説明

静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、静電アクチュエータの製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法

【課題】製造工程を複雑にすることなく、ギャップを確実に気密封止できる静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置、並びに静電アクチュエータの製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法を提供する。
【解決手段】この液滴吐出ヘッド100は、キャビティ基板3と、電極ガラス基板4と、圧力室7から移送される液滴を吐出するノズル孔5が形成されたノズル基板1とを備え、電極ガラス基板4に、個別電極17の一部をキャビティ基板3と接合させるための凸部35を形成し、キャビティ基板3と凸部35に形成された個別電極17の一部とでギャップ18を封止したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置、並びに静電アクチュエータの製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法に関し、特にギャップを確実に気密封止する静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置、並びに静電アクチュエータの製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴を吐出するための液滴吐出ヘッドとして、たとえばインクジェット記録装置に搭載されるインクジェットヘッドが知られている。一般に、このインクジェットヘッドは、インク滴を吐出するための複数のノズル孔が形成されたノズル基板と、このノズル基板に接合されノズル孔に連通する吐出室や、リザーバ等のインク流路が形成されたキャビティ基板とを備え、吐出室に圧力を加えることによりインク滴を選択されたノズル孔より吐出するように構成されている。このようにインク滴を吐出させる手段としては、静電気力を利用する静電駆動方式や、圧電素子による圧電方式、発熱素子を利用するバブルジェット(登録商標)方式等が存在する。
【0003】
このうち、静電駆動方式のインクジェットヘッドにおいては、吐出室の底部を振動板としたキャビティ基板と、この振動板に所定のギャップ(空隙)を介して対向する個別電極を形成したガラス基板とを接合させた構成となっている。このギャップは、インク滴等の液滴の吐出特性に大きく影響するため、厳格な精度管理が要求される。また、ギャップ内に水分が侵入してしまうと、振動板と個別電極とが貼り付き、振動板の駆動が阻害される要因になるため、確実に気密封止することが要求される。なお、個別電極は、振動板の変位を可能とするよう所定のギャップ長を確保するために、たとえばガラス基板の表面に形成された凹部の底面にITO(Indium Tin Oxide)等をスパッタして形成されている。
【0004】
ギャップを気密封止するものとして、「振動板と、前記振動板に対向して配置された対向電極と、前記振動板と前記対向電極とによって形成される振動室と、一方が前記振動室に連通し他方が封止部材により気密封止されている通路からなる静電アクチュエータにおいて、前記通路に前記封止部材が溜まる封止溜まり部が形成されている静電アクチュエータ」が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この静電アクチュエータは、封止部材、及び、封止部材が溜まる封止溜まり部を形成することにより、ギャップを確実に気密封止するようにしている。
【0005】
また、「ノズルが連通する液流路を形成する流路形成部材と、前記液流路の壁面を形成する振動板及びこの振動板にギャップをおいて対向する個別電極とを有するアクチュエータ基板とを備え、前記振動板を静電力で変形させることで前記ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドにおいて、前記振動板の液流路側表面に液に対して耐腐食性を有する耐腐食性膜が形成されるとともに、この耐腐食性膜を構成する材料で前記振動板と個別電極との間に形成される空隙に通じる空隙封止孔が封止されている液滴吐出ヘッド」が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。この液滴吐出ヘッドでは、犠牲層を用いてギャップを形成した後、耐腐食膜によって気密封止を行うようにしている。
【0006】
さらに、「インク液滴を吐出するノズル孔を有するノズル板と、前記ノズル孔に連通し少なくとも一方の壁が振動板によって形成された吐出室を有する吐出室基板と、前記振動板と対向する位置に電極を有する電極基板とからなり、前記振動板と前記電極間に振動室が形成され、前記振動板を静電気力により変形させるインクジェットヘッドにおいて、前記振動室と外部を連通する連通孔が酸化膜により封止されているインクジェットヘッド」が提案されている(たとえば、特許文献3参照)。このインクジェットヘッドでは、酸化膜を堆積させ、気密封止を行うようにしている。
【0007】
【特許文献1】特開平10−304685号公報(第3頁、第1図)
【特許文献2】特開2004−398425号公報(第8頁、第4図)
【特許文献3】特開2002−1972号公報(第4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の静電アクチュエータは、封止材として塗布される接着剤がFPC実装部に掛からないように、接着剤塗布のための所定のスペースを確保する必要があった。また、振動室(ギャップ)の気密封止をより確実に行うために、振動室までの接着剤の浸入量を長くする必要があった。このような理由によって、複数の静電アクチュエータを作製するためのウエハのチップサイズの小型化の妨げとなるという課題があった。また、接着剤を振動室の所定の位置まで塗布するという製造工程を経なければならず、製造に要する手間がかかっていた。
