説明

電離放射線検出用の検出器

本発明は、電離放射線(116)検出用の検出器(110)に関する。検出器(110)は、電離放射線(116)を電磁線(118)、特には、可視光、紫外光または赤外光に変換するように適合された、少なくとも1つのシンチレーター(112)を含む。検出器(110)はさらに、電磁線(118)を少なくとも1つの電気信号(120)に変換するように適合された、少なくとも1つの有機光起電力要素(114)を含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は電離放射線検出用の検出器、並びに、そのような検出器を含む層、照射システム及び洗浄器具に関する。本発明は、各々、本発明の検出器を用いた、電離放射線を検出するための方法、並びに、照射システムを監視するための方法にさらに関する。このような器具及び方法は、一般に、例えば放射線衛生学の分野、例えば、医学的治療、医学的診断、核技術、または研究に投入される。
【背景技術】
【0002】
技術水準
医学、自然科学及び工学の多くの分野では電離放射線を発生する物質または器具が導入される。このような物質は一般に「放射性物質」とも呼ばれる。電離放射線の性質により、例えば粒子線及び/または電磁放射線に関し得るが、α-、β-及びγ-放射線に区別できる。中性子自体は通例電離効果を示さないが、代わりに活性化効果を示し、それにより放射された材料の電離に同様に導き得るので、最も広義には中性子源もまた「放射性物質」に包含できる。本発明の範囲では、電離放射線としては一般に、例えば体組織である材料に対して直接的または間接的に電離効果を及ぼすことができ、且つ、α-、β-、γ-、X-及び中性子線より選ばれる一つまたは複数の放射線を含む放射線が理解される。
【0003】
公知技術の電離放射線は、例えば医療の放射線治療または放射線診断に投入される。医療のこの分野は、他の医療領域もそうであるが、特に腫瘍学の範囲で重要性をさらに増している。さらには、材料科学及び工学の領域に電離放射線は、例えばX線またはγ線の形で、例えば、架橋または乗り物工学における材料検査に投入される。電離放射線のその他の投入領域は、例えば発電所の領域である核工学、または、例えばマーカー材料としての使用である生物学がある。
【0004】
電離放射線、または、電離放射線を発生する物質若しくは器具の取り扱いでは、通例、電離放射線自体も、この電離放射線を発生する物質も人間の感覚で知覚され得ないものであるので、根本的に細心の注意が必要とされる。このため、一つとして、関与する人物並びに生き物の放射線による肉体への負担を監視する。他方ではまた、放射線源の機能を果たす能力もまた最低でも定期的な間隔で制御する。さらには、事物や生物が故意でなく、且つ特には気付かずに電離放射線を発生する物質で汚染されないことが保証されねばならない。この職責の範囲は特に「放射線衛生学」とも呼ばれる。
【0005】
技術水準においては、挙げられた一つまたは複数の用途に投入できる多数の費用の掛かる検出システムが公知である。このように、例えば放射線量の監視のための放射線防護において、多くの場合、用い且つ有効活用するために、異なる作用原理で機能し、且つ、通例、比較的高い費用で生産される線量計が投入される。放射線汚染の監視には特に、例えば、ガイガーミューラー計数管のような検出器が投入される。さらには、電離放射線の線量及び/または空間的分布の監視に使用できるフィルムが投入される。公知の検出器はしかしながら通例全般的に高価、技術的に費用がかかり、そして、多くの場合、電離放射線を発生する物質による汚染の具体的な疑惑が成立して初めて投入され得る。
【0006】
発明の課題
従って本発明の課題は公知の検出器の欠点を回避した検出器を提供することである。特には、検出器は簡便及び安いコストで製造可能で、可撓性且つ多面的に利用可能で、そして、特には放射線衛生学の分野に投入可能であるべきである。
【発明の概要】
【0007】
発明の開示
この課題は独立請求項に係る器具及び方法により解決される。個々または組み合わせにより実現され得る発明の有利な発展は従属請求項により描写される。
【0008】
本願発明の基本的な概念は、電離放射線を検出するためにシンチレーターを有機的光起電力要素との組み合わせで使用することにある。有機的光起電力要素は通例のシンチレーターと組み合わせて投入される従来の光検出とは逆に、好ましい形に近い形で発生され得、可撓性に形成され得、大きい面に製造され得、そしてそれにより総体的に上述の課題の解決に良く適している。
【0009】
従って、少なくとも一つのシンチレーター及び少なくとも一つの有機光起電力要素を含む、上記定義の電離放射線検出用の検出器が提案される。シンチレーターは、電離放射線を電磁線、特に可視光及び/または紫外光及び/または赤外光に変換するよう適合されている。この電磁線は少なくとも一部が有機光起電力要素により吸収、若しくは、検出され得るように形成及び/またはシンチレーターから出力されるべきである。有機光起電力要素は電磁線を少なくとも一つの電気信号に変換するように適合されている。この電気信号は、例えばインターフェースを介して、検出器から出力されてもよいし、または、代替的若しくは付加的に内部信号として使用されてもよく、そして、例えば、検出器のさらなる要素、例えば、随意且つ以下により詳細に解説する表示要素に引き渡されてもよい。
【0010】
検出器は特に、直接的または間接的に、例えば表示要素を介して、電気信号に対応する少なくとも一つの出力信号を発生するように適合されてもよい。これにより、この出力信号は例えば電気的出力信号、例えば、インターフェースを介して使用者及び/またはさらなる器具に出力され得るものを含み得る。出力信号はまた代替的または付加的に、以下により詳述されるように、少なくとも一つの視覚的及び/または聴覚的及び/または触覚的及び/または他の方法により使用者に知覚され得る信号、例えば、表示要素より出力される信号のうちの一つを含み得る。
【0011】
本願発明の範囲におけるシンチレーターには従って一般に、例えば粒子線及び/または電離電磁線に関し得る電離放射線の透過及び/若しくは衝突により刺激され、そして、この刺激エネルギーを例えば紫外及び/若しくは可視及び/若しくは赤外スペクトル領域である電磁線の形でさらに引き渡す、材料並びに/または要素が理解される。電離放射線が同様に電磁線を含む場合、例えば、これは転換の事象と結びついていてもよい。この場合、例えば、電磁線の転換は長波長の電磁線を生じ得る。電離放射線が粒子線の場合には、電磁線への変換が生じる。
