説明

静電荷中和用の清浄なコロナガス電離

コロナにより発生したイオンから汚染物質副生成物を分離することによる清浄なコロナガス電離には、圧力を有し下流側方向に流れる非イオン化ガス流を確立するステップと、副生成物の少なくとも実質的部分が非イオン化ガス流内へと移動するのを防止するのに充分な程度に非イオン化ガス流の圧力よりも低い内部圧力を有するイオンと汚染物質副生成物のプラズマ領域を確立するステップと、イオンの少なくとも実質的部分の非イオン化ガス流内への移動を誘発するのに充分な電界をプラズマ領域に適用するステップとが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスイオン発生のためのコロナ放電を用いた静電荷中和装置の分野に関する。より具体的には、本発明は、半導体、電子機器、医薬品及び類似のプロセスおよび利用分野の製造において一般に見られるもののような清浄なおよび超清浄な環境における電荷中和のための汚染物質を含まないイオン化ガス流の生成に関する。
【0002】
本出願は、2009年4月24日出願の米国特許出願第61/214,519号「コロナ放電イオナイザー内での粒子およびガスイオンの分離」、2009年9月16日出願の米国特許出願第61/276,792号「コロナ放電イオナイザー内での粒子およびガスイオンの分離」、2009年10月26日出願の米国特許出願第61/279,784号「イオン化ガス流での広域被覆」、2010年2月11日出願の米国特許出願第61/337,701号「コロナ放電イオナイザーにおけるガスイオンからの汚染物質の分離」の優先権を主張する。また、これらの出願は、本願と一体をなすものとして参照する。
【背景技術】
【0003】
清浄な環境におけるプロセスおよび作業は、電気的に絶縁された全ての表面上に静電荷を作り出し蓄積する特異的傾向を有する。これらの電荷は望ましくない電界を発生させ、これが表面に大気中のエアロゾルをひきつけ、誘電体中に電気的応力を生成し、半導体および導体材料中に電流を誘発し、生産環境における放電およびEMIを開始させる。
【0004】
これらの静電気障害をとりなす最も効率のよい方法は、荷電表面にイオン化ガス流を供給することである。このタイプのガスイオン化は、望ましくない電荷の有効な補償または中和を可能にし、その結果、それらに付随する汚染、電界およびEMI効果を減少させる。ガスイオン化を生成する従来の一方法は、コロナ放電として公知である。コロナベースのイオナイザー(例えば米国特許出願公開第20070006478号および特開2007-048682号公報を参照のこと)は、それらが小さい空間内でエネルギーおよびイオン化効率のよいものであり得るという点において望ましい。然しながら、このようなコロナ放電装置の1つの公知の欠点は、高圧イオン化電界エミッター(鋭利な先端または薄いワイヤの形をしてもの)がその内部で使用されて、所望のガスイオンと共に望ましくない汚染物質を発生させるという点にある。コロナ放電は、また、例えば周囲空気中で水蒸気のごく小さい液滴の形成も促進するかもしれない。
【0005】
固体汚染物質副生成物の形成は、また、周囲空気/ガス雰囲気中のコロナ放電に付随するエミッター表面のエロージョンおよび/または化学反応の結果としてももたらされるかもしれない。表面エロージョンは、コロナ放電中のエミッター材料のエッチングまたはスパッター発生の結果である。詳細には、コロナ放電は、空気などの電気陰性ガスがコロナ中に存在する場合に、酸化反応を作り出す。その結果、エミッターの先端部に望ましくないガス(例えばオゾンおよび窒化酸化物)および固体被着物の形をしたコロナ副生成物がもたらされる。この理由で、汚染物質粒子発出を低減させるための従来の実践方法は、強い耐腐食性を持つ材料で作られたエミッターを使用することにある。然しながら、このアプローチにも、その独自の欠点がある。すなわち、それは多くの場合タングステンなどのエミッター材料の使用を必要とするが、この材料は、半導体製造などの技術的プロセスにはなじまないものである。半導体ウェーハの製造中に電荷を中和するために使用されるイオナイザー用の好ましいシリコンエミッターは所望の耐腐食性を有していない。
【0006】
コロナイオナイザー内のエミッターのエロージョンおよび酸化効果を削減する代替的な従来の方法は、主ガス流と同じ方向に流れる清浄な乾燥空気(CDA)、窒素などのガスフロー流/シースで、1または複数のエミッターを連続的に取り囲むことにある。このガスフローシースは従来、特開2006-236763号公報および米国特許第5,847,917号中に示されて記載されている通り高圧ガス供給源によって提供される。
【0007】
米国特許第5,447,763号「リコンイオンエミッター電極」および米国特許第5,650,203号「シリコンイオンエミッター電極」は、関連性のあるエミッターについて開示しており、これらの特許の内容全体が参照により本発明に援用されている。半導体ウェーハの酸化を回避するためメーカーは、アルゴンおよび窒素などの電気陽極ガス雰囲気を利用する。両方の場合において、コロナ電離には、汚染物質粒子の発生が随伴し、後者の場合、エミッターのエロージョンは電子の発出および電子ボンバードメントによって悪化する。これらの粒子は、同じシースガス流と共に移動し、電荷中和の対象を汚染することができる。こうして、このような状況下で、現在1つの問題点の解決策が別の問題を作り出している。
【0008】
1998年12月8日にSuzukiに発行された米国特許第5,847,917号(1995年10月4日出願の米国特許出願第08/539,321号)「空気イオン化装置および方法」、2003年5月13日にLeriに発行された米国特許第6,563,110号(2000年5月2日出願の米国特許出願第09/563,776号)「直列形ガスイオナイザーおよび方法」および2007年1月11日に公開されたKotsujiの米国特許出願公開第2007/0006478号(2004年8月24日出願の米国特許出願第10/570085号)「イオナイザー」には種々のイオン化装置および技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第20070006478号明細書
【特許文献2】特開2007-048682号公報
【特許文献3】特開2006-236763号公報
【特許文献4】米国特許第5,847,917号明細書
【特許文献5】米国特許第5,447,763号明細書
【特許文献6】米国特許第5,650,203号明細書
【特許文献7】米国特許第5,847,917号明細書
【特許文献8】米国特許第6,563,110号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2007/0006478号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、コロナにより発生したイオンを汚染物質副生成物から分離し清浄なイオン化した流れを中和標的に送出するための改良型清浄コロナ放電方法および装置を提供することにより、関連技術の上述のおよびその他の欠陥を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、イオン化電界および非イオン化電界を重畳してイオンと副生成物を生成し、イオンが中和標的へ向けて流れる間に、該イオンを非イオン化ガス流内に誘導することによってこれを達成する。非イオン化電界は、非イオン化ガス流内へのイオンの進入を誘発し、イオン化ガス流を形成するのに充分ではあるものの実質的にあらゆる汚染物質副生成物を非イオン化ガス流内に移動させるには充分でない強度のものでなくてはならない。単独であるいは前述の非イオン化電界と組合せた形で、本発明は、((1)小粒子、(2)液滴および/または、(3)ある種の望ましくないガスのうちの1または複数のものなどの)汚染物質からイオンを分離するために、1または複数のガス圧力差を使用することができよう。
【0012】
本発明の分離方法は、(一方では)陽イオンのおよび/または陰イオンそして(他方では)汚染物質副生成物の異なる電気的および機械的移動度に基づくものである。一般に、1または複数のコロナ電極であるエミッターによって生成される汚染物質副生成物は、陽イオンおよび/または陰イオンよりも数ケタ低い機械的および電気的移動度を有することが分っている。このような理由で、本発明によると、コロナにより発生したイオンは、1または複数の電界および/またはガス流の影響下で1または複数のコロナ電極であるエミッターから離れるように移動することができるが、比較的移動度の低い汚染物質副生成物は、1または複数のエミッター先端部の近傍に浮遊し同伴される場合がある。その結果、本発明によると、これらの汚染物質副生成物は、また、清浄で新たに電離されたガス流が静電荷中和のために標的まで送出されている間にプラズマ領域から排出されてもよい。
【0013】
