説明

静電容量センサ付きプッシュスイッチおよびそれを用いた入力装置

【課題】高さ寸法のバラエティーに安価に対応できて押圧作動力のばらつきも回避しやすい静電容量センサ付きプッシュスイッチと、操作面の高さ位置が異なる静電容量センサ付きプッシュスイッチを複数個並設しつつ押圧作動力を同等に設定できて部品の共通化も図りやすい入力装置を提供すること。
【解決手段】プッシュスイッチ1には、操作部材2の天板部2aの背面と保持部材3との間に収納空間2cが設けられ、この収納空間2cに板ばね状の検出電極5が組み込まれている。検出電極5は、天板部2aに弾接する検出部5dと、導電性のコイルばね4に弾接する基部5bと、検出部5dおよび基部5bを連結する高さ調整部5cとを有し、収納空間2cの高さ寸法に応じて検出電極5の撓み量が規定される。操作面2bに人体が触れたことによる静電容量の変化を検出部5dが検出すると、その検出信号が高さ調整部5cおよび基部5bを介してコイルばね4経由で配線基板6へ出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作面に人体(手指)が触れたことを検出できる機能を有する静電容量センサ付きプッシュスイッチと、かかる静電容量センサ付きプッシュスイッチが複数個並設されている入力装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアコンやオーディオあるいはナビゲーション等の車載用制御機器の操作領域には、操作を簡便に行えるプッシュスイッチが配設されることが多い。通常、この種の操作領域には複数個のプッシュスイッチが並設されているので、ユーザは所望のプッシュスイッチの位置を視認してからプッシュ操作する必要がある。しかしながら、運転中のユーザにとって、所望のプッシュスイッチを探してそこに手指を押し当てるためには、前方から目を離して手元を見なければならないので、前方への注意がおろそかになりがちである。
【0003】
そこで従来より、操作面に人体が触れたときの静電容量の変化に基づいて、ユーザの手指が操作面に触れているか否かを検知する静電容量センサ機能を備えたプッシュスイッチが提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかる従来の静電容量センサ付きプッシュスイッチでは、金属板からなる検出電極が操作部材の操作面の背面側に一体化されており、ユーザの手指が操作面に触れると、静電容量が変化したことを示す検出信号が検出電極から配線基板を介して制御手段に供給されるようになっている。また、操作部材はプッシュ操作方向に沿って往復動できるように支持体に支持されており、この操作部材をユーザがプッシュ操作すると、操作部材に押圧駆動された可動接点が固定接点に当接して、両接点が導通したことを示すスイッチオン信号が配線基板を介して制御手段に供給されるようになっている。なお、かかる従来のプッシュスイッチにおいて、検出電極は操作部材と一体的に往復動するので、配線パターン等が設けられた配線基板に導電性のコイルばねの一端を弾接させると共に、このコイルばねの他端を検出電極に弾接させることによって、操作部材が往復動しても検出電極と配線基板との電気的導通が保たれるようにしてある。
【0004】
このように概略構成された静電容量センサ付きプッシュスイッチを車載用制御機器の操作スイッチとして採用すれば、車室内において前方からほとんど目を離さずに目視可能な場所に設置されることの多いディスプレイ装置に、ユーザの手指がどのプッシュスイッチに触れているのかが瞬時にわかるように表示させることができる。その結果、ユーザは手元を見ずに所望のプッシュスイッチを正確に選択してプッシュ操作が行えるようになるため、運転中のユーザが前方への注意を怠ることなく車載用制御機器を操作することが容易となり、安全性や操作性が大幅に向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−73506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数個のプッシュスイッチが操作領域に並設されている入力装置などにおいては、各プッシュスイッチの操作面を配線基板から全て同じ高さ位置に配置させるという設計が困難な場合がある。例えば、車載用制御機器の操作領域ではデザインやスペース上の制約が大きいため、並設される複数のプッシュスイッチの各操作面を配線基板から異なる高さ位置に配置させねばならぬことが多い。こうした場合、並設されるプッシュスイッチが静電容量センサ機能を有するものであると、各プッシュスイッチの操作部材の形状を相違させるだけでは対応できないため、これまでは、検出電極と配線基板との間に介設されるコイルばねの伸縮方向(プッシュ操作方向)の長さを相違させることで対応していた。
