電離放射線による治療のための設備
神経外科医の要望、すなわち脳の中における腫瘍を治療する要望を満たすために最適化された放射線治療および/または手術装置が提供されている。それは、高い信頼性と最小の技術サポートに加えて、良好な半影と精度、簡単な処方と操作の諸特質を組み合わせることである。この装置は、回転可能な支持体であってその上に支持体から円の平面の外側へ延びているマウントが設けられた支持体と、このマウントに旋回軸によって取り付けられた放射線源とを備えており、旋回軸は、支持体の回転軸を通る軸を有し、放射線源は、回転軸と旋回軸との一致点を透過するビームを発生させるように位置合わせされている。回転可能な支持体が平坦であれば、この設備を設計することは一般にいっそう容易であろうし、回転可能な支持体が直立位置に配置されていれば、この設備はいっそう便利であろう。回転可能な支持体の回転は、この設備のこの部品が円形であるときには容易であろう。特に好ましい方位は、放射線源が回転可能な支持体から間隔を置いて配置され、それが後者にぶつかることなく旋回することのできる方位である。このようにして、旋回軸は回転可能な支持体から間隔を置いて配置されて、放射線源が旋回することのできる自由空間がもたらされる。この採択を表現する別の方法は、旋回軸が回転可能な支持体の平面の外側に位置決めされるということを述べることである。この装置の幾何学的形態とその関連した演算とを簡単にするためには、旋回軸が回転軸に対して実質的に垂直であることと、ビーム方向が旋回軸に対して垂直であることとの両方が好ましい。放射線源は線形加速装置であるのが好ましい。放射線源の出力は、治療される部位の形状に合致するように、平行にされるのが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、患者を電離放射線で治療するための装置に関するものである。それは、
放射線手術の形態と放射線治療のある種の形態とに特に適している。
【背景技術】
【0002】
人間あるいは動物の組織が電離放射線に曝されると、細胞が死滅してあらわにされる、ということは知られている。このことによって、病的細胞の治療における用途が見いだされている。しかしながら、患者の身体の内奥部における腫瘍を治療するためには、放射線は健全組織を貫通して病的細胞を照射しかつ破壊しなければならない。このため、従来の放射線治療では、大量の健全組織が有害な放射線照射量に曝され、その結果、患者にとっては長期の回復期間が必要になる。それゆえ、患者を電離放射線で治療するための装置および治療手順は、病的組織を、これらの細胞の死滅を招く一方で健全組織への被曝を最小に維持するであろう放射線照射量に曝すように設計されるのが望ましい。
【0003】
病的細胞の死滅を招く一方で健全組織への被曝を最小に維持する所望の被曝を達成するために、すでにいくつかの方法が採用されてきた。多くの方法は、放射線を多数の照射源から同時にかあるいは単一の照射源からの多数回の被曝かのいずれかで、いくつかの方向から腫瘍に導くことによって、役に立つ。それぞれの照射源から発散する放射線の強度はそれゆえ、細胞を死滅させるために必要なそれよりも小さいであろうが、ここで、多数の照射源からの放射線ビームは収束し、放射線の強度は治療線量を送り出すためには充分である。
【0004】
複数の放射線ビームが交差する点はこの明細書では「目標点」と呼ばれる。目標点を取り囲む照射野はこの明細書では「目標容積」と呼ばれ、その大きさは交差ビームの大きさを変えることで変えることができる。
【0005】
この型の放射装置は、この出願人によってLeksell Gamma Knife (登録商標)(LGK)として販売されている。LGK装置は米国特許第4,780,898号および第5,528,651号に記載されている。LGKでは、複数の放射線源が患者の頭部の周りに半球状配列で配置されている。適切なコリメーターによって、それぞれの線源からの放射線ビームは脳の中における小さい容積へ集中される。LGKは、(i)目標容積の内部における高い放射線強度に比べて目標容積から離れた箇所における低いバックグラウンド放射と、(ii)目標容積の小さい寸法との結果として、脳の中における病的組織を破壊するために放射線を送り出す「黄金基準」であると一般にみなされている。これによって、外科医は、周囲組織に損傷を与えることなく小さい部位を正確かつ迅速に切除することができる。LGKの承認は、Radiation Medicine 誌の2003年第4巻第178〜182ページにおけるNakagawaらの論文で明らかになっている。
【0006】
LGKでは、固定位置に保持されている患者における腫瘍の正確な部位を基準座標系の利用によって決定して、目標の3次元画像を構成するために、磁気共鳴映像法、コンピューター断層撮影法、PETおよび/または血管造影法が利用されている。そして、それぞれの放射線ビームについての治療パラメーターは、病的組織が必要な放射線照射量まで治療され、その一方で周囲の健全組織が最小の放射線照射量を受けるように、決定される。
【0007】
この治療は何日間にもあるいは何週間にも及ぶことがあるため、患者は、病的組織が的を外されたりあるいは周囲の健全組織がうっかり放射線照射されたりする恐れを回避するために、それぞれの治療で収束ビームの交点に関して同じ位置に正確に置かれる必要がある。このことは、脳の中における病気が治療される場合にはきわめて重要であり、例えば視神経のような、もしも照射されるとそれがほんの少量の線量であっても患者がその視力を失う結果になるであろう、傷つきやすい部位への損傷を回避するために、放射線ビームをピンポイントの精度で集中させる必要がある。この方法はそれゆえ、これらの設備を利用する放射線治療を提供するために、高度に熟練した技術者のスペシャリストチームの存在を必要とする。
【0008】
LGKの変型が米国特許第5,757,886号(Song)の形態で提案されており、それには、コバルト線源をリング状構成に配置することが含まれている。それぞれの線源のための相異なる一群のコリメーターが、これらの群における1つのコリメーターをそれぞれの線源のための使用域の中へ持ち込むために、線源に対して回転することのできる半球状支持体に取り付けられている。これによって、より少ないコバルト線源と対応状により大きい治療時間とを顧みることなく、コリメーターのより広い選択が可能になる。
【0009】
放射線療法の他の形態は線形加速装置に基づくシステムを利用して与えられている。線形加速装置は、無線周波数エネルギーを利用して、細長い加速用チャンバーの中に変動する磁界あるいは電界を、従って「線形の」加速装置を作り出す。電子は、チャンバーの中へ送り込まれて、ほとんど光速まで加速される。その結果であるビームは放射線の形態で直接利用することができるが、これを適切な「目標」へ、すなわちタングステンのような適切な重金属のブロックへ直接導くことは、いっそう有用である。電子ビームは、タングステン製ブロックに衝突して、それからX線のビームを放射させる。電子ビームおよびタングステン表面の幾何学的形態は、X線ビームが、入ってくる電子ビームに対して垂直に出ていくように、また、それゆえ患者へ向かって導かれるように、配置されている。
【0010】
X線ビームは、適切な形状へ平行にされて患者を透過し、組織の損傷を引き起こす。適切な平行化によって、また、線形加速装置を患者の周りにそれがさまざまな方向から進入するように動かすことによって、このようなシステムは、腫瘍の外側における線量を最小限にするとともに腫瘍の内部におけるそれを最大限にすることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
線形加速装置システムに伴う主要な不利益はその加速装置が極端に重いことである。必要な電気的性質および熱的性質を組み合わせるためには、加速装置のチャンバーを大きい銅製ブロックから構成することが必要である。X線の発生は好ましくない放射線もまた発生させ、その放射線は、大量の遮蔽材料、例えばタングステンによって減衰させなければならず、また、線形加速装置を作用させるために必要な他の構成要素とこのように組み合わせることは、その設備を全体として極端に重くさせるであろう。
【0012】
この重量は支持しなければならず、また、この設備は放射線ビームをさまざまな方向から患者へ向かって導くことができるように正確に動かさなければならない。身体の腫瘍については、通常の折衷案は、線形加速装置を回転可能なマウントから延びているアームの中に取り付けることである。すると、ビームはそのアームの端部から出て、そのマウントの中心線へ向かって内方へ導かれる。その中心線とビームとの交点に支持された患者はそれらを処理することができ、そのマウントが回転すると、ビームは同一平面の内部におけるさまざまな方向から患者に集まるであろう。
【0013】
このようなシステムは一般に、脳の腫瘍については利用されない。それらはあまりにも柔軟性がなく、ビームは単一平面の内部におけるある方向から患者へ進入しなければならない。その平面に視神経のような傷つきやすい組織が含まれているときには、深刻な損傷が引き起こされる恐れがある。例えばLGKでは、ビームはあらゆる方向から進入し、また、そのような組織と干渉するであろう要素は阻止することができる。
【0014】
線形加速装置をロボット状アームに取り付けて広範囲の動きをさせることは可能である。この型の提案は行われてきており、これらによってこの問題は理論的には克服されるであろう。しかしながら、線形加速装置構造の大きい重量は、そのようなロボット状アームをその動きが脳の腫瘍について必要な精度で実行されるように設計することが極端に困難であることを意味している。そのような腫瘍には1,000分の10インチ未満の配置精度が必要であり、また、数ヤードの長さがあるアームの端部に数トンの重量がかかる部品をそのような精度で動かすことはほとんど不可能な仕事である。このため、このような設計は構成することができ、また、身体の腫瘍への用途を見つけることができるとしても、それらは、脳の腫瘍について利用するためには充分に正確なものではない。