【0012】
シンチレーターは根本的に無機及び/または有機シンチレーター材料を含み得る。根本的に有機シンチレーター材料の方が比較的により容易に製造でき、且つ、有機シンチレーター材料の使用により、例えば、以下により詳述されるように、完全に有機的若しくはほぼ独占的に有機的な層構造に生産し得るので、シンチレーターが少なくとも一つの有機シンチレーター材料を含むか、または、完全に一つの有機シンチレーター材料から成立している場合が特に好ましい。少なくとも一つの有機シンチレーター材料の使用においては特に、有機的光起電力要素の製造と工程適合性が成立し得、全体として製造を簡便にする。代替的または付加的に、根本的にはまた無機シンチレーターを使用し得る。有機シンチレーター材料は、電離放射線による対応した刺激に対して電磁線を放出するよう適合された、例えば、有機的色素及び/若しくはポリマー、または類似の材料を含み得る。ドーピングされた有機材料、例えば、少なくとも一つの有機及び/または無機のドーピング材料によりドーピングされた有機的マトリックス材料もまた投入され得る。有機及び無機のシンチレーター材料の混合物もまた可能である。例示的有機シンチレーター材料はアントラセン、スチルベン、テルペニル、ジフェニルアセチレン、ポリビニルトルエン、トルエンまたはキシレンである。
【0013】
無機シンチレーターは、例えば、活性中心及び/または色素中心でドーピングされていてもよい結晶を含み得る。電離放射線はこの固体中で遊離の電子、遊離の孔、または電子-孔対、特には励起子を発生させることができる。このような刺激状態は、通例、活性中心で刺激状態が崩壊し、そしてそれにより電磁線を放射するまでシンチレーター材料中で移動できる。このような無機シンチレーター材料の例は、硫化亜鉛、ヨウ化ナトリウム、ゲルマン酸ビスマス、オルト珪酸酸化ルテチウム、または、これら及び/若しくは他のシンチレーター材料の組み合わせである。
【0014】
有機シンチレーターは根本的に結晶及び/または液体及び/またはポリマー固体を含み得る。有機シンチレーター中のシンチレーションの機構は、例えば、分子状態の刺激に起因し得、例えば、刺激された状態が崩壊の際、例えば紫外線を模倣し得る蛍光物質の形に起因し得る。さらには、無機シンチレーション材料の場合でも同様に、例えば短波長電磁線を長波長電磁線に変換できる、例えば所謂「波長シフタ」である、変換材料が含まれていてもよい。
【0015】
根本的に、シンチレーション材料は好ましくは固い形で存在し得、好ましくは可撓性の形、例えば、一つまたは複数のシンチレーターフィルムとして存在し得る。根本的にはしかしながら、その他の凝集状態、例えば液体シンチレーターも代替的または付加的に投入できる。
【0016】
有機光起電力要素からは全般的に、本発明の範囲では、電磁線を電気信号に変換するよう適合され、且つ、少なくとも一つの有機材料を含む要素が理解される。有機材料については特に、少なくとも一つの有機層に関し得、特に多層構造が好ましい。例えば、複数の有機機能層例えば、有機材料中の一つまたは複数の活性状態に電磁線を転換させるための変換層、及び/または、陽性若しくは陰性荷電の輸送のための一つまたは複数の荷電輸送層が含まれていてもよい。さらに有機光起電力要素は、一つ、好ましくは二つまたはそれ以上の電極、例えば、特にはシンチレーターから放出された波長領域の、好ましくは少なくとも一つ、最低でも部分的に電磁線が透過できるよう整えられた、少なくとも一つの陰極及び少なくとも一つの陽極を含んでもよい。有機光起電力要素の純有機的構造の代わりに、例えば、一つまたは複数の電極(その材料が根本的に無機材料から成っていてもよい)を除いて、ハイブリッド要素、例えば、無機及び有機材料を組み合わせた要素が組み込まれてもよい。従って、例えば、一つまたは複数の無機層を持つ層構造を一つまたは複数の有機層と組み合わせてもよい。
【0017】
特に好ましいのは、有機光起電力要素が少なくとも一つの太陽電池及び/または少なくとも一つの有機フォトダイオードを含む場合である。特には、少なくとも一つの太陽電池アレイ及び/または少なくとも一つの有機フォトダイオードアレイを計画し得る。アレイとは、一般に、例えば多数の有機フォトダイオード領域及び/若しくは複数の有機太陽電池領域である複数の活性領域の一、二または三次元配置が意味される。有機太陽電池とは、一般に、本発明の範囲では有機化学の少なくとも一つの材料を有する太陽電池が意味される。有機材料とは、例えば、低分子有機材料並びに/またはポリマー材料に関し得、例えば、挙げられた材料の組み合せ及び/若しくは無機材料との組み合わせでもあり得る。特には、共役π電子系の有機材料、特には共役ポリマーを使用してもよい。その際、受容体材料、例えばフラーレンを投入してもよい。特には、供与体材料及び受容体材料を一緒に有機太陽電池構造に組み合わせてもよい。有機太陽電池は、例えば、湿式化学及び/または真空工程で製造され得る。有機太陽電池の可能な形態に関しては、本発明の範囲では根本的に公知及び部分的に市販より入手可能の有機太陽電池も組み入れられ得るので、根本的に、周知の文献を参照できる。
【0018】
検出器はさらに、例えば、少なくとも一つの電気信号の増幅及び/または最低でも部分的な処理及び/または出力のために、少なくとも一つの電気回路を含んでもよい。これにより検出器は、例えば、電気信号を増幅するための少なくとも一つの増幅器を含み得る。検出器のこの増幅及び/または他の電気的構成要素はまた、完全若しくは部分的に、有機材料を使用して製造されていてもよい。このように、例えば、増幅器は特に少なくとも一つの有機電気要素、好ましくは一つの有機トランジスターを含んでもよい。上述の好ましくは本質的に全部が有機的な構造は、このように、例えば、シンチレーターが最低でも部分的に有機シンチレーターとして組み立てられ、有機光起電力要素が使用され、そして、また電子機器が最低でも部分的に有機電子機器より形成されるように奨励してもよい。さらには、以下により詳細に述べるように、少なくとも一つの有機表示要素を計画してもよい。上述のように、個々の検出器の要素には類似した製造技術を使用することが可能となるので、当該本質的に全部が有機的な構造は検出器の製造を全体的に促進する。有機的な電子機器部品、特に有機トランジスターは、一般に、一つまたは複数の有機材料上に電流輸送のために食い込む要素であり、例えば、一つまたは複数の有機導体材料及び/または半導体材料である。このような有機の電子機器部品も根本的に技術水準において知られている。
