説明

露光システムおよび電子デバイスの製造方法

【課題】信頼性の高い焦点管理を行うことができる露光システムおよび電子デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】第1のピッチ寸法パターンと、第1のピッチ寸法より長い第2のピッチ寸法パターンと、を含むパターン部が形成されたレチクルに照明光を照射し、照射されたパターン部における像を瞳面に設けられた開口絞り部を介して露光面に投影光学系により投影し、第1のパターンによる0次回折光と1次回折光とが照明光学系の光軸に対して対称に生じ、第2のパターンによる0次回折光と1次回折光とが光軸に対して非対称に生じるように、光軸に対して交差する方向からパターン部に入射する光束を形成し、露光面に露光する。露光されたパターンのピッチ寸法を測定し、測定されたピッチ寸法に基づいて位置ずれ量を演算し、演算された位置ずれ量に基づいてデフォーカス量を演算し、演算されたデフォーカス量に基づいて焦点管理を行う露光システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光システムおよび電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置やフラットパネルディスプレイなどの電子デバイスの製造においては、基体上に薄膜層を積層し、これを所望の形状に加工することで回路パターンを形成するようにしている。そして、積層された薄膜層を所望の形状に加工する場合には、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程を繰り返すことで回路パターンを形成するようにしている。
【0003】
そして、このフォトリソグラフィ工程においては、フォトマスクまたはレチクル(以下、単にレチクルと称する)に形成されたパターンを被処理物(例えば、ウェーハやガラス基板など)上に形成されたレジスト膜に転写するために露光装置が用いられている。
【0004】
この様な露光装置においては、近年の回路パターンの微細化にともない投影光学系の解像度を向上させる必要がある。しかしながら、一般的には、投影光学系の解像度が高くなると焦点深度が浅くなるので、許容されるデフォーカス量が小さくなる。そのため、少ないプロセスマージンのもとで安定した歩留りを維持するために、高精度の焦点管理が必要となってきている。
【0005】
そこで、高精度の焦点管理を行うためにデフォーカス量を測定する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
特許文献1に開示がされた技術は、高低差を有する基板上に転写されたパターンの寸法差または終端部の後退量差からデフォーカス量を測定しようとするものである。
しかしながら、特許文献1に開示がされた技術においては、高低差を有する特殊な基板が必要になるという問題がある。
また、デフォーカス量は投影光学系の結像特性、露光装置のオートフォーカス特性などの装置特性のみならず、被処理物のフラットネス特性(例えば、表面の凹凸分布や反りなど)などによっても変化する。そのため、高低差を有する特殊な基板を用いてデフォーカス量を測定するものとすれば、被処理物のフラットネス特性などの影響を排除することができず焦点管理の信頼性が低下するおそれがある。
また、近年においては、パターンを測定することができ、且つ符号付きのデフォーカス量を簡単に精度良く測定することができるレチクルが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。しかしながら、この様な特殊なレチクルは製作が難しいという課題を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−30466号公報
【特許文献2】特開2002−55435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、信頼性の高い焦点管理を行うことができる露光システムおよび電子デバイスの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、第1のピッチ寸法のパターンと、前記第1のピッチ寸法より長い第2のピッチ寸法のパターンと、を含むパターン部が形成されたレチクルを載置するステージと、前記パターン部に向けて光束を出射する照明光学系と、前記光束が照射されたパターン部における像を瞳面に設けられた開口絞り部を介して被処理物の露光面に投影する投影光学系と、前記第1のピッチ寸法のパターンによる回折で0次回折光と1次回折光とが前記照明光学系の光軸に対して対称に生じ、前記第2のピッチ寸法のパターンによる回折で0次回折光と1次回折光とが前記光軸に対して非対称に生じるように、前記光軸に対して交差する方向から前記パターン部に入射する光束を形成する光束形成部と、前記露光面に露光された前記パターンのピッチ寸法を測定する(パターンの位置を測定する)測定部と、前記測定されたピッチ寸法(パターンの位置)に基づいて位置ずれ量を演算するとともに、前記演算された位置ずれ量に基づいてデフォーカス量を演算する演算部と、前記演算されたデフォーカス量に基づいて焦点管理を行う制御部と、を備えたことを特徴とする露光システムが提供される。
【0009】
また、本発明の他の一態様によれば、レチクルのパターン部に向けて光束を出射させ、前記光束が照射されたパターン部の像を被処理物の露光面に投影させることで露光を行う工程を有する電子デバイスの製造方法であって、前記露光を行う工程において、前記パターン部に含まれる第1のピッチ寸法のパターンに照明光学系の光軸に対して交差する方向から光束を照射し、0次回折光と1次回折光とを前記光軸に対して対称に生じさせ、前記第1のピッチ寸法より長い第2のピッチ寸法のパターンに前記光軸に対して交差する方向から光束を照射し、0次回折光と1次回折光とを前記光軸に対して非対称に生じさせ、前記第1のピッチ寸法のパターンにより前記露光面に露光されたパターンのピッチ寸法(パターンの位置)と、前記第2のピッチ寸法のパターンにより前記露光面に露光されたパターンのピッチ寸法(パターンの位置)と、に基づいて位置ずれ量を演算することを特徴とする電子デバイスの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、信頼性の高い焦点管理を行うことができる露光システムおよび電子デバイスの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態に係る露光システムを例示するための模式図である。
