非天然塩基
【課題】 天然塩基とミスマッチを起こすことが少なく、安定に複製することを可能とし、さらに酵素による取り込み効率の高い、非天然塩基を含む核酸を製造する。
【解決手段】 二本鎖核酸または二本鎖PNAの主鎖に大きな歪みを生じさせないような塩基対を形成する非天然型塩基等を提供する。
【解決手段】 二本鎖核酸または二本鎖PNAの主鎖に大きな歪みを生じさせないような塩基対を形成する非天然型塩基等を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二本鎖核酸または二本鎖PNAの主鎖に大きな歪みを生じさせないような塩基対を形成する非天然型塩基と当該非天然型塩基対、それらの非天然型塩基を有するヌクレオシド、ヌクレオチド、アミダイト化合物または一本鎖および二本鎖オリゴヌクレオチド、または、それらの塩基または塩基対を有する核酸に関する。さらに、それらの物質を使った核酸増幅法、アプタマー選別法、転写反応、などの基礎反応、さらに、それらの基礎反応を使った応用法、さらに当該応用法を用いた装置やキットに関する。
【0002】
本発明の提供するヌクレオシドまたはヌクレオチドが有する2つの塩基対の例として、一つは、2−アミノ−4,5置換−1H−ピロール−3−イル基を塩基として有する。好ましくは、前記塩基の4位又は5位が、以下の 1)水素基、アルキル基、アリール基; 2)水酸基、アミノ基、チオール基など又はその誘導体; 3)ハロゲン基; 4)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基など又はその誘導体から選択される置換基によって置換されている。もう一つは、2,6,7,8置換−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン−9−イル基を塩基として有する。好ましくは、前記塩基の2位、6位、7位又は8位が、以下の 1)水素基、アルキル基、アリール基; 2)水酸基、アミノ基、チオール基など又はその誘導体; 3)ハロゲン基; 4)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基など又はその誘導体から選択される置換基によって置換されている。
【0003】
これらの例に挙げたヌクレオシドまたはヌクレオチドが有する2つの塩基は、核酸(DNA、RNA、PNAまたはその誘導体)の中において対合をつくり、その最終増幅産物の核酸が生成される複製工程において、当該塩基対が保存されることを特徴とする。複製保存、転写翻訳の工程において、新しい遺伝暗号を提供する。
【0004】
さらに、本発明は当該塩基を有する核酸を用いた核酸増幅反応とそれを用いた診断キット、アプタマー作成、蛍光を用いた検出キット、マイクロアレイ、RNAi試薬、非天然型コドンを用いた人工タンパク質の合成に資する。
【背景技術】
【0005】
自然界で知られている生命体が持つ核酸はアデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)の4種類(RNAではチミンの代わりにウラシル(U))の塩基からなり、これ以外の塩基は自然界には存在しない。一方、人工的な非天然型塩基合成の試みも数多くされており、例えば、Bennerらが合成したisoG、isoC (非特許文献1及び非特許文献2)や平尾らのx、yなどの報告がある(非特許文献3)。非天然型塩基を導入することにより、核酸塩基配列のバリエーションは飛躍的に増大する。例えば、核酸がコードするアミノ酸は自然界ではたった20種類であるが、非天然型塩基1対を組み込んだ場合コドンのバリエーションは43種(64種)から63種(216種)に増え、新しいコドンに非天然アミノ酸を割り当てることにより、種々の非天然型タンパク質を生体に作らせることが可能となる。また、タンパク質の設計図としての機能だけでなく、アプタマーなど核酸分子そのものが持つ機能性に関しても、配列のバリエーションが増大することにより新たな機能を付加することが可能となる。
【非特許文献1】C. Switzer, et al., J. Am. Chem. Soc., 111, 8322-8323 (1989)
【非特許文献2】C. Switzer, et.al., Biochemistry, 32, 10489-10496 (1993)
【非特許文献3】Ohtsuki, et al., Proc Natl Acad Sci USA. 98, 4922-4925 (2001)
【発明の開示】
【0006】
しかし、従来の非天然塩基は対合の特異性が低く、天然塩基とある一定の割合でミスマッチをおこすため、例えばPCRなどで複製を繰り返すうちに非天然塩基対が天然塩基に置き換えられてしまうという問題点があり、生体内でも同様に安定に維持することは難しいと考えられていた。さらにポリメラーゼの取り込み効率が低いため、非天然塩基を含む核酸は伸長反応が途中で止まる率が高く、安定した複製反応を行うことが出来なかった。
【0007】
本発明による新規の塩基はこれらの問題点を改善し、天然塩基とミスマッチを起こすことが非常に少なく、安定に複製することを可能とし、さらに酵素による取り込み効率の向上により、非天然塩基を含む核酸の複製が容易に効率よくできるようになった。また、本発明による非天然塩基、あるいはそれを含むヌクレオチドはそれ自体の安定性が高いため保存が利き、取り扱いも容易であるため、実用化に適している。
【0008】
具体的には、本発明は、以下を提供するものである。
(1)二本鎖DNAまたは二本鎖RNAなどの二本鎖核酸内でその主鎖に大きな歪みを生じさせないような塩基対を形成する非天然型塩基と、当該塩基を有するヌクレオシドまたはヌクレオチド、およびαチオ体に代表される誘導体、またはそれらの塩基を有する一本鎖または二本鎖以上の核酸またはPNA。
【0009】
(2)複素環構造の骨格構造を形成する原子の一部または全部がπ電子系でつながった同一平面上に並んでいる非天然型塩基または非天然型塩基対を有する上記(2)記載の物質。
【0010】
(3)アデニン:チミン、グアニン:シトシンの天然型塩基対が占有する空間内に収まる非天然型塩基対を有する上記(1)または(2)記載の物質。
【0011】
(4)非天然型塩基対において非天然型塩基間の水素結合の平行性を保つようにデザインされた上記(1)〜(3)のいずれか記載の物質。
【0012】
(5)非天然型塩基対において非天然型塩基間の水素結合の配向が、天然型塩基対と一致しないようにデザインされた上記(1)〜(4)のいずれか記載の物質。
【0013】
(6)非天然型塩基対において非天然型塩基間のすべての水素結合の配向性が、一つの非天然型塩基が水素のドナーであり、もう一つの非天然型塩基がアクセプターであるようにデザインされた上記(1)〜(5)のいずれか記載の物質。
【0014】
(7)対合する2つの非天然型塩基が、水溶液中で構造を維持できるように設計された上記(1)〜(6)のいずれか記載の物質。
【0015】
(8)対合する2つの非天然型塩基のおのおのにおいて、目的の水素結合の配向を持つ互変異性体が熱力学的に優位になる上記当該非天然型塩基を有する上記(1)〜(7)のいずれか記載の物質。
【0016】
(9)上記(1)記載にあるヌクレオシド、ヌクレオチドの塩基のうち、単環の複素環または2環式以上の複素環について、グリコシド結合している原子が参加する環の中心から、グリコシド結合との立体角が0から90度の範囲内の空間に、当該塩基の骨格原子または側鎖の原子として、非共有電子対をもった原子の中心が存在するような構造を持った上記(1)〜(8)のいずれか記載の物質。
【0017】
(10)上記(1)記載にあるヌクレオシド、ヌクレオチドの塩基のうち、単環または2環以上の複素環について、「グリコシド結合している原子のとなりに位置する複素環の骨格原子」または「グリコシド結合している原子のとなりに位置する複素環の骨格原子に結合する側鎖または隣の環を形成する原子の一つ」が非共有電子対を有する原子である上記(1)〜(9)のいずれか記載の物質。
【0018】
(11)非共有電子対が酸素、窒素、リン、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などである上記(9)または(10)記載の物質。
【0019】
(12)上記(1)のヌクレオシド、ヌクレオチドが、2’デオキシ体、3’デオキシ体、リボ体、2’3’ダイデオキシ体、アミダイト、または、その誘導体である上記(1)〜(11)いずれか記載の物質。
【0020】
(13)2−アミノ−4,5置換−1H−ピロール−3−イル基またはその誘導体である下記の式
【化1】
(式中R及びR’は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表される非天然型塩基、または、当該非天然型塩基を含む2’デオキシ体、3’デオキシ体、リボ体、2’3’ダイデオキシ体とそれらの誘導体から下記の化学式
【化2】
(式中X及びYは、ヒドロキシル基又は水素であり、R及びR’は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるヌクレオシドとそれらの誘導体または、当該非天然型塩基を含む下記の化学式
【化3】
(式中X及びYは、ヒドロキシル基又は水素であり、R及びR’は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、又はその誘導体
4)ハロゲン基;
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるヌクレオチドとそれらの誘導体、または、当該非天然型塩基を含む下記の化学式
【化4】
(式中Xは、ヒドロキシル基又は水素であり、R及びR’は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるアミダイトとそれらの誘導体、および当該非天然型塩基を含む一本鎖または二本鎖以上の核酸またはPNA。
【0021】
(14)電子吸引基が導入された2−アミノピロール−3−イル基と特徴とする上記(13)に記載の物質、および電子吸引基が導入することによる2−アミノピロール−3−イル基の安定化方法、または、電子吸引基が導入された2−アミノピロール−3−イル基と特徴とする上記(13)に記載の物質の製造方法。
【0022】
(15)3−ハロ−2−ニトロピロール誘導体やデオキシリボース誘導体とのパラジウム触媒反応を経る上記(13)または(14)の記載のヌクレオシド誘導体またはヌクレオチド誘導体またはアミダイト誘導体の合成方法。
【0023】
(17)上記(13)〜(15)いずれか記載の非天然塩基の保護基としてフェノキシアセチル基を代表とするフェノキシアシル基を用いる合成方法。
【0024】
(18)2,6,7,8置換−ピリドトリアジン−9−イル基またはその誘導体である下記の化学式
【化5】
(式中R1、R2、R3及びR4は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表される非天然型塩基、または、当該非天然型塩基を含む2’デオキシ体、3’デオキシ体、リボ体、2’3’ダイデオキシ体とそれらの誘導体からなる下記の化学式
【化6】
(式中X及びYは、ヒドロキシル基又は水素であり、R1、R2、R3及びR4は、以下の
1)水素基
2)アルキル基、アリール基
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるヌクレオシドとそれらの誘導体または、当該非天然型塩基を含む下記の化学式
【化7】
(式中X及びYは、ヒドロキシル基又は水素であり、R1、R2、R3及びR4は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるヌクレオチドとそれらの誘導体、または、当該非天然型塩基を含む
【化8】
(式中Xは、ヒドロキシル基又は水素であり、R1、R2、R3及びR4は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるアミダイトとそれらの誘導体、および当該非天然型塩基を含む一本鎖または二本鎖以上の核酸またはPNA。
【0025】
(18)電子供与基が導入されたピリドトリアジン−4−オン−9−イル基である上記(17)に記載の物質、および電子供与基が導入することによるピリドトリアジン−4−オン−9−イル基の安定化方法、または、電子供与基が導入された上記(17)に記載の物質の製造方法。
【0026】
(19)上記電子供与基が、ピリドトリアジンの2位にアミノ基、置換アミノ基、アルコキシ基および、ハロゲン基である上記(17)または(18)記載の物質、および塩基の安定化方法、または、当該物質の製造方法。
【0027】
(20)マイクロ波反応装置を用いる上記(17)〜(19)いずれか記載の非天然型塩基またはヌクレオシド誘導体、ヌクレオチド誘導体の合成方法。
【0028】
(21)上記(1)〜(20)のいずれか記載の2’デオキシヌクレオチド体を基質全部または一部、または非天然型塩基を含むプライマーを用いたDNAポリメラーゼによる合成反応方法とそれを利用したPCR、または等温増幅反応方法または、DNAハイブリダイゼーション反応工程を含むDNA増幅方法。
【0029】
