説明

静電容量センサ及び静電容量検出方法

【課題】外部からの妨害電波による誤検知を防止することができるとともに、外部へ放射される高周波ノイズを低減させることができる静電容量センサを提供する。
【解決手段】本静電容量センサ5は、一方の面に人体が近接する検出用電極7と、前記検出用電極と接地19との間の静電容量の変化により前記人体の近接を判定する制御部8と、前記検出用電極の他方の面と対向し且つ間隙を空けて配設された電子回路基板9と、を備え、前記電子回路基板に搭載された電子回路9aの基準電位となる導体17は、コイル18を介して前記接地と接続されており、前記制御部は、さらに前記導体と前記接地との電位差を検出する電位差検出部22を備え、前記人体の近接を判定するための基準を前記電位差により変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の近接検知に適用できる静電容量センサ及び静電容量検出方法に関し、詳しくは、外部からの妨害電波による誤検知を防止することができるとともに、外部へ放射される高周波ノイズを低減させることができる静電容量センサ及び静電容量検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電容量センサとして、人体が近接する検出用電極と接地された電極とを備え、電極間の静電容量の変化により人体の近接を検知するものが知られている。このような静電容量センサでは、温度や湿度、振動等の外部環境の変動がノイズとなって検出精度が低いという問題があった。とくに検出電極の検出面の面積が大きいほど環境変動の影響が大きくなるため、検出用電極の裏側に帯電板を設けて両者の間にコンデンサを形成することにより、検出電極の大きさに関わらず検出精度を高めた静電容量センサが開示されている(特許文献1参照)。
しかし、静電容量センサにおいて誤検知を生じる大きな原因に、外部からの電磁妨害波の影響がある。また、静電容量センサの制御動作によって高周波ノイズが放射され、外部の電子機器の動作に影響を及ぼすという問題がある。
一般に、外来の高周波ノイズの影響を低減するとともに、外部に放出される高周波ノイズを低減するために、当該装置を金属製のケースによって密閉するように収納する方法がある。しかし、装置の全体を覆う金属ケースを採用すると、コスト高となったり、大型で重量が重くなったりする。しかも、静電容量センサの場合、人体が近接する検出用電極を外部に開放させる必要があるため、静電容量センサの全体を金属製ケースに収容する方策を採用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−28309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のとおり、人体の近接を検知するために使用される静電容量センサにおいては、外部からの電磁妨害波による誤検知を防止し、外部へ放射される電磁妨害波を低減する必要がある。とくに、車両に搭載される静電容量センサである場合には、前記の電磁妨害波に対する耐性(EMC、Electromagnetic Compatibility)の向上は、重要な課題となっている。
【0005】
本発明は、前記現状に鑑みてなされたものであり、外部からの妨害電波による誤検知を防止することができるとともに、外部へ放射される高周波ノイズを低減させることができる静電容量センサ及び静電容量検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.一方の面に人体が近接する検出用電極と、前記検出用電極と接地との間の静電容量の変化により前記人体の近接を判定する制御部と、前記検出用電極の他方の面と対向し且つ間隙を空けて配設された電子回路基板と、を備え、前記電子回路基板に搭載された電子回路の基準電位となる導体は、コイルを介して前記接地と接続されており、前記制御部は、さらに前記導体と前記接地との電位差を検出する電位差検出部を備え、前記人体の近接を判定するための基準を前記電位差により変更することを特徴とする静電容量センサ。
2.前記電子回路は、前記検出用電極を照光する発光素子を備え、前記発光素子の一方の端子は前記制御部に備えられた駆動部に接続されており、他方の端子は前記導体に接続されている前記1.記載の静電容量センサ。
3.前記検出用電極は複数設けられており、前記発光素子は複数の該検出用電極に対応して複数設けられている前記2.記載の静電容量センサ。
