説明

静電容量スイッチ付き成型品の製造方法

【課題】静電容量タッチセンサーと意匠付きシートをインジェクション成型金型内にセットし、同時成型し、断線等のない意匠の優れた静電容量タッチスイッチを可能にする。または静電容量タッチセンサーをインジェクション成型した成型物にプレヒートした接着剤付き意匠シートを真空成型で同時成型し、不要部分をカットして意匠シート付き静電容量スイッチパネルを成型品として、静電容量タッチセンサーを製造することを可能にする。
【解決手段】意匠シート1と導電インキ層を印刷したセンサーシート2を分け、意匠シート1をキャビティ金型11にセットし、導電インキ層を印刷したセンサーシート2をコア金型12にセットして樹脂10を流し込んで冷却固化する工程と、型開きして静電容量スイッチ付き成型品を取り出す工程とを備えた静電容量スイッチ付き成型品の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明が属する技術分野】
【0001】
本発明は静電容量スイッチ付き成型品の製造方法に関する。
【従来技術】
【0002】
従来、家電製品、音響機器、自動車のカーナビゲーションなどの表示パネルやキーボタンなどに用いられるスイッチの一つに静電容量スイッチがある。これまでの成型品スイッチは単に成型品に接着剤等でセンサースイッチフィルムを貼り付けるもので、試作で行われているものも導電インキ層の上に意匠を印刷した一枚ものシートをインサート成型したものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし単に成型品にセンサーシートを貼り付ける方法では温度とか湿度の厳しい環境で使用する場合、センサーシートが波打ったり、剥がれたりする心配があり、性能的に問題があり、又、意匠シートに直接導電インキを印刷する場合導電インキ層の厚さが下地の凹凸によって一部薄くなったりして、断線の危険がある場合もあり、安全なセンサーシート付き成型品とはならなかった。
【0004】
本発明はインサート成型に使用しても静電容量スイッチ機能得るための静電容量スイッチ付き成型品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記目的を達成するため、以下のような特徴を有する。
【0006】
意匠シート1と導電インキ層を印刷したセンサーシート2を分け、意匠シートをキャビティ金型11にセットし、導電インキ層を印刷したセンサーシートをコア金型12にセットして樹脂10を流し込んで冷却固化する工程と、型開きして静電容量スイッチ付き成型品を取り出す工程とを備えた静電容量スイッチ付き成型品の製造方法を提供するものである。
【0007】
又は、導電性インキ層を形成したセンサーシート2の印刷面に接着剤を塗布し、該接着層6に樹脂が接するようにコア金型12にセットする工程と、型閉じして金型内に成型樹脂10を流し込み、冷却固化する工程と、型開きして静電容量スイッチ付き成型品を取り出す行程と、一方図3に示すように、印刷した意匠シート1に接着剤を塗布し、プレヒートした該意匠シート1と、該センサーシート付き成型品とを真空成型機で同時成型し、不要部分をカットして、意匠シート付き静電スイッチパネル成型品を形成する工程とを備えた製造方法を提供するものである。
【0008】
または、予め樹脂で成型品をインジェクション成型で製造する工程と、、該成型品に接着剤を塗布したセンサーシートを貼り付ける工程と、一方接着剤を塗布した意匠柄シートをプレヒートし、該プレヒートシートとセンサーシート付き成型品とを真空成型で同時に成型する工程と、不要部分をカットして意匠シート付き静電容量スイッチセンサーを形成する工程とを備えた製造方法を提供するものである。
【0009】
意匠シート及びセンサーシートの基材としては耐熱性のあるポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの共重合体)、ポリカーボネート(PC)、ポリサルフォン(PS)、塩化ビニル(PCB)等が使用できる。
【0010】
意匠シートへの柄づけはスクリーン印刷で簡単にできるが、グラビア印刷、オフセット印刷等も利用できる。インキの材質はポリビニル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、アルキッド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料、または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。加飾層4の厚さとしては、1〜30μmが好ましい。
【0011】
また、接着層6を必要に応じて形成してもよい。接着層6は基体シート3の導電性インキ層が形成された側の最表面に形成すればよい。