【図2】照明形状を例示するための模式図である。
【図3】非対称照明を用いた場合の投影を例示するための模式図である。
【図4】瞳面に設けられた開口に入射する回折光の様子を例示するための模式図である。
【図5】瞳面に設けられた開口に入射する回折光の様子をシミュレーションにより求めたものの模式図である。
【図6】瞳面に設けられた開口を通過する光束とパターンの位置ずれとの関係を例示するための模式図である。
【図7】瞳面に設けられた開口を通過する光束とパターンの位置ずれとの関係を例示するための模式図である。
【図8】デフォーカス量と位置ずれ量との関係を例示するための模式グラフ図である。
【図9】デフォーカス量と位置ずれ量との関係を例示するための模式グラフ図である。
【図10】デフォーカス量と位置ずれ量との関係を例示するための模式グラフ図である。
【図11】デフォーカス量と位置ずれ量との関係を例示するための模式グラフ図である。
【図12】デフォーカス量と位置ずれ量との関係を例示するための模式グラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施の形態に係る露光システムを例示するための模式図である。
図1に示すように、露光システム1には、照明光学系4、レチクルステージ6、投影光学系10、基板ステージ11、焦点管理部20が設けられている。
【0013】
また、レチクル101のパターン部に向けて光束を出射する照明光学系4には、成形された光源2、フライアイレンズ3が設けられている。
光源2は、レーザ光源などの遠紫外線を出射するものとすることができる。例えば、波長が248nmのKrFエキシマレーザ光源、波長が193nmのArFエキシマレーザ光源、波長が157nmのF2レーザ光源などとすることができ、波長が13〜14nmのEUV(Extreme Ultra-Violet:極端紫外)光源でもよい。
光源2の出射側にはフライアイレンズ3が設けられている。フライアイレンズ3は、複数の小レンズが集積されるようにして構成されている。そして、光源2から出射した光束がフライアイレンズ3を透過することで光束断面における光強度分布が均一となるようになっている。
【0014】
フライアイレンズ3(照明光学系4)の出射側にはコンデンサレンズ5が設けられている。コンデンサレンズ5は、入射した光束を略平行な光束に変換する。
コンデンサレンズ5の出射側には、レチクル101を載置、保持するレチクルステージ6が設けられている。
【0015】
レチクル101は、例えば、透明基板102と、透明基板102の表面に形成されたパターン部(パターン103(回路パターンを転写させるためのパターン)、パターン104(デフォーカス量を演算するためのパターン)を含む)を有するものとすることができる。透明基板102は、照射された光束を透過させる材料から形成されている。透明基板102は、例えば、石英ガラスなどから形成されるものとすることができる。また、パターン103、パターン104は、照射された光束を遮光または減衰させる材料から形成されるものとすることができる。パターン103、パターン104は、例えば、クロム(Cr)やモリブデンシリサイド(MoSi)などから形成されるものとすることができる。
【0016】
また、後述するデフォーカス量の演算に用いられるパターン104には、所定のピッチ寸法のパターン104a(後述する「基準パターン」を露光することができるパターン)と、パターン104aのピッチ寸法より長いピッチ寸法のパターン104b(後述する(6)式の関係を満たすようなパターンを露光することができるパターン)とが形成されている。パターン104は、所定のピッチ寸法を有するライン&スペースパターンとすることができる。なお、パターン104の詳細に関しては後述する。
【0017】
レチクルステージ6の出射側には、投影光学系10が設けられている。投影光学系10には、レンズ7、レンズ9が設けられ、レチクル101に形成されたパターン103、パターン104を所定の倍率で被処理物100(例えば、ウェーハやガラス基板など)の露光面に転写する。投影光学系10には、開口絞り部8が設けられている。開口絞り部8は開口8aを有し、開口8aが投影光学系10の瞳面に設けられるようになっている。すなわち、投影光学系10は、光束が照射されたパターン部における像を瞳面に設けられた開口絞り部8を介して被処理物100の露光面に投影する。
なお、投影光学系10に設けられる要素やその数などは例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
例えば、図1に例示をした投影光学系10は、2枚の等価レンズ(レンズ7、レンズ9)を用いて簡略的に表しているが、等価レンズの数を変更したり、反射鏡などの他の要素を加えたりすることもできる。
【0018】
投影光学系10の出射側には、基板ステージ11が設けられている。基板ステージ11の被処理物100が載置される面(載置面)には図示しない保持手段(例えば、静電チャックなど)が設けられ、載置された被処理物100を保持することができるようになっている。また、光軸12に略垂直な2次元平面内(略水平面内)において載置された被処理物100の位置を変化させることができるようになっている。また、投影光学系10の光軸12に沿った方向(略鉛直方向)において載置された被処理物100の位置を変化させることができるようになっている。また、光軸12に略垂直な2次元平面(略水平面)に対して載置された被処理物100を傾斜させることができるようにすることもできる。なお、基板ステージ11には、図示しない座標測定手段が設けられ載置された被処理物100の位置情報が検知できるようになっている。
【0019】
焦点管理部20には、光束形成部21、測定部22、演算部23、制御部24が設けられている。
光束形成部21は、フライアイレンズ3の出射側に設けられ、フライアイレンズ3から出射する光束の一部を遮る遮光板と、遮光板の位置を変化させる図示しない駆動部とを備えている。そして、遮光板により光束の一部が遮られることで、光軸12に対して非対称な極(輝点)を有する照明(以下、非対称照明と称する)が構成されるようになっている。 なお、非対称照明から出射した光束はレチクル101の主面に対して斜め方向から入射することになる。すなわち、非対称照明から出射した光束は光軸12に対して交差する方向からパターン部に入射することになる。
【0020】
