説明

露光方法

【課題】 半導体ウエハを識別するID情報を記録する、また読み取る場合に特別な装置を必要とせず、ID情報の読み取り処理がスループットに影響を与えない半導体処理方法を提供する。
【解決手段】 原板パターンをウエハ上の複数ショット位置に重ね合わせ露光する際、複数のショット位置のうち複数の特定ショット位置におけるマーク位置を計測し、計測値の統計処理から補正量を計算し原板とウエハの位置合わせを行う。重ね合わせ露光時に位置合わせに使用される基準層を露光する際に、ウエハを識別する情報に相当する量として、位置合わせマークを含む複数のショット位置を微小量ずらして露光する。ウエハ識別情報は、ウエハ上に形成される第一階層以降のパターンを形成する露光工程において、前記ウエハの位置合わせ処理で補正量を求める際に、基準層でのずらし量を検出し、検出結果に基づいて取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上の複数のショットを露光する露光方法、および露光された基板を識別する識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、半導体装置の一連の製造工程の中で、製造条件などを管理する必要がある工程は数百工程にも及んでいる。各製造工程においては、各工程毎に多様で且つ厳密な製造条件を設定する必要がある。これらの製造工程の管理は、半導体ウエハの表面にレーザマーキング法によりマーキングされた英数字の文字列からなるID情報を用いて行われることが広く知られている。尚、ID情報のマーキングは、フォトリソグラフィ法を用いることもある(特許文献1)。また、英数字からなる文字列の代わりにバーコードを配置するものもある(特許文献2)。
【特許文献1】特開平10−261559号公報
【特許文献2】特開平4−235693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、英数字の文字列からなるID情報は、読み取りに適した場所に構成するために必要な面積を半導体ウエハ表面上に確保しなければならない。特に半導体ウエハ表面にID情報を構成する場合には、チップ生成領域以外でID情報を読み取り易い位置に、読み取れる大きさのID情報を構成する余白を用意しなければならない。そのため、半導体ウエハ上に配置するショットのレイアウト作成において、非常に大きな制約を課せられるという問題がある。また半導体ウエハは何度も高温での加熱やエッチングに曝されるため、半導体ウエハ表面上のID情報が汚れやすく、読み取りが困難になるという問題がある。
【0004】
更に、CCDカメラ等による英数字の文字列からなるID情報の読み取り装置は、読み取る文字列との間に遮蔽物がない状態で読み取る必要がある。このため、読み取り装置の設置個所が制限されるといった問題がある。また英数字の文字列からなるID情報を付加した半導体ウエハは読み取り位置に、特定時間のあいだ固定、または特定の読み取り速度で通過させなければならないため、半導体製造装置のスループットに影響を与えるといった問題がある。
上述の英数字の文字列からなるID情報に関する問題は、バーコードを用いたID情報と、バーコード読み取り装置の場合も同様に発生する。
本発明は、基板への該基板の識別情報の付与および基板からの該基板の識別情報の取得の少なくとも一方を行う新規な技術の提供を例示的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため本発明の露光方法は、基板上の複数のショットを露光する露光方法であって、基準となる第1のショットレイアウトを生成する第1の生成ステップと、該基板の識別情報に応じた移動量だけ該第1のショットレイアウトに含まれる少なくとも1つの特定のショットを移動させることにより、該識別情報を示す第2のショットレイアウトを生成する第2の生成ステップと、該第2のショットレイアウトにしたがって該基板が露光されるようにする露光ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、基板への該基板の識別情報の付与および基板からの該基板の識別情報の取得の少なくとも一方を行う新規な技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の好ましい実施の形態として、半導体ウエハ(基板)上の複数のショットを露光する露光方法を説明する。まず、基準となる第1のショットレイアウトを生成する(第1の生成ステップ)。次に、第1のショットレイアウトに含まれる少なくとも1つの特定のショットを、ウエハの識別情報に応じた移動量だけ移動させることにより、該識別情報を示す第2のショットレイアウトを生成する(第2の生成ステップ)。そして、この第2のショットレイアウトにしたがってウエハを露光する(露光ステップ)。
