露光ヘッド、画像形成装置
【課題】露光ムラを目立たせずに、良好な露光を実現する。
【解決手段】第1の方向にレンズを配設した第1のレンズ行と、第1の方向にレンズを配設した第2のレンズ行とを、第1の方向に平行な仮想直線を中心として第1の方向に直交する第2の方向に配設して、第1のレンズ行のレンズと第2のレンズ行のレンズとが第1の方向に交互に千鳥状に並ぶレンズアレイと、仮想直線の一方側でレンズアレイに対向する一方側発光素子と仮想直線の他方側でレンズアレイに対向する他方側発光素子とを同じ第1の方向の位置に配設した発光素子対を、第1の方向に配設した発光素子アレイと、一方側発光素子および他方側発光素子のうちから発光させる発光素子を択一的に選択する動作を、発光素子対について行なう発光制御部と、を備え、発光制御部は、発光させる発光素子を一方側発光素子と他方側発光素子との間でランダムに選択する。
【解決手段】第1の方向にレンズを配設した第1のレンズ行と、第1の方向にレンズを配設した第2のレンズ行とを、第1の方向に平行な仮想直線を中心として第1の方向に直交する第2の方向に配設して、第1のレンズ行のレンズと第2のレンズ行のレンズとが第1の方向に交互に千鳥状に並ぶレンズアレイと、仮想直線の一方側でレンズアレイに対向する一方側発光素子と仮想直線の他方側でレンズアレイに対向する他方側発光素子とを同じ第1の方向の位置に配設した発光素子対を、第1の方向に配設した発光素子アレイと、一方側発光素子および他方側発光素子のうちから発光させる発光素子を択一的に選択する動作を、発光素子対について行なう発光制御部と、を備え、発光制御部は、発光させる発光素子を一方側発光素子と他方側発光素子との間でランダムに選択する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子からの光により被露光面を露光する露光ヘッド、該露光ヘッドを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、主走査方向に並ぶ複数の発光素子それぞれからの光を被露光面に収束させて、複数のスポットを該主走査方向に並べて形成し、該主走査方向に1ライン分の露光を行なう露光ヘッドが知られている(特許文献1)。ただし、このような露光ヘッドでは、消耗等によって発光素子からの光量が減少して、部分的にスポットを形成できなくなるといったドット落ちが生じる場合があった。そこで、特許文献1では、2ライン分以上の発光素子を、主走査方向に直交する副走査方向に配設した露光ヘッドが提案されている。つまり、この露光ヘッドでは、同じ主走査方向の位置に2個以上の発光素子が配設されており、これら2個以上の発光素子は、被露光面において同じ主走査方向の位置にスポットを形成することができる。そして、これらの発光素子から択一的に選択された発光素子が露光に用いられる。つまり、これらの発光素子のうち1個の発光素子が露光に用いられる一方、該発光素子の光量が減少した場合は、他の発光素子が露光に用いられる。こうして、上述のドット落ちが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−096259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の露光ヘッドでは、発光素子からの光を被露光面に収束させるための光学系が必要となる。そこで、正立等倍の結像倍率を有する屈折率分布型ロッドレンズを複数備えたレンズアレイを用いることができる。このレンズアレイでは、複数のレンズが主走査方向に千鳥状に並んでおり、言わば、主走査方向に平行な中心線の一方側に位置するレンズと他方側に位置するレンズとが主走査方向に交互に並ぶ。しかしながら、レンズアレイがこのようなレンズ配置を有するために、レンズアレイにより形成されるスポットの大きさは、該スポット形成に供する発光素子と上記中心線との位置関係に依存する。したがって、被露光面においては、レンズアレイでのレンズ配置に関連した露光ムラが生じることとなるが、露光に用いる発光素子の選択パターンによっては、この露光ムラが目立ってしまう場合があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、露光ムラを目立たせずに、良好な露光を実現することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる露光ヘッドは、上記目的を達成するために、第1の方向にレンズを配設した第1のレンズ行と、第1の方向にレンズを配設した第2のレンズ行とを、第1の方向に平行な仮想直線を中心として第1の方向に直交する第2の方向に配設して、第1のレンズ行のレンズと第2のレンズ行のレンズとが第1の方向に交互に千鳥状に並ぶレンズアレイと、仮想直線の一方側でレンズアレイに対向する一方側発光素子と仮想直線の他方側でレンズアレイに対向する他方側発光素子とを同じ第1の方向の位置に配設した発光素子対を、第1の方向に配設した発光素子アレイと、一方側発光素子および他方側発光素子のうちから発光させる発光素子を択一的に選択する動作を、発光素子対について行なう発光制御部と、を備え、発光制御部は、発光させる発光素子を一方側発光素子と他方側発光素子との間でランダムに選択することを特徴としている。
【0007】
このように構成された露光ヘッドでは、レンズアレイに対向して発光素子アレイが配設されている。この発光素子アレイでは、同じ第1の方向に配設された2個の発光素子(一方側発光素子、他方側発光素子)から発光素子対が構成され、さらに、この発光素子対が第1の方向に配設されている。また、発光制御部は、一方側発光素子および他方側発光素子のうちから発光させる発光素子を択一的に選択する動作を、発光素子対について行なう。そして、発光素子にはレンズアレイが対向しているため、発光制御部により選択された発光素子からの光は、レンズアレイにより被露光面に収束される。こうして、被露光面にスポットが形成される。
【0008】
一方、レンズアレイは、第1の方向にレンズを配設した第1のレンズ行と、同じく第1の方向にレンズを配設した第2のレンズ行を有している。そして、これら第1のレンズ行と第2のレンズ行は、第1の方向に平行な仮想直線を中心として、第1の方向に直交する第2の方向に配設されており、第1のレンズ行のレンズと第2のレンズ行のレンズとが第1の方向に交互に千鳥状に並ぶ。つまり、このレンズアレイでは、仮想直線の一方側に位置するレンズと他方側に位置するレンズとが第1の方向に交互に並んでいる。したがって、このレンズアレイで発光素子からの光を収束させて被露光面を露光すると、レンズアレイでのレンズ配置に関連した露光ムラが目立ってしまう場合があった。
【0009】
これに対して本発明の露光ヘッドでは、発光制御部は、発光させる発光素子を一方側発光素子と他方側発光素子との間でランダムに選択する。これにより、被露光面では、仮想直線の一方側に形成されるスポットと、仮想直線の他方側に形成されるスポットとが、第1の方向にランダムに形成されることとなる。その結果、レンズアレイでのレンズ配置に関連した露光ムラを目立たなくさせることができ、良好な露光が可能となる。
【0010】
この際、発光制御部は、第1の方向への発光素子対の配列と二値の乱数列とを対応付けるとともに、二値のうちの一方の値が対応付けられた発光素子対については一方側発光素子を選択し、二値のうちの他方の値が対応付けられた発光素子対については他方側発光素子を選択するように構成しても良い。このように二値の乱数列に基づいて発光させる発光素子を選択することで、仮想直線の一方側に形成されるスポットと、仮想直線の他方側に形成されるスポットとを、第1の方向にランダムに形成することができる。その結果、レンズアレイでのレンズ配置に関連した露光ムラを目立たなくさせることができ、良好な露光が可能となる。
【0011】
本発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、第1の方向に平行な仮想直線の一方側に位置するレンズと他方側に位置するレンズとが第1の方向に交互に千鳥状に並ぶレンズアレイ、および、仮想直線の一方側でレンズアレイに対向する一方側発光素子と仮想直線の他方側でレンズアレイに対向する他方側発光素子とを同じ第1の方向の位置に配設した発光素子対を第1の方向に配設した発光素子アレイ、を有する露光ヘッドと、一方側発光素子および他方側発光素子のうちから発光させる発光素子を択一的に選択する動作を、発光素子対について行なう発光制御部と、レンズアレイが結像した光によって露光される像担持体と、を備え、発光制御部は、発光させる発光素子を一方側発光素子と他方側発光素子との間でランダムに選択することを特徴としている。
【0012】
このように構成された画像形成装置では、レンズアレイに対向して発光素子アレイが配設されている。この発光素子アレイでは、同じ第1の方向に配設された2個の発光素子(一方側発光素子、他方側発光素子)から発光素子対が構成され、さらに、この発光素子対が第1の方向に配設されている。また、発光制御部は、一方側発光素子および他方側発光素子のうちから発光させる発光素子を択一的に選択する動作を、各発光素子対について行なう。そして、発光素子にはレンズアレイが対向しているため、発光制御部により選択された発光素子からの光は、レンズアレイにより像担持体に収束される。こうして、像担持体にスポットが形成される。
【0013】
一方、レンズアレイでは、第1の方向に平行な仮想直線の一方側に位置するレンズと他方側に位置するレンズとが第1の方向に交互に千鳥状に並んでいる。したがって、このレンズアレイで発光素子からの光を収束させて像担持体を露光すると、レンズアレイでのレンズ配置に関連した露光ムラが目立ってしまう場合があった。
【0014】
これに対して本発明の画像形成装置では、発光制御部は、発光させる発光素子を一方側発光素子と他方側発光素子との間でランダムに選択する。これにより、像担持体では、仮想直線の一方側に形成されるスポットと、仮想直線の他方側に形成されるスポットとが、第1の方向にランダムに形成されることとなる。その結果、レンズアレイでのレンズ配置に関連した露光ムラを目立たなくさせることができ、良好な露光が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】ラインヘッドの構造を示す斜視図。
【図4】ラインヘッドの構造を示す部分断面図。
【図5】ラインヘッドの構成を示す平面透視図。
【図6】レンズアレイによるスポット形成動作を示す模式図。
【図7】スポット形成動作の結果を表としてまとめた図。
【図8】発光素子選択動作を示す平面図。
【図9】発光素子対の配列と乱数列との関係を表として示す図。
【図10】レンズアレイの中心線からスポットまでの距離と光量との関係を示す図。
【図11】主走査方向へ1ライン分のスポットを形成したときの光量比を示す図。
【図12】参考例1におけるスポットサイズの変動をグラフとして示す図。
【図13】参考例2におけるスポットサイズの変動をグラフとして示す図。
【図14】実施例1におけるスポットサイズの変動をグラフとして示す図。