(22)等温増幅反応が、LAMP法、SDA法、SMAP法、NASBA法、ICAN法、UCAN法、TMA法、Padlock probe法、Roling Circle(RCA)法、bDNA(branched DNA) 法、PALSAR法、Invader法、TRC法、CPT(Cycling Probe Technology)法などである(21)記載の核酸増幅反応方法または核酸ハイブリダイゼーション反応または核酸のライゲーション反応工程を含むDNA増幅方法。
【0030】
(23)上記(21)〜(23)のいずれかの方法を利用したDNA増幅装置、実験用キット、診断用キット。
【0031】
(24)上記(1)〜(20)のいずれか記載の2’デオキシヌクレオチド体および2’3’ダイデオキシヌクレオチド体を基質の全部または一部とした、または当非天然型塩基を含むプライマーを用いたDNAポリメラーゼによるチェインターミネーション反応とそれを利用したシーケンス反応。
【0032】
(25)上記(24)の方法を利用した非天然型塩基をその一部または全部に持つ核酸配列を決定するDNAシーケンス反応装置および反応キット。
【0033】
(26)上記(1)〜(20)のいずれか記載のリボヌクレオチド体を基質に含有するRNAポリメラーゼによるRNA合成反応方法とそれを利用したキット。
【0034】
(27)上記(1)〜(20)のいずれか記載のリボヌクレオチド体および3’デオキシヌクレオチド体を基質の全部または一部としたRNAポリメラーゼによるチェインターミネーション反応とそれを利用したシーケンス反応。
【0035】
(28)上記(27)の方法を利用した非天然型塩基をその一部または全部に持つ核酸配列を決定する核酸シーケンス反応装置および反応キット。
【0036】
(29)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基を含む核酸のハイブリダイゼーションを基本とした核酸検出反応。
【0037】
(30)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基を含む方法であって、その当該塩基の蛍光特性を用いたIn vivo または、In vitroの核酸検出法。
【0038】
(31)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基を含む物質を用いた電気泳動が検出工程の中にある核酸またはタンパク検出法。
【0039】
(32)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基を5’非翻訳領域、タンパクコード領域、3’非翻訳領域、ポリA領域にふくむRNAを用いた反応に基づくタンパク合成法とタンパク合成キット。
【0040】
(33)タンパク合成法が、In vitro translation法に基づく上記(32)のタンパク合成法およびタンパク合成キットとそれにより産出されるタンパク質。
【0041】
(34)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基を含む新しい翻訳コドン表に基づくタンパク合成法とタンパク合成キットおよびそれにより産出されるタンパク質。
【0042】
(35)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基を含むオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイとそれを用いた実験用キットと診断用キット。
【0043】
(36)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基を含むオリゴヌクレオチドを用いたアプタマー合成法とアプタマー。
【0044】
(37)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基を含むsiRNA分子及びそれを用いたRNA干渉(RNAi)法。
【0045】
(38)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基をddRNA、2’メチル化などの修飾を施したRNAなどを含む上記(37)記載のRNA干渉(RNAi)法。
【0046】
(39)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基を含む核酸を保持するプラスミド、ファージ、菌体、細胞、動植物個体。
【0047】
(40)パイロシーケンスによる新規核酸および既知核酸の取り込み反応検定法およびそのキット。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
天然の核酸に組み込まれ安定に維持されるためには、非天然型塩基対は糖(デオキシリボースあるいはリボース)とリン酸からなる主鎖の2重らせん構造や前後に連なる塩基対が作るはしごのけたのような層構造にひずみを生じさせないことが必要である。つまり、非天然型塩基対の長さと主鎖間の距離が一致し、また非天然型塩基対が平面を構成する構造を持ち、さらにその平面が前後の塩基対と平行な構造をとらなくてはならない。平面を構成するとはすなわち、塩基の環を構成する原子がπ電子系で繋がっていて、塩基対全体の厚みが炭素原子の原子半径内に収まる程度であり、それ以上に折れ曲がった立体構造をとらないことである。また選択的な塩基対を構成するために、他の塩基と対合しない構造を持つことが重要である。図1のように天然塩基対のC−G塩基対はdonor/acceptor/acceptor−acceptor/donor/donorの3本の水素結合を持ち、A−T塩基対はacceptor/donor−donor/acceptorの2本の水素結合を持つ。本発明による非天然型塩基は図1のようにピリドトリアジンとアミノピロールはdonor/donor−acceptor/acceptorの2本の水素結合を構成するように設計されており、4種の天然塩基いずれとも水素結合を形成することが無く、さらに官能基のうち一部がとなりの塩基の官能基を水素結合を形成するようなスリッページ現象を起こすことが無いように設計されている。また、塩基が安定性を高めるためには互性変異体への遷移が起こりづらいことが重要であるが、本発明による非天然型塩基はそれぞれの互変異性体の生成エネルギーが高く、塩基が安定に存在するように設計されている。さらに、非天然型塩基を含むヌクレオチドがDNAポリメラーゼあるいはRNAポリメラーゼの基質となり得るためには、塩基部の2位および、3位にヘテロ原子を持つことが必要であるとの報告がなされており、本発明の塩基はこの条件を充足するように設計されている。
【0049】
今回発明されたアミノピロールヌクレオシドまたはアミノピロールヌクレオチドは、2−アミノ−4,5置換−1H−ピロール−3−イル基を塩基に有する。好ましくは、前記塩基の4位又は5位が、以下の 1)水素基、アルキル基、アリール基; 2)水酸基、アミノ基、チオール基、又はその誘導体; 3)ハロゲン基; 4)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体から選択される置換基によって置換されている。
【0050】
ピリドトリアジンヌクレオシドまたはピリドトリアジンヌクレオチドは、2−アミノ−6,7,8置換−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン−9−イル基を塩基として有する。好ましくは、前記塩基の6位、7位又は8位が、以下の 1)水素基、アルキル基、アリール基; 2)水酸基、アミノ基、チオール基、又はその誘導体; 3)ハロゲン基; 4)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体から選択される置換基によって置換されている。
【0051】
本発明の非天然型塩基が含まれるヌクレオチドはポリメラーゼの基質となり得るので、ポリメラーゼを用いた複製・増幅反応、転写反応、逆転写反応により核酸に組み入れることができる。複製・増幅はPCR法、SDA法、LAMP法、SMAP法、NASBA法、TMA法、ICAN法、TRC法、Q−ベータレプリカーゼ法などの従来の核酸増幅法のいずれの方法でも良い。非天然型塩基は塩基対合の選択性が高いため、ミスコーポレーションの確率が非常に低く複製回数と重ねても安定に塩基配列を維持することができ、また、ポリメラーゼの基質として取り込み効率も高い。また本発明の非天然型塩基を含むプライマーを作成することができ、非天然型塩基は天然塩基と対合することがないのでミスプライミングの確率が低下し、増幅反応の特異性を高めることが可能である。さらに、これらのポリメラーゼ反応を利用した核酸診断法へ応用することができる。
【0052】
ピリドトリアジンはそれ自身が蛍光を発する性質を持つので、基質として取り込ませた後、蛍光検出をすることができる。例えば従来の蛍光を使った検出方法としては、テトラゾリウム塩を生細胞に取り込ませ、生細胞中でホルマザン産物に変換される反応に基づいた生細胞測定システム(Non-Radioactive Cell Proliferation Assay、プロメガ社)があるが、この代わりに本発明の非天然型塩基を含むヌクレオチドを細胞内に取り込ませることにより、細胞測定を行うことができる。また、従来DNAのエタノール沈殿の際に用いる核酸共沈殿剤の代わりに本非天然型塩基を含むヌクレオチドをDNAに取り込ませておくことにより、DNAが蛍光を発するので、沈殿物を容易に目視することが可能となる。さらに、特定の配列をもった核酸分子の生体内、生体外の動態を観察するために、あらかじめ検出したい配列に非天然型塩基対を付加しておくことにより、蛍光により該核酸分子のトレーシングを行うことができる。
【0053】
核酸ハイブリダイゼーションアッセイにおいてバックグランンドを減少するためには、非天然型水素結合パターンにより塩基対を形成するヌクレオシド変異体を使用することにより、行われる。非天然塩基対はアデノシン(A)、チミジン(T)、シチジン(C)、グアノシン(G)または、ウリジン(U)以外のヌクレオチド単位の間で形成される。このような非天然型塩基対の一つはイソシトシン(イソC)とイソグアニン(イソG)との間で形成される。このイソシトシン(イソC)とイソグアニン(イソG)はいわゆるワトソン-クリックの塩基対の規則による塩基対を形成し得るが、シトシン(C)とグアニン(G)との間の水素結合とは異なる水素結合を含むため、天然塩基とハイブリダイズすることはない。
【0054】
非天然オリゴヌクレオチド単位を含有するハイブリダイゼーションは、マイクロアレイ検出にも応用が可能である。
【0055】
マイクロアレイなどを用いた検出では、バックグラウンドノイズの供給源を排除し、支持体に結合したプローブに誤った部分が結合する可能性を減少させることが重要となる。しかし、従来の方法では、オリゴヌクレオチド分子は、他のアッセイ成分または標的分析中の核酸配列に相補的であるため、そのような核酸配列を含有するように設計されている。そこで、目的の配列を含むオリゴヌクレオチドセグメントに本発明の非天然ヌクレオチドを取り込ませることにより、非特異的ハイブリダイゼーションを減少させることができる。
【0056】
さらに、標識された目的の配列を含むオリゴヌクレオチドセグメントを、非特異的に結合してバックグランドノイズを引き起こすアッセイ成分から分離することにより、アッセイ成分の非特異的結合を減少させることができる。
【0057】
非天然型塩基の応用はマイクロアレイに限定されるものではなく、ハイブリダイゼーションの原理を用いたすべての検出方法に応用できる。
【0058】
本発明による非天然型塩基はアプタマー分子にも応用することができる。SELEX法により合成・選択されるアプタマー(Tuerk, C. & Gold, L. (1990) Science 249, 505-510) に非天然型塩基対を導入することにより、従来の塩基配列のバリエーションが4n個だったのに対し6n個に増加し、天然型塩基のみでは得られなかった機能をもつアプタマーを合成・選択することが可能となる。
【0059】
また、機能性核酸分子としては、他にも例えばRNAiに用いるsiRNAに非天然型塩基対を導入することにより天然型塩基対のみでは得られなかった機能を付加することができたり、配列のバリエーションを増やすことにより、より多くの種類のsiRNAを得ることができる。その他、生体内で転写制御や翻訳制御、シグナル伝達などの機能性分子として働く核酸に非天然型塩基を導入することにより新たな機能を付加することが可能となる。
【0060】
また、非天然型塩基対は安定に複製維持されることができるので、細胞や微生物などに導入して、in vivoで維持させることも可能である。さらに、非天然型塩基対の導入により、タンパク質をコードするコドン種を43から63に大幅に拡大することができ、これらの非天然型塩基を含むコドンに新しいアミノ酸を振り当てて、それに対応するtRNAなどタンパク合成に必要な分子を供給することにより、非天然アミノ酸をタンパク質に導入することが可能となり、新たな機能性タンパク質を合成することができる。非天然のアミノ酸を導入する方法は、終止コドンを非天然アミノ酸に割り当てる方法(Wang, L., Brock, A., Herberich, B & Schultz, P., G. (2001) Science 292, 498-500)、4塩基コドンを用いる方法(Magliery, T. J., Anderson, J. C., and Schultz, P. G. (2001) J. Mol. Biol. 307, 755-769)などが報告されており、またisoC、isoG、x、y、s、など非天然塩基対を用いる方法(Piccirilli, J. A., Krauch, T., Moroney, S. E., and Benner, S. A.(1990) Nature 343, 33-37, Hirao, I., Ohtsuki, T., Fujiwara, T., Mitsui, T., Yokogawa, T., Okuni, T., Nakayama, H., Takio, K., Yabuki, T., Kigawa, T., Kodama, K., Nishikawa, K., and Yokoyama, S. (2002) Nat. Biotechnol. 20, 177-182)も研究されているが、精度や安定性、コドンの拡張性などにおいて本発明の非天然型塩基は従来のものと比較して非常に優れているといえる。
