説明

非イオン性界面活性剤集合体

非イオン性界面活性剤集合体は、水不溶性殺生物活性成分、非イオン性界面活性剤系及び水を含む。該非イオン性界面活性剤系は、第1非イオン性界面活性剤及び第2非イオン性界面活性剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非イオン性界面活性剤集合体に関する。さらに非限定的に特定すると、本発明は、混合非イオン性界面活性剤集合体に関するものである。また、本発明は、水不溶性成分を可溶化させる方法及びこのような集合体を取り入れた製品の包装類に関するものでもある。本発明の実施形態は、ポリビニルアルコール(PVA)のような水溶性フィルムから作られた包装材に水含有混合物を収容するために特定の集合体構造を形成させる処方物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
殺虫剤処方物は、通常、濃縮製品として製造される。これらのものは、続いて、様々な技術(例えば、スプレー、噴霧、霧吹など)によって様々なタイプの表面(例えば、植物、硬質表面、織物など)に適用して広く様々な対象有害生物(例えば、昆虫、真菌感染、雑草など)に対する保護を与える前に、水で希釈される。大部分において、実際の活性成分は、任意の測定可能な範囲では水に溶解せず、しかも測定可能なレベル、結果として商業的に利用可能なレベルの活性成分濃度を達成するためには多数のタイプの処方が必要である。
【0003】
従来、使用される処方物は、主として3つの一般的なタイプのものであることができる:
(a)乳化性濃縮物及び水中油型エマルジョン
活性成分を炭化水素溶媒中に界面活性剤のブレンドと共に溶解させて乳化性濃縮物(EC)を製造し、次いでこれを水に希釈してから水中油型エマルジョンを製造するために使用する。別法として、該ECを部分的に希釈して水中油型エマルジョン濃縮物(EW)を与え、続いてこれをさらに水に希釈してから使用する。
(b)懸濁液濃縮物(流動物)
活性成分を微粒子の形態に磨砕し、そして分散剤(界面活性剤)、増粘剤、保存料及び凍結防止剤(水系)のような様々な添加剤を使用して液体の基材に懸濁し、その結果として、水に添加したときに、該活性成分は、細かく懸濁された粒子の形態になる。これらのタイプの処方物をエマルジョン(EW)と組み合わせてサスポエマルジョンを形成させることができる。
(c)固体処方物
不活性粉末からなる水和剤(WP)に活性成分を含浸させ、次いでこれを小さな均一に分布した粒度にまで磨砕する。水への希釈に基づく該粉末の分散は、該処方物に湿潤剤及び分散剤(界面活性剤)を取り入れることによって促進される。この根底にあるテーマに基づく多数の別法が存在する(例えば、水分散性顆粒など)。
【0004】
これらのタイプの処方物の使用は、多様なタイプの用途(例えば、作物の保護、媒介動物の防除、公衆衛生及び有害生物の防除、木材処理、家屋及び庭、職業敷地整備、シロアリ防除など)のために十分に確立されているが、全てのタイプの処方物には固有の弱点がある。懸濁液濃縮物(SC)及び水和剤は、固形成分の磨砕に関連した多大な加工コストを必要とし、該EC及びEW処方物は、使用者と環境の両方に有害であり得る有機溶媒を含有する。さらに、これらの処方物の全ては、水で希釈すると、沈殿(SC及びWP)又はクリーミング(EC及びEW)のいずれかにより相分離する傾向を示し、また、SC及びEWタイプの場合には、この相分離は濃縮物でも生じ得る。
【0005】
この相分離の程度は非常に重大であり、そしてこれを以下の表1に例示する。この表では、分離のレベルは、活性成分として合成ピレスロイド殺虫剤を含有する従来の様々な処方物について、水による希釈後にHPLCによって分析的に決定した。
【0006】
希釈液を製造し、そして試料を得た時点で十分に混合し、公称活性成分含有量を分析的に決定した。続いて、該希釈液を4時間にわたって放置し、そしてさらに試料を頂部、中央部及び底部の10%画分から得、活性成分の含有量を決定した。当該含有量を公称値の分数として表している。
【0007】
【表1】

