静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、静電アクチュエータの製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法、及び液滴吐出装置の製造方法
【課題】絶縁層を構成する表面保護膜を改質処理し、寿命が長く、しかも高い吐出能力を維持して安定して駆動することができる静電アクチュエータ等を提供する。
【解決手段】振動板20と対向電極30との対向面のいずれか一方または両者に絶縁層25、250が設けられ、絶縁層25、250が、誘電体膜26、260とその上に形成された表面保護膜27、270とからなり、表面保護膜27、270が表層部にC−F結合部分27b、270bを有するダイヤモンドライクカーボン膜27a、270aである。この製造工程は、シリコン基板2の表面と、対向電極3の表面とのいずれか一方または両者に誘電体膜26、260を形成し、その上にダイヤモンドライクカーボン膜27a、270aを形成する工程と、ダイヤモンドライクカーボン膜27a、270aの表面にフッ素系ガスのプラズマを照射して表層部をC−F結合に改質する工程を有する。
【解決手段】振動板20と対向電極30との対向面のいずれか一方または両者に絶縁層25、250が設けられ、絶縁層25、250が、誘電体膜26、260とその上に形成された表面保護膜27、270とからなり、表面保護膜27、270が表層部にC−F結合部分27b、270bを有するダイヤモンドライクカーボン膜27a、270aである。この製造工程は、シリコン基板2の表面と、対向電極3の表面とのいずれか一方または両者に誘電体膜26、260を形成し、その上にダイヤモンドライクカーボン膜27a、270aを形成する工程と、ダイヤモンドライクカーボン膜27a、270aの表面にフッ素系ガスのプラズマを照射して表層部をC−F結合に改質する工程を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、静電アクチュエータの製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法、及び液滴吐出装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタにおけるインク吐出方法として、駆動手段に静電気力を利用した、いわゆる静電駆動方式のインクジェットプリンタが知られている。このようなインクジェットプリンタは、振動板と対向電極との間に電圧を印加、遮断することにより、振動板を対向電極に吸引、隔離させ、それによって生じる圧力変化を利用してインクを吐出する。従って、振動板と対向電極とはインクが貯えられた圧力室の圧力を変動させる静電アクチュエータとして作用する。
【0003】
従来の静電アクチュエータは、振動板や対向電極に、ダイヤモンドライクカーボン等からなる表面保護膜を形成して、アクチュエータの安定駆動と駆動耐久性を確保していた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来の静電アクチュエータは、振動板や対向電極に、比誘電率が大きい材料からなる誘電体膜とその上に位置するダイヤモンドライクカーボン等からなる表面保護膜とを一体に形成し、比誘電率の大きい材料からなる誘電体膜によってアクチュエータの発生圧力を向上させ、さらにダイヤモンドライクカーボン等からなる表面保護膜によって駆動耐久特性を向上させていた(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2007−136856号公報(第8頁、図2)
【特許文献2】特開2008−18706号公報 (第7頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の発明においてアクチュエータの発生圧力を向上させようとすると、特許文献2記載の発明のように比誘電率の大きい材料からなる誘電体膜を形成する必要があるが、このような誘電体膜を用いると吐出能力が向上するものの、振動板当接時に表層保護膜にかかる応力等の負荷が増加してしまい、表面保護膜の当接部が磨耗して、寿命が低下してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、静電アクチュエータの絶縁層を構成する表面保護膜を改質処理して、寿命が長く、しかも高い吐出能力を維持して安定駆動することができる静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、静電アクチュエータの製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法、及び液滴吐出装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る静電アクチュエータは、振動板と、振動板に空隙を隔てて対向する対向電極とを備え、振動板と対向電極との対向面のいずれか一方または両者に絶縁層が設けられ、絶縁層が誘電体膜とその上に形成された表面保護膜とからなり、表面保護膜を表層部にC−F結合を有するダイヤモンドライクカーボン膜で形成したものである。
【0009】
ダイヤモンドライクカーボン膜の表層部をC−F結合に改質したので、表面エネルギーが低下し、水分子付着の帯電による残留電荷が低減する。また、振動板当接界面の潤滑性が向上するため摩耗が低減し、耐久性が向上する。
【0010】
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、上記の静電アクチュエータを備えたものである。
また、ダイヤモンドライクカーボン膜による当接駆動が安定し摩耗が低減した静電アクチュエータを備えた液滴吐出ヘッドを得ることができる。
【0011】
本発明に係る液滴吐出装置は、上記の液滴吐出ヘッドを搭載したものである。
また、安定駆動と駆動耐久性に優れた液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置を得ることができる。
【0012】
本発明に係る静電アクチュエータの製造方法は、シリコン基板の表面と、電極基板に形成した対向電極の表面との、いずれか一方または両者に誘電体膜を形成し、誘電体膜の上にダイヤモンドライクカーボン膜を形成して、これらの膜により絶縁層を形成する工程と、絶縁層のダイヤモンドライクカーボン膜の表面にフッ素系ガスのプラズマを照射してダイヤモンドライクカーボン膜の表層部をC−F結合に改質する工程と、シリコン基板の表面と電極基板に形成した対向電極の表面とをギャップを隔てて対向させて、シリコン基板と電極基板とを接合する工程と、シリコン基板と電極基板内に形成されたギャップ内の水分を除去してギャップを封止する工程と、シリコン基板に振動板を形成する工程とを有するものである。
【0013】
フッ素系ガスのプラズマをダイヤモンドライクカーボン膜の表面に照射すると、ダイヤモンドライクカーボン膜の表面を安定したC−F結合に改質することができる。こうして、ダイヤモンドライクカーボン膜の表面エネルギーが低下し、水分子付着の帯電による残留電荷が低減する。また、振動板当接界面の潤滑性が向上するため、摩耗が低減し、耐久性が向上する。
【0014】
本発明に係る静電アクチュエータの製造方法は、フッ素系ガスが、フッ素ガス、三フッ化窒素ガス、六フッ化硫黄ガス、四フッ化炭素ガス、六フッ化三炭素ガス、四フッ化ケイ素ガス、及び六フッ化二ケイ素のいずれかを用いたものである。
これらのフッ素系ガスをプラズマに曝すことにより、ダイヤモンドライクカーボン膜の表面をC−F結合に改質することができ、安定したC−F結合部分を形成する。
【0015】
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、上記の静電アクチュエータの製造方法を適用して、液滴吐出ヘッドのアクチュエータ部分を形成するものである。