【0019】
検出器は、電気信号から電離放射線の放射線量についての線量情報を発生させるように特に適合されていてもよい。これにより検出器は、例えば、少なくとも一つの電気信号を直接または間接的に、完全または部分的に当該線量情報に変換できる。これは、検出器の完全若しくは部分的な構成要素であってもよいし、または完全若しくは部分的に検出器の外に配置される、例えば、該当する判定電子機器及び/または日付処理装置により実現され得る。電子信号は、例えば一つまたはそれ以上の該当する校正情報を介して、例えば直接または間接的に線量情報に変換さてもよい。この校正情報は、例えば、同様に完全にまたは部分的に検出器に含まれていてもよいデータ記憶装置に保管されていてもよい。
【0020】
特に有機太陽電池及び/または有機フォトダイオードである有機光起電力要素の特別の利点は、根本的にこれが可撓性に形成され得る点にある。これにより有機光起電力要素は特には、最低限でも部分的に可撓性に特にはフィルムとして、好ましくはプラスチックフィルムとして形成される。これにより有機光起電力要素は、例えば、可撓性の担体、例えばプラスチック担体であり得る。代替的または付加的に他の可撓性の担体材料、例えば、薄いガラスも投入し得る。また多層の基質構造、例えば、プラスチック-ガラス-ラミネートも投入し得る。このような可撓性な担体もまた有機電子機器及び/または有機光起電力の分野の当業者には根本的に知られている。
【0021】
特に好ましい検出器の形態では、この検出器はさらに、電気信号を最低でも部分的に少なくとも一人の使用者が知覚できる出力信号、特には光学的な出力信号、特には可視の光学的な出力信号に変換するよう適合された少なくとも一つの表示要素を含む。例えば、表示要素は一つ若しくは複数のディスプレイ及び/または明視野及び/または他種の光学的表示要素を含んでもよい。光学的表示要素の代わりまたはそれに加えて、使用者に対してその他の方法で知覚できる出力信号、例えば聴覚的な出力信号及び/若しくは触覚的な出力信号を発生させる、表示要素をまた使用してもよい。例えば、電離放射線の知覚においては、光学的表示の代わりまたはそれに加えて、警告音及び/若しくはその他の種類の聴覚的な警報信号を発しても、言語出力若しくは使用者に知覚できる検出器の振動を生じてもよい。
【0022】
特に好ましいのは、有機光起電力要素が少なくとも一つの有機光起電力要素アレイを含む場合であり、そして表示要素もまた一つの表示要素アレイを含んでもよい。この場合、特には、光起電力要素アレイの一つまたは複数の域から、表示要素アレイの域への帰属が構成されてもよい。これは例えば、有機光起電力要素アレイの各域が正確に表示要素アレイの一つの域に帰属させられる1:1の帰属であってもよい。また、光起電力要素アレイの複数の域及び/若しくは表示要素アレイの複数の域の統合を根本的に行ってもよく、並びに/または、個々若しくは複数の域を帰属させることなくそのままとしてもよい。このようにして、例えば、少なくとも一つの電気信号を各々、有機光起電力要素アレイの一つの域または複数の統合された域を表示要素アレイの一つの域または複数の統合された域に、表示要素アレイの、例えば観察者に知覚し得る、光学的出力信号の有機光起電力要素アレイの電気信号への帰属が成立するように委ねることができる。このようにして、例えば、場所解明を観察者のために視覚化することができる。例えば、このようにして、電離放射線の空間的分布の場所情報及び/または画像情報すらも作出し得、そして、使用者の検出器に出力できる。場所情報及び/または画像情報はまた、例えば、画像を提供する放射線診断法及び/またはX線診断法である、該当する画像提供方式に投入することができる。
【0023】
本質的に総体的に有機的な検出器の構成についての上記着想の延長では、場合によっては少数の要素を例外として、検出器は好ましくは表示要素が少なくとも一つの有機発光要素、特には少なくとも一つの有機フォトダイオードを含むように形成されていてもよい。この有機的な発光要素もまた根本的にアレイ型、例えば、一つまたは複数の有機光ダイオードアレイの形に配置されていてもよい。特には、有機的な発光要素は少なくとも一つのマトリックス表示、例えば、受動マトリックス表示及び/または能動マトリックス表示の形のものを含み得る。有機的な発光要素もまた根本的に、最低でも部分的に可撓性に、例えば、上述の記載から十分に参照できるよう、またもや一つまたは複数の可撓性の担体材料の使用により形成され得る。これにより、検出器は全体として、最低でも部分的に可撓性に形成され、「可撓性」という概念は本発明の範囲において、最低でも一つの局面において根本的に任意のやり方での成形可能性、好ましくはフィルム様の成形可能性を含む。特には、検出器は全体として3mmよりも薄い、好ましくは1mm若しくはそれより薄い、または特に好ましくは500マイクロメートル若しくはそれより薄い厚さを有し得る。
【0024】
有機的な発光要素としては一般的に本発明の範囲においては発光する要素、即ち、その光が最低でも可視スペクトル領域でも発光し、最低でも一つの有機材料、特には有機発光材料を有する要素が理解される。これは、特にはまた、低分子及び/またはポリマー有機材料であり得、場合によってはまた無機材料との組み合わせであってもよい有機材料の層構造を投入してもよい。また、広範なπ電子系、例えば、共役の有機材料との有機材料の使用が好ましい。有機材料はその際、例えば、発光材料及び/または孔輸送材料及び/または電子輸送材料を含んでもよく、同様に、場合によっては、例えば緩衝層若しくは類似のさらなる材料を含んでもよい。有機フォトダイオード(OLEDs)としては、根本的に、特には薄膜の光る少なくとも一つの有機材料、特には有機半導体材料を有する部材が理解され得る。この場合部材は、例えば、非対称の特性曲線、特にはダイオード特性曲線を示す。有機発フォトダイオードの構造及び機能方式はまた、本発明の範囲内においても根本的に、有機フォトダイオードまたはその他の類の有機発光要素の産出のため公知の構造原理及び製造方法を使用し得るので、技術水準を参照し得る。特には、場合によっては、湿式化学製造方法及び/または真空製造方法を使用できる。
【0025】
検出器の挙げられた要素は、根本的に、検出器中に任意の配置で含まれていてよい。前提条件は単にシンチレーターから生じた電磁線が有機光起電力要素により受容される得ることである。表示要素が含まれる場合、この表示要素は特には有機光起電力要素と直接的または間接的に、例えば、電気回路により連結されているべきである。根本的には、挙げられた要素は全体として、または、部分的に隣接してまたは重なって配置されていてもよい。
