説明

非侵襲生体情報測定装置

【課題】 新たに接触圧用センサを設けることなく音響センサのみで測定異常を検出するため小型化が可能となる非侵襲生体情報測定装置を提供する。
【解決手段】 光源20を制御する制御手段10と、特定波長の光を生体30に照射する光源20と、生体30で発生した光音響波信号を検出する光音響検出手段40と、光音響検出手段40の出力から血糖値を推定する特徴量推定手段50と、血糖値の推定結果を表示する特徴量表示手段60を備え、特徴量推定手段50において特定波長の光が光音響検出手段40に到達することにより生じる光音響波信号の変化を用いて測定状態を検出し、検出結果が異常状態であれば再測定等の処置をとることを特徴としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関し、より詳細には生体からの光音響波信号に基づいて測定エラーを検出し、測定精度を向上することが可能な非侵襲生体情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な生活習慣病である糖尿病の患者数は世界的に増加傾向にある。糖尿病患者は、糖尿病による合併症を抑制し、患者の生活の質を向上するために、日常的な血糖コントロールが必要である。そのため、患者は医師の指導のもと、毎日定期的に血糖値を測定しなければならない。血糖値を測定する代表的な方法としては、患者の指を刺して血液を採取し血糖値を測定する侵襲型の血糖測定装置がある。指を刺して血液を採取する際に手間と痛みを伴うこと、さらに感染症などの危険が伴うことから、血液の採取を必要としない、非侵襲型の血糖測定装置が提案されている。
【0003】
非侵襲型の血糖測定装置として、光音響効果を用いた「生物学的測定システム」が記載されている。グルコースに吸収される波長の光を、生物学的測定システムから指先のような生体の部分に照射し、照射された光は生体内の比較的小さい焦点領域に集光され、また一般的に光はグルコースに吸収されて焦点領域と隣接する領域の組織内で運動エネルギーに変換される。運動エネルギーは、吸収組織領域の温度及び圧力を増大させ、音波を生成する。この音波を、以下「光音響波信号」と表記する。光音響波信号は吸収組織領域から放射され、生物学的測定システムが備える音響センサによって検出される。音響センサは生体表面と接するよう装着される。光音響波信号の強度は、吸収組織領域内のグルコースの関数であり、音響センサによって計測された強度は血糖値を調べるために使用される(例えば、特許文献1)。
【0004】
このようなシステムでは生体表面と音響センサ間の接触圧が変化した場合に光音響波信号が音響センサに正常に伝わらず、その結果測定が不安定になることがある。そこで生体音響センサ間の接触圧を圧力センサで検出することで測定異常を検出する方法が開示されている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特表2001−526557号公報
【特許文献2】特開2003−111750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような方法では音響センサに加えて測定異常を検出するための接触圧用センサがさらに必要になるため、装置が複雑化し小型化が困難になるという課題を有していた。
【0006】
本発明は、従来の課題を解決するもので、接触圧用センサを用いることなく音響センサのみで測定異常を検出するため小型化が可能となる非侵襲生体情報測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来の課題を解決するために、本発明の非侵襲生体情報測定装置は、生体表面に照射した光により生体内の特定物質が光のエネルギーを吸収して発する光音響波信号を生体表面で検出することによって血糖値を推定する非侵襲生体情報測定装置において、1回の血糖値の推定に対して、少なくとも1回以上繰り返されるパルス光の照射を制御するための照射制御信号を出力する制御手段と、前記照射制御信号により前記パルス光を生体表面に向かって照射する少なくとも一つの光源と、前記光源から照射された前記パルス光もしくは生体で反射した反射パルス光と前記生体内の特定物質により発生した前記光音響波信号を少なくとも1チャンネル以上の検出器で検出し、所定の周波数でサンプリングした検出信号を出力する光音響検出手段と、前記少なくとも1回以上繰り返されるパルス光の照射回数分前記検出信号を平均化した少なくとも1チャンネル以上の平均化検出信号を用いて前記血糖値を推定する特徴量推定手段と、前記血糖値を表示する特徴量表示手段とを備え、前記特徴量推定手段は前記パルス光もしくは前記反射パルス光が前記光音響検出手段に到達することにより生じる前記検出信号の変化を用いて測定状態が正常であるか否か判定する、ことを特徴とするものである。
【0008】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記特徴量推定手段は、1回の血糖値推定において、前記パルス光をm回(mは自然数)繰り返し照射することにより得られるm個の前記検出信号のうち、n個(nはm以下の自然数)の前記検出信号を平均化して測定状態評価信号を作成し、血糖値の推定を行う度に前記測定状態評価信号において前記パルス光の照射直後に現れる変化から振幅レベルを抽出し、p回目(pは2以上かつ血糖値推定終了回数までの自然数)の血糖値推定時に前記測定状態評価信号から抽出された前記振幅レベルと、p回目以前の血糖値推定時に前記測定状態評価信号から抽出された前記振幅レベルから振幅変化量を算出し、前記振幅変化量が測定状態判定レベル以上である場合は測定異常であると判定する、ことを特徴としたものである。
【0009】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記特徴量推定手段は、血糖値推定の度に前記振幅変化量を前記特徴量推定手段の内部に設けたメモリに蓄え、p回目(pは2以上の自然数)の血糖値推定時に、前記メモリに蓄えられている2回以上かつp回以下の複数の前記振幅変化量をフィルタリングし、フィルタリングされた前記振幅変化量が測定状態判定レベル以上である場合は測定異常であると判定することを特徴とする、ことを特徴としたものである。