4.前記電位差が所定の範囲内であるときは前記人体の近接を判定する前記1.乃至3.のいずれかに記載の静電容量センサ。
5.前記1.乃至3.のいずれかに記載の静電容量センサを用いる静電容量検出方法であって、前記静電容量の変化を検出する静電容量検出工程と、前記電位差を検出する電位差検出工程と、前記静電容量検出工程によって検出された静電容量の変化により前記人体の近接を判定する判定工程と、を備え、前記判定工程は、前記電位差検出工程によって検出された電位差により前記判定の基準を変更することを特徴とする静電容量検出方法。
6.前記判定工程は、前記電位差が所定の範囲内であるときは前記人体の近接を判定する前記5.記載の静電容量検出方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の静電容量センサによれば、検出用電極と対向し且つ間隙を空けて配設された電子回路基板に搭載された電子回路の基準電位となる導体は、コイルを介して接地と接続されており、制御部は該導体と接地との電位差を検出する電位差検出部を備えており、前記人体の近接を判定するための基準を前記電位差により変更するため、外部からの妨害電波によって生じる電位差のレベルによって、人体の近接又は非近接を誤って判定することを防止することができる。また、検出用電極の他方の面と対向し且つ間隙を空けて配設された電子回路基板を備えるため、この電子回路の基準電位となる導体によって、外部へ放射される高周波ノイズを減らし、外部から受ける妨害電波の影響を低減させることができる。さらに、制御部の全体を覆う導電性のケースを備えるものに比べて、静電容量センサの小型化及び低コスト化を図ることができる。
また、前記電子回路が、前記検出用電極を照光する発光素子を備え、前記発光素子の一方の端子は前記制御部に備えられた駆動部に接続されており、その他方の端子は前記導体に接続されていれば、人体の近接の判定又はその判定による動作を使用者に知らせるために、発光素子で検出用電極部を照光することができる。また、発光素子が発生する熱を、電子回路基板上の前記導体を介して放熱させることができる。
さらに、前記検出用電極が複数設けられており、前記発光素子が複数の該検出用電極に対応して複数設けられていれば、多チャンネルの静電容量センサとすることができる。
また、前記電位差が所定の範囲内であるときは人体の近接を判定し、外部からの妨害電波が強いときには人体の近接又は非近接を判定しないようにすることができるため、誤判定を防止することができる。
【0008】
本発明の静電容量検出方法によれば、検出用電極と接地との間の静電容量の変化が検出されると共に、電子回路基板の導体と接地との電位差が検出され、その検出された電位差によって、静電容量の変化による人体の近接を判定するための基準が変更されるため、外部からの妨害電波によって生じる電位差のレベルによって、人体の近接又は非近接を誤って判定することを防止することができる。
また、前記電位差が所定の範囲内であるときは人体の近接を判定し、外部からの妨害電波が強いときには人体の近接又は非近接を判定しないようにすることができるため、誤判定を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例に係る静電容量センサを備える加飾パネルを説明するためのドアトリムの斜視図である。
【図2】前記加飾パネルの一部を破断した要部拡大平面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】前記静電容量センサの電気的構成を示すブロック図である。
【図5】実施例に係る電子回路基板の導体から制御部への入力形態及び電位差検出部の構成例を説明するための電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
1.静電容量センサ
本静電容量センサの概念的な構成を、図4に示す。
本静電容量センサ5は、検出用電極7、制御部8及び電子回路基板9を備え、電子回路基板9に搭載された電子回路9aの基準電位となる導体17は、コイル(インダクタ)18を介して接地19に接続されている。
【0012】
前記検出用電極7は、一方の面に人体が近接するように構成される限り、その構造、形状、大きさ、材質、個数等は特に問わない。検出用電極7への人体の「近接」とは、検出用電極の表面(一方の面)を覆う絶縁物を介して人体が接触する形態の他に、検出用電極の表面に直接人体が接触する形態も含むものとする。
また、大地への接続(接地)は、車両においては車体への電気的な接続とすることができる。