【0026】
しかしながら、特に好ましいのは、シンチレーター及び有機光起電力要素が層状に重なって配置され、検出器が層構造を示す場合である。表示要素もまた計画される場合、これもまた層構造中に組み込まれていてもよい。例えば、少なくとも一つのシンチレーター層、少なくとも一つの光起電力要素の少なくとも一つの層、及び、少なくとも一つの表示要素の少なくとも一つの層が計画され得る。この際に、層の順番は根本的に任意である。しかしながら、特には、表示要素が計画される場合、表示要素の少なくとも一つの層は、検出器の使用者にとってこれが見えるように、例えば、層構造の最上層に配置されるべきである。シンチレーターの電磁線が光起電力要素により受容され得るように、好ましくは有機光起電力要素の層はシンチレーター層に隣接して配置される。例えば、表示要素及び有機光起電力要素が少なくとも部分的に一つの層に一様に配置されている等、根本的には複数の要素が一つの層に一様に配置されていてもよい。従って、例えば、有機光起電力要素のアレイ(例えば有機太陽電池アレイ及び/または有機フォトダイオードアレイ)は表示要素アレイと一つの層中に組み合わされてもよい。従って、例えば、一つまたは複数の光起電力要素のアレイの域は、各々、一つまたは複数の表示要素のアレイの域と配置されていれもよい。このようにして、特には有機光起電力要素のアレイを有機発光要素のアレイと、例えば、有機太陽電池アレイを有機光ダイオードアレイと組み合わせることができる。
【0027】
上に記載した一つ若しくは複数の実施形態の検出器は、電離放射線の定性的及び/または定量的検出のための公知の検出器と比べて、多数の利点を示す。従って、アレイ型に形成された有機太陽電池は、例えば、その上に載った有機シンチレーターとの組み合わせでブロックとして存在し得る。シンチレーターは、特には測定できるよう、電離放射線を可視光、例えば、有機太陽電池により捕らえられるものに変換する。有機トランジスターは、随意で、獲得した電気信号を増強してもよい。少なくとも一つの増幅器はさらにアナログ-デジタル変換機を含んでいても、且つ/または、そのようなアナログ-デジタル変換機と連結していても若しくは連結可能であってもよい。このようなアナログ-デジタル変換機は、アナログ方式の電気信号を、例えば、さらに加工及び/またはデジタル化することができる。較正によりパーセントの範囲まで線量測定できる。
【0028】
検出器は一般的に非常に薄い材料、特には薄い有機層の使用を可能ならしめるので、電離放射線の一般的な吸収自体もまた検出器によって小さく形成できる。これにより、例えば、検出器を直接、放射線治療システムの光線出口に、一時放射線を変えることなく使用できるという点で役立つ。これによって、電離放射線の流れの正確な測定、例えば、1mmよりも小さな解像が達成できる。
【0029】
可撓性材料(例えば、可撓性のプラスチック材料)の例えば有機光起電力要素及び/または有機発光要素における使用は、多数の構築利点を提供する。検出器はこれにより全体として可撓性に、例えば、慣用のフィルムのように可撓性に形成され得、そして、それにより例えばフィルム代用品として投入できる。これによって、フィルムの利点をデジタル検出器の利点と組み合わせることができる。慣用のデジタル検出器は、通例、剛性且つ厚く形成されているものの、多くの場合、直接読み取りでき、且つ、低くから高い点までの解像度を提示する。慣用のフィルムはそれに対し可撓性であり且つ薄いが、通例、現像後及び/またはスキャニング後に初めて読み取れるものの、高い解像度を示す。本発明による可撓性の検出器の使用により、デジタル検出器及び慣用のフィルムの利点が組み合わされ、それにより、例えば上に記載した表示要素の使用により、より薄く、可撓性であり且つさらに直接読み取れる高い解像度の検出器を提供することができる。上に記載した特徴の適当な組み合わせにより、例えば、従来の工程の完全なまたは最低でも部分的なデジタル化が実現できるように、例えば、ここに描写された検出器(例えば、電気的フィルムの形のもの)によるフィルム材料の完全な代用が可能となる。
【0030】
提案された検出器のさらなる利点は、有機光起電力要素(例えば、有機太陽電池)の有機発光要素(例えば、OLED)との随意の組み合わせである。例えば、有機発光要素は、上に記載されるように、層構造の最上層として、例えば、マトリックスディスプレイの形で投入することができる。有機光起電力要素は例えば、層構造の最下層として投入できる。しかしながら、上に描写したように、根本的にその他の層構造も可能である。加えて、有機光起電力要素は表示要素(例えばOLED)にエネルギーを調達するように投入してもよい。直接的に読み取り可能性が保証されるように、エネルギーは、それにより光るOLEDに受け渡されてもよい。
【0031】
記載された一つまたは複数の実施形態の提案された検出器に加えて、さらに、検出器が根本的に任意の形体に形成され得ることが利用される。例えば、記載された一つまたは複数の形の検出器によって、放射活性材料と接触するかもしれない表面を覆うことができる。このような材料が表面に存在すると、検出器は少なくとも一つの、直接的または間接的に使用者に、例えば、少なくとも一つの表示要素を介して伝達され得る電気信号を生じることができる。これにより、増幅された後かまたは直接エネルギーとして有機フォトダイオードの駆動に投入され得る電流が、例えば有機太陽電池中で生み出される。
【0032】
それに応じたものには、潜在的に電離放射線を発生する汚染物により汚染された表面に塗布するための、上に記載した一つまたは複数の実施態様の少なくとも一つの検出器を示す被膜が提案される。このような被膜の利点は、放射線衛生学に関しては、汚染された表面が例えば直ぐに光る点にあり得る。発光は、例えば、汚染物が除かれた時に初めて停止することができる。これにより、そうでなければ見ることのできない電離放射線により生じる汚染物の可視的な監視が実現できる。これは、該当する放射線とのつきあいにおける安全性を著しく高める。
【0033】