【0061】
非天然型塩基対を含む核酸の塩基配列を決定するには、非天然型塩基を含むジデオキシヌクレオチド体をターミネーターとして用いることができる。標識としては従来のいずれの方法を用いても良く、例えばターミネーターに蛍光色素を付加するダイターミネーター法を用いることもでき、あるいはプライマーに標識する方法を用いることもできる。また、RIを用いた塩基配列の決定も可能である。
【0062】
さらに、Pyrosequencing法を用いた配列決定も可能である。従来のヌクレオチドの取込や取込ミス、反応速度論パラメータの測定には、放射性同位体や蛍光色素で標識したプライマーやヌクレオチドを用いて、目的のヌクレオチドを取り込ませて電気泳動で分離した上で、その放射活性や蛍光強度により測定していた。しかし、この方法ではプライマーかヌクレオチドのどちらかに標識が必要な上、取込を伸長鎖としてみているためにヌクレオチドの取込を直接観察しているわけではない。一方で、Pyrosequencing法はヌクレオチドの取込時に生じるピロリン酸を共役酵素系を使って測定しているので、実際の取込反応を観察することが出来、しかも一切の標識を必要としないため、簡便且つ迅速で汎用性が非常に高い。
【実施例1】
【0063】
5−アセチル‐2−アミノピロールデオキシリボヌクレオチド(dApTP)誘導体の合成(図4スキーム1、スキーム2)
2−アセチル−4−ヨード−1H−ピロール (A)
2−アセチルピロール (10 mmol, 1.09 g)をクロロホルム(20 mL)、四塩化炭素 (20 mL)に溶かし、この溶液にアンバーリスト15dry (触媒量)、N-ヨードコハク酸イミド (1 eq., 2.25 g)を加えた。70℃で24時間撹拌しアンバーリスト15dryを濾別した後、溶媒を留去し、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:3)で精製した。収率96% (2.266 g)。
【0064】
5−アセチル−3−ヨード−2−ニトロ−1H−ピロール (B)
200 mLのフラスコに2−アセチル−4−ヨード−1H−ピロール(9.3 mmol, 2.20 g)、無水酢酸 (10 mL)を加え-40℃に冷却した。70%-硝酸 (1.2 mL)を6分掛けて滴下し、-40℃で2時間撹拌した後室温に戻した。再び-40℃に冷却し、氷水 (80 mL)を加えて反応を止め、沈殿物を濾取した。得られた固体をジクロロメタン (50 mL)に溶かし、硫酸マグネシウムで脱水した後、シリカゲルクロマトグラフィーで単離した。収率43 % (1.11 g)
【0065】
2R,5R−5−(5−アセチル−2−ニトロ−1H−ピロール−3−イル)−2−tert−ブチルジメチルシロキシメチル−3−tert−ブチルジメチルシロキシ−2,5−ジヒドロフラン(C)
5 mLの反応管に5−アセチル−3−ヨード−2−ニトロ−1H−ピロール (1 mmol, 0.280 g)、ジクロロビス(トリ(o-トリル)ホスフィン)パラジウム (10 mol %, 79 mg)、2R,3S−3−(tert−ブチルジメチルシロキシ)−2−(tert−ブチルジメチルシロキシメチル)−2,3−ジヒドロフラン (1 mmol, 0.345 g)、塩化リチウム (5 eq., 0.212 g)、トリエチルアミン (4 eq., 0.405 g)、DMF (5 mL)を加え、マイクロ波反応装置で140℃10分反応させた。DMFを留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製した。収率48% (0.238 g)。
【0066】
5−(5−アセチル−2−ニトロ−1H−ピロール−3−イル)−2−ヒドロキシメチル−ジヒドロフラン−3−オン (D)
20 mLのフラスコに(C) (1.6 mmol, 0.793 g)、THF (10 mL)、酢酸 (8 eq., 0.763 g)、フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物 (4 eq., 2.02 g)を加え、室温で10時間撹拌した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル、Rf = 0.55)で精製した。収率80%(0.344 g)。
【0067】
5−アセチル−3−(2’-デオキシ−β−D−リボフラノシル)−2−ニトロ−1H−ピロール (E)
300 mLのフラスコに(D) (4.82 mmol, 1.292 g)、アセトニトリル (96 mL)、酢酸 (29 mL)を加え−40度に冷却した。この溶液に水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム (1.1 eq., 1.124 g)を少しずつ加え、1時間撹拌後、溶媒を留去し残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=9:1、Rf = 0.55)で精製した。収率87 % (1.128 g)。
【0068】
5−アセチル−3−[3’,5’−ビス(tert−ブチルジメチルシリル)−2’-デオキシ−β−D−リブフラノシル]−2−ニトロ−1H−ピロール (F)
200 mlのナスフラスコに(E) (3.86 mmol, 1.04 g)を入れDMF(20 ml)で希釈し、これにt-ブチルジメチルシリルクロリド(9.73 mmol, 1.47 g)とイミダゾール(23.9 mmol, 1.63 g)を加え一晩室温で撹拌した。この反応溶液に酢酸エチル(100 ml)を加え有機相を水(100 ml)で3回、飽和食塩水(100 ml)で1回洗浄した。この有機相に硫酸マグネシウムを加え乾燥させろ過した後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 10:1)で精製することにより目的物を得た(1.86 g, 97%)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) d 9.96(brs, 1H), 7.03(s, 1H), 5.63(m, 1H), 4.39(m, 1H), 3.97(m, 1H), 3.77(m, 1H), 3.71(m, 1H), 2.49(s, 3H), 2,41(m, 1H), 1.77(m, 1H), 0.92(m, 18H), 0.10(m, 12H).
【0069】
5−アセチル−2−アミノ−3−[3’,5’−ビス(tert−ブチルジメチルシリル)−2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−1H−ピロール(G)
300 mlのナスフラスコに(F) (3.24 mmol, 1.61 g)を入れメタノール(80 ml)で希釈し、これに10%パラジウムカーボン(166 mmol, 0.177 g) を加え水素雰囲気下2時間半室温で撹拌した。パラジウムカーボンを濾別した後に、溶媒を留去することにより目的物を得た(1.46 g, 96%)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) d 10.05(brs, 1H), 6.70(s, 1H), 5.05(m, 1H), 4.89(brs, 2H), 4.38(m 1H), 3.87(m, 1H), 3.75(m, 2H), 2.36(s, 3H), 2,07(m, 1H), 1.93(m, 1H), 0.92(m, 18H), 0.09(m, 12H).
【0070】
5−アセチル−3−[3’,5’−ビス(tert−ブチルジメチルシリル)−2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール(H)
300 mlのナスフラスコに(G)(3.24 mmol, 1.61 g)を入れ乾燥THF(20 ml)で希釈し、これにトリエチルアミン(4.25 mmol, 0.60 ml)およびフェノキシアセチルクロリド(4.36 mmol, 0.55 ml)を加え窒素雰囲気下14時間室温で撹拌した。この反応溶液に酢酸エチル(100 ml)を加え有機相を水(50 ml)で4回、飽和食塩水(50 ml)で1回洗浄した。これに硫酸マグネシウムを加え乾燥させろ過した後、溶媒を留去し、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 1:0→5:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(1.58 g, 82%)。1H-NMR (400 MHz, CDCl3) d 10.98(brs, 1H), 10.24(brs, 1H), 7.42(m, 2H), 7.15(t, J = 3.6 Hz, 1H), 7.05(d, J = 4.0 Hz, 1H), 6.67(s, 1H), 5.32(m, 1H), 4.72(s, 2H), 4.48(m, 1H), 4.08(m, 1H), 3.77(m, 2H), 2.44(s, 3H), 2,27(m, 1H), 2.01(m, 1H), 1.00(s, 9H), 0.88(s, 9H), 0.15(m, 12H).
【0071】
5−アセチル−3−[2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール (I)
300 mlのナスフラスコに(H) (1.96 mmol, 1.18 g)を入れTHF(60 ml)で希釈し、これに70%テトラブチルアンモニウムフルオリド(7.36 mmol, 2.34 g)および酢酸(17.5 mmol, 1.00 ml)を加え窒素雰囲気下18時間室温で撹拌した。溶媒を留去し、さらにイソプロパノールを加え減圧下共沸させて揮発物を除いた。この混合物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 3:1→0:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(0.333 g, 45%)。1H-NMR (400 MHz, CD3OD) d 7.32(t, J = 3.6 Hz, 2H), 7.03(m, 3H), 5.17(m, 1H), 4.74(s, 2H), 4.34(m, 1H), 3.95(m, 1H), 3.69(m, 2H),2,35(s, 3H), 2.04(m, 2H).
【0072】
5−アセチル−3−[2’−デオキシ−5’−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール (J)
マイクロ波照射装置用の試験管に(I) ( 0.26 mmol, 0.099 g)を入れ乾燥ピリジン(2 ml)で希釈し、これにジメトキシトリチルクロリド(0.35 mmol, 0.12 g)とトリエチルアミン(0.54 mmol, 75 ml)を加え窒素雰囲気下30分間100℃でマイクロ波を照射した。反応溶液にトルエンを加え溶媒を減圧下共沸させ留去した後にシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 1:0→1:2、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(0.043 g, 24%)。
【0073】
5−アセチル−3−[3’−(2−シアノエトキシ−ジイソプロピルアミノ)ホスフィニル−2’−デオキシ−5’−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール(K)
50 mlのナスフラスコに(J) (64 mmol, 0.043 g)を入れ乾燥ジクロロメタン(2 ml)で希釈し、これに2-シアノエチル-N,N,N',N'-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(95 mmol, 30 ml)、1H−テトラゾール(39 mmol, 2.7 mg)およびジイソプロピルアミン(36 mmol, 5.0 ml)を加え窒素雰囲気下15時間室温で撹拌した。反応溶液をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル = 1:0→10:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(0.019 g, 34%)。
31P-NMR (140 MHz, CDCl3) d 148.1, 147.9, 147.5.