また、ダイヤモンドライクカーボン膜による当接駆動が安定し摩耗が低減した静電アクチュエータを備えた液滴吐出ヘッドを得ることができる。
【0016】
本発明に係る液滴吐出装置の製造方法は、上記の液滴吐出ヘッドの製造方法を適用して、液滴吐出装置の液滴吐出ヘッド部分を形成するものである。
また、安定駆動と駆動耐久性に優れた液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態1
図1は本発明の実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドの一部を断面で示した分解斜視図、図2は図1を組み立てた状態の要部を示す縦断面図、図3は図2の液滴吐出ヘッドの向きを90度変えた方向からみた圧力室付近の断面図、図4は図2のA部を拡大した説明図である。
液滴吐出ヘッド1は、キャビティ基板2、電極基板3、及びノズル基板4を積層して接合されており、キャビティ基板2に形成された可撓性を有する振動板20と、電極基板3に形成された対向電極30とが静電アクチュエータを構成している。
【0018】
キャビティ基板2は単結晶シリコンからなり、底壁が振動板20として形成され、吐出液を貯えて吐出させる圧力室22となっている凹部220が複数形成されている。圧力室22は紙面手前側から紙面奥側にかけて平行に並んで形成されており(図2参照)、圧力室22の底面を構成する振動板20は、シリコン基板の表面からボロンを拡散させたボロンドープ層として形成されている。また、キャビティ基板2には、各圧力室22にインク等の液を供給するためのリザーバ23となる凹部230と、このリザーバ23と各圧力室22を連通する細溝状のオリフィス24となる凹部240が形成されている。なお、リザーバ23は単一の凹部230から形成されており、オリフィス24は各圧力室22に対して1つずつ形成されている。
【0019】
振動板20の対向電極30側の面には絶縁層25(図3)が形成されており、振動板20が対向電極30に吸着されたときに、放電によりアクチュエータが破壊されるのを防止している。この絶縁層25は、振動板20の上に形成された誘電体膜26と、誘電体膜26の上に形成された表面保護膜27とからなっている。
【0020】
誘電体膜26は比誘電率の高い誘電材料により形成されており、絶縁層25全体の酸化膜換算厚みを薄くして絶縁耐圧を確保するとともに、静電圧力を高めるようにしてある。誘電体膜26として、例えば、比誘電率が3.2のシリコン酸化膜(SiO2 膜)や、比誘電率が3.2以上の酸化アルミニウム膜(Al2O3膜)や、酸化ハフニウム膜(HfO2 膜)や、酸化タンタル膜(Ta2O3膜)、窒化ハフニウムシリケート膜(HfSiN膜)や、酸窒化ハフニウムシリケート膜(HfSiON膜)、酸窒化シリコン(SiON)膜等を用いることができ、これらの膜によって静電吸引圧力が、液を吐出するのに充分な圧力室内の圧力振動振幅を確保することができる。これらの膜は、プラズマCVD(p−CVD)や、ECRスパッタ等により形成される。例えば、TEOSプラズマCVDによりシリコン酸化膜等を形成することができ、ALD(Atomic Layer Deposition)法により酸化アルミニウム膜等を形成することができる。これらの誘電体膜25は、緻密で比誘電率が安定し、絶縁性に優れる。
【0021】
表面保護膜27はダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜27aからなり、振動板20が対向電極30に吸着される部分に位置しており、アクチュエータ内部の絶縁層25表面の残留電荷による発生圧力の変動を抑制する。表面保護膜27は、プラズマCVDにより緻密なダイヤモンドライクカーボン膜として形成した後、硝酸系やフッ酸系の洗浄液による洗浄とリンス等による表面処理により表面を水素終端させて、表面の水酸基を低減し、撥水性としている。
ダイヤモンドライクカーボン膜27aは、硬く、振動板20が対向電極30に接触し、吸着されたときの真実接触面積が小さいため、絶縁層25の接触帯電による残留電荷を低減することができる。また、ダイヤモンドライクな膜であるため、結晶を構成するSP3混成軌道の全ての軌道に、電子が充填された状態で表面に水酸基が形成され難いため、水分子(吸着水)の付着による帯電によって生じる残留電荷も低減することができる。
【0022】
ダイヤモンドライクカーボン膜27aは、その表層部にC−F結合部分27bを有している。C−F結合部分27bは、ダイヤモンドライクカーボン膜27aの成膜面をフッ素系ガスを導入したプラズマに曝すことにより、ダイヤモンドライクカーボン膜27aの最表面層をC−F結合に改質したもので、このC−F結合部分27bにより、表面エネルギーを低下させ、水分子(吸着水)付着の帯電による残留電化をさらに低減させることができる。さらに、C−F結合部分27bにより振動板20当接界面の潤滑性も向上するため、磨耗が低減し、耐久性を向上させることもできる。
【0023】
絶縁層25は、図4に示すように、例えば、誘電体膜26であるSiO2 膜の厚みを80nm、表面保護膜27であるダイヤモンドライクカーボン膜27aの厚みを10nmとし、絶縁層25の厚みを90nmとして、絶縁耐圧に優れたシリコン酸化膜の厚み割合を大きくしている。なお、ギャップGの距離は110nmとしている。
また、振動板20を効率よく対向電極30に吸引するために、図3に示すように、キャビティの幅(ここでは振動板20の幅)と個別電極30の幅をほぼ等しく設定し、表面保護膜27の幅は振動板20の幅よりも狭くしてある。表面保護層27の幅を振動板20の幅よりも狭く設定して、表面保護膜27であるダイヤモンドライクカーボン膜27aの大きな膜応力により振動板20が撓む不具合を解消する。
【0024】
キャビティ基板2のノズル基板4が接合される側の面には、耐液保護膜28が形成されており、圧力室22やリザーバ23の内部の吐出液により、キャビティ基板2がエッチングされるのを防止する。
【0025】
電極基板3はホウ珪酸ガラスからなり、その溝部がキャビティ基板2の振動板20に対向するようにして接合されている。電極基板3の溝部内には、振動板20とギャップGを隔てて対向する複数の対向電極30が形成されている。対向電極30は、対応する圧力室22ごとに形成されているため個別電極とも称される。なお、振動板20と対向電極30との間のギャップGは封止材60によって封止されている。対向電極30は酸化物系の電極からなり、例えばITO(Indium Tin Oxide)をスパッタすることにより形成される。
なお、電極基板3には、リザーバ23と連通する吐出液供給口61が設けられている。吐出液供給口61はリザーバ23の底壁に設けられた孔と繋がっており、リザーバ23にインク等の吐出液を供給する。
【0026】
ノズル基板4は圧力室22に対応した複数のノズル40を備え、キャビティ基板2の電極基板3が接合された側の面と反対側の面に接合されている。ノズル基板4はシリコン基板からなり、そのノズル40は、例えば円筒状の第1のノズル孔40aと、第1のノズル孔40aと連通しこれよりも径の大きい円筒状の第2のノズル孔40bとからなっている。
【0027】
上記のように構成された液滴吐出ヘッド1の作用について説明する。
キャビティ基板2と個々の対向電極30とには駆動回路50が接続されている。駆動回路50により、キャビティ基板2と対向電極30の間にパルス電圧が印加されると、振動板20が対向電極30に引き寄せられて吸着される。これによって圧力室22の内部に負圧が発生し、リザーバ23の内部に溜まっているインク等の液体が圧力室22に流れ込む。流れ込んだ液体により圧力室22の内部の圧力が上昇に向かうタイミングで、キャビティ基板2と対向電極30との間に印加されていた電圧が解除されると、振動板30が元の位置に戻って圧力室22の内部の圧力が更に上昇して高くなり、ノズル40から吐出液が吐出する。