検出器はその形及び材料特性に関して、非常に多様で、特に可撓性に形成できるので、根本的に検出器は被膜の代わりまたはそれに加えて、しかしながら一般的に任意の方法で対象に組み込まれてもよい。検出器は例えば、一つまたは複数の記載された方法によって、布地、例えば、放射線防護服に組み込まれてもよい。さらには、検出器は例えば鉛の前掛けに組み込まれ得る。さらには、検出器はまた例えば患者をカバーする布地、例えば、医療手術において使用できるものに組み込まれ得る。このような方法によっても、電離放射線の負荷の直接的な可視化が実現される。さらに、代替的または付加的に、例えば洗浄布地(例えば雑巾)に形成されていてもよい洗浄器具を実現化できる。その他の布地型または例えばスポンジ型の形成もまた根本的に可能である。洗浄器具は、潜在的に電離放射線により生じる汚染物により汚染された表面の洗浄のために投入できる。洗浄器具は、最低でも部分的に可撓性に形成され、且つ、上に記載した実施形態の一つまたは複数の少なくとも一つの検出器を含み得る。このような方法により、それによって意図しない放射線曝露及び/または放射活性材料による汚染を素早く且つ確実に検出できる、例えば、布地を生産できる。洗浄器具、特に洗浄布地は、例えば該当する汚染の検出により発光し得る。
【0034】
さらには上述のように照射システムが提案される。この照射システムは電離放射線発生のための少なくとも一つの線源を含む。この線源は例えば放射線源(例えば、α-及び/またはβ-及び/またはγ-及び/またはX-及び/または中性子線を発生させる線源)であり得る。代替的または付加的にX線源を投入してもよい。照射システムはさらには、照射システム中の放射線進路中に配置された少なくとも一つの、上に記載された実施態様の一つまたは複数の検出器を含む。照射システムは特に、電離放射線の放出を正確に監視及び/または操作若しくは制御するために投入することができる。電離放射線の放出の空間的分布及び/または線量、放射線強度、放射線分布若しくは類似の大きさのオンライン監視をこのような方法によって実現できる。
【0035】
さらに、電離放射線の発生するための少なくとも一つの線源を有する照射システムの監視方法が提案される。例えば、上の記述に従った照射システムに関し得る。その際、上に記載された実施態様の少なくとも一つまたは複数の検出器が使用され、そして、照射システムの放射線進路に配置される。配置は特に電離放射線の放射線出口に実現され得る。これは、例えば、放射線出口の流れの測定及び/または照射によるオンライン確認のために使用することができる。
【0036】
さらには、電離放射線を発生する汚染物、特には放射性汚染物を検出するための方法が提案される。この方法では、上に記載された一つまたは複数の実施形態の少なくとも一つの検出器が使用される。ここで、検出器は潜在的に汚染物により汚染された対象に近づけられる。この接近は、ある間隔までであっても、及び/または、検出器による対象の接触により実現されても良い。例えば接触は払拭の形で実現されてもよい。検出器はまた対象の上に載せられても、及び/または、対象を擦り取るのに使用してもよい。この際、検出器の少なくとも一つの出力信号が監視され、そして、その出力信号を元に汚染物の存在または不在が結論される。
【0037】
提案された設備及び方法は、上に既に挙げられた利点に加えて、薄い可撓性の検出器を異なる応用におけるフィルム代用品として準備できる可能性を提供する。特には、能動的な表面についての放射線曝露の検出を実現する。これによってまた、放射線衛生学及び/または放射線防護において現実的な理由によりこれまでまず到達できなかった応用が開拓される。一般に、これにより、放射線防護及び/または放射線衛生学は発展され、そして、コストが安く且つ安全に具体化される。実現に費用のかかる半導体検出器または電離箱に代えての可撓性の有機構造の利用は、それに加えて、経済的利益を提供する。その上、放射線による身体負荷が直接、例えば、表面上の放射性の照射を表示する形で示される。表面上の放射性の汚染物はこの方法により直接的に可視化される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
発明のさらなる詳細及び特徴は、後述の好ましい実施例により、特には請求の範囲と関連して明らかになる。ここで、各特徴は独立して、または、多くの組み合わせで実現され得る。本発明は実施例に限定されない。実施例は図面中に図式的に描写される。図面中の同じ記号は、その機能に関して同じまたは機能的に同等の互いに相当する要素を示す。
【0039】
詳細には、
【図1】検出器の第一の実施例の簡単な層構造を示す。
【図2】アレイ型の可能な有機光起電力要素の図式的描写を示す。
【図3】有機光起電力要素のアレイ及び有機発光要素のアレイの層構造を持つ検出器の実施例を示す。
【図4】照射システムの実施例を示す。
【図5】本発明の被膜により被覆された対象物の実施例を示す。
【図6】洗浄器具の実施例を示す。
【図7】表示要素及びシンチレーターの間に分離層のある層構造を有する検出器の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0040】
図1には、非常に図式化されているが、電離放射線検出用の本発明の検出器110の簡単な実施例が描写される。検出器110は、この実施例において、層構造で実現されており、そして、シンチレーター112(例えば、有機シンチレーター112)の層、及び、有機光起電力要素114(例えば、有機太陽電池)の層を含む。シンチレーター112は、電離放射線116を最低でも部分的に吸収し、そして電磁線118に変換するよう適合されている。有機光起電力要素114自体は、有機電磁線118を最低でも部分的に吸収し、そして少なくとも一つの、図1においては記号120として象徴的に示される電気信号を生じるよう適合されている。検出器110のこの実施例における最下層としては、例えば、随意にさらに、図1においては記号121として象徴的に示される担体層を計画してもよい。
【0041】
図2には有機光起電力要素114の可能な形態が示される。これは、例えば、その上に個々の光起電力要素114のアレイ124が取り付けられた可撓性の担体122であり得る。これは例えば有機太陽電池アレイに関し得る。これは、例えば、用途に応じて、適当なセグメントに分割されていてもよい。例えば、測量のため、敷き詰めたれた正方形、または、六角形の別の充填方法によるアレイ型が提供される。測定データを失わないように、基本的に、被覆は可能ならば完全であるべきである。
【0042】