【0008】
ここで、第1のショットレイアウトは従来例におけると同様の例えば、複数のショットがXおよびY方向に規則正しく配列されたショットレイアウトである。例えば、図1において、斜線を付して示されるショットが特定のショット(以下、マーキングショットという)である。このマーキングショットを含めて実線で示されるショットの配列が第2のショットレイアウトを示している。また、マーキングショットを識別情報に応じた移動量だけ移動させる前の点線の位置に戻した状態が第1のショットレイアウトを示している。
【0009】
前記露光ステップの後、該基板を再度露光する際は、第1のショットレイアウトを基準とした、マーキングショットを除く複数のショット(以下、アライメントショットという)にそれぞれ配されたマークの位置ずれ量を計測する(計測ステップ)。そして、該計測された位置ずれ量を近似する、第1のショットレイアウトにおける座標の関数を第1の関数として算定する(算定ステップ)。ここで、マーキングショットの移動量は、該算定された第1の関数により算出される位置ずれ量の誤差より十分に大きく設定される。これにより、前記マーキングショットの移動量を、プロセス誤差による各ショットの位置ずれと明確に区別することができる。
【0010】
第1の関数は、例えば1次関数の場合、計測された位置ずれ量を(Δx、Δy)、第1のショットレイアウトにおける座標を(x、y)としたとき、次式のように表わされる。
Δ=βx−θy+s
Δy=θx+βy+s
ここで、β、β、θ、θは、x方向ウエハ倍率、y方向ウエハ倍率、ウエハx軸回転、ウエハy軸回転をそれぞれ示す係数、s、sは、x方向ウエハシフト、y方向ウエハシフトをそれぞれ示す定数(零次の係数)である。
【0011】
また、第1の関数は、第1のショットレイアウトにおける座標の零次の関数を含むことができる。零次の関数とは、例えば次式のような関数である。
Δ=s
Δ=s
【0012】
上記の露光方法にしたがって露光された基板は、以下のようにして、識別することができる。
まず、第1のショットレイアウトを基準として、少なくとも1つのマーキングショットと複数のアライメントショットとにそれぞれ配されたマークの位置ずれ量を計測する(計測ステップ)。計測は、アライメント線さ
次に、複数のアライメントショットに関して計測されたマークの位置ずれ量を近似する、該第1のショットレイアウトにおける座標の関数を第1の関数として算定する(第1の算定ステップ)。次いで、算定された第1の関数にしたがって前記マーキングショットに配されたマークの位置ずれ量を算出する(算出ステップ)。マーキングショットに配されたマークに関し、該計測された位置ずれ量と該算出された位置ずれ量との差に基づいて移動量を特定する(特定ステップ)。該特定された移動量に基づき、該基板を識別する(識別ステップ)。
【0013】
上記の識別方法にしたがって識別された基板は、以下のようにして露光することができる。
まず、マーキングショットに配されたマークに関し、該計測された位置ずれ量を該移動量だけ補正する(補正ステップ)。該補正された位置ずれ量と前記複数のアライメントショットに関して計測されたマークの位置ずれ量とを近似する、該第1のショットレイアウトにおける座標の関数を第2の関数として算定する(第2の算定ステップ)。該算定された第2の関数により算出された位置ずれ量にしたがってアライメントショットが露光されるようにし、かつ該移動量と該算定された第2の関数により算出された位置ずれ量とにしたがってマーキングショットが露光されるようにする(露光ステップ)。
【0014】
上述の各方法は、コンピュータが実行可能なプログラムとして作成することができる。例えば、基板上の複数のショットを露光する露光装置の動作を制御するCPUは、上記プログラムにしたがって動作することにより、上述の各方法を実施することができる。
【0015】
上記のプログラムにしたがって動作する露光装置の動作例を説明する。