【0028】
次に、液滴吐出ヘッドの製造方法について説明する。
図5は液滴吐出ヘッドの製造工程を示すフローチャートである。
まず、ホウ珪酸ガラス基板を用意し、このガラス基板に金、クロムのエッチングマスクを施し、フッ酸水溶液等でエッチングして溝部を形成し、溝部内にスパッタ等によりITOからなる対向電極30を形成する(ステップS−1)。
【0029】
ガラス基板にドリルなどによって穴をあけ、吐出液供給口61を形成する。こうして、電極基板3が完成する(ステップS−2)。
【0030】
シリコン基板を用意し、その両面を鏡面研磨し、片側表面にボロンをドープしてボロンドープ層を形成する。次に、ボロンドープ層が形成されている表面に誘電体膜26を形成する(ステップS−3)。この誘電体膜26の形成は、例えばTEOSプラズマCVD法によってシリコン酸化膜を形成して行う。
【0031】
次に、誘電体膜26の上に、ダイヤモンドライクカーボン膜27aよりなる表面保護膜27を形成する(ステップS−4)。ダイヤモンドライクカーボン膜27aの形成はプラズマCVD法により行う。原料ガスとして、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)、アセチレン(C2H2)、ベンゼン(C6H6)、トルエン(C7H8)等を用いる。
例えば、原料ガスとしてトルエン(C7H8)を用い、高周波電力で周波数13.56MHz、900W、圧力を0.2Paとする。
【0032】
こうして、シリコン基板に、誘電体膜26と、表面保護膜27のダイヤモンドライクカーボン膜27aを形成し、ダイヤモンドライクカーボン膜27aの振動板20の当接部分を、パターニングして区画形成したドライフィルムレジストで保護した後、酸素プラズマにより酸化して除去する。酸素プラズマによれば、ダイヤモンドライクカーボン膜27aのカーボン材料を効率よく酸化して除去することができ、区画形成が可能となる(ステップS−5)。
【0033】
次に、シリコン基板のダイヤモンドライクカーボン膜27aをフッ素系ガスを導入したプラズマに曝し、ダイヤモンドライクカーボン膜27aの表面をC−F結合に改質して、C−F結合部分27bを形成する(ステップS−6)。
ダイヤモンドライクカーボン膜27aの表面改質に用いるフッ素系ガスとして、フッ素(F2)ガス、三フッ化窒素(NF3)ガス、六フッ化硫黄(SF6)ガス、四フッ化炭素(CF4)ガス、六フッ化三炭素(C3F6)ガス、四フッ化ケイ素(SiF4)ガス、六フッ化二ケイ素(Si2F6)等を用いる。
例えば、フッ素系ガスとして四フッ化炭素(CF4)ガスを用いた場合、高周波電力で周波数13.56MHz、100W、圧力は40Paとし、処理時間は1minとする。
【0034】
上記のようにして、ステップS−1〜ステップS−2の工程が終了して完成した電極基板3と、ステップS−3〜ステップS−6の工程が終了したシリコン基板とを、対向電極30と振動板20とを対向させて位置合わせ(アライメント)し、陽極接合する(ステップS−7)。
【0035】
次に、電極基板3に接合されたシリコン基板の全体を、機械研削によって薄板化する。機械研削を行った後、加工変質層を除去するため、水酸化カリウム水溶液等でライトエッチングする(ステップS−8)。
【0036】
次に、シリコン基板の上面(電極基板3が接合されている面と反対側の面)の全体に、TEOSプラズマCVD法によってシリコン酸化膜を形成する。そして、このシリコン酸化膜に、圧力室22となる凹部220、リザーバ23となる凹部230、及びオリフィス24となる凹部240となる部分を形成するためのレジストをパターニングし、この部分のシリコン酸化膜をエッチングして除去する。次に、シリコン基板を水酸化カリウム水溶液等で異方性ウェットエッチングして、圧力室22となる凹部220、リザーバ23となる凹部230及びオリフィス24となる凹部240を形成し、シリコン酸化膜を除去する。このウェットエッチングでは、例えば初めに35重量%の水酸化カリウム水溶液を使用し、その後、3重量%の水酸化カリウム水溶液を使用する2段階のエッチングを実施する。以上のエッチング処理においては、先に形成していたボロンドープ層がエッチストップとして作用し、残ったボロンドープ層が振動板20として形成される。
また、上記の処理において、電極の取り出し穴となる薄板部を形成し、この薄板をさらにドライエッチング等で貫通させて電極の取り出し穴を形成する。
シリコン基板の圧力室22となる凹部220等が形成された面に、CVD法によって、酸化シリコン等からなる耐液保護膜28を形成する。この際、貫通穴の電極取り出し穴はマスクして成膜する。
こうして、シリコン基板からキャビティ基板2が完成する(ステップS−9)。
【0037】
次に、キャビティ基板2と電極基板3との間に形成されているギャップG内の水分を除去し、ギャップGを封止する(ステップS−10)。ギャップGの封止は、電極取り出し穴に、耐液保護膜28形成時のCVD膜を電極基板3とキャビテイ基板2に跨って堆積させて行う。あるいは、封止は、樹脂や接着剤を塗布して行うこともできる。
【0038】
なお、上述した工程において、陽極接合後にギャップG内を高温高真空に曝すと、水酸基や吸着水を完全に除去して、さらに残留電荷の蓄積を抑制することができる。
【0039】
次に、ICP(Inductively Coupled Plasma)放電によるドライエッチングによって、ノズル40が形成されたノズル基板4を、キャビティ基板2の電極基板3が接合されている側と反対側の面に接着剤により接合する。こうして、接合基板が完成し、液体流路が形成される(ステップS−11)。
【0040】
次に、キャビティ基板2、電極基板3、及びノズル基板4が接合された接合基板をダイシングにより分離して、液滴吐出ヘッド1が完成する(ステップS−12)。
【0041】
実施の形態2
図6は本発明の実施の形態2に係る液滴吐出ヘッドの要部を示す縦断面図、図7は図6の液滴吐出ヘッドの向きを90度変えた方向からみた圧力室付近の断面図、図8は図6のA部を拡大した説明図である。
実施の形態1では振動板20の対向電極30側の面に絶縁層25を設けたが、本実施の形態2では対向電極30の振動板20側の面に絶縁層250を設けたものである。
【0042】
振動板20はシリコン基板からなり、振動板20の対向電極30側の面には絶縁膜26aのみが形成されている。絶縁膜26aは例えばシリコン酸化膜であり、振動板20の駆動時に、振動板20と対向電極30との間で絶縁破壊やショートが生じるのを防止する。絶縁膜26aは、シリコン酸化膜の比誘電率3.2より大きな比誘電率を有する酸化アルミニウム膜等であってもよい。
【0043】
対向電極30の表面には絶縁層250が形成されており、この絶縁層250は対向電極30の上に形成された誘電体膜260と、誘電体膜260の上に形成された表面保護膜270とからなる。
誘電体膜260は例えばシリコン酸化膜からなり、表面保護膜270はダイヤモンドライクカーボン膜270からなり、ダイヤモンドライクカーボン膜270の最表面層はC−F結合に改質されて、C−F結合部分270aを形成する。
その他の構成、作用は、実施の形態1と同様なので説明を省略する。
【0044】
次に、液滴吐出ヘッドの製造方法について説明する。
図9は液滴吐出ヘッドの製造工程を示すフローチャートである。
まず、ホウ珪酸ガラス基板を用意し、このガラス基板に金、クロムのエッチングマスクを施し、フッ酸水溶液等でエッチングして溝部を形成し、溝部内にスパッタによりITOからなる対向電極30を形成する(ステップS−1)。
【0045】
対向電極30が形成されているガラス基板の表面に、誘電体膜260を形成する(S−1a)。この誘電体膜260の形成は、TEOSプラズマCVDによってシリコン酸化膜を形成して行う。
【0046】