【0008】
この相分離は、性能の2つの異なる側面で問題を生じ得る:
(a)(活性成分)実際/公称が<1である場合には、有害生物の生物学的駆除レベルが低いこと、及び
(b)(活性成分)実際/公称が>1である場合には、作業者及び環境の両方に対する毒性リスクが高いことである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、水不溶性成分、非イオン性活性剤系及び水を含む非イオン性界面活性剤集合体を提供する。非イオン性界面活性剤集合体の好ましい形態は、混合非イオン性界面活性剤集合体を含む。
【0010】
本発明の別の態様によれば、水不溶性成分と非イオン性界面活性剤系及び水とを混合させて該水不溶性成分が可溶化された非イオン性界面活性剤集合体を与えることを含む水不溶性成分を可溶化させる方法を提供する。
【0011】
該非イオン性界面活性剤集合体は、1種以上の水不溶性成分を含むことができる。当該又はそれぞれの水不溶性成分は、好ましくは有機物質である。該水不溶性成分は、好ましくは活性成分、好ましくは殺生物剤のような生物学的活性成分である。該活性成分は、農薬を含むことができる。該活性成分は、除草剤、殺菌剤、殺虫剤、殺線虫剤及びダニ駆除剤の1種以上を含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好ましい形態の利点の一つは、高レベルの活性成分を含有する混合非イオン性界面活性剤集合体を水で希釈して熱力学的に安定な混合非イオン性界面活性剤集合体を製造することができることである。このような混合非イオン性界面活性剤集合体は、広範囲の温度(典型的には0〜50℃)にわたり広範囲の水の硬度(典型的には0〜1000ppmの炭酸カルシウム)でも相分離を起こす傾向を有しない。
【0013】
該活性成分は殺虫剤を含むことができ、該殺虫剤は、合成ピレスロイドのようなピレスロイド;有機ホスフェート化合物、例えばクロロピリホス−エチル、クロロピリホス−メチル、ピリミホス−メチル、フェニトロチオン;ピリプロキシフェンのようなフェニルエーテル;フルフェノクスロンのようなベンゾイル尿素;カルバメート、例えば、フェノキシカルブ、カルボスルファン;アセタミプリドのようなニコチノイド;フロニカミドのようなピリジンカルボキシアミド;及び/又は他のもの1種以上を含むことができる。ピレスロイドは、ビフェントリン、ゼータシペルメトリン、アルファシペルメトリン、テトラメトリン、ラムダシハロトリン、フェンバレレート、シフルトリン、ビオレスメトリン、ペルメトリン、デルタメトリンのうち1種以上から選択できる。
【0014】
活性成分は、コナゾール化合物、例えば、アザコナゾール、シプロコナゾール、プロピコナゾール、テブコナゾール;カルバメート、例えば、IPBC(3−インド−2−プロピニルブチルカルバメート);及び/又はその他のものの1種以上から選択できる殺菌剤を含むことができる。
【0015】
活性成分は、カルフェントラゾンエチルのようなトリアゾリノン化合物、スルフェントラゾンのようなアリールトリアゾリノン化合物又はグリホセートのようなホスホン酸化合物から選択できる除草剤を含むことができる。これらのものは、エテホンのような植物生長調節剤と混合できる。
【0016】
該非イオン性界面活性剤系は、単一の非イオン性界面活性剤を含むことができるが、好ましくは、該非イオン性界面活性剤系は、第1及び第2の非イオン性界面活性剤を含むことができる。該第1非イオン性界面活性剤は、水よりも油に溶解しやすく(低い親水性−親油性バランス[HLB]を有する)、第2非イオン性界面活性剤は、油よりも水に溶解しやすい(高いHLBを有する)。
【0017】
好ましくは、第1及び第2非イオン性界面活性剤は、互いに異なる親水性−親油性バランスを有する。
【0018】
非イオン性界面活性剤系は、2種以上の非イオン性界面活性剤を含むことができる。
【0019】
水不溶性活性成分の混合物が存在するいくつかの具体例では、所望のレベルの安定性を与えるのに必要な非イオン性界面活性剤のブレンド(濃縮物又は水への希釈物としての)は複合的であることができる。
【0020】
非イオン性界面活性剤系は、アルコキシル化アルコール、アミンエトキシレート、エステルエトキシレート、ひまし油エトキシレート、脂肪酸エトキシレート、アミドエトキシレート、エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロック共重合体、アルコキシル化オイル、例えばアルコキシル化植物油、アルコキシル化脂肪酸、アルキルアミドエステル又は食品用エステルのうち1種以上を含むことができる。
【0021】
集合体は、イオン性界面活性剤を実質的に含まないものであることができる。ここで使用するときに、用語「実質的に含まない」とは、少量が存在するものの、これらの量が該集合体の特性又は特徴に実質的に影響を及ぼさない状況を包含するものとする。
【0022】
アルコキシル化アルコールは、アルコールエトキシレートを含むことができる。該アルコキシル化アルコールは、直鎖又は分岐鎖を有することができる。該アルコキシル化アルコールは任意の鎖長であることができるが、好ましい鎖長は、8〜18個の炭素原子、より好ましくは9〜13個の炭素原子である。該アルコキシル化アルコールは、1分子当たり1〜50モルのエチレンオキシド、好ましくは1分子当たり1〜20モルのエチレンオキシド、より好ましくは1分子当たり2〜12モルのエチレンオキシドを含むことができる。
【0023】
エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロック共重合体は、10重量%〜80重量%の範囲のエチレンオキシド含有量を有することができる。好ましくは、該エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロック共重合体は、10重量%〜40重量%、より好ましくは10重量%〜20重量%の範囲のエチレンオキシド含有量を有する。エチレンオキシド含有量がプロピレンオキシド含有量よりも高いエチレンオキシドプロピレンオキシドブロック共重合体は、油よりも水に溶解しやすい(即ち、高いHLB値を有する)。逆に、プロピレンオキシド含有量がエチレンオキシド含有量よりも高いエチレンオキシド−プロピレンオキシドブロック共重合体は、水よりも油に溶解しやすい(即ち、低いHLB値を有する)。
【0024】
本発明の好ましい具体例で使用されるエチレンオキシド−プロピレンオキシドブロック共重合体は、エチレンオキシド末端基を有するプロピレンオキシド骨格の分子を含むことができる。このようなブロック共重合体により、該分子におけるプロピレンオキシド骨格の寸法及びエチレンオキシドの量は、水溶性に関して広く様々なバリエーションが可能になる(水の曇り点によって示されるような)。従って、これらのものは、主界面活性剤(エチレンオキシド含有量が20%以上である場合)又は補助界面活性剤(エチレンオキシド含有量が典型的に10%である場合)のいずれかとして使用できる。
【0025】
好ましい具体例では、実質的に20重量%よりも少ないエチレンオキシド含有量を有するエチレンオキシド−プロピレンオキシドブロック共重合体は、低いHLB値を有する。このようなブロック共重合体は、好ましい具体例では、プロピレンオキシド骨格を有し、しかも、そのHLB値は、プロピレンオキシド骨格の分子量を変えることによって変更できる。
【0026】
アルコキシル化植物油は、アルコキシル化ひまし油を含むことができる。該アルコキシル化ひまし油は、エトキシル化ひまし油を含むことができる。該エトキシル化ひまし油は、1分子当たり5〜200モルのエチレンオキシド、好ましくは1分子当たり5〜100モルのエチレンオキシド、より好ましくは1分子当たり5〜60モルのエチレンオキシドのエチレンオキシド含有量を有することができる。
【0027】
非イオン性界面活性剤集合体は、多数の構造、例えば、ミセル溶液(これは通常のミセル又は逆ミセルを含むことができる)、水中油型(「外部水」)ミクロエマルジョン、油中水型(「外部油」)ミクロエマルジョン又は分子共溶液の一つで与えることができる。また、これらの混合非イオン性界面活性剤集合体は、液晶から構成され得、且つ、六方状、ラメラ、円柱状又は球状構造を含有することができる粘稠なゲルの形をとることもできる。
【0028】
本発明の好ましい態様は、水不溶性成分、例えば、農薬を、非イオン性界面活性剤系によって水に可溶化させて混合非イオン性界面活性剤集合体を形成させることができるという利点を有する。
【0029】
