説明

静電容量型加速度センサー

【課題】本発明は、可動部を気密封止する封止構造体の割れを抑制し、かつ、加速度の測定精度の低下も回避できる静電容量型加速度センサーを提供することを目的とする。
【解決手段】加速度を検出するコンデンサーを形成する加速度センサー可動部および加速度センサー非可動部と、該加速度センサー可動部と接触せず該加速度センサー可動部を気密封止する封止構造体とを備え、該加速度センサー可動部および該加速度センサー非可動部が該コンデンサーを形成する部分では、該加速度センサー可動部および該加速度センサー非可動部が櫛歯形状であり、該加速度センサー非可動部の該櫛歯の一部は該封止構造体の支柱であり、該支柱は該加速度センサー可動部に囲まれるが該加速度センサー可動部に直接接触せず、かつ、両端が該封止構造体の内壁と接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加速度の変化を検出するための可動部が密閉された空隙中に配置される静電容量型加速度センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量型加速度センサーはコンデンサーの静電容量変化を検出することで加速度を測定する。このコンデンサーは可動部(質量体と称することもある)と非可動部を備える。そして、典型的には梁により支持された可動部の微小な変位が前述のコンデンサーの静電容量に変化を与え、加速度の検出を可能とする。
【0003】
前述の可動部は、その可動範囲を確保するために封止構造体によって形成された空隙内に気密封止されるように配置される。また、可動部が気密封止されることにより可動部は異物や水分から保護される。このような封止構造体は可動部および非可動部を備えるシリコンを上下方向から挟む上部ガラスと下部ガラスである場合が多い。封止構造体は可動部のための空隙を確保し、かつ、可動部が異物、水分などから影響を受けることを抑制することが望ましい。特許文献1−4には上述した観点を考慮した封止構造体あるいはそれを含む加速度センサーについての記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−017284号公報
【特許文献2】特開平06−258341号公報
【特許文献3】特開平07−325106号公報
【特許文献4】特開平04−249726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
封止構造体は小型化、低コスト化、高性能化の観点からトランスファーモールド法による樹脂封止を行いパッケージされることが多い。トランスファーモールドでは射出成形機によりモールド樹脂を高圧の状態で射出する。よって、射出成形時には静電容量型加速度センサーには高圧がかかる。この高圧により封止構造体が空隙を形成する部分で割れる問題があった。封止構造体が割れると、加速度を検出すべき可動部や非可動部を破損させたり、空隙に異物が入り込み加速度センサーの特性変動を起こしたりする問題があった。
【0006】
封止構造体の割れを回避するために射出成形の圧力を低減することも考えられる。しかしこの場合、モールド樹脂の流れが悪くなりモールド樹脂中にボイドが生じパッケージとしての内部保護機能を低下させる信頼性低下の問題があった。また、静電容量型加速度センサーとモールド樹脂との密着性が低下し両者が剥離することによる信頼性低下の問題もあった。
【0007】
封止構造体の割れを回避するために封止構造体が形成する空隙中に支柱を設けることも考えられる。すなわち、当該支柱の両端で空隙を支持するように支柱を配置し封止構造体の割れを抑制することが考えられる。しかしながら、当該支柱が電気的に浮いた状態で配置されると可動部が支柱による電気的作用により変位する問題があった。そのため、加速度センサーとしての測定精度を低下させる問題があった。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、トランスファーモールドによる封止構造体の割れを抑制し、かつ、加速度の測定精度の低下も回避できる静電容量型加速度センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の発明にかかる静電容量型加速度センサーは、加速度を検出するコンデンサーを形成する加速度センサー可動部および加速度センサー非可動部と、該加速度センサー可動部と接触せず該加速度センサー可動部を気密封止する封止構造体とを備え、該加速度センサー可動部および該加速度センサー非可動部が該コンデンサーを形成する部分では、該加速度センサー可動部および該加速度センサー非可動部が櫛歯形状であり、該加速度センサー非可動部の該櫛歯の一部は該封止構造体の支柱であり、該支柱は該加速度センサー可動部に囲まれるが該加速度センサー可動部に直接接触せず、かつ、両端が該封止構造体の内壁と接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により加速度測定の精度を維持して信頼性を高めた静電容量型加速度センサーを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1の半導体部分の平面図である。