【図15】実施例2におけるスポットサイズの変動をグラフとして示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCがエンジンコントローラーECに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラーECがエンジン部EGおよびヘッドコントローラーHCなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0017】
この実施形態にかかる画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラーMC、エンジンコントローラーECおよびヘッドコントローラーHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット2、転写ベルトユニット8および給紙ユニット7もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、二次転写ユニット12、定着ユニット13およびシート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット7は、ハウジング本体3に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット7および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0018】
画像形成ユニット2は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、図1においては、画像形成ユニット2の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0019】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21は、その回転軸が主走査方向MD(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モーターに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより、感光体ドラム21表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに搬送される。また、感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作が実行される。カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時は、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
【0020】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラーを備えている。この帯電ローラーは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って従動回転する。また、この帯電ローラーは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を所定の表面電位に帯電させる。
【0021】
ラインヘッド29は、その長手方向LGDが主走査方向MDに平行もしくは略平行となるように、かつ、その幅方向LTDが副走査方向SDに平行もしくは略平行となるように配置されている。ラインヘッド29は、長手方向LGDに配列された複数の発光素子を備えており、感光体ドラム21に対向配置されている。そして、これらの発光素子から、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に向けて光を照射して該表面に静電潜像を形成する。
【0022】
図3はラインヘッドの構造を示す斜視図である。同図では、ヘッド基板294の裏面側の構成が記載されており、表面側の構成は省略されている。なお、ヘッド基板294が有する2面のうち、同図上側の面を表面とし、同図下側の面を裏面とする。また、図4は、ラインヘッドの構造を示す部分断面図である。これらの図では、主走査方向MDおよび副走査方向SDに直交する方向であって発光素子Eの光の射出方向(換言すれば、ラインヘッド29から感光体ドラム21に向かう方向)に、光軸方向Doaが付されている。
【0023】
ラインヘッド29は、その本体291の内部にガラス基板であるヘッド基板294を備えており、このガラス基板294の裏面294−tには、複数の発光素子Eが主走査方向MD(長手方向LGD)に並んで発光素子アレイAe(図5)が構成される。各発光素子Eはいわゆるボトムエミッション型の有機EL(Electro-Luminescence)素子である。さらに、ヘッド基板294の裏面294−tには、低温ポリシリコン薄膜トランジスタ(low temperature poly silicon thin film transistor:LTPS-TFT)で構成された駆動回路295が設けられている。そして、各発光素子Eは、駆動回路295から駆動電流の供給を受けて、互いに同一波長の光ビームを射出する。
【0024】
このように、ヘッド基板裏面294−tに設けられた発光素子Eに対して、屈折率分布型ロッドレンズアレイRLA(以下、レンズアレイRLAと略称する)がヘッド基板表面294−h側から対向する。したがって、発光素子Eの発光面から射出した光ビームはヘッド基板294を透過して、レンズアレイRLAに入射する。こうして発光素子Eから射出した光ビームが、レンズアレイRLAにより正立等倍で結像されて、感光体ドラム21表面にスポットSPが形成される。そして、スポットSPにより露光された部分が除電されて、静電潜像が感光体ドラム21の表面に形成される。
【0025】
図1に戻って装置構成の説明を続ける。現像部25は、その表面にトナーを担持する現像ローラー251を有する。そして、現像ローラー251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラー251に印加される現像バイアスによって、現像ローラー251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラー251から感光体ドラム21に移動してその表面に形成された静電潜像が顕像化される。
【0026】
現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する一次転写位置TR1において転写ベルト81に一次転写される。
【0027】
また、感光体ドラム21の回転方向D21の一次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナ27が設けられている。この感光体クリーナ27は、感光体ドラムの表面に当接することで一次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0028】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラー82と、図1において駆動ローラー82の左側に配設される従動ローラー83(ブレード対向ローラー)と、これらのローラーに張架され駆動ローラー82の回転により図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、カートリッジ装着時において各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の一次転写ローラー85Y、85M、85Cおよび85Kを備えている。これらの一次転写ローラーは、それぞれ一次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。
【0029】
カラーモード実行時は、図1および図2に示すように全ての一次転写ローラー85Y、85M、85Cおよび85Kを画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に一次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラー85Y等に一次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する一次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写する。すなわち、カラーモードにおいては、各色の単色トナー像が転写ベルト81上において互いに重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0030】
さらに、転写ベルトユニット8は、ブラック用一次転写ローラー85Kの下流側で且つ駆動ローラー82の上流側に配設された下流ガイドローラー86を備える。この下流ガイドローラー86は、一次転写ローラー85Kが画像形成ステーション2Kの感光体ドラム21に当接して形成する一次転写位置TR1での一次転写ローラー85Kとブラック用感光体ドラム21(K)との共通接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0031】
給紙ユニット7は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラー79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラー79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラー対80によって給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って、駆動ローラー82と二次転写ローラー121とが当接する二次転写位置TR2に給紙される。
【0032】
二次転写ローラー121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、二次転写ローラー駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラー131と、この加熱ローラー131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が二次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラー131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラー1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラー1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラー131の周面に押し付けることで、加熱ローラー131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0033】