該水不溶性成分は、0.001重量%〜50重量%、好ましくは0.001重量%〜40重量%の範囲の量で該集合体中に存在することができる。
【0030】
第1の具体例では、該水不溶性成分は、0.1重量%〜40重量%、好ましくは1重量%〜40重量%、より好ましくは2重量%〜40重量%の範囲の量で非イオン性界面活性剤集合体中に存在することができる。この実施形態では、油中水型ミクロエマルジョン、ミセル溶液又は共溶液を含むことができる親油性混合非イオン性界面活性剤集合体のような油中水型集合体を含むことができる。
【0031】
第2の具体例では、該水溶性成分は、0.1重量%〜35重量%、好ましくは1重量%〜30重量%、より好ましくは2重量%〜25重量%の範囲の量で集合体中に存在することができる。この実施形態では、六方状、ラメラ、円柱状又は球状構造を含むことができる混合非イオン性界面活性剤集合体を含むことができる。
【0032】
第3の具体例では、該水不溶性成分は、0.001重量%〜20重量%、好ましくは0.001重量%〜15重量%の範囲の量で集合体中に存在することができる。この実施形態では、水中油型ミクロエマルジョン、ミセル溶液又は共溶液を含むことができる親水性混合非イオン性界面活性剤集合体のような水中油型集合体を含むことができる。
【0033】
非イオン性界面活性剤系は、集合体中に、0.1重量%〜80重量%、好ましくは0.2重量%〜60重量%、より好ましくは0.2重量%〜40重量%の範囲で存在することができる。
【0034】
界面活性剤の混合物中における任意の所定の界面活性剤の質量分率は、0.01〜0.99の範囲内で変更できるが、典型的には、これは、水溶性成分及び界面活性剤系の両方の複雑さの程度に応じて0.10〜0.80の範囲内にあるであろう。
【0035】
油中水型ミクロエマルジョン、ミセル溶液又は共溶液の形態にある親油性混合非イオン性界面活性剤集合体のような油中水型集合体を含むことができる第1の具体例では、該界面活性剤系は、該非イオン性界面活性剤集合体中に、10重量%〜90重量%、好ましくは10重量%〜60重量%、より好ましくは10重量%〜40重量%の範囲の量で存在することができる。
【0036】
六方状、ラメラ、円柱状又は球状の集合体構造を有することができる第2の具体例では、該界面活性剤系は、集合体中に、10重量%〜60重量%、好ましくは10重量%〜40重量%、より好ましくは10重量%〜30重量%の範囲の量で存在することができる。
【0037】
水中油型ミクロエマルジョン、ミセル溶液又は共溶液の形態にある親水性混合非イオン性界面活性剤集合体のような水中油型集合体を含むことができる第3の具体例では、該界面活性剤系は、該非イオン性界面活性剤集合体中に、0.2重量%〜40重量%、好ましくは0.2重量%〜35重量%、より好ましくは0.2重量%〜25重量%の範囲の量で存在することができる。
【0038】
水は、該非イオン性界面活性剤集合体中に、0.1重量%〜99.5重量%、好ましくは5重量%〜99.5重量%、より好ましくは10重量%〜99.5重量%の範囲の量で存在することができる。
【0039】
油中水型ミクロエマルジョン、ミセル溶液又は共溶液の形態にある親油性非イオン性界面活性剤集合体のような油中水型集合体を含むことができる第1の具体例では、水は、該非イオン性界面活性剤集合体中に、0.1重量%〜35重量%、好ましくは5重量%〜35重量%、より好ましくは10重量%〜35重量%の範囲の量で存在することができる。
【0040】
六方状、ラメラ、円柱状又は球状の集合体構造を有することができる第2の具体例では、水は、20重量%〜55重量%、好ましくは30重量%〜55重量%、より好ましくは35重量%〜55重量%の範囲の量で存在することができる。
【0041】
水中油型ミクロエマルジョン、ミセル溶液又は共溶液の形態にある親水性非イオン性界面活性剤集合体のような水中油型集合体を含むことができる第3の具体例では、水は、該非イオン性界面活性剤集合体中に、50重量%〜99.5重量%、好ましくは55重量%〜99.5重量%、より好ましくは60重量%〜99.5重量%の範囲で存在することができる。
【0042】
非イオン性界面活性剤集合体は、相乗剤;成長調節剤、例えば昆虫成長調節剤;pH調整剤;湿潤剤のうち1種以上を含むことができる添加剤をさらに含むことができる。
【0043】
相乗剤は、合成ピレスロイドのような殺虫剤と共に使用でき、しかもピペロニルブトキシドのような有機油の形態であることができる。他のタイプの油としては、菜種油のような天然油を挙げることができるが、このものは、除草剤処方物に使用されるときにアジュバント効果を与えることができる。成長調節剤は、ピリプロキシフェンのようなフェニルエーテルを含むことができる。該pH調整剤は、無機酸又は無機アルカリであることができる酸又はアルカリを含むことができる。該pH調整剤は塩酸であることができる。他の好適なpH調整剤は、トリエタノールアミンのようなアミンを含むことができる。該湿潤剤は、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性又は両性物質を含むことができる追加の界面活性剤を含むことができる。好適な湿潤剤の例は、ナンサ(Nansa)SSAのようなアルキルアリールスルホネート及び/又はスルファク(Surfac)DDACのような第四アンモニウムである。該湿潤剤は、対象の基材上へのスプレー適用の湿潤性、塗布性又は粘着性を向上させるという利点を有する。
【0044】
適当な条件下では、当業者であれば分かるように、好ましい具体例の一つは、親油性であることができ且つ殺生物剤活性成分のような高濃度の水不溶性有機化合物を可溶化させることができる非イオン性界面活性剤集合体構造を形成する。
【0045】
当業者であれば分かるであろうが、界面活性剤の化学的性質を正確に選択し且つそのバランスをとることによって、親油性混合非イオン性界面活性剤集合体は、油中水型ミクロエマルジョンの分離した液滴の形態をとることができる。このような分離した液滴の形成によって、水溶性フィルム、例えばポリビニルアルコール(PVA)から形成された小袋のような包装部材に収容された液体処方物中に有意な量の水を取り入れることが可能になる。
【0046】
本発明の別の態様によれば、上記の非イオン性集合体を収容した水溶性包装部材を備える包装製品を提供する。
【0047】
該水溶性包装部材は、密封された小袋を備えることができる。該水溶性包装部材は、ポリビニルアルコール(PVA)のような水溶性可塑性材料から形成できる。
【0048】
以下、本発明の実施形態を専ら例示によって説明する。
本発明の第1の実施形態は、油中水型ミクロエマルジョン、ミセル溶液又は共溶液の形態にあることができる親油性混合非イオン性界面活性剤集合体を含む。該非イオン性油中水型集合体は、有機殺生物剤のような水不溶性活性成分を含む。好適な当該殺生物剤は殺虫剤である。該有機殺生物剤は、該油中水型集合体中に、2重量%〜40重量%の範囲の量で存在する。
【0049】
該油中水型集合体は、該殺生物剤を可溶化させるための第1及び第2非イオン性界面活性剤を少なくとも含む界面活性剤系をさらに包含する。第1非イオン性界面活性剤は、少なくとも1種の水溶性主界面活性剤を含む。第2非イオン性界面活性剤は、少なくとも1種の水不溶性補助界面活性剤を含む。第1非イオン性界面活性剤は、比較的低い高い親水性−親油性バランス(HLB)を有する第2非イオン性界面活性剤に対して高いHLBを有する。
【0050】
該界面活性剤系は、該混合非イオン性界面活性剤集合体中に、10重量%〜90重量%の範囲の量で存在するが、ここで、補助界面活性剤質量分率(Pcos)mは、0.07〜0.787の範囲内にある。質量分率(Psurf)mは、任意の個々の非イオン性界面活性剤ついては、およそ0.04〜0.9である。また、水も0.1重量%〜35重量%の範囲で存在する。また、この系は、混合非イオン性界面活性剤集合体自体の形成には寄与しないが所定の特性の向上を与えることができる他の添加剤を含むこともできる。当該他の添加剤は、0.1重量%〜20重量%の範囲の量で存在することができる。これらの添加剤としては、湿潤剤、相乗剤、pH調整剤などを挙げることができる。該混合非イオン性界面活性剤集合体は、斯界に知られている任意の好適な方法によって形成でき、しかもこのような方法は、当業者であれば本明細書を読むことで直ちに分かるであろう。油中水型ミクロエマルジョン液滴、ミセル溶液又は共溶液の形態にあることができる親油性混合非イオン性界面活性剤集合体の具体例は次の通りである。
【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
【表7】

