説明

露光装置および画像形成装置

【課題】露光面におけるスポット領域を充分に微細化する。
【解決手段】露光装置Hは、複数の発光素子Eが配列された発光装置10と、各発光素子
Eからの出射光を集光する集束性レンズアレイ30と、集束性レンズアレイ30からの出
射光を通過させる開口部A2が形成された遮光体44とを具備する。集束性レンズアレイ
30を挟んで発光装置10とは反対側には光透過性の板材である透光体42が配置される
。遮光体44は、透光体42のうち集束性レンズアレイ30とは反対側の表面に形成され
る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発光素子を具備する露光装置とこれを利用した画像形成装置とに関す
る。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード素子などの発光素子が基板の面上に配列された発光装置を像担持体
(例えば感光体ドラム)の露光に利用する電子写真方式の画像形成装置が従来から提案さ
れている。特許文献1には、各光源に対向する部位に開口部(アパーチャ)が形成された
遮光層を基板の面上に設置した構成が開示されている。光源からの出射光のうち開口部を
通過した成分のみが像担持体に到達する。
【特許文献1】特開平6−262803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の構成のもとで開口部を通過した光線は拡散しながら進行す
るから、特に像担持体と発光装置とが離間した構成においては、像担持体の表面のうちひ
とつの発光素子からの出射光が到達するスポット領域を充分に微細化すること(さらには
画像の高精細化)が困難である。各発光素子からの出射光を集光するレンズを発光装置と
像担持体との間隙に配置した構成も考えられるが、多数の発光素子からの出射光を充分に
微細なスポット領域に結像させる高性能なレンズの採用はコストの観点から必ずしも容易
ではない。このような事情に鑑みて、本発明は、スポット領域を充分に微細化するという
課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために、本発明に係る露光装置は、複数の発光素子が配列された発
光装置と、各発光素子からの出射光を集光する集光体(例えば図4の集束性レンズアレイ
30)と、集光体からの出射光が通過する複数の開口部(例えば図4の開口部A2)が形
成された第1遮光体(例えば図4の遮光体44)とを具備する。本発明においては、集光
体からの出射光の光束幅が第1遮光体によって縮小されるから、露光装置が露光する物体
の表面(以下「露光面」という)におけるスポット領域を充分に微細化することが可能で
ある。
【0005】
本発明の好適な態様において、第1遮光体の各開口部は、集光体の光軸の方向(例えば
図4のZ方向)からみて複数の発光素子の各々と重なり合う。この態様によれば、発光素
子からの出射光が高効率に開口部に到達するから、露光面におけるエネルギの密度を充分
に確保することが可能となる。また、第1遮光体の各開口部を発光素子の面積(換言する
と、設計上において露光面で必要となるスポット領域の面積)よりも小面積とすれば、露
光面におけるスポット領域がいっそう微細化される。
【0006】
さらに好適な態様において、発光装置は、発光素子からの出射光が通過する複数の開口
部(例えば図4の開口部A1)が形成された第2遮光体(例えば図4の遮光層16)を含
み、集光体は、第2遮光体の各開口部を透過した光を集光する。この態様によれば、集光
体に向かう各発光素子からの出射光の拡散が抑制されるという利点がある。
【0007】
本発明の好適な態様に係る露光装置は、集光体を挟んで発光装置とは反対側に配置され
た第1透光体(例えば図4の透光体42)を具備し、第1遮光体は、第1透光体のうち集
光体とは反対側の表面に固定される。この態様によれば、第1遮光体の薄型化によって集
光体の出射光のうち開口部を通過する光量の割合を充分に確保しながら第1遮光体の変形
を抑制することが可能である。さらに、第1遮光体を第1透光体の厚さに応じて露光面に
容易かつ充分に近接させることが可能となる。
【0008】
さらに具体的な態様において、第1透光体のうち集光体に対向する表面は当該集光体に
密着する。この態様によれば、第1透光体のうち集光体に対向する表面における光の反射
や屈折が抑制される。「密着」とは、第1透光体と集光体との間に空気層が介在しないこ
とを意味する。したがって、第1透光体が集光体に対して直接的に接触する構成のほか、
第1透光体が他の部材や接着剤を介して間接的に集光体に近接する構成も本発明にいう「
密着」の概念に含まれる。例えば、集光体と第1透光体との間に、屈折率が第1透光体と
同等である屈折率整合液を充填した構成が採用される。この構成によれば、第1透光体(