【図2】図1の破線部分の断面等を説明する断面図である。
【図3】実施形態1の変形例について説明する平面図である。
【図4】実施形態2の半導体部分の平面図である。
【図5】支柱を備える櫛歯について説明する斜視図である。
【図6】図4の破線部分の断面等を説明する断面図である。
【図7】実施形態2の変形例について説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1
本実施形態は図1−3を参照して説明する。なお、同一材料または同一、対応する構成要素には同一の符号を付して複数回の説明を省略する場合がある。他の実施形態でも同様である。
【0013】
図1は本実施形態の半導体部分13について説明する平面図である。半導体部分13とは加速度検出を行う部分である。半導体部分13は加速度センサー可動部31(以後、可動部31と称する)と加速度センサー非可動部32(以後、非可動部32と称する)を備える。可動部31は櫛歯形状に形成された可動櫛歯部分46、48を備え、非可動部32は櫛歯形状に形成された非可動櫛歯部分42、44を備える。可動櫛歯部分46と非可動櫛歯部分42が近接して配置されコンデンサーを形成する。同様に可動櫛歯部分48と非可動櫛歯部分44が近接して配置されコンデンサーを形成する。
【0014】
可動部31は梁37を介してアンカー35に接続される。梁37で支持された可動部31は加速度に応じて変位し前述のコンデンサーに静電容量変化を与える。可動部31に囲まれ、かつ可動部31に接触しないように支柱34が配置される。支柱34の技術的な意義については後述する。支柱34は、導電体であるつなぎ部分36を介してアンカー35と接続される。
【0015】
図2は、図1の破線部分における断面図に、封止構造体15を付加した静電容量型加速度センサー10を説明する図である。封止構造体15とは上部ガラス12と下部ガラス14により半導体部分13を挟み、可動部31を気密封止するものである。具体的には、上部ガラス12と下部ガラス14は支柱34の両端と接する。また、上部ガラス12と下部ガラス14は接合枠39に接する。また、上部ガラス12と下部ガラス14は非可動部32に接する。なお、アンカーについては上部ガラス12と下部ガラス14の一方若しくは両方と接する。このようにして、図2から把握される空隙33が形成される。
【0016】
可動部31は、上部ガラス12と下部ガラス14からなる封止構造体15と接触しないように空隙33に収容される。これにより可動部31の可動範囲を確保する。また、可動部31は気密封止される。
【0017】
支柱34は、前述の通り可動部31に囲まれ、かつ可動部31に接触しない。また、その両端で上部ガラス12および下部ガラス14に接するものである。つまり、可動部31は封止構造体15と接しないから可動部31の周辺に大きな空隙33が形成されるが、支柱34はその空隙33を支持するものである。本実施形態の静電容量型加速度センサーは上述の構成を備える。
【0018】
本実施形態の構成によれば、静電容量型加速度センサーのパッケージに広く用いられているトランスファーモールドにおける高圧によっても上部ガラス12、下部ガラス14の割れを回避できる。すなわち本実施形態の支柱34は、封止構造体15が形成する空隙33の内壁をその両端で支持しており、封止構造体15の強度増加に貢献している。よってトランスファーモールドによる射出成形の圧力を低減することなく上部ガラス12および下部ガラス14の割れを抑制できる。さらに、空隙33の気密性を維持できるから可動部31を保護でき、異物などの侵入を防止できる。つまり、封止構造体15により半導体部分13を保護できる。また、所望圧力の射出成形により高い信頼性を有するパッケージを製造できる。なお、トランスファーモールドに限らずその他の外力に起因する上部ガラス12および下部ガラス14の割れも抑制できる。
【0019】
さらに、支柱34はつなぎ部36を介してアンカー35に接続されている。そして、可動部31も梁37を介してアンカー35と接続されているから支柱34と可動部31は同電位である。よって、支柱34は可動部31に電気的な影響を与えないため、支柱34を設けることにより加速度センサーの機能、精度を低下させることを回避できる。例えば、支柱が電気的に浮いた状態の場合、可動部と支柱との間に電位差または電位差の変動が生じ加速度センサーの機能、精度に影響を与えうる。特に、加速度でなく電気的な要因で可動部31が変位してしまうと加速度センサーの精度が悪化する。しかしながら本実施形態の構成によれば、支柱34は可動部31に囲まれ両者は近接しているにもかかわらず、両者が同電位であるから上述の影響を回避できる。
【0020】