【0057】
【表8】

【0058】
【表9】

【0059】
【表10】

【0060】
【表11】

【0061】
【表12】

【0062】
【表13】

【0063】
【表14】

【0064】
【表15】

【0065】
用語「EO−PO共重合体」とは、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体を意味する。
【0066】
分離した油中水型ミクロエマルジョン液滴の形成は、炭化水素(例えば、農薬活性成分)及び2種の界面活性剤を含有する系の水濃縮中に伝導度を追跡することによって実験的に証明できる。表2及び3では、次式:
[Paq]m=水の質量/系の全質量
によって与えられる、水質量分率[Paq]mの関数としての伝導度を2種の系について比較しているが、この場合に、唯一の相違は、次式:
[Pcos]m=補助界面活性剤の質量/全界面活性剤質量
によって与えられる、補助界面活性剤質量分率(Pcos)mである。
【0067】
【表16】

【0068】
【表17】

【0069】
[Pcos]m0.575で[Paq]mが増加すると、伝導度が劇的に増加するが、これは浸透挙動を示している。このタイプの系は、両連続(同時可溶化)系又は非常に弾力的な界面及び短い寿命を有する凝集単位のいずれかの存在によるものとするのが最も適切な表現である。
【0070】
(Pcos)m0.65では、伝導度は非常に低いままであり、しかも[Paq]mが増加するにつれて単調でない態様で変化する。最初は、水を添加すると水和界面活性剤集合体の形成のために伝導度が増加する。ある時点(Paq)m0.06〜0.1で、伝導度は、多量の水を添加すると、水和界面活性剤集合体が明確な水のコアを有する油中水型ミクロエマルジョン液滴で置き換わるために減少し始める。多量の水を添加すると、伝導度は、さらに多くの分離液滴が形成されるにつれて、さらなる臨界点が(Paq)m0.3〜0.32で達成されるまで多かれ少なかれ一定であるが、この場合に、伝導度は、多量の水を添加すると急速に増加し始める。この変化は、球状から非球状の液滴への変化若しくは水滴の凝集又は分散(水)相の質量分率の増加によってもたらされる位相反転の程度のいずれかによってもたらされる。
【0071】
本発明の上記例は、高密度ポリエチレン(HDPE)プラスチックのような材料から作られた標準的なプラスチック瓶に充填できる。或いは、場合によって、水を混合界面活性剤集合体内にカプセル化させ、それによってこの水と水溶性フィルムとの接触を防ぐときには、これらのものをPVAのような材料から作られた水溶性小袋に取り入れることができる。
【0072】
上記実施形態は、熱力学的に安定で且つ高レベルの活性成分を含有する親油性混合非イオン性界面活性剤集合体の形態の濃縮物である。これらのものは、水への希釈を目的とするものであり、そうするとすぐに、該集合体は、水中油型ミクロエマルジョン、ミセル溶液などの形態にあることができる熱力学的に安定な親水性混合非イオン性界面活性剤集合体に自然に転化する。続いて、これらの希釈系を様々な用途に使用することができる。
【0073】
これらの希釈濃縮物の安定性を、希釈物を様々な硬度(炭酸カルシウムのppmで表される)の水で調製し、そして濁度をOrbeco明度デジタル濁度計を使用して時間と温度の関数として測定した次の例によって示す。
【0074】
【表18】

【0075】
【表19】

【0076】
これらを、以下に示すような陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との組合せを基材とする同様の系で得られた結果と比較することができる。
【0077】
【表20】

【0078】
12.5中1での希釈物の濁度を様々な硬度水で調製し、そしてRTでの時間の関数として測定した。結果を以下の表6に示す。
【0079】
【表21】

【0080】
希釈系に関する水の硬度のような効果をみるために使用できる別の技術は、粒度を決定する手段として光散乱を使用する光子相関分光法である。水のような所定の媒体に懸濁された粒子を、小さな粒子が大きな粒子よりも非常に速く移動するようなランダムブラウン拡散に付す。拡散速度は、90°で散乱するレーザー光の強度の変化を試験することによって測定でき、粒子の半径Rhは、次の方程式:
Rh=kT/6πηD
(ここで、
k=ボルツマン定数
T=絶対温度
η=流動媒体の粘度
D=拡散定数
である。)
によって与えられる。
【0081】
この技術を使用して試料を調製し、そして粒度を水の硬度及び温度の関数として決定した。結果を以下の表7及び8に示す。
【0082】
【表22】

【0083】
これらの希釈物は、ミクロエマルジョンの形態にある水中油型系を表す非常にわずかな程度の半透明性を示した。これは、10〜100nmの範囲の典型的な粒度によって確認される。
【0084】
【表23】

【0085】
これらの試料の全ては、濁度の読み取りによって確認されるときに「水」の様相を有し、粒度分布は10nmを下回る直径を有する非常に多数の粒子を包含し、しかもこれらはおそらくミセル溶液として説明するのが適切である。
【0086】
本発明の第2の実施形態は、農薬活性成分であることができる水不溶性有機殺生物剤を含有するであろう、例えば六方状、ラメラ、円柱状又は球状の集合体構造を有する液晶「ゲル」を含む。該殺生物剤は、これらの構造内に、0.1重量%〜35.0重量%の範囲の量で存在するであろう。該界面活性剤系は、10.0重量%〜60.0重量%の範囲の全界面活性剤濃度を有する少なくとも2種の非イオン性界面活性剤分子の混合物をおよそ0.04〜0.65の補助界面活性剤質量分率[Pcos]mで含むであろう。また、水もこれらの構造内に20.0重量%〜55.0重量%の範囲の濃度で存在するであろう。また、この系は、混合非イオン性界面活性剤集合体の形成に寄与しない他の添加剤を含んでいてもよいが、これら自体は、所定の特性を向上させ且つ0.1重量%〜20重量%の量で存在することができる。これらの他の添加剤としては、湿潤剤、相乗剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0087】
混合非イオン性界面活性剤集合体は、斯界に知られている任意の好適な方法によって形成でき、しかも、このような方法は、当業者であれば本明細書を読むことで直ちに分かるであろう。これらの液晶「ゲル」の具体例は次の通りである。
【0088】
【表24】