【0013】
前記制御部8は、前記検出用電極7と前記接地19との間の静電容量の変化を検出する静電容量検出部21を備える。静電容量検出部21の構成はとくに限定されず、例えば、静電容量の計測回路や、静電容量の変化を周波数変化に変換する回路等を用いて、検出用電極7の静電容量の変化を検出することができる。
制御部8の制御処理は、ハードウェア、ソフトウェアのいずれによって実現されてもよく、好適には、図示しないCPU、メモリ(ROM、RAM等)、入出力回路等を備えるマイクロコントローラ(マイクロコンピュータ)を中心に、入出力インターフェース等周辺回路を備えることにより構成することができる。デジタル信号プロセッサ、プログラム可能な論理回路、ゲートアレーその他の論理回路が用いられて構成されてもよい。
また、制御部8は、各種機器27(例えば、ルームライト、自動開閉式窓、ラジオ、エアコンディショナ等)と電気的に接続することができる。
【0014】
前記電子回路基板9は、検出用電極7の他方の面と対向し且つ間隙を空けて配設されている限り、その構造、形状、大きさ、材質、個数等は特に問わない。この電子回路基板9と検出用電極7との対向面間の間隔は、電子回路基板9上に搭載される部品と検出用電極7とが物理的に衝突せず、当該部品の機能上最適な(例えば、発光素子15を検出用電極部のバックライトとして使用するために最適な)間隔とすることができる。
電子回路基板9には、電子回路9aが搭載される。その電子回路9aの基準電位となる導体17は、本発明によらない場合には、通常は制御部8の接地19と共通にされ、電子回路9aにおける接地電位となる導体である。導体17は、プリント配線板に形成された導体パターンに限らず、別の金属板を備えて構成されてもよい。
前記導体17は、制御部8等と外部環境との相互間の電磁妨害波による干渉(EMI)を低減するための遮蔽として作用させることができる。このためには、導体17は、電子回路基板9において広い面積を占めることが好ましい。
【0015】
制御部8は、さらに電位差検出部22を備え、電位差検出部22は前記導体17と電気的に接続される。導体17は、電磁妨害波(高周波ノイズ)を受けるアンテナとして作用させることができ、電位差検出部22は、高周波ノイズによって導体17と接地19との間に介装されたコイル18に生じる電位差を検出するように構成される。その回路構成は特に限定されるものではなく、例えば、図5に示すように、コイルに生じる高周波交流信号を整流し、平滑化した直流信号の電圧を読み取るA/Dコンバータを備えて構成することができる。A/Dコンバータに代え、前記直流信号の電圧を所定の電圧と比較するコンパレータを備えてもよい。
【0016】
本静電容量センサ5では、例えば、前記電子回路9aは、前記検出用電極部のバックライトとして発光素子を備え、前記発光素子の一方の端子が制御部8が備える駆動部23に接続されており、その他方の端子が前記導体17に接続されているように構成することができる。前記発光素子としては、例えば、発光ダイオード、エレクトロルミネセンスライト、白熱電球等のバルブ等を挙げることができる。発光ダイオードを使用する場合、図4に示すように、発光ダイオード15のアノード側の端子が制御部8の駆動部23に、カソード側の端子が導体17にそれぞれ接続される。
【0017】
また、前記検出用電極7が複数設けられる場合には、前記発光素子は複数の該検出用電極に対応して複数設けることができる。
この場合、例えば、複数の検出用電極の一方の面を覆い且つ底方が開放された箱状のカバー部材を更に備え、このカバー部材と電子回路基板との間の空間は隔壁により複数の区画室に区画されており、これら複数の区画室のそれぞれに、少なくとも1つの検出用電極と少なくとも1つの発光素子とが配設されるようにすることができる(例えば、図3参照)。これにより、発光した発光素子に対応した検出用電極部のみを効果的に照光することができる。
【0018】
次に、前記構成の静電容量センサ5の作用について説明する。
前記検出用電極7への人体の近接によって、検出用電極7と前記接地19との間の静電容量が変化する。この静電容量の変化による人体の近接の有無の判断には、公知の技術を用いることができる。例えば、検出用電極7と接地19との間の静電容量を計測してもよいし、静電容量の変化によって生じる発振回路の周波数変化を計測してもよく、その計測値を一定の閾値と比較することによって人体の近接を判定することができる。しかし、外部からの妨害電波(高周波ノイズ)によって前記静電容量の検出に誤差を生じるため、高周波ノイズが強い環境においては検出精度が低下する。