第1遮光体)と発光装置や集光体との相対的な位置の調整を可能としながら、第1透光体
と集光体との間隙における光の反射や屈折が効果的に抑制される。
【0009】
また、第1透光体のうち集光体とは反対側の表面に反射防止処理(例えば図4のARコ
ート層46を形成する処理)が施された構成も採用される。この構成によれば、第1透光
体のうち集光体とは反対側の表面における光の反射が抑制されるから、集光体からの出射
光のうち第1遮光体の開口部を通過して露光面に到達する光量の割合を充分に確保するこ
とが可能となる。
【0010】
本発明の好適な態様に係る露光装置は、各発光素子からの出射光が入射する第2透光体
(例えば図6の透光体36)を具備し、集光体は、第2透光体を挟んで発光装置とは反対
側に配置され、第2透光体を透過した各発光素子からの出射光を集光する。この態様によ
れば、発光装置と集光体との間隙に第2透光体が介挿されるから、発光装置のうち集光体
側の表面や集光体のうち発光装置側の表面における反射が抑制される。したがって、発光
素子からの出射光のうち集光体に入射する光量の割合を増加させることが可能である。
【0011】
本発明に係る画像形成装置は、露光によって潜像が形成される像担持体(例えば図1の
感光体ドラム70)と、第1遮光体の各開口部を通過した光線によって像担持体を露光す
る本発明の露光装置と、像担持体に形成された潜像に対する現像剤の付加によって顕像を
形成する現像器とを具備する。本発明の露光装置によれば像担持体の表面におけるスポッ
ト領域が微細化されるから、画像形成装置は高精細な画像を形成することができる。特に
、第1遮光体のうち像担持体に対向する表面と像担持体の像形成面との距離を0.3mm以
下(さらに好適には0.1mm以下)とした構成によれば、像担持体の表面におけるスポッ
ト領域の形態(サイズ・形状)を第1遮光体の開口部の形態に応じて高精度に規定するこ
とが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の部分的な構成を示す斜視図であり
、図2は、図1におけるII−II線からみた断面図である。図1および図2に示すように、
画像形成装置は、露光によって表面(以下「像形成面」という)72に潜像が形成される
感光体ドラム70と像形成面72を露光する露光装置(ラインヘッド)Hとを具備する。
感光体ドラム70は、X方向(主走査方向)に延在する回転軸に支持され、像形成面72
(外周面)を露光装置Hに対向させた状態で回転する。
【0013】
図1および図2に示すように、露光装置Hは、発光装置10と集束性レンズアレイ30
と光束規制体40とを含む。集束性レンズアレイ30は発光装置10と感光体ドラム70
との間隙に配置される。光束規制体40は、集束性レンズアレイ30を挟んで発光装置1
0とは反対側(集束性レンズアレイ30と感光体ドラム70との間隙)に配置される。露
光装置Hからの出射光は集束性レンズアレイ30と光束規制体40とを通過して感光体ド
ラム70の像形成面72に到達する。
【0014】
図3は、露光装置Hを感光体ドラム70側からみたときの構造を示す平面図であり、図
4は、図3におけるIV−IV線からみた断面図(図2の拡大図)である。図1から図4に示
すように、発光装置10は、X方向を長手とする姿勢に固定された長方形状の基板12と
、基板12の面上に配列された複数の発光素子Eとを含む。基板12は、ガラスやプラス
チックなどで成形された光透過性の板材である。各発光素子Eは、電流の供給によって発
光する有機発光ダイオード素子である。図3に示すように、複数の発光素子Eは、X方向
に沿って2列かつ千鳥状に配列される。ただし、本発明における発光素子Eの配列のパタ
ーンは任意である。
【0015】
次に、図4を参照して発光装置10の具体的な構造を説明する。同図に示すように、基
板12のうち感光体ドラム70とは反対側の表面には配線層14が形成される。配線層1
4は、発光素子Eの輝度を制御する能動素子(例えばトランジスタ)や各種の信号を伝送
する配線や電源線といった導電層と各要素を絶縁する絶縁層とが積層された部分である。
配線層14の面上には、発光素子Eの陽極として機能する第1電極21が発光素子Eごと
に相互に離間して形成される。第1電極21の材料には、ITO(Indium Tin Oxide)な
ど光透過性の導電材料が採用される。
【0016】
第1電極21が形成された配線層14の表面には絶縁層23が形成される。絶縁層23
は、第1電極21と重なり合う各領域に開口部231が形成された絶縁性の膜体である。
有機EL(ElectroLuminescent)材料からなる発光層25は、各第1電極21や絶縁層2
3を被覆するように複数の発光素子Eにわたって連続に形成される。第1電極21は発光
素子Eごとに離間して形成されるから、発光層25が複数の発光素子Eにわたって連続す