より詳細には、空気およびその他のガスイオンは非常に小さいため、その直径は数分の1nmにすぎず、その質量は原子質量単位(amu)で測定される。これらは通常、電子1個に等しい大きさの電荷を坦持する。例えば、窒素分子は、28amuの質量を有し、酸素分子は約32amuの質量を有し、電子は約5.5 E-4 amuの質量を有する。ガスイオンの典型的な電気的移動度は、約1.5〜2[cm2/Vs]の範囲内にある。
【0014】
一方、コロナ放電汚染物質粒子は、直径がはるかに大きく(数十〜数百nmの範囲内)、はるかに大きい質量を有する。粒子の機械的移動度は、その質量および/または直径に反比例することから、粒子がより大きくより質量の高いものになればなるほど、その移動度は小さくなる。比較のため、10nmのシリコン粒子は約7.0 E4 amuの質量を有する。22nmの風媒粒子は、約0.0042[cm2/Vs]の電気移動度を有する。
【0015】
更に、本明細書中で論述されているタイプのナノメートル汚染物質粒子のごくわずかな部分だけが何らかの電荷を坦持できるということを発見した。一方、ガスイオンは典型的に、少なくとも1電気素量の電荷を有する。
【0016】
本明細書中で開示されている本発明のコロナ放電方法および装置によると、1または複数のイオンエミッターと非イオン化基準電極(以下で詳述する)の間には次の2つの相異なる領域が存在する。
【0017】
(a)高強度電界があたらしい電子および光子を生成してコロナ放電を持続するのに充分なエネルギーを電子に提供している各々のイオンエミッター先端部(単複)またはその近傍に一般にその中心を置く、小さく(直径約1ミリメートル)全体として球形の領域であるプラズマ領域と、
(b)灼熱するプラズマ領域と非イオン化基準電極の間のイオンドリフト領域である暗空間。
【0018】
一形態において、本発明は、イオン化電極においてプラズマ領域内に比較的低い圧力を維持しながら、圧力を有し下流側方向に流れる少なくとも1つの非イオン化ガス流を提示することにより、イオンと汚染物質粒子を分離する方法を含む。例えば、この実施形態は、少なくとも部分的に非イオン化流の内部に配置された低圧エミッターシェルが、イオン化電極およびそのプラズマ領域をイオンドリフト領域の非イオン化ガス流から実質的に遮蔽している一方で、イオンドリフト領域を取り囲む貫通流路を使用することができる。結果として得られる圧力差によって、汚染物質副生成物の少なくとも実質的な部分が、プラズマ領域から外へ、そして非イオン化流内へ移動することを防止できる。
【0019】
更に、本発明の一部の形態では、コロナ副生成物の同時除去を伴ってガスイオンを作り出すためのガスフローイオナイザーが想定されている。本発明のイオナイザーは、少なくとも1つの貫通流路およびシェル組立体を有することができる。組立体は、エミッターシェル、イオン化電位を適用し得るイオンと汚染物質副生成物を含むプラズマ領域を生成するためのいくつかの手段を含むことができる。イオンを生成するための手段(例えばエミッター)およびその付随するプラズマ領域は、エミッターシェル内部に少なくとも部分的に配置することができ、シェルは、イオンドリフト領域を通って貫通流路の内部を流れる非イオン化ガス流(主ガス流)内にイオンの少なくとも実質的部分が移動できるようにするオリフィスを有することができる。プラズマ領域の少なくとも一部分は、コロナ副生成物の実質的に全てが主イオン流内に移動するのを防止するのに充分低いものの、ガスイオンの少なくとも実質的な部分が主イオン流内に移動するのを防止するのに充分な程度に低くはない圧力に維持することができよう。貫通流路のイオンドリフト領域を通って流れるガスは、こうして、中和標的の下流側方向にこれらのイオンを送出する清浄なイオン化ガス流へと転換することができよう。同時に、低圧エミッターシェルは、イオンを生成するための手段およびそのプラズマ領域を非イオン化ガス流の比較的高い圧力から保護または遮蔽してよく、こうして汚染物質副生成物が実質的に全く主イオン流内に移動しないことになる。
【0020】
一部の実施形態で、本発明は、汚染物質副生成物が内部を通って排出され得るエミッターシェルに連通する1または複数の任意の排出ポートを利用することができる。
一部の他の実施形態で、本発明は、排出ポートに連通する任意の汚染物質副生成物トラップ/フィルターおよび周囲雰囲気よりも低い圧力を有するガス供給源を利用することができる。
【0021】
本発明の他の特徴は、イオナイザー制御システムに通信可能な形で連結された出力端を有する真空および/または低圧センサーの使用が含まれる。このような配置の場合、制御システムを用いて、トリガー信号に応えて様々な行動をとり得る。例えば、制御システムは、排出ポート内の圧力レベルが規定の閾値レベルより高く上昇した場合に、高圧電源を遮断することによって、貫通流路内のガスフローがコロナ副生成物による汚染を防止できる。
【0022】
別の任意の態様では、本発明は、駆動区分、吸気ポートを備えた膨張チャンバおよび排気区分を有するエダクターの使用を含むことができる。チャンバの吸気ポートは、汚染物質フィルターの出口と連通することができる。その結果、コロナ副生成物が、エミッターシェルの排出ポートを介してエダクターの吸気ポートに向かって引き寄せられてよい。
【0023】
本発明の関連する任意の態様では、エミッターシェルからエダクターの膨張チャンバまでガスを再循環させ、再循環されたガスの全てまたは一部からコロナ副生成物を清浄するための手段の使用が想定されている。
【0024】
本発明の別の形態には、非イオン化電位が加えられた時点でプラズマ領域から外へそして主ガス流内への陽および/または陰イオンの移動を電気的に誘発するために、貫通流路の内部又は外部に配置された少なくとも1つの基準(非イオン化)電極が含まれていてよい。本発明のこの形態は、単独で本発明の1または複数の最終目的を達成してよく、あるいは、本明細書中で論述されている圧力差方法および/または装置と併用してもよい。
【0025】
貫通流路は、少なくとも部分的に、非常に抵抗性の高い材料で作られていてよく、貫通流路の外部表面上に基準電極を位置づけしてよい。結果として、粒子の発生およびコロナ化学反応が削減されるため、より低いコロナ電流で、高圧ガス流による効率の良いイオン収穫および移送されよう。
【0026】
本発明の別の任意の態様においては、AC電圧が少なくとも1つのエミッターに印加されてエミッター先端部近くに双極プラズマ領域を作り出し、コロナにより発生した汚染物質粒子上の電荷蓄積を少なくとも大幅に削減してよい。結果として、汚染物質粒子の電気的移動度は更に減少し、イオンとコロナ副生成物の間の分離が増強される。
【0027】
当然のことながら、本発明の上述の方法は、本発明の上述の装置と共に使用するのにきわめて良く適合させられている。また、本発明の装置は、上述の本発明の方法を実施するのに充分適したものである。
【0028】
当業者には、好ましい実施形態についての以下の詳細な説明、特許請求の範囲および添付図面から、本発明の数多くの他の利点および特徴が明らかになるものである。
本発明の好ましい実施形態は、添付図面を参照して以下で記述されており、ここで同じ番号は同じステップおよび/または構造を表わしている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1a】第1の実施形態による静電荷中和用の清浄コロナガスをイオン化する好ましい装置および方法を示す略図である。
【図1b】第2の実施形態による静電荷中和用の清浄コロナガスをイオン化する好ましい装置および方法を示す略図である。
【図1c】第1の実施形態による静電荷中和用の清浄コロナガスをイオン化する好ましい装置および方法を示す略図である。
【図2a】図1a〜1cに示す好ましい実施形態で使用するエミッターシェル組立体の1つの実施形態を示す略図である。
【図2b】図1a〜1cに示す好ましい実施形態で使用するエミッターシェル組立体の1つの実施形態を示す略図である。
【図2c】図1a〜1cに示す好ましい実施形態で使用するエミッターシェル組立体の1つの実施形態を示す略図である。
【図3a】図1a、2aに示すような1本の貫通流路を備えたガスイオン化装置の部分断面図である。
【図3b】2本の貫通流路を用いる好ましいガスイオン化装置の全体的構造の断面斜視図である。
【図3c】図3bに示した構成を用いる、2本の貫通流路を備えたガスイオン化装置の全体的構造の斜視図である。
【図3d】図3b、3cに示す2本の貫通流路を備えたガスイオン化装置の別の断面斜視図である。
【図3e】図3aで示す1本の貫通流路を備えたガスイオン化装置の別の断面斜視図である。
【図4a】図3cの実施形態による方法および装置を用いて行った試験結果を示す線図である。
【図4b】図3cの実施形態による方法および装置を用いて行った試験結果を示す線図である。
【図4c】図3cの実施形態による方法および装置を用いて行った試験結果を示す線図である。
【図5a】エダクターとエミッターシェルを様々な相対的位置に配置した、図1a〜1dに図示の好ましい実施形態で使用するためのエミッターシェルとイオン化エミッターの1つの変形実施形態を示す部分断面図である。
【図5b】エダクターとエミッターシェルを様々な相対的位置に配置した、図1a〜1dに図示の好ましい実施形態で使用するためのエミッターシェルとイオン化エミッターの1つの変形実施形態を示す部分断面図である。