次に、誘電体膜260の上に、ダイヤモンドライクカーボン膜270aよりなる表面保護膜270を形成する(ステップS−1b)。
【0047】
こうして、ガラス基板に、誘電体膜260と、表面保護膜270のダイヤモンドライクカーボン膜270aを形成し、レジストを塗布し、パターニングして区画形成する(ステップS−1c)。
【0048】
次に、ダイヤモンドライクカーボン膜270aの成膜面をフッ素系ガスを導入したプラズマに曝し、ダイヤモンドライクカーボン膜270aの表面をC−F結合に改質し、C−F結合部分270bを形成する(S−1d)。
【0049】
次に、ガラス基板にドリルなどによって穴をあけ、吐出液供給口61を形成する。こうして、電極基板3が完成する(ステップS−2)。
【0050】
次に、シリコン基板を用意し、その両面を鏡面研磨し、片側表面にボロンをドープしてボロンドープ層を形成する。次に、ボロンドープ層が形成されている表面に、TEOSプラズマCVD法によって、酸化シリコンよりなる誘電体膜26を形成する(ステップS−3a)。
【0051】
次に、ステップS−1〜ステップS−2の工程が終了した電極基板3と、ステップS−3aの工程が終了したシリコン基板とを、対向電極30と振動板20とを対向させ、位置合わせ(アライメント)して、陽極接合する(ステップS−7)。
【0052】
それ以後の工程(ステップS−8〜S−12)は、実施の形態1で示した工程と同様なので、説明を省略する。
【0053】
実施の形態3
図10は本発明の実施の形態3に係る液滴吐出ヘッドの要部を示す縦断面図、図11は図10の液滴吐出ヘッドの向きを90度変えた方向からみた圧力室付近の断面図、図12は図10のA部を拡大した説明図である。
実施の形態1では振動板20の対向電極30側の面に絶縁層25を設け、実施の形態2では対向電極30の振動板20側の面に絶縁層250を設けたが、本実施の形態3では、振動板20の対向電極30側の面、及び対向電極30の振動板20側の面に、それぞれ絶縁層25、250を設けたものである。
【0054】
振動板20の対向電極30側の面には絶縁層25が形成されており、この絶縁層25は、振動板20の上に形成された誘電体膜26と、誘電体膜26の上に形成された表面保護膜27とからなる。また、対向電極30の振動板側の面には絶縁層250が形成されており、この絶縁層250は、対向電極30の上に形成された誘電体膜260と、誘電体膜260の上に形成された表面保護膜270とからなる。それぞれの誘電体膜26、260はシリコン酸化膜等により形成され、及びそれぞれの表面保護膜27、270はダイヤモンドライクカーボン膜27a、270aにより形成され、ダイヤモンドライクカーボン膜27a、270aの最表面層はC−F結合に改質され、C−F結合部分27b、270bを形成している。
その他の構成、作用、効果は、実施の形態1と同様なので説明を省略する。
【0055】
図13は液滴吐出ヘッドの製造工程を示すフローチャートである。
本実施の形態3の、ガラス基板の溝部の形成から電極基板3の完成までの工程(ステップS−1からステップS−2)は、実施の形態2(図9参照)のステップS−1からS−2までの工程と同様である。
また、本実施の形態3の、シリコン基板への誘電体膜26の形成から、表面保護膜27(ダイヤモンドライクカーボン膜27a)の表面をC−F結合に改質してC−F結合部分27bを形成するまでの工程(ステップS−3〜S−6)は、実施の形態1(図5参照)のステップS−3〜S−6までの工程と同様である。
さらに、本実施の形態3の、ステップS−7〜S−12までの工程は、実施の形態1(図5参照)及び実施の形態2(図9参照)のステップS−7〜S−12までの工程と同様である。
【0056】
実施の形態4
図14は本発明の実施形態4に係る液滴吐出装置の斜視図である。液滴吐出装置は、実施の形態1〜3に係る液滴吐出ヘッド1を搭載したもので、液滴としてインクを吐出するインクジェットプリンタである。
液滴吐出装置は、絶縁層25、250の表面保護膜27、270であるダイヤモンドライクカーボン膜27a、270aの最表面層をC−F結合に改質してC−F結合部分27b、270bを形成し、当接駆動時における安定性を向上させたので、耐久性に優れた高精度の液吐出が可能となる。
なお、実施の形態1〜3に示した液滴吐出ヘッド1は、ここに示したインクジェットプリンタの他に、吐出する液滴を種々変更することで、カラーフィルタのマトリクスパターンの形成、有機EL表示装置の発光部の形成、生体液体試料の吐出等を行う液滴吐出装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドの一部を断面で示した分解斜視図。
【図2】図1を組み立てた状態の要部の縦断面図。
【図3】図2の液滴吐出ヘッドの圧力室付近の断面図。
【図4】図2の要部を拡大した説明図。
【図5】実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドの製造工程を示すフローチャート。
【図6】本発明の実施の形態2に係る液滴吐出ヘッドの要部を拡大した縦断面図。
【図7】図6の液滴吐出ヘッドの圧力室付近の断面図。
【図8】図6の要部を拡大した説明図。
【図9】実施の形態2に係る液滴吐出ヘッドの製造工程を示すフローチャート。
【図10】本発明の実施の形態3に係る液滴吐出ヘッドの要部を拡大した縦断面図。
【図11】図10の液滴吐出ヘッドの圧力室付近の断面図。
【図12】図10の要部を拡大した説明図。
【図13】実施の形態3に係る液滴吐出ヘッドの製造工程を示すフローチャート。
【図14】本発明の実施の形態4に係る液滴吐出装置の斜視図。
【符号の説明】
【0058】
1 液滴吐出ヘッド、2 キャビティ基板、3 電極基板、4 ノズル基板、20 振動板、22 圧力室、23 リザーバ、24 オリフィス、25、250 絶縁層、26、260 誘電体膜、26a 絶縁膜、27、270 表面保護膜、27a、270a ダイヤモンドライクカーボン膜、27b、270b C−F結合部分、30 対向電極(固定電極)、40 ノズル、50 駆動回路、60 封止材、61 吐出液供給口、G ギャップ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、静電アクチュエータの製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法、及び液滴吐出装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタにおけるインク吐出方法として、駆動手段に静電気力を利用した、いわゆる静電駆動方式のインクジェットプリンタが知られている。このようなインクジェットプリンタは、振動板と対向電極との間に電圧を印加、遮断することにより、振動板を対向電極に吸引、隔離させ、それによって生じる圧力変化を利用してインクを吐出する。従って、振動板と対向電極とはインクが貯えられた圧力室の圧力を変動させる静電アクチュエータとして作用する。
【0003】
従来の静電アクチュエータは、振動板や対向電極に、ダイヤモンドライクカーボン等からなる表面保護膜を形成して、アクチュエータの安定駆動と駆動耐久性を確保していた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来の静電アクチュエータは、振動板や対向電極に、比誘電率が大きい材料からなる誘電体膜とその上に位置するダイヤモンドライクカーボン等からなる表面保護膜とを一体に形成し、比誘電率の大きい材料からなる誘電体膜によってアクチュエータの発生圧力を向上させ、さらにダイヤモンドライクカーボン等からなる表面保護膜によって駆動耐久特性を向上させていた(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2007−136856号公報(第8頁、図2)