【0009】
特許文献2に記載の液滴吐出ヘッドは、犠牲層を用いてギャップ形成し、その後、インク室底面に形成する耐腐食膜によって気密封止を行うようにしている。このような方法によって、ギャップの形成、及び、ギャップの気密封止を行なうと、製造工程が非常に複雑となり、製造に要する手間が多くかかってしまうという課題があった。また、ギャップを気密封止する耐腐食膜の材料も多種に渡り、材料によってはコストが多くかかってしまうという課題があった。
【0010】
特許文献3に記載のインクジェットヘッドは、CVD法(Chemical Vapor Deposition)を用いて、酸化膜を堆積させ、ギャップの気密封止を行なうようにしている。したがって、特許文献1と同様に、酸化膜を堆積させるための所定スペースを確保する必要があった。そのために、インクジェットヘッドを作製するためのウエハのチップサイズの小型化の妨げとなるという課題があった。また、CVD法による酸化膜の堆積は、製造に要するコスト及び時間が多くかかるため、生産性が低くなるという課題があった。
【0011】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、製造工程を複雑にすることなく、ギャップを確実に気密封止できる静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置、並びに静電アクチュエータの製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る静電アクチュエータは、固定電極を形成した第1の基板と、固定電極にギャップを隔てて対向し、固定電極との間で発生させた静電気力により動作する可動電極を有する第2の基板とを備え、第1の基板に、固定電極の一部を第2の基板と接合させるための凸部を形成し、第2の基板と凸部に形成された固定電極の一部とでギャップを封止したことを特徴とする。
【0013】
したがって、簡単な構成でギャップを確実に気密封止することができる。また、ギャップの封止に封止材を用いなくて済むとともに、ギャップ内の気相処理をしなくて済み、静電アクチュエータの製造に要する手間や時間を大幅に削減することができる。封止材の入り込み部や気相処理用の穴や溝を形成しなくて済むので、静電アクチュエータの小型化を実現できる。さらに、ウエハ単位でギャップの気密封止をすることができ、静電アクチュエータ単位でギャップの気密封止をする手間が省ける。したがって、静電アクチュエータの量産性を向上させることができる。
【0014】
本発明に係る静電アクチュエータは、第1の基板には凹部が形成され、凹部の一部に凸部が形成されており、固定電極は、凹部内に配置され、その一部が凸部に乗り上げるように形成されていることを特徴とする。したがって、固定電極の一部を凸部に乗り上げるようにすることで封止部を形成することができる。こうすることで、ギャップを封止するための封止部を別途作製しなくて済み、複雑な工程を要することなく静電アクチュエータを作製することが可能となる。
【0015】
本発明に係る静電アクチュエータは、第2の基板の表面に絶縁膜を成膜し、絶縁膜を介して、第2の基板と凸部に形成された固定電極の一部とでギャップを封止したことを特徴とする。すなわち、凸部の高さをエッチングにより調整し、封止部を形成できるので、絶縁膜の膜厚を調整する手間が省け、複雑な工程を要することなく、より簡易にギャップの封止が確実に実現できる。
【0016】
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、底壁が振動板を形成し、液滴を溜めて吐出させる圧力室が形成されたキャビティ基板と、振動板にギャップを隔てて対向し、振動板を駆動する複数の個別電極、個別電極へ駆動信号を供給するための発振回路に接続される複数の端子部及び個別電極と端子部とを接続する複数のリード部が形成された電極基板と、圧力室から移送される液滴を吐出するノズル孔が形成されたノズル基板とを備えた液滴吐出ヘッドであって、電極基板に、個別電極の一部をキャビティ基板と接合させるための凸部を形成し、キャビティ基板と凸部に形成された個別電極の一部とでギャップを封止したことを特徴とする。
【0017】
したがって、簡単な構成でギャップを確実に気密封止することができる。また、ギャップの封止に封止材を用いなくて済むとともに、ギャップ内の気相処理をしなくて済み、液滴吐出ヘッドの製造に要する手間や時間を大幅に削減することができる。封止材の入り込み部や気相処理用の穴や溝を形成しなくて済むので、液滴吐出ヘッドの小型化を実現できる。さらに、ウエハ単位でギャップの気密封止をすることができ、液滴吐出ヘッド単位でギャップの気密封止をする手間が省ける。したがって、液滴吐出ヘッドの量産性を向上させることができる。
【0018】
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、凸部は、リード部と対応する部分に形成されていることを特徴とする。すなわち、個別電極の一部を構成するリード部が凸部に乗り上げることで、このリード部とキャビティ基板とを接合させるだけでギャップを封止することができるので、ギャップを封止するための封止部を別途作製しなくて済み、複雑な工程を要することなく液滴吐出ヘッドを作製することが可能となる。
【0019】