【0015】
上で引用したNakagawaらの論文では、より大きい精度を優先するために動きの柔軟性がいくらか犠牲にされるこの型のシステムが提案されている。線形加速装置はC字アームの一方端部に取り付けられ、そのアームは(次には)、回転可能な支持体に保持されている。C字アームはその支持体の上を動くことができ、そして、その動きの2つの端部では、それはU字アームあるいは逆U字にいっそう類似している。それが動くと、放射線ビームの入射角が変化するであろう。このように、支持体の回転と組み合わすことで、必要な運動範囲が付与されるであろう。しかしながら、C字アームが動くと、その設備の重心が移動するため誤差が引き起こされる。これを打ち消すため、Nakagawaらは動きを防止する格納式バランスウェイトの複雑なシステムを必要としており、これがこの設備の精度における潜在的弱点である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
細胞(およびそれらが作り上げる生体組織)は、電離放射線に対してきわめて複雑な態様で反応する。細胞の放射線感受性は、組織構造を含むいくつかの要因と、(例えば)それらの酸化とに左右される。一般には腫瘍の中心部分にある無酸素細胞は、別の類似した酸素富化細胞に比べて比較的、放射線耐性が大きい。第2の重要な生物学的要因は、細胞のDNAストランドに誘発された放射線損傷の修復である。比較的長い時間帯にわたって送り出された放射線量は、同じ線量が比較的短い時間にわたって与えられたときよりもDNAに損傷を引き起こさない。細胞は、より長い被曝の間に修復するにはより多くの時間が必要であり、従って、存続するためにはより充分な可能性が与えられる。正常な組織の細胞がより長い被曝の結果として存続すれば、健全な組織は取って置かれるであろう。他方では、存続細胞が悪性のものであれば、それらは分裂を続けて、患者は回復しないであろう。
【0017】
従って、理想的な放射線設備は、放射線量の送出における最大の自由度をもたらすであろう。放射線は、傷つきやすい神経組織および他の組織の小さい領域へ正確に、かつ、きわめて選択的に送り出さなければならない。この進歩した放射手順は、治療ユニットの全寿命の間に再現可能なものでなければならない。
【0018】
この発明の目的は、神経外科医の要望を満たすために、すなわち脳あるいはその近傍における病的組織の治療のために、このように最適化された放射線治療および/または手術装置を提供することである。それは、高い信頼性と最小の技術サポートに加えて、良好な半影と精度、簡単な処方と操作の諸特質を組み合わせることである。
【0019】
この発明の好ましい実施形態では、放射線が高い幾何学的精度で広範囲の方向から送り出される。線量率は照射方向とともに広範囲に変えることができる。放射線ビームの断面は、照射方向とともに形状および大きさを変えることができる。
【0020】
従って、この発明によれば、その上にマウントが設けられた支持体とマウントに取り付けられた放射線源とを備えており、支持体はその軸の周りに回転可能であり、線源は、支持体の軸に対して平行でない回転軸を有している回転可能なユニオン継手を介してマウントに取り付けられており、支持体の軸と放射線源とを通るマウントの軸は、それらの軸の一致点を透過するビームを発生させるように平行にされている、患者を電離放射線で治療するための装置が提供される。
【0021】
患者は、治療を受ける際には横たわるのが一般に好ましく、また、そのようにするときには動かないでいることがいっそう多い。それゆえ、回転可能な支持体は直立位置に配置されるのが好ましい。
【0022】
回転可能な支持体の回転は、この設備のこの部分が円形であれば容易であろう。
【0023】
好ましい方位は、放射線源が回転可能な支持体から間隔を置いて配置され、それが後者にぶつかることなく旋回することのできる方位である。従って、マウントは支持体に対して横方向に延びているのが好ましい。このようにして、旋回軸は回転可能な支持体から間隔を置いて配置されて、放射線源が旋回することのできる自由空間がもたらされる。この採択を表現する別の方法は、旋回軸が回転可能な支持体の平面の外側に位置決めされるということを述べることである。
【0024】
この装置の幾何学的形態とその関連した演算とを簡単にするためには、旋回軸が回転軸に対して実質的に垂直であることと、ビーム方向が旋回軸に対して垂直であることとの両方が好ましい。
【0025】
放射線源は線形加速装置であるのが好ましい。
【0026】
放射線源の出力は、例えば治療される部位の形状に合致するように、平行にされるのが好ましい。放射線源の平行化の程度は選択可能であるかあるいは調整可能であるのが好ましい。放射線源の平行化をその動きに相互関連した方法でプログラム可能に制御するための制御手段が設けられているのが好ましい。
【0027】
この設備には一般に、患者支持体が含まれている。患者支持体の位置は、調整可能であるのが好ましく、とりわけ、放射線源の動きおよび/またはその平行化に相互関連した方法でその位置を調整するように適合されている制御手段の制御の下で調整可能であるのが好ましい。このことによって、治療における適応性が増大するであろう。
【0028】
放射線源の強度はその位置の関数として選択可能であることもまた好ましい。さらに、これのためには、放射線源の動き、その平行化、および患者テーブルの位置のうち少なくとも1つに相互関連した方法でその強度を調整するように適合された制御手段の制御の下で行われるのが好ましい。
【0029】
患者の位置を例えば制御手段へのフィードバックによって決定するために、一体型撮像装置を利用することができる。
【実施形態の詳細な説明】
【0030】
この発明の実施形態は、添付図面を参照しながら、例示としてこれから説明される。
【0031】
図1a、図1bおよび図1cは、図2a、図2bおよび図2cとともに、この発明による操作の一般的原理を示している。これらは、この発明によって採用された幾何学的形態が、多種多様の進入角が可能ではあるが放射線源がアイソセンターに対してだけ向かうように放射線源を制約することを示している。
【0032】
さらに、それらは、そのような構成が回転可能な継手だけを利用してどのように達成されるかを図解している。従って、この装置がそれらの継手の周りに適切に支持されあるいは釣り合わされると、Nakagawaらの構成に内在する問題は回避される。
【0033】
この発明によれば、2つの主要な回転軸がある。図1a、図1bおよび図1cは、これらの軸の一方についての回転の効果を示し、図2a、図2bおよび図2cは、これらの軸の他方についての回転の効果を示す。実際には、両方の軸が同時に利用されることが予想される。
【0034】
図1aは静止状態にある装置を示しており、その状態では、線源1が剛性部材2,3によって支持されており、これらの部材は、それらが垂直軸4の周りに回転可能であるように、基部(図示略)にそれぞれ取り付けられている。図1aでは、この軸は幾何学的y軸に一致している。部材2,3の特定形状はこの説明にとって重要ではなく、それゆえ、それらは簡単な直線状圧縮材として示されている。垂直軸4は線源1から偏位しており、その出力ビーム5は垂直軸に対して後方へ向かう。その静止状態では、ビームは、y軸に対して垂直であって幾何学的x軸として採用することができる線に沿って後方へ向かう。x軸およびy軸の基点は、従って垂直軸4とビーム5との交点であり、また、実際には(明らかになるように)装置のアイソセンターである。
【0035】
図1bは、垂直軸4の周りの小さい回転の効果を示している。これは、幾何学的x軸から、図1bに示されたようにx軸およびy軸に対して垂直である幾何学的z軸へ向かって線源およびビームを取り除く。回転が起きる垂直軸はビーム5に一致し、その結果、ビーム5は、同じ点、すなわちアイソセンターで垂直軸4と交差し続ける。
【0036】
次に、図1cは、線源1がz軸を越えることとビーム5がアイソセンターで垂直軸と交差し続けることとを図解するさらに別の回転の効果を示している。
【0037】
図2aを参照して、この発明によって必要とされた第2回転軸の効果がこれから検討される。この回転によって、剛性圧縮部材2,3が取り付けられている支持体の大規模な回転が可能になる。従って、この第2軸6の周りの回転は、これまでの「垂直な」軸4を含んでいる上で検討されたすべての部品とともに起きるであろう。この回転軸6は図で図解された幾何学的z軸と一致し、その結果、その軸はアイソセンターを通る。図2aは、図1aと同じ静止状態にある、任意の回転に先立つこの装置を示している。
【0038】
図2bは、第2軸6の周りの小さい回転を示している。第1軸4はもはや幾何学的y軸に一致していないということに留意すべきである。それにもかかわらず、ビーム5、「垂直な」軸4および第2軸6はすべてアイソセンターで一致するので、ビームは、この回転にもかかわらず、同じアイソセンターを透過し続ける。
【0039】
図2cは、第2軸6の周りのさらに別の回転の効果を示している。ビームはまだアイソセンターを透過するということが分かる。
【0040】
上で言及されたように、実際には両方の回転が同時に利用されるであろう。このことは、原理上は進入の任意の方向を得ることができることを意味するであろう。第1軸4が任意の回転で固定されると、第2軸6の周りの回転によって、ビームは、第2軸6において中心に置かれた円錐に沿った任意の方向からアイソセンターへ向かって導かれるであろう。第1軸が固定される角度はその円錐の角度を規定するであろう。同じように、第2軸6が任意の回転で固定されると、第1軸4の周りの回転によって、ビームは、ビーム方向5と第2軸6とを含む平面における任意の方向からアイソセンターへ向かって導かれるであろう。その平面の角度は第2軸の周りにおける回転の角度によって規定されるであろう。