【特許文献2】特開2008−18706号公報 (第7頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の発明においてアクチュエータの発生圧力を向上させようとすると、特許文献2記載の発明のように比誘電率の大きい材料からなる誘電体膜を形成する必要があるが、このような誘電体膜を用いると吐出能力が向上するものの、振動板当接時に表層保護膜にかかる応力等の負荷が増加してしまい、表面保護膜の当接部が磨耗して、寿命が低下してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、静電アクチュエータの絶縁層を構成する表面保護膜を改質処理して、寿命が長く、しかも高い吐出能力を維持して安定駆動することができる静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、静電アクチュエータの製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法、及び液滴吐出装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る静電アクチュエータは、振動板と、振動板に空隙を隔てて対向する対向電極とを備え、振動板と対向電極との対向面のいずれか一方または両者に絶縁層が設けられ、絶縁層が誘電体膜とその上に形成された表面保護膜とからなり、表面保護膜を表層部にC−F結合を有するダイヤモンドライクカーボン膜で形成したものである。
【0009】
ダイヤモンドライクカーボン膜の表層部をC−F結合に改質したので、表面エネルギーが低下し、水分子付着の帯電による残留電荷が低減する。また、振動板当接界面の潤滑性が向上するため摩耗が低減し、耐久性が向上する。
【0010】
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、上記の静電アクチュエータを備えたものである。
また、ダイヤモンドライクカーボン膜による当接駆動が安定し摩耗が低減した静電アクチュエータを備えた液滴吐出ヘッドを得ることができる。
【0011】
本発明に係る液滴吐出装置は、上記の液滴吐出ヘッドを搭載したものである。
また、安定駆動と駆動耐久性に優れた液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置を得ることができる。
【0012】
本発明に係る静電アクチュエータの製造方法は、シリコン基板の表面と、電極基板に形成した対向電極の表面との、いずれか一方または両者に誘電体膜を形成し、誘電体膜の上にダイヤモンドライクカーボン膜を形成して、これらの膜により絶縁層を形成する工程と、絶縁層のダイヤモンドライクカーボン膜の表面にフッ素系ガスのプラズマを照射してダイヤモンドライクカーボン膜の表層部をC−F結合に改質する工程と、シリコン基板の表面と電極基板に形成した対向電極の表面とをギャップを隔てて対向させて、シリコン基板と電極基板とを接合する工程と、シリコン基板と電極基板内に形成されたギャップ内の水分を除去してギャップを封止する工程と、シリコン基板に振動板を形成する工程とを有するものである。
【0013】
フッ素系ガスのプラズマをダイヤモンドライクカーボン膜の表面に照射すると、ダイヤモンドライクカーボン膜の表面を安定したC−F結合に改質することができる。こうして、ダイヤモンドライクカーボン膜の表面エネルギーが低下し、水分子付着の帯電による残留電荷が低減する。また、振動板当接界面の潤滑性が向上するため、摩耗が低減し、耐久性が向上する。
【0014】
本発明に係る静電アクチュエータの製造方法は、フッ素系ガスが、フッ素ガス、三フッ化窒素ガス、六フッ化硫黄ガス、四フッ化炭素ガス、六フッ化三炭素ガス、四フッ化ケイ素ガス、及び六フッ化二ケイ素のいずれかを用いたものである。
これらのフッ素系ガスをプラズマに曝すことにより、ダイヤモンドライクカーボン膜の表面をC−F結合に改質することができ、安定したC−F結合部分を形成する。
【0015】
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、上記の静電アクチュエータの製造方法を適用して、液滴吐出ヘッドのアクチュエータ部分を形成するものである。
また、ダイヤモンドライクカーボン膜による当接駆動が安定し摩耗が低減した静電アクチュエータを備えた液滴吐出ヘッドを得ることができる。
【0016】
本発明に係る液滴吐出装置の製造方法は、上記の液滴吐出ヘッドの製造方法を適用して、液滴吐出装置の液滴吐出ヘッド部分を形成するものである。
また、安定駆動と駆動耐久性に優れた液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態1
図1は本発明の実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドの一部を断面で示した分解斜視図、図2は図1を組み立てた状態の要部を示す縦断面図、図3は図2の液滴吐出ヘッドの向きを90度変えた方向からみた圧力室付近の断面図、図4は図2のA部を拡大した説明図である。
液滴吐出ヘッド1は、キャビティ基板2、電極基板3、及びノズル基板4を積層して接合されており、キャビティ基板2に形成された可撓性を有する振動板20と、電極基板3に形成された対向電極30とが静電アクチュエータを構成している。
【0018】
キャビティ基板2は単結晶シリコンからなり、底壁が振動板20として形成され、吐出液を貯えて吐出させる圧力室22となっている凹部220が複数形成されている。圧力室22は紙面手前側から紙面奥側にかけて平行に並んで形成されており(図2参照)、圧力室22の底面を構成する振動板20は、シリコン基板の表面からボロンを拡散させたボロンドープ層として形成されている。また、キャビティ基板2には、各圧力室22にインク等の液を供給するためのリザーバ23となる凹部230と、このリザーバ23と各圧力室22を連通する細溝状のオリフィス24となる凹部240が形成されている。なお、リザーバ23は単一の凹部230から形成されており、オリフィス24は各圧力室22に対して1つずつ形成されている。
【0019】
振動板20の対向電極30側の面には絶縁層25(図3)が形成されており、振動板20が対向電極30に吸着されたときに、放電によりアクチュエータが破壊されるのを防止している。この絶縁層25は、振動板20の上に形成された誘電体膜26と、誘電体膜26の上に形成された表面保護膜27とからなっている。
【0020】
誘電体膜26は比誘電率の高い誘電材料により形成されており、絶縁層25全体の酸化膜換算厚みを薄くして絶縁耐圧を確保するとともに、静電圧力を高めるようにしてある。誘電体膜26として、例えば、比誘電率が3.2のシリコン酸化膜(SiO2 膜)や、比誘電率が3.2以上の酸化アルミニウム膜(Al2O3膜)や、酸化ハフニウム膜(HfO2 膜)や、酸化タンタル膜(Ta2O3膜)、窒化ハフニウムシリケート膜(HfSiN膜)や、酸窒化ハフニウムシリケート膜(HfSiON膜)、酸窒化シリコン(SiON)膜等を用いることができ、これらの膜によって静電吸引圧力が、液を吐出するのに充分な圧力室内の圧力振動振幅を確保することができる。これらの膜は、プラズマCVD(p−CVD)や、ECRスパッタ等により形成される。例えば、TEOSプラズマCVDによりシリコン酸化膜等を形成することができ、ALD(Atomic Layer Deposition)法により酸化アルミニウム膜等を形成することができる。これらの誘電体膜25は、緻密で比誘電率が安定し、絶縁性に優れる。
【0021】
表面保護膜27はダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜27aからなり、振動板20が対向電極30に吸着される部分に位置しており、アクチュエータ内部の絶縁層25表面の残留電荷による発生圧力の変動を抑制する。表面保護膜27は、プラズマCVDにより緻密なダイヤモンドライクカーボン膜として形成した後、硝酸系やフッ酸系の洗浄液による洗浄とリンス等による表面処理により表面を水素終端させて、表面の水酸基を低減し、撥水性としている。