この場合、光束形成部21は、パターン104aによる回折で0次回折光と1次回折光とが照明光学系4の光軸12に対して対称に生じ、パターン104bによる回折で0次回折光と1次回折光とが光軸12に対して非対称に生じるように、光軸12に対して交差する方向からパターン部に入射する光束を形成する。
【0021】
例えば、円形形状の照明、いわゆる変形照明(例えば、双極型、四極型、六極型、環状型などの照明)などのような光軸12に対して対称な形状や極を有する照明(以下、対称照明と称する)から出射された光束の一部を遮光板で遮ることで、非対称照明を構成するようなものを例示することができる。このようにすれば、図示しない駆動部により遮光板を退避させることで、対称照明とすることもできる。なお、遮光板は、所定形状の透光部(例えば、開口など)と遮光部とを備えたものとすることもできる。
【0022】
図2は、照明形状を例示するための模式図である。なお、図2(a)は双極型の変形照明(対称照明)を例示するための模式図、図2(b)は非対称照明を例示するための模式図である。また、図中のσはコヒーレンスファクタと呼ばれる開口数NAで正規化された値であり、光軸12から極(輝点)13a、13bの中心までの寸法を表し、2Δσは極13a、13bの幅寸法を表している。
また、図2(a)、図2(b)は、扇形の極(輝点)13a、13bの場合であるが、図2(c)、図2(d)のように円形の極(輝点)13a1、13b1の場合も同様である。すなわち、極(輝点)の形状は適宜選択することができる。
図2に示すように、極13a、13bは円環の2本の半径とその間にある2つの円弧により囲まれた形状を呈している。極13aと極13bは実質的に同一の形状を有し、同心円上に等間隔に配設されている。この場合、例えば、極13aの側を遮光することで双極型の変形照明(対称照明)を非対称照明とすることができる。
【0023】
以上に例示をした光束形成部21は、遮光板を備えたものであるがこれに限定されるわけではない。例えば、複数の光源をマトリクス状に配列し、光束を出射させる光源を選択することで対称照明としたり、非対称照明としたりすることができるものとすることもできる。また、複数の光源からなる対称照明の一部の光源からの出射を停止させることで非対称照明とすることができるようなものであってもよい。
【0024】
測定部22は、被処理物100の露光面に露光されたパターンのピッチ寸法(パターンの位置)を測定する。
測定部22は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)などとすることができる。ただし、これに限定されるわけではなく、被処理物100の露光面に露光されたパターンのピッチ寸法(パターンの位置)を測定可能なものを適宜選択することができる。
【0025】
演算部23は、測定部22により測定されたピッチ寸法(パターンの位置)に基づいて位置ずれ量を演算するとともに、演算された位置ずれ量に基づいてデフォーカス量を演算する。
例えば、演算部23において、第1のピッチ寸法のパターンにより露光面に露光されたパターン(基準パターン)のピッチ寸法(パターンの位置)と、第1のピッチ寸法を超え、第1のピッチ寸法の2倍未満となる第2のピッチ寸法のパターンにより露光面に露光されたパターンのピッチ寸法(パターンの位置)と、の差を演算することで位置ずれ量を求めるようにすることができる。なお、「基準パターン」などに関しては後述する。
そして、演算された位置ずれ量と、予め求められた位置ずれ量とデフォーカス量との関係からデフォーカス量を演算する。なお、デフォーカス量の演算に用いられるパターンの位置ずれ量とデフォーカス量との関係に関しては後述する。
【0026】
制御部24は、演算部23により演算されたデフォーカス量に基づいて焦点管理を行う。例えば、デフォーカス量が許容範囲外となった場合には、デフォーカス量が許容範囲内に収まるように焦点調整を行うようにすることができる。この場合、基板ステージ11の光軸12に沿った方向(略鉛直方向)の位置を制御することで焦点調整を行うようにすることができる。
また、前述した光束形成部21を制御することで、対称照明と非対称照明との切り換えを行うようにすることができる。
【0027】
なお、焦点調整は、基板ステージ11の光軸12に沿った方向(略鉛直方向)に対する位置制御に限定されるわけではない。例えば、投影光学系10に設けられたレンズなどの位置制御を行うことで焦点調整を行うようにすることもできる。
【0028】
次に、デフォーカス量の演算について例示をする。
図3は、非対称照明を用いた場合の投影を例示するための模式図である。なお、図3(a)は、所定のピッチ寸法のパターン104aの場合、図3(b)は、パターン104aのピッチ寸法より長いピッチ寸法のパターン104cの場合である。なお、図3(b)に例示をしたものの場合には、パターン104cのピッチ寸法をパターン104aのピッチ寸法の略2倍としている。
【0029】
図3(a)に示すように、所定のピッチ寸法のパターン104aの場合には回折角が大きくなるので、例えば、極(輝点)13bから直接入射する0次回折光と、回折して入射する1次回折光とが瞳面に設けられた開口8aに入射する。そのため、被処理物100の露光面には0次回折光と1次回折光とによる投影が行われることになる。
【0030】
図3(b)に示すように、ピッチ寸法が長いパターン104cの場合には、回折角が小さくなるので、例えば、極(輝点)13bから直接入射する0次回折光と、回折して入射する1次回折光、2次回折光とが瞳面に設けられた開口8aに入射する。そのため、被処理物100の露光面には0次回折光、1次回折光、2次回折光とによる投影が行われることになる。
この様に、パターンのピッチ寸法を長くするほど高次の回折光が瞳面に設けられた開口8aに入射することになる。
【0031】
図4は、瞳面に設けられた開口8aに入射する回折光の様子を例示するための模式図である。なお、図中に示す寸法Sは瞳面内における回折光の間隔を表している。
図5は、瞳面に設けられた開口8aに入射する回折光の様子をシミュレーションにより求めたものの模式図である。なお、図5においては、色の濃い部分ほど光の強度が高いことを示している。
また、レチクルに形成されたパターンのピッチ寸法と、被処理物に露光されるパターンのピッチ寸法Pとの関係は以下のようになる。
例えば、等倍露光の場合には、レチクルに形成されたパターンのピッチ寸法と被処理物に露光されるパターンのピッチ寸法Pとが同じ寸法になる。