【0089】
【表25】

【0090】
【表26】

【0091】
これらのタイプの系は、希釈なしで使用する目的のものであり、且つ、特に目標となる領域で高活性成分負荷を与えることができる。これらは、寸法の大きい構造の材木を処理することに大きな潜在的可能性を有し、この場合に、これらのものを予備ドリル穴に注入することができ、露出した表面に慣用のスプレー又はブラシ塗布を使用することが不可能な材木全体にわたって非常に良好な活性成分分布を与えることができる。
【0092】
これらの混合非イオン性界面活性剤ブレンドによってこのようにして形成されたこれらの「ゲル」の粘度は、1000cPs〜>100,000cPsの範囲で大きく変更でき、且つ、広範囲にわたって様々な非イオン性界面活性剤の比に依存するであろう。
【0093】
補助界面活性剤質量分率([Pcos]m)が高い(>0.3)場合には、集合体の六角形配列に相当する中程度の粘度の「ゲル」は、親油性混合界面活性剤集合体の領域に隣接して形成する傾向がある。この質量分率が低い(<0.2)場合には、ラメラ構造に相当する高粘度「ゲル」は、親水性混合界面活性剤集合体の領域に隣接して形成する傾向がある。
【0094】
両タイプの「ゲル」の流動性は、偽塑性の挙動によって最もよく説明される。材木における1cmの予備ドリル穴に注入したときに、これらの「ゲル」の多量の取り込みは、場合によって20cmを超える活性成分の移動にとっては非常に重要であるように思われる。さらに、分析的研究から、該材木を通した「ゲル」の拡散が相分離なしに生じることが示されている。
【0095】
本発明の第3の実施形態は、ミセル溶液又は水中油型ミクロエマルジョンの形態にあることができ、農薬活性成分であることができる水不溶性有機殺生物剤を含むことができる親水性混合非イオン性界面活性剤集合体を含む。
【0096】
該有機殺生物剤は、これらの集合体中に、0.001重量%〜20重量%の範囲の量で存在するであろう。該界面活性剤系は、少なくとも1種の水溶性主界面活性剤と、少なくとも1種の水不溶性補助界面活性剤とを含み、全界面活性剤濃度は、0.2重量%〜40重量%の範囲にある。該補助界面活性剤の質量分率[Pcos]mは、およそ0.17〜0.47である。また、水も該集合体中に50重量%〜99.5重量%の範囲の量で存在するであろう。また、この系は、混合非イオン性界面活性剤集合体の形成に寄与しないが、それ自体が所定の特性を向上させることができる他の添加剤を含むことができる。これらの他の添加剤は、0.1重量%〜20重量%の範囲で存在することができ、これらのものとしては、湿潤剤、相乗剤、pH調整剤等を挙げることができる。
【0097】
該混合非イオン性界面活性剤集合体は、斯界に知られている任意の好適な方法で形成でき、しかも、このような方法は、当業者であれば、本明細書を読むことで直ちに分かるであろう。親水性混合非イオン性界面活性剤集合体の具体例は次の通りである。
【0098】
【表27】

【0099】
【表28】

【0100】
【表29】

【0101】
【表30】

【0102】
【表31】

【0103】
【表32】

【0104】
【表33】

【0105】
【表34】

【0106】
【表35】

【0107】
上記具体例(18〜26)は、全て、同時可溶化系、ミセル溶液又は水中油型ミクロエマルジョンの形態にあることができる親水性混合非イオン性界面活性剤集合体から構成される。これらのものは、全て、熱力学的に安定であり、且つ、様々な用途のために使用前にさらに希釈することを目的とするものであり、さらには、水でさらに希釈するときに、該系は、それらの熱力学的安定性を保持する。
【0108】
これらの系の外部相が全ての場合に水であるならば、水溶性PVAフィルムから作られた小袋に取り入れるのは好適でないため、これらのものは一般的には慣用のプラスチック(HDPE)容器中に濃縮物として与えられるであろう。
【0109】
濃縮物と希釈物の両方の安定性は、外部油農薬濃縮物の研究について既に上で説明した技術によって検討できる。
【0110】
非イオン性界面活性剤集合体の好ましい実施形態は、次の3種の主成分から構成されると考えることができる:
(a)殺生物剤活性成分と、任意の相乗剤、アジュバント等とを含む活性成分相;
(b)水に可溶の少なくとも1種の非イオン性界面活性剤(>25℃の水の曇り点を有し、「主界面活性剤」として示される)と、水に不溶の少なくとも1種の非イオン性界面活性剤(<25℃の水の曇り点を有し、「補助界面活性剤」として示される)とを含む界面活性剤相(ここで、該曇り点は、ドイツ基準法(DIN53917)のような任意の好適な方法によって決定される);及び
(c)水と、任意の添加剤、例えば、pH調整剤、湿潤剤、保存料、着色剤等とを含む水性相。
【0111】
該活性成分相と該界面活性剤相とは、集合的に有機相とみなすことができる。
【0112】
次の形態:
(a)濃縮活性成分組成物であってそれ自体が熱力学的に安定であり且つ使用前に水で希釈してミクロエマルジョン、ミセル溶液等の状態にあることができる熱力学的に安定な親水性界面活性剤集合体を自然に形成するものの形態にある親油性界面活性剤集合体;
(b)濃縮活性成分組成物であってそれ自体が熱力学的に安定であり且つ使用前に水で希釈されると共にミクロエマルジョン、ミセル溶液等の状態にあることができる集合体の熱力学的安定性を保持するものの形態にある親水性界面活性剤集合体;及び
(c)熱力学的に安定ですぐに使用できる(RtU)活性成分組成物の形態にある親水性界面活性剤集合体
にあることができるこれらの混合非イオン性界面活性剤集合体の形成及び安定化は、上に定義した様々な3成分相間の関係に左右される。
【0113】
この重要な関係は、様々な相の質量分率によって定義でき、ここで、この重要な質量分率比は、
(a)[Pact]m=活性成分相の質量/有機相の質量によって与えられる活性成分質量分率[Pact]m、
(b)[Psurf]m=非イオン性界面活性剤の質量/有機相の質量によって与えられる全界面活性剤質量分率[Psurf]m、
(c)[Pcos]m=補助界面活性剤の質量/非イオン性界面活性剤の質量によって与えられる補助界面活性剤質量分率[Pcos]m
である。
【0114】
3つの質量分率の全てが熱力学的に安定な単一の相界面活性剤集合体の形成及び安定化に影響を及ぼすが、これが[Pcos]mであり、即ちこの方法のための最も重要な原動力である補助界面活性剤質量分率である。
【0115】
水溶性主界面活性剤と水不溶性補助界面活性剤との組合せは、該界面活性剤ブレンドの全体的な親水性−親油性を変化させるために変更できる。集合体系の最適な安定性は、[Pcos]mが該活性成分相の要求親水性疎水性バランス(要求HLB)に可能な限り一致するするときに達成される。
【0116】
活性成分相の要求HLBは、使用される界面活性剤系に依存するであろう。活性成分相が4成分:アルファシペルメトリン、テトラメトリン、ピペロニルブトキシド及びピリプロキシフェンの混合物である以下の例1及び8を考慮されたい。要求HLBを決定するためには、それぞれの界面活性剤について、個々の界面活性剤質量分率[Psurf−I]mに該界面活性剤の実際のHLBを乗ずることによってHLBへの寄与度(HLB寄与)を算出する必要があるが、ここで、
[Psurf−I]m=個々の非イオン性界面活性剤の質量/非イオン性界面活性剤の全質量であり、そして該要求HLBは、HLB寄与度の値の合計である。
【0117】
【表36】