前記した駆動ローラー82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、二次転写ローラー121のバックアップローラーとしての機能も兼ねている。駆動ローラー82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する二次転写バイアス発生部から二次転写ローラー121を介して供給される二次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラー82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、二次転写位置TR2へシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達されることに起因する画質の劣化を防止することができる。
【0034】
また、この装置では、ブレード対向ローラー83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラー83に当接することで、二次転写後に転写ベルト81に残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナブレード711及び廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラー83と一体的に構成されている。
【0035】
なお、この実施形態においては、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kの感光体ドラム21、帯電部23、現像部25および感光体クリーナ27を一体的にカートリッジとしてユニット化している。そして、このカートリッジが装置本体に対し着脱可能に構成されている。また、各カートリッジには、該カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリーがそれぞれ設けられている。そして、エンジンコントローラーECと各カートリッジとの間で無線通信が行われる。こうすることで、各カートリッジに関する情報がエンジンコントローラーECに伝達されるとともに、各メモリー内の情報が更新記憶される。これらの情報に基づき各カートリッジの使用履歴や消耗品の寿命が管理される。
【0036】
以上が、本発明を適用可能であるラインヘッド29およびそれを用いた画像形成装置の概略構成である。続いて、ラインヘッド29のより詳細な構成および動作について説明する。図5は、ラインヘッドの構成を示す平面透視図であり、光軸方向Doaからラインヘッドを見た場合に相当する。
【0037】
まず、レンズアレイRLAの構成について説明する。同図に示すように、複数のレンズLS1(第1のレンズ)が主走査方向MDに直線状にレンズピッチPlsで並んで、第1のレンズ行Rl1が構成されている。同様に、複数のレンズLS2(第2のレンズ)が主走査方向MDに直線状にレンズピッチPlsで並んで、第2のレンズ行Rl2が構成されている。なお、レンズLS1、LS2は屈折率分布型のロッドレンズであり、正立等倍の結像倍率を有する。そして、主走査方向MDに平行な仮想直線VL(中心線VL)を中心として、第1のレンズ行Rl1と第2のレンズ行Rl2とが副走査方向SDに並んで配置される。こうして、第1のレンズLS1と第2のレンズLS2とが、主走査方向MDに交互に千鳥状に並ぶレンズアレイRLAが構成される。また、レンズアレイRLAは、繊維強化プラスチックからなる2枚の側板FRPにより副走査方向SDから挟み込まれている。
【0038】
一方、このレンズアレイRLAに対向する発光素子アレイAeは、次のような構成を有する。発光素子アレイAeでは、光軸方向Doaからの平面視において、中心線VLの一方側でレンズアレイRLAに対向する発光素子E1と、中心線VLの他方側でレンズアレイRLAに対向する発光素子E2とが、同じ主走査方向MDの位置に配置されて、1対の発光素子対Deが構成されている。そして、複数の発光素子対Deが、主走査方向MDに発光素子ピッチPeで並んでいる。こうして、中心線VLの一方側では、発光素子E1がM行千鳥(Mは2以上の整数で、本実施形態ではM=4)で主走査方向MDに並んで、第1の発光素子ラインLe1が構成されるとともに、同じく、中心線VLの他方側でも、発光素子E2がM行千鳥で主走査方向MDに並んで、第2の発光素子ラインLe2が構成される。
【0039】
なお、同じ発光素子対Deに属する2個の発光素子E1、E2は、主走査方向MDにおける位置が同じである。したがって、これらの発光素子E1、E2は、感光体ドラム21表面(被露光面)において同じ主走査方向MDの位置にスポットSPを形成することができる。そこで、ヘッドコントローラーHCは、感光体ドラム21表面を露光するために発光させる発光素子を、発光素子E1、E2のうちから択一的に選択する(発光素子選択動作)。この発光素子選択動作は、ヘッドコントローラーHCによって、複数の発光素子対Deのそれぞれについて実行される。そして、ヘッドコントローラーHCは、発光素子E1、E2の消耗等に応じて、選択する発光素子E1、E2を適宜切り換えて、露光動作を実行する。なお、発光素子選択動作の詳細は後述する。
【0040】
上述のとおり、レンズアレイRLAでは、主走査方向MDに平行な中心線VLの一方側に位置するレンズLS1と他方側に位置するレンズLS2とが主走査方向MDに交互に千鳥状に並ぶ。そして、レンズアレイRLAがこのようなレンズ配置を有するために、レンズアレイRLAにより形成されるスポットSPの大きさは、該スポット形成に供する発光素子Eと上記中心線VLとの位置関係に依存する。これについて説明すると、次のとおりである。
【0041】
図6は、レンズアレイによるスポット形成動作を示す模式図である。図7は、スポット形成動作の結果を表としてまとめた図である。これらの図において、「パターン1」は、第1の発光素子ラインLe1を構成する発光素子Eのうち、中心線VLから最も遠い発光素子Eaによるスポット形成動作に対応し、「パターン2」は、第1の発光素子ラインLe1を構成する発光素子Eのうち、中心線VLから最も近い発光素子Ebによるスポット形成動作に対応し、「パターン3」は、第2の発光素子ラインLe2を構成する発光素子Eのうち、中心線VLから最も近い発光素子Ecによるスポット形成動作に対応し、「パターン4」は、第2の発光素子ラインLe2を構成する発光素子Eのうち、中心線VLから最も遠い発光素子Edによるスポット形成動作に対応している。
【0042】
図6の「パターン1」の欄に示すように、発光素子Eaが射出した光は、第1のレンズLS1および第2のレンズLS2の両方に入射する。そして、レンズLS1、LS2のそれぞれが、被露光面ESの略同じ位置に光を収束させる。こうして、レンズLS1、LS2それぞれによる収束光が重ね合わされて1個のスポットSPが被露光面ESに形成される。このとき、レンズLS1による収束光は、被露光面ESに対して比較的大きな見込み角θ1で入射し、また、被露光面ESに対する該収束光の入射角は小さい(つまり、被露光面ESに対して光軸方向Doaの比較的正面から入射している)。しかしながら、レンズLS2による収束光は、被露光面ESに対して比較的小さな見込み角θ2で入射し、また、被露光面ESに対する該収束光の入射角は大きい(つまり、被露光面ESに対して光軸方向Doaの斜めから入射している)。そのため、結果的には、スポットSPの形成に供する光の量は比較的少なくなるとともに、この光の強度分布はブロードとなり、スポットSPはぼやけて大きくなってしまう(図7)。
【0043】
このように、レンズアレイRLAの中心線VLからの距離が遠いため、発光素子EaによるスポットSPはぼやけて大きくなってしまう。また、図6、図7の「パターン4」の欄に示すように、同じく中心線VLからの距離が遠い発光素子EdによるスポットSPもぼやけて大きくなってしまう。一方、中心線VLからの距離が近い発光素子によるスポット形成は、これと異なる(パターン2、パターン3)。
【0044】
図6の「パターン2」の欄に示すように、発光素子Ebが射出した光は、第1のレンズLS1および第2のレンズLS2の両方に入射する。そして、レンズLS1、LS2のそれぞれが、被露光面ESの略同じ位置に光を収束させる。こうして、レンズLS1、LS2それぞれによる収束光が重ね合わされて1個のスポットSPが被露光面ESに形成される。このとき、レンズLS1およびレンズLS2のいずれの収束光も、被露光面ESに対して比較的大きな見込み角θ1、θ2で入射し、また、被露光面ESに対するこれらの収束光の入射角は比較的小さい(つまり、被露光面ESに対して光軸方向Doaの比較的正面から入射している)。そのため、スポットSPの形成に供する光の量は比較的多くなるとともに、この光の強度分布はシャープとなり、小さなスポットSPを形成することができる。また、図6、図7の「パターン3」の欄に示すように、同じく中心線VLからの距離が近い発光素子Ecも、小さなスポットSPを形成することができる。
【0045】
このように、レンズアレイRLAの中心線VLからの距離が遠い発光素子Eほど、形成するスポットSPが大きくなってしまう。したがって、被露光面ESにおいては、レンズアレイRLAでのレンズ配置に関連した露光ムラが生じることとなる。より具体的には、レンズ行Rl1、Rl2でのレンズピッチPlsを周期とする露光ムラが生じる。そして、露光に用いる発光素子Eの選択パターンによっては(例えば、第1の発光素子ラインLe1の発光素子E1のみを選択した際、あるいは、第2の発光素子ラインLe2の発光素子E2のみを選択した際)、このレンズピッチPls周期での露光ムラが目立ってしまう場合があった。かかる問題に対応すべく、本実施形態では、次のようにして発光素子選択動作が実行される。
【0046】
図8は、発光素子選択動作を示す平面図である。図8では、主走査方向MDに並ぶ発光素子対の配列に対して順番に符号De(1)、De(2)、…が付されている。図9は、発光素子選択動作で用いられる乱数列と発光素子対配列との関係を表として示す図である。つまり、この実施形態では、ヘッドコントローラーHCによって、図8に示すような二値の乱数列に基づいて、発光させる発光素子がランダムに選択される。具体的には、二値の乱数列が生成されて、この乱数列と発光素子対配列De(1)、De(2)、…とが一対一で対応付けられる。なお、この二値の乱数列の生成は、周知の種々の乱数生成器により行なうことができる。そして、値「0」が対応付けられた発光素子対De(2)、De(6)、De(7)、…等については、発光素子E1が発光させる発光素子として選択される一方、値「1」が対応付けられた発光素子対De(1)、De(3)、De(4)、…等については、発光素子E2が発光させる発光素子として選択される。こうして、図8に示すように発光させる発光素子が発光素子E1、E2との間でランダムに選択される。なお、図8において、斜めのハッチングが施された発光素子が、露光のために選択された発光素子であり、ハッチングが施されていない発光素子が、露光のために選択されなかった発光素子である。
【0047】
このように露光に供する発光素子をランダムに選択することで、感光体ドラム21表面(被露光面ES)では、中心線VL(仮想直線)の一方側に形成されるスポットSPと、中心線VL(仮想直線)の他方側に形成されるスポットSPとが、主走査方向MDにランダムに並んで形成されることとなる。その結果、レンズアレイRLAでのレンズ配置に関連した露光ムラを目立たなくさせることができ、良好な露光が可能となる。