【0007】
すなわち、図9に示すように、配線基板30上に2個のプッシュスイッチ20が並設されており、各プッシュスイッチ20の操作部材21が付勢手段25上に搭載されて支持体26によって図示上下方向に往復動可能に支持されていると共に、それぞれの操作面21aの高さ位置を相違させている場合、操作面21aの高さ位置が低い図示左側のプッシュスイッチ20のコイルばね22は、図示右側のプッシュスイッチ20のコイルばね22に比べて、より圧縮された状態で組み込まれている。各プッシュスイッチ20の操作部材21には操作面21aの背面側に検出電極23が固定されており、検出電極23と配線基板30との間隔は一方のプッシュスイッチ20で狭く他方のプッシュスイッチ20で広くなっているが、これら両プッシュスイッチ20は非操作時においてコイルばね22の伸縮方向の長さが相違しているため、各検出電極23と配線基板30とが常に導通された状態に保たれて静電容量センサ機能が保証されている。なお、図9において、符号24は操作部材21の内部空間に固定された保持部材を示しており、この保持部材24の貫通孔24aにコイルばね22が挿通されているため、コイルばね22の伸縮方向をプッシュ操作方向となすことができて導通の信頼性が確保されている。
【0008】
しかしながら、並設される複数のプッシュスイッチ20の操作面21aの高さ位置を相違させるために、長さやばね定数が同じコイルばね22を異なる圧縮状態で組み込んだ場合、ユーザが操作面21aを押圧するプッシュ操作時に、コイルばね22の生起する反力がプッシュスイッチ20毎に相違してしまうため、押圧作動力がプッシュスイッチ20毎にばらついてしまうという問題があった。そこで、押圧作動力のばらつきを回避するために、長さやばね定数の異なる複数種類のコイルばね22を用意することが考えられるが、こうするとプッシュスイッチ20の部品コストが大幅に上昇してしまうため好ましくない。また、操作面21aの高さ位置に拘らず検出電極23と配線基板30との間隔を均等に設定すれば、複数種類のコイルばね22を用意する必要はなくなるが、こうすると操作面21aと検出電極23との間隔がプッシュスイッチ20毎に相違して静電容量の検出精度が大きくばらついてしまうため好ましくない。
【0009】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、高さ寸法のバラエティーに安価に対応できて押圧作動力のばらつきも回避しやすい静電容量センサ付きプッシュスイッチを提供することにある。また、本発明の第2の目的は、並設された複数の静電容量センサ付きプッシュスイッチの各操作面が配線基板から異なる高さ位置に配置されているにも拘らず、これら複数のプッシュスイッチの押圧作動力を同等に設定できて部品の共通化も図りやすい入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の第1の目的を達成するために、本発明は、天板部の前面側に操作面を有する操作部材と、前記天板部の背面側に一体化された検出電極と、この検出電極を臨む貫通孔を有して前記操作部材に固定された保持部材と、前記貫通孔に挿通されて一端が前記検出電極に弾接している導電性のコイルばねと、前記操作部材を往復動可能に支持する支持体と、前記操作部材を復動方向へ弾性付勢する付勢手段と、前記コイルばねの他端が弾接する電極部を設けた配線基板と、プッシュ操作された前記操作部材に駆動されてスイッチオン信号を生成する接点部とを備え、前記操作面に人体が触れたことによる静電容量の変化に基づいて前記検出電極が検出信号を生成する静電容量センサ付きプッシュスイッチにおいて、前記操作部材が前記天板部の背面と前記保持部材との間に収納空間を有しており、この収納空間に、前記コイルばねに比して弾性変形しにくい板ばね状の前記検出電極が組み込まれていると共に、この検出電極が、前記天板部の背面に弾接する検出部と、前記コイルばねの前記一端に弾接する基部と、これら検出部と基部とを連結する高さ調整部とを有し、前記収納空間の高さ寸法に応じて前記検出電極の撓み量が規定されるようにした。