るとは言っても発光層25の輝度は各第1電極21の電圧に応じて発光素子Eごとに個別
に制御される。発光層25の表面は第2電極27に覆われる。第2電極27は、複数の発
光素子Eにわたって連続する光反射性の導電膜である。第1電極21と第2電極27とが
発光層25を挟んで対向する部分(開口部231の内側の部分)が発光素子Eとして機能
する。
【0017】
図4に示すように、配線層14は、遮光性の材料で形成された遮光層16を含む。遮光
層16のうちZ方向からみて発光素子Eと重なり合う部分には略円形の開口部A1が形成
される。したがって、発光層25から第1電極21側への出射光および第2電極27の表
面での反射光のうち開口部A1を通過した成分のみが選択的に基板12を透過して露光装
置Hの外部に出射し、それ以外の成分は遮光層16で遮光(吸収または反射)される。図
3および図4に示すように、Z方向からみた開口部A1の形状は直径d1の略円形である。
なお、遮光層16は、配線層14を構成する各配線によって構成されてもよい。また、開
口部A1は円形以外の形状(例えば四角形)でもよい。
【0018】
図1や図2の集束性レンズアレイ30は、各発光素子Eからの出射光を集光する手段(
集光体)である。本実施形態の集束性レンズアレイ30は、各発光素子Eからの出射光に
対応した等倍の正立像を像形成面72に結像する正立等倍結像素子であり、図4に示すよ
うに各々の中心軸(光軸)をZ方向に向けて配列する複数の屈折率分布型レンズ34を含
む。各屈折率分布型レンズ34は、中心軸(光軸)から周縁に向かって離間した位置ほど
屈折率が低くなるように横断面内にて屈折率が分布する円柱状の部材である。集束性レン
ズアレイ30としては、例えば日本板硝子株式会社から入手できるSLA(セルフォック
・レンズ・アレイ)がある。なお、「セルフォック/SELFOC」は日本板硝子株式会
社の登録商標である。
【0019】
ところで、各発光素子Eからの出射光を集光するための手段としては、例えば各発光素
子Eに対応する多数の凸レンズがアレイ状に配列されたマイクロレンズアレイを採用する
ことも可能である。しかしながら、各発光素子Eの中心軸を凸レンズの光軸に合致させる
関係上、発光装置10に対するマイクロレンズアレイの位置の調整に極めて高い精度が必
要となって製造のコストが増大するという問題がある。これに対し、本実施形態に係る集
束性レンズアレイ30には配置に高い精度が要求されないという利点がある。しかしなが
ら、集束性レンズアレイ30を採用した場合には、マイクロレンズアレイと比較して像形
成面72におけるスポット領域(像形成面72のうちひとつの発光素子Eからの出射光が
所定値を上回る強度で到達する領域)を充分に微細化できない場合がある。
【0020】
そこで、本実施形態においては、集束性レンズアレイ30と感光体ドラム70との間隙
に配置された光束規制体40によって集束性レンズアレイ30からの出射光の光束幅を規
制(縮小)する。図2から図4に示すように、光束規制体40は、透光体42と遮光体4
4とAR(Anti Reflection)コート層46とを含む。透光体42は、集束性レンズアレ
イ30を挟んで発光装置10とは反対側に配置された光透過性の平板(例えばガラス基板
)である。例えばSchott社から提供されるB270が透光体42として好適に採用される。
【0021】
図4に示すように、透光体42のうち集束性レンズアレイ30との対向面(以下「第1
面」という)421と集束性レンズアレイ30における光出射側の端面(以下「出光面」
という)31とは、両者間に充填された屈折率整合液54を挟んで密着する。すなわち、
第1面421と出光面31とは接合されない。屈折率整合液54は、屈折率が透光体42
と同等である粘性の流動体(インデックスマッチングオイル)である。したがって、集束
性レンズアレイ30の出光面31からの出射光は、屈折率整合液54と第1面421との
界面にて反射または屈折せずに透光体42に入射する。なお、屈折率整合液54の屈折率
は集束性レンズアレイ30と同等であってもよい。
【0022】
図1に示すように画像形成装置は調整機構50を具備する。調整機構50は、集束性レ
ンズアレイ30や発光装置10に対する透光体42の相対的な位置を調整する手段である
。本実施形態の調整機構50は、各々の先端が透光体42の各側面に当接する複数のネジ
を含む。各ネジを回転によって透光体42に接近または離間させることで透光体42は集
束性レンズアレイ30の出光面31に密着したまま移動し、これによって集束性レンズア
レイ30や発光装置10に対する光束規制体40のX-Y平面内における位置が調整され
る。
【0023】
遮光体44は、透光体42のうち感光体ドラム70との対向面(以下「第2面」という
)422に形成された遮光性の膜体である。図2から図4に示すように、遮光体44には
、各々が別個の発光素子Eに対応する複数(発光素子Eと同数)の開口部A2が形成され