【図5c】エダクターとエミッターシェルを様々な相対的位置に配置した、図1a〜1dに図示の好ましい実施形態で使用するためのエミッターシェルとイオン化エミッターの1つの変形実施形態を示す部分断面図である。
【図5d】エダクターとエミッターシェルを様々な相対的位置に配置した、図1a〜1dに図示の好ましい実施形態で使用するためのエミッターシェルとイオン化エミッターの1つの変形実施形態を示す部分断面図である。
【図6】エミッターシェルの上流側に配置されたエダクターと2本の貫通流路を有する、図5aの本発明のガスイオン化装置の全体的構造の斜視図である。
【図7】本発明の別の好ましい実施形態に係る真空センサーおよび制御システムを備えたガスイオン化装置の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1aは、本発明の第1の好ましい方法および装置実施形態の略図である。図3a、3bの断面立面および斜視図は、図1に図示する発明の様々な構造的詳細を示していることから、これらの図においても同じ参照番号を用いている。
【0031】
上述の図に示す通り、本発明の直列形イオン化セル100は、ソケット8の内に収容された少なくとも1つのエミッター(例えばイオン化用コロナ電極)5を含み、該ソケットおよびエミッターは中空のエミッターシェル4内に配置されている。電極であるエミッター5は、単結晶シリコン、ポリシリコンなどを含めた数多の(それが使用される特定の利用分野や環境に応じた)公知の金属および非金属材料から形成することができる。エミッターシェル4は、好ましくは、内部のガスフローの通路を形成する、好ましくは、きわめて抵抗性の高い貫通流路2内に軸線A−Aに沿って同軸的に配置される。一変形形態として、貫通流路2は、非導電性スキンまたは層によって少なくとも内部表面をライニングしているかぎり、大部分を半導電性更には導電性材料にて形成してもよい。これらの構成要素は、基準電極6、ガスフロー3用の出口13および排出ポート14と共に、コロナ放電が発生しイオン化電流が流るイオン化セルとして作用する。高圧ガス供給源(図1a中には示さず)によって、CDA(清浄乾燥空気)または窒素(または別の電気陽性ガス)などの清浄なガス流3を、吸気ポート1から貫通流路内へ約30〜150リットル/分の範囲内の高流量で供給することができよう。然しながら、約40〜90リットル/分の範囲内の流量が最も好ましい。
【0032】
ガスのイオン化は、エミッター5のためのコロナ閾値を超える高圧電源(HVPS)9のAC電圧出力がソケット8を介してエミッター先端部5′に印加された時点で開始する。この技術分野において公知であるように、これによって、通常、エミッター先端部5′の先端部から該エミッターの近傍に出現する略球形のプラズマ領域12内のAC(または変形実施形態ではDC)のコロナ放電により、陽イオン10および陰イオン11が生成される。この実施形態で、電源9は、好ましくは、電極6に対して、電気陽性非イオン化ガスが使用されるか否かを含めた様々な要因に応じて、約0〜200ボルトまでの範囲のAC成分およびDC成分を伴う非イオン化電位を印加する。非イオン化ガスが空気である場合、この非イオン化電圧は0ボルト未満に振れるかもしれない。電気的に絶縁された基準電極6は、好ましくは、貫通流路2の外部表面のまわりに配置され、こうしてプラズマ領域においてそしてこのプラズマ領域を形成したイオン化電界に加えて、比較的低い強度の(非イオン化)電界を形成する。こうして、電気的力(そして固有の拡散力)は、プラズマ領域12からイオンドリフト領域内への(シェル4の出口オリフィス7を通り、基準電極6に向かっての)イオン10、11の少なくとも実質的な部分の移動を誘発する。電界の強度は電極6の近傍で低いものであることから、イオン10、11は、主(非イオン化)ガス流3内に運び去られ(こうして清浄なイオン化ガス流を形成する)、出口ノズル13を通って下流側に、そして中和標的表面または物体Tに向かって導かれる。任意には、貫通流路2の出口ノズル13は、従来のイオン送出ノズルのように構成することができよう。
【0033】
図1aに示すように、排出ポート14は、その片端でエミッターシェルと、そしてエミッターシェルオリフィス7近傍のガス圧ならびにエミッターシェル4の外部の主ガス流3のガス圧よりも低い圧力に維持される真空ライン18に連通されよう。また、図1aに示す他の任意の構成要素例えば汚染物質副生成物フィルター16および/または調整可能なバルブ17は、ポート14とライン18の間に配置することができよう。任意のフィルター16は、サイズが10nm超の粒子用99.9998%定格のカートリッジフィルターなどの、高効率フィルターまたはフィルター群とすることができる。
【0034】
イオン化セル100の好ましい実施形態では、エミッター5(または一部の他の等価のイオン化電極)には、結果として得られるコロナ放電が陽および陰の両方の極性のイオン10、11でプラズマ領域を生成または確立するように充分高い周波数(例えば無線周波数)をもつ高圧ACが印加される。これは、好ましくは、実質的に電気的に平衡しており、こうして汚染物質副生成物は電荷が実質的に中性となりプラズマ領域内部に同伴されることになる。非イオン化ガス流として清浄な乾燥空気を用いる実施形態で、プラズマ領域は本質的に陽性および陰性のイオンおよび汚染物質粒子で構成されているが、これは、コロナ放電の結果として一時的に存在し得るあらゆる電子が、空気中の酸素との組合せに起因して、実質的に完全に実質的に瞬時に失われるからである。一方、非イオン化ガス流として1または複数の電気陽性ガス(例えば窒素)を用いる実施形態では、プラズマ領域が陽イオンおよび陰イオン、電子ならびに汚染物質副生成物とを含むことが可能となる。
【0035】
この技術分野において公知であるように、このコロナ放電は、また、望ましくない汚染物質副生成物15をも生成する。保護用エミッターシェル4がなければ、副生成物15は、エミッター5の先端部5′から出てくるイオン風、拡散そして電気斥力の力に起因して貫通流路2のガス流3内に連続的に移動すると考えられる。最終的には、汚染物質副生成物15は、新たに作り出されたイオンと共に非イオン化ガス流3の中に運び去られ、こうしてノズル13を通して電荷中和標的物体Tに向かって導かれる。
【0036】
然しながら、エミッターシェル4および排出ポート14での比較的低いガス圧力に起因して、エミッター先端部5′により生成されるプラズマ領域の内部および/またはそ近傍のガスフローパターンは、汚染物質15のガス流3への進入が防止される。詳細には、図1aに示す構成では、オリフィス7の近傍の非イオン化ガス流とプラズマ領域12(シェル4内部)の間に圧力差を生じる。この圧力差のため、高速ガスフロー3の一部分3aが流路2からオリフィス7を通ってシェル4内に流入する。このガス流3aは、コロナによって発生した副生成物15の実質的に全てをプラズマ領域12から排出ポート14中に誘導する牽引力を作り出す。汚染物質副生成物15を含有する汚染ガス流は、各図全体を通して参照番号13bで指示されている。副生成物15は、イオン10、11を主ガス流内に促す既述のイオン風、拡散および電気的力を受けることを当業者には理解されよう。然しながら、本発明は、ガス流部分3aがこのような対抗する力を克服するのに充分強いものとなる条件を作り出すことを目的としている。その結果として、イオン10、11と副生成物15は空気力学的におよび電気的に分離され異なる方向に移動する。すなわち、陽および陰イオン10、11は非イオン化ガス流内に移動して、荷電物体Tに向かって下流側に流れるイオン化ガス流を形成する。一方、副生成物15は排出ポート14、そして好ましくは副生成物収集装置、フィルターまたはトラップ16に向かって排出され或いは運び去られる。
【0037】
図1aに示すように、フィルター16は、好ましくは調整可能なバルブ17および低圧ガス流供給源または真空ライン18に連結される。この場合、プラズマ空間12からの副生成物15は、低圧ガス流3bによって排出ポート14およびフィルター16内に連続的に輸送される。ガス流3bが濾過されると、結果として得られた清浄なガス流3cは、以下で詳述するように、他の場所に排気されても或いはガス流3内に再循環させることができよう。様々な好ましい実施形態中で使用するための好ましいフィルターは、6558 Diplomat Drive, Sterling Heights, MI 48314 USA所在のUnited Filtration System社により製造されている型番DIF-MN5型であり、このフィルターまたはトラップは、10nmという小さい微粒子汚染物質を捕捉、収集、捕獲するために使用することができよう。
【0038】
