説明

静電荷現像用トナー、並びに、これを用いた静電荷現像用現像剤、静電荷現像用現像剤カートリッジ、及び画像形成装置

【課題】読み取り性が良く、かつ読み取り性が経時的に劣化しにくい赤外線吸収画像の形成を可能にする、静電荷現像用トナー、並びに、これを用いた静電荷現像用現像剤、静電荷現像用現像剤カートリッジ、及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】少なくとも結着樹脂と赤外線吸収剤とを含み、前記赤外線吸収剤の少なくとも1種は、波長750nm以上1100nm以下の範囲に極大吸収を有し、かつ前記極大吸収の半値全幅が100nm以下であり、下記式(1)で示される体積平均粒度分布指標GSDが1.25以下であることを特徴とする静電荷現像用トナー。
式(1):GSD=(D84v/D16v1/2
[式(1)中、D84vはトナー粒径体積分布小径側から累積が84%となる粒径値であり、D16vはトナー粒径体積分布小径側から累積が16%となる粒径値である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真プロセスもしくは静電プロセスを利用した電子写真装置に利用し得る静電荷現像用トナー、並びに、これを用いた静電荷現像用現像剤、静電荷現像用現像剤カートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティー強化や電子環境との融合などの目的で、紙上に不可視情報を埋め込む技術が注目されている。不可視情報として具体的には、例えば個人情報等の何らかの特定の情報を有する情報パターンや、検知マークのような非情報パターンなどが挙げられ、情報パターンとしては、例えばコードパターンを挙げることができる。コードパターンとしては、バーコードを例示でき、バーコードは1次元のバーコード以外に2次元コード等がある。また、検知マークは、光学的検知方法を用いた複写機にて画像を形成する際に、光学的に検知されない透明シートの紙送りタイミング等の設定のために設けられるマークである(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
これらの不可視情報の形成には、赤外線吸収剤を含むトナーが好んで用いられる(例えば、特許文献5〜20)。さらに、複写機などのオンデマンドに印刷可能な機械を使用して赤外線吸収パターンを形成することにより、個々の文書にID番号や座標を印刷することなども可能となる。
【0004】
またこれらの不可視情報を読み取るためには、一般的に赤外線吸収パターン検出装置等を用いることとなる。赤外線吸収パターン検出装置における光源としては、従来から知られている赤外LED(発光ダイオード)や赤外レーザー等の赤外線光源をそのまま用いることが可能である。また、赤外線吸収パターンの検出器としては、例えば、CCDセンサーを用いて行うこともできる。
【特許文献1】特開昭58−106550号公報
【特許文献2】特開昭58−105157号公報
【特許文献3】特開昭59−7367号公報
【特許文献4】特開平3−99878号公報
【特許文献5】特開平6−210987号公報
【特許文献6】特開2000−207512公報
【特許文献7】特開2000−221637公報
【特許文献8】特開2000−227950公報
【特許文献9】特開2001−10266公報
【特許文献10】特開2001−10267公報
【特許文献11】特開2001−294785公報
【特許文献12】特開2002−132103公報
【特許文献13】特開2002−146254公報
【特許文献14】特開2004−213253公報
【特許文献15】特開2004−213259公報
【特許文献16】特開2005−221891公報
【特許文献17】特開2005−221892公報
【特許文献18】特開2005−227370公報
【特許文献19】特開2005−233990公報
【特許文献20】特開2005−249968公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、不可視情報に代表される赤外線吸収画像の読み取りには、一般的に赤外線吸収パターン検出装置等が用いられるが、赤外線吸収パターン検出装置の感度には限界がある。よって、赤外線吸収パターン検出装置の光源として用いられている波長の赤外線を強く吸収し、読み取り性の良い赤外線吸収画像を形成することができるトナーが求められている。
【0006】
また、記録媒体上に形成した直後における赤外線吸収画像の読み取り性が良い場合においても、経時的に画像の読み取り性が劣化することが問題となっていた。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の諸問題に鑑み、読み取り性が良く、かつ読み取り性が経時的に劣化しにくい赤外線吸収画像の形成を可能にする、静電荷現像用トナー、並びに、これを用いた静電荷現像用現像剤、静電荷現像用現像剤カートリッジ、及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明は、
<1> 少なくとも結着樹脂と赤外線吸収剤とを含み、前記赤外線吸収剤の少なくとも1種は、波長750nm以上1100nm以下の範囲に極大吸収を有し、かつ前記極大吸収の半値全幅が100nm以下であり、下記式(1)で示される体積平均粒度分布指標GSDが1.25以下であることを特徴とする静電荷現像用トナー。
式(1):GSD=(D84v/D16v1/2
[式(1)中、D84vはトナー粒径体積分布小径側から累積が84%となる粒径値であり、D16vはトナー粒径体積分布小径側から累積が16%となる粒径値である。]
【0009】
<2> 前記極大吸収は、波長800nm以上1000nm以下の範囲である、<1>に記載の静電荷現像用トナー。
【0010】
<3> <1>又は<2>に記載の静電荷現像用トナーを含むことを特徴とする静電荷現像用現像剤。
【0011】
<4> 画像形成装置に脱着可能であり、少なくとも、前記画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための現像剤を収納し、前記現像剤は、<3>に記載の静電荷現像用現像剤であることを特徴とする静電荷現像用現像剤カートリッジ。
【0012】
<5> 少なくとも、静電潜像保持体と、前記静電潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、前記静電潜像保持体表面上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着手段とを備え、前記現像剤が<3>に記載の静電荷現像用現像剤であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、読み取り性が良く、かつ読み取り性が経時的に劣化しにくい赤外線吸収画像の形成を可能にする、静電荷現像用トナー、並びに、これを用いた静電荷現像用現像剤、静電荷現像用現像剤カートリッジ、及び画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
[1]静電荷現像用トナー
本発明の静電荷現像用トナー(以下、トナーと略す場合がある)は、少なくとも結着樹脂と赤外線吸収剤とを含有し、必要に応じてその他に、離型剤などの添加剤を含むことができる。
なお、本発明のトナーは、不可視トナーに利用することができる。ここで「不可視」とは、目視で認識されにくいことをいう。
【0016】
本発明のトナーに含まれる赤外線吸収剤の少なくとも1種は、波長750nm以上1100nm以下の範囲に極大吸収を有している。
【0017】