【0011】
このように構成されたプッシュスイッチでは、操作部材の収納空間に板ばね状の検出電極が組み込まれているため、操作面に人体(手指)が触れたことによる静電容量の変化を検出電極の検出部が検出すると、その検出信号が検出電極の高さ調整部および基部を介してコイルばね経由で配線基板へ出力され、これにより静電容量センサとして動作させることができる。また、このプッシュスイッチは、操作面の高さ位置が異なる仕様であっても、操作部材に形成する収納空間の大きさを適宜選択することによって、検出電極の基部と配線基板との間隔を一定に保つことができる。つまり、このプッシュスイッチの検出電極は収納空間に組み込みさえすれば該収納空間の高さ寸法に応じて撓むため、収納空間の大きさが異なっても、検出電極の検出部と基部を操作部材の天板部とコイルばねの一端にそれぞれ確実に弾接させることができ、検出精度のばらつきが起こらない。したがって、長さやばね定数が同じコイルばねを用いて、操作面の高さ位置が異なる種々の仕様に対応させることが可能となり、押圧作動力のばらつきを回避できると共に、検出電極や保持部材の共通化が図れる。それゆえ、かかる静電容量センサ付きプッシュスイッチは、高さ寸法のバラエティーに安価に対応できて安定した操作性が期待できる。
【0012】
上記の構成の静電容量センサ付きプッシュスイッチにおいて、配線基板上に載置されたラバーシートを備え、このラバーシートに設けられた膨出部を前記付勢手段となすと共に、この膨出部の内側に設けられた可動接点を配線基板に設けられた固定接点と接離可能に対向させることによって、これら両接点を前記接点部となせば、コイルばねと協働して操作部材に反力を付与する付勢手段を組み込みやすくなって組立性が向上すると共に、接点部が配線基板や膨出部に一体化されて部品点数を削減できる。
【0013】
また、上記の構成の静電容量センサ付きプッシュスイッチにおいて、検出電極が保持部材に係着される取付片を有すると共に、収納空間内で検出部および基部に対して高さ調整部が斜めに延在するようにしてあると、検出電極の取付片を係着させた保持部材を操作部材の所定位置に取り付けることにより、検出電極の板ばね状部分を収納空間の高さ寸法に応じた適正な量だけ撓ませて検出部を天板部の背面に確実に弾接させることができるため、各プッシュスイッチの組立性および信頼性を容易に高めることができる。
【0014】
上記の第2の目的を達成するために、本発明は、配線基板から操作面までの高さ位置を相違させて並設された複数のプッシュスイッチと、これら各プッシュスイッチから検出信号とスイッチオン信号が供給される制御手段とを備えており、かつ、前記プッシュスイッチが、天板部の前面側に前記操作面を有する操作部材と、前記天板部の背面側に一体化された検出電極と、この検出電極を臨む貫通孔を有して前記操作部材に固定された保持部材と、前記貫通孔に挿通されて一端が前記検出電極に弾接している導電性のコイルばねと、前記操作部材を往復動可能に支持する支持体と、前記操作部材を復動方向へ弾性付勢する付勢手段と、前記コイルばねの他端が弾接する電極部を設けた配線基板と、プッシュ操作された前記操作部材に駆動されて前記スイッチオン信号を生成する接点部とを具備し、前記操作面に人体が触れたことによる静電容量の変化に基づいて前記検出電極が前記検出信号を生成可能である入力装置において、前記プッシュスイッチはいずれも、前記操作部材が前記天板部の背面と前記保持部材との間に収納空間を有しており、この収納空間に、前記コイルばねに比して弾性変形しにくい板ばね状の前記検出電極が組み込まれていると共に、この検出電極が、前記天板部の背面に弾接する検出部と、前記コイルばねの前記一端に弾接する基部と、これら検出部と基部とを連結する高さ調整部とを有しており、前記収納空間の高さ寸法に応じて前記検出電極の撓み量が規定されるようにして、前記基部と前記配線基板との間隔が全ての前記プッシュスイッチで同等になるようにした。
【0015】