【0074】
5−アセチル−2−アミノ−3−(2’−デオキシ−5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−1H−ピロール (L)
20 mLのフラスコに(I) (0.3 mmol, 112 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去し、28 %-アンモニア水溶液 (10 mL)を加え、60℃で一晩撹拌した。減圧下で濃縮し残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、0.2 Mで溶出されたフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例2】
【0075】
5−アセチル−2−アミノピロールジデオキシリボヌクレオシド三リン酸(ddApTP)の合成(図5スキーム3)
5−アセチル−3−[5’−tert−ブチルジメチルシリル−2’−デオキシ−5’−(1−イミダゾイルチオカルボニル)−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ-1H−ピロール (M)
50 mlのナスフラスコに(I) (2.0 mmol, 749 mg)を入れDMF(20 ml)で希釈し、これにtert−ブチルジメチルシリルクロリド(2.5 mmol, 380 mg)とイミダゾール(2.5 mmol, 170 mg)を加え3時間0℃で撹拌した。この反応溶液に1,1’−チオカルボニルジイミダゾール(2.5 mmol, 495 mg)を加え2時間半80℃で撹拌した。室温まで冷やした後、水(75 ml)を加え、生じた沈殿をろ取し、さらに水(10 ml)で2回洗浄した。これを真空乾燥することにより目的物を得た(1.138 g, 95%)。
【0076】
5−アセチル−3−(2’,3’-ジデオキシ−β−D−リボフラノシル)−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール (N)
50 mlのナスフラスコに(M) (1.7 mmol, 1.018 g)を入れ1,4−ジオキサン(10 ml)で希釈し、これにAIBN(0.17 mmol, 28 mg)と水素化トリ−n−ブチルスズ(2.2 mmol, 0.59 ml)を加え窒素雰囲気下7時間加熱還流した。室温まで冷却した後、50%トリフルオロ酢酸水溶液(20 ml)を加え4時間室温で撹拌した。その後体積が1/3になるまで溶媒を減圧留去し、この反応溶液にアセトニトリル(10 ml)を加えシクロヘキサン(6 ml)で4回洗浄した。さらにアセトニトリル相を25%アンモニア水溶液で中和し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール = 1:0→9:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(457 mg, 75%)。
【0077】
5−アセチル−2−アミノ−3−(2’,3’−ジデオキシ−5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−1H−ピロール (O)
20 mLのフラスコに(N) (0.3 mmol, 108 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去し、28 %-アンモニア水溶液 (10 mL)を加え、60℃で一晩撹拌した。減圧下で濃縮し残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、0.2 Mで溶出されたフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例3】
【0078】
5−アセチル−2−アミノピロールリボヌクレオシド三リン酸(ApTP)の合成(図5スキーム4)
5−アセチル−2−ニトロ−3−トリブチルスタンニル−1H−ピロール (P)
ヘキサブチルジスタンナン(4.5 mmol, 2.6 g)とB (3.0 mmol, 840 mg)をトルエン60 mlに溶かし、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0.03 mmol, 35 mg)を加え、72時間60℃で撹拌した。反応液をフッ化カリウム水溶液で数回洗い、不溶物を取り除いた。有機相をベンゼンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、これをろ別した。溶媒を減圧留去後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製した(970 mg, 98%)。
【0079】
5−アセチル−3−(2’,3’,5’−トリス−O−ベンジル−β−D−リボフラノシル)−2−ニトロ−1H−ピロール(Q)
300 mlのナスフラスコに2,3,5−トリス−O−ベンジル−D−リボフラノシルブロミド(0.806 mmol, 390 mg)を入れ乾燥四塩化炭素(80 ml)で希釈し、これにP (1.61 mmol, 713 mg)と二塩化亜鉛のTHF溶液(0.8 M, 1.6 mmol, 2.0 ml)を加え40分間加熱還流した。溶媒を減圧留去後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製した(250 mg, 56%)。
【0080】
5−アセチル−2−アミノ−3−(β−D−リボフラノシル)−1H−ピロール (R)
300 mlのナスフラスコにQ (0.32 mmol, 180 mg)を入れメタノール(80 ml)で希釈し、これに10%パラジウムカーボン(17 mmol, 0.018 g) を加え水素雰囲気下2時間半室温で撹拌した。パラジウムカーボンをろ別した後に、溶媒を留去することにより目的物を得た(79 mg, 96%)。
【0081】
5−アセチル−2−アミノ−3−(5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−1H−ピロール (S)
20 mLのフラスコにR (0.3 mmol, 79 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去したあと、残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、目的物を含むフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例4】
【0082】
5−シアノ−2−アミノピロールデオキシリボヌクレオチド誘導体の合成(図6スキーム1、スキーム2)
2−シアノ−4−ヨード−1H−ピロール (i)
2−シアノピロール (10 mmol, 0.92 g)を四塩化炭素 (50 mL)に溶かし、この溶液にアンバーリスト15dry (0.75 g)、N-ヨードコハク酸イミド (1 eq., 2.25 g)を加えた。70℃で24時間撹拌しアンバーリスト15dryを濾別した後、溶媒を留去し、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:3)で精製した。収率94% (2.02 g)。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 12.62 (brs, 1H),7.33(dd, J = 1.5, 2.4 Hz, 1H), 7.08(dd, J = 2.4, 3.9 Hz, 1H)
【0083】
5−シアノ−3−ヨード−2−ニトロ−1H−ピロール (ii)
200 mLのフラスコに2−シアノ−4−ヨード-1H−ピロール(8.8 mmol, 1.92 g)、無水酢酸 (10 mL)を加え-40℃に冷却した。60%-硝酸 (1.22 g)を6分掛けて滴下し、-40℃で2時間撹拌した後室温に戻した。再び-40℃に冷却し、氷水 (80 mL)を加えて反応を止め、沈殿物を濾取した。得られた固体をジクロロメタン (50 mL)に溶かし、硫酸マグネシウムで脱水した後、シリカゲルクロマトグラフィーで単離した。収率55 % (1.20 g)
【0084】
2R,5R−5−(5−シアノ−2−ニトロ−1H−ピロール−3−イル)−2−tert-ブチルジメチルシロキシメチル−3−tert-ブチルジメチルシロキシ−2,5−ジヒドロフラン (iii)
5 mLの反応管に5−シアノ−3−ヨード−2−ニトロ-1H−ピロール (0.5 mmol, 0.13 g)、(ジフェニルホスフィノフェロセン)パラジウムジクロリド (10 mol %, 37 mg)、2R,3S−3−(tert−ブチルジメチルシロキシ)−2−(tert−ブチルジメチルシロキシメチル)−2,3−ジヒドロフラン (0.5 mmol, 0.172 g)、塩化リチウム (5 eq., 0.106 g)、トリエチルアミン (4 eq., 0.202 g)、DMF (5 mL)を加え、マイクロ波反応装置で140℃10分反応させた。DMFを留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=17:3)で精製した。収率25% (0.059 g)。
【0085】
5−(5−シアノ−2−ニトロ-1H−ピロール−3−イル)−2−ヒドロキシメチル−ジヒドロフラン−3−オン (iv)
20 mLのフラスコに(iii) (0.56 mmol, 0.27 g)、THF (6 mL)、酢酸 (8 eq., 0.27 g)、75%-フッ化テトラブチルアンモニウム(4 eq., 0.78 g)を加え、室温で一晩撹拌した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=9:1)で精製した。収率64 %(0.09 g)。
【0086】
5−シアノ−3−(2’-デオキシ−β−D−リボフラノシル)−2−ニトロ−1H−ピロール (v)
300 mLのフラスコに(iv) (1.5 mmol, 0.37 g)、アセトニトリル (30 mL)、酢酸 (8.7 mL)を加え−40度に冷却した。この溶液に水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム (1.1 eq., 0.34 g)を少しずつ加え、1時間撹拌後、溶媒を留去し残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=4:1)で精製した。収率90 % (0.34 g)。1H-NMR (400 MHz, CD3OD) d 7.10 (s, 1H),5.59(dd, J = 5.9, 9.8 Hz, 1H), 4.29(dd, J = 2.4, 5.9 Hz, 1H), 3.93-3.90 (m, 1H), 3.69-3.61 (m, 2H), 2.43 (ddd, J = 2.0, 5.9, 13.2 Hz, 1H), 1.87-1.80 (m, 1H)
【0087】
5−シアノ−3−[3’,5’−ビス(tert−ブチルジメチルシリル)−2’−デオキシ−β−D−リブフラノシル]−2−ニトロ−1H−ピロール (vi)
200 mlのナスフラスコに(v) (0.24 mmol, 0.062 g)を入れDMF(0.3 ml)で希釈し、これにt-ブチルジメチルシリルクロリド(0.54 mmol, 0.081 g)とイミダゾール(0.61 mmol, 0.042 g)を加え一晩室温で撹拌した。この反応溶液に酢酸エチル(10 ml)を加え有機相を水(10 ml)で3回、飽和食塩水(10 ml)で1回洗浄した。この有機相に硫酸マグネシウムを加え乾燥させろ過した後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 3:1)で精製することにより目的物を得た(0.025 g, 21%)。
【0088】
5−シアノ−2−アミノ−3−[3’,5’−ビス(tert−ブチルジメチルシリル)−2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−1H−ピロール (vii)
20 mlのシュレンク管に(vi) (1 mmol, 0.48 g)と5%白金黒(7.8 mg)を入れトリエチルアミン(3.9 mmol)に溶かした。この溶液に100℃でギ酸(3.3 mmol)を滴下し、2時間撹拌した。白金黒を濾別した後、シリカゲルクロマトグラフィーにより目的物を得た(0.41 g, 91%)。
【0089】
5−シアノ−3−[3’,5’−ビス(tert−ブチルジメチルシリル)−2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール (viii)
300 mlのナスフラスコに(vii) (1 mmol, 0.45 g)を入れ脱水THF(10 ml)で希釈し、これにトリエチルアミン(1.5 mmol)およびフェノキシアセチルクロリド(1.2 mmol)を加え窒素雰囲気下14時間室温で撹拌した。この反応溶液に酢酸エチル(20 ml)を加え有機相を水(20 ml)で4回、飽和食塩水(20 ml)で1回洗浄した。これに硫酸マグネシウムを加え乾燥させろ過した後、溶媒を留去し、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 1:0→5:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(0.53 g, 90%)。
【0090】
5−シアノ−3−[2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール (ix)
200 mlのナスフラスコに(viii) (1 mmol)を入れTHF(30 ml)で希釈し、これに70%テトラブチルアンモニウムフルオリド(4 mmol)および酢酸(8 mmol)を加え窒素雰囲気下18時間室温で撹拌した。溶媒を留去し、さらにイソプロパノールを加え減圧下共沸させて揮発物を除いた。この混合物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 3:1→0:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(0.303 g, 85%)。
【0091】
5−シアノ−3−[2’−デオキシ−5’−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール (x)
マイクロ波照射装置用の試験管に(ix) ( 1 mmol, 0.36 g)を入れ乾燥ピリジン(4 ml)で希釈し、これにジメトキシトリチルクロリド(1.3 mmol)とジイソプロピルエチルアミン(3 mmol)を加えマイクロ波反応装置で100℃で30分反応させた。反応溶液にトルエンを加え溶媒を減圧下共沸させ留去した後にシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 1:0→1:2、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(0.45 g, 68%)。
【0092】
5−シアノ−3−[3’−(2−シアノエトキシ-ジイソプロピルアミノ)ホスフィニル−2’−デオキシ−5’−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール (xi)
50 mlのナスフラスコに(x) (0.15 mmol, 0.10 g)を入れ乾燥ジクロロメタン(5 ml)で希釈し、これに2−シアノエチル−N,N,N’,N’−テトライソプロピルホスホロジアミダイト(0.23 mmol)、1H−テトラゾール(0.091 mmol)およびジイソプロピルアミン(0.085 mmol)を加え窒素雰囲気下15時間室温で撹拌した。反応溶液をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル = 1:0→10:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(0.019 g, 34%)。
31P-NMR (140 MHz, CDCl3) d 148.5, 148.1, 147.9.