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、キャビティ基板の表面に絶縁膜を成膜し、絶縁膜を介して、キャビティ基板と凸部に形成されたリード部とでギャップを封止したことを特徴とする。すなわち、凸部の高さをエッチングにより調整し、封止部を形成できるので、絶縁膜の膜厚を調整する手間が省け、複雑な工程を要することなく、より簡易にギャップの封止が確実に実現できる。
【0020】
本発明に係る液滴吐出装置は、上記の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする。したがって、液滴吐出装置は、上述の液滴吐出ヘッドが有している効果と同じ効果を有している。
【0021】
本発明に係る静電アクチュエータの製造方法は、固定電極を形成した第1の基板と、固定電極にギャップを隔てて対向し、固定電極との間で発生させた静電気力により動作する可動電極を有する第2の基板とを備えた静電アクチュエータの製造方法であって、第1の基板に、固定電極を作製するための凹部を形成し、凹部の一部に、固定電極の一部を第2の基板と接合させるための凸部を形成し、第2の基板の表面に絶縁膜を形成し、第1の基板と第2の基板との接合と同時に、絶縁膜を介して、第2の基板と凸部に形成された固定電極の一部とを接合させてギャップを封止することを特徴とする。
【0022】
したがって、簡単な製造工程でギャップを確実に気密封止することができる。また、ギャップの封止に封止材を用いなくて済むとともに、ギャップ内の気相処理をしなくて済み、その分の製造工程を省略することができる。複雑な製造工程を要することなく、ギャップを確実に気密封止できるので、生産性が大きく向上する。さらに、ウエハ単位でギャップの気密封止をすることができ、静電アクチュエータ単位でギャップの気密封止をする手間が省ける。したがって、静電アクチュエータの量産性を向上させることができる。
【0023】
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、底壁が振動板を形成し、液滴を溜めて吐出させる圧力室が形成されたキャビティ基板と、振動板にギャップを隔てて対向し、振動板を駆動する複数の個別電極、個別電極へ駆動信号を供給するための発振回路に接続される複数の端子部及び個別電極と端子部とを接続する複数のリード部が形成された電極基板と、圧力室から移送される液滴を吐出するノズル孔が形成されたノズル基板とを備えた液滴吐出ヘッドの製造方法であって、電極基板に、個別電極、端子部及びリード部を作製するための凹部を形成し、凹部の一部に、リード部をキャビティ基板と接合させるための凸部を形成し、キャビティ基板の表面に絶縁膜を形成し、電極基板とキャビティ基板との陽極接合と同時に、絶縁膜を介して、キャビティ基板と凸部に形成されたリード部とを接合させてギャップを封止することを特徴とする。
【0024】
したがって、簡単な製造工程でギャップを確実に気密封止することができる。また、ギャップの封止に封止材を用いなくて済むとともに、ギャップ内の気相処理をしなくて済み、その分の製造工程を省略することができる。複雑な製造工程を要することなく、ギャップを確実に気密封止できるので、生産性が大きく向上する。さらに、ウエハ単位でギャップの気密封止をすることができ、液滴吐出ヘッド単位でギャップの気密封止をする手間が省ける。したがって、液滴吐出ヘッドの量産性を向上させることができる。
【0025】
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、電極基板とキャビティ基板との陽極接合は、真空チャンバー内において真空加熱処理によって実行されることを特徴とする。したがって、陽極接合と同時に、ギャップ内の水分を除去することができ、ギャップ内の気相処理を行なう製造工程を省略することができ、製造に要する手間や時間を大幅に改善できる。
【0026】
本発明に係る液滴吐出装置の製造方法は、上述の液滴吐出ヘッドの製造方法を含むことを特徴とする。したがって、上述した液滴吐出ヘッドの製造方法による効果と同じ効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る液滴吐出ヘッド100を分解した状態を示す分解斜視図である。図2は、液滴吐出ヘッド100が組み立てられた状態の縦断面図であり、図1におけるA−A断面を示している。図1及び図2に基づいて、液滴吐出ヘッド100の構成及び動作について説明する。なお、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。この液滴吐出ヘッド100は、静電気力により駆動される静電駆動方式の静電アクチュエータの代表として、ノズル基板の表面側に設けられたノズル孔から液滴を吐出するフェイスイジェクトタイプの液滴吐出ヘッドを表している。
【0028】
図1及び図2に示すように、この液滴吐出ヘッド100は、ノズル基板1、第2の基板であるキャビティ基板3及び第1の基板である電極ガラス基板4の3つの基板が順に積層されるように接合された3層構造を特徴としている。このキャビティ基板3の一方の面(上面)にはノズル基板1が接合されており、他方の面(下面)には電極ガラス基板4が接合されている。すなわち、キャビティ基板3を電極ガラス基板4とノズル基板1とが上下から挟む構造となっている。
【0029】
この実施の形態1に係る液滴吐出ヘッド100では、電極ガラス基板4とキャビティ基板3とを陽極接合により接合するものとし、キャビティ基板3とノズル基板1とをエポキシ樹脂等の接着剤を用いて接合するものとして説明する。また、液滴吐出ヘッド100の電極ガラス基板4に形成する固定電極である個別電極17は、図示省略のドライバIC等の電力供給手段によって駆動信号(パルス電圧)が供給されるようになっている。
【0030】
[電極ガラス基板4]