【0019】
本静電容量センサ5においては、前記導体17が高周波ノイズを受けると、導体17と接地19との間のコイル(インダクタ)18に高周波ノイズの強弱に応じた電位差が発生する。この電位差が前記電位差検出部22によって計測される。この計測された電位差のレベルによって、制御部8は、人体の近接を判定するための基準を変更することができる。変更の方法は、ソフトウェアによって種々工夫することができる。例えば、前記電位差のレベルや変動の状態に応じて、静電容量検出のタイミングや、近接の判定のための閾値等パラメータを調整するようにすることができる。また、前記電位差が所定の範囲を超える場合には近接の判定を無効としてもよいし、電位差が所定の範囲内であるときに静電容量を検出して人体の近接を判定するようにしてもよい。その場合、電位差についての所定の範囲は、予め定めておくことができる(例えば、2〜2500mV)。また、電位差の変動の状態等によって、前記所定の範囲を制御部8のソフトウェアにより変更するようにすることができる。
【0020】
制御部8は、以上によって人体の近接状態と判定した場合には、その判定又はその判定による動作を使用者に知らせるために、駆動部23によって発光素子を駆動し、近接された検出用電極部を照光することができる。
また、制御部8は、人体が近接した検出用電極7の機能に対応する機器27を制御するための信号を送ることができる。
【0021】
以上の他、前記導体17を制御部8等と外部環境との遮蔽として用いることにより、制御部8等から外部に放射される高周波ノイズを低減するとともに、外部から受ける高周波ノイズによる制御部8等の動作への影響を低減させることができる。
また、導体17によって、電子回路基板9に搭載され導体17に接続された発光素子等の放熱を効率的にすることができる。
【0022】
2.静電容量検出方法
本発明に係る静電容量検出方法は、前記静電容量センサを用いる静電容量検出方法であって、前記静電容量の変化を検出する静電容量検出工程と、前記電位差を検出する電位差検出工程と、前記静電容量検出工程によって検出された静電容量の変化により前記人体の近接を判定する判定工程と、を備え、前記判定工程は、前記電位差検出工程によって検出された電位差により前記判定の基準を変更することを特徴とする。
【0023】
静電容量検出工程は、前記検出用電極7への人体の近接によって生じる、検出用電極7と前記接地19との間の静電容量の変化を検出する工程である。
電位差検出工程は、前記導体17が高周波ノイズを受けたときにコイル(インダクタ)18に発生する電位差を計測する工程である。コイル18は、導体17と接地19との間に介装されている。
判定工程は、前記静電容量検出工程によって検出された静電容量の変化により、人体の近接の有無の判断を行う工程である。この判断に際しては、前記電位差検出工程によって検出された電位差が参照される。すなわち、計測された電位差のレベルによって、人体の近接を判定するための基準を変更することができる。この変更の方法は、ソフトウェアによって種々工夫することができる。例えば、前記電位差のレベルや変動の状態に応じて、前記静電容量検出工程を実行するタイミングや、近接の判定のための閾値等パラメータを調整するようにすることができる。また、前記電位差が所定の範囲を超える場合には近接の判定をしないようにしてもよいし、電位差が所定の範囲内であるときは前記静電容量検出工程の検出値に基づいて人体の近接を判定するようにしてもよい。その場合、電位差についての所定の範囲は、予め定めておくことができる(例えば、2〜2500mV)。また、電位差の変動の状態等によって、前記所定の範囲をソフトウェアにより変更するようにすることができる。
【0024】
以上に加え、前記判定工程によって人体の近接状態と判定した場合には、その判定又はその判定による動作を使用者に知らせるために、近接された検出用電極部を発光素子により照光等する出力工程を備えることができる。出力工程においては、人体が近接した検出用電極7の機能に対応する機器27に対して制御信号を送ることができる。
【実施例】
【0025】
以下に、本発明に係る静電容量センサが、車両用の加飾パネルに具備される例を説明する。
本実施例に係る加飾パネル1は、図1に示すように、ドアトリム2のアームレスト3の上側に取り付けられている。この加飾パネル1は、図2〜4に示すように、カバー部材4と、このカバー部材4に装着される静電容量センサ5とを備えている。このカバー部材4は、透明樹脂製であり、底方が開放された長尺箱状に形成されている。