【0041】
このように、この発明は、2つの軸の周りに回転可能であって両方の軸の方向およびビームの方向のすべてが単一のアイソセンターに一致しているように取り付けられた線源の利用を提案するものである。これによって、装置は、線源がアイソセンターに対してだけ向かうことができるように内在的に正確に構成することができる。
【0042】
この実施形態は同じ幾何学的結果が得られる任意の適切な方位に配置することができるということはもちろん明らかであろう。従って、上において1つの軸が「垂直な」軸であるとして言及されてきたが、これは、明確さの理由のためだけのものであって、特定の方向がこの装置の操作に必須であることを意味しない。
【0043】
図3は、この発明による装置の一般的外観図を示している。装置10には、くぼんだ凹所12が形成されている筐体が備わっている。筐体と凹所12との間には、後に説明される、放射線の治療ビームを発生させるための装置が設けられている。凹所12を画定する材料は、筐体の中への治療ビームの透過が可能になる放射線透過性の材料である。
【0044】
くぼんだ凹所12の外側には患者テーブル14が設置され、その上に移動可能な患者支持体16が形成されている。患者18は移動可能な患者支持体16の上に横たわり、この支持体は次いで、患者をくぼんだ凹所12の内側へ搬送するために、図4に示されたように移動される。この位置では、放射線の治療ビームは患者18の関連した部分で導くことができる。
【0045】
図5は、この装置の内部機構、すなわち患者テーブルとすべての外部カバーとが取り除かれた状態を示している。この装置のための基部20は、鋼のような堅固で中実の材料から作られて垂直に位置合わせされた取付用リングからなっている。これは、安全で固定された箇所にそれを維持するために、適切な足部22に取り付けられている。このリングは、使用時には患者の周りに存在してくぼんだ凹所12の範囲を画定する。
【0046】
第2の回転可能なリング24が、取付用リング20に相互回転可能に支持されている。従って、第2リング24は患者18の周りに回転することができる。回転可能なリング24には、直径的に互いに反対側に設置された一対の第1および第2の取付用ブラケット26,28がある。それぞれは、回転可能なリング24の平面の外側方向に延びており、また、その平面から間隔を置いた旋回取付点30をもたらしている。
【0047】
第1および第2の取付用ブラケット26,28における取付点30どうしの間を通る線は、回転可能なリング24の回転軸を直接通る。この交点は、患者支持体16の上に横たわっている患者と同じ高さにある。
【0048】
適切なハウジング34の上における旋回取付点30には、線形加速装置(linac)32が取り付けられている。linacハウジング34とそしてlinac32とが旋回取付点30の周りに回転することができるように、モータ36が設けられている。線形加速装置32の高さとその方向とは、そのビーム軸が上で規定された交点を通るように設定されている。
【0049】
このように、上の関係を利用することで、線形加速装置は2つの方向、すなわち、患者18に進入する角度をなす方向と、それがこの進入から作られる回転方向とにおいて、手で操作することができる。これらは独立して調整することができ、一方、取付構造体の幾何学的諸性質は、そのビームがその交点を常に透過するであろうことを意味している。このようにして、その交点は規定することができ、また、それに関連して位置決めされた患者とlinacとは、その交点に線量を導くために自由に動かすことができる。
【0050】
実際に、このことは、最小の線量を目標の外側の部位にもたらすとともに最大の線量を目標にもたらすように、連続的にあるいは段階的に動かすことができるということを意味している。このようにして、この設備は、LGKの治療概要を単一の線形加速装置の利用で再現することができる。この装置の可動部品は覆われているので、それらは、LGKにおけるすべての線源の位置をおよそ20秒間、覆うことができるであろうおよそ毎分15回転までの速度で回転することができる。
【0051】
線形加速装置に基づく現行の装置によれば、類似の機能をもたらすことができるが、そうするためには一般的なロボット状アームによらなければならない。そのような装置では、装置に要求される精度は、正確なソフトウェアと精度測定とによって課さなければならない。上で説明した実施形態では、精度は、その構造の中へ導かれ、それゆえ自動的に現れる。
【0052】
加えて、一般的なバックグラウンド線量は、単一の線源だけがあるので、LGKを通して引き起こされるであろうそれよりも小さい。従って、遮蔽物は、主要線源が多数の線源の遮蔽に対抗するように遮蔽される必要があるだけであるので、より容易にかつより安価にもたらすことができる。この遮蔽物は、装置の外側におけるスタッフおよび患者の不要な被曝を制限するために一般には放射線不透過性である材料から形成されるであろう筐体34、ビーム止め42およびコリメーター43によって達成される。このような遮蔽物の減量分の重量も、また著しく減少する。
【0053】
さらにまた、現行のLGKに比べて、線形加速装置の利用によってビームの強度あるいはその一時的中断の動的変化が可能になる。ビームに対するこれらの変化は、ビームが傷つきやすい部位を透過するときに起きるようにプログラムすることができる。このことによって、視神経のような傷つきやすい部位の保護が、特定の線源への選択的栓子を設ける必要なしに可能になるであろう。さらにまた、相異なる寸法に平行化されたビームの組み合わせがしばしば必要である病的組織の不規則分布に合致することはよく知られている。この装置には単一の線源だけが備わっているので、マルチリーフコリメーターのようなプログラム可能なコリメーターあるいは相異なる寸法のコリメーターの選択をもたらすことができる。コリメーターの寸法は、治療においてある回数、変更させるようにプログラムすることができる。この装置は、(例えば)我々の以前の特許出願である国際公開第01/11928号に示されたように、あるいはそれによらなくとも、出力エネルギーの適切な変更によって撮像するために利用することもできる。このようにして、患者の(耳道のような)特定部位あるいは頭部フレームや頭部フレームに配置された較正部品のような公知の対象の特定区域は、撮像機能を通して位置決めすることができる。このことによって、患者の位置決めの検査あるいは患者テーブルによる患者位置決めの動的調整をもたらすことができる。
【0054】
さらに、説明したような設備では、線源の回転速度は変更することができる。このことによって、この装置は、ある腫瘍の不均質性のような生物学的要因をそれらの表面にわたる放射線に抵抗して処理することが可能になる。加えて、治療の間に線量率、平行化、および回転速度を動的に変更する機能は、最小の副作用で最大の治療利益を達成するために、新規なやり方でその治療あるいは手術を適応させる機能を有している。
【0055】
同時に、患者位置は患者位置決めシステム14,16によって調整することができる。このことは、治療の間に動的に、あるいは治療どうしの間に段階的に実施することができ、また、ビーム平行化の調整に加えてあるいはその代わりに実施することができる。動的ビーム平行化を動的患者位置決めに組み合わせるシステムは、実際には強力で適応性のある治療可能性をもたらすであろう。
【0056】
図6は、この実施形態および他の実施形態のさらに細部を前方へ示している。図6では、取付用ブラケット26,28が、後方へ続いており、また、U字形リンクアーム38を介して連結されている。このことによって、構造に付加的な剛性がもたらされるとともに、回転可能な電気的接続部40を設けて回転可能な構造へ動力をもたらすことが可能になる。図6では、装置は、患者軸に対して垂直である旋回軸30と患者軸に対して5°の低い偏角をなす線形加速装置32とが備わった状態で示されている。図7では、同じ設備が35°の増大した加速装置角で示されている。
【0057】
図8は、図5の装置を患者に対するおよそ5°の低い角で示している。
【0058】
図9は、患者18に対するこの装置の一般的幾何学的形態を示している。図9に示された(患者に対して5°の)構成では、患者の頭部18aを照射するための広い空間があることと、遮蔽物42を、線形加速装置44の反対側に残るとともにそれと一緒に動くように設けることができることが分かる。その結果、設けられる遮蔽物を最小限のものにすることができ、それによって、装置の全体重量とコストとを削減することができる。
【0059】
図10は、図9と同じ装置を平面で示している。
【0060】
図11は、図8に示されたような一般的構成を示しているが、線形加速装置は35°の増大角で備わっている。図12は、この増大角におけるこの装置の内部にある部品の構成を示しており、この図から、取付用リング20のような他の部品にぶつかることなく、また、患者の肩部18bのような意図しない部位を照射することなく、35°までの角度を得ることができる、ということが分かる。図13はこの構成を平面形態で示している。
【0061】
図14および図15に示されたように、第2の(回転可能な)リング24を取付用リング20に対して90°回転させることによって、線形加速装置34は、患者に対して垂直な位置へ上昇(あるいは下降、図示略)することができ、また、その後に、患者の関連部位に上方から、実際には任意の所望角度から照射することができる。図14は、鉛直線に対して5°の角度をなす線形加速装置を示しており、図15は、増大した35°の角度をなす同じ線形加速装置を示している。
【0062】