該少なくとも一つの光起電力要素114及び/または光起電力要素114のアレイ124は、例えば、フォトダイオード及び/または光電池の使用に基づき得る。フォトダイオードの使用は特に、フォトダイオードの抵抗が光照射により変化することにより実現される。例えば、フォトダイオードにより電流を測定することにより、これを活用及び/または測定できる。典型的な回路構造は、例えば、フォトダイオードに電圧をかけ、そして、電流-電圧-変成器により最初に電流が変換され、それにより電圧が増幅され且つデジタル化されるよう計画できる。代替的または付加的に光電池(例えば、有機太陽電池)を利用することもできる。これによって、例えばコンデンサーに、CCD要素(CCD:電荷結合素子)の電気回路にアナログに暫定蓄積できる電荷を発生させることができる。
【0043】
各個別の光起電力要素114は層構造を示し得る。そのような層構造は、例えば、少なくとも電子供与体の一つの層及び電子受容体の一つの層の組み合わせ、並びに/または、両方の特性を持つ混合層として計画されてもよい。例えば、電子供与体として少なくとも一つの層ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、及び、電子受容体として少なくとも一つの層[6,6]−フェニル−C61−ブタン酸メチルエステル(PCBM)の層構造を、有機二層構造の形で使用できる。この有機層は、例えばそのうちの一つが担体上(例えば、透明の担体)に取り付けられたものである、少なくとも二つの電極の間に埋設してもよい。二つの電極(陽極、陰極)の間には電圧をかけることができる。電子-孔対が生じると、それぞれ該当する電極に引き寄せられ、そして電流が発生する。外部回路のない構造も考えられる。例えば、典型的な層構造は次の層序で計画されてもよい:電極(例えば、視覚的透明性を持つ、少ないナノメーター厚の二重層Ca/Ag)、それに続く活性な有機的な層または層序、それに続く、暗電流を最低限に抑えるための随意の中間層(例えば、ポリスチレンスルホン酸、例えば、1マイクロメーターの厚さ)、それに続く第二の電極、さらにそれに続く担体。さらには、酸化の問題を回避するため、システムはカプセル化されるべきである。
【0044】
この場合の検出器110のシンチレーター112は図2に示されていない。根本的にはこの場合には、上に載るシンチレーター112、並びに、例えば少なくとも一つのフォトダイオード及び/または少なくとも一つの太陽電池の形であるその下の光起電力要素114を持つ、古典的な層構造が好ましい。例えば図1と同様に、例えばシンチレーター112はブロックの形で有機光起電力要素114の上に取り付けられてもよい。シンチレーター112は電離放射線116から、光起電力要素114において電流及び/または電圧に変換され得る、例えば可視光である電磁線118を発じさせることができる。シンチレーター112は、図1及び2中の実施例において、例えば、アントラセン、スチルベン、テルペニル、ジフェニルアセチレン、ポリビニルトルエン、トルエン若しくはキシロール、または、挙げられた及び/若しくはその他のシンチレーター材料の組み合わせを含み得る。本発明の範囲において使用できるその余のシンチレーター材料は、例えば、Hanno Krieger「Grundlagen der Stahlungsphysik und des Strahlenschutzes(放射線物理及び放射線防護の基礎)」第二巻、第177〜178頁、表2.3に明らかにされている。
【0045】
図2に示される実施例の検出器110はさらに、図1及び3に従う他の実施例と同じく、一つまたは複数のさらなる図中には示されていない層、例えば図2並びに3中の層構造の最下層及び/若しくは中間層として使用できる、例えば一つ若しくは複数の担体層121、または、担体材料の層を含んでもよい。最低でも一つの随意の担体材料の層はさらに、一つまたは複数の検出器110の他の要素、例えば、シンチレーター112及び/または光起電力要素114及び/または光起電力要素114のアレイ124及び/または以下により詳細に記載される表示要素130若しくは表示要素132のアレイ132と統一されてもよい。代替的または付加的に、最低でも一つの随意の担体材料の層はまた独自の層、例えば、上に注釈されるように、総層構造の最下層として形成されていてもよい。
【0046】
さらに検出器110は、このまたは他の実施例において、制御及び/または判定電子機器126を含んでもよい。これは図2に象徴的に概略される。この制御及び/または判定電子機器126は例えば完全に、若しくは、部分的に有機電子機器により実現され得る。制御及び/または判定電子機器126は、例えば、電気信号120をほぼ完全に若しくは部分的に検出器内で加工または予備加工するために、一つ若しくは複数の増幅器及び/または一つ若しくは複数のアナログ-デジタル変換機及び/または一つ若しくは複数の判定電子機器を含むことができる。線量情報についての出力もこのようにして実現できる。図2では加えて、制御及び/または判定電子機器126の前後で電気信号120を区別できないが、必然的に電気信号120の間に差異が生じ得る。制御及び/または判定電子機器126はまた、完全に若しくは部分的に有機電子機器により、例えば、一つ若しくは複数の有機トランジスターの利用によって実現されもよい。ハイブリッド構造もまた根本的に可能である。制御並びに/または判定電子機器126により産生及び/若しくは改変された電気信号120は、例えば、インターフェース128を介して使用者及び/またはさらなる装置に伝達されてもよい。代替的若しくは付加的に、電気信号120はまた直接若しくは間接的にさらなる検出器110の構成要素に、インターフェース128またはこのインターフェース128を回避して転送されてもよい。図3を手がかりにより詳しく注釈されるように、例えば、電気信号120の一つまたは複数の表示要素130への引渡しを実現できる。
【0047】
図3は、追加で少なくとも一つの表示要素130を有する本発明の検出器110の実施例が示される。ここでもまた検出器110は例示的に、一つのシンチレーター112及び光起電力要素の一つのアレイ124から、例えば図2と同様に層構造で実現されている。例えば有機発光要素、特にはOLEDにより実現されていてもよい表示要素130もまた、この場合、アレイ132として実現されている。例えば、一つまたは複数のアレイ124の域が、各々、一つまたは複数のアレイ132の域に帰属されていてもよい。
【0048】