エミッターシェルからコロナにより生成された副生成物を効率良く除去するためには、或る種の最低圧フロー3a、3bを得ることが好ましい。それでもこのフローは、好ましくはイオン10、11の少なくとも実質的部分がプラズマ領域12から外へ非イオン化基準電極6に向かって移動可能とするのに充分小さいものである。この点において、この技術分野において公知であるように、約99%のイオン再結合率が一般的であり、従って1%未満のイオンでさえ、情況を考慮すると生成されたイオンの実質的部分とみなすことができよう。低圧ガスフロー3a、3bは、好ましくは、約1〜20リットル/分の範囲内にある。最も好ましくは、フロー3a、3bは、広範囲の粒径(例えば10nm〜1000nm)を高い信頼性で排出するように約4〜12リットル/分であるべきである。
【0039】
既述したように、流路2は、好ましくは非常に抵抗率の高い電気絶縁材料例えばポリカーボネート、テフロン(Teflon)(登録商標)、セラミクスその他のこの技術分野において公知の材料で形成される。図1aに示す通り、非イオン化基準電極6は、好ましくは流路2の壁の内部に埋設された狭い金属バンドまたはリングとして構成されている。或いは、基準電極6を、流路2の外側(例えばその外部表面上)に配置してもよい。いずれにせよ、基準電極6は、装置の制御システム(図1aには図示せず、例えば図7を参照)または電源9の低圧(例えば接地)端子に接続することができよう。エミッター5が受ける電位は、約3キロボルト〜約15キロボルトの範囲、典型的には約9キロボルトとすることができる。基準電極が受ける電位は約0ボルト〜約200ボルト、典型的には約30ボルトである。
【0040】
好ましくは、イオン化電極5には、コンデンサを通した高周波イオン化電位が印加される。また、基準電極であるリング6をコンデンサおよびインダクタ(およびLC回路)を通して「接地して」もよく、これらからフィードバック信号を誘導することができる。こうしてこの配置は、イオン化電極5と非イオン化電極6の間に電界を提示する。電極間の電位差がコロナ放電を確立するのに充分なものである場合、電流がエミッター5から基準電極6へと流れる。エミッター5および基準電極6はコンデンサによって絶縁されているため、比較的小さいDCオフセット電圧が自動的に確立され、存在するかもしれないあらゆる過渡的な電離バランスは、約ゼロボルトという静穏状態まで低下する。
【0041】
図1bは、本発明の第2の好ましい方法および装置実施形態の略図である。同じ参照番号を使用することで示すように、図1bの本発明の直列形イオン化セル100′は、構造および機能が図1aのセル100のものと同様である。従って、セル100について上述した説明は、以下に明示的に説明する差異を除き、セル100′にもあてはまる。図1bに示す通り、エミッターシェル4′、ソケット8′および排出ポート14′は、その夫々のセル100構成要素と異なっている。詳細には、セル100′は、好ましくは、電源9からエミッター5まで高い電圧を供給するためのソケット8′が一体化して形成されている排出ポート14′の使用を想定している。その上、ポート14またはソケット8は、それらがエミッターシェル4′の内部に配置されるような形で配置された少なくとも1つの(そして好ましくは多数の)アパーチャを有する中空管とすることができよう。こうして、1または複数のアパーチャA1、A2の一方または双方を介してポート14′を通って低圧副生成物流が排出することができよう。
【0042】
図1cは、本発明の第3の好ましい方法および装置実施形態の略図である。同じ参照番号を使用することで示すように、図1cの本発明の直列形イオン化セル100″は、構造および機能が図1aのセル100のものと同様である。従って、セル100について上述した説明は、以下に明示的に説明する差異を除き、セル100″にもあてはまる。図1に示す通り、貫通流路および基準電極2′、6′および出力ノズル13′は、その夫々のセル100構成要素と異なっている。詳細には、セル100″は、好ましくは、同様に一体化して形成された基準電極の機能も果たす導電性流路2′、6′の使用を想定している。こうして、導電性流路2′、6′には、電源9の低圧端子から動作電圧が印加されよう。更に、出力ノズル13′は、流路2′、6′より小さい断面積を有するノズル(またはマニホルド)のように構成することができよう。この構成は、エミッターシェル4のオリフィス7近傍に陽圧を作り出し、この陽圧はそれ自体、排出ポート14がライン18と連通しているか或いは単に周囲雰囲気と連通しているかに拘わらず、所望通りにセル100″が機能できるようにする。いずれの場合でも、ポート14は、オリフィス7近傍のガス圧よりも低い圧力を呈する。本明細書の記載から、当業者であれば更になる変形形態として、上述のセル100′のソケット8′および排出ポート14′をセル100″内に組込むことができることは理解されよう。
【0043】
複数の変形形態のエミッターシェル組立体4a〜4cの構造について、ここで図2a〜図2cを合わせて参照しながら更に詳細に提示する。ここで示すように、本発明では、好ましいシェル組立体(図1に、シェル4、エミッター5、ソケット8および排出ポート14として概略的に表わされている)が、図2a〜図2cに示す3つの代替的構成のうちの何れか1つの構成を採用してよいことを想定している。これらの変形形態全てにおいて、中空シェル4は、好ましくは、その周囲および貫通流路2内を流れる高速ガス流の速度低下を最小限におさえるために、空気力学的外部表面(例えば楕円または球形)を有する。シェル4、4′、4″の何れかまたは全ては、絶縁材料でそして好ましくはポリカーボネート、セラミック、石英またはガラスなどのプラズマ抵抗性絶縁材料から形成することができよう。或いは、オリフィス7近傍のシェル4、4′、4″の一部のみを、ポリカーボネート、セラミック、石英またはガラスなどのプラズマ抵抗性絶縁材料で形成してもよい。この場合、出口19およびオリフィス7は、好ましくは、非伝導性セラミックで作られる。別の変形形態として、各々のシェル4、4′、4″の一部または全てが、プラズマ抵抗性絶縁材料のスキンでコーティングすることもできよう。
【0044】
更に図2a〜図2cを合わせて参照すると、イオンエミッター5は、好ましくは、エミッター5のコロナ放電端部がオリフィス7から内側に距離Rだけ離間している(または同義的には陥凹している)ような形態で、それを収容するシェルの中心軸線Aに沿って配置されている。この陥凹距離Rが大きくなればなるほど、プラズマ領域12からの汚染物質副生成物は、所望される通り、低圧フロー3aにより排出ポート14、14′、14″の1つに向かって一層容易に運び去られると考えられる。然しながら、陥凹距離が小さくなればなるほど、プラズマ領域12からオリフィス7を通って、所望の通り、主ガス流2のイオンドリフト領域内へとより容易にイオンが移動し得ると考えられる。これらの競合する考慮事項を最適にバランスさせるために、距離Rを、エミッター5の先端部でコロナ放電により生成されるプラズマ領域12のサイズ(プラズマ領域は通常直径約1ミリメートルである)以上になるように選択した場合に、最適なイオンと副生成物の分離が得られるであろうことが確かめられた。更に、好ましい距離Rは一般に、円形オリフィス7の直径D(約2〜3ミリメートルの範囲内)に匹敵するものとすることができる。最も好ましくは、D/R比は約0.5〜約2.0の範囲内とすることができる。
【0045】
イオン化電極5は、好ましくは、鋭利な先端を備えたテーパーのついたピンとして構成されているが、この技術分野において公知の数多くの異なるエミッターの形態が、本発明に係るイオン化シェル組立体内で使用するのに適しているということが理解されよう。限定的にではなく、これらの形態は、ポイント、小さい直径のワイヤ、ワイヤループなどを含むことができる。更に、エミッター5は、金属およびケイ素、炭化ケイ素、セラミクスおよびガラスのような導電性非金属および半導電性非金属を含む多様な材料で形成することができよう。
【0046】
ここで図2aを詳細に参照すると、鋭利な先端とは反対側のエミッター5の端部は、好ましくは導電性ソケット8内に固定されることが理解されよう。図2aに示すエミッターシェルは1つのアパーチャ20を有し、このアパーチャを通して、バネ式ポゴピン21がソケット8と電気的に導通し、高圧電源9(図2a、2b、2cには図示せず)から高電圧が送電される。更に、この実施形態では、排出ポート14が、好ましくは、一般にエミッター5の先端部近傍でシェル4を通って延在している。同じく、図示されてはいないものの、なかでも図2b、2cおよび図3a、3bに関して以下に記載するプラグ23などの取付け用プラグをも同様に組立体4が含むことができる。(図1aで示された完全なイオン化セル100の概略的実施形態の中で使用されているような)図2aのイオン化シェル組立体4の物理的実施形態が、図3a、3e中の斜視立面断面図および斜視図の中で示されている。
【0047】