【0026】
前記静電容量センサ5は、図2〜4に示すように、複数の検出用電極7、制御部8及び電子回路基板9を備えている。この電子回路基板9は、図2及び3に示すように、長尺の矩形板状に形成されており、前記カバー部材4にその底方開放部を塞ぐように取り付けられている。この電子回路基板9とカバー部材4との間には、両者間の空間を複数の区画室11に区画する複数の隔壁10が配設されている。これら各区画室11のそれぞれには、一方の面に人体が近接する検出用電極7が1つずつ配設されている。これら各検出用電極7の他方の面は電子回路基板9と対向している。また、これら各検出用電極7と電子回路基板9との対向面の間隔は約20mmに設定されている。
なお、カバー部材4の裏面側には、複数の検出用電極7のそれぞれと対応する操作用図柄12が印刷された印刷層13が設けられている。
【0027】
前記電子回路基板9に搭載された電子回路9aは、図4に示すように、複数の検出用電極7のそれぞれを照光する複数の発光ダイオード15を備えている。これら各発光ダイオード15は、そのアノード側の端子が制御部8の駆動部に接続されており、そのカソード側の端子が導体17に接続されている。また、電子回路基板9に搭載された電子回路9aの基準電位となる導体17は、コイル18を介して接地19(例えば、車両ボディ等)と接続されている。なお、これら各発光ダイオード15は、複数の区画室11のそれぞれに1つずつ配設されている(図3参照)。
【0028】
前記制御部8は、図示しないCPU、ROM及びRAMを有しており、ROMに保存された制御プログラムに従ってCPUが各種処理動作を実行し、またRAMはデータの一時保存等に使用される。この制御部8は、図4に示すように、静電容量検出部21、電位差検出部22及び駆動部23を備えている。
【0029】
前記静電容量検出部21は、複数の検出用電極7と電気的に接続されており、接地19と各検出用電極7との間の静電容量の変化を検出する。
前記電位差検出部22は、電子回路9aの導体17と電気的に接続されており、導体17と接地19との電位差を検出する。この電位差検出部22は、例えば、図5に示すように、ダイオード25、コンデンサ30、A/Dコンバータ29を備えて構成することができる。高周波ノイズによってコイル18に発生した高周波信号は、ダイオード25によって整流され、コンデンサ30によって平滑化される。CPUは、この平滑化された直流信号の電圧値をA/Dコンバータ29によって読み取ることができる。人体の近接の判定に用いる電位差のレベル等は、ソフトウェアによって任意に設定・調整することができ、外部回路を簡単にし、部品数を低減することができる。
制御部8は、前述のとおり、電位差検出部22によって検出された電位差をモニタしつつ、静電容量検出部21により検出された静電容量の変化により人体の近接・非近接を判定するようにすることができる。
【0030】
前記駆動部23は、複数の発光ダイオード15と電気的に接続されており、これら複数の発光ダイオード15を駆動する。制御部8は、例えば、いずれかの検出用電極7に人体が近接したと判定した場合等に、その検出用電極部の発光ダイオード15を駆動部23によって発光させることができる。
また、前記制御部8は、各種機器27(例えば、ルームライト、自動開閉式窓、ラジオ、エアコンディショナ等)と接続され、人体の近接の判定に応じて、対応する各種機器27に制御信号を送ることができる。
【0031】
本実施例の加飾パネルは、静電容量センサ5によって妨害電波による人体の近接の誤検知を防止することができる。また、電子回路基板9の導体17によって、加飾パネルから外部へ放射される高周波ノイズを低減させるとともに、外部からの高周波ノイズによる加飾パネルの動作への影響を低減することができる。また、導体17を介して発光ダイオード15の放熱をすることができる。これらにより、制御部等の全体を覆う導電性ケースを備えるものに比べて、装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0032】
尚、本発明においては、前記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、前記実施例では、電子回路基板9の電子回路9aが発光素子(発光ダイオード15)を備える形態を例示したが、これに限定されず、例えば、電子回路基板9の電子回路9aが発光素子を備えない形態であってもよい。