赤外線吸収剤の吸収極大波長が750nmより短いと、可視印刷における色彩に影響を与える。また一般的に用いられる赤外線検出器(例えばSiフォトダイオードなど)は、1100nmよりも長波長の領域における感度が悪い。よって、吸収極大波長が1100nmより長い赤外線吸収剤を含むトナーを用いて画像を形成すると、読み取り性が悪くなる。
【0018】
また赤外線吸収剤の吸収極大波長は、800nm以上1000nm以下の範囲にあることが好ましい。赤外線吸収パターン検出装置等に用いられる一般的な発光ダイオードの発信波長域が800nm〜1000nm付近であるため、赤外線吸収剤の吸収極大波長が800nmより小さいか、または1000nmより大きいと、赤外線吸収パターン検出装置を用いた場合における赤外線吸収画像の読み取り性が悪くなる可能性がある。さらに赤外線吸収剤の吸収極大波長は、820nm以上950nm以下の範囲にあることがより好ましく、最も好ましい吸収最大波長は、850nm付近である。850nm付近の赤外線を用いた赤外線吸収パターン検出装置が最も入手しやすいからである。
【0019】
また赤外線吸収剤の、波長750nm〜1100nmにおける極大吸収の半値全幅は、100nm以下である。
赤外線吸収パターン検出装置に用いられる光源は、上記の通り、赤外LED(発光ダイオード)や赤外レーザー等の単色光源であることが多い。よって、極大吸収の半値全幅が100nmより大きいと、赤外線吸収パターン検出に用いる単色光の波長における吸収強度が相対的に小さくなり、結果として読み取り性が悪くなるからである。
極大吸収の半値全幅は、10nm以上90nm以下であることが好ましく、30nm以上80nm以下であることがより好ましい。
【0020】
さらにトナーは、下記式(1)で示される体積平均粒度分布指標GSDが、1.25以下であることを特徴とする。
式(1):GSD=(D84v/D16v1/2
ここで式(1)中、D84vはトナー粒径体積分布小径側から累積が84%となる粒径値であり、D16vはトナー粒径体積分布小径側から累積が16%となる粒径値である。
【0021】
トナーの体積平均粒度分布指標GSDが1.25より大きいと、読み取り性が劣化する。これは、次のように推測される。
トナーの体積平均粒度分布指標GSDが1.25より大きい場合、記録媒体上に赤外線吸収画像を形成した後、経時的な画像面積の広がりが生じ、当該赤外線吸収画像の単位面積あたりに含まれる赤外線吸収剤の量が少なくなる。このため、赤外線吸収画像の単位面積あたりの赤外線吸収強度が低下し、経時により読み取り性が劣化すると考えられる。
【0022】
またトナーの体積平均粒度分布指標GSDは、1.23以下が好ましく、1.21以下がより好ましい。
【0023】
以下、トナーの各組成成分について説明する。
【0024】
<赤外線吸収剤>
本発明のトナーに用いられる赤外線吸収剤の少なくとも1種は、上記のとおり、波長750nm以上1100nm以下の範囲に極大吸収を有し、その極大吸収の半値全幅は、100nm以下である。
【0025】
上記のような吸収スペクトルを持つ化合物としては例えば、下記構造式(1)で表されるn−ブトキシ置換ナフタロシアニン(以下、「HNPc−OnBu」と略す場合がある。)、下記一般式(2)におけるMがVOであるn−ブトキシ置換バナジルナフタロシアニン(以下、「VONPc−OnBu」と略す場合がある。)、下記一般式(2)におけるMがCuであるn−ブトキシ置換銅ナフタロシアニン(以下、「CuNPc−OnBu」と略す場合がある。)、下記一般式(2)におけるMがNiであるn−ブトキシ置換ニッケルナフタロシアニン(以下、「NiNPc−OnBu」と略す場合がある。)、下記構造式(3)で表されるフェニル置換バナジルナフタロシアニン(以下、「VONPc−Ph」と略す場合がある。)、下記構造式(4)で表されるi−ブトキシ・ニトロ置換銅ナフタロシアニン(以下、「CuNPc−OiBuNO」と略す場合がある。)、下記構造式(5)で表されるt−ブチル置換バナジルナフタロシアニン(以下、「VONPc−tBu」と略す場合がある。)、下記構造式(6)で表される化合物(以下、「ST173」という場合がある。)、下記構造式(7)で表される化合物(以下、「CR44(OH)」という場合がある。)などが挙げられる。
ここで、下記構造式(1)および下記一般式(2)における「OBu」は「n−ブトキシ基」を意味し、下記構造式(4)における「OBu」は「i−ブトキシ基」を意味する。
なお、赤外線吸収剤としては、これらに限られず、上記吸収スペクトルを持つ化合物であれば、いかなるものも用いることができる。
【0026】
【化1】

【0027】
【化2】

【0028】
【化3】

【0029】
【化4】

【0030】
【化5】

【0031】
【化6】

【0032】
【化7】

【0033】
赤外線吸収剤の極大吸収波長および極大吸収の半値全幅は、赤外線吸収剤を0.2重量%の濃度でドープしたポリスチレンアクリル膜(以下、「ドープ膜」と略す場合がある。)の吸収スペクトルから求める。
【0034】
吸収スペクトルは、例えば以下のようにして測定される。
まず赤外線吸収剤を0.5質量部、アクリル系重合樹脂(BR−83、三菱レイヨン社製)を99.5質量部混合して有機溶剤(例えばテトラヒドロフラン)に溶かすことにより、赤外線吸収剤分散塗布液を得る。
次に赤外線吸収剤分散塗布液を、ガラスプレート上に浸漬塗布することにより、厚み3μmのドープ膜を得る。
【0035】
上記のようにして得られたドープ膜の吸収スペクトルを、分光光度計(日立製作所社製:U−2000)を用いて測定する。
得られた吸収スペクトルが、波長750nm以上1100nm以下の領域に吸収極大を持つ場合において、波長750nm以上1100nm以下の領域における最大吸光度を持つ波長を「赤外線吸収剤の極大吸収波長」とし、最大吸光度の半分の値をとる2点間における波長の差を「赤外線吸収剤の極大吸収の半値全幅」とする。
【0036】
以上のような測定により得られた、HNPc−OnBu、VONPc−OnBu、ST173、及びCR44(OH)の吸収スペクトルを、それぞれ図1〜図4に示す。
また比較のため、上記の測定方法により得られた、下記構造式(8)で表される無置換バナジルナフタロシアニン(以下、「VONPc」と略す場合がある。)の吸収スペクトルを、図5に示す。
【0037】
【化8】

【0038】
図1〜4の吸収スペクトルより得られる、HNPc−OnBu、VONPc−OnBu、ST173、及びCR44(OH)の「極大吸収波長」及び「極大吸収の半値全幅」を表1に示す。
また、同様の方法を用いて得られる、CuNPc−OnBu、NiNPc−OnBu、VONPc−Ph、CuNPc−OiBuNO、及びVONPc−tBuの「極大吸収波長」及び「極大吸収の半値全幅」についても、併せて表1に示す。
さらに比較のため、VONPcの「極大吸収波長」及び「極大吸収の半値全幅」についても、併せて表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
赤外線吸収剤のトナーに対する含有量は、0.1質量%以上2質量%以下が好ましく、0.2質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上0.7質量%以下がさらに好ましい。なお最も好ましくは、0.5質量%前後である。含有量が0.2質量%未満では、本発明のトナーを用いて形成した赤外線吸収パターンを機械で読み取るのが難しくなる可能性がある。また含有量が1質量%以上の場合は、可視印刷における色彩に影響を与えるようになってしまう可能性がある。ただし、感度のより高い赤外線吸収パターン検出装置を用いることができる場合には、含有量が0.2質量%未満であっても好ましい場合がある。
【0041】