接着層6はインサート法により意匠シートとセンサーシートと成型樹脂との接着性を上げるための層である。成型樹脂10の材質がポリアクリル系樹脂の場合は、接着層6の材質としてはポリアクリル系樹脂を用いるとよい。また、成型樹脂の材質がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂、ポリアミド系樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを、接着層6の材質として使用すればよい。接着層6の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコーティングや、グラビア印刷、スクリーン印刷法などを用いるとよい。
接着層6の乾燥膜厚は、1〜5μmとするのが一般的である。
【0012】
センサーシートは電極部に透明の導電インキを印刷するが、導電インキとしてPEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸)を含有するインキを使用するのが好ましい。
透明の窓部5にも電極を配置することができるからである。また、PEDOT/PSSを含有するインキは抵抗値を低くできるので導電インキ層によって電極だけでなく、給電線9を形成することもできる。給電線は製品外部で露出するようにしても良い。給電線は銀ペーストなど抵抗値の低いが目に見えるものも使用できる。
導電性インキ層の厚さとしては、1〜50μmとするのが好ましい。厚さが1μmに満たないと給電線の断線の恐れが生じ、50μmを超えると青みがかって透明性が悪くなってしまうからである
【0013】
上記構成である静電容量センサー付き成型品を形成する方法を説明する。
【0014】
成型樹脂10としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等の公知の熱可塑性樹脂がいずれも使用できる。これらの樹脂は単独あるいは2種以上を混合して使用することも可能である。
【0015】
インサート法によって静電容量スイッチ付き成型品を得るにはつぎのようにして行う。(図2参照)まず、意匠シートを柄の施されていない基体シート3の面がキャビティ金型11に接するように、可動型と固定型とからなる樹脂成型用金型にセットし、次いで静電容量スイッチを形成するセンサーシートの導電インキを形成していない基体面をコア金型12に接するようにセンサーシートをセットして、金型を閉じ、樹脂10を流し込み、所定の圧力を加え、その後、冷却固化して型開きして成型品を取り出す。
【0016】
または、図2に示すようにインサート法によって静電容量センサーシートを同様にして導電インキを形成していない基体面3をコア金型12に接するようにセットし、キャビティ金型11により型閉じし、樹脂10を流し込み、所定の圧力を加えた後、冷却固化し、型開きしてタッチセンサー付き成型品をとりだす。一方図3に示すように、接着剤付き意匠シート1をプレヒートし、そこにタッチセンサー付き成型品と合わせて真空成型機で成型し、タッチセンサー付き成型品13を取り出し、不要部分をカットし、意匠シート付き静電容量スイッチパネル成型品14を形成する。
【発明の効果】
【0017】
基体シートに意匠柄を印刷し、その上に導電インキ層を積層させた1枚のセンサーシート面に樹脂を流し込んで一体成型する静電容量スイッチ付き成型品の製造が試みられている。本発明は導電性インキ層を形成したセンサーシートと意匠付き加飾シートをそれぞれ別個の工程で作成してから、樹脂を流し込んで一体成型する静電容量スイッチ付き成型品のため、それぞれのシートの作成段階で不良発生の検査ができる。一枚のセンサーシート面に意匠柄の印刷と導電性インキ層を形成する場合は、重なり合った両層を同時に検査しなければならず、検査が複雑になるのに対し、導電性インキ層を形成したセンサーシートと意匠付き加飾シートをそれぞれ別個の工程で作成する本シートの検査は個別に行えるため、検査が単純に、容易に行える効果がある。さらに一枚のセンサーシート面に意匠柄の印刷と導電性インキ層を形成する場合はいずれか一方に欠陥があれば、シート全体が不良品になるのに対し、意匠柄の印刷と導電性インキ層をそれぞれ別個に作成したシートでは、一方に欠陥があれば片方のみが不良となり他方は良品となり、成型品の不良率の低減効果がり、工業生産におけるコスト面でも有利となる。
また、電極の上に直接凹凸面のキャビティ金型が押し付けられるので細い電極線の場合は断線の恐れもあり、二層にすることにより、センサーシートはコア金型に固定されるので断線がし難いと考えられるし、予め
【実施例】
【0018】