図2b、2cに代替的なシェル組立体変形形態4′、4″を示す。これらの実施形態では、排出ポート14′、14″は、エミッター5との電気的導通、および、エミッターシェルから低圧副生成物フロー3b(コロナにより生成された汚染物質を含むもの)の排気という2つの機能を果たす。これらの実施形態で、ポート14、14′の一方または双方は、ソケット8と電気的に導通する中空導電性管とすることができよう。ポート14′とポート14″の一方または双方は、また、低圧力供給源および高圧電源9に対して着脱自在に接続されるようにできる。図2bの場合、中間導電性要素22を用いて間接的に電気的導通を提供する。図2cの場合、電気的導通は、ポート14″とエミッターソケットが一体として形成されているため直接的に電気的導通を提供する。最後に、図2b、2cおよび図3a、3bに様々な形態で示すように、シェル組立体4b、4cは、主流路2内に容易に設置しかつ/またはそこから容易に取外しできるように、取付け用プラグ23上に設置することができよう。従って、この構成は、メンテナンスおよび交換(必要な場合)を目的とするイオン化セルおよびイオンエミッターへの便利なアクセスを提供する。
【0048】
図3a、3eを合わせて参照すると、そこには、1本の貫通流路2を備えたガスイオン化装置の様々な物理的描写が示されている。更に、図3b、3c、3dを合わせて参照すると、そこには、2本の平行な貫通流路2a、2bを備えたガスイオン化装置の様々な物理的描写が示されている。これらの実施形態は、なかでも図1aに関して説明した原理と同じ原理に基づいて作動し、主要な差異は1本または2本の貫通流路のいずれを使用するかという点にあることが指摘される。貫通流路1本の実施形態は非イオン化ガス流の自由フローにとって特に有利であるが、貫通流路2本の実施形態は製造がより容易でかつ安価である。
【0049】
図3aは、第1の平面に沿って破断した一実施形態の断面図である。図3eは、第1の平面に対して垂直である第2の平面に沿って破断した同じ実施形態の断面図である。図3bは、第1の平面に沿って破断した2本の貫通流路の実施形態の断面図である。図3dは、第1の平面に対して垂直である第2の平面に沿って破断した同じ実施形態の断面図である。貫通流路2aは、断面が取除かれた装置の部分の中に配置されていることから、図3bでは見えない。別のイオン化装置の全体的構造を図3cの斜視図に示す。そこに示すように、この装置実施形態には、図3b、3dに図示の装置が含まれる。然しながら、この実施形態はまた、排出ポート14用の低圧力ガスフローの塔載型供給源として役立つエダクター26をも含んでおり、こうして、ポートを任意の外部真空ライン(例えば上述の実施形態に関して使用されたライン14など)に接続する必要性は無くなる。本発明のこの実施形態の中で使用するための好ましいエダクターは、3b Parmenter Road, Hudson, MA01749 USA所在のAnver Corporation社が製造販売するANVER JV-09シリーズミニ真空発生器である。そこで示すように、ポリカーボネート、テフロン(Teflon)(登録商標)、セラミクスまたはこの技術分野において公知の他の電気的絶縁材料から成る単一ブロックBにフライス加工や、ドリル加工その他の方法で1または複数の様々な流路、ポート、通路或いはボア等を穿設することができよう(その輪郭は、内部の検分を容易にするため破線で示されている)。或いは、ブロックBを成形するか或いはこの技術分野で公知の任意の他の手段により他の形態としてもよい。図3cに更に示すように、高圧非イオン化ガス供給源は、入力取付け具24により受け入れられ、高圧ガスフローを2つの部分すなわちエミッターシェル4(図1aで示されている配置と実質的に類似するもの)に向かって誘導される主ガス流と、T字管25を介してエダクター26の駆動ポート27に誘導される高圧流の小さい部分とに分割するT字管25(または分岐)まで送出することができよう。この実施形態では、エダクター26の吸引接続部28が排出ポート14のための低圧ガスフローを供給し、エダクター放出接続部29または排気孔に向かって通過する汚染物質副生成物フロー3bがフィルター16によって遮られるようになっている。この実施形態で、フィルター16から流出する清浄ガスは、周囲雰囲気に排気することができよう(あるいは或いは、イオナイザーに戻される)。清浄なイオン化ガスの主イオン流は、イオン化セルから出口管13へおよび標的中和表面または物体(図示せず)まで流れる。図3cも示され、この図に説明されている実施形態は所望の目的のために有効であるものの、これはまさに、図5a〜5dで示され以下で詳述される代替的なエダクター実施形態が必要とするものよりも高いガスフローを必要とする。
【0050】
ここで図4a〜4cを合わせて参照すると、そこには、図3b、3c、3dの実施形態に関して開示された本発明の方法および装置についての試験結果が示されている。この試験のためには、1.22m×0.61m(4フィート×2フィート)のダウンフローミニ環境内に本発明のイオナイザーが設置され、ミニ環境は、クラス1000のダウンフロークリーンルーム内に設置された。従って、バックグラウンドミニ環境空気は、2重濾過され、ISO規格14644クラス1(0.1ミクロン)で試験が実施された。テストイオナイザーは、イオン出口13を下に向けて配置された。粒子プローブ(凝縮核計数器および/またはレーザー粒子計数器)が、イオン出口13より約6インチ下に設置され、10分試料が約15分毎に測定された。出口13より約12インチ下に、チャージプレートモニター(CPM)が設置され、およそ15分に一回バランスおよび放電時間が測定された。図4a〜4cで使用されているように、トラップという用語は、(フィルターという用語の同義語としての他の箇所におけるこの用語のより限定された意味に対立するものとして)本発明の副生成物分離/評価特徴を意味する。
【0051】
主に図4aを参照すると、10ナノメートル試験が、1つの基準を確立するための環境のバックグラウンド汚染検査で始まっている。これを図4aの最も左側に示す。この時限中、エミッターのためのAC高圧電源と、非イオン化ガス流および排出ガス供給源は、オフ状態にあった(パワーOFFおよびトラップOFF)。図示すように、粒子プローブはこの時間中に汚染物質副生成物を本質的に全く検出しなかった。
【0052】
第2の時限中、エミッターの高圧電源および非イオン化ガス流(約40リットル/分の窒素)をオンに切換え、排出ガス供給源はオフ状態とした(パワーONおよびトラップOFF)。これは図4aの中央に示す。この間、本発明に係るイオンと汚染物質粒子の分離は起こらない。従って、従来のコロナ放電のために、陽イオンおよび陰イオンの発生と、相当なレベルの10nmという微小汚染物質粒子が粒子プローブによって検出されることになる。
【0053】
図4aの右側の第3の時限では、高圧電源および非イオン化ガス流をオン状態に維持し、排出ガス供給源も同じくオンに切換えた(パワーONおよびトラップON)。この間、主非イオン化ガス流は約40リットル/分であり、T−コネクタによって約10リットル/分の流れを取出してエダクターの入力ポートへ供給し、そして吸引ポートによって約4リットル/分の排出フローを試験装置のイオナイザーシェルの排出ポートに供給していることが理解されよう。この条件下で、従前の電荷を中和した主窒素ガス流により標的CPMに向かってイオンが運び去られる。一方、汚染物質副生成物は排出ガス供給源により排出される。図4aに示すように、これらの条件は、事実上いかなる副生成物も粒子検出器により検出されないという結果をもたらす。従ってこの試験は、ここに開示するガス中イオンからコロナにより生成された汚染物質粒子を分離する方法が、ISO規格14644クラス1の外挿(10nmまで)に、従って0.028立方メートル(1立方フィート)あたり約34粒子未満の10nm粒子濃度を典型的に生み出すということを示している。
【0054】
この試験中、100nm超の粒子は測定されなかった。然しながら、実質的に類似の本発明のイオナイザー試験から、0.028立方メートル(1立方フィート)あたり約0.04粒子未満という100nm粒子濃度が得られており、これはISO規格14644クラス1と適合するものである。これは、汚染物質副生成物を実質的に全て除去することによって達成される濃度レベルの非限定的な例であるものとみなされる。
【0055】
図4aは、本発明の方法および装置が事実上、汚染物質粒子が標的に到達するのを妨げることができるということを実証しており、一方図4b、4cは、この特徴を提供することで、コロナ放電イオナイザーの性能に無視できるほどの差異しかもたらされないということを実証している。
【0056】
この技術分野において公知であるように、イオナイザーの性能は通常(a)放電時間および(b)荷電平衡という2つのパラメータによって定量化される。CPMにより測定される放電時間は、1000Vから100Vまで(正および負の電圧について平均されたもの)20pFの平板コンデンサを中和するのに必要とされる時間(秒単位)である。より短かい放電時間はより優れた性能を示す。図4bの左側に示すように、60秒がプログラミングされた最大読取り値である、イオン化電位パワーOFFおよびトラップOFFで60秒という放電時間が発生する。図4bの中央および右側部分で示すように、放電時間は、試験がパワーONおよびトラップOFF条件(約13秒)からパワーONおよびトラップON条件(約16秒)へと移動した時点で、約3秒未満だけ増加した。
【0057】