また、縮小露光の場合には、被処理物に露光されるパターンのピッチ寸法Pを露光倍率で除した値がレチクルに形成されたパターンのピッチ寸法となる。例えば、被処理物に露光されるパターンのピッチ寸法をP、露光倍率を1/4とすると、レチクルに形成されたパターンのピッチ寸法は4Pとなる。
【0032】
また、被処理物100の露光面に露光されるパターンのピッチ寸法(ライン&スペースパターンのピッチ寸法)Pに関する一般式は、以下の(1)式で表される。
【数1】

ここで、Sは瞳面内における回折光の間隔、NAは開口数、λは光の波長である。
【0033】
図4(a)は、被処理物100の露光面に露光されるパターンのピッチ寸法Pが最も小さい場合である。例えば、P=Pの場合である。ここで、露光されるパターンのピッチ寸法Pは、レチクルに形成されたパターン104の最小ピッチ寸法に露光倍率を乗じたピッチ寸法である。
また、瞳面に設けられた開口8aの中心(光軸12)に対して対称な位置に0次回折光と1次回折光とが入射する場合である。
【0034】
このような場合には、光軸12から極(輝点)の中心までの寸法σと、回折光の間隔Sとの間には、S=2σとなるような関係がある。
そのため、これを(1)式に代入すると以下の(2)式が求められる。
【数2】

すなわち、(2)式を満たすパターンを露光させることができるパターン104を有するレチクル101を用いれば、瞳面に設けられた開口8aに0次回折光と1次回折光とを入射させることができることになる。また、光軸12に対して対称な位置に0次回折光、1次回折光とを入射させることができることになる。
図5(a)は、この時の様子をシミュレーションにより求めたものである。図5(a)中、左側に表されたものは0次回折光、右側に表されたものは1次回折光である。図5(a)からは、中心(光軸12)に対して対称な位置に0次回折光、1次回折光が入射していることが分かる。
このような場合には、0次回折光、1次回折光が被処理物100に到達することになる。なお、2次回折光などの高次の回折光も発生しているが、開口8aの外部において開口絞り部8に入射するため被処理物100に到達することが妨げられることになる。
【0035】
図4(b)は、被処理物100の露光面に露光されるパターンのピッチ寸法Pが図4(a)の場合よりは長い場合である。例えば、P<P<2Pの場合である。また、瞳面に設けられた開口8aの中心(光軸12)に対して非対称な位置に0次回折光と1次回折光とが入射するが、2次回折光が開口8aの外縁近傍において遮られる場合である。
【0036】
このような場合には、寸法σと回折光の間隔Sとの間には、2S=σ+1+Δσとなるような関係がある。
そのため、これを(1)式に代入すると以下の(3)式が求められる。
【数3】

すなわち、(3)式を満たすパターンを露光させることができるパターン104を有するレチクル101を用いれば、瞳面に設けられた開口8aに0次回折光と1次回折光とを入射させることができることになる。また、光軸12に対して非対称な位置に0次回折光、1次回折光を入射させることができることになる。
【0037】
図5(b)は、この時の様子をシミュレーションにより求めたものである。図5(b)中、左側に表されたものは0次回折光、右側に表されたものは1次回折光である。
【0038】
図5(b)からは、中心(光軸12)に対して非対称な位置に0次回折光、1次回折光が入射していることが分かる。
このような場合には、0次回折光、1次回折光が被処理物100に到達することになる。なお、2次回折光などの高次の回折光も発生しているが、開口8aの外部において開口絞り部8に入射するため被処理物100に到達することが妨げられることになる。
【0039】
図4(c)は、被処理物100の露光面に露光されるパターンのピッチ寸法Pが図4(b)の場合よりは長い場合である。例えば、P<P<2Pであって図4(b)の場合よりは長い場合である。また、瞳面に設けられた開口8aの中心(光軸12)に対して非対称な位置に0次回折光と1次回折光とが入射し、開口8aの外縁近傍において2次回折光の一部が入射する場合である。
【0040】
このような場合には、寸法σと回折光の間隔Sとの間には、2S=σ+1となるような関係がある。
そのため、これを(1)式に代入すると以下の(4)式が求められる。
【数4】

すなわち、(4)式を満たすパターンを露光させることができるパターン104を有するレチクル101を用いれば、瞳面に設けられた開口8aに0次回折光および1次回折光と、2次回折光の一部とを入射させることができることになる。また、光軸12に対して非対称な位置に0次回折光、1次回折光、2次回折光を入射させることができることになる。
【0041】
図5(c)は、この時の様子をシミュレーションにより求めたものである。図5(c)中、左側に表されたものは0次回折光、中央に表されたものは1次回折光、右側に表されたものは2次回折光である。
図5(c)からは、中心(光軸12)に対して非対称な位置に0次回折光、1次回折光、2次回折光が入射していることが分かる。また、0次回折光、1次回折光は光の強度が高いが、2次回折光は光の強度が低くその一部しか入射していないことも分かる。
【0042】
このような場合には、0次回折光および1次回折光と、2次回折光の一部が被処理物100に到達することになる。なお、3次回折光以上の高次の回折光も発生しているが、開口8aの外部において開口絞り部8に入射するため被処理物100に到達することが妨げられることになる。
【0043】
図4(d)は、被処理物100の露光面に露光されるパターンのピッチ寸法Pが2P(図4(a)の場合の2倍のピッチ寸法)の場合である。すなわち、P=2Pの場合である。また、瞳面に設けられた開口8aの中心(光軸12)に対して対称な位置に0次回折光と2次回折光とが入射し、開口8aの中心(光軸12)に1次回折光が入射する場合である。
【0044】
このような場合には、寸法σと回折光の間隔Sとの間には、2S=2σとなるような関係がある。
そのため、これを(1)式に代入すると以下の(5)式が求められる。
【数5】

すなわち、(5)式を満たすパターンを露光させることができるパターン104を有するレチクル101を用いれば、瞳面に設けられた開口8aに0次回折光、1次回折光、2次回折光を入射させることができることになる。また、光軸12に対して対称な位置に0次回折光、2次回折光を入射させることができるとともに、開口8aの中心(光軸12)に1次回折光を入射させることができることになる。
【0045】