赤外線吸収剤の体積平均粒子径は0.8μm以下が好ましく、より好ましくは0.6μm以下、さらに好ましくは0.4μm以下である。赤外線を効率的に吸収するためには、より大きい表面積を有する必要があるためである。
また赤外線吸収剤の体積平均粒子径は、0.05μm以上が好ましい。赤外線吸収剤の体積平均粒子径が0.05μmより小さいと、赤外線の波長に対して粒径が小さくなりすぎるため、赤外線吸収剤のトナー中への含有量がばらついた場合に、赤外線吸収の感度が低下する場合があるためである。
【0042】
ここで、赤外線吸収剤の体積平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700:堀場製作所製)を用いて測定する。測定法としては分散液となっている状態の赤外線吸収剤を固形分で約2gになるように調整し、これにイオン交換水を添加して、40mlにする。これをセルに適当な濃度になるまで投入し、2分間待って、セル内の濃度がほぼ安定になったところで測定する。得られたチャンネルごとの体積平均粒子径を、体積平均子粒径の小さい方から累積し、累積50%になったところを体積平均子粒径とする。
【0043】
また本発明のトナーにおいては、上記赤外線吸収剤の他に、その他の赤外線吸収剤を併用することができる。その他の赤外線吸収剤としては、波長が800nm〜2000nmの範囲の近赤外領域に少なくとも1つ以上の強い光吸収ピークを有する材料で、有機物であっても無機物であっても使用可能である。具体例としては、公知の赤外線吸収剤を用いることができ、例えば、シアニン化合物、メロシアニン化合物、ベンゼンチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、芳香族ジアミン系金属錯体、ジイモニウム化合物、アミニウム化合物、ニッケル錯体化合物、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフタロシアニン系化合物等を含んだ赤外線吸収剤を用いることができる。
【0044】
<結着樹脂>
本発明のトナーには、公知の結着樹脂を使用することができる。
結着樹脂の主成分としては、ポリエステル、ポリオレフィンが好ましいが、スチレンとアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体、スチレンとアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとの共重合体、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂等などを単独又は併用することができる。耐久性や透光性等の点から、ポリエステル系樹脂又はノルボルネンポリオレフィン樹脂を使用することが好ましい。
【0045】
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、好ましくは50〜120℃であり、より好ましくは60〜110℃である。ガラス転移点が50℃より低いと、トナーの保存性や、定着後のトナー画像の保存性が問題となる場合がある。またガラス転移点が120℃より高いと、低温定着性が得られない場合がある。
【0046】
ここで結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計(島津製作所社製:DSC−50)を用いて昇温速度3℃/分の条件下で測定することによって求め、吸熱部におけるベースラインと立ち上がりラインとの延長線の交点の温度をガラス転移点とする。
【0047】
<その他の成分>
本発明のトナーには、目的に応じて適宜選択したその他の成分を添加剤として添加させてもよく、特に制限はない。
【0048】
具体的に例えば、本発明のトナーには、必要に応じて離型剤を添加させることができる。
離型剤としては、公知の離型剤であれば特に限定されない。具多的には例えば、エステルワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエチレンとポリプロピレンの共重合物が最も好ましく用いられ、その他には、ポリグリセリンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックス、脱酸カルナバワックス、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、ブランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類、ステアリンアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコール類などの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどの、不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。また、これらの離型剤は、1種単独で用いても良く、2種以上併用してもよい。
【0049】
離型剤の融点は、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。離型剤の融点が50℃より低いと、保存性が悪くなる可能性があり、またトナーのブロッキングが起こる可能性がある。また離型剤の融点は、耐オフセット性の観点から、110℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。
【0050】
ここで離型剤の融点は、示差走査熱量計(島津製作所社製:DSC−50)を用いて昇温速度3℃/分の条件下で測定することによって求め、吸熱ピークの頂点の温度を融点とする。
【0051】
離型剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、3〜20重量部の範囲内であることが好ましく、5〜18重量部の範囲内であることがより好ましい。
離型剤の含有量が結着樹脂100重量部に対して3重量部未満であると離型剤添加の効果がなく、高温でのホットオフセットを引き起こす場合がある。一方、結着樹脂100重量部に対して20重量部を超えると、帯電性に悪影響を及ぼす他、トナーの機械的強度が低下する為、現像機内でのストレスで破壊されやすくなり、キャリア汚染などを引き起こす場合がある。
【0052】
本発明のトナーは、着色剤を含むことができる。着色剤としては特に限定されず、染料・顔料等のいずれを用いてもよい。例えばカラートナーでは、キナクリドン(赤色)、フタロシアニン(青色等)、アンスラキノン(赤色)、ジスアゾ(赤色または黄色)、モノアゾ(赤色)、アニライド系化合物(黄色)、ベンジジン(黄色)、ベンズイミダゾロン(黄色)、ハロゲン化フタロシアニン(緑色)などが用いられる。黒色トナーでは、カーボンブラック、ニグロシン染料、フェライト、マグネタイトなどの黒色染顔料を広く用いることができる。
ただし、本発明のトナーを不可視トナーとして用いる場合には、着色剤を含まない形態が好ましい。
【0053】
本発明のトナーは、流動性向上剤等のためトナー粒子に白色の無機粒子を混合して用いることもできる。トナー粒子に混合される割合はトナー粒子100重量部に対し0.01重量部以上5重量部以下の範囲が好ましく、0.01重量部以上2.0重量部以下の範囲がより好ましい。このような無機微粉末としては例えば、シリカ微粉末、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化硅素、窒化硅素などが挙げられるが、発色性を損なわないという観点から、屈折率が結着樹脂よりも小さいシリカ微粉末が特に好ましい。また、シリカ、チタン、樹脂微粉、アルミナ等の公知の材料を併用できる。さらにクリーニング活性剤として、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子粉末を添加してもよい。