ダイヤモンドライクカーボン膜27aは、硬く、振動板20が対向電極30に接触し、吸着されたときの真実接触面積が小さいため、絶縁層25の接触帯電による残留電荷を低減することができる。また、ダイヤモンドライクな膜であるため、結晶を構成するSP3混成軌道の全ての軌道に、電子が充填された状態で表面に水酸基が形成され難いため、水分子(吸着水)の付着による帯電によって生じる残留電荷も低減することができる。
【0022】
ダイヤモンドライクカーボン膜27aは、その表層部にC−F結合部分27bを有している。C−F結合部分27bは、ダイヤモンドライクカーボン膜27aの成膜面をフッ素系ガスを導入したプラズマに曝すことにより、ダイヤモンドライクカーボン膜27aの最表面層をC−F結合に改質したもので、このC−F結合部分27bにより、表面エネルギーを低下させ、水分子(吸着水)付着の帯電による残留電化をさらに低減させることができる。さらに、C−F結合部分27bにより振動板20当接界面の潤滑性も向上するため、磨耗が低減し、耐久性を向上させることもできる。
【0023】
絶縁層25は、図4に示すように、例えば、誘電体膜26であるSiO2 膜の厚みを80nm、表面保護膜27であるダイヤモンドライクカーボン膜27aの厚みを10nmとし、絶縁層25の厚みを90nmとして、絶縁耐圧に優れたシリコン酸化膜の厚み割合を大きくしている。なお、ギャップGの距離は110nmとしている。
また、振動板20を効率よく対向電極30に吸引するために、図3に示すように、キャビティの幅(ここでは振動板20の幅)と個別電極30の幅をほぼ等しく設定し、表面保護膜27の幅は振動板20の幅よりも狭くしてある。表面保護層27の幅を振動板20の幅よりも狭く設定して、表面保護膜27であるダイヤモンドライクカーボン膜27aの大きな膜応力により振動板20が撓む不具合を解消する。
【0024】
キャビティ基板2のノズル基板4が接合される側の面には、耐液保護膜28が形成されており、圧力室22やリザーバ23の内部の吐出液により、キャビティ基板2がエッチングされるのを防止する。
【0025】
電極基板3はホウ珪酸ガラスからなり、その溝部がキャビティ基板2の振動板20に対向するようにして接合されている。電極基板3の溝部内には、振動板20とギャップGを隔てて対向する複数の対向電極30が形成されている。対向電極30は、対応する圧力室22ごとに形成されているため個別電極とも称される。なお、振動板20と対向電極30との間のギャップGは封止材60によって封止されている。対向電極30は酸化物系の電極からなり、例えばITO(Indium Tin Oxide)をスパッタすることにより形成される。
なお、電極基板3には、リザーバ23と連通する吐出液供給口61が設けられている。吐出液供給口61はリザーバ23の底壁に設けられた孔と繋がっており、リザーバ23にインク等の吐出液を供給する。
【0026】
ノズル基板4は圧力室22に対応した複数のノズル40を備え、キャビティ基板2の電極基板3が接合された側の面と反対側の面に接合されている。ノズル基板4はシリコン基板からなり、そのノズル40は、例えば円筒状の第1のノズル孔40aと、第1のノズル孔40aと連通しこれよりも径の大きい円筒状の第2のノズル孔40bとからなっている。
【0027】
上記のように構成された液滴吐出ヘッド1の作用について説明する。
キャビティ基板2と個々の対向電極30とには駆動回路50が接続されている。駆動回路50により、キャビティ基板2と対向電極30の間にパルス電圧が印加されると、振動板20が対向電極30に引き寄せられて吸着される。これによって圧力室22の内部に負圧が発生し、リザーバ23の内部に溜まっているインク等の液体が圧力室22に流れ込む。流れ込んだ液体により圧力室22の内部の圧力が上昇に向かうタイミングで、キャビティ基板2と対向電極30との間に印加されていた電圧が解除されると、振動板30が元の位置に戻って圧力室22の内部の圧力が更に上昇して高くなり、ノズル40から吐出液が吐出する。
【0028】
次に、液滴吐出ヘッドの製造方法について説明する。
図5は液滴吐出ヘッドの製造工程を示すフローチャートである。
まず、ホウ珪酸ガラス基板を用意し、このガラス基板に金、クロムのエッチングマスクを施し、フッ酸水溶液等でエッチングして溝部を形成し、溝部内にスパッタ等によりITOからなる対向電極30を形成する(ステップS−1)。
【0029】
ガラス基板にドリルなどによって穴をあけ、吐出液供給口61を形成する。こうして、電極基板3が完成する(ステップS−2)。
【0030】
シリコン基板を用意し、その両面を鏡面研磨し、片側表面にボロンをドープしてボロンドープ層を形成する。次に、ボロンドープ層が形成されている表面に誘電体膜26を形成する(ステップS−3)。この誘電体膜26の形成は、例えばTEOSプラズマCVD法によってシリコン酸化膜を形成して行う。
【0031】
次に、誘電体膜26の上に、ダイヤモンドライクカーボン膜27aよりなる表面保護膜27を形成する(ステップS−4)。ダイヤモンドライクカーボン膜27aの形成はプラズマCVD法により行う。原料ガスとして、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)、アセチレン(C2H2)、ベンゼン(C6H6)、トルエン(C7H8)等を用いる。
例えば、原料ガスとしてトルエン(C7H8)を用い、高周波電力で周波数13.56MHz、900W、圧力を0.2Paとする。
【0032】
こうして、シリコン基板に、誘電体膜26と、表面保護膜27のダイヤモンドライクカーボン膜27aを形成し、ダイヤモンドライクカーボン膜27aの振動板20の当接部分を、パターニングして区画形成したドライフィルムレジストで保護した後、酸素プラズマにより酸化して除去する。酸素プラズマによれば、ダイヤモンドライクカーボン膜27aのカーボン材料を効率よく酸化して除去することができ、区画形成が可能となる(ステップS−5)。
【0033】
次に、シリコン基板のダイヤモンドライクカーボン膜27aをフッ素系ガスを導入したプラズマに曝し、ダイヤモンドライクカーボン膜27aの表面をC−F結合に改質して、C−F結合部分27bを形成する(ステップS−6)。
ダイヤモンドライクカーボン膜27aの表面改質に用いるフッ素系ガスとして、フッ素(F2)ガス、三フッ化窒素(NF3)ガス、六フッ化硫黄(SF6)ガス、四フッ化炭素(CF4)ガス、六フッ化三炭素(C3F6)ガス、四フッ化ケイ素(SiF4)ガス、六フッ化二ケイ素(Si2F6)等を用いる。
例えば、フッ素系ガスとして四フッ化炭素(CF4)ガスを用いた場合、高周波電力で周波数13.56MHz、100W、圧力は40Paとし、処理時間は1minとする。
【0034】
上記のようにして、ステップS−1〜ステップS−2の工程が終了して完成した電極基板3と、ステップS−3〜ステップS−6の工程が終了したシリコン基板とを、対向電極30と振動板20とを対向させて位置合わせ(アライメント)し、陽極接合する(ステップS−7)。
【0035】
次に、電極基板3に接合されたシリコン基板の全体を、機械研削によって薄板化する。機械研削を行った後、加工変質層を除去するため、水酸化カリウム水溶液等でライトエッチングする(ステップS−8)。
【0036】