【0093】
5−シアノ−2−アミノ−3−(2’−デオキシ−5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−1H−ピロール (xii)
20 mLのフラスコに(ix) (0.3 mmol, 107 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去し、28 %-アンモニア水溶液 (10 mL)を加え、60℃で一晩撹拌した。減圧下で濃縮し残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、0.2 Mで溶出されたフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例5】
【0094】
5−シアノ−2−アミノピロールジデオキシリボヌクレオシド三リン酸の合成(図7スキーム3)
5−シアノ−3−[5’−tert−ブチルジメチルシリル−2’-デオキシ−5’−(1−イミダゾイルチオカルボニル)−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール (xiii)
50 mlのナスフラスコにix(2.0 mmol, 714 mg)を入れDMF(20 ml)で希釈し、これにtert-ブチルジメチルシリルクロリド(2.5 mmol, 380 mg)とイミダゾール(2.5 mmol, 170 mg)を加え3時間0℃で撹拌した。この反応溶液に1,1'−チオカルボニルジイミダゾール(2.5 mmol, 495 mg)を加え2時間半80℃で撹拌した。室温まで冷やした後、水(75 ml)を加え、生じた沈殿をろ取し、さらに水(10 ml)で2回洗浄した。これを真空乾燥することにより目的物を得た(1105 mg, 95%)。
【0095】
5−シアノ−3−(2’,3’−ジデオキシ−β−D−リボフラノシル)−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール (xiv)
50 mlのナスフラスコにxiii(1.7 mmol, 989 mg)を入れ1,4-ジオキサン(10 ml)で希釈し、これにAIBN(0.17 mmol, 28 mg)と水素化トリ-n-ブチルスズ(2.2 mmol, 0.59 ml)を加え窒素雰囲気下7時間加熱還流した。室温まで冷却した後、50%トリフルオロ酢酸水溶液(20 ml)を加え4時間室温で撹拌した。その後体積が1/3になるまで溶媒を減圧留去し、この反応溶液にアセトニトリル(10 ml)を加えシクロヘキサン(6 ml)で4回洗浄した。さらにアセトニトリル相を25%アンモニア水溶液で中和し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール = 1:0→9:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(435 mg, 75%)。
【0096】
5−シアノ−2−アミノ−3−(2’,3’−ジデオキシ−5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−1H−ピロール (xv)
20 mLのフラスコにxiv (0.3 mmol, 102 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去し、28 %-アンモニア水溶液 (10 mL)を加え、60℃で一晩撹拌した。減圧下で濃縮し残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、目的物を含むフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例6】
【0097】
5−シアノ−2−アミノピロールリボヌクレオシド三リン酸の合成(図7スキーム4)
5−シアノ−2−ニトロ−3−トリブチルスタンニル−1H−ピロール (xvi)
ヘキサブチルジスタンナン(4.5 mmol, 2.6 g)とii(3.0 mmol, 789 mg)をトルエン60 mlに溶かし、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0.03 mmol, 35 mg)を加え、72時間60℃で撹拌した。反応液をフッ化カリウム水溶液で数回洗い、不溶物を取り除いた。有機相をベンゼンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、これをろ別した。溶媒を減圧留去後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製した(1252 mg, 98%)。
【0098】
5−シアノ−3−(2’,3’,5’-トリス−O−ベンジル−β−D−リボフラノシル)−2−ニトロ−1H−ピロール (xvii)
300 mlのナスフラスコに2,3,5−トリス−O−ベンジル−D−リボフラノシルブロミド(0.806 mmol, 390 mg)を入れ乾燥四塩化炭素(80 ml)で希釈し、これにxvi (1.61 mmol, 772 mg)と二塩化亜鉛のTHF溶液(0.8 M, 1.6 mmol, 2.0 ml)を加え40分間加熱還流した。溶媒を減圧留去後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製した(242 mg, 56%)。
【0099】
5−シアノ−2−アミノ−3−(β−D−リボフラノシル) −1H−ピロール (xviii)
20 mlのシュレンク管に(xvii) (0.32 mmol, 173 mg)と5%白金黒(2.6 mg)を入れトリエチルアミン(1.3 mmol)に溶かした。この溶液に100℃でギ酸(1.1 mmol)を滴下し、2時間撹拌した。白金黒を濾別した後、シリカゲルクロマトグラフィーにより目的物を得た(73 mg, 96%)。
【0100】
5−シアノ−2−アミノ−3−(5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−1H−ピロール (xix)
20 mLのフラスコにxviii (0.3 mmol, 72 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去したあと、残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、目的物を含むフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例7】
【0101】
2−アミノピリドトリアジンデオキシリボヌクレオチド(dPtTP)誘導体の合成(図8スキーム1、スキーム2)
2−アミノ−3−ヨードピリジン (1)
100 mLのシュレンク管に2−アミノ−3−ブロモピリジン (17.3 mmol,3 g)、ヨウ化ナトリウム (34.6 mmol, 5.19 g)、ヨウ化第一銅 (5 mol %, 0.165 g)を加え、窒素置換した後、無水ジオキサン (36 mL)、trans-N,N'-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジアミン (10 mol%, 0.246 g)を加えて110℃で24時間撹拌した。水を加えてエーテルで抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1,Rf = 0.45)で精製した。収率86 % (3.29 g)。
【0102】
2−アミノ−9−ヨードピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (2)
200 mLのフラスコに(1) (10 mmol, 2.2 g)を無水DMF (50 mL)に溶かし、撹拌しながらイソチオシアン酸エトキシカルボニル (10 mmol, 1.312 g)を加えた。室温で2時間撹拌した後、反応液を0℃に冷却し、0.5 M-アンモニア−ジオキサン溶液 (35 mmol, 70 mL)と塩化第2水銀 (10 mmol, 2.715 g)を加えた。0℃で15分撹拌した後、室温に戻し更に4時間撹拌した。反応液に酢酸エチル (75 mL)を加え、沈殿物をセライトでろ過した。溶媒を留去した後、残渣をDMF (20 mL)に溶かし、マイクロ波反応装置で160℃で800秒反応させた。溶媒を留去後、アセトニトリルから再結晶した。収率 58 % (1.66 g)。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 8.63(m, 1H), 8.46(d, J = 5.9 Hz, 1H), 7.43(brs, 2H), 6.77(t, J = 6.9 Hz, 1H)。
【0103】
2−アミノ−9−[2R,5R4−(tert−ブチルジメチルシロキシ)−5−(tert-ブチルジメチルシロキシメチル)−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (3)
5 mLの反応管に(2)(1 mmol, 0.288 g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体 (5 mol %, 52 mg)、トリ(tert-ブチル)ホスフィン (20 mol %, 40 mg)、2R,3S−3−(tert-ブチルジメチルシロキシ)−2−(tert-ブチルジメチルシロキシメチル)-2,3-ジヒドロフラン (1 mmol, 0.345 g)、ジイソブチルエチルアミン (4.5 eq., 0.516 g)、DMF (5 mL)を加え、マイクロ波反応装置で160℃10分反応させた。DMFを留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1、Rf = 0.4)で精製した。収率22% (0.11 g)。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 8.58(m, 1H), 8.11(d, J = 6.8 Hz, 1H), 7.31(d, J = 6.8 Hz, 2H), 6.99(t, J = 7.3 Hz, 1H), 6.04(d, J = 3.9 Hz, 1H), 5.09 (s, 1H), 4.56(2, 1H), 3.84(m, 1H), 3.72(m, 1H), 0.91(s, 9H), 0.83(s, 9H), 0.22(s, 3H), 0.16(s, 3H), 0.04(s, 3H), 0.01(s, 3H)。
【0104】
2−アミノ−9−(2R,5R−5−ヒドロキシメチル−4−オキソ-テトラヒドロフラン−2−イル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (4)
20 mLのフラスコに(3)(0.2 mmol, 100 mg)、THF (2 mL)、酢酸 (8 eq., 95 mg)、フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物 (4 eq., 250 mg)を加え、室温で10時間撹拌した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=9:1、Rf = 0.5)で精製した。収率99%(54 mg)。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 8.60(m, 1H), 8.19(d, J = 6.8 Hz, 1H), 7.33(brs, 1H), 7.20(brs, 1H), 7.08(t, J = 7.3 Hz, 1H), 5.44 (m, 1H), 5.03(brs, 1H), 4.10(m, 1H), 3.70(m, 2H), 3.12(m, 1H), 2.25(m, 1H)。
【0105】
2−アミノ−9−(2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (5)
30 mLのフラスコに(4) (0.92 mmol, 0.264 g)、アセトニトリル (60 mL)、酢酸 (20 mL)を加え−40度に冷却した。この溶液に水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム (1.1 eq., 0.214 g)を少しずつ加え、1時間撹拌後、溶媒を留去し残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=2:1)で精製した。収率86 % (0.219 g)。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 8.56(d, J = 6.8 Hz, 1H), 8.02(d, J = 6.8 Hz, 1H), 7.27(brs, 2H), 7.02(t, J = 6.8 Hz, 1H), 5.37 (m, 1H), 5.10(d, J = 3.9 Hz, 1H), 4.81(t, J = 7.3 Hz, 1H), 4.10(m, 1H), 3.82(m, 1H), 3.48(m, 2H), 2,42(m, 1H), 1.67(m, 1H).13C-NMR (100 MHz, DMSO-d6) d 163.6 153.2, 150.2, 135.8, 135.7, 127.6, 112.8, 87.4, 74.0, 72.0, 62.1, 41.5。
【0106】
2−アミノ−9−(2’−デオキシ−5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (6)
20 mLのフラスコに(5) (0.3 mmol, 83 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去したあと、残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、0.3 Mで溶出されたフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
31P-NMR (140 MHz, D2O) d -7.73 (br s), -10.67 (d, J = 17.78 Hz), -22.34 (t, J = 17.78 Hz )。
【0107】
2−イソブチリルアミノ−9−ヨードピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (7)
20 mlのシュレンク管に、(2)(0.5 mmol, 144 mg)を入れピリジン(2.8 ml)に溶解し、塩化イソブチリル(78.6 ml、 0.75 mmol)を加えて115 ℃で2時間、攪拌した。反応液を減圧下濃縮し、その残渣に30 mlのアセトニトリルを加え溶解させた。この有機相にシリカゲルを加え有機物を吸着させ、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒 酢酸エチル:ヘキサン=2:1)で、精製し目的物175 mg(0.49 mmol、98%)を得た。
1H-NMR(400 MHz、DMSO-d6) δ 10.42(s、1H )、8.84(d、J = 6.8 Hz、1H)、8.70(d、J = 5.6 Hz、1H)、7.10(t、J = 7.2 Hz、1H)、3.47(m、1H)、1.11(d、J = 6.8 Hz、6H)。
【0108】
2−イソブチリルアミノ−9−[2R,5R4−(tert−ブチルジメチルシロキシ)−5−(tert−ブチルジメチルシロキシメチル)−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (8)
(7) (179 mg、0.5 mmol)に2R,3S−3−(tert-ブチルジメチルシロキシ)−2−(tert-ブチルジメチルシロキシメチル)−2,3−ジヒドロフラン (344 mg、1 mmol) 、トリ(o-トリル)ホスフィン(30.4 mg、0.1 mmol)、トリエチルアミン(210 ml、1.5 mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム錯体(30 mg、0.1 mmol) をガラス反応管に入れ、5 mlのN−メチルピロリドンに溶解し、マイクロ波照射し160℃で10分間攪拌した。反応溶液に25 mlの酢酸エチルを加え25 mlの水で3回分液し、有機相を得た。これを無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 酢酸エチル:ジクロロメタン=1:1)で、精製し目的物172 mg(0.3 mmol、60%)を得た。