【0054】
また、シリカ粒子は種々の表面処理を施されてもよい。このような表面処理シリカ粒子としては、例えばシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理したものが好ましく用いられる。
【0055】
また本発明のトナーには、帯電制御剤を添加することができる。例えば、公知のカリックスアレン、ニグロシン系染料、四級アンモニウム塩、アミノ基含有のポリマー、含金属アゾ染料、サリチル酸の錯体化合物、フェノール化合物、アゾクロム系、アゾ亜鉛系などが使用できる。
【0056】
またトナーには、必要に応じて既知の外添剤を添加することができ、具体的には例えば、無機粒子や有機粒子等が考えられる。
【0057】
外添剤に用いる無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、塩化セリウム、ベンガラ、酸化クロム、酸化セリウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。中でも、シリカ粒子や酸化チタン粒子が好ましく、疎水化処理された粒子が特に好ましい。
【0058】
外添剤に用いる無機粒子は、一般に流動性を向上させる目的で使用される。無機粒子の1次粒子径(体積平均粒子径)としては、1nm〜200nmの範囲にあることが好ましく、その添加量としては、トナー粒子100重量部に対して、0.01〜20重量部の範囲にあることが好ましい。
【0059】
ここで、無機粒子の体積平均粒子径は、上記の赤外線吸収剤における体積平均粒子径の測定方法と同様の方法で測定することができる。
【0060】
有機粒子は、一般にクリーニング性や転写性を向上させる目的で使用され、具体的には例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0061】
<トナーの製造方法>
本発明のトナーは、凝集・合一法、懸濁重合法、溶解懸濁造粒法、溶解懸濁法、溶解乳化凝集合一法などの、酸性やアルカリ性の水系媒体中でトナー粒子を生成する湿式製法で製造されることが好適であるが、特に凝集合一法が好ましい。
【0062】
凝集・合一法においては、凝集系のイオンバランスが崩れるのを抑制し凝集速度の制御が容易となり、また、懸濁重合法においては、重合阻害の発生を抑制し特に粒子径の制御が容易となり、また、溶解懸濁造粒法や溶解乳化凝集合一法においては、造粒や乳化の際の粒子安定化を図ることが可能となる。
【0063】
凝集・合一法は、例えばポリエステル樹脂粒子を分散した樹脂粒子分散液、赤外線吸収剤粒子を分散した赤外線吸収剤粒子分散液、及び離型剤粒子を分散した離型剤粒子分散液を混合し、樹脂粒子、赤外線吸収剤粒子及び離型剤粒子の凝集粒子を形成する凝集工程を有し、さらに凝集系内のpHを調整して凝集成長を停止せしめる停止工程と、凝集粒子を樹脂粒子のガラス転移点以上の温度に加熱せしめ融合・合一する融合・合一工程とを有する製造方法である。また凝集・合一法は、必要に応じて凝集工程の後に、他の樹脂粒子を添加し凝集粒子の表面に付着せしめるシェル形成工程を有してもよい。
【0064】
具体的には、樹脂粒子をイオン性界面活性剤によって分散した樹脂粒子分散液を用い、これと反対極性イオン性界面活性剤で赤外線吸収剤粒子が分散された赤外線吸収剤粒子分散液などを混合し、ヘテロ凝集を生じせしめる。ついで必要に応じてこれに他の樹脂粒子の分散液を添加し、他の樹脂粒子を凝集粒子表面に付着・凝集させる。さらにその後、凝集成長を停止させることによりトナー径の凝集粒子を形成し、その後樹脂のガラス転移点以上に加熱することにより凝集体を融合・合一し、洗浄、乾燥する。
以下、上述した凝集・合一法の一例における各工程について詳細に説明する。
【0065】
(凝集工程)
凝集工程においては、まず、樹脂粒子分散液、赤外線吸収剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液とを準備する。
【0066】
樹脂粒子分散液は、公知の転相乳化方法を用いるか、或いは樹脂のガラス転移点以上に加熱して機械的せん断力によって乳化させる方法を用いる。この際、イオン性界面活性剤が添加されてもよい。
【0067】
赤外線吸収剤粒子分散液は、イオン性界面活性剤を用いて、赤外線吸収剤粒子を溶媒中に分散させることにより調整する。
【0068】
また、離型剤粒子分散液は、離型剤を、水中に高分子電解質(例えば、イオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基など)とともに分散し、離型剤の融点以上に加熱するとともに、強い剪断をかけられるホモジナイザーや圧力吐出型分散機により粒子化することにより調整する。
【0069】
次に、樹脂粒子分散液と赤外線吸収剤粒子分散液と離型剤粒子分散液とを混合し、樹脂粒子と着色微剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ所望のトナー径にほぼ近い径を持つ凝集粒子(コア凝集粒子)を形成する。
【0070】
(シェル形成工程)
シェル形成工程においては、コア凝集粒子の表面に、樹脂粒子を含む樹脂粒子分散液を用いて樹脂粒子を付着させ、所望の厚みの被覆層(シェル層)を形成することにより、コア凝集粒子表面にシェル層が形成されたコア/シェル構造を持つ凝集粒子(コア/シェル凝集粒子)を得る。
【0071】
なお、凝集工程、シェル形成工程は、段階的に複数回に分けて繰り返し実施したものであってもよい。
【0072】
ここで、凝集工程およびシェル形成工程において用いられる、樹脂粒子、赤外線吸収剤粒子、離型剤粒子の体積平均粒径は、トナー径及び粒度分布を所望の値に調整するのを容易とするために、1μm以下であることが好ましく、100〜300nmの範囲内であることがより好ましい。
【0073】
これらの樹脂粒子、赤外線吸収剤粒子、離型剤粒子の体積平均粒径は、上記の赤外線吸収剤における体積平均粒子径の測定方法と同様の方法で測定することができる。
【0074】
(停止工程)
停止工程においては、凝集系内のpHを調整することにより、粒子の凝集成長を停止させる。
【0075】
(融合・合一工程)
融合・合一工程においては、凝集工程および必要に応じて行われたシェル形成工程を経て得られた凝集粒子を、溶液中にて、凝集粒子中に含まれる樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱し、融合・合一することによりトナーを得る。
ここで樹脂の種類が2種類以上の場合は、最も高いガラス転移温度を有する樹脂のガラス転移温度以上に加熱する。
【0076】
(その他の工程)
凝集・融合終了後、任意の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て所望のトナーを得る。洗浄工程は、帯電性の点から十分にイオン交換水による置換洗浄を施すことが好ましい。また、固液分離工程は特に制限はないが、生産性の点から、吸引濾過、加圧濾過等が好ましく用いられる。更に乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から、凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等が好ましく用いられる。
【0077】
(その他のプロセス)