このように構成された入力装置の各プッシュスイッチは、操作部材の収納空間に板ばね状の検出電極が組み込まれているため、操作面に人体(手指)が触れたことによる静電容量の変化を検出電極の検出部が検出すると、その検出信号が検出電極の高さ調整部および基部を介してコイルばね経由で配線基板へ出力され、これにより静電容量センサとして動作させることができる。また、各プッシュスイッチは、操作部材に形成する収納空間の大きさを適宜選択することによって、検出電極の基部と配線基板との間隔が全て同等に設定されている。つまり、各プッシュスイッチの検出電極は収納空間に組み込みさえすれば該収納空間の高さ寸法に応じて撓むため、収納空間の大きさが異なっても、検出電極の検出部と基部を操作部材の天板部とコイルばねの一端にそれぞれ確実に弾接させることができ、検出精度のばらつきが起こらない。したがって、操作面の高さ位置が異なる複数のプッシュスイッチに対して、長さやばね定数が同じコイルばねを用いることができ、検出電極や保持部材も共通化できる。それゆえ、この入力装置は、並設された複数の静電容量センサ付きプッシュスイッチの各操作面が配線基板から異なる高さ位置に配置されているにも拘らず、これら複数のプッシュスイッチの押圧作動力を同等に設定できて操作性が良好となり、かつ、部品の共通化が図りやすいため製造コストも低減できる。
【0016】
上記の構成の入力装置において、各プッシュスイッチが、配線基板上に載置されたラバーシートを具備し、このラバーシートに設けられた膨出部を前記付勢手段となすと共に、この膨出部の内側に設けられた可動接点を配線基板に設けられた固定接点と接離可能に対向させることによって、これら両接点を前記接点部となせば、コイルばねと協働して操作部材に反力を付与する各プッシュスイッチの付勢手段を1枚のラバーシートに一括して設けることができ、かつ、各プッシュスイッチの接点部が配線基板や膨出部に一体化されたものとなるため、部品点数を大幅に削減できて組立性が向上する。
【0017】
また、上記の構成の入力装置において、各プッシュスイッチの検出電極が保持部材に係着される取付片を有すると共に、収納空間内で検出部および基部に対して高さ調整部が斜めに延在するようにしてあると、検出電極の取付片を係着させた保持部材を操作部材の所定位置に取り付けることによって、検出電極の板ばね状部分を収納空間の高さ寸法に応じた適正な量だけ撓ませて検出部を天板部の背面に確実に弾接させることができるため、各プッシュスイッチの組立性および信頼性を容易に高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の静電容量センサ付きプッシュスイッチは、操作部材の天板部の背面側に設けられた収納空間に板ばね状の検出電極が組み込まれており、操作面に人体が触れたことによる静電容量の変化を検出電極の検出部が検出すると、その検出信号が検出電極の高さ調整部および基部を介してコイルばね経由で配線基板へ出力され、これにより静電容量センサとして動作させることができる。また、このプッシュスイッチは、操作面の高さ位置が異なる仕様であっても、操作部材に形成する収納空間の大きさを適宜選択することによって、検出電極の基部と配線基板との間隔を一定に保つことができる。つまり、このプッシュスイッチの検出電極は収納空間に組み込みさえすれば該収納空間の高さ寸法に応じて撓むため、収納空間の大きさが異なっても、検出電極の検出部と基部を操作部材の天板部とコイルばねの一端にそれぞれ確実に弾接させることができ、検出精度のばらつきが起こらない。したがって、長さやばね定数が同じコイルばねを用いて、操作面の高さ位置が異なる種々の仕様に対応させることが可能となり、押圧作動力のばらつきを回避できると共に、検出電極や保持部材の共通化が図れる。それゆえ、このプッシュスイッチは、高さ寸法のバラエティーに安価に対応できて安定した操作性が期待できる。
【0019】
本発明の入力装置は、操作面の高さ位置が異なる複数の静電容量センサ付きプッシュスイッチを並設しており、各プッシュスイッチの操作部材には天板部の背面側に収納空間が設けられ、この収納空間に板ばね状の検出電極が組み込まれている。そして、各プッシュスイッチは、操作面に人体が触れたことによる静電容量の変化を検出電極の検出部が検出すると、その検出信号が検出電極の高さ調整部および基部を介してコイルばね経由で配線基板へ出力され、これにより静電容量センサとして動作させることができる。また、各プッシュスイッチは、操作部材に形成する収納空間の大きさを適宜選択することによって、検出電極の基部と配線基板との間隔が同等に設定されている。つまり、各プッシュスイッチの検出電極は収納空間に組み込みさえすれば該収納空間の高さ寸法に応じて撓むため、収納空間の大きさが異なっても検出電極の検出部と基部を操作部材の天板部とコイルばねの一端にそれぞれ確実に弾接させることができ、検出精度のばらつきが起こらない。