電離放射線116は、層構造の例えば一つまたは複数の層を浸透しシンチレーター112に達し得る。シンチレーター112はここでは大きな面を有するシンチレーターとして描写されているが、しかしながら、代替的または付加的に、同様に完全に若しくは部分的に個別若しくは複数のシンチレーターのアレイ型に形成されていてもよい。代替的または付加的に、各応用における課題に適合させたシンチレーター112の幾何学的形状及び/またはセグメント化を使用できる。図3に描写されるように、電離放射線116はシンチレーター112中において同様に電磁線118に変換され、それはまた有機光起電力要素112中において電気信号120に同様に変換され得る。この電気信号120は、図3に示唆されるように、直接または間接的に表示要素130へ出力されてもよい。これにより、完全なまたは部分的な中間処理、例えば(例えば図2と同様に)信号の増幅が行われてもよい。このような方法により、例えば、表示要素130の点灯、例えば、大きな面における及び/または局所的な点灯により、電離放射線116及び/または電離放射線116を発生する物質を表示することができる。図3に従った検出器110は、例えば、従来の放射線検出フィルムの代わりとなり、そして、広い面において若しくは部分に分けて電離放射線116を検出するために組み入れられるよう、例えばフィルムとして形成されていてもよい。表示要素130の点灯を通して、電離放射線116は、使用者にとって直接的に可視化され得る。これにより慣用のデジタル検出器の利点が慣用のフィルムの利点と組み合わされる。
【0049】
全体として、図3に描写された層構造が必ずしも必要でないことが指摘される。層構造は他の層の順序を含んでもよい。例えば、シンチレーター112は、有機光起電力要素114と表示要素130の間に配置されてもよい。さらには、描写された要素各々が、同様に、自身の層構造を有してもよい。このように、例えば、通例の有機光起電力要素114及び/または通例の表示要素130自体を層構造として実現される。例えば、これらの要素は各々一つまたは複数のサンドイッチ構造、例えば、一つの担体、二つ若しくはそれ以上の電極、及び少なくとも一つのその間に埋め込まれた有機材料の構造を含んでもよい。これに関しては技術水準を参照することができる。
【0050】
さらに、図3に従った層構造は、例えば図1及び2に従った他の層構造と同じく、少なくとも一つの分離層、図3における選択肢として破線で描写され、且つ、記号133で描写される層が組み込まれてもよい。この分離層133は、例えば、可視光にとって不透化または少ない透化性であるように形成されていてもよく、また、例えば、可視光が光起電力要素114から分離されるよう、または、光起電力要素114に到達する前に最低でも弱められるように機能し得る。
【0051】
図7には分離層133を投入できる検出器110のさらなる実施例が描写されている。この実施例では、随意の最下層として、同様に担体層121が計画される。その上には有機光起電力要素114、例えば、大きな面の有機光起電力要素の層が計画されている。その上にはシンチレーター112の層が計画されている。この層構造の上には、好ましくは上から当たる電離放射線116が有機光起電力114に到達できるような、最低でも部分的に透過性の分離層133が計画されている。他方、この分離層133はまた、可視光による有機光起電力要素114からの信号の不純が全くまたは取るに足らぬものであるよう、最低でも部分的には可視光にとって不透過性である。分離層133の上にはまた同じく表示層130が、好ましくは、大きな面をもつ光源、好ましくは、有機光ダイオードの形で配置されている。これは、二つまたはそれ以上の電極を介して制御されてもよい。
【0052】
図7中に示される層構造中の有機光起電力要素114はまた異なる方法により形成されてもよい。例えば、これはフォトダイオード及び/若しくは太陽電池として敷設されてもよいし、並びに/または、シンチレーター112から生じた電磁線118への反応として電気信号を生じさせる他の有機光起電力要素として敷設されてもよい。この信号は例えば、分配された場所に設けられた電気回路に表示要素130(例えばOLED)の入力を働きかけることができる。少なくとも一つの表示要素130はそれにより点灯、または、例えば、点滅する信号及び/若しくは記号、例えば放射活性の記号のような他の光学的信号を発することができる。
【0053】
図4は、電離放射線116を発生するための、本発明の照射システム134の図式的な実施例を描写する。照射システム134は、例えばここではケース138により収容され、そして、電離放射線116を発生させる線源136を含む。例示的に、線源136はここでX線管として象徴される。代替的または付加的にはまた他の線源136、例えば、α-及び/若しくはβ-及び/もしくはγ-及び/若しくはX-及び/若しくはニュートロン-線源を投入することができる。
【0054】
照射システム134はさらに、図4において象徴的に示される制御装置140を含んでもよい。照射システム134の放射線進路中には、例えば、上に記載の一つまたは複数の実施形態に従った検出器110が配置されている。検出器110は例えば非常に薄く形成され得、そして、例えば、非常に少ない量の電離放射線116を吸収する材料により製造できるので、この検出器110の配置により電離放射線116は、その強度及び/または空間分布が全くまたは本質的には影響されない。検出器110より産生された電気信号120は例えば制御装置140及び/または示されてはいないがさらなる装置に伝達され得る。このような方法により、照射システム134の電離放射線116の強度及び/または空間分布に関しての制御が実現され得る。代替的または付加的に、検出器110を介してまた、電離放射線116の観察者にとっての直接的可視化を実現できる。
【0055】
図5には、検出器110がまた完全に若しくは部分的に被膜142の形で実現され得、且つ/または、他の方法により使用対象に補充され得ることを明らかにする実施例が示される。被膜142は例えば、各々が大きな面の形のシンチレーター112、有機光起電力要素114及び表示要素130を持つ層構造を含む。被膜はまた例えば、潜在的に電離放射線を発生する汚染源により汚染されているかもしれない、根本的に任意の対象146の表面144に載せることができる。描写された実施例では、対象146はスパーテルとして象徴される。しかしながら、例えば、検査室診断、放射活性物質操作、放射線診断または放射線治療の領域における対象である他の対象146もまた組み入れることができる。この方法により、例えば、表面144の点灯により汚染を可視化することができる。
【0056】