図5(d)は、この時の様子をシミュレーションにより求めたものである。図5(d)中、左側に表されたものは0次回折光、中央に表されたものは1次回折光、右側に表されたものは2次回折光である。
図5(d)からは、中心(光軸12)に対して対称な位置に0次回折光、2次回折光が入射していることが分かる。また、中心(光軸12)には1次回折光が入射していることが分かる。また、0次回折光、1次回折光は光の強度が高いが、2次回折光は光の強度が低いことも分かる。
【0046】
このような場合には、0次回折光、1次回折光、2次回折光が被処理物100に到達することになる。なお、3次回折光以上の高次の回折光も発生しているが、開口8aの外部において開口絞り部8に入射するため被処理物100に到達することが妨げられることになる。
【0047】
すなわち、このことは、レチクル101に形成されたパターン104のピッチ寸法を変化させれば、瞳面において回折光が入射する位置を変えることができることを意味する。そのため、レチクル101に形成されるパターン104のピッチ寸法を適宜選択することで、瞳面に設けられた開口8aを通過させる回折光を選別することができる。
【0048】
次に、デフォーカスと位置ずれ(パターンシフト)との関係について例示をする。
なお、2光束(0次回折光と1次回折光)が瞳面に設けられた開口8aを通過する場合を例に挙げて説明をする。
図6は、瞳面に設けられた開口8aを通過する光束とパターンの位置ずれとの関係を例示するための模式図である。
図6に例示をするものは、瞳面に設けられた開口8aの中心(光軸12)に対して0次回折光と1次回折光とが対称となるように通過する場合である。例えば、図4(a)において例示をしたような場合である。この場合、0次回折光が光軸12となす角度αと、1次回折光が光軸12となす角度βとが等しくなる。
この様な場合、焦点面14から見て光束の進行方向の位置においては、0次回折光と1次回折光とが強め合う点(例えば、0次回折光の「山」と1次回折光の「山」とが重なる点)、0次回折光と1次回折光とが弱め合う点(例えば、0次回折光の「山」と1次回折光の「谷」とが重なる点)は光軸12上に現れる。そのため、デフォーカスしたとしてもパターンの位置ずれは生じないことになる。
【0049】
図7も、瞳面に設けられた開口8aを通過する光束とパターンの位置ずれとの関係を例示するための模式図である。
図7に例示をするものは、0次回折光と1次回折光とが光軸12に対して非対称となるように通過する場合である。例えば、図4(b)や図4(c)において例示をしたような場合である。この場合、0次回折光が光軸12となす角度αと、1次回折光が光軸12となす角度βとが異なるものとなる。
この様な場合、焦点面14から見て光束の進行方向の位置においては、0次回折光と1次回折光とが強め合う点(例えば、0次回折光の「山」と1次回折光の「山」とが重なる点)、0次回折光と1次回折光とが弱め合う点(例えば、0次回折光の「山」と1次回折光の「谷」とが重なる点)は光軸12上からずれた位置に現れるようになる。また、焦点面14から離れるほど位置ずれ量(パターンシフト量)γが大きくなる。この様に光軸12に対して非対称となるように通過する複数の光束を用いればパターンの位置ずれを発生させることができる。そして、位置ずれ量γを演算すれば、予め求められた位置ずれ量とデフォーカス量との関係(例えば、図10、図11を参照)からデフォーカス量(焦点面14からの距離)を演算することができる。
【0050】
以上に例示をしたように、非対称照明を用い、パターン104のピッチ寸法を適宜選択すれば、瞳面に設けられた開口8aを通過させる回折光を選別することができる。この場合、光軸12に対して対称となるように通過する回折光を選別すれば、デフォーカスしても位置ずれが生じないパターン(基準パターン)を得ることができる。また、光軸12に対して非対称となるように通過する回折光を選別すれば、デフォーカス量に応じて位置ずれ量が変化するパターンを得ることができる。そして、デフォーカスしても位置ずれが生じないパターン(基準パターン)の位置を基準とすれば、位置ずれ量を知ることができる。
【0051】
次に、デフォーカス量と位置ずれ量(パターンシフト量)との関係について例示をする。
図8〜図12は、デフォーカス量と位置ずれ量との関係を例示するための模式グラフ図である。なお、図8〜図12は、デフォーカス量と位置ずれ量との関係をシミュレーションにより求めたものである。また、図中の「A」は被処理物100に形成されるパターン(ライン&スペースパターン)の「ライン部分」の左端の位置、「B」は「ライン部分」の右端の位置、「C」は「ライン部分」の中心の位置である。
【0052】
図8は、瞳面に設けられた開口8aの中心(光軸12)に対して0次回折光と1次回折光とが対称となるように通過する場合である。例えば、図4(a)、図6において例示をしたような場合である。
この様な場合には、図8に示すように、デフォーカス量に対するパターンの位置座標が略一定となる。そのため、デフォーカスしたとしてもパターンの位置ずれは生じないことになるので、結像されたパターンを「基準パターン」とすることができる。
【0053】
図9は、瞳面に設けられた開口8aの中心(光軸12)に対して0次回折光と2次回折光とが対称となるように通過し、開口8aの中心(光軸12)を1次回折光が通過する場合である。例えば、図4(d)において例示をしたような場合である。
この様な場合には、図9に示すように、デフォーカス量に応じてパターンの位置座標が変化する。そのため、位置ずれ量からデフォーカス量を知ることができる。しかしながら、「A」と「B」との間の距離がばらつくようになるため、投影されるパターンの「ライン部分」の寸法がばらつくおそれがある。そのため、後述する位置ずれ量、ひいてはデフォーカス量の演算精度が劣化するおそれがある。
【0054】
また、図8に例示をしたように、2光速のみが瞳面に設けられた開口8aを通過する場合には、瞳面の中心(光軸12)に対して2光束が対称となるように通過すれば、それぞれの光束の強度は位置ずれ(パターンシフト)にはほとんど影響を与えない。しかしながら、図9に例示をしたように、3光速以上が瞳面に設けられた開口8aを通過するようになると、最も強度の高い2つの光束による結像が位置ずれ量に大きな影響を及ぼす。