【0010】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記特徴量推定手段は、p回目の血糖値推定時に得られる前記測定状態評価信号から抽出した前記振幅レベルと、p回目以前の血糖値推定時に得られる前記測定状態評価信号から抽出した前記振幅レベルとの二乗誤差を用いて前記振幅変化量を計算することを特徴とする、ことを特徴としたものである。
【0011】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記特徴量推定手段は、少なくとも1チャンネル以上の前記測定状態評価信号から振幅レベルをそれぞれ抽出し、前記振幅レベルをチャンネル数で平均化した平均振幅レベルを用いて前記振幅変化量を計算することを特徴とする、ことを特徴としたものである。
【0012】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記特徴量推定手段は、測定状態が正常でない状態の連続する回数をカウントする測定異常状態連続数カウンタを備え、前記測定異常状態連続数カウンタのカウント値が異常状態連続検出上限値に達した場合に、血糖値推定動作を中止するとともに、前記特徴量表示手段を通じてユーザーに通知することを特徴とする、ことを特徴としたものである。
【0013】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記測定異常状態連続数カウンタは、前記非侵襲生体情報測定装置の動作開始前及び、前記測定状態を判定した結果が正常である場合に0にリセットされることを特徴とする、ことを特徴としたものである。
【0014】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記特徴量推定手段は、1回の血糖値の推定において、m回繰り返される前記パルス光の照射回数のうち、照射回数がそれぞれ均一となるq個(qは2以上の自然数)の前記測定状態評価信号、もしくはq個の前記測定状態評価信号における前記パルス光の照射回数の和がm回になるようにそれぞれ任意の前記パルス光の照射回数を設定したq個の前記測定状態評価信号を作成し、q個の前記測定状態評価信号のうち任意の前記測定状態評価信号を用いて前記測定状態を判定することを特徴とする、ことを特徴としたものである。
【0015】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記特徴量推定手段は、1回の血糖値の推定において、q個の前記測定状態評価信号から前記測定状態をそれぞれ判定し、測定状態が正常と判定された回数が正常状態判断定数より大である場合は最終的に測定状態が正常であると判定し、q個の前記検出信号のうち測定状態が正常と判定された前記検出信号のみを平均化して前記平均化検出信号を作成することを特徴とする、ことを特徴としたものである。
【0016】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記特徴量推定手段は、1回の血糖値の推定において、q個の前記測定状態評価信号から前記測定状態をそれぞれ判定し、測定状態が正常であると判定された回数が正常状態判断定数以下である場合は最終的に測定状態が正常でないと判定し、血糖値推定動作を中止するとともに、前記特徴量表示手段を通じてユーザーに通知することを特徴とする、ことを特徴としたものである。
【0017】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記特徴量推定手段は、1回の血糖値の推定において、q個の前記測定状態評価信号から前記測定状態をそれぞれ判定し、測定状態が正常であると判定された回数が正常状態判断定数以下である場合は測定状態が正常でないと判定し、前記少なくとも1回以上パルス光の照射を行ってから前記測定状態を判定するまでの一連の動作を再度行い、その結果、測定状態が正常でないと判定された場合は血糖値推定動作を中止するとともに、前記特徴量表示手段を通じてユーザーに通知することを特徴とする、ことを特徴としたものである。
【0018】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記特徴量推定手段は、書き込みが可能なレジスタを備え、レジスタによって前記測定状態判定レベルを外部から変更することが可能であることを特徴とする、ことを特徴としたものである。
【0019】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記特徴量推定手段は、書き込みが可能なレジスタを備え、レジスタによって前記異常状態連続検出上限値を外部から変更することが可能であることを特徴とする、ことを特徴としたものである。
【0020】
さらに、非侵襲生体情報測定装置において、前記特徴量推定手段は、書き込みが可能なレジスタを備え、レジスタによって前記正常状態判断定数を外部から変更することが可能であることを特徴とする、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の非侵襲生体情報測定装置によれば、前記パルス光が前記光音響検出手段に到達することにより生じる前記検出信号の変化を用いて測定異常を検出することで測定正常もしくは測定異常を判断し、測定異常の場合はその旨をユーザーに通知する、もしくは再測定の処置をとることが可能となるため、精度の高い測定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の非侵襲生体情報測定装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるシステム構成を示す図である。図1において、1は非侵襲生体情報測定装置、20は光源、201はパルス光、30は生体、31は血管、301は光音響波信号、40は光音響検出手段である。非侵襲生体情報測定装置1を構成する光源20、光音響検出手段40以外の他の構成要素については後述する。
【0024】
