説明

露光ヘッド、画像形成装置、画像形成方法

【課題】発光素子の発光状態によらず、発光素子間での温度の不均一性を抑制することを可能とする技術を提供する。
【解決手段】潜像が形成される潜像担持体と、光を発光する発光素子、発光素子に供給される電流が流れる回路と電気的に接続された電気負荷、および発光素子からの光を潜像担持体に結像する光学系を有する露光ヘッドと、発光素子を発光させる第1の電流を発光素子に供給する一方、発光素子への第1の電流の供給を遮断している期間に電気負荷に第2の電流を供給する電流供給制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子からの光により被露光面を露光する露光ヘッド、当該露光ヘッドを用いた画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、感光体ドラム表面等の被露光面を露光ヘッドにより露光することで、被露光面に潜像を形成する技術が従来から知られている。つまり、この露光ヘッドは、複数の発光素子を備えており、各発光素子からの光を被露光面にスポットとして結像する。これに対して、被露光面は、露光ヘッドによる露光の前に予め一様電位に帯電されている。したがって、被露光面のうちスポットにより露光された部分が除電されて、被露光面に所望の潜像が形成されることとなる。さらに、除電された部分に帯電トナーが付着することで、潜像が画像として現像される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−195963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1でも提案されているように、このような発光素子として有機EL(Electro-Luminescence)素子等を用いることができる。しかしながら、このような発光素子では、発光により自らが発熱するとともに、温度変化により発光光量が変動するという特性を有するものがある。そのため、次に説明するような課題があった。
【0005】
つまり、露光ヘッドが備える各発光素子の発光状態は、形成すべき潜像に依存する。具体的には、高濃度画像に対応する潜像を形成する場合には、発光素子は頻繁に発光する一方、低濃度画像に対応する潜像を形成する場合には、発光素子の発光頻度はそれほど高くない。したがって、例えば形成すべき潜像に、高濃度画像に対応する領域と低濃度画像に対応する領域との両方があると、高濃度画像に対応する領域を露光する発光素子は頻繁に発光するため高温となる一方、低濃度画像に対応する領域を露光する発光素子は比較的低温のままとなる。すなわち、形成すべき潜像によって発光素子の発光状態が異なり、その結果、複数の発光素子の間で温度が不均一となる場合がある。そして、上述のとおり発光素子の光量は温度変化により変動するため、このような発光素子間での温度の不均一性が、発光素子間での光量差を引き起こし、ひいては、形成した画像に意図しない濃淡が発生する等の画像不良の原因となるおそれがあった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、発光素子の発光状態によらず、発光素子間での温度の不均一性を抑制することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる露光ヘッドは、上記目的を達成するために、光を発光する発光素子と、発光素子に供給される電流が流れる回路と電気的に接続された電気負荷と、発光素子を発光させる第1の電流を発光素子に供給する一方、発光素子への第1の電流の供給を遮断している期間に電気負荷に第2の電流を供給する電流供給制御部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
また、本発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、潜像が形成される潜像担持体と、光を発光する発光素子、発光素子に供給される電流が流れる回路と電気的に接続された電気負荷、および発光素子からの光を潜像担持体に結像する光学系を有する露光ヘッドと、発光素子を発光させる第1の電流を発光素子に供給する一方、発光素子への第1の電流の供給を遮断している期間に電気負荷に第2の電流を供給する電流供給制御部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
また、本発明にかかる画像形成方法は、上記目的を達成するために、発光素子を発光させる第1の電流を発光素子に供給して、発光素子からの光で潜像担持体を露光する第1の工程と、発光素子への第1の電流の供給を遮断するとともに、発光素子に供給される電流が流れる回路と電気的に接続された電気負荷に第2の電流を供給する第2の工程と、を備えることを特徴としている。
【0010】
このような発明(露光ヘッド、画像形成装置、画像形成方法)では、第1の電流を発光素子に供給して発光素子を発光させる一方、発光素子への第1の電流の供給を遮断して発光素子を消灯させている。そして、このような構成では発光中の発光素子は自ら発熱し、これに起因した上述のような課題があった。そこで、本発明は、発光素子が消灯している期間に、電気負荷に第2の電流を供給する。したがって、第2の電流の供給を受けた電気負荷の発熱により、消灯している発光素子を加熱することができる。よって、発光中の発光素子と消灯中の発光素子との温度差を小さく抑えて、発光素子の発光状態によらず発光素子の温度変動を抑制することが可能となる。こうして、本発明では発光素子間での温度の不均一性が抑制されている。
【0011】
また、電流供給制御部は、発光素子への第1の電流の供給を遮断している期間は、電気負荷に第2の電流を継続的に供給するように構成しても良い。このように構成することで、発光素子への第1の電流の供給を遮断している期間すなわち消灯中を通じて、発光素子を高温に維持して、発光中の発光素子と消灯中の発光素子との温度差をより確実に小さく抑えることができる。
【0012】
また、電流供給制御部は、発光素子に第1の電流を供給している期間は、電気負荷への第2の電流の供給を継続的に遮断するように構成しても良い。このように構成することで、発光素子は、発光している期間は自ら発熱するとともに、消灯している期間は電気負荷により加熱されることとなり、発光中および消灯中を通じて発光素子の温度変動を抑制することができる。
【0013】
また、第2の電流は、第1の電流と等しいように構成しても良い。なぜなら、このような構成は、第1の電流が供給されている発光素子の発熱量と、第2の電流が供給されている電気負荷の発熱量との差を小さくするのに有利であり、発光中の発光素子と消灯中の発光素子との温度差を確実に小さく抑えるのに好適であるからである。
【0014】