また上記凝集・合一法は、一括で混合して凝集することによりなされることもできる。具体的には例えば、凝集工程の初期に各極性のイオン性分散剤量のバランスを予めずらしておく方法である。さらに具体的には例えば、少なくとも1種の金属塩の重合体を用いてこれをイオン的に中和し、ガラス転移点より低い温度にて第1段階の母体凝集を形成させ、母体凝集粒子を安定化させた後、第2段階としてバランスのずれを補填するような極性および量の分散剤で処理された第2段階添加用樹脂粒子分散液を添加し、さらに必要に応じ母体凝集粒子又は第2段階添加用樹脂粒子に含まれる樹脂のガラス転移点より低い温度でわずかに加熱して、温度を上げて安定化させたのち、さらにガラス転移点以上に加熱することにより第2段階添加用樹脂粒子を母体凝集粒子の表面に付着させたまま合一させる方法である。更にこの凝集の段階的操作は複数回、くり返し実施したものでもよい。
【0078】
金属塩の重合体は、4価のアルミニウム塩の重合体、又は4価のアルミニウム塩重合体と3価のアルミニウム塩重合体との混合物であることが好適であり、具体的には、硝酸カルシウム等の無機金属塩、もしくはポリ塩化アルミニウム等の無機金属塩の重合体が挙げられる。また、この金属塩の重合体は、粒子分散液全体に対しその濃度が0.11〜0.25重量%となるように添加することが好ましい。
【0079】
トナーに赤外線吸収剤を加えるにあたっては、前記のように赤外線吸収剤をトナーの内部に分散させて添加させる以外に、赤外線吸収剤をトナー粒子の表面に付着又は固着させることができる。
【0080】
<トナーの物性>
以上のようにして作製される本発明のトナーは、その体積平均粒子径(D50v)が3μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましく、4μm以上8μm以下の範囲内であることがより好ましい。また、その個数平均粒径(D50p)に対する体積平均粒子径(D50v)の比(D50v/D50p)が1.0〜1.25の範囲であることが好ましい。そして、このように小粒径で粒径の揃ったトナーを使用することにより、トナーの帯電性能のバラツキが抑制されて、形成される画像におけるカブリが低減されると共に、トナーの定着性を向上させることができる。また、形成される画像における細線再現性やドット再現性も向上させることができる。
【0081】
ここでトナーの体積平均粒子径(D50v)、個数平均粒径(D50p)、および体積平均粒度分布指標(GSD)の求め方は以下の通りである。
【0082】
分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液2ml中に、測定試料を0.5〜50mg加え、これを電解液100〜150ml中に添加する。電解液としては、ISOTON−II(ベックマン−コールター社製)を使用する。
次に、この測定試料を懸濁させた電解液を超音波分散器で約1分間分散処理を行い、測定装置としてコールターマルチサイザー−II型(ベックマン−コールター社製)を用い、アパーチャー径が100μmのアパーチャーを用いて、粒径が2.0〜60μmの範囲の粒子の粒度分布を測定する。測定する粒子数は50,000である。
【0083】
測定された粒度分布を、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積、数それぞれについて小径側から累積分布を描き、体積で累積50%となる粒径を体積平均粒子径(D50v)、数で累積50%となる粒径を個数平均粒子径(D50p)と定義する。
【0084】
また、同様に、体積で累積16%となる粒径を体積平均粒子径D16v、累積84%となる粒径を体積平均粒子径D84vと定義し、体積平均粒度分布指標(GSD)は(D84v/D16v1/2より算出される。
【0085】
トナー粒子の形状係数SF1は、110〜135の範囲であることが好ましい。
ここで上記トナー形状係数SF1は、スライドグラス上に散布したトナー粒子、又はトナーの光学顕微鏡像を、ビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個以上のトナーの最大長と投影面積を求め、下記式によって計算し、その平均値を求めることにより得られるものである。
式:SF1=(ML/A)×(π/4)×100
上記式中、MLはトナー粒子の絶対最大長、Aはトナー粒子の投影面積を各々示す。
【0086】
[2]静電荷現像用現像剤
本発明の静電荷現像用現像剤は、少なくとも本発明の静電荷現像用トナーを含み、必要に応じてキャリアを含むこともできる。以下、本発明の静電荷現像用現像剤(以下、現像剤と略す場合がある)について説明する。
【0087】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアを用いることができる。キャリアとしては例えば、芯材表面に被覆樹脂を被覆した樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリアを挙げることができる。またキャリアは、マトリックス樹脂に導電材料などが分散された樹脂分散型キャリアであってもよい。
【0088】
キャリアに使用される被覆樹脂・マトリックス樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂またはその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
導電材料としては、金属(例えば、金、銀、銅等)、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化スズ等を例示することができるが、これらに限定されるのもではない。
【0090】
また、キャリアの芯材としては、磁性酸化物(例えば、フェライト、マグネタイト等)、ガラスビーズ等が挙げられるが、キャリアを磁気ブラシ法に用いるためには、キャリアの芯材は磁性材料であることが好ましい。キャリアの芯材の体積平均粒子径としては、10〜500μmの範囲が好ましく、30〜100μmの範囲が好ましい。
【0091】
またキャリアの芯材の表面に樹脂被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適正等を勘案して適宜選択すればよい。
【0092】
具体的な樹脂被覆方法としては、(1)キャリアの芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、(2)被覆層形成用溶液をキャリアの芯材表面に噴霧するスプレー法、(3)キャリアの芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、(4)ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法が挙げられる。
【0093】
キャリアを含んだ現像剤における、トナーとキャリアの混合比(重量比)としては、トナー:キャリア=1:100〜30:100程度の範囲が好ましく、3:100〜20:100程度の範囲がより好ましい。
【0094】
[3]静電荷現像用現像剤用カートリッジおよび画像形成装置
次に、本発明の静電荷現像用現像剤用カートリッジ(以下、カートリッジと略す場合がある)について説明する。本発明のカートリッジは、画像形成装置に着脱可能であり、少なくとも、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための現像剤を収納し、現像剤が既述した本発明の現像剤であることを特徴とする。
【0095】
従って、カートリッジの着脱が可能な構成を有する画像形成装置において、本発明の現像剤を収納した本発明のカートリッジを利用することにより、読み取り性が良く、かつ読み取り性が経時的に劣化しにくい赤外線吸収画像を、記録媒体表面上に形成することができる。
【0096】