したがって、操作面の高さ位置が異なる複数のプッシュスイッチに対して、長さやばね定数が同じコイルばねを用いることができ、検出電極や保持部材も共通化できる。それゆえ、この入力装置は、並設された複数の静電容量センサ付きプッシュスイッチの各操作面が配線基板から異なる高さ位置に配置されているにも拘らず、これら複数のプッシュスイッチの押圧作動力を同等に設定できて操作性が良好となり、かつ、部品の共通化が図りやすいため製造コストも低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態例に係る静電容量センサ付きプッシュスイッチが複数個並設されている入力装置を一部省略して示す平面図である。
【図2】図1中の1個のプッシュスイッチを操作部材を外した状態で示す斜視図である。
【図3】図2に示すプッシュスイッチの分解斜視図である。
【図4】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図6】図1のC−C線に沿う断面図である。
【図7】図1のD−D線に沿う断面図である。
【図8】同実施形態例に係る入力装置の制御系統を示すブロック図である。
【図9】従来例に係る静電容量センサ付きプッシュスイッチを説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明の実施の形態を図1〜図8を参照しつつ説明する。これらの図に示すプッシュスイッチ1は、操作面2bに人体(手指)が触れたことを検出できる静電容量センサ機能を有するものである。図1と図5に示すように、本実施形態例に係る入力装置10の操作領域には、配線基板6等を共有する複数個のプッシュスイッチ1が列状に並設されている。これら複数個のプッシュスイッチ1の構成は基本的に同じであるが、デザインやスペース上の制約などにより、各プッシュスイッチ1は操作面2bの高さ位置が僅かずつ相違させてある。また、図8に示すように、各プッシュスイッチ1で生成された信号は、入力装置10の制御手段11に送られて処理されたうえで、この制御手段11から、制御対象となる外部機器12や、制御内容等を表示するディスプレイ装置13に、所定の制御信号が出力されるようになっている。
【0022】
まず、各プッシュスイッチ1の構成について説明する。この静電容量センサ付きのプッシュスイッチ1は、天板部2aの前面側に操作面2bを有する操作部材2と、一対の貫通孔3aを有して操作部材2に固定された保持部材3と、それぞれが貫通孔3aに挿通されている一対の導電性のコイルばね4と、保持部材3に係着されて天板部2aの背面に弾接している検出電極5と、電極部6aや固定接点6bやLED6c等が配設されている配線基板6と、膨出部7aを突設して配線基板6上に載置されたラバーシート7と、配線基板6に一体化されて操作部材2を往復動可能に支持している支持体8とによって主に構成されており、操作部材2はラバーシート7の膨出部7a上に搭載されている。また、配線基板6とラバーシート7と支持体8は、それぞれ複数個のプッシュスイッチ1に亘って連続している。
【0023】
操作部材2は、ユーザが手指で操作面2bを押し込む(プッシュ操作する)と配線基板6側へ移動して膨出部7aやコイルばね4を押し撓め、かかる操作力を取り除くと膨出部7aやコイルばね4の反力で元の高さ位置まで復帰するようになっている。この操作部材2には、天板部2aの背面と保持部材3との間に収納空間2cが形成されており、収納空間2c内に検出電極5の板ばね状部分が組み込まれている。操作部材2の側壁には2箇所に係合突起2dが外向きに突設されており、非操作時に係合突起2dは支持体8のストッパ部8aに当接して抜け止め状態で支持されている。また、操作部材2にはプッシュ操作時にラバーシート7の膨出部7aを押し撓める一対の押圧駆動部2eが設けられている。
【0024】
図2〜図4と図6に示すように、保持部材3の側壁の下部には複数の係止突起3bが外向きに突設されており、これら係止突起3bを操作部材2の係止孔2fにスナップ結合させることによって、保持部材3は操作部材2内の所定位置に固定されている。また、こうして保持部材3を操作部材2に取り付けることによって、保持部材3と天板部2aとの間に収納空間2cが画成されると共に、貫通孔3aが収納空間2cに臨出する。図4〜図6に示すように、保持部材3の貫通孔3aに挿通されたコイルばね4は配線基板6の電極部6a上に搭載されており、このコイルばね4の両端が検出電極5と電極部6aに弾接している。なお、保持部材3の中央部には開口3cが設けられている。