図16および図17は第3実施形態を示している。この代わりに設計では、基部100は回転可能なベアリング102を担持しており、このベアリングはそれゆえ回転可能であるスピンドル104を支持している。スピンドル104はC字アーム106を担持しているが、その端部は一線配置された一対の旋回軸108,110である。旋回軸108,110は、これらの共通軸がスピンドルの回転軸に一致するように一線配置されている。この実施形態では、直交状一致の好ましい構成が図解されている。
【0063】
旋回軸の上には放射線源支持体112が取り付けられており、これはくぼんだ筐体からなり、その上には、放射線源114と反対側のビーム止め116とが設けられている。この線源は、2つの軸の一致点を透過してくぼんだ区域の内部を進みビーム止め116で終わる平行ビーム118を発生させるように適合されている。
【0064】
その全体構造は、120で一部が示された適切な筐体の内部に囲い込まれている。この筐体の中には開口あるいは凹所122が設けられて、放射線源支持体112のくぼんだ凹所の中への患者124の進入が可能になるようにされている。実際には、患者124は、患者をくぼんだ凹所の中へ引き込みかつくぼんだ凹所から外へ押し出す移動可能な患者テーブル126の上に支持される。
【0065】
この実施形態によれば、上で説明した実施形態と同じ精度および位置合わせの利点がもたらされ、また、それと実質的に同じやり方で操作することができるであろう。
【0066】
従って、この発明によれば正確な作業が可能である多用途の放射線手術装置がもたらされる、ということは認識されるであろう。それは、LGKのような多数の線源装置の精度および機能を両方とも保有することができ、一方で、加速装置による設計の増大した適応性と減少した重量とが達成される。
【0067】
従って、説明された装置によれば、放射線手術および放射線治療における強力な用具がもたらされる。頭部領域およびその近傍領域を治療することは、(説明したように)両方とも適用することができ、また、これらは、この装置の内部に配置することを受け入れることのできる身体の他の部分にも適用することができる。上で説明した実施形態にこの発明の範囲から逸脱することなく多くの変更を行うことができる、ということはもちろん理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1a】この設備の幾何学的配置を概略的に示している。回転可能なユニオン継手の周りにおける回転の効果を示している。
【図1b】この設備の幾何学的配置を概略的に示している。回転可能なユニオン継手の周りにおける回転の効果を示している。
【図1c】この設備の幾何学的配置を概略的に示している。回転可能なユニオン継手の周りにおける回転の効果を示している。
【図2a】この設備の幾何学的配置を概略的に示している。支持体の回転の効果を示している。
【図2b】この設備の幾何学的配置を概略的に示している。支持体の回転の効果を示している。
【図2c】この設備の幾何学的配置を概略的に示している。支持体の回転の効果を示している。
【図3】患者の進入に先立つこの設備の外観図を示している。
【図4】患者が治療位置にあるこの設備を示している。
【図5】足方端部から見たこの設備の内部構造の斜視図を示している。
【図6】頭方端部から見た、第1位置におけるこの設備の内部構造の斜視図を示している。
【図7】第2位置における同じ設備を示している。
【図8】この設備の第2実施形態を頭方端部から斜視図で示している。
【図9】ビーム方位を断面図で示している。
【図10】図7のビーム方位を平面図で示している。
【図11】頭方端部から見た、第2位置における第2実施形態の内部構造の斜視図を示している。
【図12】この位置におけるビーム構造を斜視図で示している。
【図13】図10のビーム構造を平面図で示している。
【図14】第1位置におけるこの装置を通る垂直断面図を示している。
【図15】第2位置におけるこの装置を通る垂直断面図を示している。
【図16】1つの位置にある放射線源の備わった第3実施形態の斜視図を示している。
【図17】別の位置にある放射線源の備わった図14の実施形態の対応図を示している。
【技術分野】
【0001】
この発明は、患者を電離放射線で治療するための装置に関するものである。それは、
放射線手術の形態と放射線治療のある種の形態とに特に適している。
【背景技術】
【0002】
人間あるいは動物の組織が電離放射線に曝されると、細胞が死滅してあらわにされる、ということは知られている。このことによって、病的細胞の治療における用途が見いだされている。しかしながら、患者の身体の内奥部における腫瘍を治療するためには、放射線は健全組織を貫通して病的細胞を照射しかつ破壊しなければならない。このため、従来の放射線治療では、大量の健全組織が有害な放射線照射量に曝され、その結果、患者にとっては長期の回復期間が必要になる。それゆえ、患者を電離放射線で治療するための装置および治療手順は、病的組織を、これらの細胞の死滅を招く一方で健全組織への被曝を最小に維持するであろう放射線照射量に曝すように設計されるのが望ましい。
【0003】
病的細胞の死滅を招く一方で健全組織への被曝を最小に維持する所望の被曝を達成するために、すでにいくつかの方法が採用されてきた。多くの方法は、放射線を多数の照射源から同時にかあるいは単一の照射源からの多数回の被曝かのいずれかで、いくつかの方向から腫瘍に導くことによって、役に立つ。それぞれの照射源から発散する放射線の強度はそれゆえ、細胞を死滅させるために必要なそれよりも小さいであろうが、ここで、多数の照射源からの放射線ビームは収束し、放射線の強度は治療線量を送り出すためには充分である。
【0004】
複数の放射線ビームが交差する点はこの明細書では「目標点」と呼ばれる。目標点を取り囲む照射野はこの明細書では「目標容積」と呼ばれ、その大きさは交差ビームの大きさを変えることで変えることができる。
【0005】
この型の放射装置は、この出願人によってLeksell Gamma Knife (登録商標)(LGK)として販売されている。LGK装置は米国特許第4,780,898号および第5,528,651号に記載されている。LGKでは、複数の放射線源が患者の頭部の周りに半球状配列で配置されている。適切なコリメーターによって、それぞれの線源からの放射線ビームは脳の中における小さい容積へ集中される。LGKは、(i)目標容積の内部における高い放射線強度に比べて目標容積から離れた箇所における低いバックグラウンド放射と、(ii)目標容積の小さい寸法との結果として、脳の中における病的組織を破壊するために放射線を送り出す「黄金基準」であると一般にみなされている。これによって、外科医は、周囲組織に損傷を与えることなく小さい部位を正確かつ迅速に切除することができる。LGKの承認は、Radiation Medicine 誌の2003年第4巻第178〜182ページにおけるNakagawaらの論文で明らかになっている。
【0006】
LGKでは、固定位置に保持されている患者における腫瘍の正確な部位を基準座標系の利用によって決定して、目標の3次元画像を構成するために、磁気共鳴映像法、コンピューター断層撮影法、PETおよび/または血管造影法が利用されている。そして、それぞれの放射線ビームについての治療パラメーターは、病的組織が必要な放射線照射量まで治療され、その一方で周囲の健全組織が最小の放射線照射量を受けるように、決定される。
【0007】
この治療は何日間にもあるいは何週間にも及ぶことがあるため、患者は、病的組織が的を外されたりあるいは周囲の健全組織がうっかり放射線照射されたりする恐れを回避するために、それぞれの治療で収束ビームの交点に関して同じ位置に正確に置かれる必要がある。このことは、脳の中における病気が治療される場合にはきわめて重要であり、例えば視神経のような、もしも照射されるとそれがほんの少量の線量であっても患者がその視力を失う結果になるであろう、傷つきやすい部位への損傷を回避するために、放射線ビームをピンポイントの精度で集中させる必要がある。この方法はそれゆえ、これらの設備を利用する放射線治療を提供するために、高度に熟練した技術者のスペシャリストチームの存在を必要とする。
【0008】
LGKの変型が米国特許第5,757,886号(Song)の形態で提案されており、それには、コバルト線源をリング状構成に配置することが含まれている。それぞれの線源のための相異なる一群のコリメーターが、これらの群における1つのコリメーターをそれぞれの線源のための使用域の中へ持ち込むために、線源に対して回転することのできる半球状支持体に取り付けられている。これによって、より少ないコバルト線源と対応状により大きい治療時間とを顧みることなく、コリメーターのより広い選択が可能になる。
【0009】
放射線療法の他の形態は線形加速装置に基づくシステムを利用して与えられている。線形加速装置は、無線周波数エネルギーを利用して、細長い加速用チャンバーの中に変動する磁界あるいは電界を、従って「線形の」加速装置を作り出す。電子は、チャンバーの中へ送り込まれて、ほとんど光速まで加速される。その結果であるビームは放射線の形態で直接利用することができるが、これを適切な「目標」へ、すなわちタングステンのような適切な重金属のブロックへ直接導くことは、いっそう有用である。電子ビームは、タングステン製ブロックに衝突して、それからX線のビームを放射させる。電子ビームおよびタングステン表面の幾何学的形態は、X線ビームが、入ってくる電子ビームに対して垂直に出ていくように、また、それゆえ患者へ向かって導かれるように、配置されている。
【0010】
X線ビームは、適切な形状へ平行にされて患者を透過し、組織の損傷を引き起こす。適切な平行化によって、また、線形加速装置を患者の周りにそれがさまざまな方向から進入するように動かすことによって、このようなシステムは、腫瘍の外側における線量を最小限にするとともに腫瘍の内部におけるそれを最大限にすることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