また、発光素子および電気負荷は有機EL素子であるように構成しても良い。このように発光素子および電気負荷を同じ有機EL素子で構成することで、第1の電流が供給されている発光素子の発熱量と、第2の電流が供給されている電気負荷の発熱量との差を容易に小さくすることができ、発光中の発光素子と消灯中の発光素子との温度差を簡便かつ確実に小さく抑えることができる。
【0015】
ところで、こうして発光素子および電気負荷を有機EL素子で構成した場合は、発光素子のみならず電気負荷も発光する。しかしながら、この電気負荷からの光が、発光素子からの光を結像する光学系に入射すると、被露光面の意図しない部分が露光されるという露光不良が発生してしまう場合も考えられる。そこで、電気負荷からの光の光学系への入射を遮る遮光部を備えるように構成しても良い。これにより、先ほどの露光不良の発生を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示す図。
【図3】ラインヘッドの構造を示す斜視図。
【図4】ラインヘッドの構造を示す部分断面図。
【図5】連続発光状態にある発光素子とそうでない発光素子との光量変化を示した図。
【図6】第1実施形態におけるヘッド基板の裏面の構成を示す平面図。
【図7】第1実施形態における発光駆動モジュールが備える回路構成を示す図。
【図8】第2実施形態における発光駆動モジュールが備える回路構成を示す図。
【図9】第3実施形態における発光駆動モジュールが備える回路構成を示す図。
【図10】第4実施形態におけるヘッド基板の裏面の構成を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1実施形態
図1は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示す図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリなどを有するメインコントローラMCに与えられると、このメインコントローラMCがエンジンコントローラECに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラECがエンジン部EGおよびヘッドコントローラHCなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0018】
この実施形態にかかる画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラMC、エンジンコントローラECおよびヘッドコントローラHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット2、転写ベルトユニット8および給紙ユニット7もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、二次転写ユニット12、定着ユニット13およびシート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット7は、ハウジング本体3に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット7および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0019】
画像形成ユニット2は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、図1においては、画像形成ユニット2の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0020】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21は、その回転軸が主走査方向MD(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モータに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより、感光体ドラム21表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに搬送される。また、感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作が実行される。カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時は、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
【0021】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラを備えている。この帯電ローラは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って従動回転する。また、この帯電ローラは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を所定の表面電位に帯電させる。
【0022】
ラインヘッド29は、その長手方向LGDが主走査方向MDに平行もしくは略平行となるように、かつ、その幅方向LTDが副走査方向SDに平行もしくは略平行となるように配置されている。ラインヘッド29は、長手方向LGDに配列された複数の発光素子を備えており、感光体ドラム21に対向配置されている。そして、これらの発光素子から、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に向けて光を照射して該表面に静電潜像を形成する。
【0023】
図3はラインヘッドの構造を示す斜視図である。同図では、ヘッド基板294の裏面側の構成が記載されており、表面側の構成は省略されている。なお、ヘッド基板294が有する2面のうち、同図上側の面を表面とし、同図下側の面を裏面とする。また、図4は、ラインヘッドの構造を示す部分断面図である。ラインヘッド29は、その内部にガラス基板であるヘッド基板294を備えており、このガラス基板294の裏面294−tには、複数の発光素子Eが主走査方向MD(長手方向LGD)に2行千鳥で並んでいる。各発光素子Eはいわゆるボトムエミッション型の有機EL(Electro-Luminescence)素子である。さらに、ヘッド基板294の裏面294−tには、各発光素子Eに駆動電流を供給する発光駆動モジュール295(図4では記載を省略)が形成されている。この発光駆動モジュール295は、低温ポリシリコン薄膜トランジスタ(low temperature poly silicon thin film transistor:LTPS-TFT)で構成されている。そして、この発光駆動モジュール295からの駆動電流が供給されると、各発光素子Eの発光面から光ビームが射出する。
【0024】