非侵襲生体情報測定装置1は、生体30の表面に接するように装着し、パルス光201を入射させる。パルス光201は生体30内を伝播し、血管31内のグルコースで吸収され光音響波信号301が生成される。血管31内のグルコースにより生成された光音響波信号301を非侵襲生体情報測定装置1内の光音響検出手段40が検出し、血糖値を推定する。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態1における非侵襲生体情報測定装置1のブロック構成を示す図である。図2において、10は制御手段、50は特徴量推定手段、60は特徴量表示手段であり、制御手段10と光源20と光音響検出手段40と特徴量推定手段50と特徴量表示手段60から非侵襲生体情報測定装置1を構成する。また、101は測定周期信号、102は照射期間信号、103は照射制御信号、104は特徴量表示制御信号、401は検出信号、501は特徴量推定信号、502は再照射要求信号、503は照射回数信号である。
【0026】
制御手段10は光照射を制御するための照射制御信号103を光源20と特徴量表示手段60に出力する。照射制御信号103により制御される光源20は、パルス光201を生体30に向かって照射する。このとき、パルス光201の一部が直接、もしくは生体によって反射して光音響検出手段40に到達する。生体30に照射されたパルス光201によって光音響波信号301が発生する。光音響検出手段40は、光音響波信号301を検出した後、所定の周波数でサンプリングし、検出信号401に変換する。
【0027】
特徴量推定手段50では検出信号401が入力されると、制御手段10から入力される信号(測定周期信号101、照射期間信号102、照射制御信号103)を用いて血糖値の推定を行い、推定血糖値である特徴量推定信号501を特徴量表示手段60に出力するとともに測定異常の場合に更なるパルス光201の照射の要求とその回数を示す再照射要求信号502と照射回数信号503を制御手段10に出力する。測定周期信号101は血糖値の測定周期を示し、照射期間信号102は測定周期の中でパルス光201を繰り返し照射する期間を示す。特徴量表示手段60は特徴量推定信号501を用いて血糖値を表示すると共に特徴量表示制御信号104を用いて非侵襲生体情報測定装置1の測定エラーを表示する。
【0028】
図3は、特徴量推定手段50の構成を示すブロック図である。図3において、510は平均化手段、520は推定手段、530は測定状態検出手段、101は測定周期信号、102は照射期間信号、103は照射制御信号、401は検出信号、501は特徴量推定信号、502は再照射要求信号、503は照射回数信号、511は平均化検出信号、512は平均化終了信号、513は測定状態評価信号、514は測定状態評価開始信号、531は測定状態検出信号である。
【0029】
平均化手段510は、測定周期信号101と照射期間信号102と照射制御信号103と検出信号401を用いて検出信号401の平均化を行い、推定手段520に平均化検出信号511と平均化検出信号511を、測定状態検出手段530に測定状態評価信号513と測定状態評価開始信号514を出力する。
【0030】
推定手段520は、平均化検出信号511を用いて血糖値を推定し、推定結果である特徴量推定信号501を特徴量表示手段60に出力する。
【0031】
測定状態検出手段530は、測定状態評価信号513と測定状態評価開始信号514を用いて測定が正常状態であるか異常状態であるかを判定し、測定状態検出信号531を平均化手段510に出力する。
【0032】
図4は、本発明の実施の形態1における非侵襲生体情報測定装置1の動作を時間軸でプロットしたタイミングチャートである。図4において、(a)は測定周期信号101、(b)は照射期間信号102、(c)は照射制御信号103、(d)は測定状態評価開始信号514、(e)は測定状態検出信号531、(f)は平均化終了信号512、(g)は特徴量推定信号501である。繰り返し測定において1回の測定間隔を測定ユニット(0.1秒)、血糖値を推定するまでの区間を測定基本サイクル(10秒)として測定周期(5分)ごとに一連の動作を行う。
【0033】
以下、図1、図2、図3、図4を用いて、非侵襲生体情報測定装置1が血糖値の連続測定を行う場合の動作を説明する。本発明の実施の形態1において、測定は5分間隔で実施する。
【0034】
まず、非侵襲生体情報測定装置1を図1に示すように患者の腕などの生体30の表面に装着する。その後、患者が非侵襲生体情報測定装置1に設けられた血糖値測定開始スイッチ(図示せず)を起動すると、制御手段10は光源20と光音響検出手段40と特徴量推定手段50が安定動作に入るタイミングで光源20を制御し、血糖値の推定を行う。
【0035】
続いて、図3と図4を用いて時間経過に応じた特徴量推定手段50の詳細な動作について説明する。
【0036】
まず、測定前に図4に示す信号(d)、(f)をLoに、(e)を0に初期化し、1回目の測定を開始する。T4A(時間0分)において、図4(a)に示す測定周期信号101のパルスが発生し、血糖値の推定を行う。ここで、図4(a)の信号1パルスに対して1回の血糖値の推定を行う。
【0037】
測定周期信号101のパルス発生後、(b)に示す照射期間信号102がHiに変化し(T4B)、パルス光201の繰り返し照射期間が開始する。(b)に示す照射期間信号102がHiの間(T4B−T4C)、(c)に示す照射制御信号103には測定ユニットの間隔で繰り返しパルスが発生し、そのパルス毎にパルス光201の照射を行う。
【0038】
本発明の実施の形態1では照射期間信号102がHiの間に60回の照射制御信号103のパルスが発生する。(b)に示す照射期間信号102がLoに変化すると(T4C)、パルス光201の繰り返し照射期間が終了し、平均化手段510において60回分の検出信号401を平均化する。そして平均化した結果を平均化手段510内部に設けたメモリに格納するとともに測定状態評価信号513として測定状態検出手段530に出力する。また、このとき(d)に示す測定状態評価開始信号514のパルスが発生し(T4D)、測定状態検出手段530において測定状態が正常もしくは異常であるかの判定を開始する。
【0039】
測定状態検出手段530では、1回目の測定時は測定状態評価信号513を測定状態検出手段530の内部に設けたメモリに蓄えるのみの動作を行い、(e)に示す測定状態検出信号531を1として出力する(T4E)。
【0040】
ここで、測定状態検出信号531は0から3の値を示し、0は初期状態、1は判定準備中、2は測定正常状態、3は測定異常状態を示す。