電極ガラス基板4は、たとえば、厚さ1mmのホウ珪酸ガラス等のガラスを主要な材料として形成するとよい。ここでは、電極ガラス基板4がホウ珪酸ガラスで形成されている場合を例に示すが、たとえば電極ガラス基板4を単結晶シリコンで形成してもよい。この電極ガラス基板4の表面には、後述するキャビティ基板3の圧力室(吐出室)7の形状に合わせた凹部(ガラス溝)12が形成されている。この凹部12は、たとえばエッチングにより深さ0.3μm程度で形成するとよい。
【0031】
また、この凹部12の内部(特に底部)には、対向電極となる個別電極17が、一定の間隔を有して後述のキャビティ基板3の各圧力室7(可動電極である振動板8)と対向するように作製されている。そして、この凹部12は、その一部が個別電極17を装着できるように、これらの形状に類似したやや大きめの形状にパターン形成されている。なお、凹部12は、個別電極17を構成するリード部33に対応する部分を残すよう、つまり凸部35が形成されるように電極ガラス基板4に形成されている。個別電極17は、たとえばITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)を0.1μmの厚さでスパッタして作製するとよい。このようにITOで個別電極17を作製すると、透明なので放電したかどうかの確認が行いやすいという利点がある。
【0032】
また、個別電極17は、リード部33及び端子部34が一体となって作製されている。そして、個別電極17の一端(端子部34)が電力供給手段であるドライバICと接続されており、そのドライバICから個別電極17に駆動信号が供給されるようになっている。なお、特に区別する必要がない限り、個別電極17は、リード部33と端子部34とを含んだものとして説明するものとする。なお、ドライバICは、液滴吐出ヘッド100の内部に搭載してもよく、外部に設けられていてもよい。また、液滴吐出ヘッド100には、ドライバICに電力を供給するためのFPC(Flexible Printed Circuit)を搭載してもよい。
【0033】
電極ガラス基板4とキャビティ基板3とを陽極接合して積層体を形成すると、振動板8と個別電極17との間には、振動板8を撓ませる(変位させる)ことができる一定のギャップ(空隙)18が、電極ガラス基板4の凹部12により形成されるようになっている。このギャップ18は、凹部12の深さ、個別電極17及び振動板8の厚さにより決まることになる。このギャップ18は、液滴吐出ヘッド100の吐出特性に大きく影響するため、厳格な精度管理が要求される。つまり、ギャップ18は、各振動板8に対向する位置に細長く所定の深さを有するように形成されている。
【0034】
また、このギャップ18は、内部に湿気や埃等が侵入しないよう気密封止することが要求される。そこで、液滴吐出ヘッド100は、電極ガラス基板4に形成する凹部12を、電極ガラス基板4の一部(リード部33に対応する部分)を残すように形成し、この部分(凸部35)にリード部33を乗り上げるようにしている。そして、電極ガラス基板4とキャビティ基板3とを陽極接合する際に、リード部33とキャビティ基板3とが後述する絶縁膜19を介して接合し、封止部14を形成するようになっている。なお、ギャップ18は、キャビティ基板3となるシリコン基板に凹部を形成したり、スペーサを挟むことによって形成することも可能であるが、このような場合でも電極ガラス基板4に凸部35を残すように凹部12を形成する。
【0035】
この液滴吐出ヘッド100は、複数の個別電極17が長辺及び短辺を有する長方形状に形成されており、この個別電極17が、互いの長辺が平行になるように配置されている。そして、図1では、個別電極17の短辺方向に伸びる1つの電極列を示している。なお、個別電極17の短辺が長辺に対して斜めに形成されており、個別電極17が細長い平行四辺形状になっている場合には、長辺方向に直角方向に伸びる電極列を形成するようにすればよい。
【0036】
なお、電極ガラス基板4には、図示省略の外部のインクタンクから供給される液体を取り入れる流路となるインク供給孔25が設けられている。このインク供給孔25は、電極ガラス基板4を貫通するように形成されている。また、個別電極17をITOで作製した場合を例に示したが、これに限定するものではなく、クロム等の金属等で作製してもよい。さらに、ここで示した凹部12の深さやギャップ18の長辺方向の長さ、個別電極17の厚さは一例であり、ここで示す値に限定するものではない。
【0037】
[キャビティ基板3]
キャビティ基板3は、たとえば厚さ約50μm(マイクロメートル)の(110)面方位のシリコン単結晶基板(以下、単にシリコン基板という)を主要な材料として構成されている。このシリコン基板にドライエッチングまたは異方性ウェットエッチングのいずれかあるいは双方を行い、底壁が可撓性を有する振動板8となる圧力室7が複数形成されている。この圧力室7は、個別電極17の電極列に対応して形成されており、インク等の液滴が保持されて吐出圧が加えられるようになっている。また、圧力室7は、紙面手前側から奥側にかけて平行に並んで形成されているものとする。
【0038】
また、キャビティ基板3には、各圧力室7にインク等の液滴を供給するための共通インク室であるリザーバ23が形成されている。このリザーバ23の底面には、リザーバ23の底面を貫通するインク供給孔25が形成されている。さらに、キャビティ基板3とノズル基板1とを接合すると、リザーバ23から各圧力室7に液滴を移送するために、リザーバ23と各圧力室7とを連通させるオリフィス24(図2参照)が、キャビティ基板3とノズル基板1との間に形成されるようになっている。
【0039】