る。各開口部A2は、遮光体44を厚さ方向に貫通する小孔(アパーチャ)である。ひと
つの開口部A2は、図3に示すように、遮光体44のうちZ方向からみて当該開口部A2に
対応する発光素子E(開口部A1)と重なり合う部位に形成される。したがって、複数の
開口部A2はX方向に沿って2列かつ千鳥状に配列する。Z方向からみた開口部A2の形状
は発光素子E(開口部A1)の形状と相似することが望ましい。
【0024】
遮光体44は、例えば、透光体42の第2面422の全域に成膜された遮光性の膜体の
うち各開口部A2に対応した領域をフォトリソグラフィ技術やエッチング技術によって選
択的に除去することで形成される。遮光体44の材料としては、例えば、カーボンブラッ
クが分散された樹脂材料やクロムなどの低反射率な金属材料が好適に採用される。
【0025】
各開口部A2の外形は、直径d2が開口部A1の直径d1(または発光素子Eの直径)より
も小さい略円形である。別の観点からすると、開口部A2のサイズは、像形成面72で要
求されるスポット領域(設計上のスポット領域のサイズ)よりも僅かに小さいサイズとさ
れる。例えば、直径70μmの正円形のスポット領域が要求されるのであれば、開口部A2
は直径68μmの正円形とされる。また、縦50μm×横70μmの長方形のスポット領域が要
求される場合には、開口部A2は縦49μm×横68μmの長方形状とされる。さらに詳述す
ると、開口部A2のサイズは遮光体44の表面と像形成面72との距離に応じて選定され
る。例えば、遮光体44と像形成面72との距離が短い場合には開口部A2を通過した光
束が像形成面72への到達前に拡散する区間が短くなるから、開口部A2は設計値に近い
寸法でもよい。逆に遮光体44と像形成面72との距離が短い場合には開口部A2を通過
した光束が像形成面72に到達するまでに拡散してスポット領域のサイズは拡大する(ボ
ケる)から、開口部A2は設計値よりも小さい寸法に設定される。
【0026】
図3および図4に示すように、X-Y平面内における透光体42の位置(発光装置10
に対する相対的な位置)は、Z方向からみて開口部A1の中心と開口部A2の中心とが略一
致するように調整機構50によって調整される。したがって、図3のようにZ方向からみ
ると、開口部A2の内周縁はその全周にわたって開口部A1の内周縁に内側に位置する。以
上の構成において、透光体42を透過して第2面422に到達した各発光素子Eからの出
射光のうち当該発光素子Eに対応する開口部A2を通過した成分のみが露光装置Hから出
射して感光体ドラム70に到達し、それ以外の成分は遮光体44で遮光(吸収または反射
)される。
【0027】
ARコート層46は、第2面422での光反射を抑制するための反射防止処理によって
形成され、図2から図4に示すように、遮光体44が形成された第2面422の全域を被
覆する。本実施形態のARコート層46は、各々の屈折率が相違する複数の光透過層が積
層された構造となっている。図2に示すように、光束規制体40は、ARコート層46の
表面が感光体ドラム70の像形成面72に間隔をあけて対向するように配置される。以上
のようにARコート層46が設置された構成によれば、第2面422を通過して感光体ド
ラム70に向かう光量を充分に確保することが可能となる。なお、透光体42を覆うAR
コート層46の表面に遮光体44が形成された構成としてもよい。
【0028】
次に、図5は、ひとつの発光素子Eからの出射光の光路を説明するための概念図である
。なお、同図においてはARコート層46や屈折率整合液54といった要素の図示が適宜
に省略されている。
【0029】
発光素子Eからの出射光のうち開口部A1を通過した成分は、図5に示すように、基板
12を透過して拡散しながら集束性レンズアレイ30の各屈折率分布型レンズ34に入射
する。集束性レンズアレイ30への入射光は、屈折率分布型レンズ34における屈折率の
分布に応じて蛇行しながら進行し、集束性レンズアレイ30の出光面31から屈折率整合
液54を透過して透光体42に入射する。透光体42への入射光のうち遮光体44の開口
部A2を通過した成分はARコート層46を透過して感光体ドラム70の像形成面72に
到達し、それ以外の成分は遮光体44で遮断されて感光体ドラム70には到達しない。
【0030】
図5に示すように、開口部A2の直径d2は、発光素子Eから第2面422に到達した光
の光束幅よりも小さい。したがって、開口部A2を通過した光が到達するスポット領域S1
の直径DS1は、集束性レンズアレイ30からの出射光が直接的に感光体ドラム70の表面
に到達する構成(すなわち光束規制体40が配置されない構成である。以下「対比例」と
いう)でのスポット領域S2の直径DS2よりも縮小される。
【0031】
ところで、集束性レンズアレイ30の出光面31と感光体ドラム70の像形成面72と