【0041】
(e)に示す測定状態検出信号531が1に変わると平均化終了信号512のパルスが発生し(T4F)、平均化手段510内部のメモリに蓄えられていた検出信号401の平均化結果が平均化検出信号511として推定手段520に送られる。
【0042】
推定手段520において血糖値の推定が行われると、(g)に示す特徴量推定信号501が更新される(T4G)。
【0043】
時間5分になると2回目の測定を開始する。T4Hにおいて、(a)に示す測定周期信号101のパルスが発生し、1回目の測定と同様に測定周期信号101のパルス発生後、(b)に示す照射期間信号102がHiに変化し(T4I)、パルス光201の繰り返し照射期間が開始する。
【0044】
(b)に示す照射期間信号102がHiの間(T4I−T4J)、(c)に示す照射制御信号103には測定ユニットの間隔で繰り返しパルスが発生し、そのパルス毎にパルス光201の照射を行う。
【0045】
(b)に示す照射期間信号102がLoに変化すると(T4J)、パルス光201の繰り返し照射期間が終了し、1回目の測定と同様に検出信号401を平均化した結果を平均化手段510内部に設けたメモリに格納するとともに測定状態評価信号513として測定状態検出手段530に出力する。また、このとき(d)に示す測定状態評価開始信号514のパルスが発生し(T4K)、測定状態検出手段530において測定状態が正常もしくは異常であるかの判定を開始する。
【0046】
測定状態検出手段530では、メモリに蓄えておいた1回目測定時の測定状態評価信号513と、新たに入力された2回目測定時の測定状態評価信号513を用いて測定状態の判定を行う。測定状態の判定方法に関しては後述する。ここでは、2回目の測定状態が正常であると判定した場合の説明を行う。
【0047】
(e)に示す測定状態検出信号531が2に変わると平均化終了信号512のパルスが発生し(T4M)、平均化手段510内部のメモリに蓄えられていた2回目測定時の検出信号401の平均化結果が平均化検出信号511として推定手段520に送られる。
【0048】
推定手段520において血糖値の推定が行われると、(g)に示す特徴量推定信号501が更新される(T4N)。
【0049】
時間10分以降は5分おきに2回目の測定と同様の方法において測定を行う。
【0050】
ここまで測定状態が正常である場合の説明を行ったが、次に測定状態が異常状態になった場合の動作の説明を行う。
【0051】
図5は、非侵襲生体情報測定装置1の別の動作を時間軸でプロットしたタイミングチャートであり、(a)は測定周期信号101、(b)は照射期間信号102、(c)は照射制御信号103、(d)は測定状態評価開始信号514、(e)は測定状態検出信号531、(f)は平均化終了信号512、(g)は特徴量推定信号501である。
【0052】
図4のタイミングチャートと比較して(d)、(e)、(f)、(g)の動作が異なる。
【0053】
まず、測定前に図5に示す信号(d)、(f)をLoに、(e)を0に初期化し、1回目の測定を開始する。
【0054】
T5A(時間0分)において、図5(a)に示す測定周期信号101のパルスが発生し、血糖値の推定を行う。ここで、図5(a)の信号1パルスに対して1回の血糖値の推定を行う。
【0055】
測定周期信号101のパルス発生後、(b)に示す照射期間信号102がHiに変化し(T5B)、パルス光201の繰り返し照射期間が開始する。
【0056】
(b)に示す照射期間信号102がHiの間(T5B−T5C)、(c)に示す照射制御信号103には測定ユニットの間隔で繰り返しパルスが発生し、そのパルス毎にパルス光201の照射を行う。
【0057】
(b)に示す照射期間信号102がLoに変化すると(T5C)、パルス光201の繰り返し照射期間が終了し、平均化手段510において60回分の検出信号401を平均化する。そして平均化した結果を平均化手段510内部に設けたメモリに格納するとともに測定状態評価信号513として測定状態検出手段530に出力する。また、このとき(d)に示す測定状態評価開始信号514のパルスが発生し(T5D)、測定状態検出手段530において測定状態が正常もしくは異常であるかの判定を開始する。
【0058】
測定状態検出手段530では、1回目の測定時は測定状態評価信号513を測定状態検出手段530の内部に設けたメモリに蓄えるのみの動作を行い、(e)に示す測定状態検出信号531を1として出力する(T5E)。
【0059】
(e)に示す測定状態検出信号531が1に変わると平均化終了信号512のパルスが発生し(T5F)、平均化手段510内部のメモリに蓄えられていた検出信号401の平均化結果が平均化検出信号511として推定手段520に送られる。
【0060】
推定手段520において血糖値の推定が行われると、(g)に示す特徴量推定信号501が更新される(T5G)。
【0061】
時間5分になると2回目の測定を開始する。T5Hにおいて、(a)に示す測定周期信号101のパルスが発生し、1回目の測定と同様に測定周期信号101のパルス発生後、(b)に示す照射期間信号102がHiに変化し(T4I)、パルス光201の繰り返し照射期間が開始する。
【0062】
(b)に示す照射期間信号102がHiの間(T5I−T5J)、(c)に示す照射制御信号103には測定ユニットの間隔で繰り返しパルスが発生し、そのパルス毎にパルス光201の照射を行う。
【0063】
(b)に示す照射期間信号102がLoに変化すると(T5J)、パルス光201の繰り返し照射期間が終了し、1回目の測定と同様に検出信号401を平均化した結果を平均化手段510内部に設けたメモリに格納するとともに測定状態評価信号513として測定状態検出手段530に出力する。また、このとき(d)に示す測定状態評価開始信号514のパルスが発生し(T5K)、測定状態検出手段530において測定状態が正常もしくは異常であるかの判定を開始する。
【0064】
ここで2回目の測定状態が異常状態であると判定されると(e)に示す測定状態検出信号531が3に変化する。
【0065】
測定状態検出信号531が3に変化した場合は再照射要求信号502が制御手段10に伝えられ、(b)に示す照射期間信号102が再びHiに変化し(T5M)、パルス光201の繰り返し照射期間が開始する。
【0066】