発光素子Eの発光面から射出した光ビームはヘッド基板294を透過して、屈折率分布型ロッドレンズアレイ297に入射する。そして、発光素子Eから射出した光ビームが、屈折率分布型ロッドレンズアレイ297により正立等倍で結像されて、感光体ドラム21表面にスポットSPが形成される。こうして、スポットSPにより露光された部分が除電されて、静電潜像が感光体ドラム21の表面に形成される。
【0025】
図1に戻って装置構成の説明を続ける。現像部25は、その表面にトナーを担持する現像ローラ251を有する。そして、現像ローラ251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラ251に印加される現像バイアスによって、現像ローラ251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラ251から感光体ドラム21に移動してその表面に形成された静電潜像が顕像化される。
【0026】
現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する一次転写位置TR1において転写ベルト81に一次転写される。
【0027】
また、感光体ドラム21の回転方向D21の一次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナ27が設けられている。この感光体クリーナ27は、感光体ドラムの表面に当接することで一次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0028】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラ82と、図1において駆動ローラ82の左側に配設される従動ローラ83(ブレード対向ローラ)と、これらのローラに張架され駆動ローラ82の回転により図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、カートリッジ装着時において各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の一次転写ローラ85Y、85M、85Cおよび85Kを備えている。これらの一次転写ローラは、それぞれ一次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。
【0029】
カラーモード実行時は、図1および図2に示すように全ての一次転写ローラ85Y、85M、85Cおよび85Kを画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に一次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラ85Y等に一次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する一次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写する。すなわち、カラーモードにおいては、各色の単色トナー像が転写ベルト81上において互いに重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0030】
さらに、転写ベルトユニット8は、ブラック用一次転写ローラ85Kの下流側で且つ駆動ローラ82の上流側に配設された下流ガイドローラ86を備える。この下流ガイドローラ86は、一次転写ローラ85Kが画像形成ステーション2Kの感光体ドラム21に当接して形成する一次転写位置TR1での一次転写ローラ85Kとブラック用感光体ドラム21(K)との共通接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0031】
また、下流ガイドローラ86に巻き掛けられた転写ベルト81の表面に対向してパッチセンサ89が設けられている。パッチセンサ89は例えば反射型フォトセンサからなり、転写ベルト81表面の反射率の変化を光学的に検出することにより、必要に応じて転写ベルト81上に形成されるパッチ画像の位置やその濃度などを検出する。
【0032】
給紙ユニット7は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラ79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラ79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラ対80によって給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って、駆動ローラ82と二次転写ローラ121とが当接する二次転写位置TR2に給紙される。
【0033】
二次転写ローラ121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、二次転写ローラ駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラ131と、この加熱ローラ131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が二次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラ131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラ1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラ1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラ131の周面に押し付けることで、加熱ローラ131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0034】
前記した駆動ローラ82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、二次転写ローラ121のバックアップローラとしての機能も兼ねている。駆動ローラ82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する二次転写バイアス発生部から二次転写ローラ121を介して供給される二次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラ82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、二次転写位置TR2へシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達されることに起因する画質の劣化を防止することができる。
【0035】