レチクル(原版)のパターンを半導体ウエハ(被露光基板)上の複数のショット位置に重ね合わせ露光する際に、前記複数のショット位置のうち複数の特定ショット位置における位置合わせマークの位置を計測する。計測は、アライメントセンサを用いて行う。更に、その計測値の統計処理から補正量を計算し原板と半導体ウエハの位置合わせを行う。そして、重ね合わせ露光時に位置合わせに使用される基準層を露光する際は、半導体ウエハを識別する情報に相当する量として、位置合わせマークを含む少なくとも1つのショット位置(一部のショット位置)を微小量ずらして露光する。また、半導体ウエハを識別する情報は、半導体ウエハ上に形成される第一階層以降のパターンを形成するフォトリソグラフィ工程の露光工程において、半導体ウエハの位置合わせ処理で補正量を求める際に、基準層でのずらし量を検出し、取得する。すなわち、前記位置合わせマークの位置計測値から基準となる特定のショットレイアウトからずれたショット位置及びそのずれ量を算出し、その算出値からその半導体ウエハを識別する情報を読み取る。
【0016】
半導体ウエハに付加された半導体ウエハ識別情報は、半導体露光装置のアライメントセンサで容易に読み取ることができるため、英数字の文字列やバーコードからなるID情報のように専用の読み取り装置を半導体露光装置に備える必要が無くなる。また、この半導体ウエハ識別情報は、重ね合わせ露光時の位置合わせ処理用位置合わせマークを利用している為、高温での加熱処理やエッチングに曝されても、読み取りが困難になるようなことが無い。更に、この半導体ウエハ識別情報の読み取り処理は、重ね合わせ露光時の位置合わせ処理と同時に行われる為、半導体露光装置のスループットに影響を与えるといった問題が無い。
また、本発明を半導体露光装置の特性確認用の基準ウエハに適用すると、半導体露光装置に半導体ウエハをセットするだけで、半導体露光装置がウエハを自動的に識別し処理を行うことが可能になる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
[実施例1]
図4は本発明の一実施例に係る露光装置の構成を示す。図4において、Rはレチクル、Wはウエハ、1は投影レンズ(投影光学系)、Sはアライメント用光学系である。また、アライメント用光学系Sの構成要素として、2はアライメント用の照明装置、3はビームスプリッタ、4はアライメントスコープ、5は撮像装置である。
【0018】
アライメント用の照明装置2からの照明光は、ビームスプリッタ3、投影レンズ1を介してウエハW上のマークを照明し、マークの像は投影レンズ1、ビームスプリッタ3、アライメントスコープ4を介して撮像装置5に結像される。A/D変換装置6は、撮像装置5からの撮像信号をデジタル信号に変換する。このデジタル信号は、積算装置7で積算された後、位置検出装置8に入力される。位置検出装置8は、テンプレートマッチング法によりマークの位置計測情報を検出する。位置検出装置8はα、βおよびγのテンプレートを持ち、マークの種類に応じて高速に処理を切り替えることができる。各々のマークの位置計測情報はCPU9で統計処理されて、ウエハW全体の位置、倍率、回転を表す格子情報に変換され、この格子情報にしたがって、ステージ駆動装置10がXYステージ11を駆動してウエハを移動させる。12は処理に必要な情報を保存するための記憶装置である。
【0019】
本実施例は、重ね合わせ露光時に位置合わせに使用される基準層を露光する際に、半導体ウエハを識別する情報に相当する量として、位置合わせマークを含む複数のショット位置をXY方向に微小量ずらして露光する方法による例を示す。
【0020】
図1にアライメント処理時の計測ショット配置の例を表す。計測ショット群は、2つのクループに分けられる。第1のグループは、半導体ウエハ識別に使用しないショット群(プリアライメントショット)とし、第2のグループは、半導体ウエハ識別に使用するショット群(マーキングショット)とする。図1では、プリアライメントショットを4個(A1〜A4)、マーキングショットを4個(B1〜B4)としている。但し、この数は固定ではなく、プリアライメントショット数は2個以上、マーキングショットの数は半導体ウエハ識別用のIDの総数を十分に表現できる数があれば良い。
【0021】
半導体ウエハに対してアライメント用基準層を作成するとき、プリアライメントショットはショットレイアウトに従った位置に露光する。一方、マーキングショットはそれぞれXY方向各5段階(−200nm、−100nm、0nm、100nm、200nm)のシフトを発生させた位置のうち、半導体ウエハを識別する情報に相当する位置に露光する。
【0022】
図2にマーキングショットの配置例を示す。Cはショットレイアウト(第1のショットレイアウト)に従った場合のマーキングショット位置である。DはCの中心からそれぞれXY方向5段階(−200nm、−100nm、0nm、100nm、200nm)シフトした場合の中心点である。EはCに対してX方向に200nm、Y方向に100nmずらした位置に露光されたマーキングショット位置である。
【0023】