【0048】
なお、ヘッドコントローラーHCは、図8のハッチングを施した発光素子E1、E2のいずれかが消耗して光量が低下した際には、露光のために発光させる発光素子を図8でハッチングを施していない発光素子E1、E2に一斉に切り換える。そして、この切り換え後の露光動作においても、感光体ドラム21表面(被露光面ES)では、中心線VL(仮想直線)の一方側に形成されるスポットSPと、中心線VL(仮想直線)の他方側に形成されるスポットSPとが、主走査方向MDにランダムに並んで形成されることとなる。その結果、レンズアレイRLAでのレンズ配置に関連した露光ムラを目立たなくさせることができ、良好な露光が可能となる。
【0049】
その他
このように、上記実施形態では、ラインヘッド29が(あるいは、ラインヘッド29とヘッドコントローラーHCが協働して)本発明の「露光ヘッド」として機能している。また、主走査方向MDが本発明の「第1の方向」に相当し、副走査方向SDが本発明の「第2の方向」に相当し、発光素子E1が本発明の「一方側発光素子」に相当し、発光素子E2が本発明の「他方側発光素子」に相当し、ヘッドコントローラーHCが本発明の「発光制御部」に相当している。また、感光体ドラム21が本発明の「像担持体」に相当している。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、発光素子の選択がランダムである事から、一方側あるいは他方側のみが連続して長く選択される場合が想定される。そこで、これを避けるために、ランダム選択であってもレンズ周期Pls以上の連続選択を制限するようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、第1・第2の発光素子ラインLe1、Le2のそれぞれにおいて、4行千鳥で発光素子が並んでいたが、発光素子の配列態様はこれに限られない。
【0052】
また、ラインヘッド29が備える全ての発光素子対Deに対して、図8で示したような発光素子選択動作を適用しなくても良い。つまり、一部の発光素子対Deについて、上述の発光素子選択動作(発光させる発光素子を発光素子E1と発光素子E2との間でランダムに変える選択動作)を適用することで、当該一部の発光素子対Deについて上述の効果を奏することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、ヘッドコントローラーHCをラインヘッド29の本体291の外部に設けているが、ヘッドコントローラーHCをラインヘッド29の本体291の内部に設けても良い。
【0054】
また、上記実施形態では、発光素子Eとしてボトムエミッション型の有機EL素子が用いられている。しかしながら、トップエミッション型の有機EL素子を発光素子Eとして用いても良く、あるいは有機EL素子以外のLED(Light Emitting Diode)等を発光素子Eとして用いても良い。
【実施例】
【0055】
次に本発明の実施例を示すが、本発明はもとより下記の実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の趣旨に適合しうる範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0056】
上記実施形態でも述べたとおり、正立等倍のレンズLS1、LS2を主走査方向MDに交互に千鳥状に並べたレンズアレイRLAを用いた場合、レンズアレイRLAの中心線VLから副走査方向SDに離れるにしたがって、スポット形成に供する光量が低下し、その結果、レンズピッチPlsを周期とする露光ムラが発生する。これについて、より具体的な数値例を示して説明する。
【0057】
図10は、レンズアレイの中心線からスポットまでの距離と、該スポット形成に供する光量との関係をグラフとして示した図であり、横軸は、レンズアレイRLAの中心線VLからスポットSPまでの副走査方向SDへの距離[mm]を示し、縦軸は、光量比[%]を示している。なお、原点に位置するスポットSPの形成に供する光量をLQ0とし、対象となるスポットSPの形成に供する光量をLQ1としたとき、縦軸では、光量比(LQ1−LQ0)/LQ0が百分率で示されている。同図に示すように、レンズアレイRLAの中心線VLから副走査方向SDに離れるにしたがって、スポット形成に供する光量が低下している。
【0058】
そして、図11は、図10に示すレンズアレイを用いて主走査方向へ1ライン分のスポットを形成したときの光量比を、グラフとして示す図であり、横軸は主走査方向MDの位置を示し、縦軸は光量比を示している。また、同図のグラフでは、レンズアレイRLAの中心線VL上に形成される1ライン分のスポットSPの光量比(丸印でプロットされた「副走査ズレ0」)と、レンズアレイRLAの中心線VLから副走査方向SDに距離0.1[mm]外れた位置に形成される1ライン分のスポットSPの光量比(四角印でプロットされた「副走査ズレ+0.1[mm]」と、レンズアレイRLAの中心線VLから副走査方向SDに距離0.2[mm]外れた位置に形成される1ライン分のスポットSPの光量比(三角印でプロットされた「副走査ズレ+0.2[mm]」とが、併記されている。
【0059】
図11に示すように、主走査方向MDに1ライン分のスポットSPにおいて、約0.5[mm]の周期での光量変動が発生している。これは、レンズピッチPlsが約0.5[mm]であることに対応して、光量変動が発生することを示している。また、光量変動の振幅は、レンズアレイRLAの中心線VLから1ライン分のスポットまでの距離の増大に応じて大きくなっている。そして、このようなレンズアレイを用いて露光動作を行なった場合、スポットの大きさの変動が発生する場合があった。
【0060】
次に、このレンズアレイを用いた参考例の露光動作と実施例の露光動作とを説明する。なお、以下の参考例および実施例では、発光素子は図5に示した配置態様を有するとともに、レンズアレイRLAでのレンズピッチPlsは約0.5[mm]である。また、解像度1200dpi(dot per inch)の解像度に対応して、発光素子対Deは約21[μm]の発光素子ピッチPeで並んでいる。したがって、レンズピッチPlsの間に、約24対の発光素子対Deが並ぶこととなる。
【0061】
図12は、参考例1におけるスポットサイズの変動をグラフとして示す図である。同図は、第1の発光素子ラインLe1の発光素子E1のみを選択して露光を行なった場合に相当している。また、同図の横軸の画素番号は、選択した発光素子に対して主走査方向MDに順に付した番号を示し、同図の縦軸はスポットサイズが示されている。
【0062】
また、図13は、参考例2におけるスポットサイズの変動をグラフとして示す図である。同図は、第2の発光素子ラインLe2の発光素子E2のみを選択して露光を行なった場合に相当している。また、同図の横軸の画素番号は、選択した発光素子に対して主走査方向MDに順に付した番号を示し、同図の縦軸はスポットサイズが示されている。
【0063】
参考例1、2のいずれにおいても、比較的長い周期T1、T2でのスポットサイズ変動が見られている。この周期T1、T2はいずれもレンズピッチPlsの長さに相当するものであり、すなわち、レンズピッチPls(=0.5[mm])を周期とするスポットサイズ変動が発生している。この0.5[mm]程度のスポットサイズ変動によって引き起こされる画像濃度ムラは、人の目に視認されやすく、画像品質を大きく損なうおそれがある。
【0064】
図14は、実施例1におけるスポットサイズの変動をグラフとして示す図である。同図は、図8でハッチングが施された発光素子を選択して露光を行なった場合に相当し、すなわち、発光させる発光素子を発光素子E1と発光素子E2との間でランダムに選択している。また、同図の横軸の画素番号は、選択した発光素子に対して主走査方向MDに順に付した番号を示し、同図の縦軸はスポットサイズが示されている。実施例1では、レンズピッチPls(=0.5[mm])を周期とするスポットサイズ変動が目立たなくなっている。その結果、画像濃度ムラを人の目に視認しにくくして、画像品質を向上させることが可能となっている。
【0065】
図15は、実施例2におけるスポットサイズの変動をグラフとして示す図である。同図は、図8でハッチングが施されていない発光素子を選択して露光を行なった場合に相当し、すなわち、発光させる発光素子を発光素子E1と発光素子E2との間でランダムに選択している。また、同図の横軸の画素番号は、選択した発光素子に対して主走査方向MDに順に付した番号を示し、同図の縦軸はスポットサイズが示されている。実施例2では、レンズピッチPls(=0.5[mm])を周期とするスポットサイズ変動が目立たなくなっている。その結果、画像濃度ムラを人の目に視認しにくくして、画像品質を向上させることが可能となっている。
【符号の説明】
【0066】
21…感光体ドラム、 ES…被露光面、 29…ラインヘッド、 291…ラインヘッド本体、 294…ヘッド基板、 294−h…ヘッド基板表面、 294−t…ヘッド基板裏面、 E…発光素子、E1…発光素子(一方側発光素子)、 E2…発光素子(他方側発光素子)、 De…発光素子対、 Ae…発光素子アレイ、 HC…ヘッドコントローラー(発光制御部)、 LS1…第1のレンズ、 LS2…第2のレンズ、 Rl1…第1のレンズ行、 Rl2…第2のレンズ行、 RLA…レンズアレイ、 MD…主走査方向、 SD…副走査方向、 SP…スポット、 VL…仮想直線(中心線)、 Pls…レンズピッチ、 Pe…発光素子ピッチ
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子からの光により被露光面を露光する露光ヘッド、該露光ヘッドを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、主走査方向に並ぶ複数の発光素子それぞれからの光を被露光面に収束させて、複数のスポットを該主走査方向に並べて形成し、該主走査方向に1ライン分の露光を行なう露光ヘッドが知られている(特許文献1)。ただし、このような露光ヘッドでは、消耗等によって発光素子からの光量が減少して、部分的にスポットを形成できなくなるといったドット落ちが生じる場合があった。そこで、特許文献1では、2ライン分以上の発光素子を、主走査方向に直交する副走査方向に配設した露光ヘッドが提案されている。つまり、この露光ヘッドでは、同じ主走査方向の位置に2個以上の発光素子が配設されており、これら2個以上の発光素子は、被露光面において同じ主走査方向の位置にスポットを形成することができる。そして、これらの発光素子から択一的に選択された発光素子が露光に用いられる。つまり、これらの発光素子のうち1個の発光素子が露光に用いられる一方、該発光素子の光量が減少した場合は、他の発光素子が露光に用いられる。こうして、上述のドット落ちが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−096259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の露光ヘッドでは、発光素子からの光を被露光面に収束させるための光学系が必要となる。