また、この装置では、ブレード対向ローラ83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラ83に当接することで、二次転写後に転写ベルト81に残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナブレード711及び廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラ83と一体的に構成されている。
【0036】
なお、この実施形態においては、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kの感光体ドラム21、帯電部23、現像部25および感光体クリーナ27を一体的にカートリッジとしてユニット化している。そして、このカートリッジが装置本体に対し着脱可能に構成されている。また、各カートリッジには、該カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリがそれぞれ設けられている。そして、エンジンコントローラECと各カートリッジとの間で無線通信が行われる。こうすることで、各カートリッジに関する情報がエンジンコントローラECに伝達されるとともに、各メモリ内の情報が更新記憶される。これらの情報に基づき各カートリッジの使用履歴や消耗品の寿命が管理される。
【0037】
また、この実施形態では、メインコントローラMC、ヘッドコントローラHCおよび各ラインヘッド29がそれぞれ別ブロックとして構成され、これらは互いにシリアル通信線を介して接続されている。各ブロック間でのデータのやりとり動作について、図2を参照しながら説明する。外部装置からメインコントローラMCに画像形成指令が与えられると、メインコントローラMCは、エンジンコントローラECにエンジン部EGを起動させるための制御信号を送信する。また、メインコントローラMCに設けられた画像処理部100が、画像形成指令に含まれる画像データに対して所定の信号処理を行い、各トナー色ごとのビデオデータVDを生成する。
【0038】
一方、制御信号を受けたエンジンコントローラECは、エンジン部EG各部の初期化およびウォームアップを開始する。これらが完了して画像形成動作を実行可能な状態になると、エンジンコントローラECは、各ラインヘッド29を制御するヘッドコントローラHCに対し画像形成動作の開始のきっかけとなる同期信号Vsyncを出力する。
【0039】
ヘッドコントローラHCには、各ラインヘッド29を制御するヘッド制御モジュール400と、メインコントローラMCとのデータ通信を司るヘッド側通信モジュール300とが設けられている。一方、メインコントローラMCにもメイン側通信モジュール200が設けられている。ヘッド側通信モジュール300からメイン側通信モジュール200に向けては、1ページ分の画像の先頭を示す垂直リクエスト信号VREQと、該画像を構成するラインのうち1ライン分のビデオデータVDを要求する水平リクエスト信号HREQとが送信される。一方、メイン側通信モジュール200からヘッド側通信モジュール300に向けては、これらのリクエスト信号に応じてビデオデータVDが送信される。より詳しくは、画像の先頭を示す垂直リクエスト信号VREQを受信した後、水平リクエスト信号HREQを受信する度に、画像の先頭部分から1ライン分ずつビデオデータVDが順次出力される。こうして受け取ったビデオデータVDに基づいて、ヘッド制御モジュール400は、ラインヘッド29の発光駆動モジュール295を制御して、各発光素子Eを発光させる。これにより、ビデオデータVDに応じた静電潜像を感光体ドラム21の表面に形成することができる。
【0040】
ところで、ビデオデータVDのパターンによっては特定の範囲にある発光素子Eが、連続して繰り返し発光する場合がある。しかしながら、発光素子Eとして用いられている有機EL素子は、一般の無機の発光ダイオード(例えば、ガリウム砒素などの化合物半導体)とは異なり、温度が上昇すると光量が増加するという特性を有する。また、温度変化1℃あたりの光量変化も大きく、常温の光量を基準としても1℃あたり0.5%程度の光量増加を示す場合がある。したがって、発光素子Eとして有機EL素子を用いた上記ラインヘッド29では、印刷枚数を重ねるにしたがって、連続発光状態にある発光素子Eの温度が上昇してしまい、その結果、連続発光状態にある発光素子Eとそうでない発光素子Eとの間に、温度差に応じた光量差が発生する場合があった。
【0041】
図5は、連続発光状態にある発光素子とそうでない発光素子との光量変化を示した図である。同図において、破線L1は連続発光状態にある発光素子Eの光量変化を示しており、破線L2は連続発光状態にない発光素子Eの光量変化を示している。また、同図において、棒線は1枚目の印刷、2枚目の印刷、…の各印刷が実行されている期間を表しており、連続発光状態にある発光素子Eの光量に応じた高さで図示されている。同図に示すように、例えば、1枚目の印刷と2枚目の印刷の間等、印刷する用紙の間では消灯期間があるが、それにもかかわらず連続発光状態にある発光素子Eの光量は増加している。こうした光量増加の程度は発熱程度に応じて発生するわけであるが、この発熱は、隣接して同時発光する発光素子Eの数に依存しており、例えば、1つの発光素子Eだけが連続発光したとしても周囲へ速やかに放熱されるため光量の増加はあまり見られないが、数十個あるいは数百個の隣接する発光素子Eが連続発光すると、これらの発光素子Eの配置範囲に発熱が集中することとなり、光量の増加が顕著となる。そして、このように連続発光する発光素子Eの光量は大きく増加する(図5の破線L1)一方で、ほとんど発光しない(連続発光状態にない)発光素子Eの光量はあまり変化しない(図5の破線L2)。
【0042】
このような状態で印刷を続けて行った後に、例えば、用紙全体において均一な濃度となるべきハーフトーン画像を印刷したような場合、隣接して同時発光していた発光素子Eは光量が大きくなり、結果として、これらの発光素子Eにより露光される領域の印刷濃度が上昇してしまう。すなわち、このハーフトーン画像は、それまでに実行された印刷の履歴の影響を受けてしまい、均一な濃度で形成されない。このような、多数の発光素子の発光素子Eの連続発光による温度上昇は、大まかに言って、温度上昇時と同程度の時定数でしか冷却されないので、上記の印刷履歴の影響は容易には解消しない。そこで、発光素子Eの発光状態によらず、複数の発光素子E間での温度の不均一性を抑制可能とする技術が望まれていた。これに対して、本実施形態のラインヘッド29は次のような構成を備えている。
【0043】