バランスというのは、標的に対して同数の陽イオンと陰イオンを送出できるイオナイザーの能力を説明する。理想的なイオナイザーはゼロボルトのバランスを有し、良好にバランスされたイオナイザーは+5ボルト〜−5ボルトのバランスを有する。図4cは、パワーON/トラップON条件で動作する本発明の方法および装置を用いて−4ボルトのバランスを示している。従って、本発明の方法および装置は、従来のコロナ放電イオナイザーの性能に対し無視できるほどの影響しか及ぼさない。
【0058】
匹敵する性能を示すことができるもののガス消費量が比較的少ない本発明のイオン化セルの他の好ましい変形実施形態が、以下で記述される通り、図5a〜図5d中で概略的に表わされている。図5a〜図5dのイオン化セル110a、110b、110c、110dの何れか1つまたは全てに使用するための好ましいエダクター26′は、Hamilton Business Park, Dover, New Jersey07801 USA所在のFox Valve Development社から製造販売されているフォックスミニエダクターである。
【0059】
図5aを参照すると、イオン化セル110aはエダクター26′の駆動源接続部である入口27に連通された高圧ガス入口を有する。この構成では、エダクターノズル31を通って流れる高速ガス3によって膨張チャンバ32内に比較的高い真空が形成される。エダクター26の吸引接続部28はコロナ副生成物(粒子)トラップまたはフィルター16に連通しており、該コロナ副生成物(粒子)トラップまたはフィルターはシェル組立体4eの排出ポート14に連通したいる。こうして、シェル組立体4e内に入るガスフロー3aは汚染物質ガスフロー3bとなる。次いで、これはフィルター16により浄化され、その後接続部28を介して主ガス流3内に再循環される。同じく図示すように、エダクター放出接続部29は貫通流路2と直列に配置されている。このシステムの1つの利点は、全ての流入ガスがエダクター26′内を通過して効率良く真空を作り出すという点にある。その上、ガスの流速は、シェル組立体4eの外側で、かつ貫通流路2の内側で最大となる。その結果、イオン出力と副生成物除去の両方が最適となる。
【0060】
図5bは、エダクター出口29(排気コネクタ)との関係におけるシェル組立体の別の配向を示している。図示すように、この実施形態では、シェル組立体4eのオリフィス7はエダクター出口29の下流側に配置され、イオン化エミッター5が主ガス流3に対抗する方向に配向されている。その結果、主ガス流の一部分3aはエミッターシェル組立体4e内に強制的に流入させられ、そのガス流3aによってコロナ副生成物がシェル組立体4eから逃がれ得る可能性が低減する。その結果、相異なる2つの力(流入する空気力学的ガスフローと真空フロー)が、シェル組立体4e内の汚染物質粒子と他のコロナ副生成物を排出ポート14内へ、そして最終的にはフィルター16へと駆動する。
【0061】
図5cは、エダクター駆動源接続部27がシェル組立体4eおよび基準電極6の下流側に配置された更に別の好ましいイオナイザーの実施形態を示している。当業者であれば、この実施形態では、エミッターシェル組立体4e内部のガス速度が可及的に高くなり、イオン出力が高くなることは理解されよう。
【0062】
図5dは、図5cのエダクター位置と図5bのシェル組立体配向を組合せた更に別の代替的配置を示している。図5c、5dの実施形態では、イオンはエダクター26″を通って走行しなければならない。この理由から、エダクター26″の大部分または全部が、好ましくは絶縁性および/またはコロナ抵抗性の高い材料で製造され、中和標的に対する平衡双極イオンフローを保証している。然しながら、図5a、5bの実施形態では、エダクター26′は、イオン化シェル4eの下流側に配置されており、導電性材料(例えばステンレス鋼)、半導体材料(例えばケイ素)或いは非導電性材料(例えばプラスチックまたはセラミクス)で形成することができる。
【0063】
図6は、図5aに関して既述した直列形イオン化セルに類似した直列形イオン化セルの物理的構造の斜視図である。この実施形態では、非イオン化ガス流3はエダクター26′の入口27に供給され、エダクター吸引接続部28がフィルター16に連通している。本発明のこの実施形態で使用するための好ましいエダクターは、Hamilton Business Park, Dover, New Jersey 07801 USA所在のFox Valve Development社から製造販売されているフォックスミニエダクター(Fox Mini-Eductor)である。その基本的な周知の機能性を変更することなく、本発明の他の好ましい実施形態の何れかに適合させてフォックスミニエダクターを修正することができよう。好ましくは、エダクター放出接続部29を主貫通流路2に連通させ、エミッターシェル4の排出ポート14を(可撓性管類34を介して)T字管35およびフィルター16に連通させることができよう。また、可撓性管類によってT字管35を圧力センサー33に接続することができ、エミッターシェル4はプラグ23に取付けられる。センサー33は、好ましくはTempe, AZ 85284 USA所在ののFreescale Semiconductor社により製造された内蔵型圧力センサー型番MPXV6115VC6Uである。図6に示すように、ポリカーボネート、テフロン(Teflon)(登録商標)、セラミクスその他この技術分野において公知の電気絶縁材料から成る単一ブロックB(内部を見易くするために輪郭を破線で示す)にフライス加工、ドリル加工その他の方法によって、1または複数の様々な流路、ポート、通路、ボア等を穿設することができよう。或いは、ブロックBを型によって成形したり、或いは、この技術分野において公知の他の手段によってブロックBを形成することができよう。
【0064】
ここで図7を参照すると、この略図は、閉ループ制御システムを用いる本発明の更に別の好ましい態様を示している。この実施形態では、少なくとも1つの真空センサー33が排出ポート14を介してエミッターシェル4の内側の低圧(真空)レベルを監視している。センサー33の出力端は、高圧電源9のマイクロプロセッサーベースのコントローラー36と通信可能に接続することができよう。好ましいマイクロコントローラーは、San Jose, CA95131 USA所在のAtmel Corporation社により製造されたATMEGA8である。
【0065】
動作中、マイクロプロセッサーベースのコントローラー36は、(コロナ電流を示す)基準電極からのフィードバック信号、圧力センサー33からの信号および他の信号(例えばガスフロー情報、状態入力など)を用いて、電源9によりイオン化電極5に印加されるイオン化電位を制御する。更に、シェル4内部の圧力レベルが、1または複数の望ましい所定条件以外のものである場合、制御システム36は、高圧電源9の中断といったような何らかの行動をとってイオン(および汚染物質)の発生を停止するようにできる。或いは、コントローラー36は、また、イオナイザーを設置した製造用手段(図示せず)の制御システムに警報信号も送信するようにしてもよい。或いは、コントローラー36は、ディスプレー37上の視覚的(および/または音声)警報信号をオンに切換えるようにしてもよい。こうして、該実施形態では、標的中和表面または物体をコロナにより発生する副生成物による汚染から自動的に保護し、1または複数のイオンエミッターを早期のエロージョンから保護する。
【0066】
最も実用的で好ましい実施形態であると現在みなされているものに関連して本発明を説明したが、本発明は開示された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる様々な修正および等価の構成を包含するように意図されたものであることを理解すべきである。例えば、上述の説明に関して、サイズ、材料、形状、機能および作動方法、組立ておよび使用を含めた本発明の部品についての最適な寸法的関係が当業者にとっては容易に明らかなものであるとみなされること、そして図面中で例示され明細書中に記述されている関係と等価の全ての関係が、添付の特許請求の範囲により包含されるよう意図されることを認識すべきである。従って、以上のことは、本発明の原理の網羅的でない例示的記述であるとみなされる。
【0067】
明細書および特許請求の範囲で使用される成分の数量、反応条件などに言及する数字または表現は全て、全てのケースにおいて「約」という用語により修飾されているものとして理解されるべきである。従って以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記される数値パラメータは、本発明が得ることを望んでいる所望の特性に応じて変動し得る近似である。
【0068】
また、本明細書中で列挙されているあらゆる数値範囲は、本明細書中に包含されている全ての部分的範囲を含むように意図されていると理解すべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、1という列挙された最小値と10という列挙された最大値を含めたこれらの値の間の、すなわち1以上の最小値と10以下の最大値を有する全ての部分的範囲を含むように意図されている。開示された数値範囲は連続的なものであることから、これらは、最小値と最大値の間の全ての値を含む。明示的に別段の指示がないかぎり、本出願中に規定されている様々な数値範囲は近似である。