【0118】
【表37】

【0119】
ここで、活性成分相が2成分:カルフェントラゾン−エチル及び菜種油の混合物である以下の例13及び14を考慮されたい。
【0120】
【表38】

【0121】
【表39】

【0122】
ここで、以下の例20及び12を考慮されたい。
【0123】
【表40】

【0124】
【表41】

【0125】
選択肢として、これらの親水性混合非イオン性界面活性剤集合体を、即時使用可能(Rtu)農薬処方物を製造する際に使用することができる。具体例は次の通りである。
【0126】
【表42】

【0127】
【表43】

【0128】
【表44】

【0129】
【表45】

【0130】
【表46】

【0131】
【表47】

【0132】
【表48】

【0133】
上記例27〜33の処方物は、さらに希釈することを目的とするものではなく、しかも、これらのものは、同時可溶化系、ミセル溶液又は水中油型ミクロエマルジョンの形態にあることができる熱力学的に安定な親水性混合非イオン性界面活性剤集合体である。これらのものは、HDPE又はPETから作られた従来のブラスチック瓶で供給されるべきものであり、且つ、周囲条件下で2年の保存期間を可能にする安定性を有することが予期されるであろう。
【0134】
本発明の別の態様によれば、親水性混合非イオン性界面活性剤集合体の所定の熱力学的特性及び物性、例えば、相分離の欠如、小さな粒度及び低い表面張力は、従来のタイプの処方物で達成されるものと比較して、適用された活性成分の生物学的効果を有意に改善させることができる。この向上は、以下に与える例によって証明される。
【実施例】
【0135】
例A:土壌への適用による殺虫剤の使用
ある事例において、特定の植物種を攻撃する害虫は、土壌基質中に埋まっている植物の根を攻撃する。これらの場合には、殺虫剤をその土壌に直接適用しなければならず、また、該有害生物の駆除のレベルを決定する基準は、土壌中への浸透の深さ及び該土壌基質内においてより低いレベル内にある分布の均一性である。
【0136】
実験室での研究において、土壌のカラムを、5重量%の含水率を有する230gの土壌を1.25インチの内径の10インチプラスチック管内に8インチのカラム高さを与えるように詰めるような態様で調製した。親油性混合非イオン性界面活性剤集合体の形態にある上記例10に示した処方物を水で0.08%のビフェントリンにまで希釈し、そしてこの希釈液の2mLをピペットで上記土壌カラムの表面に適用し、その後直ちに希釈剤として20mLの二重蒸留水を適用した。24時間放置した後に、このプラスチック管を分割し、そして土壌カラムを露出させた。次いで、土壌を1インチの部分に分割し、続いて20mLのHPLC等級メタノールを有する密封ガラス瓶中に置き、そして30分にわたって超音波浴中に置いてビフェントリンを抽出した。超音波処理後に、各抽出物の2mL試料を遠心分離用の小瓶に置き、そして10,000rpmで10分間遠心分離していかなる無関係の粒状物質も沈殿させた。次いで、透明な上澄み液をHPLCカラム上に注入し(逆相)、そして土壌の各1インチの部分に存在するビフェントリンの濃度を決定した。これに平行して、商用の乳化性濃縮物(EC)、即ちビフェントリン処方物も水で0.08%の活性成分にまで希釈し、そして土壌カラムを上記と同一の態様で処理した。
【0137】
ビフェントリンレベルの算出のために使用した外部標準水により2回分析した5種の反復試験物の平均の結果を以下の表9及び10に与えているが、この場合に、これらの結果は、各1インチの部分に存在する適用ビフェントリンの%として表している。
【0138】
【表49】

【0139】
【表50】

【0140】
これらの結果は、親水性混合非イオン性界面活性剤集合体が慣用のEC処方物と比較して表面への局部的な適用後に土壌全体にわたって該活性成分をさらに均一に付着させることを明らかに実証している。さらに、該活性成分は、さらに深い深さにまで付着(3〜6インチの部分に、MNSAで32.45%の全活性成分に対し、ECで13.93%の全活性成分)したことから、これは、土壌で発生する害虫の非常に良好な駆除を与えることが予期されるであろう。
【0141】
第2の実験において、例5で与えられ且つ水溶性小袋[PVAフィルム]内に収容された処方物を水で希釈して0.08%のビフェントリン濃度を与え、そして、この溶液を使用して上記の方法で説明した通りに土壌カラムを処理した。土壌カラム全体にわたるビフェントリンの分布を表11及び12に与えているが、これらの表では、標準的なEC処方物と比較している。
【0142】
【表51】