そこで、正立等倍の結像倍率を有する屈折率分布型ロッドレンズを複数備えたレンズアレイを用いることができる。このレンズアレイでは、複数のレンズが主走査方向に千鳥状に並んでおり、言わば、主走査方向に平行な中心線の一方側に位置するレンズと他方側に位置するレンズとが主走査方向に交互に並ぶ。しかしながら、レンズアレイがこのようなレンズ配置を有するために、レンズアレイにより形成されるスポットの大きさは、該スポット形成に供する発光素子と上記中心線との位置関係に依存する。したがって、被露光面においては、レンズアレイでのレンズ配置に関連した露光ムラが生じることとなるが、露光に用いる発光素子の選択パターンによっては、この露光ムラが目立ってしまう場合があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、露光ムラを目立たせずに、良好な露光を実現することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる露光ヘッドは、上記目的を達成するために、第1の方向にレンズを配設した第1のレンズ行と、第1の方向にレンズを配設した第2のレンズ行とを、第1の方向に平行な仮想直線を中心として第1の方向に直交する第2の方向に配設して、第1のレンズ行のレンズと第2のレンズ行のレンズとが第1の方向に交互に千鳥状に並ぶレンズアレイと、仮想直線の一方側でレンズアレイに対向する一方側発光素子と仮想直線の他方側でレンズアレイに対向する他方側発光素子とを同じ第1の方向の位置に配設した発光素子対を、第1の方向に配設した発光素子アレイと、一方側発光素子および他方側発光素子のうちから発光させる発光素子を択一的に選択する動作を、発光素子対について行なう発光制御部と、を備え、発光制御部は、発光させる発光素子を一方側発光素子と他方側発光素子との間でランダムに選択することを特徴としている。
【0007】
このように構成された露光ヘッドでは、レンズアレイに対向して発光素子アレイが配設されている。この発光素子アレイでは、同じ第1の方向に配設された2個の発光素子(一方側発光素子、他方側発光素子)から発光素子対が構成され、さらに、この発光素子対が第1の方向に配設されている。また、発光制御部は、一方側発光素子および他方側発光素子のうちから発光させる発光素子を択一的に選択する動作を、発光素子対について行なう。そして、発光素子にはレンズアレイが対向しているため、発光制御部により選択された発光素子からの光は、レンズアレイにより被露光面に収束される。こうして、被露光面にスポットが形成される。
【0008】
一方、レンズアレイは、第1の方向にレンズを配設した第1のレンズ行と、同じく第1の方向にレンズを配設した第2のレンズ行を有している。そして、これら第1のレンズ行と第2のレンズ行は、第1の方向に平行な仮想直線を中心として、第1の方向に直交する第2の方向に配設されており、第1のレンズ行のレンズと第2のレンズ行のレンズとが第1の方向に交互に千鳥状に並ぶ。つまり、このレンズアレイでは、仮想直線の一方側に位置するレンズと他方側に位置するレンズとが第1の方向に交互に並んでいる。したがって、このレンズアレイで発光素子からの光を収束させて被露光面を露光すると、レンズアレイでのレンズ配置に関連した露光ムラが目立ってしまう場合があった。
【0009】
これに対して本発明の露光ヘッドでは、発光制御部は、発光させる発光素子を一方側発光素子と他方側発光素子との間でランダムに選択する。これにより、被露光面では、仮想直線の一方側に形成されるスポットと、仮想直線の他方側に形成されるスポットとが、第1の方向にランダムに形成されることとなる。その結果、レンズアレイでのレンズ配置に関連した露光ムラを目立たなくさせることができ、良好な露光が可能となる。
【0010】
この際、発光制御部は、第1の方向への発光素子対の配列と二値の乱数列とを対応付けるとともに、二値のうちの一方の値が対応付けられた発光素子対については一方側発光素子を選択し、二値のうちの他方の値が対応付けられた発光素子対については他方側発光素子を選択するように構成しても良い。このように二値の乱数列に基づいて発光させる発光素子を選択することで、仮想直線の一方側に形成されるスポットと、仮想直線の他方側に形成されるスポットとを、第1の方向にランダムに形成することができる。その結果、レンズアレイでのレンズ配置に関連した露光ムラを目立たなくさせることができ、良好な露光が可能となる。
【0011】
本発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、第1の方向に平行な仮想直線の一方側に位置するレンズと他方側に位置するレンズとが第1の方向に交互に千鳥状に並ぶレンズアレイ、および、仮想直線の一方側でレンズアレイに対向する一方側発光素子と仮想直線の他方側でレンズアレイに対向する他方側発光素子とを同じ第1の方向の位置に配設した発光素子対を第1の方向に配設した発光素子アレイ、を有する露光ヘッドと、一方側発光素子および他方側発光素子のうちから発光させる発光素子を択一的に選択する動作を、発光素子対について行なう発光制御部と、レンズアレイが結像した光によって露光される像担持体と、を備え、発光制御部は、発光させる発光素子を一方側発光素子と他方側発光素子との間でランダムに選択することを特徴としている。
【0012】
このように構成された画像形成装置では、レンズアレイに対向して発光素子アレイが配設されている。この発光素子アレイでは、同じ第1の方向に配設された2個の発光素子(一方側発光素子、他方側発光素子)から発光素子対が構成され、さらに、この発光素子対が第1の方向に配設されている。また、発光制御部は、一方側発光素子および他方側発光素子のうちから発光させる発光素子を択一的に選択する動作を、各発光素子対について行なう。そして、発光素子にはレンズアレイが対向しているため、発光制御部により選択された発光素子からの光は、レンズアレイにより像担持体に収束される。こうして、像担持体にスポットが形成される。
【0013】
一方、レンズアレイでは、第1の方向に平行な仮想直線の一方側に位置するレンズと他方側に位置するレンズとが第1の方向に交互に千鳥状に並んでいる。したがって、このレンズアレイで発光素子からの光を収束させて像担持体を露光すると、レンズアレイでのレンズ配置に関連した露光ムラが目立ってしまう場合があった。
【0014】
これに対して本発明の画像形成装置では、発光制御部は、発光させる発光素子を一方側発光素子と他方側発光素子との間でランダムに選択する。これにより、像担持体では、仮想直線の一方側に形成されるスポットと、仮想直線の他方側に形成されるスポットとが、第1の方向にランダムに形成されることとなる。その結果、レンズアレイでのレンズ配置に関連した露光ムラを目立たなくさせることができ、良好な露光が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】ラインヘッドの構造を示す斜視図。
【図4】ラインヘッドの構造を示す部分断面図。
【図5】ラインヘッドの構成を示す平面透視図。
【図6】レンズアレイによるスポット形成動作を示す模式図。
【図7】スポット形成動作の結果を表としてまとめた図。
【図8】発光素子選択動作を示す平面図。
【図9】発光素子対の配列と乱数列との関係を表として示す図。
【図10】レンズアレイの中心線からスポットまでの距離と光量との関係を示す図。
【図11】主走査方向へ1ライン分のスポットを形成したときの光量比を示す図。
【図12】参考例1におけるスポットサイズの変動をグラフとして示す図。
【図13】参考例2におけるスポットサイズの変動をグラフとして示す図。
【図14】実施例1におけるスポットサイズの変動をグラフとして示す図。
【図15】実施例2におけるスポットサイズの変動をグラフとして示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCがエンジンコントローラーECに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラーECがエンジン部EGおよびヘッドコントローラーHCなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0017】
この実施形態にかかる画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラーMC、エンジンコントローラーECおよびヘッドコントローラーHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット2、転写ベルトユニット8および給紙ユニット7もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、二次転写ユニット12、定着ユニット13およびシート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット7は、ハウジング本体3に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット7および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0018】
画像形成ユニット2は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、図1においては、画像形成ユニット2の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0019】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21は、その回転軸が主走査方向MD(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モーターに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより、感光体ドラム21表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに搬送される。また、感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作が実行される。カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時は、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
【0020】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラーを備えている。この帯電ローラーは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って従動回転する。また、この帯電ローラーは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を所定の表面電位に帯電させる。
【0021】