1H-NMR(400 MHz、CDCl3) δ 8.80(d、J = 6.8 Hz、1H)、8.52(d、J = 7.2 Hz、1H)、7.70(s、1H )、7.10(t、J = 7.2 Hz、1H)、6.22(s、1H)、5.11(s、1H)、4.66(s、1H)、3.90(m, 2H)、3.61(m、1H)、1.27(d、J = 6.8 Hz、6H)、0.90(d、J = 26.4 Hz、18H)、0.24(s、3H) 、0.17(s、3H) 、0.09(s、3H) 、0.03(s、3H)。
【0109】
2−イソブチリルアミノ−9−(2R,5R−5−ヒドロキシメチル−4−オキソ-テトラヒドロフラン−2−イル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (9)
(8)(2.1 g、3.7 mmol)を100 mlフラスコに入れ、40 mlのTHFに溶解し、フッ化テトラブチルアンモニウム(5.6 g、14.9 mmol)、酢酸(1.8 g、29.8 mmol)を加え室温で一時間攪拌した。この反応液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 酢酸エチル:メタノール=10:1)で精製し目的物1.2 g (3.6 mmol、96%)を得た。1H-NMR(400 MHz、CDCl3) δ 8.95(d、J = 7.2 Hz、1H)、8.63(m、1H)、8.36(d、J = 7.2 Hz、1H )、7.30(t、J = 6.8 Hz、1H)、5.69(m、1H)、4.16(m、1H )、4.04(m、1H)、3.59(m、1H)、2.96(m、1H)、2.37(m、1H)、1.26(d、J = 6.8 Hz、6H)、1.00(m、1H )。
【0110】
2−イソブチリルアミノ−9−(2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (10)
(9)(640mg、1.9 mmol)を200 mlシュレンク管に入れ100 mlのアセトニトリルに溶解し、30 mlの酢酸を加え、−40℃で20分間冷却しながら攪拌した。これに水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(295 mg、1.4 mmol)を加え−40℃で3時間攪拌した。さらに反応温度を0℃にして30分攪拌し、この後反応液を減圧下濃縮した。ここで得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 酢酸エチル:メタノール=4:1)で精製し、目的物430 mg (1.2 mmol、66%)を得た。1H-NMR(400 MHz、DMSO-d6) δ 10.44(s、1H)、8.79(d,J = 7.2 Hz、1H)、8.29(d、J = 7.2 Hz、1H)、7.39(t、J = 7.0 Hz、1H)、5.48(m、1H)、5.13(m、1H)、4.83(m、1H)、4.19(m、1H)、3.88(m、1H)、3.36(m、1H)、3.14(m、1H)、2.62(m、1H)、1.72(m、1H)、1.28(d、J = 6.8 Hz、6H)、0.92(m、1H)。
【0111】
2−イソブチリルアミノ−9−[2’−デオキシ−5’−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル]−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (11)
(10)(642 mg、1.84 mmol)を300 mlフラスコに入れ、10 mlの無水ピリジンで三回共沸した。残渣を減圧下で30分乾燥した後、20 mlのピリジンに溶解し、ジイソプロピルエチルアミン(713 mg、5.5 mmol)、塩化ジメトキシトリチル(810 mg、2.4 mmol)を加え、室温で一時間攪拌した後反応液を減圧下濃縮した。この残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 酢酸エチル:メタノール=20:1)で精製し、目的物1.04 g (1.6 mmol、89%)を得た。
1H-NMR(400 MHz、DMSO-d6) δ 10.46(s、1H)、8.76(d、J = 6.8 Hz、1H)、8.11(d、J = 7.2 Hz、1H)、7.42(m、2H)、7.29(m、8H)、6.90(m,5H)、5.48(m、1H)、5.20(m、1H)、4.14(m、1H)、4.02(m、1H)、3.74(m、6H)、3.17(m、1H)、3.11(m、1H)2.67(m、1H)、1.77(m、1H)、1.10(d、J = 6.8 Hz、6H)。
【0112】
2−イソブチリルアミノ−9−[3’−(2−シアノエチル−ジイソプロピルアミノ)ホスフィニル−2’−デオキシ−5’−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル]−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (12)
(11) (200 mg、0.3 mmol)を二口フラスコに入れ、減圧下で3時間乾燥した。これを窒素雰囲気下、3 mlの無水ジクロロメタンで溶解した後、ジイソプロピルアミン(24 ul、0.17 mmol)、1H−テトラゾール(11 mg、0.15 mmol)、2-シアノエチル-N',N',N',N',-テトライソプロピルホスホロジアミジド(142 ul、0.45 mmol)を加えて室温で3時間攪拌した。これを減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 酢酸エチル)で精製し、目的物アミダイト 222 mg (0.26 mmol、85%)を得た。
31P-NMR(160 MHz、DMSO-d6)δ:147.56、146.98
FAB-MS (m/e) 302.1(96.5) 、363.8(14.8)、851.3(11.7)、459.8(5.5)
【実施例8】
【0113】
2−アミノピリドトリアジンジデオキシリボヌクレオチド三リン酸(ddPtTP)の合成(図9スキーム3)
2−アミノ−9−[5’−tert−ブチルジメチルシリル−2’−デオキシ-5’−(1−イミダゾイルチオカルボニル)−β−D−リボフラノシル]−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (13)
50 mlのナスフラスコに(5)(2.0 mmol, 556 mg)を入れDMF(20 ml)で希釈し、これにtert-ブチルジメチルシリルクロリド(2.5 mmol, 380 mg)とイミダゾール(2.5 mmol, 170 mg)を加え3時間0℃で撹拌した。この反応溶液に1,1'-チオカルボニルジイミダゾール(2.5 mmol, 495 mg)を加え2時間半80℃で撹拌した。室温まで冷やした後、水(75 ml)を加え、生じた沈殿をろ取し、さらに水(10 ml)で2回洗浄した。これを真空乾燥することにより目的物を得た(955 mg, 95%)。
【0114】
2−アミノ−9−(2’,3’−ジデオキシ−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (14)
50 mlのナスフラスコに(13) (1.7 mmol, 854 mg)を入れ1,4−ジオキサン(10 ml)で希釈し、これにAIBN(0.17 mmol, 28 mg)と水素化トリ−n−ブチルスズ(2.2 mmol, 0.59 ml)を加え窒素雰囲気下7時間加熱還流した。室温まで冷却した後、50%トリフルオロ酢酸水溶液(20 ml)を加え4時間室温で撹拌した。その後体積が1/3になるまで溶媒を減圧留去し、この反応溶液にアセトニトリル(10 ml)を加えシクロヘキサン(6 ml)で4回洗浄した。さらにアセトニトリル相を25%アンモニア水溶液で中和し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール = 1:0→9:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(334 mg, 75%)。
【0115】
2−アミノ−9−(2’,3’−ジデオキシ−5’-トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (15)
20 mLのフラスコに(14) (0.3 mmol, 79 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去したあと、残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、目的物を含むフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例9】
【0116】
2−アミノピリドトリアジンリボヌクレオチド三リン酸(PtTP)の合成(図9スキーム4)
2−アミノ−9−トリブチルスタンニルピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (16)
ヘキサブチルジスタンナン(4.5 mmol, 2.6 g)と(2) (3.0 mmol, 860 mg)をトルエン60 mlに溶かし、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0.03 mmol, 35 mg)を加え、72時間60℃で撹拌した。反応液をフッ化カリウム水溶液で数回洗い、不溶物を取り除いた。有機相をベンゼンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、これをろ別した。溶媒を減圧留去後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製した(990 mg, 98%)。
【0117】
2−アミノ−9−(2’,3’,5’−トリス−O−ベンジル−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (17)
300 mlのナスフラスコに2,3,5−トリス−O−ベンジル−D−リボフラノシルブロミド(0.806 mmol, 390 mg)を入れ乾燥四塩化炭素(80 ml)で希釈し、これに(16) (1.61 mmol, 726 mg)と二塩化亜鉛のTHF溶液(0.8 M, 1.6 mmol, 2.0 ml)を加え40分間加熱還流した。溶媒を減圧留去後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製した(255 mg, 56%)。
【0118】
2−アミノ−9−(β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (18)
300 mlのナスフラスコに(17) (0.32 mmol, 181 mg)を入れメタノール(80 ml)で希釈し、これに10%パラジウムカーボン(17 mmol, 0.018 g) を加え水素雰囲気下2時間半室温で撹拌した。パラジウムカーボンをろ別した後に、溶媒を留去することにより目的物を得た(90 mg, 96%)。
【0119】
2−アミノ−9−(5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (19)
20 mLのフラスコに(18) (0.3 mmol, 79 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去したあと、残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、目的物を含むフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例10】
【0120】
2−ジメチルアミノピリドトリアジンデオキシリボヌクレオチド誘導体の合成(図10スキーム1、スキーム2)
2−ジメチルアミノ−9−ヨードピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (52)
200 mLのフラスコに2−アミノ−3−ヨードピリジン (10 mmol, 2.2 g)を無水DMF (50 mL)に溶かし、撹拌しながらイソチオシアン酸エトキシカルボニル (10 mmol, 1.31 g)を加えた。室温で2時間撹拌した後、反応液を0℃に冷却し、ジメチルアミン塩酸塩 (25 mmol, 0.82 g)、トリエチルアミン(40 mmol, 4.05 g)と塩化第2水銀 (10 mmol, 2.72 g)を加えた。0℃で15分撹拌した後、室温に戻し更に4時間撹拌した。反応液に酢酸エチル (75 mL)を加え、沈殿物をセライトでろ過した。溶媒を留去した後、残渣を飽和塩化水素ジオキサン溶液中で4時間還流させ、固体をろ別した。ろ液を酢酸エチル、炭酸水素カリウム水溶液で分液し、シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル=2:1)により単離した。収率 85 % (2.673 g)。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 8.62(dd, J = 0.97, 6.8 Hz, 1H), 8.47(dd, J = 1.5, 7.3 Hz, 1H), 6.78(t, J = 6.8, 7.3 Hz, 1H), 3.27 (s, 3H), 3,25 (s, 3H)。
【0121】
2−ジメチルアミノ−9−[2R,5R4−(tert−ブチルジメチルシロキシ)−5−(tert-ブチルジメチルシロキシメチル)−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (53)
5 mLの反応管に52 (1 mmol, 0.316 g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体 (5 mol %, 52 mg)、トリ(tert−ブチル)ホスフィン (20 mol %, 40 mg)、2R,3S−3−(tert-ブチルジメチルシロキシ)−2−(tert-ブチルジメチルシロキシメチル)−2,3−ジヒドロフラン (1 mmol, 0.345 g)、ジイソブチルエチルアミン (4.5 eq., 0.582 g)、DMF (5 mL)を加え、マイクロ波反応装置で160℃15分反応させた。DMFを留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル=4:1)で精製した。収率57 %。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 8.68(d, J = 5.4 Hz, 1H), 8.20(d, J = 6.8 Hz, 1H), 6.82(t, J = 6.8 Hz, 1H), 6.12(brs, 1H), 5.11 (brs, 1H), 4.64(brs, 1H), 3.95(dd, J = 2.4, 11.2 Hz, 1H), 3.79(dd, J = 3.4, 11.7 Hz, 1H), 3.25 (s, 3H), 3.24 (s, 3H), 0.94(s, 9H), 0.87(s, 9H), 0.22(s, 3H), 0.16(s, 3H), 0.08(s, 3H), 0.03(s, 3H)。
【0122】
2−ジメチルアミノ−9−(2R,5R−5−ヒドロキシメチル−4−オキソ-テトラヒドロフラン−2−イル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (54)
20 mLのフラスコに(53) (2.8 mmol, 1.28 g)、THF (30 mL)、酢酸 (8 eq., 0.86 g)、フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物 (4 eq., 2.51 g)を加え、室温で10時間撹拌した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=9:1)で精製した。収率88%(0.763 g)。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 8.60(d, J = 6.8 Hz, 1H), 8.22(d, J = 6.8 Hz, 1H), 7.09(t, J = 6.8 Hz, 1H), 5.57 (dd, J = 6.4, 10.3 Hz, 1H), 5.01 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 4.11 (t, J = 2.9 Hz, 1H), 3.79-3.65 (m, 2H), 3.19 (s, 3H), 3.12 (s, 3H), 3.11 (dd, J = 6.3, 18.1 Hz, 1H), 2.22 (dd, J = 10.2, 18.1 Hz, 1H)