【0143】
【表52】

【0144】
界面活性剤:ビフェントリン比が増大したこの処方物では、土壌中にかなりの深さまで活性成分が良好に分布していることが見て取れるが、これは、土壌中で発生する害虫の駆除をかなり改善させる可能がある。
【0145】
例B:材木への局部的な適用
従来、材木は、石油系の溶媒の殺虫剤又は殺菌剤溶液をスプレー又はブラシ塗布することによって現場で処理されていた。SC及びEC型の系の希釈液(水による)のような従来の水をベースとする系を試験したが、これらのものは、材木の地下面への浸透が乏しい点で効果がないことが証明された。表面塗布による材木の処理の際には、産み立ての卵が材木に蔓延することから保護するために表面で又はその近くで活性成分のいくつかを付着させることが必要であり、また、材木中に存在する幼虫を撲滅させるために該材木に5〜6mmの深さにまで及ぶ「毒性外皮」を与えることが必要である。溶媒をベースとする系は、この態様で材木に塗布されたときに、このタイプの付着パターンを与える。
【0146】
材木の構造は、流体が木に輸送される典型的には1〜10ミクロンの範囲の直径を有する多数の毛細管を有する。SC及びEC系で失敗したのは、主として、殺虫剤活性成分を含有する分散相の粒度が比較的大きいためである(この粒度はこれらの毛細管と同程度の大きさであろう)。
【0147】
ここで説明する混合非イオン性界面活性剤集合体は、10〜100nm(0.01〜0.1ミクロン)の範囲の典型的な集合体直径を有するため、結果として、該界面活性剤が材木表面の効果的な湿潤をも可能にし得る場合には特に、これらのものが溶媒に類似する態様で作用することが予期され得る。
【0148】
初期の研究において、例9に与えたようなビフェントリン混合非イオン性集合体処方物を水で希釈して0.03%(w/w)のビフェントリン濃度を与え、そしてこれをスコットランド松辺材の根の表面に平方メートル当たり240mLの割合で塗布した。同時に、8%ビフェントリンSC処方物の商用試料も同様に使用レベルに希釈し、そしてスコットランド松辺材ブロックに同一の割合で塗布した。
【0149】
続いて、これら処理済みのブロックを周囲条件下で7日間放置した。次いで、材木の薄い部分(約0.125mm)を材木ブロックから平かんなを使用して除去した(部分を秤量し、そして正確な厚さを特定のブロックにおける木の密度を使用して決定した)。続いて、これらの部分を2mLのメタノール(HPLC等級)中で1時間にわたり超音波処理することによって抽出し、そして殺虫剤の濃度をHPLC法によって分析的に決定した。
【0150】
この研究において、材木(表面層)が決定された場合に上部0.25mmで見出された適用活性成分の割合及びそれらの結果は、以下の表13に示した通りである。
【0151】
【表53】

【0152】
明らかに、予期される通り、SC処方物は、その活性成分の非常に大きな割合が表面層に付着しているため、材木の地下面には浸透していない。
【0153】
第2の研究では、上記例3で与えたようなペルメトリンをベースとするMNSA処方物を、商用のEC処方物と共に、水で希釈して0.1%(w/w)のペルメトリン濃度を与え、そして上記の通りに材木ブロックに塗布した。また、対照として、Shellsol A(ナフテン溶媒)に溶解してなる0.1%(w/w)ペルメトリン溶液も試験した。部分を6mmにまで解体し、そして各部分におけるペルメトリンの%を決定した。それらの結果を以下の表14に与える。
【0154】
【表54】

【0155】
MNSA処方物は、溶媒をベースとする溶液と非常に類似した分析結果を与えるが、EC系は、上部1mm層における活性成分が80%以上の非常に浅い付着を与える。
【0156】
従って、説明した水不溶性界面活性剤は、好ましい具体例では、水不溶性活性成分を、要望通りに、例えば表面又は植物にスプレーすることによって供給するための水キャリヤーに可溶化させ又は乳化させることを可能にする。さらに、好ましい具体例は、相分離がないという利点を与える。相分離がないことは、上記表1により活性成分として合成ピレスロイド殺虫剤を含有するMNSA処方物で生じた結果を使用した以下の表15で実証される。
【0157】
【表55】