ラインヘッド29は、その長手方向LGDが主走査方向MDに平行もしくは略平行となるように、かつ、その幅方向LTDが副走査方向SDに平行もしくは略平行となるように配置されている。ラインヘッド29は、長手方向LGDに配列された複数の発光素子を備えており、感光体ドラム21に対向配置されている。そして、これらの発光素子から、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に向けて光を照射して該表面に静電潜像を形成する。
【0022】
図3はラインヘッドの構造を示す斜視図である。同図では、ヘッド基板294の裏面側の構成が記載されており、表面側の構成は省略されている。なお、ヘッド基板294が有する2面のうち、同図上側の面を表面とし、同図下側の面を裏面とする。また、図4は、ラインヘッドの構造を示す部分断面図である。これらの図では、主走査方向MDおよび副走査方向SDに直交する方向であって発光素子Eの光の射出方向(換言すれば、ラインヘッド29から感光体ドラム21に向かう方向)に、光軸方向Doaが付されている。
【0023】
ラインヘッド29は、その本体291の内部にガラス基板であるヘッド基板294を備えており、このガラス基板294の裏面294−tには、複数の発光素子Eが主走査方向MD(長手方向LGD)に並んで発光素子アレイAe(図5)が構成される。各発光素子Eはいわゆるボトムエミッション型の有機EL(Electro-Luminescence)素子である。さらに、ヘッド基板294の裏面294−tには、低温ポリシリコン薄膜トランジスタ(low temperature poly silicon thin film transistor:LTPS-TFT)で構成された駆動回路295が設けられている。そして、各発光素子Eは、駆動回路295から駆動電流の供給を受けて、互いに同一波長の光ビームを射出する。
【0024】
このように、ヘッド基板裏面294−tに設けられた発光素子Eに対して、屈折率分布型ロッドレンズアレイRLA(以下、レンズアレイRLAと略称する)がヘッド基板表面294−h側から対向する。したがって、発光素子Eの発光面から射出した光ビームはヘッド基板294を透過して、レンズアレイRLAに入射する。こうして発光素子Eから射出した光ビームが、レンズアレイRLAにより正立等倍で結像されて、感光体ドラム21表面にスポットSPが形成される。そして、スポットSPにより露光された部分が除電されて、静電潜像が感光体ドラム21の表面に形成される。
【0025】
図1に戻って装置構成の説明を続ける。現像部25は、その表面にトナーを担持する現像ローラー251を有する。そして、現像ローラー251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラー251に印加される現像バイアスによって、現像ローラー251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラー251から感光体ドラム21に移動してその表面に形成された静電潜像が顕像化される。
【0026】
現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する一次転写位置TR1において転写ベルト81に一次転写される。
【0027】
また、感光体ドラム21の回転方向D21の一次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナ27が設けられている。この感光体クリーナ27は、感光体ドラムの表面に当接することで一次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0028】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラー82と、図1において駆動ローラー82の左側に配設される従動ローラー83(ブレード対向ローラー)と、これらのローラーに張架され駆動ローラー82の回転により図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、カートリッジ装着時において各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の一次転写ローラー85Y、85M、85Cおよび85Kを備えている。これらの一次転写ローラーは、それぞれ一次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。
【0029】
カラーモード実行時は、図1および図2に示すように全ての一次転写ローラー85Y、85M、85Cおよび85Kを画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に一次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラー85Y等に一次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する一次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写する。すなわち、カラーモードにおいては、各色の単色トナー像が転写ベルト81上において互いに重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0030】
さらに、転写ベルトユニット8は、ブラック用一次転写ローラー85Kの下流側で且つ駆動ローラー82の上流側に配設された下流ガイドローラー86を備える。この下流ガイドローラー86は、一次転写ローラー85Kが画像形成ステーション2Kの感光体ドラム21に当接して形成する一次転写位置TR1での一次転写ローラー85Kとブラック用感光体ドラム21(K)との共通接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0031】
給紙ユニット7は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラー79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラー79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラー対80によって給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って、駆動ローラー82と二次転写ローラー121とが当接する二次転写位置TR2に給紙される。
【0032】
二次転写ローラー121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、二次転写ローラー駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラー131と、この加熱ローラー131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が二次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラー131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラー1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラー1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラー131の周面に押し付けることで、加熱ローラー131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0033】
前記した駆動ローラー82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、二次転写ローラー121のバックアップローラーとしての機能も兼ねている。駆動ローラー82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する二次転写バイアス発生部から二次転写ローラー121を介して供給される二次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラー82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、二次転写位置TR2へシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達されることに起因する画質の劣化を防止することができる。
【0034】
また、この装置では、ブレード対向ローラー83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラー83に当接することで、二次転写後に転写ベルト81に残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナブレード711及び廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラー83と一体的に構成されている。
【0035】
なお、この実施形態においては、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kの感光体ドラム21、帯電部23、現像部25および感光体クリーナ27を一体的にカートリッジとしてユニット化している。そして、このカートリッジが装置本体に対し着脱可能に構成されている。また、各カートリッジには、該カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリーがそれぞれ設けられている。そして、エンジンコントローラーECと各カートリッジとの間で無線通信が行われる。こうすることで、各カートリッジに関する情報がエンジンコントローラーECに伝達されるとともに、各メモリー内の情報が更新記憶される。これらの情報に基づき各カートリッジの使用履歴や消耗品の寿命が管理される。
【0036】
以上が、本発明を適用可能であるラインヘッド29およびそれを用いた画像形成装置の概略構成である。続いて、ラインヘッド29のより詳細な構成および動作について説明する。図5は、ラインヘッドの構成を示す平面透視図であり、光軸方向Doaからラインヘッドを見た場合に相当する。
【0037】
まず、レンズアレイRLAの構成について説明する。同図に示すように、複数のレンズLS1(第1のレンズ)が主走査方向MDに直線状にレンズピッチPlsで並んで、第1のレンズ行Rl1が構成されている。同様に、複数のレンズLS2(第2のレンズ)が主走査方向MDに直線状にレンズピッチPlsで並んで、第2のレンズ行Rl2が構成されている。なお、レンズLS1、LS2は屈折率分布型のロッドレンズであり、正立等倍の結像倍率を有する。そして、主走査方向MDに平行な仮想直線VL(中心線VL)を中心として、第1のレンズ行Rl1と第2のレンズ行Rl2とが副走査方向SDに並んで配置される。こうして、第1のレンズLS1と第2のレンズLS2とが、主走査方向MDに交互に千鳥状に並ぶレンズアレイRLAが構成される。また、レンズアレイRLAは、繊維強化プラスチックからなる2枚の側板FRPにより副走査方向SDから挟み込まれている。
【0038】