の間にm個(mは自然数)の要素が介在する構成においては、空気中における集束性レン
ズアレイ30の像面距離(作動距離)Loとの関係で以下の式(1)を満たすように各要素の
厚さTA1〜TAmおよび各要素の屈折率NA1〜NAmを選定すれば、感光体ドラム70の像形
成面72におけるスポット領域の面積を論理的には最小化することが可能である。
Lo=(TA1/NA1)+(TA2/NA2)+…+(TAm/NAm) ……(1)
いま、出光面31と像形成面72との間の要素として便宜的に透光体42(厚さTA1・
屈折率NA1)と第2面422から像形成面72までの空気層(厚さTA2・屈折率1)とを
考慮すると、本実施形態においては式(1)が以下の式(2)に変形される。
Lo=(TA1/NA1)+TA2 ……(2)
例えば、像面距離Loが2.4mmである集束性レンズアレイ30と屈折率NA1が1.515で
ある透光体42とが採用される構成のもとで空気層の厚さTA2を0.1mmに設定するとす
れば、透光体42の最適な厚さTA1は約3.5mmとなる(以下「条件A」という)。
【0032】
しかしながら、式(1)や式(2)を満たす場合であっても現実の画像形成装置においてはス
ポット領域が充分に微細化されない場合がある。例えば、対比例の構成(光束規制体40
が配置されない構成)のもとで条件Aを満たしたうえで開口部A1の直径d1(発光素子E
の放射光が出射する領域)を50μmに設定した場合、現実のスポット領域S2の直径DS2
は85μm程度まで拡大する。これに対し、本実施形態のように光束規制体40が配置され
た構成によれば、条件Aのもとで例えば開口部A2の直径d2を40μmに設定することで、
スポット領域S1の直径DS1を48μmに縮小することが可能である。以上に説明したよう
に本実施形態によれば、結像の性能が充分でない低廉な集束性レンズアレイ30を採用し
た場合であってもスポット領域S1を微細化して高精細な画像の形成が可能となる。
【0033】
なお、光束規制体40を持たない対比例の構成においても各発光素子Eからの出射光の
光束幅は遮光層16(開口部A1)によって縮小される。しかしながら、開口部A1を通過
した光は像形成面72に到達するまでに拡散するから、像形成面72におけるスポット領
域S2を充分に微細化することは困難である。本実施形態においては、発光装置10に遮
光層16が形成された構成に加えて、感光体ドラム70に近接する遮光体44によって各
発光素子Eからの出射光の光束幅が縮小されるから、遮光層16のみによって光束幅を縮
小する対比例の構成と比較してスポット領域S1を大幅に微細化することが可能である。
【0034】
スポット領域S1の微細化という以上の効果は、遮光体44が像形成面72に近接する
ほど顕著となる。本実施形態によれば、透光体42の第2面422に遮光体44が設置さ
れるから、透光体42の厚さTA1に応じて遮光体44を容易に像形成面72に接近させる
(透光体42の第2面422と感光体ドラム70の像形成面72との間隔TA2を削減する
)ことが可能である。なお、本願の発明者による試験によれば、間隔TA2が0.3mmを上
回る場合には、遮光体44で遮光される光量が過大になるとともにスポット領域S1の直
径DS1が顕著に増大するという知見を得るに至った。したがって、第2面422と像形成
面72との間隔TA2は0.3mm以下であることが望ましく、より好適には0.1mm以下に設
定される。また、以上の範囲内に収まるように間隔TA2を選定すれば、スポット領域S1
を開口部A2の形態に略一致させることが可能となる。したがって、各スポット領域S1の
形態が均一化され、この結果として画像のムラが抑制されるという利点もある。
【0035】
また、発光素子Eからの出射光のエネルギは、発光素子Eの中心からZ方向に延在する
直線上にて最大となる。したがって、Z方向からみて各々の中心が合致するように発光素
子Eと開口部A2とが重なり合う本実施形態によれば、発光素子Eの中心と開口部A2の中
心とがZ方向からみて合致しない構成と比較して、開口部A2を通過して感光体ドラム7
0に到達する光のエネルギ(像形成面72におけるエネルギ密度)を充分に確保すること
が可能である。しかも、集束性レンズアレイ30に密着させたまま透光体42を調整機構
50によって移動させることで、透光体42のZ方向の位置を維持しながら、発光素子E
と開口部A2とが重なり合うように透光体42を高精度に調整することが可能である。
【0036】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態のうち作用や機能が
第1実施形態と共通する要素については以上と同じ符号を付してその詳細な説明を適宜に
省略する。
【0037】
図6は、本実施形態に係る画像形成装置の部分的な構造を示す断面図(図2に対応する
断面図)である。図6に示すように、発光装置10と集束性レンズアレイ30との間隙に