ここでは、マーキングショットを、半導体ウエハを識別する情報に応じて、XY各方向に100nmを単位移動量として、シフト(移動)させた位置に露光している。この値としては、半導体ウエハを識別するために故意にずらした量とアライメントセンサでプロセス起因の重ね合わせ誤差として検出される量とを容易に区別できる量以上を設定する。
【0024】
このようなマーキングショットの位置指定方法では、一つのマーキングショットで25通りの組み合わせを表現できる。マーキングショットの総数をN個とすると、マーキングショットの位置の組み合わせ数は5×5のN乗となる。マーキングショットの数は、半導体ウエハ識別用のIDを十分に表現できる数にすればよい。
【0025】
図3は、プリアライメントショットとマーキングショットを配置された半導体ウエハを処理するフォトリソグラフィ工程の露光工程において、アライメント用基準層に対して位置合わせを行う手順を示すフローチャートである。
まず、プリアライメントショットとマーキングショットの位置合わせマークを計測する(ステップ101、ステップ102)。次にプリアライメントショットの位置合わせマーク計測結果に基づいて仮のウエハの一次線形補正量(シフト、倍率、回転)を算出する(ステップ103)。ここで得られた仮のウエハ一次線形補正量を用いて、マーキングショットの位置合わせマーク計測結果を補正し補正残差(補正誤差)を算出する(ステップ104)。
【0026】
マーキングショットは、アライメント用基準層作成時にそれぞれXY方向5段階(−200nm、−100nm、0nm、100nm、200nm)のシフトを発生させた位置に露光されている。したがって、補正残渣が−250nmから−150nmの場合は−200nm、−150nmから−50nmの場合は−100nmというように容易に半導体ウエハ識別情報の為に故意にずらした量をマーキングショット毎に算出することができる(ステップ105)。
【0027】
このように各マーキングショットが、ウエハ識別情報の為にその露光位置がどのようにずらされているかが判れば、すべてのマーキングショットのずらした量の組み合わせから、ウエハ識別IDを得ることができる(ステップ106)。また、マーキングショットの位置合わせマーク計測値をウエハ識別の為のずらし量で補正した値と、プリアライメントショットの位置合わせマーク計測値から真のウエハ一次線形補正量(シフト、倍率、回転)を算出することができる(ステップ107、ステップ108)。その後、半導体ウエハを露光するときは、真のウエハの一次線形補正量とマーキングショットに対するウエハ識別情報の為に故意にずらした量を用いて位置合わせ処理が行われる。
【0028】
図1に示すようなアライメント用基準層に対して位置合わせを行う図3のような手順に実際のプリアライメントショットとマーキングショットの位置合わせマークの計測値を当てはめてみる。尚、判り易くするためにウエハの一次線形補正は、倍率、及び回転成分に対しては実施せず、シフト成分のみに対して行った。表1はプリアライメントショットの位置合わせマークの計測値、表2はマーキングショットの位置合わせマークの計測値である。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

プリアライメントショットの位置合わせマークの計測値を使って、仮のウエハ一次線形補正量を計算すると表3の結果が得られる。
【0031】
【表3】

仮のウエハ一次線形補正量を用いて、プリアライメントショット、及びマーキングショットの位置合わせマークの計測値を補正した残渣は、表4となる。
【0032】
【表4】

表4のマーキングショットの位置合わせマークの計測値を補正残渣と、アライメント用基準層作成時にマーキングショットがそれぞれXY方向5段階(−200nm、−100nm、0nm、100nm、200nm)のシフトを発生させた位置に露光されている。これを考慮すると、マーキングショットB1〜B4がウエハ識別のために故意にずらされた量が表5のようになる。
【0033】
【表5】

マーキングショットはそれぞれXY方向5段階にシフトが発生しているので、それぞれのマーキングショットの位置は、5×5のマトリックスと見なすことができ、ウエハ識別用IDとして取り扱うことができる。表5で示すずらし量でマーキングショットの位置合わせマークの計測値を補正すると、表6で示す補正値を得ることができる。
【0034】
【表6】

表1で示すプリアライメントショットの位置合わせマーク計測値と、表6で示すずらし量を補正したマーキングショットの位置合わせマーク計測値から、表7に示す真のウエハ一次線形補正量を得ることができる。
【0035】
【表7】