(b)に示す照射期間信号102がHiの間(T5M−T5N)、(c)に示す照射制御信号103には測定ユニットの間隔で繰り返しパルスが発生し、そのパルス毎にパルス光201の照射を行う。ここでパルス光201の追加照射回数は照射回数信号503の示す照射回数とし、本実施の形態1では正常状態の場合と同じ回数である60回とする。
【0067】
(b)に示す照射期間信号102がLoに変化すると(T5N)、パルス光201の繰り返し照射期間が終了し、平均化手段510において60回分の検出信号401を平均化する。そして平均化した結果を平均化手段510内部に設けたメモリに格納するとともに測定状態評価信号513として測定状態検出手段530に出力する。また、このとき(d)に示す測定状態評価開始信号514のパルスが発生し(T5O)、測定状態検出手段530において測定状態が正常もしくは異常であるかの判定を開始する。
【0068】
ここで、測定状態が正常であると判定されると、(e)に示す測定状態検出信号531が2に変化する(T5P)。
【0069】
(e)に示す測定状態検出信号531が2に変わると平均化終了信号512のパルスが発生し(T5Q)、平均化手段510内部のメモリに蓄えられていたT5MからT5Nの期間における検出信号401の平均化結果が平均化検出信号511として推定手段520に送られる。
【0070】
推定手段520において血糖値の推定が行われると、(g)に示す特徴量推定信号501が更新される(T5R)。
【0071】
時間10分以降は5分おきに2回目の測定と同様の方法において測定を行う。
【0072】
次に、測定状態検出手段530における測定状態の判定方法について図6、図7を用いて詳細に説明する。
【0073】
図6は測定状態検出手段530の構成を示すブロック図である。図6において、513は測定状態評価信号、514は測定状態評価開始信号、531は測定状態検出信号、540は振幅検出手段、550は変化量検出手段、560は測定状態判定手段、570はレジスタ、541は振幅検出信号、551は振幅変化量、571は測定状態判定レベルである。
【0074】
振幅検出手段540は、測定状態評価信号513と測定状態評価開始信号514を用いて測定状態評価信号513の振幅を検出し、振幅検出信号541を変化量検出手段550に出力する。
【0075】
変化量検出手段550は振幅検出信号541から変化量を検出し、振幅変化量551を測定状態判定手段560に出力する。
【0076】
測定状態判定手段560は振幅変化量551とレジスタ570から得られる測定状態判定レベル571を用いて測定状態検出信号531を出力する。
【0077】
図7は、本発明の実施の形態1における測定状態検出手段530の動作を時間軸でプロットしたタイミングチャートである。図7において、(a)は測定状態評価開始信号514、(b)は測定状態評価信号513、(c)は振幅変化量551、(d)は測定状態検出信号531である。
【0078】
続いて測定状態検出手段530の詳細な動作について図6と図7を用いて説明する。ここでは、測定状態が2回目の測定では正常状態、3回目の測定では異常状態と判定された場合の動作について説明する。
【0079】
まず、測定前に図7に示す信号(c)をLoに初期化し、レジスタ570では測定状態の判定基準となる測定状態判定レベル571の値をあらかじめ設定しておく。
【0080】
1回目の測定において、 図7(a)に示す測定状態評価開始信号514のパルス(T7A)が発生すると、(b)に示す測定状態評価信号513のピークレベルをT7Bのタイミングで検出する。このとき検出されたピークレベルをL7Aとする。
【0081】
振幅検出手段540で検出するピークはパルス光201の照射直後にパルス光201の一部もしくは生体30で反射したパルス光201が光音響検出手段40に到達することにより発生する。
【0082】
検出したピークレベルを変化量検出手段550内部に設けたメモリ(図示せず)に格納する。このとき、(c)に示す振幅変化量551は変化しない。
【0083】
その後、(d)に示す測定状態検出信号531が1に変化する(T7C)。2回目の測定において、(a)に示す測定状態評価開始信号514のパルス(T7D)が発生すると、(d)に示す測定状態評価信号513のピークレベルをT7Eのタイミングで検出する。このとき検出されたピークレベルをL7Bとする。
【0084】
ピークレベルの検出後、変化量検出手段550では1回目の測定時にメモリに保存したピークレベルL7Aと、2回目の測定時に検出されたピークレベルL7Bの2乗誤差を演算し、(c)に示す振幅変化量551に演算結果L7C(L7B×L7B−L7A×L7A)を示す信号を発生する(T7F)。
【0085】
そして演算結果が測定状態判定レベル571(L7D)より小さい場合は、測定状態検出信号531を2に変化する(T7G)とともに、検出したピークレベルL7Bを変化量検出手段550内部に設けたメモリ(図示せず)に格納する。
【0086】
3回目の測定において、(a)に示す測定状態評価開始信号514のパルス(T7H)が発生すると、(d)に示す測定状態評価信号513のピークレベルをT7Iのタイミングで検出する。このとき検出されたピークレベルをL7Eとする。
【0087】
ピークレベルの検出後、変化量検出手段550では2回目の測定時にメモリに保存したピークレベルL7Bと、3回目の測定時に検出されたピークレベルL7Eの2乗誤差を演算し、(c)に示す振幅変化量551に演算結果L7F=(L7E×L7E−L7B×L7B)を示す信号を発生する(T7J)。
【0088】
演算結果が測定状態判定レベル571(L7D)以上である場合は、測定状態検出信号531を3に変化する(T7G)。このとき、変化量検出手段550内部に設けたメモリの内容は更新しない。以上の動作により、測定状態の判定を行う。
【0089】
本実施の形態1では検出信号401が1chの場合について説明したが、例えば複数chの検出信号401を備える非侵襲生体情報測定装置においても本発明は適用可能である。その場合は、上述した振幅検出手段540において、複数chのピークレベルをそれぞれ検出してから、それぞれのピークレベルを2乗した後にチャンネル数で平均化したものを振幅検出信号541とすればよい。
【0090】