は透光体36が介在する。透光体36は、発光装置10の基板12と同等の屈折率を持つ
光透過性の平板(例えばガラス基板)である。透光体36における発光装置10との対向
面は基板12の表面(発光素子Eの配列面とは反対側の表面)121に接触する。透光体
36における集束性レンズアレイ30との対向面は集束性レンズアレイ30の光入射側の
端面(以下「入光面」という)32に接触する。透光体36は、光透過性の接着剤によっ
て基板12および集束性レンズアレイ30に接合される。
【0038】
第1実施形態のように発光装置10と集束性レンズアレイ30との間隙に空気層が介在
する構成においては、基板12の表面121や集束性レンズアレイ30の入光面32にお
いて各発光素子Eからの出射光が反射する可能性がある。これに対し、本実施形態におい
ては、発光装置10と集束性レンズアレイ30との間隙に透光体36が充填されるから、
表面121や入光面32における反射が抑制される。これによって各発光素子Eからの出
射光のうち集束性レンズアレイ30に入射する光量の割合は第1実施形態と比較して増加
する。したがって、像形成面72に鮮明な潜像を形成することが可能となる。換言すると
、像形成面72に所期の光量を到達させるために発光素子Eに付与すべき電気エネルギが
低減されるから、発光素子Eの経時的な劣化を抑制することが可能である。
【0039】
なお、発光素子E(発光層25)と集束性レンズアレイ30の入光面32との間にn個
(nは自然数)の要素が介在する構成においては、集束性レンズアレイ30の空気中にお
ける物体側の作動距離Liとの関係で以下の式(3)を満たすように各要素の厚さTB1〜TBn
および各要素の屈折率NB1〜NBnが選定される。
Li=(TB1/NB1)+(TB2/NB2)+…+(TBn/NBn) ……(3)
例えば、発光素子Eと集束性レンズアレイ30の入光面32との間の要素として基板1
2(厚さTB1・屈折率NB1)と透光体36(厚さTB2・屈折率NB2)とを考慮すると、式
(3)は以下の式(4)に変形される。
Li=(TB1/NB1)+(TB2/NB2) ……(4)
透光体36の厚さTB2および屈折率NB2は式(4)を満たすように設定される。
【0040】
<C:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば
以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0041】
(1)変形例1
以上の各形態においては遮光体44が透光体42に設置される構成を例示したが、透光
体42は本発明に必須の要件ではない。例えば、図7に示すように、複数の開口部A2が
形成された遮光性の板材を集束性レンズアレイ30と感光体ドラム70との間隙に遮光体
442として配置した構成も採用される。図7の構成によれば透光体42が不要となるか
ら、露光装置Hの製造のコストが削減されるという利点がある。
【0042】
ただし、図7の構成においては、例えば自重による撓みなどの変形が遮光体442に発
生し易いから、各開口部A2と各発光素子Eとの相対的な位置を維持することが困難であ
るという問題がある。遮光体442を図7のように充分な厚さに形成して機械的な強度を
高めれば以上の問題を解消することも可能ではあるが、この場合には開口部A2を通過す
る光量が減少するという問題がある。すなわち、図8に示すように、厚さt1の遮光体4
4を形成した場合には集束性レンズアレイ30の出光面31における範囲R1からの出射
光が開口部A2を通過するのに対し、図7のように機械的な強度の確保のために遮光体4
42の厚さt2を増加させた場合(t2>t1)には、範囲R1よりも狭い範囲R2からの出
射光しか開口部A2に取り込むことができない。
【0043】
第1実施形態や第2実施形態のように透光体42の表面に遮光体44が形成された構成
によれば、遮光体44を充分に薄く形成した場合であっても遮光体44は殆ど変形しない
。したがって、各開口部A2と各発光素子Eとを高い精度で所期の位置に維持しながら、
開口部A2に入射する光量を充分に確保することができる。
【0044】
(2)変形例2
以上の各形態においては、複数の屈折率分布型レンズ34を配列した集束性レンズアレ
イ30が採用された構成を例示したが、各発光素子Eからの出射光を集光する集光体の具
体的な形態は任意である。例えば、以上の各形態における集束性レンズアレイ30に代え
て、複数のマイクロレンズ(凸レンズまたは凹レンズ)が配列されたマイクロレンズアレ
イを配置してもよい。
【0045】
(3)変形例3
開口部A1や開口部A2の形状は任意である。例えば、楕円や長円や多角形(例えば正方
形や長方形)であってもよい。また、Z方向からみて開口部A2が発光素子Eと重なり合
う構成は本発明に必須ではない。すなわち、発光素子Eから露光の対象(像形成面72)