露光処理を行う場合は、マーキングショット以外は表7に示す補正量を用いて補正した位置に露光処理を行い、マーキングショットは、表5、及び表7に示す補正量を用いて補正した位置に露光処理を行う。
【0036】
上述のような方法を用いることによって、ウエハ識別用IDを半導体ウエハに記録する場合も、またそれを読み取る場合も、特別な装置を用意する必要が無い。また、本方法では、半導体ウエハ識別情報の読み取り処理は、重ね合わせ露光時の位置合わせ処理と同時に行われる為、半導体露光装置のスループットに影響を与えるといった問題が発生しない。
この方法を半導体露光装置の特性確認用の基準ウエハに適用すると、半導体露光装置に半導体ウエハをセットするだけで、半導体露光装置がウエハを自動的に識別し処理を行うようなことが可能となる。
【0037】
[実施例2]
半導体ウエハに対してアライメント用基準層を作成するとき、実施例1ではマーキングショットに対して単純なXY方向の位置ずれを用いた。しかし、半導体ウエハの識別に必要な位置ずれは、単純なXY方向の位置ずれだけではなく、ウエハ倍率、又はウエハ回転に依存する位置ずれを発生させた場合でも有効である。すなわち、半導体ウエハの識別に必要な位置ずれとしては、Xシフト、Yシフト、ウエハ倍率X、ウエハ倍率Y、ショット倍率X、ショット倍率Y、ショット回転、ショットスキューの1つまたは複数の組み合わせを用いることができる。
【0038】
ウエハ倍率に基づく位置ずれが発生した場合の、プリアライメントショットの位置合わせマーク計測値、及びそれに基づく仮のウエハ一次線形補正とマーキングショットの位置合わせマーク計測値の関係を図5に示す。図5では、X方向のウエハ倍率に関する関係図を示している。この図に示すように、プリアライメントショットとマーキングショットでは、仮のウエハ一次線形補正を行った場合の補正残渣が明確に異なる。それぞれのマーキングショットの補正残渣の組み合わせによって、単純なXY方向の位置ずれを用いた場合と同様にウエハ識別情報をマーキングウエハの位置合わせ計測マークの計測値から得ることができる。
【0039】
なお、以上では、ウエハ識別情報の付与または取得について述べた。しかし、付与または取得される情報は、ウエハ識別情報に限られるものではなく、ウエハに対する露光条件に関する情報等のウエハに関連する他の情報であってもよく、当該他の情報を追加してもよい。
【0040】
[デバイス製造の実施例]
次に、上記の露光装置を利用した微小デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造プロセスを説明する。
図6は半導体デバイスの製造のフローを示す。
ステップ1(回路設計)では半導体デバイスの回路設計を行う。ステップ2(マスク製作)では設計したパターンを形成したマスク(原版またはレチクルともいう)を製作する。
一方、ステップ3(ウエハ製造)ではシリコン等の材料を用いてウエハ(基板ともいう)を製造する。ステップ4(ウエハプロセス)は前工程と呼ばれ、上記用意したマスクを設置した露光装置とウエハを用いて、リソグラフィ技術によってウエハ上に実際の回路を形成する。
次のステップ5(組立)は後工程と呼ばれ、ステップ4によって作製されたウエハを用いて半導体チップ化する工程である。後工程は、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の組立工程を含む。ステップ6(検査)ではステップ5で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、ステップ7でこれを出荷する。
【0041】
上記ステップ4のウエハプロセスは、ウエハの表面を酸化させる酸化ステップ、ウエハ表面に絶縁膜を成膜するCVDステップ、ウエハ上に電極を蒸着によって形成する電極形成ステップステップを有する。また、ウエハにイオンを打ち込むイオン打ち込みステップ、ウエハに感光剤を塗布するレジスト処理ステップ、上記の露光装置を用いて、回路パターンを有するマスクを介し、レジスト処理ステップ後のウエハを露光する露光ステップを有する。更に、露光ステップで露光したウエハを現像する現像ステップ、現像ステップで現像したレジスト像以外の部分を削り取るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト剥離ステップを有する。これらのステップを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例に係るショットレイアウトを示す図である。
【図2】図1におけるマーキングショットの配置例を示す図である。