線形加速装置システムに伴う主要な不利益はその加速装置が極端に重いことである。必要な電気的性質および熱的性質を組み合わせるためには、加速装置のチャンバーを大きい銅製ブロックから構成することが必要である。X線の発生は好ましくない放射線もまた発生させ、その放射線は、大量の遮蔽材料、例えばタングステンによって減衰させなければならず、また、線形加速装置を作用させるために必要な他の構成要素とこのように組み合わせることは、その設備を全体として極端に重くさせるであろう。
【0012】
この重量は支持しなければならず、また、この設備は放射線ビームをさまざまな方向から患者へ向かって導くことができるように正確に動かさなければならない。身体の腫瘍については、通常の折衷案は、線形加速装置を回転可能なマウントから延びているアームの中に取り付けることである。すると、ビームはそのアームの端部から出て、そのマウントの中心線へ向かって内方へ導かれる。その中心線とビームとの交点に支持された患者はそれらを処理することができ、そのマウントが回転すると、ビームは同一平面の内部におけるさまざまな方向から患者に集まるであろう。
【0013】
このようなシステムは一般に、脳の腫瘍については利用されない。それらはあまりにも柔軟性がなく、ビームは単一平面の内部におけるある方向から患者へ進入しなければならない。その平面に視神経のような傷つきやすい組織が含まれているときには、深刻な損傷が引き起こされる恐れがある。例えばLGKでは、ビームはあらゆる方向から進入し、また、そのような組織と干渉するであろう要素は阻止することができる。
【0014】
線形加速装置をロボット状アームに取り付けて広範囲の動きをさせることは可能である。この型の提案は行われてきており、これらによってこの問題は理論的には克服されるであろう。しかしながら、線形加速装置構造の大きい重量は、そのようなロボット状アームをその動きが脳の腫瘍について必要な精度で実行されるように設計することが極端に困難であることを意味している。そのような腫瘍には1,000分の10インチ未満の配置精度が必要であり、また、数ヤードの長さがあるアームの端部に数トンの重量がかかる部品をそのような精度で動かすことはほとんど不可能な仕事である。このため、このような設計は構成することができ、また、身体の腫瘍への用途を見つけることができるとしても、それらは、脳の腫瘍について利用するためには充分に正確なものではない。
【0015】
上で引用したNakagawaらの論文では、より大きい精度を優先するために動きの柔軟性がいくらか犠牲にされるこの型のシステムが提案されている。線形加速装置はC字アームの一方端部に取り付けられ、そのアームは(次には)、回転可能な支持体に保持されている。C字アームはその支持体の上を動くことができ、そして、その動きの2つの端部では、それはU字アームあるいは逆U字にいっそう類似している。それが動くと、放射線ビームの入射角が変化するであろう。このように、支持体の回転と組み合わすことで、必要な運動範囲が付与されるであろう。しかしながら、C字アームが動くと、その設備の重心が移動するため誤差が引き起こされる。これを打ち消すため、Nakagawaらは動きを防止する格納式バランスウェイトの複雑なシステムを必要としており、これがこの設備の精度における潜在的弱点である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
細胞(およびそれらが作り上げる生体組織)は、電離放射線に対してきわめて複雑な態様で反応する。細胞の放射線感受性は、組織構造を含むいくつかの要因と、(例えば)それらの酸化とに左右される。一般には腫瘍の中心部分にある無酸素細胞は、別の類似した酸素富化細胞に比べて比較的、放射線耐性が大きい。第2の重要な生物学的要因は、細胞のDNAストランドに誘発された放射線損傷の修復である。比較的長い時間帯にわたって送り出された放射線量は、同じ線量が比較的短い時間にわたって与えられたときよりもDNAに損傷を引き起こさない。細胞は、より長い被曝の間に修復するにはより多くの時間が必要であり、従って、存続するためにはより充分な可能性が与えられる。正常な組織の細胞がより長い被曝の結果として存続すれば、健全な組織は取って置かれるであろう。他方では、存続細胞が悪性のものであれば、それらは分裂を続けて、患者は回復しないであろう。
【0017】
従って、理想的な放射線設備は、放射線量の送出における最大の自由度をもたらすであろう。放射線は、傷つきやすい神経組織および他の組織の小さい領域へ正確に、かつ、きわめて選択的に送り出さなければならない。この進歩した放射手順は、治療ユニットの全寿命の間に再現可能なものでなければならない。
【0018】
この発明の目的は、神経外科医の要望を満たすために、すなわち脳あるいはその近傍における病的組織の治療のために、このように最適化された放射線治療および/または手術装置を提供することである。それは、高い信頼性と最小の技術サポートに加えて、良好な半影と精度、簡単な処方と操作の諸特質を組み合わせることである。
【0019】
この発明の好ましい実施形態では、放射線が高い幾何学的精度で広範囲の方向から送り出される。線量率は照射方向とともに広範囲に変えることができる。放射線ビームの断面は、照射方向とともに形状および大きさを変えることができる。
【0020】
従って、この発明によれば、その上にマウントが設けられた支持体とマウントに取り付けられた放射線源とを備えており、支持体はその軸の周りに回転可能であり、線源は、支持体の軸に対して平行でない回転軸を有している回転可能なユニオン継手を介してマウントに取り付けられており、支持体の軸と放射線源とを通るマウントの軸は、それらの軸の一致点を透過するビームを発生させるように平行にされている、患者を電離放射線で治療するための装置が提供される。
【0021】
患者は、治療を受ける際には横たわるのが一般に好ましく、また、そのようにするときには動かないでいることがいっそう多い。それゆえ、回転可能な支持体は直立位置に配置されるのが好ましい。
【0022】
回転可能な支持体の回転は、この設備のこの部分が円形であれば容易であろう。
【0023】
好ましい方位は、放射線源が回転可能な支持体から間隔を置いて配置され、それが後者にぶつかることなく旋回することのできる方位である。従って、マウントは支持体に対して横方向に延びているのが好ましい。このようにして、旋回軸は回転可能な支持体から間隔を置いて配置されて、放射線源が旋回することのできる自由空間がもたらされる。この採択を表現する別の方法は、旋回軸が回転可能な支持体の平面の外側に位置決めされるということを述べることである。
【0024】
この装置の幾何学的形態とその関連した演算とを簡単にするためには、旋回軸が回転軸に対して実質的に垂直であることと、ビーム方向が旋回軸に対して垂直であることとの両方が好ましい。
【0025】
放射線源は線形加速装置であるのが好ましい。
【0026】
放射線源の出力は、例えば治療される部位の形状に合致するように、平行にされるのが好ましい。放射線源の平行化の程度は選択可能であるかあるいは調整可能であるのが好ましい。放射線源の平行化をその動きに相互関連した方法でプログラム可能に制御するための制御手段が設けられているのが好ましい。
【0027】
この設備には一般に、患者支持体が含まれている。患者支持体の位置は、調整可能であるのが好ましく、とりわけ、放射線源の動きおよび/またはその平行化に相互関連した方法でその位置を調整するように適合されている制御手段の制御の下で調整可能であるのが好ましい。このことによって、治療における適応性が増大するであろう。
【0028】
放射線源の強度はその位置の関数として選択可能であることもまた好ましい。さらに、これのためには、放射線源の動き、その平行化、および患者テーブルの位置のうち少なくとも1つに相互関連した方法でその強度を調整するように適合された制御手段の制御の下で行われるのが好ましい。
【0029】
患者の位置を例えば制御手段へのフィードバックによって決定するために、一体型撮像装置を利用することができる。
【実施形態の詳細な説明】
【0030】
この発明の実施形態は、添付図面を参照しながら、例示としてこれから説明される。
【0031】
図1a、図1bおよび図1cは、図2a、図2bおよび図2cとともに、この発明による操作の一般的原理を示している。これらは、この発明によって採用された幾何学的形態が、多種多様の進入角が可能ではあるが放射線源がアイソセンターに対してだけ向かうように放射線源を制約することを示している。
【0032】
さらに、それらは、そのような構成が回転可能な継手だけを利用してどのように達成されるかを図解している。従って、この装置がそれらの継手の周りに適切に支持されあるいは釣り合わされると、Nakagawaらの構成に内在する問題は回避される。
【0033】
この発明によれば、2つの主要な回転軸がある。図1a、図1bおよび図1cは、これらの軸の一方についての回転の効果を示し、図2a、図2bおよび図2cは、これらの軸の他方についての回転の効果を示す。実際には、両方の軸が同時に利用されることが予想される。
【0034】
図1aは静止状態にある装置を示しており、その状態では、線源1が剛性部材2,3によって支持されており、これらの部材は、それらが垂直軸4の周りに回転可能であるように、基部(図示略)にそれぞれ取り付けられている。図1aでは、この軸は幾何学的y軸に一致している。部材2,3の特定形状はこの説明にとって重要ではなく、それゆえ、それらは簡単な直線状圧縮材として示されている。垂直軸4は線源1から偏位しており、その出力ビーム5は垂直軸に対して後方へ向かう。その静止状態では、ビームは、y軸に対して垂直であって幾何学的x軸として採用することができる線に沿って後方へ向かう。x軸およびy軸の基点は、従って垂直軸4とビーム5との交点であり、また、実際には(明らかになるように)装置のアイソセンターである。