次に、シリコン基板の上面(電極基板3が接合されている面と反対側の面)の全体に、TEOSプラズマCVD法によってシリコン酸化膜を形成する。そして、このシリコン酸化膜に、圧力室22となる凹部220、リザーバ23となる凹部230、及びオリフィス24となる凹部240となる部分を形成するためのレジストをパターニングし、この部分のシリコン酸化膜をエッチングして除去する。次に、シリコン基板を水酸化カリウム水溶液等で異方性ウェットエッチングして、圧力室22となる凹部220、リザーバ23となる凹部230及びオリフィス24となる凹部240を形成し、シリコン酸化膜を除去する。このウェットエッチングでは、例えば初めに35重量%の水酸化カリウム水溶液を使用し、その後、3重量%の水酸化カリウム水溶液を使用する2段階のエッチングを実施する。以上のエッチング処理においては、先に形成していたボロンドープ層がエッチストップとして作用し、残ったボロンドープ層が振動板20として形成される。
また、上記の処理において、電極の取り出し穴となる薄板部を形成し、この薄板をさらにドライエッチング等で貫通させて電極の取り出し穴を形成する。
シリコン基板の圧力室22となる凹部220等が形成された面に、CVD法によって、酸化シリコン等からなる耐液保護膜28を形成する。この際、貫通穴の電極取り出し穴はマスクして成膜する。
こうして、シリコン基板からキャビティ基板2が完成する(ステップS−9)。
【0037】
次に、キャビティ基板2と電極基板3との間に形成されているギャップG内の水分を除去し、ギャップGを封止する(ステップS−10)。ギャップGの封止は、電極取り出し穴に、耐液保護膜28形成時のCVD膜を電極基板3とキャビテイ基板2に跨って堆積させて行う。あるいは、封止は、樹脂や接着剤を塗布して行うこともできる。
【0038】
なお、上述した工程において、陽極接合後にギャップG内を高温高真空に曝すと、水酸基や吸着水を完全に除去して、さらに残留電荷の蓄積を抑制することができる。
【0039】
次に、ICP(Inductively Coupled Plasma)放電によるドライエッチングによって、ノズル40が形成されたノズル基板4を、キャビティ基板2の電極基板3が接合されている側と反対側の面に接着剤により接合する。こうして、接合基板が完成し、液体流路が形成される(ステップS−11)。
【0040】
次に、キャビティ基板2、電極基板3、及びノズル基板4が接合された接合基板をダイシングにより分離して、液滴吐出ヘッド1が完成する(ステップS−12)。
【0041】
実施の形態2
図6は本発明の実施の形態2に係る液滴吐出ヘッドの要部を示す縦断面図、図7は図6の液滴吐出ヘッドの向きを90度変えた方向からみた圧力室付近の断面図、図8は図6のA部を拡大した説明図である。
実施の形態1では振動板20の対向電極30側の面に絶縁層25を設けたが、本実施の形態2では対向電極30の振動板20側の面に絶縁層250を設けたものである。
【0042】
振動板20はシリコン基板からなり、振動板20の対向電極30側の面には絶縁膜26aのみが形成されている。絶縁膜26aは例えばシリコン酸化膜であり、振動板20の駆動時に、振動板20と対向電極30との間で絶縁破壊やショートが生じるのを防止する。絶縁膜26aは、シリコン酸化膜の比誘電率3.2より大きな比誘電率を有する酸化アルミニウム膜等であってもよい。
【0043】
対向電極30の表面には絶縁層250が形成されており、この絶縁層250は対向電極30の上に形成された誘電体膜260と、誘電体膜260の上に形成された表面保護膜270とからなる。
誘電体膜260は例えばシリコン酸化膜からなり、表面保護膜270はダイヤモンドライクカーボン膜270からなり、ダイヤモンドライクカーボン膜270の最表面層はC−F結合に改質されて、C−F結合部分270aを形成する。
その他の構成、作用は、実施の形態1と同様なので説明を省略する。
【0044】
次に、液滴吐出ヘッドの製造方法について説明する。
図9は液滴吐出ヘッドの製造工程を示すフローチャートである。
まず、ホウ珪酸ガラス基板を用意し、このガラス基板に金、クロムのエッチングマスクを施し、フッ酸水溶液等でエッチングして溝部を形成し、溝部内にスパッタによりITOからなる対向電極30を形成する(ステップS−1)。
【0045】
対向電極30が形成されているガラス基板の表面に、誘電体膜260を形成する(S−1a)。この誘電体膜260の形成は、TEOSプラズマCVDによってシリコン酸化膜を形成して行う。
【0046】
次に、誘電体膜260の上に、ダイヤモンドライクカーボン膜270aよりなる表面保護膜270を形成する(ステップS−1b)。
【0047】
こうして、ガラス基板に、誘電体膜260と、表面保護膜270のダイヤモンドライクカーボン膜270aを形成し、レジストを塗布し、パターニングして区画形成する(ステップS−1c)。
【0048】
次に、ダイヤモンドライクカーボン膜270aの成膜面をフッ素系ガスを導入したプラズマに曝し、ダイヤモンドライクカーボン膜270aの表面をC−F結合に改質し、C−F結合部分270bを形成する(S−1d)。
【0049】
次に、ガラス基板にドリルなどによって穴をあけ、吐出液供給口61を形成する。こうして、電極基板3が完成する(ステップS−2)。
【0050】
次に、シリコン基板を用意し、その両面を鏡面研磨し、片側表面にボロンをドープしてボロンドープ層を形成する。次に、ボロンドープ層が形成されている表面に、TEOSプラズマCVD法によって、酸化シリコンよりなる誘電体膜26を形成する(ステップS−3a)。
【0051】
次に、ステップS−1〜ステップS−2の工程が終了した電極基板3と、ステップS−3aの工程が終了したシリコン基板とを、対向電極30と振動板20とを対向させ、位置合わせ(アライメント)して、陽極接合する(ステップS−7)。
【0052】
それ以後の工程(ステップS−8〜S−12)は、実施の形態1で示した工程と同様なので、説明を省略する。
【0053】
実施の形態3
図10は本発明の実施の形態3に係る液滴吐出ヘッドの要部を示す縦断面図、図11は図10の液滴吐出ヘッドの向きを90度変えた方向からみた圧力室付近の断面図、図12は図10のA部を拡大した説明図である。
実施の形態1では振動板20の対向電極30側の面に絶縁層25を設け、実施の形態2では対向電極30の振動板20側の面に絶縁層250を設けたが、本実施の形態3では、振動板20の対向電極30側の面、及び対向電極30の振動板20側の面に、それぞれ絶縁層25、250を設けたものである。
【0054】
振動板20の対向電極30側の面には絶縁層25が形成されており、この絶縁層25は、振動板20の上に形成された誘電体膜26と、誘電体膜26の上に形成された表面保護膜27とからなる。また、対向電極30の振動板側の面には絶縁層250が形成されており、この絶縁層250は、対向電極30の上に形成された誘電体膜260と、誘電体膜260の上に形成された表面保護膜270とからなる。それぞれの誘電体膜26、260はシリコン酸化膜等により形成され、及びそれぞれの表面保護膜27、270はダイヤモンドライクカーボン膜27a、270aにより形成され、ダイヤモンドライクカーボン膜27a、270aの最表面層はC−F結合に改質され、C−F結合部分27b、270bを形成している。
その他の構成、作用、効果は、実施の形態1と同様なので説明を省略する。
【0055】
図13は液滴吐出ヘッドの製造工程を示すフローチャートである。
本実施の形態3の、ガラス基板の溝部の形成から電極基板3の完成までの工程(ステップS−1からステップS−2)は、実施の形態2(図9参照)のステップS−1からS−2までの工程と同様である。
また、本実施の形態3の、シリコン基板への誘電体膜26の形成から、表面保護膜27(ダイヤモンドライクカーボン膜27a)の表面をC−F結合に改質してC−F結合部分27bを形成するまでの工程(ステップS−3〜S−6)は、実施の形態1(図5参照)のステップS−3〜S−6までの工程と同様である。
さらに、本実施の形態3の、ステップS−7〜S−12までの工程は、実施の形態1(図5参照)及び実施の形態2(図9参照)のステップS−7〜S−12までの工程と同様である。
【0056】