【0025】
図5に示すように、各プッシュスイッチ1の保持部材3は配線基板6から同等の高さ位置に配置されているが、収納空間2cの高さ寸法は各プッシュスイッチ1毎に相違している。具体的には、操作面2bの高さ位置が高いプッシュスイッチ1ほど収納空間2cの高さ寸法が広くなるように設定されている。
【0026】
検出電極5は、導電性金属板を図2と図3に示すような形状にフォーミングしたものである。これらの図に示すように、検出電極5には、開口5aを有する平板状の基部5bと、基部5bの一側の折り返し部から斜め上方へ延びる一対の高さ調整部5cと、高さ調整部5cの先端の折り返し部から斜め上方へ延びる一対の検出部5dと、基部5bの周縁から下方へ延びる複数の取付片5eとが設けられており、高さ調整部5cおよび検出部5dが折り畳むように弾性圧縮可能な板ばね状部分となっている。取付片5eには係止孔5fが形成されており、保持部材3の側壁の上部に外向きに突設されている突起部3dを係止孔5fにスナップ結合させることによって、検出電極5の各取付片5eが保持部材3に係着されている。この保持部材3を操作部材2内の所定位置に取り付けることによって、図4や図6に示すように、検出電極5の板ばね状部分が収納空間2cの高さ寸法に応じた適正な量だけ撓んで、検出部5dが天板部2aの背面に弾接するようになっている。また、こうして保持部材3と検出電極5を操作部材2に組み付けた後、保持部材3の貫通孔3aにコイルばね4を挿入した状態で操作部材2をラバーシート7の膨出部7a上に搭載して、支持体8で操作部材2を往復動可能に支持することによって、コイルばね4の両端が検出電極5の基部5bと電極部6aに弾接するようになっている。ただし、検出電極5の板ばね状部分はコイルばね4に比べるとはるかに弾性変形しにくいため、プッシュ操作時にコイルばね4が圧縮しても検出電極5はほとんど押し撓められない。
【0027】
ラバーシート7の膨出部7aは一対のコイルばね4の間を横切るように延びており、図7に示すように、この膨出部7a内の長手方向両端部にはそれぞれ可動接点9が設けられている。これらの可動接点9は配線基板6に設けられた一対の固定接点6bの真上に位置しており、プッシュ操作時に操作部材2の押圧駆動部2eが膨出部7aを押し撓めると、可動接点9が真下の固定接点6bに当接するようになっている。図2と図3に示すように、ラバーシート7にはコイルばね4の下端部が挿入される丸孔7bが一対形成されている。ラバーシート7を配線基板6上に載置すると、これらの丸孔7bに一対の電極部6aが臨出するため、コイルばね4の下端部は電極部6aと位置ずれを起こすことなくラバーシート7によって支持できる。なお、膨出部7aはLED6cを覆っており、膨出部7aの天井部の肉薄部分(図7参照)を透過したLED6cの光が保持部材3の開口3cや検出電極5の開口5aを通って、天板部2aに表示されている文字や記号を照光できるようになっている。
【0028】
次に、このように構成されたプッシュスイッチ1の動作について説明する。ただし、図1や図5に示す複数個のプッシュスイッチ1の中からユーザが任意のプッシュスイッチ1を選んで操作するものとして説明する。
【0029】
ユーザの手指が1つのプッシュスイッチ1の操作面2bに触れると、当該プッシュスイッチ1の検出電極5の検出部5dが静電容量の変化を検出し、その検出信号が高さ調整部5c、基部5b、コイルばね4および電極部6a等を信号経路として制御手段11に出力される。制御手段11は検出信号に基づく制御信号をディスプレイ装置13に出力するため、このディスプレイ装置13に、ユーザの手指が触れているプッシュスイッチ1の種類や実行可能な操作内容等が表示される。
【0030】
また、ユーザが1つのプッシュスイッチ1の操作面2bをプッシュ操作すると、当該プッシュスイッチ1の操作部材2の押圧駆動部2eがラバーシート7の膨出部7aを押し撓めて座屈させる。その結果、可動接点9が固定接点6bに当接して、両接点9,6bが導通したことを示すスイッチオン信号が制御手段11に出力される。制御手段11はスイッチオン信号に基づく制御信号を制御対象となる外部機器12に出力するため、この外部機器12が制御信号に応じて制御される。