図6は、第1実施形態におけるヘッド基板の裏面の構成を示す平面図であり、同図は、ヘッド基板表面側からヘッド基板裏面を平面視した場合に相当する。同図に示すように、ヘッド基板裏面294−tには、複数の発光素子Eが2行千鳥で主走査方向MD(長手方向LGD)に並んでいる。また、隣接する6個の発光素子E毎に1個の発光駆動モジュール295が設けられており、各発光素子Eは素子用配線Weをによって発光駆動モジュール295に接続されている。そして、発光素子Eは、素子用配線Weを介して発光駆動モジュール295から駆動電流Ie(図7)の供給を受けて発光する。
【0044】
さらに、各発光素子Eに対しては電気抵抗Rが近接配置されている。電気抵抗Rは、副走査方向SD(幅方向LTD)に長尺な形状をしており、発光素子Eと等価もしくは略等価な負荷特性を有している。電気抵抗Rの一端は抵抗用配線Wrによって発光駆動モジュール295に接続されているとともに、電気抵抗Rの他端はグランド電位に接続されている。そして、電気抵抗Rは、抵抗用配線Wrを介して発光駆動モジュール295からヒーター電流Ih(図7)の供給を受けて発熱する。
【0045】
図7は、第1実施形態における発光駆動モジュールが備える回路構成を示す図である。なお、図6を用いて上述したとおり第1実施形態では、6個の発光素子Eに対して1個の発光駆動モジュール295が設けられているため、1個の発光駆動モジュール295内には、6個の発光素子Eそれぞれを駆動するための回路と、これらの発光素子Eに近接配置された6個の電気抵抗Rを発熱させるための回路とが設けられている。ただし、図7では便宜上、1個の発光素子Eとこれに近接する1個の電気抵抗それぞれの素子駆動用回路、抵抗発熱用回路のみが、1個の発光駆動モジュール295内に示されている。
【0046】
発光駆動モジュール295には、ビデオデータVDに基づいた信号が入力されるデータ端子dataと、このデータ端子dataへの入力信号が書き込まれる容量CPとが、発光素子E毎に設けられている。さらに、発光駆動モジュール295には、容量CPへの書き込みタイミングを制御するためのゲート端子W_gateが設けられている。つまり、いわゆる時分割駆動技術によって容量CPへのデータ書き込みを行なうために、発光駆動モジュール295には、書き込み対象となる容量CPを特定するためのゲート端子W_gateが設けられている。
【0047】
また、有機EL素子に限らず、複数の発光素子Eを用いたラインヘッド29では、各発光素子Eの光量(発光パワー)を均一にするための光量補正が必要となる。第1実施形態では、容量CPに書き込まれる電圧=光量補正値を発光素子Eごとに変化させることで、後で述べるトランジスタTr2のゲート電圧を制御することができる。その結果、各発光素子Eの光量は均一となる。この光量補正値は、ラインヘッド29出荷時に、全発光素子Eの光量を測定して算出される。
【0048】
なお、先に述べたようにビデオデータVDが点灯を表す値のときは、上記のように各発光素子Eごとに一定の光量となるような電圧値が書き込まれるが、ビデオデータVDが消灯を表すときは、発光素子Eにほとんど発光電流が流れないような、電圧値が書き込まれる。消灯のための電位は、トランジスタTr2の極性(Pチャンネルか、Nチャンネルか)によって反転する。このように、ビデオデータVDは点灯/消灯のみを表す2値の情報である。ビデオデータVDに多値(階調の深さ)を持たせることも可能であるが、その場合は階調値に応じた電圧値を容量CPに書き込むことになる。このような動作を実現する発光駆動モジュール295について、具体的に説明する。
【0049】
発光駆動モジュール295には、低温ポリシリコン薄膜トランジスタである第1のトランジスタTr1が設けられている。そして、この第1のトランジスタTr1のソースにはデータ端子dataが接続される一方、第1のトランジスタTr1のドレインには容量CPの一端が接続されている(なお、容量CPの他端は素子用電源VELに接続されている)。さらに、第1のトランジスタTr1のゲートにはゲート端子W_gateが接続されており、ゲート端子W_gateへの入力信号により第1のトランジスタTr1のオン/オフ制御が可能となっている。したがって、ゲート端子W_gateにオン信号が入力されている間に、データ端子dataに入力された電圧が容量CPに書き込まれる一方、ゲート端子W_gateにオフ信号が入力されている間は、データ端子dataの信号に関係なく書き込み済みの電圧が容量CPに保持され続ける。なお、この書き込み動作は一定の周期で繰り返し行なわれるが、容量CPは十分に大きいため、書き込み動作それぞれの間における容量CPの電圧変化は実質的に無い。
【0050】
また、発光素子Eを点灯させる際には、トランジスタTr1がONとなって電流が流れるが、トランジスタの飽和特性を利用して、ほぼ一定の電流が流れるようになる。
【0051】
また、発光駆動モジュール295は、低温ポリシリコン薄膜トランジスタである第2のトランジスタTr2をさらに備えている。第2のトランジスタTr2のソースは素子用電源VELに接続されるとともに、第2のトランジスタTr2のドレインは素子用配線Weによって発光素子Eに接続されている。また、第2のトランジスタTr2のゲートには上記容量CPの一端が接続されている。したがって、容量CPに駆動電圧が保持されている間は、第2のトランジスタTr2が駆動電流Ieを発光素子Eに供給するため、発光素子Eは発光する。一方で、容量CPに消灯電圧が保持されている間は、第2のトランジスタTr2は発光素子Eへの駆動電流Ieの供給を遮断するため、発光素子Eは消灯する。
【0052】
さらに、発光駆動モジュール295では、低温ポリシリコン薄膜トランジスタである第3のトランジスタTr3が、上記第2のトランジスタTr2に並列接続されている。この第3のトランジスタTr3のソースは素子用電源VELに接続されるとともに、第3のトランジスタTr3のドレインは抵抗用配線Wrによって電気抵抗Rに接続されている。また、第3のトランジスタTr3のゲートには上記容量CPの一端が接続されている。ここで、第3のトランジスタTr3の極性は、第2のトランジスタTr2と逆である。言い換えれば、第3のトランジスタTr3のオン/オフ動作は、第2のトランジスタTr2のオン/オフ動作と逆位相となる。したがって、容量CPに消灯電圧が保持されている間は、第3のトランジスタTr3がヒーター電流Ihを電気抵抗Rに供給するため、電気抵抗Rは発熱する。これにより、発光素子Eが消灯している期間中、電気抵抗Rにはヒーター電流Ihが継続的に供給され、電気抵抗Rは消灯中の発光素子Eを加熱し続けることとなる。一方で、容量CPに駆動電圧が保持されている間は、第3のトランジスタTr3は電気抵抗Rへのヒーター電流Ihの供給を遮断するため、電気抵抗Rの発熱は停止する。
【0053】