図6では最終的に洗浄器具148の実施例が描写される。この洗浄器具148はこの例においては、例えば、潜在的に汚染された表面を拭くことができる布地として実現されている。この洗浄器具148には、一つまたは複数の検出器110が組み込まれており、洗浄器具148はまた完全に検出器110として形成されていてもよい。ここで再度、特に可撓性形体の検出器110の選択肢が利用され得る。根本的に、検出器110はまた、上の記載に従って形成され得る。洗浄器具148で潜在的に汚染された表面を払拭することにより、例えば、洗浄器具148が局所的または大きな面において点灯することにより、電離放射線を発生する汚染物による汚染をまた、例えば、使用者にとって直接可視化することができる。
【0057】
記号表
110 電離放射線検出用の検出器
112 シンチレーター
114 有機光起電力要素
116 電離放射線
118 電磁線
120 電気信号
121 担体層
122 可撓性の担体
124 光起電力要素のアレイ
126 制御及び/または判定電子機器
128 インターフェース
130 表示要素
132 表示要素のアレイ
133 分離層
134 照射システム
136 線源
138 ケース
140 制御装置
142 被膜
144 表面
146 対象
148 洗浄器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのシンチレーター(112)を含む、電離放射線(116)検出用の検出器(110)であって、シンチレーター(112)は電離放射線(116)を電磁線(118)、特に可視光、紫外光または赤外光に変換するよう適合され、検出器(110)がさらに少なくとも一つの有機光起電力要素(114)を含み、有機光起電力要素(114)は電磁線(118)を少なくとも一つの電気信号(120)に変換するよう適合されている、検出器。
【請求項2】
シンチレーター(112)が少なくとも一つの有機シンチレーター材料を含む、前記請求項記載の検出器(110)。
【請求項3】
有機光起電力要素(114)が少なくとも一つの有機太陽電池及び/または少なくとも一つの有機フォトダイオード、特には、少なくとも一つの有機太陽電池アレイ及び/または少なくとも一つの有機フォトダイオードアレイを含む、前記請求項のうちの一項記載の検出器(110)。
【請求項4】
電気信号(120)を増幅するための少なくとも一つの増幅器、特には少なくとも一つの有機電気要素及び好ましくは有機トランジスターを含む増幅器をさらに含む、前記請求項のうちの一項記載の検出器(110)。
【請求項5】
電気信号(120)から電離放射線(116)の放射線量についての線量情報を発生するよう適合されている、前記請求項のうちの一項記載の検出器(110)。
【請求項6】
有機光起電力要素(114)が最低でも部分的に可撓性に、特にフィルムとして、好ましくはプラスチックフィルムとして形成されている、前記請求項のうちの一項記載の検出器(110)。
【請求項7】
さらに、少なくとも一つの表示要素(130)を含み、表示要素(130)が電気信号(120)を少なくとも使用者にとって知覚できる一つの出力信号、特には光学的な出力信号に変換するよう適合されている、前記請求項のうちの一項記載の検出器(110)。
【請求項8】
有機光起電力要素(114)が、有機光起電力要素の少なくとも一つのアレイ(124)を含み、表示要素(130)が表示要素の一つのアレイ(132)を含み、有機光起電力要素のアレイ(124)の域から表示要素のアレイ(132)の域への帰属が成り立っている、前記請求項記載の検出器(110)。
【請求項9】
表示要素(130)が少なくとも一つの有機発光要素、特には少なくとも一つの有機光ダイオード、特には有機光ダイオードアレイを含む、前記二つの請求項のうちの一項記載の検出器(110)。
【請求項10】
検出器(110)が層構造を示し、シンチレーター(112)及び有機光起電力要素(114)及び好ましくは表示要素(130)が重なり合って層として配置されている、前記請求項のうちの一項記載の検出器(110)。
【請求項11】
電離放射線(116)を発生する汚染物により潜在的に汚染された表面(144)に取り付けるための被膜(142)であって、前記請求項記載の検出器(110)の少なくとも一つの検出器(110)を有する、被膜(142)。
【請求項12】
電離放射線(116)を発生する汚染物により潜在的に汚染された表面の洗浄のための洗浄器具(148)、特には洗浄布地であって、洗浄器具(148)が最低でも部分的に可撓性に形成されており、且つ、前記請求項記載の検出器(110)の少なくとも一つの検出器(110)を有する、洗浄器具。
【請求項13】
電離放射線(116)を発生させるための少なくとも一つの線源(136)を含み、さらに、放射システム(134)の放射線進路に配置された、前記請求項記載の検出器(110)の少なくとも一つの検出器(110)を含む、放射システム(134)。
【請求項14】
電離放射線(116)を発生させる汚染物、特には、放射性汚染物の検出方法であって、前記請求項記載の検出器(110)の少なくとも一つの検出器(110)が、潜在的に汚染物により汚染された対象に近づけられ、特には検出器(110)が対象にのせられ、且つ/または、対象物を擦るのに使用され、検出器(110)の少なくとも一つの出力信号が監視され、および、出力信号から汚染の存在若しくは不在が結論される、方法。
【請求項15】
放射システム(134)を監視する方法であって、放射システム(134)が、電離放射線(116)を発生するための少なくとも一つの線源(136)を有し、前記請求項記載の検出器(110)の少なくとも一つの検出器(110)が放射システム(134)の放射線進路、特には電離放射線(116)の放射線進路に配置される、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−527101(P2012−527101A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510161(P2012−510161)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002912
【国際公開番号】WO2010/130425
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(312005245)イオン ビーム アプリケーションズ ソシエテ アノニム (アイビーエイ) (1)
【Fターム(参考)】