また本発明の画像形成装置は、静電潜像保持体と、静電潜像保持体表面上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に前記トナー像を定着する定着手段とを少なくとも備え、現像剤が既述した本発明の静電荷現像用現像剤であることを特徴とする。
【0097】
従って、本発明の現像剤を用いた本発明の画像形成装置を利用することにより、読み取り性が良く、かつ読み取り性が経時的に劣化しにくい赤外線吸収画像を記録媒体表面上に形成することができる。
【0098】
なお、本発明の画像形成装置は、上記のような静電潜像保持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段と、を少なくとも含むものであれば特に限定はされないが、その他の手段を含んでいてもよい。
【0099】
以下、本発明のカートリッジおよび画像形成装置について、図面を用いて具体的に説明する。
【0100】
図6は、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。図6に示す画像形成装置10は、静電潜像保持体12、帯電手段14、静電潜像形成手段16、現像手段18、転写手段20、クリーニング手段22、除電手段24、定着手段26、カートリッジ28を備える。
なお、現像手段18中およびカートリッジ28中に収納される現像剤は、本発明の現像剤である。
【0101】
また図6は、本発明の現像剤を収納された現像手段18およびカートリッジ28のみを図示しているが、これらに加えて、他の現像剤を収納した現像手段およびカートリッジも同時に備える構成をとることも可能である。
【0102】
図6示す画像形成装置は、カートリッジ28の着脱が可能な構成を有する画像形成装置であり、カートリッジ28は、現像剤供給管30を通して現像手段18に接続されている。よって画像形成を行う際は、カートリッジ28の中に収納されている本発明の現像剤が、現像剤供給菅30を通して現像手段18に供給されることにより、長期間にわたり、本発明の現像剤を用いた画像を形成することができる。また、カートリッジ28の中に収納されている現像剤が少なくなった場合には、このカートリッジ28を交換することができる。
【0103】
静電潜像保持体12の周囲には、静電潜像保持体12の回転方向(矢印A方向)に沿って順に、静電潜像保持体12表面を均一に帯電させる帯電手段14、画像情報に応じて静電潜像保持体12表面に静電潜像を形成させる静電潜像形成手段16、形成された静電潜像に本発明の現像剤を供給する現像手段18、静電潜像保持体12表面に当接し静電潜像保持体12の矢印A方向への回転に伴い矢印B方向に従動回転することができるドラム状の転写手段20、静電潜像保持体12表面に当接するクリーニング装置22、静電潜像保持体12表面を除電する除電手段24が配置されている。
【0104】
静電潜像保持体12と転写手段20との間は、矢印C方向と反対側から不図示の搬送手段により矢印C方向に搬送される記録媒体50が挿通可能である。静電潜像保持体12の矢印C方向側には加熱源(不図示)を内蔵した定着手段26が配置され、定着手段26には圧接部32が設けられている。また、静電潜像保持体12と転写手段20との間を通過した記録媒体50は、この圧接部32を矢印C方向へと挿通可能である。
【0105】
静電潜像保持体12としては、例えば感光体または誘電記録体等が使用できる。
感光体としては例えば、単層構造の感光体または多層構造の感光体等を用いることができる。また感光体の材質としては、セレンやアモルファスシリコン等の無機感光体や、有機感光体等が考えられる。
【0106】
帯電手段14としては、例えば、導電性または半導電性のローラー、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触帯電装置、コロナ放電を利用したコロトロン帯電やスコロトロン帯電などの非接触型の帯電装置等、公知の手段を使用することができる。
【0107】
潜像形成手段16としては、露光手段の他に、トナー像を記録媒体表面の所望の位置に形成しうるような信号を形成できるような、従来公知のいずれの手段を使うこともできる。
露光手段としては、例えば、半導体レーザー及び走査装置の組み合わせ、光学系からなるレーザー走査書き込み装置、あるいは、LEDヘッドなど、従来公知の露光手段を使用することができる。均一で、解像度の高い露光像を作るという好ましい態様を実現させるためには、レーザー走査書き込み装置またはLEDヘッドを使うことが好ましい。
【0108】
転写手段20としては、具体的には例えば、電圧を印加した導電性または半導電性のローラー、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を用いて、静電潜像保持体12と記録媒体50との間に電界を作り、帯電したトナーの粒子からなるトナー像を転写する手段や、コロナ放電を利用したコロトロン帯電器やスコロトロン帯電器などで記録媒体50の裏面をコロナ帯電して、帯電したトナーの粒子からなるトナー像を転写する手段など、従来公知の手段を使用することができる。
【0109】
また転写手段20として、二次転写手段を用いることもできる。すなわち、図示しないが二次転写手段は、トナー像を一旦中間転写体に転写した後、中間転写体から記録媒体50にトナー像を二次転写する手段である。
【0110】
クリーニング手段22としては例えば、クリーニングブレード、クリーニングブラシなどが挙げられる。
【0111】
除電手段24としては例えば、タングステンランプ、LEDなどが挙げられる。
【0112】
定着手段26としては、例えば加熱ロールと加圧ロールとからなるような加熱加圧によりトナー像を定着する熱定着器や、フラッシュランプ等による光照射によりトナー像を加熱して定着する光定着器などが利用できる。
【0113】
記録媒体50としては、特に制限はなく、普通紙や光沢紙等をはじめとする従来公知のものが利用できる。また記録媒体は、基材と基材上に形成された受像層を有するものを利用することもできる。
【0114】
次に、画像形成装置10を用いた画像形成について説明する。まず、静電潜像保持体12の矢印A方向への回転に伴い、帯電手段14により静電潜像保持体12表面を帯電し、帯電された静電潜像保持体12表面に静電潜像形成手段16により画像情報に応じた静電潜像を形成し、この静電潜像が形成された静電潜像保持体12表面に、静電潜像の色情報に応じて現像手段18から本発明の現像剤を供給することによりトナー像を形成する。
【0115】
次に、静電潜像保持体12表面に形成されたトナー像は、静電潜像保持体12の矢印A方向への回転に伴い、静電潜像保持体12と転写手段20との接触部に移動する。この際、接触部を、記録媒体50が、不図示の用紙搬送ロールにより矢印C方向に挿通され、静電潜像保持体12と転写手段20との間に印加された電圧により、静電潜像保持体12表面に形成されたトナー像が接触部にて記録媒体50表面に転写される。
【0116】
トナー像を転写手段20に転写した後の静電潜像保持体12の表面は、クリーニング手段22のクリーニングブレードによって残留しているトナーが除去され、除電手段24により除電される。
【0117】
このようにしてトナー像がその表面に転写された記録媒体50は、定着手段26の圧接部32に搬送され、圧接部32を通過する際に、内蔵された加熱源(不図示)によってその圧接部32の表面が加熱された定着手段26によって加熱される。この際、トナー像が記録媒体50表面に定着されることにより画像が形成される。
【実施例】
【0118】
以下、実施例を交えて本発明を詳細に説明するが、以下に示す実施例のみに本発明は限定されるものではない。
【0119】