【0035】
図1bは、垂直軸4の周りの小さい回転の効果を示している。これは、幾何学的x軸から、図1bに示されたようにx軸およびy軸に対して垂直である幾何学的z軸へ向かって線源およびビームを取り除く。回転が起きる垂直軸はビーム5に一致し、その結果、ビーム5は、同じ点、すなわちアイソセンターで垂直軸4と交差し続ける。
【0036】
次に、図1cは、線源1がz軸を越えることとビーム5がアイソセンターで垂直軸と交差し続けることとを図解するさらに別の回転の効果を示している。
【0037】
図2aを参照して、この発明によって必要とされた第2回転軸の効果がこれから検討される。この回転によって、剛性圧縮部材2,3が取り付けられている支持体の大規模な回転が可能になる。従って、この第2軸6の周りの回転は、これまでの「垂直な」軸4を含んでいる上で検討されたすべての部品とともに起きるであろう。この回転軸6は図で図解された幾何学的z軸と一致し、その結果、その軸はアイソセンターを通る。図2aは、図1aと同じ静止状態にある、任意の回転に先立つこの装置を示している。
【0038】
図2bは、第2軸6の周りの小さい回転を示している。第1軸4はもはや幾何学的y軸に一致していないということに留意すべきである。それにもかかわらず、ビーム5、「垂直な」軸4および第2軸6はすべてアイソセンターで一致するので、ビームは、この回転にもかかわらず、同じアイソセンターを透過し続ける。
【0039】
図2cは、第2軸6の周りのさらに別の回転の効果を示している。ビームはまだアイソセンターを透過するということが分かる。
【0040】
上で言及されたように、実際には両方の回転が同時に利用されるであろう。このことは、原理上は進入の任意の方向を得ることができることを意味するであろう。第1軸4が任意の回転で固定されると、第2軸6の周りの回転によって、ビームは、第2軸6において中心に置かれた円錐に沿った任意の方向からアイソセンターへ向かって導かれるであろう。第1軸が固定される角度はその円錐の角度を規定するであろう。同じように、第2軸6が任意の回転で固定されると、第1軸4の周りの回転によって、ビームは、ビーム方向5と第2軸6とを含む平面における任意の方向からアイソセンターへ向かって導かれるであろう。その平面の角度は第2軸の周りにおける回転の角度によって規定されるであろう。
【0041】
このように、この発明は、2つの軸の周りに回転可能であって両方の軸の方向およびビームの方向のすべてが単一のアイソセンターに一致しているように取り付けられた線源の利用を提案するものである。これによって、装置は、線源がアイソセンターに対してだけ向かうことができるように内在的に正確に構成することができる。
【0042】
この実施形態は同じ幾何学的結果が得られる任意の適切な方位に配置することができるということはもちろん明らかであろう。従って、上において1つの軸が「垂直な」軸であるとして言及されてきたが、これは、明確さの理由のためだけのものであって、特定の方向がこの装置の操作に必須であることを意味しない。
【0043】
図3は、この発明による装置の一般的外観図を示している。装置10には、くぼんだ凹所12が形成されている筐体が備わっている。筐体と凹所12との間には、後に説明される、放射線の治療ビームを発生させるための装置が設けられている。凹所12を画定する材料は、筐体の中への治療ビームの透過が可能になる放射線透過性の材料である。
【0044】
くぼんだ凹所12の外側には患者テーブル14が設置され、その上に移動可能な患者支持体16が形成されている。患者18は移動可能な患者支持体16の上に横たわり、この支持体は次いで、患者をくぼんだ凹所12の内側へ搬送するために、図4に示されたように移動される。この位置では、放射線の治療ビームは患者18の関連した部分で導くことができる。
【0045】
図5は、この装置の内部機構、すなわち患者テーブルとすべての外部カバーとが取り除かれた状態を示している。この装置のための基部20は、鋼のような堅固で中実の材料から作られて垂直に位置合わせされた取付用リングからなっている。これは、安全で固定された箇所にそれを維持するために、適切な足部22に取り付けられている。このリングは、使用時には患者の周りに存在してくぼんだ凹所12の範囲を画定する。
【0046】
第2の回転可能なリング24が、取付用リング20に相互回転可能に支持されている。従って、第2リング24は患者18の周りに回転することができる。回転可能なリング24には、直径的に互いに反対側に設置された一対の第1および第2の取付用ブラケット26,28がある。それぞれは、回転可能なリング24の平面の外側方向に延びており、また、その平面から間隔を置いた旋回取付点30をもたらしている。
【0047】
第1および第2の取付用ブラケット26,28における取付点30どうしの間を通る線は、回転可能なリング24の回転軸を直接通る。この交点は、患者支持体16の上に横たわっている患者と同じ高さにある。
【0048】
適切なハウジング34の上における旋回取付点30には、線形加速装置(linac)32が取り付けられている。linacハウジング34とそしてlinac32とが旋回取付点30の周りに回転することができるように、モータ36が設けられている。線形加速装置32の高さとその方向とは、そのビーム軸が上で規定された交点を通るように設定されている。
【0049】
このように、上の関係を利用することで、線形加速装置は2つの方向、すなわち、患者18に進入する角度をなす方向と、それがこの進入から作られる回転方向とにおいて、手で操作することができる。これらは独立して調整することができ、一方、取付構造体の幾何学的諸性質は、そのビームがその交点を常に透過するであろうことを意味している。このようにして、その交点は規定することができ、また、それに関連して位置決めされた患者とlinacとは、その交点に線量を導くために自由に動かすことができる。
【0050】
実際に、このことは、最小の線量を目標の外側の部位にもたらすとともに最大の線量を目標にもたらすように、連続的にあるいは段階的に動かすことができるということを意味している。このようにして、この設備は、LGKの治療概要を単一の線形加速装置の利用で再現することができる。この装置の可動部品は覆われているので、それらは、LGKにおけるすべての線源の位置をおよそ20秒間、覆うことができるであろうおよそ毎分15回転までの速度で回転することができる。
【0051】
線形加速装置に基づく現行の装置によれば、類似の機能をもたらすことができるが、そうするためには一般的なロボット状アームによらなければならない。そのような装置では、装置に要求される精度は、正確なソフトウェアと精度測定とによって課さなければならない。上で説明した実施形態では、精度は、その構造の中へ導かれ、それゆえ自動的に現れる。
【0052】
加えて、一般的なバックグラウンド線量は、単一の線源だけがあるので、LGKを通して引き起こされるであろうそれよりも小さい。従って、遮蔽物は、主要線源が多数の線源の遮蔽に対抗するように遮蔽される必要があるだけであるので、より容易にかつより安価にもたらすことができる。この遮蔽物は、装置の外側におけるスタッフおよび患者の不要な被曝を制限するために一般には放射線不透過性である材料から形成されるであろう筐体34、ビーム止め42およびコリメーター43によって達成される。このような遮蔽物の減量分の重量も、また著しく減少する。
【0053】
さらにまた、現行のLGKに比べて、線形加速装置の利用によってビームの強度あるいはその一時的中断の動的変化が可能になる。ビームに対するこれらの変化は、ビームが傷つきやすい部位を透過するときに起きるようにプログラムすることができる。このことによって、視神経のような傷つきやすい部位の保護が、特定の線源への選択的栓子を設ける必要なしに可能になるであろう。さらにまた、相異なる寸法に平行化されたビームの組み合わせがしばしば必要である病的組織の不規則分布に合致することはよく知られている。この装置には単一の線源だけが備わっているので、マルチリーフコリメーターのようなプログラム可能なコリメーターあるいは相異なる寸法のコリメーターの選択をもたらすことができる。コリメーターの寸法は、治療においてある回数、変更させるようにプログラムすることができる。この装置は、(例えば)我々の以前の特許出願である国際公開第01/11928号に示されたように、あるいはそれによらなくとも、出力エネルギーの適切な変更によって撮像するために利用することもできる。このようにして、患者の(耳道のような)特定部位あるいは頭部フレームや頭部フレームに配置された較正部品のような公知の対象の特定区域は、撮像機能を通して位置決めすることができる。このことによって、患者の位置決めの検査あるいは患者テーブルによる患者位置決めの動的調整をもたらすことができる。
【0054】
さらに、説明したような設備では、線源の回転速度は変更することができる。このことによって、この装置は、ある腫瘍の不均質性のような生物学的要因をそれらの表面にわたる放射線に抵抗して処理することが可能になる。加えて、治療の間に線量率、平行化、および回転速度を動的に変更する機能は、最小の副作用で最大の治療利益を達成するために、新規なやり方でその治療あるいは手術を適応させる機能を有している。
【0055】
同時に、患者位置は患者位置決めシステム14,16によって調整することができる。このことは、治療の間に動的に、あるいは治療どうしの間に段階的に実施することができ、また、ビーム平行化の調整に加えてあるいはその代わりに実施することができる。動的ビーム平行化を動的患者位置決めに組み合わせるシステムは、実際には強力で適応性のある治療可能性をもたらすであろう。