なお、キャビティ基板3の下面(電極ガラス基板4と対向する面)には、振動板8と個別電極17との間を電気的に絶縁するためのTEOS膜(ここでは、Tetraethyl orthosilicate Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン(珪酸エチル)を用いてできるSiO2膜をいう)である絶縁膜19をプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition:TEOS−pCVDともいう)法を用いて、0.1μm程成膜している。これは、振動板8の駆動時における絶縁破壊及びショートを防止するためと、インク等の液滴によるキャビティ基板3のエッチングを防止するためのものである。また、絶縁膜19は、電極ガラス基板4の凸部35に形成される個別電極17(特に、リード部33)と接触するようになっている。
【0040】
ここでは、絶縁膜19がTEOS膜である場合を例に説明するが、これに限定するものではなく、絶縁性能が向上する物質であればよい。たとえば、Al23(酸化アルミニウム(アルミナ))を用いてもよい。また、キャビティ基板3の上面にも、図示省略の液体保護膜となるSiO2膜(TEOS膜を含む)を、プラズマCVD法又はスパッタリング法により成膜するとよい。このような液体保護膜を成膜することによって、インク滴で流路が腐食されるのを防止できるからである。この液体保護膜の応力と絶縁膜19の応力とを相殺させ、振動板8の反りを小さくできるという効果もある。
【0041】
なお、振動板8は、高濃度のボロンドープ層で形成するようにしてもよい。水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液による単結晶シリコンのエッチングにおけるエッチングレートは、ドーパントがボロンの場合、約5×1019atoms/cm3以上の高濃度の領域において、非常に小さくなる。このため、振動板8の部分を高濃度のボロンドープ層とし、アルカリ溶液による異方性エッチングによって圧力室7を形成する際に、ボロンドープ層が露出してエッチングレートが極端に小さくなる、いわゆるエッチングストップ技術を用いることにより、振動板8を所望の厚さに形成することができる。
【0042】
また、キャビティ基板3にも、インク供給孔25が設けられている(電極ガラス基板4に設けられたインク供給孔25と連通するようになっている)。さらに、キャビティ基板3には、外部電極端子としての共通電極端子16が形成されている。この共通電極端子16は、図示省略の外部の発振回路等から振動板8に個別電極17と反対の極性の電荷を供給する際の端子となるものである。
【0043】
[ノズル基板1]
ノズル基板1は、たとえば厚さ約100μmのシリコン基板を主要な材料として構成されている。そして、キャビティ基板3の上面(電極ガラス基板4と接合する面の反対面)と接合している。ノズル基板1の上面には、圧力室7と連通するノズル孔5が複数形成されている。各ノズル孔5は、圧力室7から移送された液滴を外部に吐出するようになっている。なお、ノズル孔5を複数段(たとえば、2段)で形成すると、液滴を吐出する際の直進性の向上が期待できる。
【0044】
ここでは、ノズル基板1を上面とし、電極ガラス基板4を下面として説明しているが、実際に用いられる場合には、ノズル基板1の方が電極ガラス基板4よりも下面となることが多い。なお、実施の形態1では、キャビティ基板3にオリフィス24を形成した場合を例に示したが、ノズル基板1にオリフィス24を形成するようにしてもよい。また、ノズル基板1には、振動板8によりリザーバ23側の液体に加わる圧力を緩衝するためのダイヤフラム13を設けるとよい。
【0045】
なお、電極ガラス基板4、キャビティ基板3及びノズル基板1を接合するときに、シリコンからなる基板とホウ珪酸ガラスからなる基板と接合する場合(キャビティ基板3と電極ガラス基板4とを接合する場合)は陽極接合により、シリコンからなる基板同士を接合する場合(キャビティ基板3とノズル基板1とを接合する場合)は直接接合によって接合することができる。また、シリコンからなる基板同士は、接着剤を用いて接合することもできる。
【0046】
ここで、液滴吐出ヘッド100の動作について説明する。キャビティ基板3のリザーバ23には、インク供給孔25を介して外部からインク等の液滴が供給されている。また、キャビティ基板3の圧力室7には、オリフィス24を介してリザーバ23から液滴が供給されている。そして、図示省略のドライバIC等の電力供給手段によって選択された個別電極17には0V〜40V程度のパルス電圧が印加され、その個別電極17を正に帯電させる。
【0047】
このとき、共通電極端子16を介してキャビティ基板3には負の極性を有する電荷が供給され、正に帯電された個別電極17に対応する振動板8を相対的に負に帯電させる。そのため、選択された個別電極17と振動板8との間では静電気力が発生することになる。そうすると、振動板8は、静電気力によって個別電極17側に引き寄せられて撓むことになる。これによって圧力室7の容積が増大する。つまり、振動板8は、個別電極17に引き寄せられて当接することになる。これによって圧力室7の容積が増大する。
【0048】
その後、個別電極17への電荷の供給を止めると、振動板8と個別電極17との間の静電気力がなくなり、振動板8はその弾性力により元の状態に復元する。このとき、圧力室7の容積が急激に減少するため、圧力室7内部の圧力が急激に上昇する。これにより、圧力室7内のインクの一部がインク滴としてノズル孔5より吐出されることになる。このインク滴が、たとえば記録紙に着弾することによって印刷等が行われるようになっている。その後、液滴がリザーバ23からオリフィス24を通じて圧力室7内に補給され、初期状態に戻る。このように振動板8を駆動させることで、静電アクチュエータとして機能させているのである。このような方法は、引き打ちと呼ばれるものであるが、バネ等を用いて液滴を吐出する押し打ちと呼ばれる方法もある。