【0123】
2−ジメチルアミノ−9−(2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (55)
30 mLのフラスコに(54) (2.5 mmol, 0.75 g)、アセトニトリル (50 mL)、酢酸 (15 mL)を加え−40℃に冷却した。この溶液に水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム (1.1 eq., 0.575 g)を少しずつ加え、1時間撹拌後、溶媒を留去し残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=4:1)で精製した。収率78 % (0.591 g)。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 8.54(d, J = 6.8 Hz, 1H), 8.01(d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.02(dd, J = 6.8, 7.3 Hz, 1H), 5.35 (dd, J = 6.8, 8.3 Hz, 1H), 5.09(t, J = 2.0 Hz, 1H), 4.78(dd, J = 5.4, 5.9 Hz, 1H), 4.15(brs, 1H), 3.86-3.81(m, 1H), 3.20(s, 3H), 3.12(s, 3H), 1.7-1.63(m, 1H)。
【0124】
2−ジメチルアミノ−9−(2’−デオキシ−5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (56)
20 mLのフラスコに(55) (0.3 mmol, 92 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去したあと、残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、0.3 Mで溶出されたフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。収率19% (36.5 mg) 31P-NMR (140 MHz, D2O) d -10.69 (d, J = 23.7 Hz), -11.13 (d, J = 23.7 Hz), -23.07 (t, J = 23.7 Hz )。
【0125】
2−ジメチルアミノ−9−[2’−デオキシ−5’−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル]−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (57)
(55) (0.5 mmol, 153 mg)を30 mlフラスコに入れ、10 mlの無水ピリジンで三回共沸した。残渣を減圧下で30分乾燥した後、5 mlのピリジンに溶解し、ジイソプロピルエチルアミン(1.5 mmol, 173 mg)、塩化ジメトキシトリチル(0.65 mmol, 220 mg)を加え、室温で一時間攪拌した後反応液を減圧下濃縮した。この残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=19:1)で精製し、目的物 226 mg (74%)を得た。1H-NMR(400 MHz、CDCl3) δ8.68 (dd, J = 1.5, 6.8 Hz, 1H), 7.91 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 7.44(d, J = 7.8 Hz, 2H), 7.36-7.19 (m, 7H), 6.83 (d, J = 8.7 Hz, 4H), 6.75 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 5.52 (brt, J = 7.8 Hz, 1H), 4.40-4.35 (m, 1H), 4.12-4.08 (m, 1H), 3.79 (s, 6H), 3.42-3.31 (m, 2H), 3.24 (s, 6H), 2.67 (dd, J = 3.4, 6.8 Hz, 1H), 1.95-1.88 (m, 1H)。
【0126】
2−ジメチルアミノ−9−[3’−(2−シアノエチル−ジイソプロピルアミノ)ホスフィニル−2’−デオキシ−5’−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル]−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (58)
20 mlのナスフラスコに(57) (0.11 mmol, 0.069 g)を入れ乾燥ジクロロ メタン(2 ml)で希釈し、これに2-シアノエチル-N,N,N',N'-テトライソプロピ ルホスホロジアミダイト(0.19 mmol, 60 ul)、1H−テトラゾール(39 mmol, 3.9 mg)およびジイソプロピルアミン(69 mmol, 69 ml)を加え窒素雰囲気下8時 間室温で撹拌した。反応溶液をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:THF = 10:1)で精製することにより目的物を得た(0.040 g, 44%)。 31P-NMR (140 MHz, CDCl3) δ 148.4, 147.7
【実施例11】
【0127】
2−ジメチルアミノピリドトリアジンジデオキシリボヌクレオチド三リン酸の合成(図11スキーム3)
2−ジメチルアミノ−9−[5’-tert−ブチルジメチルシリル−2’−デオキシ−5’−(1−イミダゾイルチオカルボニル)−β−D−リボフラノシル]−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (59)
50 mlのナスフラスコに(55) (2.0 mmol, 613 mg)を入れDMF(20 ml)で希釈し、これにtert-ブチルジメチルシリルクロリド(2.5 mmol, 380 mg)とイミダゾール(2.5 mmol, 170 mg)を加え3時間0℃で撹拌した。この反応溶液に1,1'-チオカルボニルジイミダゾール(2.5 mmol, 495 mg)を加え2時間半80℃で撹拌した。室温まで冷やした後、水(75 ml)を加え、生じた沈殿をろ取し、さらに水(10 ml)で2回洗浄した。これを真空乾燥することにより目的物を得た(1008 mg, 95%)。
【0128】
2−ジメチルアミノ−9−(2’,3’−ジデオキシ−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (60)
50 mlのナスフラスコに(59)(1.7 mmol, 902 mg)を入れ1,4-ジオキサン(10 ml)で希釈し、これにAIBN(0.17 mmol, 28 mg)と水素化トリ-n-ブチルスズ(2.2 mmol, 0.59 ml)を加え窒素雰囲気下7時間加熱還流した。室温まで冷却した後、50%トリフルオロ酢酸水溶液(20 ml)を加え4時間室温で撹拌した。その後体積が1/3になるまで溶媒を減圧留去し、この反応溶液にアセトニトリル(10 ml)を加えシクロヘキサン(6 ml)で4回洗浄した。さらにアセトニトリル相を25%アンモニア水溶液で中和し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール = 1:0→9:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(370 mg, 75%)。
【0129】
2−ジメチルアミノ−9−(2’,3’-ジデオキシ-5’-トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (61)
20 mLのフラスコに(60) (0.3 mmol, 87 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去したあと、残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、目的物を含むフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例12】
【0130】
2−ジメチルアミノピリドトリアジンリボヌクレオチド三リン酸の合成(図11スキーム4)
2−ジメチルアミノ−9−トリブチルスタンニルピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (62)
ヘキサブチルジスタンナン(4.5 mmol, 2.6 g)と(52) (3.0 mmol, 948 mg)をトルエン60 mlに溶かし、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0.03 mmol, 35 mg)を加え、72時間60℃で撹拌した。反応液をフッ化カリウム水溶液で数回洗い、不溶物を取り除いた。有機相をベンゼンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、これをろ別した。溶媒を減圧留去後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製した(1409 mg, 98%)。
【0131】
2−ジメチルアミノ−9−(2’,3’,5’−トリス−O−ベンジル−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (63)
300 mlのナスフラスコに2,3,5−トリス−O−ベンジル−D−リボフラノシルブロミド(0.806 mmol, 390 mg)を入れ乾燥四塩化炭素(80 ml)で希釈し、これに(62) (1.61 mmol, 772 mg)と二塩化亜鉛のTHF溶液(0.8 M, 1.6 mmol, 2.0 ml)を加え40分間加熱還流した。溶媒を減圧留去後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製した(267 mg, 56%)。
【0132】
2−ジメチルアミノ−9−(β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (64)
300 mlのナスフラスコに(63)(0.32 mmol, 190 mg)を入れメタノール(80 ml)で希釈し、これに10%パラジウムカーボン(17 mmol, 0.018 g) を加え水素雰囲気下2時間半室温で撹拌した。パラジウムカーボンをろ別した後に、溶媒を留去することにより目的物を得た(99 mg, 96%)。
【0133】
2−ジメチルアミノ−9−(5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (65)
20 mLのフラスコに(64)(0.3 mmol, 97 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去したあと、残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、目的物を含むフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例13】
【0134】
蛍光測定
1. ピリドトリアジンに観察された蛍光について、その励起波長と蛍光スペクトルを測定した。
2. ピリドトリアジンの吸収スペクトルから、励起波長を330 nmとして、その励起波長を与えたときの蛍光スペクトルを測定したところ、図2のようなスペクトルを得た。
3. このときの最大蛍光波長は385.8 nmであった。
【実施例14】
【0135】
転写反応
1. 上流にT7プロモーター領域を持ち、アミノピロールデオキシリボヌクレオシド(dAp)、ピリドトリアジンデオキシリボヌクレオシド(dPt)をそれぞれ一塩基導入した一本鎖鋳型、
TempAp、TempPtを用意した。
TempAp:5’-CTAATACGACTCACTATAGGG-TTAAApCACC (下線部はT7プロモーター領域)
TempPt:5’-CTAATACGACTCACTATAGGG-TTAAPtTACC(下線部はT7プロモーター領域)
2. T7プロモーター領域でアニールする一本鎖DNAを用意し、それぞれとアニールさせ
た(3’-GATTATGCTGAGTGATATCCC)
3. T7プロモーター領域で二本鎖となった鋳型に対し±rPtTP、±rApTP存在下で、T7 RNA Polymerase反応を行った。
4. 反応条件:40mM Tris-HCl pH8.0、8mM MgCl2、2mM スペルミジン、5mM DTT、2mM NTPs、RNAse Inhibitor 20U、鋳型 20ng-1ug、T7 RNA polymerase(TAKARA)。
5. 42℃で2時間酵素反応を行い、反応産物を尿素変性8%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動して精製した結果,目的とする転写物を得た
【実施例15】
【0136】
転写反応産物の塩基組成分析
1. [α-32P]ATPもしくは[α-32P]GTP存在下でT7転写反応を行った。
2. AもしくはGの5’側に隣接するヌクレオシド3’リン酸(Np)がそれぞれ32Pで標識されるので、精製したRNAをRNAse T2(Sigma)を用いてNpに完全分解した。
3. 完全分解:ラベルされたRNAにRNAse T2(Invitrogen、10U/ul、10mM 酢酸ナトリウムpH6.7)を加え全量750ulとし、37℃で一晩酵素反応を行った。
4. 分解された産物の一部を2D-TLCで分離するために、10cm×10cmのTLC板(フナセルSF、フナコシ)にスポットした。一次元目および二次元目の展開液の組成は、イソ酪酸66:アンモニア1:水33(体積比)、および2-プロパノール70:塩酸15:水15(体積比)である。
5. 展開後のスポットをバイオイメージングアナライザー(BAS、富士フィルム)で検出
し、それぞれのヌクレオチドを定量した。
6. その結果、鋳型中のApに対して、PtTPが、鋳型中のPtに対してApTPが選択的に取り込まれることが分かった。
【実施例16】
【0137】
RIシーケンス
1.精製標品を用いて、RIシーケンスを行った。
2.鋳型はPCRで増幅させた二本鎖を使用した。
3.鋳型:5’-tgtggaattgtgagcggataacaaggtctaa(Pt)cttggctaat(Ap)ttacagttacaacgtcgtgactgggaaac
4.プライマーは5’- gttttcccagtcacgacgttgtaa
5.プライマーは[32P-γ]dATPでラベルした。
6.反応溶液を調製した。鋳型0.1pmol、ラベルしたプライマー0.7pmol、5*Buffer(400mM Tris-HCl pH9.0、10mM MgCl2) 4ul、精製標品1ul(適宜希釈)を加え、全量を18ulとした。
7.反応溶液18ulから、4ulを分取し、dddNTPmix 2ulを加えたのち、PTC-200 Peltier
Thermal Cycler を用いて[94℃、0.5分―60℃、0.5分―72℃、1分]×15サイクル、[94℃、0.5分―72℃、1分]×15サイクルで反応した。
8.dddNTPmix:dNTP 3uM、ddNTP 75nM
9.反応後のサンプルを尿素変性20%アクリルアミドゲルで、電気泳動した。
10.泳動後、ゲルを乾燥し、オートラジオグラム(BAS、富士フィルム)で検出し、Ptの
箇所にはApが、Apの箇所にはPtが選択的に取り込まれていることが確認できた。
【実施例17】
【0138】
Pyrosequencerによる複製の確認法
1. 反応溶液は、鋳型 0.1uM、プライマー 0.3uM、Polymeraseを抜いた酵素Mix 5ul(Pyrosequencing)、基質Mix 5ul(Pyrosequencing)、20mM Tris-Acetate、5mMMgAC2の反応系50ulに対して、Taq DNAポリメラーゼを2ul(適宜希釈)添加した。
2. Polymeraseを抜いた酵素Mix、基質Mixはともに、Pyrosequencing社より提供を受けた。
3. 鋳型として3’-GTCACTTAACATTATGCTGA(Ap)TG(Ap)TATCもしくは3’-GTCACTTAACATTATGCTGA(Pt)TG(Pt)TATC、プライマーとして5’-CAGTGAATTGTAATACGACTを用いた。
4. あらかじめ0.1μMの鋳型と0.3μMプライマーを混合して95℃で1分間変性させた後に室温で10分放置することによりアニーリングを行った。