ここで、一般的には高次の次数になるほど回折効率が低下するため、0次回折光、1次回折光よりは2次回折光の影響が小さくなる。そのため、2次回折光が入射しても位置ずれ量の演算、ひいてはデフォーカス量の演算に影響がないようにも思える。しかしながら、2次回折光の影響はゼロではなく、1次回折光と2次回折光とによる位置ずれ(パターンシフト)も生じる。そのため、1次回折光と2次回折光とにより生じる位置ずれにより、0次回折光と1次回折光とにより生じる位置ずれが一部打ち消され、2次回折光が無い場合と比べて位置ずれ量がかえって減少してしまうことになる。そのため、2次以上の回折光が開口絞り部8の開口8aを実質的に通過しないようにすることが好ましい。
【0055】
図10は、瞳面に設けられた開口8aの中心(光軸12)に対して0次回折光と1次回折光とが非対称となるように通過し、2次回折光が開口8aの外縁近傍において遮られる場合である。例えば、図4(b)において例示をしたような場合である。
この様な場合には、図10に示すように、デフォーカス量に応じてパターンの位置座標が変化する。そのため、位置ずれ量からデフォーカス量を知ることができる。また、「A」と「B」との間の距離が略一定となるので、投影されるパターンの「ライン部分」の寸法も略一定となる。そのため、後述する位置ずれ量、ひいてはデフォーカス量の演算精度を向上させることができる。
【0056】
図11は、瞳面に設けられた開口8aの中心(光軸12)に対して0次回折光と1次回折光とが非対称となるように通過し、開口8aの外縁近傍を2次回折光の一部が通過する場合である。例えば、図4(c)において例示をしたような場合である。
この様な場合には、図11に示すように、デフォーカス量に応じてパターンの位置座標が変化する。そのため、位置ずれ量からデフォーカス量を知ることができる。また、「A」と「B」との間の距離が略一定となるので、投影されるパターンの「ライン部分」の寸法も略一定となる。そのため、後述する位置ずれ量、ひいてはデフォーカス量の演算精度を向上させることができる。
【0057】
図12は、パターン104が「孤立パターン」の場合である。
パターン104のピッチ寸法を大きくすれば、位置ずれ量を大きくすることができる可能性がある。そのため、ピッチ寸法が大きくなったときの極限として、「ライン部分」が孤立するパターン(孤立パターン)についてもデフォーカス量と位置ずれ量との関係をシミュレーションにより求めることにした。
この様な場合には、図12に示すように、デフォーカス量に応じてパターンの位置座標が変化する。そのため、位置ずれ量からデフォーカス量を知ることができる。しかしながら、「A」と「B」との間の距離がばらつくようになるため、投影されるパターンの「ライン部分」の寸法がばらつくおそれがある。そのため、後述する位置ずれ量、ひいてはデフォーカス量の演算精度が劣化するおそれがある。
【0058】
また、パターン104のピッチ寸法を長くすれば、1次回折光が0次回折光側に寄ってくる(図4を参照)。そのため、図7を参照すれば、位置ずれ量(パターンシフト量)をより大きくすることができるようにも思える。しかしながら、3次回折光、4次回折光のようなより高次の回折光が瞳面に設けられた開口8aを通過するようになるため、図9の場合と同様に位置ずれ量(パターンシフト量)をそれほど大きくできないばかりか、図12で示したようにパターン境界AやBのリニアリティーが低下し、パターンの位置測定精度に悪影響を及ぼすおそれもある。そのため、2次以上の回折光が開口絞り部8の開口8aを実質的に通過しないようにすることが好ましい。
【0059】
以上に例示をしたものを総合的に考慮すると、パターンの位置ずれ量からデフォーカス量を知るためには、非対称照明を用い、パターン104のピッチ寸法を適切な範囲とする必要がある。この場合、図10、図11に例示をしたように、パターン104のピッチ寸法は、以下の(6)式の関係を満たすようなピッチ寸法Pを有するパターンを露光することができるようにすることが好ましい。
【数6】

ここで、露光されるパターンのピッチ寸法Pは、レチクルに形成されたパターン104の最小ピッチ寸法に露光倍率を乗じたピッチ寸法である。
【0060】
なお、図11に例示をしたように、露光されるパターンのピッチ寸法Pが前述したピッチ寸法Pの2倍より若干短い場合、すなわち、2次回折光が瞳面に設けられた開口8aを通過するかしないかの境目付近にあるピッチ寸法の場合には、2次回折光の影響を無視することができる。ただし、図7から分かるように、1次回折光が光軸12となす角度βが小さくなってしまうため位置ずれ量(パターンシフト量)は、図10に例示をした場合と比べて小さくなる。一方、位置ずれ量を演算することを考慮すると、「基準パターン」に近い結像がなされるように角度βはある程度大きい方が好ましい。そのため、これらはトレードオフの関係にあるので、実際に必要となる精度、感度などに基づいてパターン104のピッチ寸法を(6)式の関係を満たす範囲の中で適宜選択するようにする。
【0061】
この様にして、選択されたパターン104のピッチ寸法における位置ずれ量とデフォーカス量との関係(例えば、図10や図11に例示をしたような関係)を予め求めておけば、位置ずれ量に基づいてデフォーカス量を演算することができる。なお、位置ずれ量とデフォーカス量との関係は、実験で求めるようにすることもできるし、シミュレーションなどにより求めるようにすることもできる。
【0062】
また、パターン104には、「基準パターン」が結像されるパターン104a(P=Pとなるパターンが露光される場合)と、位置ずれ量を検出するための(6)式の関係を満たすようなパターン104b(P<P<2Pとなるパターンが露光される場合)と、が形成されるようにすることができる。
なお、パターン104は必要に応じて設けるようにすればよい。例えば、製品の回路パターンを転写させるためのパターン103には、細かなピッチ寸法のパターンと、比較的粗いピッチ寸法のパターンとが混在している場合がある。そのため、パターン104として用いることのできる部分を選択するようにすれば、パターン103のみを有するレチクル101とすることもできる。
【0063】
すなわち、第1のピッチ寸法のパターン(P=Pとなるパターンが露光される場合)と、第1のピッチ寸法より長い第2のピッチ寸法のパターン(P<P<2Pとなるパターンが露光される場合)と、を含むパターン部が形成されていればよい。この場合、第2のピッチ寸法は、2次以上の回折光が開口絞り部8を実質的に通過しないように設定されていることにもなる。
【0064】
次に、露光システム1の作用とともに露光の手順について例示をする。