に到達するまでの光路上に開口部A2が存在する構成であれば足りる。
【0046】
(4)変形例4
以上の各形態においては開口部A1と発光素子Eとの相対的な位置を調整するために光
束規制体40(透光体42)を移動させる構成を例示したが、光束規制体40を固定した
まま発光装置10(または発光装置10に固定された集束性レンズアレイ30)を調整機
構50によって移動させてもよい。すなわち、本発明のひとつの態様においては、開口部
A1と発光素子Eとが所期の位置関係となるように遮光体44および発光装置10の少な
くとも一方が調整機構50によって移動させられる構成が採用される。
【0047】
(5)変形例5
以上の各形態においては有機発光ダイオード素子を発光素子Eとして例示したが、発光
素子Eの具体的な形態は任意に変更される。本発明に適用される発光素子について、自身
が発光する素子と外光の透過率を変化させる素子(例えば液晶素子)の区別や、電流の供
給によって駆動される電流駆動型の素子と電圧の印加によって駆動される電圧駆動型の素
子との区別は不問である。例えば、無機EL素子やフィールド・エミッション(FE)素
子、表面導電型エミッション(SE:Surface-conduction Electron-emitter)素子、弾
道電子放出(BS:Ballistic electron Surface emitting)素子、LED(Light Em
itting Diode)素子、液晶素子など様々な発光素子が本発明に利用される。
【0048】
<D:応用例>
次に、本発明に係る露光装置を利用した機器のひとつの形態として画像形成装置を例示
する。
図9は、以上の各形態に係る露光装置Hを採用した画像形成装置の構成を示す断面図で
ある。画像形成装置は、タンデム型のフルカラー画像形成装置であり、以上の形態に係る
4個の露光装置H(HK,HC,HM,HY)と、各露光装置Hに対応する4個の感光体ドラ
ム70(70K,70C,70M,70Y)とを具備する。ひとつの露光装置Hは、これに対
応した感光体ドラム70の像形成面(外周面)に対向するように配置される。なお、各符
号の添字「K」「C」「M」「Y」は、黒(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー
(Y)の各顕像の形成に利用されることを意味している。
【0049】
図9に示すように、駆動ローラ711と従動ローラ712とには無端の中間転写ベルト
72が巻回される。4個の感光体ドラム70は、相互に所定の間隔をあけて中間転写ベル
ト72の周囲に配置される。各感光体ドラム70は、中間転写ベルト72の駆動に同期し
て回転する。
【0050】
各感光体ドラム70の周囲には、露光装置Hのほかにコロナ帯電器731(731K,
731C,731M,731Y)と現像器732(732K,732C,732M,732Y)
とが配置される。コロナ帯電器731は、これに対応する感光体ドラム70の像形成面を
一様に帯電させる。この帯電した像形成面を各露光装置Hが露光することで静電潜像が形
成される。各現像器732は、静電潜像に現像剤(トナー)を付着させることで感光体ド
ラム70に顕像(可視像)を形成する。
【0051】
以上のように感光体ドラム70に形成された各色(黒・シアン・マゼンタ・イエロー)
の顕像が中間転写ベルト72の表面に順次に転写(一次転写)されることでフルカラーの
顕像が形成される。中間転写ベルト72の内側には4個の一次転写コロトロン(転写器)
74(74K,74C,74M,74Y)が配置される。各一次転写コロトロン74は、これ
に対応する感光体ドラム70から顕像を静電的に吸引することによって、感光体ドラム7
0と一次転写コロトロン74との間隙を通過する中間転写ベルト72に顕像を転写する。
【0052】
シート(記録材)75は、ピックアップローラ761によって給紙カセット762から
1枚ずつ給送され、中間転写ベルト72と二次転写ローラ77との間のニップに搬送され
る。中間転写ベルト72の表面に形成されたフルカラーの顕像は、二次転写ローラ77に
よってシート75の片面に転写(二次転写)され、定着ローラ対78を通過することでシ
ート75に定着される。排紙ローラ対79は、以上の工程を経て顕像が定着されたシート
75を排出する。
【0053】
以上に例示した画像形成装置は有機発光ダイオード素子を光源として利用しているので
、レーザ走査光学系を利用した構成よりも装置が小型化される。なお、以上に例示した以
外の構成の画像形成装置にも本発明を適用することができる。例えば、ロータリ現像式の
画像形成装置や、中間転写ベルトを使用せずに感光体ドラムからシートに対して直接的に
顕像を転写するタイプの画像形成装置、あるいはモノクロの画像を形成する画像形成装置
にも本発明の露光装置を利用することが可能である。
【0054】