【0069】
本発明のいくつかの好ましい実施形態についての本明細書中の論述は、様々な数値および範囲を含んでいた。とはいえ、規定された値および範囲は、詳述された実施形態に特定的に適用されるものであること、そして要約および特許請求の範囲中で表明されたより広い本発明の概念が、他の利用分野/環境/情況にとって適切であるように拡大縮小可能なものであり得ることが認識されるものである。従って、本明細書中に規定されている値および範囲は、本発明の原理の網羅的でない例示的な記述であるとみなされなくてはならない。
【0070】
以下の記述において、「上部」、「下部」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「上面」、「底面」およびその派生語は、図面の図において配向されている通りに本発明に関係するものとする。ただし、本発明は、別段の明示的規定がある場合を除き、様々な代替的な変形形態およびステップシーケンスを仮定してよいものであることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0071】
2 貫通流路
3 ガス流
4 エミッターシェル
5 エミッター
6 基準電極
7 出口オリフィス
8 ソケット
9 高圧電源
10 イオン
11 イオン
12 プラズマ領域
13 出口ノズル
14 排出ポート
15 汚染物質副生成物
16 フィルターまたはトラップ
17 調整可能なバルブ
18 真空ライン
19 出口
20 アパーチャ
21 バネ式ポゴピン
22 中間導電性要素
23 プラグ
24 入力取付け具
25 T字管
26 エダクター
27 駆動ポート(入口)
28 エダクター吸引接続部
29 エダクター放出接続部
31 エダクターノズル
32 膨張チャンバ
33 圧力センサー
34 可撓性管類
35 T字管
36 コントローラー
37 ディスプレー
100 イオン化セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナ放電により発生したイオンを放電により発生した汚染物質副生成物から分離するための装置において、
圧力を有し下流側方向に流れる非イオン化ガス流を確立するための手段と、
イオンと汚染物質副生成物とを含むプラズマ領域を確立するための手段であって、このプラズマ領域における圧力は、汚染物質副生成物の実質的に全てが非イオン化ガス流内に移動するのを防止するのに充分な程度にプラズマ領域近傍の非イオン化ガス流の圧力よりも低いものである手段と、
イオンの少なくとも実質的な部分の非イオン化ガス流内への移動を誘発するのに充分な非イオン化電界をプラズマ領域内で重畳するための手段とを含む装置。
【請求項2】
プラズマ領域を確立するための手段が、電離用高周波電界を適用してプラズマ領域内で汚染物質副生成物の少なくとも実質的部分を同伴させるための手段を更に含む請求項1に記載のガスイオン化装置。
【請求項3】
プラズマ領域における圧力は、汚染物質副生成物の実質的に全てが非イオン化ガス流内に移動するのを防止するのに充分な程度に非イオン化ガス流の圧力よりも低く、イオンの少なくとも実質的な部分が非イオン化ガス流内に移動するのを妨げるには不十分な程度にしか低くなく、
非イオン化ガス流のガスが電気陽性ガスであり、
確立するための手段が更に、電子、陽イオンおよび陰イオンならびに汚染物質副生成物を含むプラズマ領域を確立するための手段を含む請求項1に記載のガスイオン化装置。
【請求項4】
プラズマ領域を確立するための手段が、
下流側方向に面し非イオン化ガス流に連通する少なくとも1つのオリフィスを有するシェルであって、シェル内部およびオリフィス近傍においてシェルの外部およびオリフィス近傍の非イオン化ガス流の圧力よりも低いガス圧を提示する少なくとも1つの排出ポートを有するシェルと、
高周波イオン化電位の適用に応答して陽および陰イオンと汚染物質副生成物を含む一般に球形のプラズマ領域を生成するための鋭利な先端を備えた少なくとも1つのイオン化電極であって、この先端がシェルの内部に配置され、実質的にプラズマ領域の直径以上である距離だけシェルオリフィスから陥凹しているイオン化電極とを含む請求項1に記載のガスイオン化装置。
【請求項5】
非イオン化電極を重畳するための手段が、シェルオリフィスの上流側に配置された基準電極であり、非イオン化ガスが電気陽性ガスであり、プラズマ領域が更に電子を含む請求項4に記載のガスイオン化装置。
【請求項6】
電荷中和標的に向かって下流側方向に流れる清浄なイオン化ガス流へと非イオン化ガス流を転換するためのガスイオン化装置において、
圧力を有し下流側方向に流れる非イオン化ガス流を確立するための手段と、
イオンおよび汚染物質副生成物を含むプラズマ領域を確立するための手段と、
汚染物質副生成物の少なくとも実質的な部分が非イオン化ガス流内に移動するのを防止するのに充分でありかつイオンの少なくとも実質的な部分が非イオン化ガス流内に移動するのを妨げるのには不充分である圧力差をプラズマ領域に対して適用するための手段と、
非イオン化ガス流内へのイオンの少なくとも実質的な部分の移動を誘発するのに充分でありかつ、非イオン化ガス流内への汚染物質副生成物の少なくとも実質的な部分の移動を誘発するのには不充分である非イオン化電界をプラズマ領域内で重畳して、電荷中和標的に向かって下流側方向に流れる清浄なイオン化ガス流を精製するための手段とを含む装置。
【請求項7】
圧力差を適用するための手段が、汚染物質副生成物の実質的に全てが非イオン化ガス流内に移動するのを防止するのに充分でありかつイオンの少なくとも実質的な部分が非イオン化ガス流内に移動するのを妨げるのには不充分である圧力差をプラズマ領域に適用するための手段を含み、
非イオン化電界を重畳するための手段が、イオンの少なくとも実質的な部分の非イオン化ガス流内への移動を誘発するのに充分でありかつ実質的にあらゆる汚染物質副生成物の非イオン化ガス流内への移動を誘発するには不充分である非イオン化電界をプラズマ領域内で重畳して、清浄な非イオン化ガス流を生成するための手段を含む請求項6に記載のガスイオン化装置。
【請求項8】
圧力差を適用するための手段は、汚染物質副生成物の実質的に全てが非イオン化ガス流内に移動するのを防止するのに充分な程度にかつイオンの少なくとも実質的部分が電界の影響下で非イオン化ガス流内に移動するのを妨げるのは不充分な程度に、プラズマ領域での圧力を減少させるための手段を含む請求項6に記載のガスイオン化装置。
【請求項9】
プラズマ領域を確立するための手段が、陽イオンおよび陰イオンならびに汚染物質副生成物を含む非イオン化ガス流内部の保護されたプラズマ領域を確立するための手段を含む請求項6に記載のガスイオン化装置。
【請求項10】
電荷中和標的に清浄なイオン化ガス流を送出するためのガスイオン化装置において、コロナ放電を誘発するのに充分な圧力およびイオン化電位を有する少なくとも1つの非イオン化ガス流を受けとり、
非イオン化ガス流を受けとり清浄なイオン化ガス流を標的に送出するための少なくとも1つの貫通流路と、
非イオン化ガス流の一部分がシェル内に進入し得るように貫通流路に連通するオリフィスを有するシェルと、
シェル外部およびオリフィス近傍での非イオン化ガス流の圧力よりも低いガス圧をシェル内部およびオリフィス近傍でおいて提示する少なくとも1つの排出ポートと、
イオン化電位の適用に応答してイオンおよび副生成物を生成するための少なくとも1つのイオン化電極であって、生成されたイオンの少なくとも実質的部分が非イオン化ガス流内に移動して清浄なイオン化ガス流を形成できるような形および排出ポートガス圧によって非イオン化ガス流の一部分のシェルオリフィス内への流入を誘発して副生成物の少なくとも実質的部分を排出ポート内に運び去ることになるような形でシェル内部に配置されているイオン化電極とを含む少なくとも1つのシェル組立体とを含むガスイオン化装置。
【請求項11】
シェルオリフィス内を通り非イオン化ガス流内へのイオンの実質的部分の移動を誘発する非イオン化電界を重畳して、清浄なイオン化ガス流を形成するための少なくとも1つの非イオン化電極を更に含む請求項10に記載のガスイオン化装置。
【請求項12】
イオン化電極は、シェルオリフィスに面した鋭利な先端を備えたテーパーのついたピンを含み、この先端は、イオン化電位がピンに加えられた時点でイオンと副生成物を含む全体に球形のプラズマ領域を生成し、かつ
排出ポートは導電性中空ソケットを含み、このソケット内部に、排出ポートを通してピンに対しイオン化電位を加えることができるような形でテーパーピンが収容されている請求項10に記載のガスイオン化装置。
【請求項13】
貫通流路が少なくとも部分的に、導電性材料で形成されており、非イオン化電位の適用に応答して電界を重畳するための手段を含む請求項10に記載のガスイオン化装置。
【請求項14】
イオン化電位は、プラズマ領域を実質的に電気的にバランスしかつ副生成物を実質的に中和しているイオン化電極のコロナ閾値に少なくとも等しい高周波電位である請求項10に記載のガスイオン化装置。