以上のように、第1実施形態では、駆動電流Ieを発光素子Eに供給して発光素子Eを発光させる一方、発光素子Eへの駆動電流Ieの供給を遮断して発光素子Eを消灯させている。そして、このような構成では発光中の発光素子Eは自ら発熱し、これに起因して図5等で示したような課題があった。これに対して、第1実施形態では、発光素子Eが消灯している期間に、電気抵抗Rにヒーター電流Ihを供給する。したがって、ヒーター電流Ihの供給を受けた電気抵抗Rの発熱により、消灯している発光素子Eを加熱することができる。よって、発光中の発光素子Eと消灯中の発光素子Eとの温度差を小さく抑えて、発光素子Eの発光状態によらず発光素子Eの温度変動を抑制することが可能となる。こうして、本実施形態では発光素子E間での温度の不均一性が抑制されている。
【0054】
また、第1実施形態では、発光駆動モジュール295は、発光素子Eへの駆動電流Ieの供給を遮断している期間中は、電気抵抗Rにヒーター電流Ihを継続的に供給している。そのため、発光素子Eへの駆動電流Ieの供給を遮断している期間中すなわち消灯中を通じて、発光素子Eを高温に維持して、発光中の発光素子Eと消灯中の発光素子Eとの温度差をより確実に小さく抑えることが可能となっている。
【0055】
また、第1実施形態では、発光駆動モジュール295は、発光素子Eに駆動電流Ihを供給している期間中は、電気抵抗Rへのヒーター電流Ihの供給を継続的に遮断している。そのため、発光素子Eは、発光している期間は自ら発熱するとともに、消灯している期間は電気抵抗Rにより加熱されることとなり、発光中および消灯中を通じて発光素子Eの温度変動を抑制することが可能となっている。
【0056】
なお、第1実施形態のように、発光駆動モジュール295を低温ポリシリコン薄膜トランジスタにより形成した構成に対しては、本発明を適用することが特に好適である。つまり、この低温ポリシリコン薄膜トランジスタは、電子移動度が高く有機EL素子(発光素子E)を駆動するのに適しているという利点を有する一方、温度上昇により駆動電流Ieが上昇してしまうという温度特性を有する。したがって、このような構成では、温度上昇に伴う発光素子Eの光量増大が増強される傾向にあるため、本発明を適用して、発光素子Eの発光状態によらず発光素子Eの温度変動を抑制することが望まれる。
【0057】
第2実施形態
図8は、第2実施形態における発光駆動モジュールが備える回路構成を示す図である。第2実施形態の発光駆動モジュール295では、第1実施形態と異なり電気抵抗Rが排される一方で、定電流回路CCが発光素子E毎に設けられている。この定電流回路CCの出力端は発光素子Eの近傍まで延設されている。そして、第2実施形態では、この定電流回路CCが発光素子Eを加熱する。以下に、第2実施形態の発光駆動モジュール295の具体的構成について説明する。
【0058】
発光駆動モジュール295が備える定電流回路CCは、4ビットシフトレジスタSRにラッチされた値に応じた駆動電流Ieを出力するものである。そして、この定電流回路CCは素子用配線Weを介して発光素子Eに接続されている。4ビットのシフトレジスタSRに転送される電流値は、各発光素子Eの特性に応じて、点灯時の光量(光パワー)が一定になるように定められた値である。すなわち、この電流値は、第1実施形態の光量補正値に相当する。なお、4ビットでは光量補正分解能が不足する場合は、適宜ビット数を増加させてもよい。また、この定電流回路CCも、第1実施形態に示した回路と同様に、低温ポリシリコン薄膜トランジスタにより発光素子Eと同じヘッド基板294上に形成されている。
【0059】
また、発光素子Eには、低温ポリシリコン薄膜トランジスタであるトランジスタTr6が並列接続されている。具体的には、トランジスタTr6のドレインは、素子用配線Weに接続されるとともに、トランジスタTr6のソースはグランド電位に接続されている。また、トランジスタTr6のゲートにはデータ端子dataが接続されている。このデータ端子dataには、ビデオデータVDに基づいた信号がヘッド制御モジュール400から印加される。そして、データ端子dataに駆動電圧が印加されている間は、トランジスタTr6がオフして、駆動電流Ieが発光素子Eに供給されるため、発光素子Eが発光する。一方、データ端子dataに消灯電圧が印加されている間は、トランジスタTr6がオンして、駆動電流IeのほとんどがトランジスタTr6に流れる。そのため、発光素子Eへの駆動電流Ieの供給が遮断されて、発光素子Eは消灯する。なお、このトランジスタTr6は、第1実施形態のトランジスタTr1とは異なり、単なるスイッチとして機能する。したがって、このトランジスタTr6では発光素子Eの光量は調整できないため、光量の調整は上記定電流回路CCによって行われる。よって、ビデオデータVDは2値のデジタル信号であり、第1実施形態のデータ端子とは加わる信号の種類が異なる。
【0060】
第2実施形態では、発光素子Eが点灯している場合は当然発光素子Eが発熱するが、消灯している場合は、トランジスタTr6のON抵抗は少ないので、主に定電流回路CCが発熱することになる。そして、この定電流回路CCは、TFTにより発光素子Eと同一のヘッド基板294上に形成されている。したがって、消灯時でも点灯時と同様に発光素子Eは定電流回路CCにより加熱されることになる。その結果、発光素子Eの点灯状態によらず、発光素子Eあるいはその近傍の温度は一定となり、発光素子Eの光量をほぼ一定とすることができる。
【0061】
第3実施形態
図9は、第3実施形態における発光駆動モジュールが備える回路構成を示す図である。なお、発光駆動モジュール以外の構成は、第1実施形態と第3実施形態とで共通するので説明を省略する。同図が示すように、発光駆動モジュール295では、4ビットシフトレジスタSRにラッチされた値に応じた駆動電流Ieを出力する第1の定電流回路CC1が設けられている。そして、この第1の定電流回路CC1は素子用配線Weを介して発光素子Eに接続されている。
【0062】
また、発光素子Eには、第4のトランジスタTr4が並列接続されている。具体的には、第4のトランジスタTr4のドレインは、素子用配線Weに接続されるとともに、第4のトランジスタTr4のソースはグランド電位に接続されている。また、第4のトランジスタTr4のゲートにはデータ端子dataが接続されている。このデータ端子dataには、ビデオデータVDに基づいた信号がヘッド制御モジュール400から印加される。そして、データ端子dataに駆動電圧が印加されている間は、第4のトランジスタTr4がオフして、駆動電流Ieが発光素子Eに供給されるため、発光素子Eが発光する。一方、データ端子dataに消灯電圧が印加されている間は、第4のトランジスタTr4がオンして、駆動電流Ieのほとんどが第4のトランジスタTr4に流れる。そのため、発光素子Eへの駆動電流Ieの供給が遮断されて、発光素子Eは消灯する。
【0063】
また、同図に示すように、第1の定電流回路CC1とは別に第2の定電流回路CC2が設けられており、この第2の定電流回路CC2も上記4ビットシフトレジスタSRにラッチされた値に応じた電流を出力するものである。そして、この第2の定電流回路CC2は抵抗用配線Wrを介して電気抵抗Rに接続されている。また、第2の定電流回路CC2は、第1の定電流回路CC1と同一構成を備えている。したがって、第2の定電流回路CC2が出力するヒーター電流Ihと、第1の定電流回路CC1が出力する駆動電流Ieとは同値となる。