まず、パターン103、パターン104が設けられたレチクル101がレチクルステージ6に載置、保持される。そして、図示しない搬送手段により被処理物100(例えば、ウェーハやガラス基板など)が搬入され、基板ステージ11の載置面に載置、保持される。
【0065】
次に、制御部24からの指令に基づいて、光束形成部21の遮光板によりフライアイレンズ3から出射する光束の一部が遮られる。すなわち、非対称照明を構成させる。
非対称照明から出射した光束は、光軸12に対して交差する方向からパターン部に入射する。この際、レチクルステージ6により、光軸12に対して交差する方向から入射する光束がパターン104に入射するようにレチクル101の位置が制御される。
なお、露光面には、基準パターン(例えば、パターン104a)、位置ずれ測定用のパターン104があり、一度に露光される。
【0066】
レチクル101を透過した光束は投影光学系10に入射し、投影光学系10によりパターン104が所定の倍率で被処理物100の露光面に露光される。
次に、図示しない搬送手段により被処理物100が測定部22に移載される。
測定部22においては、被処理物100の露光面に露光されたパターンのピッチ寸法(パターンの位置)が測定される。
測定されたピッチ寸法(パターンの位置)は、電気信号に変換され演算部22に送られる。
【0067】
次に、演算部23において、測定部22で測定されたピッチ寸法(パターンの位置)に基づいて、位置ずれ量とデフォーカス量が演算される。
すなわち、測定されたピッチ寸法(パターンの位置)から位置ずれ量が演算され、演算された位置ずれ量と、予め求められた位置ずれ量とデフォーカス量との関係からデフォーカス量が演算される。
なお、前述したように位置ずれ量とデフォーカス量との関係(例えば、図10や図11に例示をしたような関係)は、実験やシミュレーションなどにより予め求めることができる。そのため、演算された位置ずれ量と、予め求められた位置ずれ量とデフォーカス量との関係からデフォーカス量を演算することができる。
【0068】
次に、演算されたデフォーカス量が所定の許容範囲内にない場合には、焦点位置の調整が行われる。この場合、例えば、制御部24からの指令に基づいて、基板ステージ11の光軸12に沿った方向(略鉛直方向)の位置を制御することで焦点位置の調整を行うようにすることができる。
【0069】
次に、制御部24からの指令に基づいて、光束形成部21の遮光板が退避する。すなわち、非対称照明を対称照明に切り換える。
また、レチクルステージ6により、入射する光束がパターン103に入射するようにレチクル101の位置が制御される。
その後、被処理物100の露光面(レジスト膜上)にパターン103を転写する。
すなわち、まず、図示しない搬送手段により被処理物100が搬入され、基板ステージ11の載置面に載置、保持される。
次に、光源2から光束が出射され、フライアイレンズ3を透過させることで光束断面における光強度分布が均一となるようにされる。フライアイレンズ3を透過した光束はコンデンサレンズ5により略平行な光束に変換される。コンデンサレンズ5から出射した光束はレチクル101のパターン103に入射する。
レチクル101のパターン103を透過した光束は投影光学系10に入射し、投影光学系10によりパターン103が所定の倍率で被処理物100の露光面(レジスト膜上)に転写される。
【0070】
そして、基板ステージ11により被処理物100の位置を変化させて、被処理物100の露光面の複数の位置にパターン103を転写する。パターン103の転写が終了した被処理物100は、図示しない搬送手段により搬出される。
【0071】
以上例示をしたように、本実施の形態においては、パターン104により露光を行い、露光されたパターンの位置ずれ量からデフォーカス量を演算し、必要に応じて焦点位置の調整を行うようにすることができる。そのため、投影光学系10の結像特性、オートフォーカス特性などの装置特性のみならず、被処理物100のフラットネス特性などの影響をも排除することができる。その結果、信頼性の高い焦点管理を行うことができる。
また、パターン104は、ピッチ寸法にだけ注意を払って製作すれば良いので、製作が容易である。また、製品となる回路パターンを転写させるためのパターン103にパターン104として用いることのできる部分が含まれている場合には、通常用いるレチクルをそのまま用いることができる。そのため、高低差を有する特殊な基板やレチクルなどを製作する場合と比べて製作コストを大幅に低減させることができる。
【0072】
次に、本実施の形態に係る電子デバイスの製造方法について例示をする。
本実施の形態に係る電子デバイスの製造方法としては、一例として、半導体装置の製造方法を例示することができる。
ここで、半導体装置の製造は、成膜・レジスト塗布・露光・現像・エッチング・レジスト除去などを行うことで基板(ウェーハ)表面に回路パターンを形成する工程、回路パターンの検査工程、洗浄工程、熱処理工程、不純物導入工程、拡散工程、平坦化工程などの複数の工程を繰り返すことにより行われる。この場合、露光を行う際に、前述した露光システム1を用いるようにする。また、前述した露光手順に基づいて露光を行うようにすることもできる。なお、露光システム1や露光手順に関しては前述したものと同様とすることができる。
【0073】
例えば、レチクル101のパターン部に向けて光束を出射させ、光束が照射されたパターン部の像を被処理物100の露光面に投影させることで露光を行う工程を有する電子デバイスの製造方法であって、露光を行う工程において、パターン部に含まれる第1のピッチ寸法のパターン104aに照明光学系4の光軸12に対して交差する方向から光束を照射し、0次回折光と1次回折光とを光軸12に対して対称に生じさせ、第1のピッチ寸法より長い第2のピッチ寸法のパターン104aに光軸12に対して交差する方向から光束を照射し、0次回折光と1次回折光とを光軸12に対して非対称に生じさせ、第1のピッチ寸法のパターン104aにより露光面に露光されたパターンのピッチ寸法(パターンの位置)と、第2のピッチ寸法のパターン104bにより前記露光面に露光されたパターンのピッチ寸法(パターンの位置)と、に基づいて位置ずれ量を演算するようにすることができる。
【0074】
また、演算された位置ずれ量と、予め求められた位置ずれ量とデフォーカス量との関係からデフォーカス量を演算するようにすることができる。
また、演算されたデフォーカス量が許容範囲内に収まるように焦点調整を行うようにすることができる。
なお、露光以外のものは、既知の各工程における技術を適用することができるので、それらの説明は省略する。