【0031】
このように静電容量センサ付きのプッシュスイッチ1を操作領域に複数個並設し、ユーザの手指がどのプッシュスイッチ1に触れているのかがディスプレイ装置13に表示できるようにしてあれば、各プッシュスイッチ1を車載用制御機器の操作スイッチとして採用した場合に、ユーザは手元を見ずに所望のプッシュスイッチ1を正確に選択してプッシュ操作が行えるようになる。そのため、ユーザが前方への注意を怠ることなく車載用制御機器を操作することが容易となり、安全性や操作性が大幅に向上する。
【0032】
また、本実施形態例に係る入力装置10は、デザインやスペース上の制約などにより、並設された各プッシュスイッチ1の操作面2bの高さ位置が互いに異なる設計になっているが、操作部材2に形成する収納空間2cの高さ寸法を適宜選択することによって、各プッシュスイッチ1の保持部材3が配線基板6から一定の高さに揃えてある。つまり、操作面2bの高さ位置が互いに異なるプッシュスイッチ1どうしは、収納空間2cの大きさは相違するが、検出電極5の基部5bと配線基板6との間隔は同等である。そして、各プッシュスイッチ1の検出電極5は、収納空間2cに組み込みさえすれば該収納空間2cの高さ寸法に応じて撓むため、収納空間2cの大きさが異なっても、検出部5dと基部5bを天板部2aの背面とコイルばね4の一端にそれぞれ確実に弾接させることができ、検出精度が各プッシュスイッチ1毎にばらつく虞はない。したがって、この入力装置10は、操作面2bの高さ位置が異なる複数のプッシュスイッチ1に対して、長さやばね定数が同じコイルばね4を用いることができる。また、検出電極5や保持部材3も各プッシュスイッチ1で共通化できる。それゆえ、これら複数のプッシュスイッチ1の押圧作動力を同等に設定できて操作性が良好となる。また、部品の共通化が図りやすいため、各プッシュスイッチ1を安価に製造することができる。
【0033】
また、本実施形態例に係るプッシュスイッチ1は、操作面2bの高さ位置が異なる仕様であっても、長さやばね定数が同じコイルばね4を用いることができ、検出電極5や保持部材3も共通化できるため、押圧作動力がばらつかず製造コストも低減させやすい。それゆえ、このプッシュスイッチ1は、高さ寸法のバラエティーに安価に対応できて安定した操作性が期待できる。
【0034】
また、本実施形態例においては、配線基板6上に載置されたラバーシート7の膨出部7aが操作部材2を復動方向(プッシュ操作方向と逆方向)へ弾性付勢していると共に、この膨出部7aの内側に設けた可動接点9が配線基板6上の固定接点6bと接離可能に対向させてある。そのため、コイルばね4と協働して操作部材2に反力を付与するプッシュスイッチ1の付勢手段(膨出部7a)が組み込みやすい。しかも、複数のプッシュスイッチ1の膨出部7aを1枚のラバーシート7に一括して設けることができ、かつ、各プッシュスイッチ1の接点部(固定接点6bおよび可動接点9)が配線基板6や膨出部7aに一体化されているため、部品点数を大幅に削減できて組立性が良好となっている。
【0035】
また、本実施形態例においては、検出電極5が保持部材3に係着される取付片5eを有し、収納空間2c内で検出部5dおよび基部5bに対して高さ調整部5cが斜めに延在するようにしてある。したがって、検出電極5の取付片5eを係着させた保持部材3を操作部材2の所定位置に取り付けるだけで、検出電極5の板ばね状部分を収納空間2cの高さ寸法に応じた適正な量だけ撓ませて検出部5dを天板部2aの背面に確実に弾接させることができ、各プッシュスイッチ1の組立性および信頼性が高めやすくなっている。
【符号の説明】
【0036】
1 プッシュスイッチ
2 操作部材
2a 天板部
2b 操作面
2c 収納空間
3 保持部材
3a 貫通孔
4 コイルばね
5 検出電極
5b 基部
5c 高さ調整部
5d 検出部
5e 取付片
6 配線基板
6a 電極部
6b 固定接点
7 ラバーシート
7a 膨出部
8 支持体
8a ストッパ部
9 可動接点
10 入力装置