【0056】
図6は、この実施形態および他の実施形態のさらに細部を前方へ示している。図6では、取付用ブラケット26,28が、後方へ続いており、また、U字形リンクアーム38を介して連結されている。このことによって、構造に付加的な剛性がもたらされるとともに、回転可能な電気的接続部40を設けて回転可能な構造へ動力をもたらすことが可能になる。図6では、装置は、患者軸に対して垂直である旋回軸30と患者軸に対して5°の低い偏角をなす線形加速装置32とが備わった状態で示されている。図7では、同じ設備が35°の増大した加速装置角で示されている。
【0057】
図8は、図5の装置を患者に対するおよそ5°の低い角で示している。
【0058】
図9は、患者18に対するこの装置の一般的幾何学的形態を示している。図9に示された(患者に対して5°の)構成では、患者の頭部18aを照射するための広い空間があることと、遮蔽物42を、線形加速装置44の反対側に残るとともにそれと一緒に動くように設けることができることが分かる。その結果、設けられる遮蔽物を最小限のものにすることができ、それによって、装置の全体重量とコストとを削減することができる。
【0059】
図10は、図9と同じ装置を平面で示している。
【0060】
図11は、図8に示されたような一般的構成を示しているが、線形加速装置は35°の増大角で備わっている。図12は、この増大角におけるこの装置の内部にある部品の構成を示しており、この図から、取付用リング20のような他の部品にぶつかることなく、また、患者の肩部18bのような意図しない部位を照射することなく、35°までの角度を得ることができる、ということが分かる。図13はこの構成を平面形態で示している。
【0061】
図14および図15に示されたように、第2の(回転可能な)リング24を取付用リング20に対して90°回転させることによって、線形加速装置34は、患者に対して垂直な位置へ上昇(あるいは下降、図示略)することができ、また、その後に、患者の関連部位に上方から、実際には任意の所望角度から照射することができる。図14は、鉛直線に対して5°の角度をなす線形加速装置を示しており、図15は、増大した35°の角度をなす同じ線形加速装置を示している。
【0062】
図16および図17は第3実施形態を示している。この代わりに設計では、基部100は回転可能なベアリング102を担持しており、このベアリングはそれゆえ回転可能であるスピンドル104を支持している。スピンドル104はC字アーム106を担持しているが、その端部は一線配置された一対の旋回軸108,110である。旋回軸108,110は、これらの共通軸がスピンドルの回転軸に一致するように一線配置されている。この実施形態では、直交状一致の好ましい構成が図解されている。
【0063】
旋回軸の上には放射線源支持体112が取り付けられており、これはくぼんだ筐体からなり、その上には、放射線源114と反対側のビーム止め116とが設けられている。この線源は、2つの軸の一致点を透過してくぼんだ区域の内部を進みビーム止め116で終わる平行ビーム118を発生させるように適合されている。
【0064】
その全体構造は、120で一部が示された適切な筐体の内部に囲い込まれている。この筐体の中には開口あるいは凹所122が設けられて、放射線源支持体112のくぼんだ凹所の中への患者124の進入が可能になるようにされている。実際には、患者124は、患者をくぼんだ凹所の中へ引き込みかつくぼんだ凹所から外へ押し出す移動可能な患者テーブル126の上に支持される。
【0065】
この実施形態によれば、上で説明した実施形態と同じ精度および位置合わせの利点がもたらされ、また、それと実質的に同じやり方で操作することができるであろう。
【0066】
従って、この発明によれば正確な作業が可能である多用途の放射線手術装置がもたらされる、ということは認識されるであろう。それは、LGKのような多数の線源装置の精度および機能を両方とも保有することができ、一方で、加速装置による設計の増大した適応性と減少した重量とが達成される。
【0067】
従って、説明された装置によれば、放射線手術および放射線治療における強力な用具がもたらされる。頭部領域およびその近傍領域を治療することは、(説明したように)両方とも適用することができ、また、これらは、この装置の内部に配置することを受け入れることのできる身体の他の部分にも適用することができる。上で説明した実施形態にこの発明の範囲から逸脱することなく多くの変更を行うことができる、ということはもちろん理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1a】この設備の幾何学的配置を概略的に示している。回転可能なユニオン継手の周りにおける回転の効果を示している。
【図1b】この設備の幾何学的配置を概略的に示している。回転可能なユニオン継手の周りにおける回転の効果を示している。
【図1c】この設備の幾何学的配置を概略的に示している。回転可能なユニオン継手の周りにおける回転の効果を示している。
【図2a】この設備の幾何学的配置を概略的に示している。支持体の回転の効果を示している。
【図2b】この設備の幾何学的配置を概略的に示している。支持体の回転の効果を示している。
【図2c】この設備の幾何学的配置を概略的に示している。支持体の回転の効果を示している。
【図3】患者の進入に先立つこの設備の外観図を示している。
【図4】患者が治療位置にあるこの設備を示している。
【図5】足方端部から見たこの設備の内部構造の斜視図を示している。
【図6】頭方端部から見た、第1位置におけるこの設備の内部構造の斜視図を示している。
【図7】第2位置における同じ設備を示している。
【図8】この設備の第2実施形態を頭方端部から斜視図で示している。
【図9】ビーム方位を断面図で示している。
【図10】図7のビーム方位を平面図で示している。
【図11】頭方端部から見た、第2位置における第2実施形態の内部構造の斜視図を示している。
【図12】この位置におけるビーム構造を斜視図で示している。
【図13】図10のビーム構造を平面図で示している。
【図14】第1位置におけるこの装置を通る垂直断面図を示している。
【図15】第2位置におけるこの装置を通る垂直断面図を示している。
【図16】1つの位置にある放射線源の備わった第3実施形態の斜視図を示している。
【図17】別の位置にある放射線源の備わった図14の実施形態の対応図を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上にマウントが設けられた支持体と、
マウントに取り付けられた放射線源と
を備えており、
支持体はその軸の周りに回転可能であり、
線源は、支持体の軸に対して平行でない回転軸を有している回転可能なユニオン継手を介してマウントに取り付けられており、
支持体の軸と放射線源とを通るマウントの軸は、それらの軸の一致点を透過するビームを発生させるように平行にされている、
患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項2】
支持体は、その軸に中心が合わされたリングである請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項3】
支持体は、直立配置に配置されている、請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項4】
マウントの軸と支持体の軸とは、交差している請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項5】
マウントは、支持体に対して横断状に延びている、請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項6】
マウントの軸は、支持体の平面の外側に位置決めされている請求項2に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項7】
マウントの軸は、支持体の軸に対して実質的に垂直である請求項6に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項8】
ビームの方向は、マウントの軸に対して垂直である、請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項9】
放射線源は、線形加速装置である、請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項10】
放射線源の平行化は、調整することができる、請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項11】
放射線源の平行化をその動きに相互関連したやり方でプログラム可能に制御するための制御手段を含んでいる、請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項12】
患者支持体をさらに含んでいる、請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項13】
患者支持体の位置は、調整することができる、請求項12に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項14】
その位置を制御手段の制御の下に調整することができる患者テーブルを含み、制御手段は、その位置を、放射線源の動きおよび/またはその平行化に相互関連したやり方で調整するように適合されている、請求項11に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項15】
放射線源の強度は、その位置の関数として選択することができる、請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項16】