【0158】
上記明細書においては、特に重要であると思われる本発明の特徴に注意を向けようとしたが、本出願人は、特に強調されているかされていないかを問わず図表に言及される及び/又は示されるいかなる特許性のある特徴又は特徴の組合せに対する保護を要求する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非イオン性界面活性剤集合体であって、該集合体が水不溶性殺生物剤活性成分、非イオン性界面活性剤系及び水を含み、ここで、該集合体は、有機溶媒を実質的に含まず、該非イオン性界面活性剤系は、第1非イオン性界面活性剤及び第2非イオン性界面活性剤を含み、該第1非イオン性界面活性剤は、水に可溶の少なくとも1種の非イオン性主界面活性剤を含み且つ25℃を超える水の曇り点を有し、しかも該第2非イオン性界面活性剤は、水に不溶の少なくとも1種の非イオン性補助界面活性剤を含み且つ25℃をよりも低い水の曇り点を有することを特徴とする、非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項2】
前記活性成分の質量分率[Pact]m、全非イオン性界面活性剤の質量分率[Psurf]m及び非イオン性補助界面活性剤の質量分率[Pcos]mが次の通りであることを特徴とする、請求項1に記載の非イオン性界面活性剤集合体:
活性成分の質量分率[Pact]m:0.002〜0.431
全非イオン性界面活性剤の質量分率[Psurf]m:0.569〜0.998
非イオン性補助界面活性剤の質量分率[Pcos]m:0.07〜0.787。
【請求項3】
イオン性界面活性剤を実質的に含まない、請求項1又は2に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項4】
前記殺生物剤が殺虫剤、殺菌剤、除草剤、殺線虫剤、殺ダニ剤のうちの1種以上から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項5】
殺虫剤がピレスロイド、有機ホスフェート化合物、フェニルエーテル、ベンゾイル尿素、カルバメート、、ニコチノイド、ピリジンカルボキシアミドのうちの1種以上から選択される、請求項4に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項6】
前記殺虫剤がピレスロイドを含む場合には、該ピレスロイドはビフェントリン、ゼータシペルメトリン、アルファシペルメトリン、テトラメトリン、ラムダシハロトリン、フェンバレレート、シフルトリン、ビオレスメトリン、ペルメトリン、デルタメトリンのうち1種以上から選択され;前記殺虫剤が有機ホスフェート化合物を含む場合には、該有機ホスフェート化合物は、クロロピリホス−エチル、クロロピリホス−メチル、ピリミホス−メチル、フェニトロチオンのうち1種以上から選択され;前記殺虫剤がフェニルエーテルを含む場合には、該フェニルエーテルはピリプロキシフェンを含み;前記殺虫剤がベンゾイル尿素を含む場合には、該ベンゾイル尿素はフルフェノクスロンを含み;前記殺虫剤がカルバメートを含む場合には、該カルバメートはフェノキシカルブ、カルボスルファンを含み;前記殺虫剤がニコチノイドを含む場合には、該ニコチノイドはアセタミプリドを含み;前記殺虫剤がピリジンカルボキシアミドを含む場合には、該ピリジンカルボキシアミドはフロニカミドを含む、請求項5に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項7】
前記殺菌剤がコナゾール化合物及びカルバメートのうちの1種以上から選択される、請求項5に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項8】
前記コナゾール化合物がアザコナゾール、シプロコナゾール、プロピコナゾール、テブコナゾールのうち1種以上から選択され、前記カルバメートがIPBC(3−インド−2−プロピニルブチルカルバメート)を含む、請求項7に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項9】
前記除草剤がトリアゾリノン、アリールトリアゾリン、ホスホン酸のうちの1種以上から選択される、請求項4に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項10】
前記除草剤がトリアゾリノンを含む場合には、該トリアゾリノンはカルフェントラゾン−エチルを含み;前記除草剤がアリールトリアゾリノンを含む場合には、該アリールトリアゾリノンはスルフェントラゾンを含み;前記除草剤がホスホン酸を含む場合には、該ホスホン酸はグリホセートを含む、請求項9に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項11】
前記非イオン性界面活性剤系が、アルコキシル化アルコール、アミンエトキシレート、エステルエトキシレート、ひまし油エトキシレート、脂肪酸エトキシレート、アミドエトキシレート、エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロック共重合体、アルコキシル化オイル、アルコキシル化植物油、アルコキシル化脂肪酸、アルキルアミドエステル又は食品用エステルのうち1種以上を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項12】
前記アルコキシル化アルコールがアルコールエトキシレートを含み且つ直鎖又は分岐鎖を有する、請求項11に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項13】
前記アルコキシル化アルコールが8〜18個の炭素原子、好ましくは9〜13個の炭素原子の鎖長を有し、且つ、1分子当たり1〜50モルのエチレンオキシド、より好ましくは1分子当たり2〜12モルのエチレンオキシドを含む、請求項11又は12に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項14】
前記エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロック共重合体が10重量%〜90重量%の範囲のエチレンオキシド含有量、好ましくは、10重量%〜40重量%、より好ましくは10重量%〜20重量%の範囲のエチレンオキシド含有量を有する、請求項11に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項15】
前記アルコキシル化植物油がアルコキシル化ひまし油を含む、請求項11に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項16】
前記アルコキシル化ひまし油が、1分子当たり5〜200モルのエチレンオキシド、好ましくは1分子当たり5〜100モルのエチレンオキシド、より好ましくは1分子当たり5〜60モルのエチレンオキシドのエチレンオキシド含有量を有するエトキシル化ひまし油を含む、請求項15に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項17】
前記水不溶性成分が、0.001重量%〜50重量%、好ましくは0.001重量%〜40重量%の範囲の量で前記非イオン性界面活性剤集合体中に存在する、請求項1〜16のいずれかに記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項18】
前記水不溶性成分が、0.1重量%〜40重量%、好ましくは1重量%〜40重量%、より好ましくは2重量%〜40重量%の範囲の量で非イオン性界面活性剤集合体中に存在する、請求項17に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項19】
前記非イオン性界面活性剤集合体が油中水型ミクロエマルジョン、ミセル溶液又は共溶液の形態にある親油性混合非イオン性界面活性剤集合体を含む、請求項18に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項20】
前記水不溶性殺生物剤活性成分が前記非イオン性界面活性剤集合体中に0.1重量%〜35重量%、好ましくは1重量%〜30重量%、より好ましくは2重量%〜25重量%の範囲の量で存在する、請求項17に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項21】
前記非イオン性界面活性剤集合体が六方状、ラメラ、円柱状又は球状構造を有する、請求項20に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項22】
前記水不溶性殺生物剤活性成分が前記非イオン性界面活性剤集合体中に0.001重量%〜20重量%、好ましくは0.001重量%〜15重量%の範囲の量で存在する、請求項17に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項23】
前記非イオン性界面活性剤集合体が水中油型ミクロエマルジョン、ミセル溶液又は共溶液の形態にある親水性混合非イオン性界面活性剤集合体を含む、請求項22に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項24】
前記非イオン性界面活性剤系が、前記非イオン性界面活性剤集合体中に、0.1重量%〜80重量%、好ましくは0.2重量%〜60重量%、より好ましくは0.2重量%〜40重量%の範囲で存在する、請求項1〜23のいずれかに記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項25】
前記全界面活性剤質量分率[Psurf]mが0.5〜0.998の範囲、好ましくは0.569〜0.96の範囲にあり、しかも補助界面活性剤質量分率[Pcos]mが0.02〜0.9、好ましくは0.07〜0.787の範囲にある、請求項24に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項26】
前記界面活性剤系が前記非イオン性界面活性剤集合体中に10重量%〜90重量%、好ましくは10重量%〜60重量%、さらに好ましくは10重量%〜40重量%の範囲の量で存在する、請求項24又は25に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項27】
前記界面活性剤系が前記非イオン性界面活性剤集合体中に10重量%〜60重量%、好ましくは10重量%〜40重量%、さらに好ましくは10重量%〜30重量%の範囲の量で存在する、請求項24又は25に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項28】
前記界面活性剤系が前記非イオン性界面活性剤集合体中に0.2重量%〜40重量%、好ましくは0.2重量%〜35重量%、さらに好ましくは0.2重量%〜25重量%の範囲の量で存在する、請求項24又は25に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項29】
前記水が前記非イオン性界面活性剤集合体中に0.1重量%〜99.5重量%、好ましくは5重量%〜99.5重量%、より好ましくは10重量%〜99.5重量%の範囲の量で存在する、請求項1〜28のいずれかに記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項30】
前記水が前記非イオン性界面活性剤集合体中に0.1重量%〜35重量%、好ましくは5重量%〜35重量%、より好ましくは10重量%〜35重量%の範囲の量で存在する、請求項29に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項31】
前記水が前記非イオン性界面活性剤集合体中に50重量%〜99.5重量%、好ましくは55重量%〜99.5重量%、より好ましくは60重量%〜99.5重量%の範囲の量で存在する、請求項29に記載の非イオン性界面活性剤集合体。
【請求項32】
水不溶性成分の可溶化方法であって、水不溶性殺生物剤活性成分と非イオン性界面活性剤系及び水とを混合させて該水不溶性成分が可溶化した非イオン性界面活性剤集合体を与えることを含み、ここで、該集合体は有機溶媒を実質的に含まず、該非イオン性界面活性剤系は、第1非イオン性界面活性剤及び第2非イオン性界面活性剤を含み、該第1非イオン性界面活性剤は、水に可溶の少なくとも1種の非イオン性主界面活性剤を含み且つ25℃を超える水の曇り点を有し、しかも該第2非イオン性界面活性剤は、水に不溶の少なくとも1種の非イオン性補助界面活性剤を含み且つ25℃よりも低い水の曇り点をを有することを特徴とする、水不溶性成分の可溶化方法。
【請求項33】
前記集合体が請求項1〜31のいずれかに記載のものである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項1〜31のいずれかに記載の非イオン性界面活性剤集合体を収容した水溶性包装用部材を備える包装製品。
【請求項35】
前記水溶性包装部材が密閉小袋を備える、請求項34に記載の包装製品。
【請求項36】
前記水溶性包装用部材がポリビニルアルコール(PVA)のような水溶性プラスチック材料から形成された、請求項34又は35に記載の包装製品。

【公表番号】特表2008−515869(P2008−515869A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535240(P2007−535240)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003860
【国際公開番号】WO2006/038019
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(507116547)エンヴァイロクエスト グループ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】