測定状態の判定基準となる測定状態判定レベル571の設定方法は、例えば工場出荷前の調整工程において、振幅変化量551の大きさが変化するように環境負荷試験を行い、そのときに得られた推定血糖値の精度をモニタしながら必要な血糖値推定精度を満足する測定状態判定レベル571を決定すればよい。
【0091】
また、測定状態判定レベル571はレジスタ570により、工場出荷後に外部から任意の値に設定することも可能である。
【0092】
そのためには本実施の形態1における非侵襲生体情報測定装置1の使用環境によって適応的に測定状態の判断基準を変更すればよい。例えば、定期的に侵襲型血糖測定装置による血糖値測定を行い、その結果を用いて血糖値推定精度を保つ非侵襲生体情報測定装置であれば、非侵襲型の推定血糖値を求める際に測定状態判定レベル571をパラメータとして複数の推定血糖値を求め、その中で最も精度の高い結果が得られた測定状態判定レベルでレジスタ570の値を更新すればよい。
【0093】
本実施の形態1では、測定状態が異常状態であると判断した次の測定で異常状態が解消されて正常状態に戻った場合について説明しているが、異常状態が連続して検出される場合はパルス光201の再照射を繰り返すことにより、測定周期が終了してしまい、結果として血糖値推定結果が得られないことも起こり得る。
【0094】
そこで、測定状態検出手段530の内部に異常状態連続検出カウンタ(図示せず)を設けておくと異常状態が連続した場合にも対応可能である。
【0095】
測定状態検出手段530の内部に異常状態連続検出カウンタを備えた場合の動作について以下に説明する。
【0096】
まず、測定前に異常状態連続検出カウンタの初期値を異常状態連続検出上限値にセットしておく。本実施の形態1では異常状態連続検出上限値を3とする。
【0097】
上述した実施の形態1と同様に1回目の測定では図5(e)に示す測定状態検出信号531が1となる。
【0098】
2回目の測定で異常状態と判定すると、測定状態検出信号531は3に変化する。
【0099】
このとき、異常状態連続検出カウンタではカウントダウンが行われ、カウント値は2となる。
【0100】
3回目の測定でも異常状態と判定すると、測定状態検出信号531は3を示したままで異常状態連続検出カウンタの示すカウント値は1となる。
【0101】
更に4回目の測定でも異常状態と判定すると、測定状態検出信号531は3を示したままで異常状態連続検出カウンタの示すカウント値が0となる。
【0102】
異常状態連続検出カウンタの示すカウント値が0になると、本非侵襲生体情報測定装置の動作を停止し、ユーザーにエラーの通知を行う。
【0103】
また、3回目もしくは4回目の測定において、正常状態であると判断した場合は異常状態連続検出カウンタの示すカウント値を異常状態連続検出上限値である3にセットする。
【0104】
以上の動作により、ユーザーは異常状態が連続した場合に早期に測定異常状態であることを知ることができ、本非侵襲生体情報測定装置を生体30に装着し直すなどの対応を取ることが可能となる。
【0105】
本実施の形態1における非侵襲生体情報測定装置1では、照射期間信号102がHiの間にパルス光201を複数回照射し、その結果得られる複数の検出信号401を平均化してから血糖値を推定しているが、複数回の照射は必ずしも必要ではない。複数回照射することで検出信号401のSNRを向上させることが可能となるが、光源20から照射されるパルス光201のパワーを上げることによって検出信号401のSNRが血糖値を推定するために最低限必要なSNRを達成した場合は、平均化を行うことなくパルス光201の照射毎に血糖値の推定を行ってもよい。このとき、測定状態検出手段530もパルス光201の照射毎に動作する。
【0106】
本実施の形態1における非侵襲生体情報測定装置1では、測定状態検出手段530における測定状態を判断するために、血糖値を推定するために必要な回数(60回)平均化を行った検出信号401を用いているが、測定状態を判断するための検出信号401の平均化回数は任意に設定することが可能である。
【0107】
例えば、図示しないレジスタによってあらかじめ第一の測定状態判断回数を30回と設定しておき下記の方法にて測定状態の判断を行えばよい。
【0108】
まず、1回目の測定において合計60回行うパルス光201の照射回数が30回に達した時点で、30回分の検出信号401の平均化を行い、その結果を用いて変化量検出手段550内部のメモリに振幅検出信号541を蓄える。
【0109】
続いて31回目から60回目のパルス光201に対する検出信号401の平均化を行い、その結果から求めた振幅検出信号541と、変化量検出手段550内部のメモリに蓄えられている信号を用いて測定状態の判断を行う。
【0110】
測定状態が正常状態であると判断した場合は、31回目から60回目のパルス光201に対する検出信号401の平均化結果から求めた振幅検出信号541で変化量検出手段550内部のメモリを更新しておき、2回目の測定において1回目から30回目のパルス光201における検出信号401に対して測定状態の判定を行う。
【0111】
また、1回目の測定において31回目から60回目のパルス光201に対する検出信号401の平均化結果から、測定状態が異常状態であると判定した場合は、61回目から90回目までのパルス光201の追加照射を行い、再度測定状態を判定する。
【0112】
その結果、正常状態であると判定した場合は、1回目から30回目および61回目から90回目のパルス光201の照射に対する検出信号401の平均化を平均化手段510にて行い、その結果出力される平均化検出信号511を用いて血糖値の推定を行う。以降、30回のパルス光201の照射毎に測定状態の判定を行う。
【0113】
以上の方法を用いると、2回目の測定を待つことなく1回目の測定時から測定状態の判定が可能となる。また、図示しないレジスタによって第二の測定状態判断回数を5回、正常状態判断定数を8回と設定しておき下記のような方法を用いてもよい。
【0114】
まず、1回目の測定において合計60回行うパルス光201の照射回数が第二の測定状態判断回数(5回)に達した時点で、5回分の検出信号401の平均化を行い、その結果を用いて変化量検出手段550内部のメモリに振幅検出信号541を蓄える。
【0115】
続いて6回目から60回目まで5回おきに検出信号401の平均化を行い、測定状態の判断を行う。