【0033】
また、前記実施例では、複数の検出用電極7を備える静電容量センサ5を例示したが、これに限定されず、例えば、1つの検出用電極のみを備える静電容量センサとしてもよい。
【0034】
また、前記実施例では、各区画室11に検出用電極7を1つずつ配設する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、各区画室11に複数の検出用電極を配設するようにしてもよい。また、前記実施例では、各区画室11に発光素子(発光ダイオード15)を1つずつ配設する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、各区画室11に複数の発光素子を配設するようにしてもよい。
【0035】
また、前記実施例では、電位差検出部22を簡易な整流・平滑回路とA/Dコンバータを用いて構成する形態を例示したが、高周波信号によって生じる電位差の検出回路はこれに限定されない。
【0036】
また、前記実施例では、静電容量センサ5を備える車両用の加飾パネル1を例示したが、これに限定されず、例えば、冷蔵庫、洗濯機、エアコンディショナ等の電気製品に用いられる加飾パネルとしてもよい。
【0037】
また、前記実施例では、静電容量センサ5を備える車両用の加飾パネル1として、車両のドアトリム2に取り付けられる形態を例示したが、これに限定されず、例えば、車両のコンソールボックス、天井、グローブボックス等の車両の内装材に取り付けられる加飾パネルとしてもよい。
【0038】
本発明は前記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
静電容量の変化により人体の近接を検知する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0040】
5;静電容量センサ、7;検出用電極、8;制御部、9;電子回路基板、9a;電子回路、15;発光ダイオード、17;導体、18;コイル、19;接地、22;電位差検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に人体が近接する検出用電極と、
前記検出用電極と接地との間の静電容量の変化により前記人体の近接を判定する制御部と、
前記検出用電極の他方の面と対向し且つ間隙を空けて配設された電子回路基板と、
を備え、
前記電子回路基板に搭載された電子回路の基準電位となる導体は、コイルを介して前記接地と接続されており、
前記制御部は、さらに前記導体と前記接地との電位差を検出する電位差検出部を備え、前記人体の近接を判定するための基準を前記電位差により変更することを特徴とする静電容量センサ。
【請求項2】
前記電子回路は、前記検出用電極を照光する発光素子を備え、
前記発光素子の一方の端子は前記制御部に備えられた駆動部に接続されており、他方の端子は前記導体に接続されている請求項1記載の静電容量センサ。
【請求項3】
前記検出用電極は複数設けられており、前記発光素子は複数の該検出用電極に対応して複数設けられている請求項2記載の静電容量センサ。
【請求項4】
前記電位差が所定の範囲内であるときは前記人体の近接を判定する請求項1乃至3のいずれかに記載の静電容量センサ。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の静電容量センサを用いる静電容量検出方法であって、
前記静電容量の変化を検出する静電容量検出工程と、
前記電位差を検出する電位差検出工程と、
前記静電容量検出工程によって検出された静電容量の変化により前記人体の近接を判定する判定工程と、
を備え、
前記判定工程は、前記電位差検出工程によって検出された電位差により前記判定の基準を変更することを特徴とする静電容量検出方法。
【請求項6】
前記判定工程は、前記電位差が所定の範囲内であるときは前記人体の近接を判定する請求項5記載の静電容量検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−230438(P2010−230438A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77349(P2009−77349)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(306026810)株式会社アネブル (3)
【Fターム(参考)】