実施の形態4
図14は本発明の実施形態4に係る液滴吐出装置の斜視図である。液滴吐出装置は、実施の形態1〜3に係る液滴吐出ヘッド1を搭載したもので、液滴としてインクを吐出するインクジェットプリンタである。
液滴吐出装置は、絶縁層25、250の表面保護膜27、270であるダイヤモンドライクカーボン膜27a、270aの最表面層をC−F結合に改質してC−F結合部分27b、270bを形成し、当接駆動時における安定性を向上させたので、耐久性に優れた高精度の液吐出が可能となる。
なお、実施の形態1〜3に示した液滴吐出ヘッド1は、ここに示したインクジェットプリンタの他に、吐出する液滴を種々変更することで、カラーフィルタのマトリクスパターンの形成、有機EL表示装置の発光部の形成、生体液体試料の吐出等を行う液滴吐出装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドの一部を断面で示した分解斜視図。
【図2】図1を組み立てた状態の要部の縦断面図。
【図3】図2の液滴吐出ヘッドの圧力室付近の断面図。
【図4】図2の要部を拡大した説明図。
【図5】実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドの製造工程を示すフローチャート。
【図6】本発明の実施の形態2に係る液滴吐出ヘッドの要部を拡大した縦断面図。
【図7】図6の液滴吐出ヘッドの圧力室付近の断面図。
【図8】図6の要部を拡大した説明図。
【図9】実施の形態2に係る液滴吐出ヘッドの製造工程を示すフローチャート。
【図10】本発明の実施の形態3に係る液滴吐出ヘッドの要部を拡大した縦断面図。
【図11】図10の液滴吐出ヘッドの圧力室付近の断面図。
【図12】図10の要部を拡大した説明図。
【図13】実施の形態3に係る液滴吐出ヘッドの製造工程を示すフローチャート。
【図14】本発明の実施の形態4に係る液滴吐出装置の斜視図。
【符号の説明】
【0058】
1 液滴吐出ヘッド、2 キャビティ基板、3 電極基板、4 ノズル基板、20 振動板、22 圧力室、23 リザーバ、24 オリフィス、25、250 絶縁層、26、260 誘電体膜、26a 絶縁膜、27、270 表面保護膜、27a、270a ダイヤモンドライクカーボン膜、27b、270b C−F結合部分、30 対向電極(固定電極)、40 ノズル、50 駆動回路、60 封止材、61 吐出液供給口、G ギャップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板と、前記振動板に空隙を隔てて対向する対向電極とを備え、
前記振動板と前記対向電極との対向面のいずれか一方または両者に絶縁層が設けられ、
前記絶縁層が、誘電体膜とその上に形成された表面保護膜とからなり、
前記表面保護膜が表層部にC−F結合を有するダイヤモンドライクカーボン膜であることを特徴とする静電アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載の静電アクチュエータを備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項2記載の液滴吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
シリコン基板の表面と、電極基板に形成した対向電極の表面との、いずれか一方または両者に誘電体膜を形成し、前記誘電体膜の上にダイヤモンドライクカーボン膜を形成して、これらにより絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層のダイヤモンドライクカーボン膜の表面にフッ素系ガスのプラズマを照射して前記ダイヤモンドライクカーボン膜の表層部をC−F結合に改質する工程と、
前記シリコン基板の表面と、前記電極基板に形成した対向電極の表面とを、ギャップを隔てて対向させて、前記シリコン基板と前記電極基板とを接合する工程と、
前記シリコン基板と前記電極基板内に形成されたギャップ内の水分を除去して前記ギャップを封止する工程と、
前記シリコン基板に振動板を形成する工程と、
を有することを特徴とする静電アクチュエータの製造方法。
【請求項5】
前記フッ素系ガスが、フッ素ガス、三フッ化窒素ガス、六フッ化硫黄ガス、四フッ化炭素ガス、六フッ化三炭素ガス、四フッ化ケイ素ガス、及び六フッ化二ケイ素のいずれかであることを特徴とする請求項4記載の静電アクチュエータの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の静電アクチュエータの製造方法を適用して、液滴吐出ヘッドのアクチュエータ部分を形成することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の液滴吐出ヘッドの製造方法を適用して、液滴吐出装置の液滴吐出ヘッド部分を形成することを特徴とする液滴吐出装置の製造方法。
【請求項1】
振動板と、前記振動板に空隙を隔てて対向する対向電極とを備え、
前記振動板と前記対向電極との対向面のいずれか一方または両者に絶縁層が設けられ、
前記絶縁層が、誘電体膜とその上に形成された表面保護膜とからなり、
前記表面保護膜が表層部にC−F結合を有するダイヤモンドライクカーボン膜であることを特徴とする静電アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載の静電アクチュエータを備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項2記載の液滴吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
シリコン基板の表面と、電極基板に形成した対向電極の表面との、いずれか一方または両者に誘電体膜を形成し、前記誘電体膜の上にダイヤモンドライクカーボン膜を形成して、これらにより絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層のダイヤモンドライクカーボン膜の表面にフッ素系ガスのプラズマを照射して前記ダイヤモンドライクカーボン膜の表層部をC−F結合に改質する工程と、
前記シリコン基板の表面と、前記電極基板に形成した対向電極の表面とを、ギャップを隔てて対向させて、前記シリコン基板と前記電極基板とを接合する工程と、
前記シリコン基板と前記電極基板内に形成されたギャップ内の水分を除去して前記ギャップを封止する工程と、
前記シリコン基板に振動板を形成する工程と、
を有することを特徴とする静電アクチュエータの製造方法。
【請求項5】
前記フッ素系ガスが、フッ素ガス、三フッ化窒素ガス、六フッ化硫黄ガス、四フッ化炭素ガス、六フッ化三炭素ガス、四フッ化ケイ素ガス、及び六フッ化二ケイ素のいずれかであることを特徴とする請求項4記載の静電アクチュエータの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の静電アクチュエータの製造方法を適用して、液滴吐出ヘッドのアクチュエータ部分を形成することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の液滴吐出ヘッドの製造方法を適用して、液滴吐出装置の液滴吐出ヘッド部分を形成することを特徴とする液滴吐出装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−297948(P2009−297948A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152827(P2008−152827)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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