[測定方法]
<体積平均粒子径の測定方法(測定する粒子直径が2μm以上の場合)>
測定する粒子の直径が2μm以上の場合は、上記のように、コールターマルチサイザー−II型(ベックマンーコールター社製)測定装置を用いて、粒子の体積平均粒子径を測定する。電解液としては、ISOTON−II(ベックマン−コールター社製)を使用する。
【0120】
測定法としては、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液2ml中に、測定試料を0.5〜50mg加え、これを前記電解液100〜150ml中に添加する。この測定試料を懸濁させた電解液を超音波分散器で約1分間分散処理を行い、前記コールターマルチサイザー−II型により、アパーチャー径が100μmのアパーチャーを用いて、粒径が2.0〜60μmの範囲の粒子の粒度分布を測定する。測定する粒子数は50,000である。
【0121】
測定された粒度分布を、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小径側から累積分布を描き、累積50%となる粒径を体積平均粒子径と定義する。
【0122】
<体積平均粒子径の測定方法(測定する粒子直径が2μm未満の場合)
測定する粒子直径が2μm未満の場合は、上記のように、レーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700:堀場製作所製)を用いて、粒子の体積平均粒子径を測定する。
【0123】
測定法としては、分散液となっている状態の試料を固形分で約2gになるように調整し、これにイオン交換水を添加して、約40mlにする。これをセルに適当な濃度になるまで投入し、2分待って、セル内の濃度がほぼ安定になったところで測定する。
【0124】
得られたチャンネルごとの体積平均粒子径を、体積平均粒子径の小さい方から累積し、累積50%になったところを体積平均粒子径とする。
【0125】
なお、外添剤などの粉体を測定する場合は、界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液50ml中に測定試料を2g加え、超音波分散機(1,000Hz)にて2分間分散して、試料を作製し、前述の分散液と同様の方法で、測定する。
【0126】
<融点およびガラス転移点の測定方法>
ガラス転移点(Tg)及び融点は、示差走査熱量計(島津製作所社製:DSC−50)を用い、昇温速度3℃/分の条件下で測定することにより求めた。なお、ガラス転移点は吸熱部におけるベースラインと立ち上がりラインとの延長線の交点の温度とし、融点は吸熱ピークの頂点の温度とした。
【0127】
[実施例1]<赤外線吸収剤分散液Aの調整>
上記の赤外線吸収剤「VONPc−Ph」(アルドリッチ製)0.5重量部と、アニオン界面活性剤(ドデシルベンゼンスホン酸)0.5重量部と、イオン交換水99重量部とを混合し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて10分間分散した後、循環式超音波分散機(日本精機製作所製、RUS−600TCVP)にかけることによって赤外線吸収剤分散液Aを得た。
【0128】
得られた、赤外線吸収剤分散液A内における赤外線吸収剤の体積平均粒径は0.13μm、赤外線吸収剤の固形分比率は0.5重量%であった。
【0129】
<樹脂粒子分散液Aの調整>
加熱乾燥した3口フラスコに、アジピン酸ジメチル65重量部と、テレフタル酸ジメチル183重量部と、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物223重量部と、エチレングリコール38重量部と、テトラブトキシチタネート0.07重量部とを入れた後、170〜220℃で180分間加熱してエステル交換反応を行った。
【0130】
次いで、220℃において系の圧力を0.13〜1.33kPa(1〜10Torr)として60分間反応を続けた結果、ポリエステル樹脂Aを得た。
【0131】
次いで、このポリエステル樹脂Aを115重量部と、脱イオン水180重量部と、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)5重量部とを混合して120℃に加熱した後、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理を1時間行うことにより、樹脂粒子分散液A(樹脂粒子濃度:40重量%)を調整した。体積平均粒径は0.24μmであった。
【0132】
<離型剤分散液Aの調整>
フィッシャートロプシュワックスFNP92(融点92℃:日本精鑞社製)100重量部と、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンR)3.6重量部と、イオン交換水400重量部とを混合し、100℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)にて十分分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、離型剤分散液Aを得た。
得られた離型剤分散液A内における離型剤の体積平均粒径は0.23μm、離型剤分散液Aの固形分比率は20重量%であった。
【0133】
<トナーAの製造>
樹脂粒子分散液Aを295重量部と、赤外線吸収剤分散液Aを36重量部と、離型剤分散液Aを92重量部と、脱イオン水を600重量部とを丸型ステンレス製フラスコ中に入れて、ウルトラタラックスT50で十分に混合・分散した。
【0134】
次いで、これにポリ塩化アルミニウム0.36重量部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。さらに加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら3℃/分で30℃から52℃まで加熱した。52℃で3時間保持した後、ここに樹脂粒子分散液Aを緩やかに140重量部追加した。
【0135】
その後、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを8.5にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら93℃まで加熱し、3時間保持した。
【0136】
反応終了後、冷却し、濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これを更に40℃のイオン交換水3Lに再分散し、15分間、300rpmで攪拌・洗浄した。
【0137】
これを更に5回繰り返し、濾液のpHが7.00、電気伝導度8.8μS/cm、表面張力が71.0Nmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続した。
【0138】
[実施例2]
<トナーBの製造>
トナーの製造条件を以下のようにした以外は、トナーAの製造と同様に操作し、トナーBを得た。
ポリ塩化アルミニウム0.36重量部を0.26重量部に変更し、52℃まで加熱し52℃で3時間保持するところを、54℃まで加熱し54℃で3時間保持するように変更した。
【0139】
[実施例3]
<トナーCの製造>
トナーの製造条件を以下のようにした以外は、トナーAの製造と同様に操作し、トナーCを得た。
3℃/分で30℃から52℃まで加熱するところを、2℃/分で30℃から42℃まで加熱し、その後0.5℃/分で42℃から52℃まで加熱するように変更した。
【0140】
[実施例4]
<赤外線吸収剤分散液Dの調整>