放射線源の強度は、制御手段によって選択することができ、制御手段は、その強度を、放射線源の動き、その平行化、および患者テーブルの位置のうち少なくとも1つに相互関連したやり方で調整するように適合されている、請求項11に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項17】
放射線源の少なくとも1つの回転速度は、制御手段によって制御することができ、制御手段は、その速度を、放射線源の動き、その平行化、および患者テーブルの位置のうち少なくとも1つに相互関連したやり方で調整するように適合されている、請求項11に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項18】
患者の位置を決定するために一体型撮像装置が利用されている、請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項19】
ここに参照して記載されたように、かつ/または添付図面に図解されたように、実質的に患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項20】
放射線のビームをそこから放射する方向に発生する線源で患者を治療する方法であって、
i. 線源からそれぞれが偏位している2つの軸の周りに回転することができ、これら両軸およびビームの方向がすべて単一のアイソセンターで一致している、線源のための支持体を設けるステップ、
ii. 組織の病変部位がアイソセンターに位置するように患者を位置決めするステップ、
iii. 線源を作動させるステップ、
iv. 前記2つの軸の周りに回転を引き起こし、それによってアイソセンターでアイソセンターの周りよりも大きい線量を達成するステップ
を備えている、患者を治療する方法。
【請求項21】
線源は、シャッターを除去し、それによってビームを逃がすことによって作動される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
線源は、線源が前記2つの軸に対して特定の位置にあるときに作動停止される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記2つの軸は垂直である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
ここに参照して記載されたように、かつ/または添付図面に図解されたように、実質的に患者を電離放射線で治療するための方法。
【請求項1】
その上にマウントが設けられた支持体と、
マウントに取り付けられた放射線源と
を備えており、
支持体はその軸の周りに回転可能であり、
線源は、支持体の軸に対して平行でない回転軸を有している回転可能なユニオン継手を介してマウントに取り付けられており、
支持体の軸と放射線源とを通るマウントの軸は、それらの軸の一致点を透過するビームを発生させるように平行にされている、
患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項2】
支持体は、その軸に中心が合わされたリングである請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項3】
支持体は、直立配置に配置されている、請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項4】
マウントの軸と支持体の軸とは、交差している請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項5】
マウントは、支持体に対して横断状に延びている、請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項6】
マウントの軸は、支持体の平面の外側に位置決めされている請求項2に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項7】
マウントの軸は、支持体の軸に対して実質的に垂直である請求項6に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項8】
ビームの方向は、マウントの軸に対して垂直である、請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項9】
放射線源は、線形加速装置である、請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項10】
放射線源の平行化は、調整することができる、請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項11】
放射線源の平行化をその動きに相互関連したやり方でプログラム可能に制御するための制御手段を含んでいる、請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項12】
患者支持体をさらに含んでいる、請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項13】
患者支持体の位置は、調整することができる、請求項12に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項14】
その位置を制御手段の制御の下に調整することができる患者テーブルを含み、制御手段は、その位置を、放射線源の動きおよび/またはその平行化に相互関連したやり方で調整するように適合されている、請求項11に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項15】
放射線源の強度は、その位置の関数として選択することができる、請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項16】
放射線源の強度は、制御手段によって選択することができ、制御手段は、その強度を、放射線源の動き、その平行化、および患者テーブルの位置のうち少なくとも1つに相互関連したやり方で調整するように適合されている、請求項11に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項17】
放射線源の少なくとも1つの回転速度は、制御手段によって制御することができ、制御手段は、その速度を、放射線源の動き、その平行化、および患者テーブルの位置のうち少なくとも1つに相互関連したやり方で調整するように適合されている、請求項11に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項18】
患者の位置を決定するために一体型撮像装置が利用されている、請求項1に記載の患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項19】
ここに参照して記載されたように、かつ/または添付図面に図解されたように、実質的に患者を電離放射線で治療するための装置。
【請求項20】
放射線のビームをそこから放射する方向に発生する線源で患者を治療する方法であって、
i. 線源からそれぞれが偏位している2つの軸の周りに回転することができ、これら両軸およびビームの方向がすべて単一のアイソセンターで一致している、線源のための支持体を設けるステップ、
ii. 組織の病変部位がアイソセンターに位置するように患者を位置決めするステップ、
iii. 線源を作動させるステップ、
iv. 前記2つの軸の周りに回転を引き起こし、それによってアイソセンターでアイソセンターの周りよりも大きい線量を達成するステップ
を備えている、患者を治療する方法。
【請求項21】
線源は、シャッターを除去し、それによってビームを逃がすことによって作動される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
線源は、線源が前記2つの軸に対して特定の位置にあるときに作動停止される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記2つの軸は垂直である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
ここに参照して記載されたように、かつ/または添付図面に図解されたように、実質的に患者を電離放射線で治療するための方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2007−508886(P2007−508886A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536172(P2006−536172)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004475
【国際公開番号】WO2005/041774
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(500321704)エレクタ、アクチボラグ (18)
【氏名又は名称原語表記】ELEKTA AB
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004475
【国際公開番号】WO2005/041774
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(500321704)エレクタ、アクチボラグ (18)
【氏名又は名称原語表記】ELEKTA AB
【Fターム(参考)】
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