【0116】
合計11回求めた測定状態のうち測定正常状態が9回である場合は、正常状態判断定数(8回)より大であるため測定異常状態であった2×5回=10回分の検出信号401を除いた残りのパルス光201照射回数における検出信号401を用いて血糖値を推定する。また、このとき変化量検出手段550内部のメモリは、最新の測定正常状態における検出信号401から求めた平均化結果を用いて更新する。
【0117】
また、合計11回求めた測定状態のうち測定正常状態が正常状態判断定数(8回)以下である場合は、再度パルス光201の照射を第二の測定状態判断回数(5回)行い、測定状態の判定を行う。以上の方法により、測定状態を判定するためのパルス光201の再照射期間を短縮することができる。
【0118】
本実施の形態1における非侵襲生体情報測定装置1では、測定状態の判定において新たに得られた振幅検出信号541の変化量を算出する際に、比較対象をその1回前に得られた振幅検出信号541としているが、ここで比較対象とする振幅検出信号541は過去の任意のタイミングに設定可能である。
【0119】
この方法は振幅検出信号541を保存しておく変化量検出手段550内部に設けるメモリを任意の容量に設定することで実現可能である。
【0120】
例えば、あらかじめ図示しないレジスタによって参考信号保存定数を2と設定しておき、変化量検出手段550において変化量比較の際に2回前に得られた振幅検出信号541を利用する。
【0121】
つまり変化量検出手段550にk回目に入力される振幅検出信号541をIn(k)、変化量検出手段550からk回目に出力される振幅変化量551をOut(k)とすると、Out(k)=In(k)×In(k)−In(k−2)×In(k−2)となる。
【0122】
既に上述した変化量検出手段550におけるOut(k)=In(k)×In(k)−In(k−1)×In(k−1)の演算では、変化量検出手段550の特性がHPFに特性を有しているのに対し、参考信号保存定数を2とした場合の変化量検出手段550の特性はBPFの特性を有する。
【0123】
そのため参考信号保存定数を変更することにより、検出対象とする異常状態が発生した場合において振幅検出信号541の変化量に現れる周波数の変化に応じた変化量検出手段550を実現することが可能となる。
【0124】
また、変化量検出手段550における演算を2つのタイミング(k回目、k+2回目の入力信号)における振幅検出信号541のみでなく、3以上のタイミングを用いてフィルタを構成してもよい。この場合、タップ係数を任意に設定可能な既知のFIRフィルタ等を用いることで所望の周波数特性を有するフィルタを実現することが可能であり、効率的に測定異常状態を検出することが可能となる。
【0125】
以上、本発明の実施の形態1に記載の非侵襲生体情報測定装置1では、血糖値の測定環境の変化を検知することが可能であるため、特徴量表示手段60に表示された誤った血糖値に対して、患者がインスリンを過剰投与するなどの事故を未然に防ぐことが可能となる。
【0126】
なお、本発明の実施の形態1における非侵襲生体情報測定装置1で測定する対象は、血管31中のグルコース量に限定されるものではない。すなわち、照射されるパルス光201の波長領域におけるエネルギーを吸収し光音響波を発生する物質であれば良く、例えば生体30の表面から血管31までの間の組織液に含まれるグルコースや血管31中のヘモグロビン量などに対しても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明にかかる非侵襲生体情報測定装置は、接触圧用センサを用いることなく音響センサのみで測定異常を検出することができるため装置の複雑化を解消し小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の実施の形態1における非侵襲生体情報測定装置1の使用例を示す図
【図2】本発明の実施の形態1における非侵襲生体情報測定装置1の構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態1における特徴量推定手段50の構成を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態1における非侵襲生体情報測定装置1の動作を示すタイミングチャート
【図5】本発明の実施の形態1における非侵襲生体情報測定装置1の別の動作を示すタイミングチャート
【図6】本発明の実施の形態1における測定状態検出手段530の構成を示すブロック図
【図7】本発明の実施の形態1における測定状態検出手段530の動作を示すタイミングチャート
【符号の説明】
【0129】
1 非侵襲生体情報測定装置
10 制御手段
20 光源
30 生体
31 血管
40 光音響検出手段
50 特徴量推定手段
60 特徴量表示手段
101 測定周期信号
102 照射期間信号
103 照射制御信号
104 特徴量表示制御信号
201 パルス光
301 光音響波信号
401 検出信号
501 特徴量推定信号
502 再照射要求信号
503 照射回数信号
510 平均化手段
511 平均化検出信号
512 検出信号平均化終了パルス
513 測定状態評価信号
514 測定状態評価開始信号
520 推定手段
530 測定状態検出手段
531 測定状態検出信号
540 振幅検出手段
541 振幅検出信号
550 変化量検出手段
551 振幅変化量
560 測定状態判定手段
570 レジスタ
571 測定状態判定レベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体表面に照射した光により生体内の特定物質が光のエネルギーを吸収して発する光音響波信号を生体表面で検出することによって血糖値を推定する非侵襲生体情報測定装置において、
1回の血糖値の推定に対して、少なくとも1回以上繰り返されるパルス光の照射を制御するための照射制御信号を出力する制御手段と、
前記照射制御信号により前記パルス光を生体表面に向かって照射する少なくとも一つの光源と、
前記光源から照射された前記パルス光もしくは生体で反射した反射パルス光と前記生体内の特定物質により発生した前記光音響波信号を少なくとも1チャンネル以上の検出器で検出し、所定の周波数でサンプリングした検出信号を出力する光音響検出手段と、