【図3】アライメント用基準層に対して位置合わせを行う手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施例に係るアライメント装置の構成を示す図である。
【図5】プリアライメントショットの位置合わせマーク計測値、及びそれに基づく仮のウエハ一次線形補正とマーキングショットの位置合わせマーク計測値の相関関係を示す図である。
【図6】デバイスの製造プロセスのフローを説明する図である。
【符号の説明】
【0043】
1:投影レンズ、2:照明装置、3:ビームスプリッタ、4:アライメントスコープ、5:撮像装置、6:A/D変換装置、7:積算装置、8:位置検出装置、9:CPU、10:ステージ駆動装置、11:XYステージ、12:記憶装置、13〜16:位置合わせマーク、R:レチクル、W:ウエハ、S:光学系、α,β,γ:テンプレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の複数のショットを露光する露光方法であって、
基準となる第1のショットレイアウトを生成する第1の生成ステップと、
該基板の識別情報に応じた移動量だけ該第1のショットレイアウトに含まれる少なくとも1つの特定のショットを移動させることにより、該識別情報を示す第2のショットレイアウトを生成する第2の生成ステップと、
該第2のショットレイアウトにしたがって該基板が露光されるようにする露光ステップと、
を有することを特徴とする露光方法。
【請求項2】
前記露光ステップの後、該基板を再度露光する際に、該第1のショットレイアウトを基準とした、該少なくとも1つの特定のショットを含まない複数のショットにそれぞれ配されたマークの位置ずれ量が計測されるようにする計測ステップと、
該計測された位置ずれ量を近似する、該第1のショットレイアウトにおける座標の関数を第1の関数として算定する算定ステップと、
を有し、
該移動量は、該算定された第1の関数により算出される位置ずれ量の誤差より十分に大きく設定されている、ことを特徴とする請求項1に記載の露光方法。
【請求項3】
該第1の関数は、該第1のショットレイアウトにおける座標の零次の関数を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の露光方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の露光方法にしたがって露光された基板を識別する識別方法であって、
該第1のショットレイアウトを基準として、該少なくとも1つの特定のショットと該少なくとも1つの特定のショットを含まない複数のショットとにそれぞれ配されたマークの位置ずれ量が計測されるようにする計測ステップと、
該複数のショットに関して計測されたマークの位置ずれ量を近似する、該第1のショットレイアウトにおける座標の関数を第1の関数として算定する第1の算定ステップと、
該算定された第1の関数にしたがって該少なくとも1つの特定のショットに配されたマークの位置ずれ量を算出する算出ステップと、
該少なくとも1つの特定のショットに配されたマークに関し、該計測された位置ずれ量と該算出された位置ずれ量との差に基づいて該移動量を特定する特定ステップと、
該特定された移動量に基づき、該基板を識別する識別ステップと、
を有することを特徴とする識別方法。
【請求項5】
請求項4に記載の識別方法にしたがって識別された基板を露光する方法であって、
該少なくとも1つの特定のショットに配されたマークに関し、該計測された位置ずれ量を該移動量だけ補正する補正ステップと、
該補正された位置ずれ量と該複数のショットに関して計測されたマークの位置ずれ量とを近似する、該第1のショットレイアウトにおける座標の関数を第2の関数として算定する第2の算定ステップと、
該算定された第2の関数により算出された位置ずれ量にしたがって該複数のショットが露光されるようにし、かつ該移動量と該算定された第2の関数により算出された位置ずれ量とにしたがって該少なくとも1つの特定のショットが露光されるようにする露光ステップと、
を有することを特徴とする露光方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項7】
基板上の複数のショットを露光する露光装置であって、
請求項6に記載のプログラムにしたがって動作する、ことを特徴とする露光装置。
【請求項8】
請求項7に記載の露光装置を用いて基板を露光するステップと、
該露光された基板を現像するステップと、
を有することを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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