11 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板部の前面側に操作面を有する操作部材と、前記天板部の背面側に一体化された検出電極と、この検出電極を臨む貫通孔を有して前記操作部材に固定された保持部材と、前記貫通孔に挿通されて一端が前記検出電極に弾接している導電性のコイルばねと、前記操作部材を往復動可能に支持する支持体と、前記操作部材を復動方向へ弾性付勢する付勢手段と、前記コイルばねの他端が弾接する電極部を設けた配線基板と、プッシュ操作された前記操作部材に駆動されてスイッチオン信号を生成する接点部とを備え、前記操作面に人体が触れたことによる静電容量の変化に基づいて前記検出電極が検出信号を生成する静電容量センサ付きプッシュスイッチであって、
前記操作部材が前記天板部の背面と前記保持部材との間に収納空間を有しており、この収納空間に、前記コイルばねに比して弾性変形しにくい板ばね状の前記検出電極が組み込まれていると共に、この検出電極が、前記天板部の背面に弾接する検出部と、前記コイルばねの前記一端に弾接する基部と、これら検出部と基部とを連結する高さ調整部とを有し、前記収納空間の高さ寸法に応じて前記検出電極の撓み量が規定されるようにしたことを特徴とする静電容量センサ付きプッシュスイッチ。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記配線基板上に載置されたラバーシートを備え、このラバーシートに設けられた膨出部を前記付勢手段となすと共に、この膨出部の内側に設けられた可動接点を前記配線基板に設けられた固定接点と接離可能に対向させることによって、これら可動接点と固定接点の組を前記接点部となしたことを特徴とする静電容量センサ付きプッシュスイッチ。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記検出電極が前記保持部材に係着される取付片を有すると共に、前記収納空間内で前記検出部および前記基部に対して前記高さ調整部が斜めに延在するようにしたことを特徴とする静電容量センサ付きプッシュスイッチ。
【請求項4】
配線基板から操作面までの高さ位置を相違させて並設された複数のプッシュスイッチと、これら各プッシュスイッチから検出信号とスイッチオン信号が供給される制御手段とを備えており、かつ、前記プッシュスイッチが、天板部の前面側に前記操作面を有する操作部材と、前記天板部の背面側に一体化された検出電極と、この検出電極を臨む貫通孔を有して前記操作部材に固定された保持部材と、前記貫通孔に挿通されて一端が前記検出電極に弾接している導電性のコイルばねと、前記操作部材を往復動可能に支持する支持体と、前記操作部材を復動方向へ弾性付勢する付勢手段と、前記コイルばねの他端が弾接する電極部を設けた配線基板と、プッシュ操作された前記操作部材に駆動されて前記スイッチオン信号を生成する接点部とを具備し、前記操作面に人体が触れたことによる静電容量の変化に基づいて前記検出電極が前記検出信号を生成可能である入力装置であって、
前記プッシュスイッチはいずれも、前記操作部材が前記天板部の背面と前記保持部材との間に収納空間を有しており、この収納空間に、前記コイルばねに比して弾性変形しにくい板ばね状の前記検出電極が組み込まれていると共に、この検出電極が、前記天板部の背面に弾接する検出部と、前記コイルばねの前記一端に弾接する基部と、これら検出部と基部とを連結する高さ調整部とを有しており、前記収納空間の高さ寸法に応じて前記検出電極の撓み量が規定されるようにして、前記基部と前記配線基板との間隔が全ての前記プッシュスイッチで同等になるようにしたことを特徴とする入力装置。
【請求項5】
請求項4の記載において、前記各プッシュスイッチが、前記配線基板上に載置されたラバーシートを具備し、このラバーシートに設けられた膨出部を前記付勢手段となすと共に、この膨出部の内側に設けられた可動接点を前記配線基板に設けられた固定接点と接離可能に対向させることによって、これら可動接点と固定接点の組を前記接点部となしたことを特徴とする入力装置。
【請求項6】
請求項4または5の記載において、前記各プッシュスイッチの前記検出電極が前記保持部材に係着される取付片を有すると共に、前記収納空間内で前記検出部および前記基部に対して前記高さ調整部が斜めに延在するようにしたことを特徴とする入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−44362(P2011−44362A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192428(P2009−192428)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】