも一部によって形成されるかあるいはそれを受け入れる層の電子的特性、放射放出特性、または放射応答特性に重要な影響は及ぼすことはない。
【0070】
本明細書において、明確化のために別個のいくつかの実施形態の文脈に記述されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態における組合せにおいても提供し得ることが理解されるべきである。逆に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈に記述される本発明のさまざまな特徴は、個別にも、あるいは任意のサブコンビネーションにおいても提供することができる。さらに、範囲として述べられた値への言及は、その範囲内のそれぞれの値をいずれも包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端部に凹部領域を含む本体と、
中心に位置付けられた開口を有するディスクであって、開口は開口直径dAおよび開口厚さtAを有し、ディスクは直径dDを有し、ディスクは第1面および第2面を有し、第1面は本体の凹部領域に取り付けられ、第2面は、直径d2の凹部領域内に位置付けられた開口を有し、dDはd2よりも大きい、ディスクと、
を含むノズルアセンブリ。
【請求項2】
Aが0.05mm以下である、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項3】
Aが0.01mm以下であり、tAが50μm以下である、請求項2に記載のノズルアセンブリ。
【請求項4】
Aが第1面と第2面との間で変化している、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項5】
Aが第2面よりも第1面において大きい、請求項4に記載のノズルアセンブリ。
【請求項6】
半径rAが第1面および第2面の間の開口の表面を画定している、請求項5に記載のノズルアセンブリ。
【請求項7】
半径rAが0.05mmより小さい、請求項6に記載のノズルアセンブリ。
【請求項8】
半径rAが0.04mmより小さい、請求項6に記載のノズルアセンブリ。
【請求項9】
半径rAが0.03mmより小さい、請求項6に記載のノズルアセンブリ。
【請求項10】
末端部に凹部領域を含む本体を準備するステップと、
中心に位置付けられた開口を有するディスクであって、開口は開口直径dAを有し、ディスクは直径dDを有し、ディスクは第1面および第2面を有し、第2面は、直径d2の浅い凹部領域内に位置付けられた開口を有し、dDはd2よりも大きい、ディスクを準備するステップと、
ディスクの第1面を本体の凹部領域に取り付けてノズルアセンブリを形成するステップと、
液体および固体を含む混合物を準備するステップと、
ノズルアセンブリを通して混合物を流すことで層を形成するステップと、
を含む液相コーティング方法。
【請求項11】
液体が有機溶媒である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
液体が水である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
混合物が、固形分含有量10%未満の溶液である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
混合物が、固形分含有量10%未満の懸濁液である、請求項10に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−514299(P2012−514299A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543701(P2011−543701)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/069566
【国際公開番号】WO2010/075588
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】