【請求項15】
副生成物の少なくとも実質的部分が、排出ポートを通して排出されオゾンおよび窒素酸化物からなる群から選択されたガスである請求項10に記載のガスイオン化装置。
【請求項16】
シェルの上流側にある少なくとも1つのエダクターを更に含み、このエダクターが非イオン化ガス流を受け取るための駆動源接続部および非イオン化ガス流を下流側で貫通流路に移行させるための排気接続部を有する請求項10に記載のガスイオン化装置。
【請求項17】
エダクターが少なくとも部分的に、貫通流路と連通状態にあり、エダクターの排気接続部がシェルオリフィスに面しており、
非イオン化電位の適用に応答して電界を重畳するための非イオン化電極を更に含み、この電極は、貫通流路の外側でシェルオリフィスの上流側に配置されている請求項16に記載のガスイオン化装置。
【請求項18】
エダクターが少なくとも部分的に、貫通流路と連通状態にあり、シェルオリフィスはエダクターの排気接続部に面している請求項16に記載のガスイオン化装置。
【請求項19】
イオン化電位は、イオン化電極に陽イオンおよび陰イオンの両方を生成させるイオン化電極のコロナ閾値に少なくとも等しい高周波電位であり、
エダクターが更に、排出ポートに連通する吸引接続部を含み、こうしてオリフィス近傍における非イオン化ガス流の圧力よりも低いガス圧をオリフィス近傍で提示しており、
排出ポートとエダクターの吸引接続部に連通する副生成物トラップを更に含んでいる請求項16に記載のガスイオン化装置。
【請求項20】
イオン化電極が、イオンのコロナ放電中に全体に球形のプラズマ領域を生成する鋭利な先端を備えたテーパーのついたエミッターピンを含んでおり、この先端はシェルオリフィスに面しかつ実質的にプラズマ領域の直径以上の距離だけシェルオリフィスから陥凹しており、
シェルオリフィスは全体に円形で、直径を有しており、
シェルオリフィス直径と陥凹距離の比が約0.5〜約2.0の間である請求項10に記載のガスイオン化装置。
【請求項21】
貫通流路が、取外し可能なプラグを更に含み、取外し可能なプラグを介して貫通流路内にエミッターシェル組立体が設置されている請求項10に記載のガスイオン化装置。
【請求項22】
イオン化電極が、金属導体、非金属導体、半導体、単結晶シリコンおよびポリシリコンからなる群から選択された材料で作られており、
排出ポートが低圧力供給源に連結されており、毎分1〜15リットルの範囲内でシェル内にガス流を提供して、副生成物の少なくとも実質的部分を排出する請求項10に記載のガスイオン化装置。
【請求項23】
イオン化電極が少なくとも1本のワイヤを含み、
非イオン化ガス流を受けとり清浄なイオン化ガス流を標的に送出するための第2の貫通流路を更に含んでいる請求項10に記載のガスイオン化装置。
【請求項24】
非イオン化ガスが電気陽性ガスであり、
イオン化電位が高周波イオン化電位であり、
イオン化電極が、電子、陽イオンおよび陰イオンならびに副生成物を含むプラズマ領域を生成する請求項1に記載のガスイオン化装置。
【請求項25】
下流側方向に流れる非イオン化ガス流を、電荷中和標的に向かって下流側方向に流れる清浄なイオン化ガス流へと転換する方法において、
イオンと汚染物質副生成物とを含むプラズマ領域を確立するステップと、
副生成物の少なくとも実質的部分が非イオン化ガス流内に移動するのを妨げながら、プラズマ領域から非イオン化ガス流内へのイオンの少なくとも実質的部分の移動を誘発して、下流側で電荷中和標的に向かって流れる清浄なイオン化ガス流を生成するステップとを含む方法。
【請求項26】
誘発ステップには、イオンの実質的部分の非イオン化ガス流内への移動を誘発するのに充分でありかつ実質的にあらゆる副生成物の非イオン化ガス流内への移動を誘発するには不充分である非イオン化電界をプラズマ領域内で重畳するステップが更に含まれている請求項25に記載の方法。
【請求項27】
誘発ステップには、イオンの実質的部分を非イオン化ガス流から遠くへ排出することなく、副生成物の実質的部分を非イオン化ガス流から遠くへプラズマ領域外に排出するステップが更に含まれている請求項25に記載の方法。
【請求項28】
誘発ステップには、イオンの実質的部分が非イオン化ガス流内に移動するのを妨げることなく、副生成物の実質的部分をプラズマ領域外に排出しトラップするステップが更に含まれる請求項27に記載の方法。
【請求項29】
排出された副生成物をトラップするステップを更に含む請求項28に記載の方法。
【請求項30】
確立ステップには、非イオン化ガスがプラズマ領域内部で下流側方向に実質的に全く流れないような形で非イオン化ガス流内部に保護されたプラズマ領域を確立するステップが更に含まれる請求項25に記載の方法。
【請求項31】
確立ステップには、プラズマ領域内に高周波イオン化電界を確立してプラズマ領域内に汚染物質副生成物を同伴するステップが更に含まれている請求項25に記載の方法。
【請求項32】
確立ステップには、プラズマ領域内に高周波イオン化電界を確立するステップが更に含まれ、こうしてプラズマ領域が実質的に電気的にバランスされ、汚染物質副生成物が実質的に中和される請求項25に記載の方法。
【請求項33】
非イオン化ガスが電気陽性ガスであり、確立ステップには更に、電子と陽イオンおよび陰イオンと副生成物とを含むプラズマ領域を確立するステップが含まれている請求項25に記載の方法。
【請求項34】
コロナにより発生したイオンからコロナにより発生した汚染物質副生成物を分離する方法において、
圧力を有し下流側方向に流れる非イオン化ガス流を確立するステップと、
イオン化電界を適用してイオンと汚染物質副生成物とを含むプラズマ領域を確立するステップであって、このプラズマ領域は汚染物質副生成物の少なくとも実質的部分が非イオン化ガス流内に移動するのを防止するのに充分な程度にプラズマ領域近傍の非イオン化ガス流の圧力よりも低い圧力を有しているステップと、
イオンの少なくとも実質的な部分の非イオン化ガス流内への移動を誘発するのに充分な非イオン化電解をプラズマ領域内で重畳するためのステップとを含む方法。
【請求項35】
プラズマ領域における圧力は、汚染物質副生成物の実質的に全てが非イオン化ガス流内に移動するのを防止するのに充分な程度にプラズマ領域近傍の非イオン化ガス流の圧力よりも低い請求項34に記載の方法。
【請求項36】
汚染物質副生成物の実質的に全てをプラズマ領域外に排出させるステップと、排出された汚染物質副生成物の実質的に全てをトラップするステップとを更に含む請求項34に記載の方法。
【請求項37】
イオン化電界を適用するステップには、プラズマ領域内に高周波イオン化電界を適用してプラズマ領域内に汚染物質副生成物を同伴するステップが更に含まれる請求項34に記載の方法。
【請求項38】
ガスが電気陽性ガスであり、イオン化電界の適用段階には更に、プラズマ領域内部に下流側方向で実質的に全く非イオン化ガス流が流れないような形で非イオン化ガス流内部に保護されたプラズマ領域を確立するステップが含まれており、プラズマ領域が電子、陽イオンおよび陰イオンならびに汚染物質副生成物を含む請求項34に記載の方法。
【請求項39】
イオンの実質的部分を非イオン化ガス流から遠くへ排出することなく汚染物質副生成物の実質的部分を非イオン化ガス流から遠くへプラズマ領域外に排出するステップを更に含む請求項34に記載の方法。
【請求項40】
排出された汚染物質副生成物をトラップするステップを更に含む請求項39に記載の方法。
【請求項41】
非イオン化ガスが電気陽性ガスであり、イオン化電界を適用するステップには更に電子、陽イオンおよび陰イオンならびに汚染物質副生成物を含むプラズマ領域を確立するステップが含まれる請求項34に記載の方法。
【請求項42】
圧力を有する非イオン化ガス流で使用するためのガスイオン化装置において、電荷中和標的に向かって流れる清浄なイオン化ガス流を生成する装置であって、
イオンと汚染物質副生成物とを含むプラズマ領域を確立するための手段と、
汚染物質副生成物の少なくとも実質的部分が非イオン化ガス流内に移動するのを妨げながら、イオンの少なくとも実質的部分のプラズマ領域から非イオン化ガス流内への移動を誘発して、中和標的に向かって流れる清浄なイオン化ガス流を生成するための手段とを含むガスイオン化装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−524976(P2012−524976A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507219(P2012−507219)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/001215
【国際公開番号】WO2010/123579
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511254745)イオン システムズ,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】