【0064】
さらに、電気抵抗Rには、第5のトランジスタTr5が並列接続されている。具体的には、第5のトランジスタTr5のドレインは、抵抗用配線Wrに接続されるとともに、第5のトランジスタTr5のソースはグランド電位に接続されている。また、第5のトランジスタTr5のゲートにはデータ端子dataが接続されている。このデータ端子dataには、ビデオデータVDに基づいた信号がヘッド制御モジュール400から印加される。ここで、第4のトランジスタTr4の極性は、第5のトランジスタTr5と逆である。したがって、データ端子dataに消灯電圧が印加されている間は、第5のトランジスタTr5がオフして、ヒーター電流Ihが電気抵抗に供給される。これにより、電気抵抗Rが発熱して、消灯中の発光素子Eが継続的に加熱される。一方、データ端子dataに駆動電圧が印加されている間は、第5のトランジスタTr5がオンして、ヒーター電流Ihのほとんどが第5のトランジスタTr5に流れる。そのため、電気抵抗Rへのヒーター電流Ihの供給が遮断されて、電気抵抗Rの発熱は停止する。
【0065】
このように第3実施形態においても、発光素子Eが消灯している期間に、電気抵抗Rにヒーター電流Ihを供給しているため、第1実施形態と同様に、発光素子Eの発光状態によらず発光素子Eの温度変動を抑制することが可能となる。
【0066】
さらには、第3実施形態の発光駆動モジュール295は、駆動電流Ieと等しいヒーター電流Ihを電気抵抗Rに供給しており好適である。なぜなら、このような発光駆動モジュール295は、駆動電流Ieが供給されている発光素子Eの発熱量と、ヒーター電流Ihが供給されている電気抵抗Rの発熱量との差を小さくするのに有利であり、発光中の発光素子Eと消灯中の発光素子Eとの温度差を確実に小さく抑えるのに好適であるからである。
【0067】
第4実施形態
図10は、第4実施形態におけるヘッド基板の裏面の構成を示す平面図であり、同図は、ヘッド基板表面側からヘッド基板裏面を平面視した場合に相当する。上記第1・第3実施形態と、第4実施形態との主な違いは、有機EL素子であるダミー素子DEを電気抵抗Rの代わりに用いた点である。つまり、上記第1・第3実施形態では、電気抵抗Rにより消灯中の発光素子Eを加熱していたが、第4実施形態では、有機EL素子であるダミー素子DEにより消灯中の発光素子Eを加熱する。なお、後述するように、同図に示すダミー素子DEは、ヘッド基板裏面294−tに直接形成されているわけではなく、ダミー素子DEとヘッド基板裏面294−tの間には金属膜MFが形成されている。したがって、実際にはダミー素子DEは金属膜MFに隠れているため、同図ではダミー素子DEが破線で示されている。以下、具体的に説明する。
【0068】
図10に示すように、各発光素子Eに対してはダミー素子DEが近接配置されている。各ダミー素子DEは、ダミー素子用配線Wdを介して、発光駆動モジュール295からヒーター電流Ihの供給を受けて発熱する。なお、これらダミー素子DEは、発光素子Eと同一構成を有する有機EL素子であるため、ヒーター電流Ihによるダミー素子DEの発熱量と、駆動電流Ieで発光する発光素子Eの発熱量とは、等しいもしくは略等しい。
【0069】
ところで、ダミー素子DEは有機EL素子であるため、ヒーター電流Ihがダミー素子DEに供給されると、ダミー素子DEの発光面から光ビームが射出する。しかしながら、このダミー素子DEからの光ビームが、屈折率分布型ロッドレンズアレイ297に入射すると、感光体ドラム21表面の意図しない部分が露光されるという露光不良が発生してしまう場合も考えられる。そこで、第4実施形態では、ダミー素子DEの発光面とヘッド基板裏面294−tとの間には薄い金属膜MFが形成されている。この金属膜MFは略正方形をしており、発光素子Eの発光面の全体を覆うように形成されている。つまり、ダミー素子DEからの光ビームの屈折率分布型ロッドレンズアレイ297への入射を、この金属膜MFにより遮ることで、先ほどの露光不良の発生を防止している。
【0070】
そして、第4実施形態では、発光素子Eが消灯している期間に、ダミー素子DEにヒーター電流Ihを供給して、ダミー素子DEの発熱によって消灯中の発光素子Eを加熱する。これにより、第1および第3実施形態と同様に、発光素子Eの発光状態によらず発光素子Eの温度変動を抑制することが可能となる。なお、このようなダミー素子DEによる発光素子Eの加熱動作を実現する回路は、図7、図9に示した回路図において、電気抵抗Rをダミー素子DEに置換することで得られる。
【0071】
このように、第4実施形態では、消灯中の発光素子Eを加熱するダミー素子DEが、発光素子Eと同じ有機EL素子で構成されている。したがって、駆動電流Ieが供給されている発光素子Eの発熱量と、ヒーター電流Ihが供給されているダミー素子DEの発熱量との差を容易に小さくすることができ、発光中の発光素子Eと消灯中の発光素子Eとの温度差を簡便かつ確実に小さく抑えることが可能となっている。
【0072】
その他
このように、上記実施形態では、ラインヘッド29が本発明の「露光ヘッド」に相当し、発光駆動モジュール295が本発明の「電流供給制御部」に相当し、駆動電流Ieが本発明の「第1の電流」に相当し、屈折率分布型ロッドレンズアレイ297が本発明の「光学系」に相当し、金属膜MFが本発明の「遮光部」に相当している。また、上記第1および第3実施形態では、電気抵抗Rが本発明の「電気負荷」に相当し、上記第2実施形態では、定電流回路CCが本発明の「電気負荷」に相当し、上記第4実施形態では、ダミー素子DEが本発明の「電気負荷」に相当している。また、上記第1、第3、第4実施形態ではヒーター電流Ihが本発明の「第2の電流」に相当し、上記第2実施形態では、発光素子Eの消灯時に定電流回路CCが出力する電流(駆動電流Ie)が本発明の「第2の電流」に相当している。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、電気抵抗R、定電流回路CCあるいはダミー素子DE等の発熱素子を、発光素子Eの近傍に配置していた。そして、この発熱素子R、CC、DEによって消灯中の発光素子Eを加熱することで、発光素子Eの発光状態によらず発光素子Eの温度変動を抑制していた。しかしながら、この発熱素子R、CC、DEは、発光素子Eの近傍に配置されなくとも、その機能を十分に発揮しうる。
【0074】