また、本発明に係る露光装置の用途は像担持体の露光に限定されない。例えば、本発明
の露光装置は、原稿などの読取対象に光を照射するライン型の照明装置として画像読取装
置に採用される。この種の画像読取装置としては、スキャナ、複写機やファクシミリの読
取部分、バーコードリーダ、あるいはQRコード(登録商標)のような二次元画像コード
を読む二次元画像コードリーダがある。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第1実施形態に係る画像形成装置の部分的な構造を示す斜視図である。
【図2】図1におけるII−II線からみた断面図である。
【図3】露光装置Hを感光体ドラム側からみたときの構造を示す平面図である。
【図4】図3におけるIV−IV線からみた断面図である。
【図5】発光素子からの出射光の光路を説明するための概念図である。
【図6】第2実施形態に係る画像形成装置の構造を示す断面図である。
【図7】変形例に係る画像形成装置の構造を示す断面図である。
【図8】遮光体の厚さと開口部を通過する光量との関係を説明するための概念図である。
【図9】本発明に係る画像形成装置の形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0056】
H……露光装置、E……発光素子、10……発光装置、12……基板、14……配線層、
16……遮光層、21……第1電極、23……絶縁層、25……発光層、27……第2電
極、30……集束性レンズアレイ、31……出光面、34……屈折率分布型レンズ、40
……光束規制体、42……透光体、421……第1面、422……第2面、44,442
……遮光体、46……ARコート層、A1,A2……開口部、50……調整機構、54……
屈折率整合液、70……感光体ドラム、72……像形成面、S1……スポット領域(直径
DS1)、S2……対比例におけるスポット領域(直径DS2)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子が配列された発光装置と、
前記各発光素子からの出射光を集光する集光体と、
前記集光体からの出射光が通過する複数の開口部が形成された第1遮光体と
を具備する露光装置。
【請求項2】
前記第1遮光体の各開口部は、前記集光体の光軸の方向からみて前記複数の発光素子の
各々と重なり合う
請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記第1遮光体の各開口部の面積は、前記発光素子の面積よりも小さい
請求項1または請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記発光装置は、前記発光素子からの出射光が通過する複数の開口部が形成された第2
遮光体を含み、
前記集光体は、前記第2遮光体の各開口部を透過した光を集光する
請求項1から請求項3の何れかに記載の露光装置。
【請求項5】
前記集光体を挟んで前記発光装置とは反対側に配置された第1透光体を具備し、
前記第1遮光体は、前記第1透光体のうち前記集光体とは反対側の表面に固定されてい

請求項1から請求項4の何れかに記載の露光装置。
【請求項6】
前記第1透光体のうち前記集光体に対向する表面は当該集光体に密着する
請求項7に記載の露光装置。
【請求項7】
前記集光体と前記第1透光体との間には、屈折率が前記第1透光体と同等である屈折率
整合液が充填されている
請求項6に記載の露光装置。
【請求項8】
前記第1透光体のうち前記集光体とは反対側の表面には反射防止処理が施されている
請求項5から請求項7の何れかに記載の露光装置。
【請求項9】
前記各発光素子からの出射光が入射する第2透光体を具備し、
前記集光体は、前記第2透光体を挟んで前記発光装置とは反対側に配置され、前記第2
透光体を透過した前記各発光素子からの出射光を集光する
請求項1から請求項8の何れかに記載の露光装置。
【請求項10】
露光によって潜像が形成される像担持体と、
前記第1遮光体の各開口部を通過した光線によって前記像担持体を露光する請求項1か
ら請求項9の何れかに記載の露光装置と、
前記像担持体に形成された潜像に対する現像剤の付加によって顕像を形成する現像器と
を具備する画像形成装置。
【請求項11】
前記第1遮光体のうち前記像担持体に対向する表面と前記像担持体の像形成面との距離
は0.3mm以下である
請求項10に記載の画像形成装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−283546(P2007−283546A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110925(P2006−110925)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】