【0075】
また、一例として、半導体装置の製造を例示したがこれに限定されるわけではない。露光工程を備える電子デバイスの製造に広く適用させることができる。例えば、液晶ディスプレイ・プラズマディスプレイ・有機ELディスプレイ・表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)などのフラットパネルディスプレイなどの製造にも適用させることができる。なお、このような場合であっても露光以外のものは、各電子デバイスにおける既知の技術を適用させることができるので、それらの説明は省略する。
【0076】
本実施の形態においては、パターン104により露光を行い、露光されたパターンの位置ずれ量からデフォーカス量を演算し、必要に応じて焦点位置の調整を行うようにしている。そのため、投影光学系10の結像特性、オートフォーカス特性などの装置特性のみならず、被処理物100のフラットネス特性などの影響をも排除することができる。その結果、信頼性の高い焦点管理を行うことができるので、歩留まりや生産性の向上などを図ることができる。また、高低差を有する特殊な基板やレチクルなどを必要としないので製造コストの低減を図ることができる。
【0077】
以上、本実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、露光システム1が備える要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0078】
1 露光システム、2 光源、3 フライアイレンズ、4 照明光学系、6 レチクルステージ、8 開口絞り部、8a 開口、10 投影光学系、11 基板ステージ、12 光軸、13a 極、13b 極、20 焦点管理部、21 光束形成部、22 撮像部、23 演算部、24 制御部、100 被処理物、101 レチクル、102 透明基板、103 パターン、104 パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のピッチ寸法のパターンと、前記第1のピッチ寸法より長い第2のピッチ寸法のパターンと、を含むパターン部が形成されたレチクルを載置するステージと、
前記パターン部に向けて光束を出射する照明光学系と、
前記光束が照射されたパターン部における像を瞳面に設けられた開口絞り部を介して被処理物の露光面に投影する投影光学系と、
前記第1のピッチ寸法のパターンによる回折で0次回折光と1次回折光とが前記照明光学系の光軸に対して対称に生じ、前記第2のピッチ寸法のパターンによる回折で0次回折光と1次回折光とが前記光軸に対して非対称に生じるように、前記光軸に対して交差する方向から前記パターン部に入射する光束を形成する光束形成部と、
前記露光面に露光された前記パターンのピッチ寸法を測定する測定部と、
前記測定されたピッチ寸法に基づいて位置ずれ量を演算するとともに、前記演算された位置ずれ量に基づいてデフォーカス量を演算する演算部と、
前記演算されたデフォーカス量に基づいて焦点管理を行う制御部と、
を備えたことを特徴とする露光システム。
【請求項2】
前記第2のピッチ寸法は、2次以上の回折光が前記開口絞り部を実質的に通過しないように設定されていること、を特徴とする請求項1記載の露光システム。
【請求項3】
前記第2のピッチ寸法は、第1のピッチ寸法を超え、第1のピッチ寸法の2倍未満であること、を特徴とする請求項1または2に記載の露光システム。
【請求項4】
前記演算部は、前記第1のピッチ寸法のパターンにより前記露光面に露光されたパターンのピッチ寸法と、前記第2のピッチ寸法のパターンにより前記露光面に露光されたパターンのピッチ寸法と、に基づいて位置ずれ量を演算すること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の露光システム。
【請求項5】
前記演算部は、前記演算された位置ずれ量と、予め求められた前記位置ずれ量とデフォーカス量との関係と、からデフォーカス量を演算すること、を特徴とする請求項4記載の露光システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記デフォーカス量が許容範囲内に収まるように焦点調整を行うこと、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の露光システム。
【請求項7】
レチクルのパターン部に向けて光束を出射させ、前記光束が照射されたパターン部の像を被処理物の露光面に投影させることで露光を行う工程を有する電子デバイスの製造方法であって、
前記露光を行う工程において、
前記パターン部に含まれる第1のピッチ寸法のパターンに照明光学系の光軸に対して交差する方向から光束を照射し、0次回折光と1次回折光とを前記光軸に対して対称に生じさせ、
前記第1のピッチ寸法より長い第2のピッチ寸法のパターンに前記光軸に対して交差する方向から光束を照射し、0次回折光と1次回折光とを前記光軸に対して非対称に生じさせ、
前記第1のピッチ寸法のパターンにより前記露光面に露光されたパターンのピッチ寸法と、前記第2のピッチ寸法のパターンにより前記露光面に露光されたパターンのピッチ寸法と、
に基づいて位置ずれ量を演算することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記演算された位置ずれ量と、予め求められた前記位置ずれ量とデフォーカス量との関係からデフォーカス量を演算すること、を特徴とする請求項7記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記演算されたデフォーカス量が許容範囲内に収まるように焦点調整を行うこと、を特徴とする請求項7または8に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記第2のピッチ寸法は、前記第1のピッチ寸法を超え、前記第1のピッチ寸法の2倍未満であること、を特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の電子デバイスの製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図2】
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【図5】
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