赤外線吸収剤「VONPc−Ph」の代わりに、上記の赤外線吸収剤「VONPc−OnBu」(アルドリッチ製)0.5重量部を用いた以外は、赤外線吸収剤分散液Aの調整と同様に操作し、赤外線吸収剤分散液Dを得た。体積平均粒径は0.12μm、固形分比率は0.5重量%であった。
【0141】
<トナーDの製造>
赤外線吸収剤分散液Aの代わりに赤外線吸収剤分散液Dを用いた以外は、トナーCの製造と同様に操作し、トナーDを得た。
【0142】
[実施例5]
<赤外線吸収剤分散液Eの調整>
赤外線吸収剤「VONPc−Ph」の代わりに、上記の赤外線吸収剤「HNPc−OnBu」(アルドリッチ製)0.5重量部を用いた以外は、赤外線吸収剤分散液Aの調整と同様に操作し、赤外線吸収剤分散液Eを得た。体積平均粒径は0.11μm、固形分比率は0.5重量%であった。
【0143】
<トナーEの製造>
赤外線吸収剤分散液Aの代わりに赤外線吸収剤分散液Eを用いた以外は、トナーCの製造と同様に操作し、トナーEを得た。
【0144】
[実施例6]
<赤外線吸収剤分散液Fの調整>
赤外線吸収剤「VONPc−Ph」の代わりに、上記の赤外線吸収剤「ST173」(アルドリッチ製)0.5重量部を用いた以外は、赤外線吸収剤分散液Aの調整と同様に操作し、赤外線吸収剤分散液Fを得た。体積平均粒径は0.15μm、固形分比率は0.5重量%であった。
【0145】
<トナーFの製造>
赤外線吸収剤分散液Aの代わりに赤外線吸収剤分散液Fを用いた以外は、トナーCの製造と同様に操作し、トナーFを得た。
【0146】
[比較例1]
<トナーPの製造>
トナーの製造条件を以下のようにした以外は、トナーAの製造と同様に操作し、トナーPを得た。
ポリ塩化アルミニウム0.36重量部を0.30重量部に変更し、3℃/分で30℃から52℃まで加熱するところを、5℃/分で30℃から52℃まで加熱した。
【0147】
[比較例2]
<赤外線吸収剤分散液Qの調整>
赤外線吸収剤「VONPc−Ph」の代わりに、上記の赤外線吸収剤「VONPc」(山本化成製)0.5重量部を用いた以外は、赤外線吸収剤分散液Aの調整と同様に操作し、赤外線吸収剤分散液Qを得た。体積平均粒径は0.12μm、固形分比率は0.5重量%であった。
【0148】
<トナーQの製造>
赤外線吸収剤分散液Aの代わりに赤外線吸収剤分散液Pを用いた以外は、トナーAの製造と同様に操作し、トナーQを得た。
【0149】
[外添トナーの製造]
上記の製造したトナー50重量部に対し、疎水性シリカ(キャボット社製、TS720)を0.21重量部添加してサンプルミルにてブレンドし、外添トナーを製造した。
【0150】
[現像剤の調整]
ポリメチルメタアクリレート(綜研化学社製)を1重量%コートした平均粒径50μmのフェライトキャリアに対し、トナー濃度が5重量%となるよう上記外添トナーを秤量し、ボールミルで5分間攪拌・混合して現像剤を調整した。
【0151】
[評価方法]
得られた現像剤を、富士ゼロックス社製DocuPrint C2220(以下、「DPC2220」と略す場合がある)の現像器に充填して、定着画像を形成した。
画像条件は0.2mm×10mmの細線を0.2mm間隔で100本、すなわち細線が横に並んだ画像である。
【0152】
得られた画像につき、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0153】
―形成直後におけるトナー画像の読み取り性評価―
前記画像形成面を、画像形成面の真上10cmのところに設置した近赤外の波長域の光も照射するリング状LED光源(京都電気製、LEB−3012CE)にて照射した。この状態で、画像形成面の真上15cmのところに設置し、800nm以下の波長成分をカットするフィルタをレンズ部に装着した、800nm〜1000nmの波長域に受光感度を有するCCDカメラ(KEYENCE製、CCD TL−C2)によって、前記画像形成面を読み取り、一定のコントラスト(閾値)を境界として2値化処理して、画像を抽出し、これをソフトウエアで復号化処理し、100枚の画像について、読み取りが可能かどうかの確認を行った。85%以上あればよく、95%以上でさらに良い。
【0154】
―経時後(60日後)におけるトナー画像の読み取り性評価―
60日間、100ルクスの蛍光灯の下50cmにさらし、形成直後におけるトナー画像の読み取り性評価と同様の評価を行った。
【0155】
【表2】

【0156】
表2の結果から分かるように、本実施例では、比較例に比べ、読み取り性が良く、かつ読み取り性が経時的に劣化しにくい、赤外線吸収画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】上記構造式(1)で表されるn−ブトキシ置換ナフタロシアニン(HNPc−OnBu)の吸収スペクトル図である。
【図2】上記一般式(2)におけるMがVOであるn−ブトキシ置換バナジルナフタロシアニン(VONPc−OnBu)の吸収スペクトル図である。
【図3】上記構造式(6)で表される化合物(ST173)の吸収スペクトル図である。
【図4】上記構造式(7)で表される化合物(CR44(OH))の吸収スペクトル図である。
【図5】上記構造式(8)で表される無置換バナジルナフタロシアニン(VONPc)の吸収スペクトル図である。
【図6】本発明の画像形成装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0158】
10・・・画像形成装置
12・・・静電潜像保持体
14・・・帯電手段
16・・・静電潜像形成手段
18・・・現像手段
20・・・転写手段
26・・・定着手段
28・・・カートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂と赤外線吸収剤とを含み、
前記赤外線吸収剤の少なくとも1種は、波長750nm以上1100nm以下の範囲に極大吸収を有し、かつ前記極大吸収の半値全幅が100nm以下であり、
下記式(1)で示される体積平均粒度分布指標GSDが1.25以下であることを特徴とする静電荷現像用トナー。
式(1):GSD=(D84v/D16v1/2
[式(1)中、D84vはトナー粒径体積分布小径側から累積が84%となる粒径値であり、D16vはトナー粒径体積分布小径側から累積が16%となる粒径値である。]
【請求項2】
前記極大吸収は、波長800nm以上1000nm以下の範囲である、請求項1に記載の静電荷現像用トナー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の静電荷現像用トナーを含むことを特徴とする静電荷現像用現像剤。
【請求項4】
画像形成装置に脱着可能であり、少なくとも、前記画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための現像剤を収納し、
前記現像剤は、請求項3に記載の静電荷現像用現像剤であることを特徴とする静電荷現像用現像剤カートリッジ。
【請求項5】
少なくとも、静電潜像保持体と、
前記静電潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、
前記静電潜像保持体表面上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着手段とを備え、
前記現像剤が、請求項3に記載の静電荷現像用現像剤であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−76663(P2008−76663A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254825(P2006−254825)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】