意匠シート1として188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)3にスイッチ模様4をスクリーン印刷で施し、その上にアクリル系の接着剤をスクリーン印刷法で塗布し接着層6を形成する。一方センサーシート2として188μmのPETフィルム3にDEPOT/PSSを含有するインキのデナトロン(ナガセ産業製)をスクリーン印刷して、電極部8を形成し、給電線9は銀ペースト(DW121−H 東洋紡製)をスクリーン印刷して形成して、その上にアクリル系の接着剤をスクリーン印刷して接着層6を形成する。
該意匠シート1を射出成型用のキャビティ金型11に接着層6が樹脂と接するようにセットする。コア金型12には該センサーシート2の接着層6に樹脂が接するようにセットし、型閉じする。220℃に加熱したアクリル樹脂を50℃に加熱した金型内に射出圧力800kg/cmで流し込み、保圧500kg/cmに保ち、冷却固化した後、型開きして成型品を取り出した。
できた成型品は静電容量スイッチとして指で入力し機能することが確認された。
【0019】
センサーシート2として188μmのPETフィルム3にDEPOT/PSSを含有するインキのデミトロン(ナガセ産業製)をスクリーン印刷して電極8および給電線9を形成し、その上にアクリル系の接着剤をスクリーン印刷し、接着層6を形成して、接着層6に樹脂が接するように射出成型用のコア金型12にセットし、型閉じする。230℃に加熱したアクリル樹脂を60℃に加熱した金型内に射出圧力800kg/cmで流し込み、保圧600kg/cmに保ち、冷却固化した後、型開きして成型品を取り出した。一方意匠シート1として188μmのPETフィルム3にPET用インキ(十条ケミカル製)をスクリーン印刷し、スイッチ柄4を形成して、その上にアクリル系の接着剤をスクリーン印刷し、接着層6を形成して、該シート1を120℃に加熱し、真空成型機に該センサー成型品と合わせてセットし、真空成型する。できた不要部分付き成型品13の不要部分をとって出来上がった成型品14は意匠シート付きの静電容量タッチセンサーとして指で入力し、機能することが確認された。
【0020】
図4に示すように、インジェクション成型で作成した樹脂成型品15に接着剤を塗布したセンサーシート2を貼り付け、一方接着剤を塗布した意匠柄シート1を120℃にプレヒートし、該成型品と真空成型で同時に成型し、不用部分をカットして静電容量タッチセンサー付き成型品14を得た。得られたセンサー付き成型品は静電容量スイッチ付き成型品として指で簡単に入力し、機能することが確認された。
【図面の簡単な説明】
1意匠シート
2センサーシート
3基体シート
4加飾層(意匠、柄)
5窓部
6接着層
7導電インキ層
8電極
9給電線
10樹脂
11金型(キャビティ)
12金型(コア)
13静電容量スイッチ付き成型品バリ付き
14静電容量スイッチ付き真空成型品
15樹脂成型品
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性インキ層を形成した静電容量スイッチ付きセンサーシートと意匠フィルムを同じ金型内に設置し、インジェクション成型する成型方法
【請求項2】
請求項1の意匠シートの印刷面に接着剤を塗布し、接着層に樹脂が接するようにキャビティ金型にセットし、請求項1の導電性インキ層を形成したセンサーフィルムの印刷面に接着剤を塗布し、該接着層に樹脂が接するようにコア金型にセットする工程と、型閉じして金型内に成形樹脂を流し込み、冷却固化する工程と、型開きして静電容量タッチスイッチ付き成型品を取り出す工程とを備えた静電容量スイッチ付き成型品の製造方法
【請求項3】
または、請求項1の導電性インキ層を形成したセンサーフィルムの印刷面に接着剤を塗布し、該接着層に樹脂が接するようにコア金型にセットする工程と、型閉じして金型内に成型樹脂を流し込み、冷却固化する工程と、型開きして静電容量スイッチ付き成型品を取り出す工程と、一方印刷した意匠シートに接着剤を塗布し、プレヒートした該意匠シートと、該センサーシート付き成型品とを真空成型で同時成型し、不要部分をカットし、意匠シート付き静電容量スイッチパネル成型品を形成する工程を備えた製造方法
【請求項4】
または、予め樹脂でインジェクション成型した成型品に裏面に接着剤を塗布して、センサーシートを貼り付け、表側に意匠柄シートに接着剤を塗布したものをプレヒートし、該センサーシート付き成型品と同時に真空成型して静電容量スイッチセンサー付き成型品を製造する製造方法

【公開番号】特開2011−3517(P2011−3517A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164218(P2009−164218)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(303062440)株式会社東洋レーベル (2)
【Fターム(参考)】