前記少なくとも1回以上繰り返されるパルス光の照射回数分前記検出信号を平均化した少なくとも1チャンネル以上の平均化検出信号を用いて前記血糖値を推定する特徴量推定手段と、
前記血糖値を表示する特徴量表示手段と、を備え、
前記特徴量推定手段は前記パルス光もしくは前記反射パルス光が前記光音響検出手段に到達することにより生じる前記検出信号の変化を用いて測定状態が正常であるか否か判定することを特徴とする非侵襲生体情報測定装置。
【請求項2】
前記特徴量推定手段は、1回の血糖値推定において、前記パルス光をm回(mは自然数)繰り返し照射することにより得られるm個の前記検出信号のうち、n個(nはm以下の自然数)の前記検出信号を平均化して測定状態評価信号を作成し、
血糖値の推定を行う度に前記測定状態評価信号において前記パルス光の照射直後に現れる変化から振幅レベルを抽出し、
p回目(pは2以上かつ血糖値推定終了回数までの自然数)の血糖値推定時に前記測定状態評価信号から抽出された前記振幅レベルと、p回目以前の血糖値推定時に前記測定状態評価信号から抽出された前記振幅レベルから振幅変化量を算出し、
前記振幅変化量が測定状態判定レベル以上である場合は測定異常であると判定することを特徴とする請求項1に記載の非侵襲生体情報測定装置。
【請求項3】
前記特徴量推定手段は、血糖値推定の度に前記振幅変化量を前記特徴量推定手段の内部に設けたメモリに蓄え、p回目(pは2以上の自然数)の血糖値推定時に、前記メモリに蓄えられている2回以上かつp回以下の複数の前記振幅変化量をフィルタリングし、フィルタリングされた前記振幅変化量が測定状態判定レベル以上である場合は測定異常であると判定することを特徴とする請求項2に記載の非侵襲生体情報測定装置。
【請求項4】
前記特徴量推定手段は、p回目の血糖値推定時に得られる前記測定状態評価信号から抽出した前記振幅レベルと、p回目以前の血糖値推定時に得られる前記測定状態評価信号から抽出した前記振幅レベルとの二乗誤差を用いて前記振幅変化量を計算することを特徴とする請求項2に記載の非侵襲生体情報測定装置。
【請求項5】
前記特徴量推定手段は、少なくとも1チャンネル以上の前記測定状態評価信号から振幅レベルをそれぞれ抽出し、前記振幅レベルをチャンネル数で平均化した平均振幅レベルを用いて前記振幅変化量を計算することを特徴とする請求項1に記載の非侵襲生体情報測定装置。
【請求項6】
前記特徴量推定手段は、測定状態が正常でない状態の連続する回数をカウントする測定異常状態連続数カウンタを備え、前記測定異常状態連続数カウンタのカウント値が異常状態連続検出上限値に達した場合に、血糖値推定動作を中止するとともに、前記特徴量表示手段を通じてユーザーに通知することを特徴とする請求項1に記載の非侵襲生体情報測定装置。
【請求項7】
前記測定異常状態連続数カウンタは、前記非侵襲生体情報測定装置の動作開始前及び、前記測定状態を判定した結果が正常である場合に0にリセットされることを特徴とする請求項6に記載の非侵襲生体情報測定装置。
【請求項8】
前記特徴量推定手段は、1回の血糖値の推定において、m回繰り返される前記パルス光の照射回数のうち、照射回数がそれぞれ均一となるq個(qは2以上の自然数)の前記測定状態評価信号、もしくはq個の前記測定状態評価信号における前記パルス光の照射回数の和がm回になるようにそれぞれ任意の前記パルス光の照射回数を設定したq個の前記測定状態評価信号を作成し、q個の前記測定状態評価信号のうち任意の前記測定状態評価信号を用いて前記測定状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の非侵襲生体情報測定装置。
【請求項9】
前記特徴量推定手段は、1回の血糖値の推定において、q個の前記測定状態評価信号から前記測定状態をそれぞれ判定し、測定状態が正常と判定された回数が正常状態判断定数より大である場合は最終的に測定状態が正常であると判定し、q個の前記検出信号のうち測定状態が正常と判定された前記検出信号のみを平均化して前記平均化検出信号を作成することを特徴とする請求項8に記載の非侵襲生体情報測定装置。
【請求項10】
前記特徴量推定手段は、1回の血糖値の推定において、q個の前記測定状態評価信号から前記測定状態をそれぞれ判定し、測定状態が正常であると判定された回数が正常状態判断定数以下である場合は最終的に測定状態が正常でないと判定し、血糖値推定動作を中止するとともに、前記特徴量表示手段を通じてユーザーに通知することを特徴とする請求項8に記載の非侵襲生体情報測定装置。
【請求項11】
前記特徴量推定手段は、1回の血糖値の推定において、q個の前記測定状態評価信号から前記測定状態をそれぞれ判定し、測定状態が正常であると判定された回数が正常状態判断定数以下である場合は測定状態が正常でないと判定し、前記少なくとも1回以上パルス光の照射を行ってから前記測定状態を判定するまでの一連の動作を再度行い、その結果、測定状態が正常でないと判定された場合は血糖値推定動作を中止するとともに、前記特徴量表示手段を通じてユーザーに通知することを特徴とする請求項8に記載の非侵襲生体情報測定装置。
【請求項12】
前記特徴量推定手段は、書き込みが可能なレジスタを備え、レジスタによって前記測定状態判定レベルを外部から変更することが可能であることを特徴とする請求項2乃至請求項3に記載の非侵襲生体情報測定装置。
【請求項13】
前記特徴量推定手段は、書き込みが可能なレジスタを備え、レジスタによって前記異常状態連続検出上限値を外部から変更することが可能であることを特徴とする請求項6に記載の非侵襲生体情報測定装置。
【請求項14】
前記特徴量推定手段は、書き込みが可能なレジスタを備え、レジスタによって前記正常状態判断定数を外部から変更することが可能であることを特徴とする請求項9乃至請求項11に記載の非侵襲生体情報測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−39264(P2009−39264A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206566(P2007−206566)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】