本実施形態では封止構造体15として上部ガラス12と下部ガラス14を用いたが本発明はこれに限定されない。たとえば封止構造体15はシリコンで形成されていてもよい。封止構造体15をシリコンで形成すると、通常の半導体製造ラインにより製造できコスト低減できるなどの製造工程上の利益がある。一方ガラスを用いる場合はガラス中の不純物を考慮して専用ライン、専用装置を要する。また、封止構造体の形状は、封止構造体単独若しくは半導体部分の一部と協同して空隙を形成できる限り特に限定されない。
【0021】
図3は本実施形態の変形例について説明する半導体部分の平面図である。図3において図1の構成と相違するのは、支柱52がつなぎ部分50により可動部54と接続される点である。このような構成は図1の構成よりは簡素でありながら図1の構成と同等の効果を得ることができる点で優れる。
【0022】
実施の形態2
本実施形態は図4−7を参照して説明する。図4は実施形態2における半導体部分の平面図である。非可動櫛歯部分64と可動櫛歯部分46がコンデンサーを形成し、非可動櫛歯部分66と可動櫛歯部分48がコンデンサーを形成する。非可動櫛歯部分64は支柱を備える櫛歯68を有する。同様に、非可動櫛歯部分66は支柱を備える櫛歯69を有する。
【0023】
図5は非可動櫛歯部分64の斜視図である。図5に示されるように支柱を備える櫛歯68は他の櫛歯よりも長く伸び、先端には支柱70を備える構成である。この支柱70の機能は実施形態1と同様である。図4に示される支柱を備える櫛歯69についても同様の構成である。
【0024】
図6は図4の破線部分における断面図に、実施形態1と同等の上部ガラス12、下部ガラス14を付加した静電容量型加速度センサーを説明する図である。図6から明らかなように支柱70の両端が、上部ガラス12と下部ガラス14からなる封止構造体の内壁に接する。支柱70に加えて、支柱を備える櫛歯69が有する支柱も同様に封止構造体の内壁に接する。
【0025】
このように実施形態2の静電容量型加速度センサーは支柱を備える櫛歯の支柱が封止構造体の強度増加に貢献することを特徴とする。櫛歯の一部を封止構造体の支柱とすることにより構成を簡素化しつつ、実施形態1に記載の効果を得ることができる。なお、本実施形態の支柱も実施形態1の支柱と同様に可動部61に囲まれるが、可動部61と接触しない。
【0026】
図7は本実施形態の静電容量型加速度センサー(半導体部分)の変形例について説明する平面図である。図7に示す構成の特徴は、可動部84の長手方向の長さを略三等分する位置に支柱が配置されることである。すなわち、支柱を備える櫛歯80の支柱と、支柱を備える櫛歯82の支柱が可動部84の長手方向の長さを略三等分する位置に配置される。図4の例では支柱は、可動部中央に配置された。しかし、図7の構成のように支柱を分散配置することにより封止構造体の割れを抑制する効果が高まる。なお、支柱の本数は、トランスファーモールドの射出成形時の設定圧力などを考慮して適宜定める。よって支柱の数を増やして、例えば可動部長手方向を略四等分、略五等分するように支柱を配置してもよい。その他本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて様々な変形ができ、少なくとも実施形態1相当の変形をなしうる。
【符号の説明】
【0027】
10 静電容量型加速度センサー、 12 上部ガラス、 14 下部ガラス、 15 封止構造体、 31 可動部、 32 非可動部、 34 支柱、 35 アンカー、 36 つなぎ部分、 37 梁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度を検出するコンデンサーを形成する加速度センサー可動部および加速度センサー非可動部と、
前記加速度センサー可動部と接触せず前記加速度センサー可動部を気密封止する封止構造体とを備え、
前記加速度センサー可動部および前記加速度センサー非可動部が前記コンデンサーを形成する部分では、前記加速度センサー可動部および前記加速度センサー非可動部が櫛歯形状であり、
前記加速度センサー非可動部の前記櫛歯の一部は前記封止構造体の支柱であり、
前記支柱は前記加速度センサー可動部に囲まれるが前記加速度センサー可動部に直接接触せず、かつ、両端が前記封止構造体の内壁と接することを特徴とする静電容量型加速度センサー。
【請求項2】
前記支柱は前記加速度センサー可動部の長手方向の長さを三等分する位置に2箇所配置されることを特徴とする請求項1に記載の静電容量型加速度センサー。
【請求項3】
前記封止構造体はシリコンで構成されることを特徴とする請求項1に記載の静電容量型加速度センサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−33063(P2013−33063A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−241446(P2012−241446)
【出願日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【分割の表示】特願2009−167637(P2009−167637)の分割
【原出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】