【0049】
図3は、封止部14の詳細を説明するための説明図である。図3に基づいて、この実施の形態1の特徴事項であるキャビティ基板3及び個別電極17を接合させることで形成した封止部14の詳細について説明する。図3(a)が、図2におけるB−B断面を、図3(b)が図2におけるC−C断面をそれぞれ示している。上述したように、液滴吐出ヘッド100では、キャビティ基板3(正確には、キャビティ基板3の下面に形成した絶縁膜19)と、電極ガラス基板4の凸部35に乗り上げるように形成した個別電極17とを接合することによって、封止部14を形成している。
【0050】
図3(a)に示すように、封止部14が形成されている部分における断面構成は、電極ガラス基板4、個別電極17(リード部33)、絶縁膜19、キャビティ基板3及びノズル基板1が順に積層され、構成されている。したがって、ギャップ18を確実に気密封止することができる。図3(b)に示す封止部14が形成されていない部分における断面構成と比較すれば、ギャップ18が確実に封止されていることが容易に理解できる。また、封止部14は、キャビティ基板3と、電極ガラス基板4とを陽極接合させた際に、ギャップ18の形成と同時に形成することができる。したがって、ギャップ18内の気相処理が不要であるとともに、封止材等によって封止部を形成することもないので、製造工程の簡素化が実現できる。
【0051】
このように、キャビティ基板3と電極ガラス基板4との陽極接合と同時に封止部14を形成できるので、ウエハ単位でギャップ18の気密封止をすることでき、液滴吐出ヘッド100単位でギャップ18の気密封止をする手間が省ける。したがって、液滴吐出ヘッド100の量産性を向上させることができる。また、個別電極17の一部を封止部14とするので、封止部14を形成するための所定のスペースや封止材の入り込み部等を設ける必要がない。したがって、液滴吐出ヘッド100の小型化を実現することが可能になる。なお、絶縁膜19のみで封止部14を形成することも可能であるが、凸部35を形成して封止部14を形成する方が製造に要する手間及び時間をより低減できるのである。
【0052】
次に、液滴吐出ヘッド100の製造工程について説明する。図4は、この実施の形態1の特徴部分である電極ガラス基板4の製造工程の一例を示す縦断面図である。図4に基づいて、リード部33に対応する部分を残すように凹部12を形成する電極ガラス基板4の製造工程について説明する。なお、実際には、シリコンウエハから複数個分の液滴吐出ヘッドの部材を同時形成するのが一般的であるが、図4ではその一部分だけを簡略化して示している。また、ここでは、電極ガラス基板4の製造工程の一例を示すが、これに限定するものではない。
【0053】
まず、所定の厚さ(たとえば、1mmの厚さ)に加工された硼珪酸系のガラス基板4’を用意する(図4(a))。次に、ガラス基板4’の上面(キャビティ基板3との接合面)に、たとえばクロム(Cr)からなるエッチングマスク80をスパッタ装置により成膜する。それから、エッチングマスク80の表面に図示省略のレジストを塗布し、ガラス溝である凹部12を形成するためのレジストパターニングをフォトリソグラフィー(ステッパーやマスクアライナー等)によって行なう。このとき、個別電極17を構成するリード部33に対応する部分に凸部35を形成するようにエッチングマスク80のパターニングを実行する。そして、エッチングマスク80をエッチングし、パターニングする(図4(b))。
【0054】
次に、ガラス基板4’をたとえばフッ化アンモニウム水溶液に浸し、エッチングして所定の深さの凹部12を形成する(図4(c))。そして、凸部35に対応する部分におけるレジストを有機剥離液等で剥離後、ガラス基板4’をクロムエッチング液に浸しエッチングマスク80を除去する(図4(d))。それから、凸部35を所定の高さとするために、ガラス基板4’を更にエッチングする(図4(e))。こうして、凹部12の深度を深めるとともに、凸部35を所望の高さにする。この凸部35の高さは、キャビティ基板3の下面に成膜する絶縁膜19の厚さに応じて調整するとよい。
【0055】
凹部12の形成後、ガラス基板4’に残っているレジストを全部剥離する。それから、凹部12が形成されたガラス基板4’のパターニング面全面にたとえばITO膜81をスパッタ装置により0.1μm程成膜する(図4(f))。そして、フォトリソグラフィーによって図示省略のレジストをパターニングしてエッチングすることにより、リード部33及び端子部34も含めた個別電極17の部分に対応するITOパターンを形成する(図4(g))。
【0056】
このITO膜81は、凹部12内に成膜されるとともに、リード部33に対応した部分に形成されている凸部35に乗り上げるように成膜されるようになっている。すなわち、この凸部35に乗り上げた部分が絶縁膜19と接合することで、封止部14を形成するようになっているのである。なお、ここでは、個別電極17の材料がITOである場合を例に説明したが、これに限定するものではない。たとえば、クロム等の金属材料等の他の材料で個別電極17を形成してもよい。但し、ITOは、透明なので放電したかどうかの確認が行いやすいという利点がある。以上のように、ガラス基板4’を加工して電極ガラス基板4が作製される。
【0057】
その後、この電極ガラス基板4に、絶縁膜19を成膜したキャビティ基板3を陽極接合する(図4(h))。この陽極接合は、真空チャンバー内で実行するようになっている。すなわち、ギャップ18内の水分をなくすために、キャビティ基板3及び電極ガラス基板4を真空チャンバー内に収容し、真空加熱処理を行ない、陽極接合するのである。このように陽極接合することで、ギャップ18内の気相処理工程を省略することができる。また、ギャップ18内の気相処理を行なうための気相処理用の穴や溝を形成するという工程も省略することができる。なお、真空加熱処理は、たとえば圧力1.0×10-6[Pa]以下、温度300[℃]以上であるような条件で実行することができる。