つまり、有機EL素子(発光素子E)の陰極側に金属を用いる場合には、その金属膜を介して周辺にある程度熱が伝わることが期待でき、また、他の層やガラス基板(ヘッド基板294)からも周囲に熱は拡散していく。一般的なラインヘッドでは発光素子の配列ピッチは数十μm程度であるが、発熱の大小による温度分布は数十μm程度ではほとんど生じないと言っても良い場合が多い。したがって、この温度分布はmmの単位で始めて問題となることが多く、よって、上述の発熱素子R、CC、DEもこの範囲で発光素子Eに隣接していれば良い。特に、発光素子Eは、書き込みの密度(つまり、解像度)に応じて互いに近接して配置されるので、発光素子Eの直近に発熱素子R、CC、DEを配置することは困難な場合もあるため、このような場合は、発熱素子R、CC、DEを発光素子Eからある程度離して配置しても良い。
【0075】
また、上記第1および第3実施形態では、電気抵抗Rは発光素子Eと等価もしくは略等価な負荷特性を有している。しかしながら、電気抵抗Rの負荷特性はこれに限られず、要するに消灯中の発光素子Eを加熱できるものであれば、本発明の効果を奏することができる。
【0076】
また、上記第1および第3実施形態では、1個の発光素子Eに対して1個の電気抵抗Rが設けられていた。しかしながら、発光素子Eと電気抵抗Rとの個数関係はこれに限られず、例えば、発光素子Eに対して複数の電気抵抗Rを設けても良い。
【0077】
また、上記第4実施形態では、発光素子Eとダミー素子DEとは同一構成を有しているが、これらは寸法関係等において異なっていても良い。
【0078】
また、上記実施形態では、発光素子Eへの駆動電流Ieの供給を遮断している期間中すなわち消灯中は、電気抵抗Rにヒーター電流Ihを継続的に供給している。しかしながら、消灯中の一部の期間だけ、電気抵抗Rにヒーター電流Ihを供給するように構成しても良い。
【0079】
また、上記実施形態では、発光素子Eに駆動電流Ihを供給している期間中すなわち発光中は、電気抵抗Rへのヒーター電流Ihの供給を継続的に遮断するように、発光駆動モジュール295は構成されている。しかしながら、発光駆動モジュール295をこのように構成することは、必須ではない。
【0080】
ところで、上記実施形態では、発光素子Eのみならず発熱素子R、CC、DEも発熱するため、ラインヘッド29全体での発熱量は増大する傾向にある。したがって、複数の発光素子Eの間での温度分布は均一であったとしても、複数の発光素子Eが全体的に温度上昇する場合が考えられる。具体的に言うと、例えば、印字デューティーが5〜20%の一般的な範囲にある場合、発光素子Eおよび発熱素子R、CC、DE全体からの発熱量は、発熱素子R、CC、DEを設けない場合の発熱量と比較して、約20〜5倍となる。そこで、ラインヘッド29自体を強制空冷するファン等の冷却構造を設けたり、あるいは、ラインヘッド29の雰囲気温度を検出してデータ端子dataに与える駆動電圧を制御しても良い。また、これら冷却構造および駆動電圧制御を組み合わせて採用しても良い。
【0081】
また、上述したように、同じ駆動電流Ieを供給しても発光素子E毎に光量がばらついてしまう場合がある。このような場合は、発光素子E毎に、駆動電流Ieを調整しても良い。具体的には、例えば、図7に示した回路を採用する場合は、データ端子dataに印加する駆動電圧を発光素子E毎に調整すればよく、また、図9に示した回路を採用する場合は、シフトレジスタSRの設定値を各発光素子E毎に調整すれば良い。
【0082】
また、上記実施形態では、複数の発光素子Eを2行千鳥状に配列していた。しかしながら、複数の発光素子Eの配列態様はこれに限られず、3行以上の千鳥配列でも良く、あるいは1列に配列しても良い。
【0083】
また、ラインヘッド29の構成も上述のものに限られず、例えば、複数の発光素子を千鳥状に配置して1個の発光素子グループを構成してさらに複数の発光素子グループを2次元的に配置した、特開2008−036937号公報、特開2008−36939号公報等に記載されているラインヘッド29を用いることもできる。
【符号の説明】
【0084】
21…感光体ドラム、 29…ラインヘッド、 294…ヘッド基板、295…発光駆動モジュール、 297…屈折率分布型ロッドレンズアレイ、400…ヘッド制御モジュール、 CC…定電流回路、 CC1…第1の定電流回路、 CC2…第2の定電流回路、 CP…容量、 DE…ダミー素子、 E…発光素子、 MF…金属膜、 R…電気抵抗、 SP…スポット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発光する発光素子と、
前記発光素子に供給される電流が流れる回路と電気的に接続された電気負荷と、
前記発光素子を発光させる第1の電流を前記発光素子に供給する一方、前記発光素子への前記第1の電流の供給を遮断している期間に前記電気負荷に第2の電流を供給する電流供給制御部と、
を備えることを特徴とする露光ヘッド。
【請求項2】
前記電流供給制御部は、前記発光素子への前記第1の電流の供給を遮断している期間は、前記電気負荷に前記第2の電流を継続的に供給する請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項3】
前記電流供給制御部は、前記発光素子に前記第1の電流を供給している期間は、前記電気負荷への前記第2の電流の供給を継続的に遮断する請求項1または2に記載の露光ヘッド。
【請求項4】
前記第2の電流は、前記第1の電流と等しい請求項1ないし3のいずれか一項に記載の露光ヘッド。
【請求項5】
前記発光素子および前記電気負荷は有機EL素子である請求項1ないし4のいずれか一項に記載の露光ヘッド。
【請求項6】
前記発光素子からの光を結像する光学系と、
前記電気負荷からの光の前記光学系への入射を遮る遮光部と
を備える請求項5に記載の露光ヘッド。
【請求項7】
潜像が形成される潜像担持体と、
光を発光する発光素子、前記発光素子に供給される電流が流れる回路と電気的に接続された電気負荷、および前記発光素子からの光を前記潜像担持体に結像する光学系を有する露光ヘッドと、
前記発光素子を発光させる第1の電流を前記発光素子に供給する一方、前記発光素子への前記第1の電流の供給を遮断している期間に前記電気負荷に第2の電流を供給する電流供給制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
発光素子を発光させる第1の電流を発光素子に供給して、前記発光素子からの光で潜像担持体を露光する第1の工程と、
前記発光素子への前記第1の電流の供給を遮断するとともに、前記発光素子に供給される電流が流れる回路と電気的に接続された電気負荷に第2の電流を供給する第2の工程と、
を備えることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−201800(P2010−201800A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50183(P2009−50183)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】