一方、このレンズアレイRLAに対向する発光素子アレイAeは、次のような構成を有する。発光素子アレイAeでは、光軸方向Doaからの平面視において、中心線VLの一方側でレンズアレイRLAに対向する発光素子E1と、中心線VLの他方側でレンズアレイRLAに対向する発光素子E2とが、同じ主走査方向MDの位置に配置されて、1対の発光素子対Deが構成されている。そして、複数の発光素子対Deが、主走査方向MDに発光素子ピッチPeで並んでいる。こうして、中心線VLの一方側では、発光素子E1がM行千鳥(Mは2以上の整数で、本実施形態ではM=4)で主走査方向MDに並んで、第1の発光素子ラインLe1が構成されるとともに、同じく、中心線VLの他方側でも、発光素子E2がM行千鳥で主走査方向MDに並んで、第2の発光素子ラインLe2が構成される。
【0039】
なお、同じ発光素子対Deに属する2個の発光素子E1、E2は、主走査方向MDにおける位置が同じである。したがって、これらの発光素子E1、E2は、感光体ドラム21表面(被露光面)において同じ主走査方向MDの位置にスポットSPを形成することができる。そこで、ヘッドコントローラーHCは、感光体ドラム21表面を露光するために発光させる発光素子を、発光素子E1、E2のうちから択一的に選択する(発光素子選択動作)。この発光素子選択動作は、ヘッドコントローラーHCによって、複数の発光素子対Deのそれぞれについて実行される。そして、ヘッドコントローラーHCは、発光素子E1、E2の消耗等に応じて、選択する発光素子E1、E2を適宜切り換えて、露光動作を実行する。なお、発光素子選択動作の詳細は後述する。
【0040】
上述のとおり、レンズアレイRLAでは、主走査方向MDに平行な中心線VLの一方側に位置するレンズLS1と他方側に位置するレンズLS2とが主走査方向MDに交互に千鳥状に並ぶ。そして、レンズアレイRLAがこのようなレンズ配置を有するために、レンズアレイRLAにより形成されるスポットSPの大きさは、該スポット形成に供する発光素子Eと上記中心線VLとの位置関係に依存する。これについて説明すると、次のとおりである。
【0041】
図6は、レンズアレイによるスポット形成動作を示す模式図である。図7は、スポット形成動作の結果を表としてまとめた図である。これらの図において、「パターン1」は、第1の発光素子ラインLe1を構成する発光素子Eのうち、中心線VLから最も遠い発光素子Eaによるスポット形成動作に対応し、「パターン2」は、第1の発光素子ラインLe1を構成する発光素子Eのうち、中心線VLから最も近い発光素子Ebによるスポット形成動作に対応し、「パターン3」は、第2の発光素子ラインLe2を構成する発光素子Eのうち、中心線VLから最も近い発光素子Ecによるスポット形成動作に対応し、「パターン4」は、第2の発光素子ラインLe2を構成する発光素子Eのうち、中心線VLから最も遠い発光素子Edによるスポット形成動作に対応している。
【0042】
図6の「パターン1」の欄に示すように、発光素子Eaが射出した光は、第1のレンズLS1および第2のレンズLS2の両方に入射する。そして、レンズLS1、LS2のそれぞれが、被露光面ESの略同じ位置に光を収束させる。こうして、レンズLS1、LS2それぞれによる収束光が重ね合わされて1個のスポットSPが被露光面ESに形成される。このとき、レンズLS1による収束光は、被露光面ESに対して比較的大きな見込み角θ1で入射し、また、被露光面ESに対する該収束光の入射角は小さい(つまり、被露光面ESに対して光軸方向Doaの比較的正面から入射している)。しかしながら、レンズLS2による収束光は、被露光面ESに対して比較的小さな見込み角θ2で入射し、また、被露光面ESに対する該収束光の入射角は大きい(つまり、被露光面ESに対して光軸方向Doaの斜めから入射している)。そのため、結果的には、スポットSPの形成に供する光の量は比較的少なくなるとともに、この光の強度分布はブロードとなり、スポットSPはぼやけて大きくなってしまう(図7)。
【0043】
このように、レンズアレイRLAの中心線VLからの距離が遠いため、発光素子EaによるスポットSPはぼやけて大きくなってしまう。また、図6、図7の「パターン4」の欄に示すように、同じく中心線VLからの距離が遠い発光素子EdによるスポットSPもぼやけて大きくなってしまう。一方、中心線VLからの距離が近い発光素子によるスポット形成は、これと異なる(パターン2、パターン3)。
【0044】
図6の「パターン2」の欄に示すように、発光素子Ebが射出した光は、第1のレンズLS1および第2のレンズLS2の両方に入射する。そして、レンズLS1、LS2のそれぞれが、被露光面ESの略同じ位置に光を収束させる。こうして、レンズLS1、LS2それぞれによる収束光が重ね合わされて1個のスポットSPが被露光面ESに形成される。このとき、レンズLS1およびレンズLS2のいずれの収束光も、被露光面ESに対して比較的大きな見込み角θ1、θ2で入射し、また、被露光面ESに対するこれらの収束光の入射角は比較的小さい(つまり、被露光面ESに対して光軸方向Doaの比較的正面から入射している)。そのため、スポットSPの形成に供する光の量は比較的多くなるとともに、この光の強度分布はシャープとなり、小さなスポットSPを形成することができる。また、図6、図7の「パターン3」の欄に示すように、同じく中心線VLからの距離が近い発光素子Ecも、小さなスポットSPを形成することができる。
【0045】
このように、レンズアレイRLAの中心線VLからの距離が遠い発光素子Eほど、形成するスポットSPが大きくなってしまう。したがって、被露光面ESにおいては、レンズアレイRLAでのレンズ配置に関連した露光ムラが生じることとなる。より具体的には、レンズ行Rl1、Rl2でのレンズピッチPlsを周期とする露光ムラが生じる。そして、露光に用いる発光素子Eの選択パターンによっては(例えば、第1の発光素子ラインLe1の発光素子E1のみを選択した際、あるいは、第2の発光素子ラインLe2の発光素子E2のみを選択した際)、このレンズピッチPls周期での露光ムラが目立ってしまう場合があった。かかる問題に対応すべく、本実施形態では、次のようにして発光素子選択動作が実行される。
【0046】
図8は、発光素子選択動作を示す平面図である。図8では、主走査方向MDに並ぶ発光素子対の配列に対して順番に符号De(1)、De(2)、…が付されている。図9は、発光素子選択動作で用いられる乱数列と発光素子対配列との関係を表として示す図である。つまり、この実施形態では、ヘッドコントローラーHCによって、図8に示すような二値の乱数列に基づいて、発光させる発光素子がランダムに選択される。具体的には、二値の乱数列が生成されて、この乱数列と発光素子対配列De(1)、De(2)、…とが一対一で対応付けられる。なお、この二値の乱数列の生成は、周知の種々の乱数生成器により行なうことができる。そして、値「0」が対応付けられた発光素子対De(2)、De(6)、De(7)、…等については、発光素子E1が発光させる発光素子として選択される一方、値「1」が対応付けられた発光素子対De(1)、De(3)、De(4)、…等については、発光素子E2が発光させる発光素子として選択される。こうして、図8に示すように発光させる発光素子が発光素子E1、E2との間でランダムに選択される。なお、図8において、斜めのハッチングが施された発光素子が、露光のために選択された発光素子であり、ハッチングが施されていない発光素子が、露光のために選択されなかった発光素子である。
【0047】
このように露光に供する発光素子をランダムに選択することで、感光体ドラム21表面(被露光面ES)では、中心線VL(仮想直線)の一方側に形成されるスポットSPと、中心線VL(仮想直線)の他方側に形成されるスポットSPとが、主走査方向MDにランダムに並んで形成されることとなる。その結果、レンズアレイRLAでのレンズ配置に関連した露光ムラを目立たなくさせることができ、良好な露光が可能となる。
【0048】
なお、ヘッドコントローラーHCは、図8のハッチングを施した発光素子E1、E2のいずれかが消耗して光量が低下した際には、露光のために発光させる発光素子を図8でハッチングを施していない発光素子E1、E2に一斉に切り換える。そして、この切り換え後の露光動作においても、感光体ドラム21表面(被露光面ES)では、中心線VL(仮想直線)の一方側に形成されるスポットSPと、中心線VL(仮想直線)の他方側に形成されるスポットSPとが、主走査方向MDにランダムに並んで形成されることとなる。その結果、レンズアレイRLAでのレンズ配置に関連した露光ムラを目立たなくさせることができ、良好な露光が可能となる。
【0049】
その他
このように、上記実施形態では、ラインヘッド29が(あるいは、ラインヘッド29とヘッドコントローラーHCが協働して)本発明の「露光ヘッド」として機能している。また、主走査方向MDが本発明の「第1の方向」に相当し、副走査方向SDが本発明の「第2の方向」に相当し、発光素子E1が本発明の「一方側発光素子」に相当し、発光素子E2が本発明の「他方側発光素子」に相当し、ヘッドコントローラーHCが本発明の「発光制御部」に相当している。また、感光体ドラム21が本発明の「像担持体」に相当している。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、発光素子の選択がランダムである事から、一方側あるいは他方側のみが連続して長く選択される場合が想定される。そこで、これを避けるために、ランダム選択であってもレンズ周期Pls以上の連続選択を制限するようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、第1・第2の発光素子ラインLe1、Le2のそれぞれにおいて、4行千鳥で発光素子が並んでいたが、発光素子の配列態様はこれに限られない。
【0052】
また、ラインヘッド29が備える全ての発光素子対Deに対して、図8で示したような発光素子選択動作を適用しなくても良い。つまり、一部の発光素子対Deについて、上述の発光素子選択動作(発光させる発光素子を発光素子E1と発光素子E2との間でランダムに変える選択動作)を適用することで、当該一部の発光素子対Deについて上述の効果を奏することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、ヘッドコントローラーHCをラインヘッド29の本体291の外部に設けているが、ヘッドコントローラーHCをラインヘッド29の本体291の内部に設けても良い。
【0054】
また、上記実施形態では、発光素子Eとしてボトムエミッション型の有機EL素子が用いられている。しかしながら、トップエミッション型の有機EL素子を発光素子Eとして用いても良く、あるいは有機EL素子以外のLED(Light Emitting Diode)等を発光素子Eとして用いても良い。
【実施例】
【0055】
次に本発明の実施例を示すが、本発明はもとより下記の実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の趣旨に適合しうる範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0056】