【0058】
さらに、キャビティ基板3及び電極ガラス基板4を陽極接合させると同時に、凸部35に形成されているITO膜81(リード部33を構成する部分)と、キャビティ基板3の下面に成膜されている絶縁膜19との接合で封止部14を形成することができ、ギャップ18を封止するという工程も省略することが可能となる。したがって、製造工程を大幅に簡素化することができ、生産性が大きく向上する。また、陽極接合によってギャップ18を形成するために、ギャップ18を確実に気密封止することができる。
【0059】
図4(h)では、キャビティ基板3となるシリコン基板にKOHエッチングを施し、圧力室7、振動板8及びリザーバ23を形成してから、電極ガラス基板4に陽極接合している場合を例に示しているが、この製造プロセスに限定するものではない。たとえば、キャビティ基板3と電極ガラス基板4とを陽極接合させた後に、キャビティ基板3にKOHエッチングを施し、圧力室7、振動板8及びリザーバ23を形成するようにしてもよい。なお、端子部34に対応する部分を薄膜化しておき、その後、ドライエッチング(たとえば、RIE(Reactive Ion Etching)等)により薄膜の除去を行い、対応する部分を貫通させた状態にすればよい。
【0060】
それから、キャビティ基板3にノズル基板1をエポキシ樹脂等の接着剤を用いて接合することにより液滴吐出ヘッド100が作製される。なお、ここでは、電極ガラス基板4をガラス基板4’を用いて作製した場合を例に説明したが、これに限定するものではない。たとえば、シリコン基板を用いて、電極基板を作製するようにしてもよい。また、ウエハ単位でギャップ18を封止することができるので、量産性が向上する。さらに、個別電極17の一部を封止部14とするので、封止部14を形成するための所定のスペースや封止材の入り込み部等を設ける必要がない。したがって、液滴吐出ヘッド100の小型化を実現することが可能になる。
【0061】
実施の形態2.
図5は、実施の形態1の液滴吐出ヘッド100を搭載した液滴吐出装置150の一例を示した斜視図である。図5に示す液滴吐出装置150は、一般的なインクジェットプリンタである。なお、この液滴吐出装置150は、周知の製造方法によって製造することができる。実施の形態1で得られた液滴吐出ヘッド100は、電極ガラス基板4に凸部35を設け、その部分に成膜されるITO膜81と、キャビティ基板3の下面に成膜される絶縁膜19とによって封止部14を形成することに特徴を有するものである。
【0062】
なお、液滴吐出ヘッド100は、図5に示す液滴吐出装置150の他に、液滴を種々変更することで、液晶ディスプレイのカラーフィルタの製造、有機EL表示装置の発光部分の形成、生体液体の吐出等にも適用することができる。また、液滴吐出ヘッド100は、圧電駆動方式の液滴吐出装置や、バブルジェット(登録商標)方式の液滴吐出装置にも使用できる。たとえば、液滴吐出ヘッド100をディスペンサとし、生体分子のマイクロアレイとなる基板に吐出する用途に用いる場合では、DNA(Deoxyribo Nucleic Acids:デオキシリボ核酸)、他の核酸(例えば、Ribo Nucleic Acid:リボ核酸、Peptide Nucleic Acids:ペプチド核酸等)タンパク質等のプローブを含む液体を吐出させるようにしてもよい。
【0063】
液滴吐出ヘッド100に搭載されている静電アクチュエータは、たとえば光通信や光演算、光記憶装置、光プリンタ、映像表示装置等に用いられている光スイッチ、ミラーデバイス、レーザプリンタのレーザ操作ミラーの駆動部、その他の微細加工の素子(デバイス)、あるいは装置等にも適用することも可能である。いずれに適用される場合であっても、ギャップ18を確実に気密封止することができ、生産性及び量産性の向上を図ることができるとともに、各デバイスの小型化を実現できる。
【0064】
なお、本発明の実施の形態に係る静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置、並びに静電アクチュエータの製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法は、上述の実施の形態で説明した内容に限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内において変更することができる。また、実施の形態1に係る液滴吐出ヘッド100が電極ガラス基板4、キャビティ基板3及びノズル基板1からなる3層構造である場合を例に説明したが、電極基板、キャビティ基板、リザーバ基板及びノズル基板からなる4層構造であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドを分解した状態を示す分解斜視図である。
【図2】液滴吐出ヘッドが組み立てられた状態の縦断面図である。
【図3】封止部の詳細を説明するための説明図である。
【図4】電極ガラス基板4の製造工程の一例を示す縦断面図である。
【図5】液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置の一例を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
1 ノズル基板、3 キャビティ基板、4 電極ガラス基板、4’ ガラス基板、5 ノズル孔、7 圧力室、8 振動板、12 凹部、13 ダイヤフラム、14 封止部、16 共通電極端子、17 個別電極、18 ギャップ、19 絶縁膜、23 リザーバ、24 オリフィス、25 インク供給孔、32 凹部、33 リード部、34 端子部、35 凸部、80 エッチングマスク、81 ITO膜、100 液滴吐出ヘッド、150 液滴吐出装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定電極を形成した第1の基板と、
前記固定電極にギャップを隔てて対向し、前記固定電極との間で発生させた静電気力により動作する可動電極を有する第2の基板とを備え、
前記第1の基板に、前記固定電極の一部を前記第2の基板と接合させるための凸部を形成し、
前記第2の基板と前記凸部に形成された固定電極の一部とで前記ギャップを封止した
ことを特徴とする静電アクチュエータ。
【請求項2】
前記第1の基板には凹部が形成され、前記凹部の一部に前記凸部が形成されており、
前記固定電極は、
前記凹部内に配置され、その一部が前記凸部に乗り上げるように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の静電アクチュエータ。
【請求項3】
前記第2の基板の表面に絶縁膜を成膜し、
前記絶縁膜を介して、前記第2の基板と前記凸部に形成された固定電極の一部とで前記ギャップを封止した
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の静電アクチュエータ。
【請求項4】
底壁が振動板を形成し、液滴を溜めて吐出させる圧力室が形成されたキャビティ基板と、
前記振動板にギャップを隔てて対向し、前記振動板を駆動する複数の個別電極、前記個別電極へ駆動信号を供給するための発振回路に接続される複数の端子部及び前記個別電極と前記端子部とを接続する複数のリード部が形成された電極基板と、
前記圧力室から移送される液滴を吐出するノズル孔が形成されたノズル基板とを備えた液滴吐出ヘッドであって、
前記電極基板に、前記個別電極の一部を前記キャビティ基板と接合させるための凸部を形成し、
前記キャビティ基板と前記凸部に形成された前記個別電極の一部とで前記ギャップを封止した
ことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
前記凸部は、
前記リード部と対応する部分に形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項6】
前記キャビティ基板の表面に絶縁膜を成膜し、
前記絶縁膜を介して、前記キャビティ基板と前記凸部に形成された前記リード部とで前記ギャップを封止した
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項7】
前記請求項4〜6のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを備えた
ことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
固定電極を形成した第1の基板と、
前記固定電極にギャップを隔てて対向し、前記固定電極との間で発生させた静電気力により動作する可動電極を有する第2の基板とを備えた静電アクチュエータの製造方法であって、
前記第1の基板に、前記固定電極を作製するための凹部を形成し、
前記凹部の一部に、前記固定電極の一部を前記第2の基板と接合させるための凸部を形成し、
前記第2の基板の表面に絶縁膜を形成し、
前記第1の基板と前記第2の基板との接合と同時に、前記絶縁膜を介して、前記第2の基板と前記凸部に形成された固定電極の一部とを接合させて前記ギャップを封止する
ことを特徴とする静電アクチュエータの製造方法。
【請求項9】
底壁が振動板を形成し、液滴を溜めて吐出させる圧力室が形成されたキャビティ基板と、
前記振動板にギャップを隔てて対向し、前記振動板を駆動する複数の個別電極、前記個別電極へ駆動信号を供給するための発振回路に接続される複数の端子部及び前記個別電極と前記端子部とを接続する複数のリード部が形成された電極基板と、
前記圧力室から移送される液滴を吐出するノズル孔が形成されたノズル基板とを備えた液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
前記電極基板に、前記個別電極、前記端子部及び前記リード部を作製するための凹部を形成し、
前記凹部の一部に、前記リード部を前記キャビティ基板と接合させるための凸部を形成し、
前記キャビティ基板の表面に絶縁膜を形成し、
前記電極基板と前記キャビティ基板との陽極接合と同時に、前記絶縁膜を介して、前記キャビティ基板と前記凸部に形成された前記リード部とを接合させて前記ギャップを封止する
ことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記電極基板と前記キャビティ基板との陽極接合は、
真空チャンバー内において真空加熱処理によって実行される
ことを特徴とする請求項9に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項11】
前記請求項9又は10に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法を含む
ことを特徴とする液滴吐出装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−6617(P2009−6617A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171362(P2007−171362)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】