上記実施形態でも述べたとおり、正立等倍のレンズLS1、LS2を主走査方向MDに交互に千鳥状に並べたレンズアレイRLAを用いた場合、レンズアレイRLAの中心線VLから副走査方向SDに離れるにしたがって、スポット形成に供する光量が低下し、その結果、レンズピッチPlsを周期とする露光ムラが発生する。これについて、より具体的な数値例を示して説明する。
【0057】
図10は、レンズアレイの中心線からスポットまでの距離と、該スポット形成に供する光量との関係をグラフとして示した図であり、横軸は、レンズアレイRLAの中心線VLからスポットSPまでの副走査方向SDへの距離[mm]を示し、縦軸は、光量比[%]を示している。なお、原点に位置するスポットSPの形成に供する光量をLQ0とし、対象となるスポットSPの形成に供する光量をLQ1としたとき、縦軸では、光量比(LQ1−LQ0)/LQ0が百分率で示されている。同図に示すように、レンズアレイRLAの中心線VLから副走査方向SDに離れるにしたがって、スポット形成に供する光量が低下している。
【0058】
そして、図11は、図10に示すレンズアレイを用いて主走査方向へ1ライン分のスポットを形成したときの光量比を、グラフとして示す図であり、横軸は主走査方向MDの位置を示し、縦軸は光量比を示している。また、同図のグラフでは、レンズアレイRLAの中心線VL上に形成される1ライン分のスポットSPの光量比(丸印でプロットされた「副走査ズレ0」)と、レンズアレイRLAの中心線VLから副走査方向SDに距離0.1[mm]外れた位置に形成される1ライン分のスポットSPの光量比(四角印でプロットされた「副走査ズレ+0.1[mm]」と、レンズアレイRLAの中心線VLから副走査方向SDに距離0.2[mm]外れた位置に形成される1ライン分のスポットSPの光量比(三角印でプロットされた「副走査ズレ+0.2[mm]」とが、併記されている。
【0059】
図11に示すように、主走査方向MDに1ライン分のスポットSPにおいて、約0.5[mm]の周期での光量変動が発生している。これは、レンズピッチPlsが約0.5[mm]であることに対応して、光量変動が発生することを示している。また、光量変動の振幅は、レンズアレイRLAの中心線VLから1ライン分のスポットまでの距離の増大に応じて大きくなっている。そして、このようなレンズアレイを用いて露光動作を行なった場合、スポットの大きさの変動が発生する場合があった。
【0060】
次に、このレンズアレイを用いた参考例の露光動作と実施例の露光動作とを説明する。なお、以下の参考例および実施例では、発光素子は図5に示した配置態様を有するとともに、レンズアレイRLAでのレンズピッチPlsは約0.5[mm]である。また、解像度1200dpi(dot per inch)の解像度に対応して、発光素子対Deは約21[μm]の発光素子ピッチPeで並んでいる。したがって、レンズピッチPlsの間に、約24対の発光素子対Deが並ぶこととなる。
【0061】
図12は、参考例1におけるスポットサイズの変動をグラフとして示す図である。同図は、第1の発光素子ラインLe1の発光素子E1のみを選択して露光を行なった場合に相当している。また、同図の横軸の画素番号は、選択した発光素子に対して主走査方向MDに順に付した番号を示し、同図の縦軸はスポットサイズが示されている。
【0062】
また、図13は、参考例2におけるスポットサイズの変動をグラフとして示す図である。同図は、第2の発光素子ラインLe2の発光素子E2のみを選択して露光を行なった場合に相当している。また、同図の横軸の画素番号は、選択した発光素子に対して主走査方向MDに順に付した番号を示し、同図の縦軸はスポットサイズが示されている。
【0063】
参考例1、2のいずれにおいても、比較的長い周期T1、T2でのスポットサイズ変動が見られている。この周期T1、T2はいずれもレンズピッチPlsの長さに相当するものであり、すなわち、レンズピッチPls(=0.5[mm])を周期とするスポットサイズ変動が発生している。この0.5[mm]程度のスポットサイズ変動によって引き起こされる画像濃度ムラは、人の目に視認されやすく、画像品質を大きく損なうおそれがある。
【0064】
図14は、実施例1におけるスポットサイズの変動をグラフとして示す図である。同図は、図8でハッチングが施された発光素子を選択して露光を行なった場合に相当し、すなわち、発光させる発光素子を発光素子E1と発光素子E2との間でランダムに選択している。また、同図の横軸の画素番号は、選択した発光素子に対して主走査方向MDに順に付した番号を示し、同図の縦軸はスポットサイズが示されている。実施例1では、レンズピッチPls(=0.5[mm])を周期とするスポットサイズ変動が目立たなくなっている。その結果、画像濃度ムラを人の目に視認しにくくして、画像品質を向上させることが可能となっている。
【0065】
図15は、実施例2におけるスポットサイズの変動をグラフとして示す図である。同図は、図8でハッチングが施されていない発光素子を選択して露光を行なった場合に相当し、すなわち、発光させる発光素子を発光素子E1と発光素子E2との間でランダムに選択している。また、同図の横軸の画素番号は、選択した発光素子に対して主走査方向MDに順に付した番号を示し、同図の縦軸はスポットサイズが示されている。実施例2では、レンズピッチPls(=0.5[mm])を周期とするスポットサイズ変動が目立たなくなっている。その結果、画像濃度ムラを人の目に視認しにくくして、画像品質を向上させることが可能となっている。
【符号の説明】
【0066】
21…感光体ドラム、 ES…被露光面、 29…ラインヘッド、 291…ラインヘッド本体、 294…ヘッド基板、 294−h…ヘッド基板表面、 294−t…ヘッド基板裏面、 E…発光素子、E1…発光素子(一方側発光素子)、 E2…発光素子(他方側発光素子)、 De…発光素子対、 Ae…発光素子アレイ、 HC…ヘッドコントローラー(発光制御部)、 LS1…第1のレンズ、 LS2…第2のレンズ、 Rl1…第1のレンズ行、 Rl2…第2のレンズ行、 RLA…レンズアレイ、 MD…主走査方向、 SD…副走査方向、 SP…スポット、 VL…仮想直線(中心線)、 Pls…レンズピッチ、 Pe…発光素子ピッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向にレンズを配設した第1のレンズ行と、前記第1の方向にレンズを配設した第2のレンズ行とを、前記第1の方向に平行な仮想直線を中心として前記第1の方向に直交する第2の方向に配設して、前記第1のレンズ行のレンズと前記第2のレンズ行のレンズとが前記第1の方向に交互に千鳥状に並ぶレンズアレイと、
前記仮想直線の一方側で前記レンズアレイに対向する一方側発光素子と前記仮想直線の他方側で前記レンズアレイに対向する他方側発光素子とを同じ前記第1の方向の位置に配設した発光素子対を、前記第1の方向に配設した発光素子アレイと、
前記一方側発光素子および前記他方側発光素子のうちから発光させる発光素子を択一的に選択する動作を、前記発光素子対について行なう発光制御部と、
を備え、
前記発光制御部は、発光させる発光素子を前記一方側発光素子と前記他方側発光素子との間でランダムに選択することを特徴とする露光ヘッド。
【請求項2】
前記発光制御部は、前記第1の方向への前記発光素子対の配列と二値の乱数列とを対応付けるとともに、前記二値のうちの一方の値が対応付けられた発光素子対については前記一方側発光素子を選択し、前記二値のうちの他方の値が対応付けられた発光素子対については前記他方側発光素子を選択する請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項3】
第1の方向に平行な仮想直線の一方側に位置するレンズと他方側に位置するレンズとが前記第1の方向に交互に千鳥状に並ぶレンズアレイ、および、前記仮想直線の一方側で前記レンズアレイに対向する一方側発光素子と前記仮想直線の他方側で前記レンズアレイに対向する他方側発光素子とを同じ前記第1の方向の位置に配設した発光素子対を前記第1の方向に配設した発光素子アレイ、を有する露光ヘッドと、
前記一方側発光素子および前記他方側発光素子のうちから発光させる発光素子を択一的に選択する動作を、前記発光素子対について行なう発光制御部と、
前記レンズアレイが結像した光によって露光される像担持体と、
を備え、
前記発光制御部は、発光させる発光素子を前記一方側発光素子と前記他方側発光素子との間でランダムに選択することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
第1の方向にレンズを配設した第1のレンズ行と、前記第1の方向にレンズを配設した第2のレンズ行とを、前記第1の方向に平行な仮想直線を中心として前記第1の方向に直交する第2の方向に配設して、前記第1のレンズ行のレンズと前記第2のレンズ行のレンズとが前記第1の方向に交互に千鳥状に並ぶレンズアレイと、
前記仮想直線の一方側で前記レンズアレイに対向する一方側発光素子と前記仮想直線の他方側で前記レンズアレイに対向する他方側発光素子とを同じ前記第1の方向の位置に配設した発光素子対を、前記第1の方向に配設した発光素子アレイと、
前記一方側発光素子および前記他方側発光素子のうちから発光させる発光素子を択一的に選択する動作を、前記発光素子対について行なう発光制御部と、
を備え、
前記発光制御部は、発光させる発光素子を前記一方側発光素子と前記他方側発光素子との間でランダムに選択することを特徴とする露光ヘッド。
【請求項2】
前記発光制御部は、前記第1の方向への前記発光素子対の配列と二値の乱数列とを対応付けるとともに、前記二値のうちの一方の値が対応付けられた発光素子対については前記一方側発光素子を選択し、前記二値のうちの他方の値が対応付けられた発光素子対については前記他方側発光素子を選択する請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項3】
第1の方向に平行な仮想直線の一方側に位置するレンズと他方側に位置するレンズとが前記第1の方向に交互に千鳥状に並ぶレンズアレイ、および、前記仮想直線の一方側で前記レンズアレイに対向する一方側発光素子と前記仮想直線の他方側で前記レンズアレイに対向する他方側発光素子とを同じ前記第1の方向の位置に配設した発光素子対を前記第1の方向に配設した発光素子アレイ、を有する露光ヘッドと、
前記一方側発光素子および前記他方側発光素子のうちから発光させる発光素子を択一的に選択する動作を、前記発光素子対について行なう発光制御部と、
前記レンズアレイが結像した光によって露光される像担持体と、
を備え、
前記発光制御部は、発光させる発光素子を前記一方側発光素子と前記他方側発光素子との間でランダムに選択することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−31423(P2011−31423A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177770(P2009−177770)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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