5. この1.の反応液に4.のアニーリング溶液を混合した後にpyrosequencer PSQ96Aに供し、鋳型に対応する塩基の取り込みを観察したところ、図3に示すとおり十分なシグナルが得られ、塩基の取り込みをみることが可能であった。
【実施例18】
【0139】
PCR反応
1. Taq DNAポリメラーゼ (タカラバイオ)を用いてPCR反応を行った。
2. 緩衝液は酵素購入時に添付の緩衝液を用いた。
3. 鋳型には
5’-tgtggaattgtgagcggataacaa tactacaaattgctcagctcgaaaaagagctgcaggcgctggtctaa(Pt)cttggctaat(Ap)ttacag ggaaaagaaaatgcgcagctggaatgggaactgcttgctgttacaacgtcgtgactgggaaac
を0.01pMの濃度で添加した。
4. センスプライマーには5’-tgtggaattgtgagcggataacaa、アンチセンスプライマーには5’-gtttcccagtcacgacgttgtaaを各0.25μMの濃度で添加した。
5. 反応液をPTC225サーマルサイクラー(MJ Research)を用いて、95℃1分、55.6℃1分、72℃1分のサイクルを30回繰り返した後、72℃5分インキュベートして反応を行った。
6. 反応産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動に供して、鋳型の増幅を確認した。図12に示すように反応物を確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】天然塩基対のC−G塩基対、A−T塩基対及び本発明による非天然型塩基を示す図である。
【図2】実施例13におけるピリドトリアジンに観察された蛍光について、その励起波長と蛍光スペクトルの測定結果の図である。
【図3】実施例17におけるPyrosequencerによる複製の確認を示す図である。
【図4】本発明の修飾塩基の合成を示すスキーム図である。
【図5】本発明の修飾塩基の合成を示すスキーム図である。
【図6】本発明の修飾塩基の合成を示すスキーム図である。
【図7】本発明の修飾塩基の合成を示すスキーム図である。
【図8】本発明の修飾塩基の合成を示すスキーム図である。
【図9】本発明の修飾塩基の合成を示すスキーム図である。
【図10】本発明の修飾塩基の合成を示すスキーム図である。
【図11】本発明の修飾塩基の合成を示すスキーム図である。
【図12】実施例18における電気泳動によるPCR反応物の確認図である。1レーン目のマーカーサイズは、上から、501、489、404、331、242、190、147、111 bpである。2レーン目がPCR反応産物を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、二本鎖核酸または二本鎖PNAの主鎖に大きな歪みを生じさせないような塩基対を形成する非天然型塩基と当該非天然型塩基対、それらの非天然型塩基を有するヌクレオシド、ヌクレオチド、アミダイト化合物または一本鎖および二本鎖オリゴヌクレオチド、または、それらの塩基または塩基対を有する核酸に関する。さらに、それらの物質を使った核酸増幅法、アプタマー選別法、転写反応、などの基礎反応、さらに、それらの基礎反応を使った応用法、さらに当該応用法を用いた装置やキットに関する。
【0002】
本発明の提供するヌクレオシドまたはヌクレオチドが有する2つの塩基対の例として、一つは、2−アミノ−4,5置換−1H−ピロール−3−イル基を塩基として有する。好ましくは、前記塩基の4位又は5位が、以下の 1)水素基、アルキル基、アリール基; 2)水酸基、アミノ基、チオール基など又はその誘導体; 3)ハロゲン基; 4)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基など又はその誘導体から選択される置換基によって置換されている。もう一つは、2,6,7,8置換−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン−9−イル基を塩基として有する。好ましくは、前記塩基の2位、6位、7位又は8位が、以下の 1)水素基、アルキル基、アリール基; 2)水酸基、アミノ基、チオール基など又はその誘導体; 3)ハロゲン基; 4)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基など又はその誘導体から選択される置換基によって置換されている。
【0003】
これらの例に挙げたヌクレオシドまたはヌクレオチドが有する2つの塩基は、核酸(DNA、RNA、PNAまたはその誘導体)の中において対合をつくり、その最終増幅産物の核酸が生成される複製工程において、当該塩基対が保存されることを特徴とする。複製保存、転写翻訳の工程において、新しい遺伝暗号を提供する。
【0004】
さらに、本発明は当該塩基を有する核酸を用いた核酸増幅反応とそれを用いた診断キット、アプタマー作成、蛍光を用いた検出キット、マイクロアレイ、RNAi試薬、非天然型コドンを用いた人工タンパク質の合成に資する。
【背景技術】
【0005】
自然界で知られている生命体が持つ核酸はアデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)の4種類(RNAではチミンの代わりにウラシル(U))の塩基からなり、これ以外の塩基は自然界には存在しない。一方、人工的な非天然型塩基合成の試みも数多くされており、例えば、Bennerらが合成したisoG、isoC (非特許文献1及び非特許文献2)や平尾らのx、yなどの報告がある(非特許文献3)。非天然型塩基を導入することにより、核酸塩基配列のバリエーションは飛躍的に増大する。例えば、核酸がコードするアミノ酸は自然界ではたった20種類であるが、非天然型塩基1対を組み込んだ場合コドンのバリエーションは43種(64種)から63種(216種)に増え、新しいコドンに非天然アミノ酸を割り当てることにより、種々の非天然型タンパク質を生体に作らせることが可能となる。また、タンパク質の設計図としての機能だけでなく、アプタマーなど核酸分子そのものが持つ機能性に関しても、配列のバリエーションが増大することにより新たな機能を付加することが可能となる。
【非特許文献1】C. Switzer, et al., J. Am. Chem. Soc., 111, 8322-8323 (1989)
【非特許文献2】C. Switzer, et.al., Biochemistry, 32, 10489-10496 (1993)
【非特許文献3】Ohtsuki, et al., Proc Natl Acad Sci USA. 98, 4922-4925 (2001)
【発明の開示】
【0006】
しかし、従来の非天然塩基は対合の特異性が低く、天然塩基とある一定の割合でミスマッチをおこすため、例えばPCRなどで複製を繰り返すうちに非天然塩基対が天然塩基に置き換えられてしまうという問題点があり、生体内でも同様に安定に維持することは難しいと考えられていた。さらにポリメラーゼの取り込み効率が低いため、非天然塩基を含む核酸は伸長反応が途中で止まる率が高く、安定した複製反応を行うことが出来なかった。
【0007】
本発明による新規の塩基はこれらの問題点を改善し、天然塩基とミスマッチを起こすことが非常に少なく、安定に複製することを可能とし、さらに酵素による取り込み効率の向上により、非天然塩基を含む核酸の複製が容易に効率よくできるようになった。また、本発明による非天然塩基、あるいはそれを含むヌクレオチドはそれ自体の安定性が高いため保存が利き、取り扱いも容易であるため、実用化に適している。
【0008】
具体的には、本発明は、以下を提供するものである。
(1)二本鎖DNAまたは二本鎖RNAなどの二本鎖核酸内でその主鎖に大きな歪みを生じさせないような塩基対を形成する非天然型塩基と、当該塩基を有するヌクレオシドまたはヌクレオチド、およびαチオ体に代表される誘導体、またはそれらの塩基を有する一本鎖または二本鎖以上の核酸またはPNA。
【0009】
(2)複素環構造の骨格構造を形成する原子の一部または全部がπ電子系でつながった同一平面上に並んでいる非天然型塩基または非天然型塩基対を有する上記(2)記載の物質。
【0010】
(3)アデニン:チミン、グアニン:シトシンの天然型塩基対が占有する空間内に収まる非天然型塩基対を有する上記(1)または(2)記載の物質。
【0011】
(4)非天然型塩基対において非天然型塩基間の水素結合の平行性を保つようにデザインされた上記(1)〜(3)のいずれか記載の物質。
【0012】
(5)非天然型塩基対において非天然型塩基間の水素結合の配向が、天然型塩基対と一致しないようにデザインされた上記(1)〜(4)のいずれか記載の物質。
【0013】
(6)非天然型塩基対において非天然型塩基間のすべての水素結合の配向性が、一つの非天然型塩基が水素のドナーであり、もう一つの非天然型塩基がアクセプターであるようにデザインされた上記(1)〜(5)のいずれか記載の物質。
【0014】
(7)対合する2つの非天然型塩基が、水溶液中で構造を維持できるように設計された上記(1)〜(6)のいずれか記載の物質。
【0015】
(8)対合する2つの非天然型塩基のおのおのにおいて、目的の水素結合の配向を持つ互変異性体が熱力学的に優位になる上記当該非天然型塩基を有する上記(1)〜(7)のいずれか記載の物質。
【0016】
(9)上記(1)記載にあるヌクレオシド、ヌクレオチドの塩基のうち、単環の複素環または2環式以上の複素環について、グリコシド結合している原子が参加する環の中心から、グリコシド結合との立体角が0から90度の範囲内の空間に、当該塩基の骨格原子または側鎖の原子として、非共有電子対をもった原子の中心が存在するような構造を持った上記(1)〜(8)のいずれか記載の物質。
【0017】
(10)上記(1)記載にあるヌクレオシド、ヌクレオチドの塩基のうち、単環または2環以上の複素環について、「グリコシド結合している原子のとなりに位置する複素環の骨格原子」または「グリコシド結合している原子のとなりに位置する複素環の骨格原子に結合する側鎖または隣の環を形成する原子の一つ」が非共有電子対を有する原子である上記(1)〜(9)のいずれか記載の物質。
【0018】
(11)非共有電子対が酸素、窒素、リン、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などである上記(9)または(10)記載の物質。
【0019】
(12)上記(1)のヌクレオシド、ヌクレオチドが、2’デオキシ体、3’デオキシ体、リボ体、2’3’ダイデオキシ体、アミダイト、または、その誘導体である上記(1)〜(11)いずれか記載の物質。
【0020】
(13)2−アミノ−4,5置換−1H−ピロール−3−イル基またはその誘導体である下記の式
【化1】
(式中R及びR’は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表される非天然型塩基、または、当該非天然型塩基を含む2’デオキシ体、3’デオキシ体、リボ体、2’3’ダイデオキシ体とそれらの誘導体から下記の化学式
【化2】
(式中X及びYは、ヒドロキシル基又は水素であり、R及びR’は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるヌクレオシドとそれらの誘導体または、当該非天然型塩基を含む下記の化学式
【化3】
(式中X及びYは、ヒドロキシル基又は水素であり、R及びR’は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、又はその誘導体
4)ハロゲン基;
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるヌクレオチドとそれらの誘導体、または、当該非天然型塩基を含む下記の化学式
【化4】
(式中Xは、ヒドロキシル基又は水素であり、R及びR’は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるアミダイトとそれらの誘導体、および当該非天然型塩基を含む一本鎖または二本鎖以上の核酸またはPNA。
【0021】
(14)電子吸引基が導入された2−アミノピロール−3−イル基と特徴とする上記(13)に記載の物質、および電子吸引基が導入することによる2−アミノピロール−3−イル基の安定化方法、または、電子吸引基が導入された2−アミノピロール−3−イル基と特徴とする上記(13)に記載の物質の製造方法。
【0022】
(15)3−ハロ−2−ニトロピロール誘導体やデオキシリボース誘導体とのパラジウム触媒反応を経る上記(13)または(14)の記載のヌクレオシド誘導体またはヌクレオチド誘導体またはアミダイト誘導体の合成方法。
【0023】
(17)上記(13)〜(15)いずれか記載の非天然塩基の保護基としてフェノキシアセチル基を代表とするフェノキシアシル基を用いる合成方法。
【0024】
(18)2,6,7,8置換−ピリドトリアジン−9−イル基またはその誘導体である下記の化学式
【化5】
(式中R1、R2、R3及びR4は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表される非天然型塩基、または、当該非天然型塩基を含む2’デオキシ体、3’デオキシ体、リボ体、2’3’ダイデオキシ体とそれらの誘導体からなる下記の化学式
【化6】
(式中X及びYは、ヒドロキシル基又は水素であり、R1、R2、R3及びR4は、以下の
1)水素基
2)アルキル基、アリール基
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるヌクレオシドとそれらの誘導体または、当該非天然型塩基を含む下記の化学式
【化7】
(式中X及びYは、ヒドロキシル基又は水素であり、R1、R2、R3及びR4は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるヌクレオチドとそれらの誘導体、または、当該非天然型塩基を含む
【化8】
(式中Xは、ヒドロキシル基又は水素であり、R1、R2、R3及びR4は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるアミダイトとそれらの誘導体、および当該非天然型塩基を含む一本鎖または二本鎖以上の核酸またはPNA。
【0025】
(18)電子供与基が導入されたピリドトリアジン−4−オン−9−イル基である上記(17)に記載の物質、および電子供与基が導入することによるピリドトリアジン−4−オン−9−イル基の安定化方法、または、電子供与基が導入された上記(17)に記載の物質の製造方法。
【0026】
(19)上記電子供与基が、ピリドトリアジンの2位にアミノ基、置換アミノ基、アルコキシ基および、ハロゲン基である上記(17)または(18)記載の物質、および塩基の安定化方法、または、当該物質の製造方法。
【0027】
(20)マイクロ波反応装置を用いる上記(17)〜(19)いずれか記載の非天然型塩基またはヌクレオシド誘導体、ヌクレオチド誘導体の合成方法。
【0028】
(21)上記(1)〜(20)のいずれか記載の2’デオキシヌクレオチド体を基質全部または一部、または非天然型塩基を含むプライマーを用いたDNAポリメラーゼによる合成反応方法とそれを利用したPCR、または等温増幅反応方法または、DNAハイブリダイゼーション反応工程を含むDNA増幅方法。
【0029】
(22)等温増幅反応が、LAMP法、SDA法、SMAP法、NASBA法、ICAN法、UCAN法、TMA法、Padlock probe法、Roling Circle(RCA)法、bDNA(branched DNA) 法、PALSAR法、Invader法、TRC法、CPT(Cycling Probe Technology)法などである(21)記載の核酸増幅反応方法または核酸ハイブリダイゼーション反応または核酸のライゲーション反応工程を含むDNA増幅方法。
【0030】
(23)上記(21)〜(23)のいずれかの方法を利用したDNA増幅装置、実験用キット、診断用キット。
【0031】
(24)上記(1)〜(20)のいずれか記載の2’デオキシヌクレオチド体および2’3’ダイデオキシヌクレオチド体を基質の全部または一部とした、または当非天然型塩基を含むプライマーを用いたDNAポリメラーゼによるチェインターミネーション反応とそれを利用したシーケンス反応。
【0032】
(25)上記(24)の方法を利用した非天然型塩基をその一部または全部に持つ核酸配列を決定するDNAシーケンス反応装置および反応キット。
【0033】
(26)上記(1)〜(20)のいずれか記載のリボヌクレオチド体を基質に含有するRNAポリメラーゼによるRNA合成反応方法とそれを利用したキット。
【0034】
(27)上記(1)〜(20)のいずれか記載のリボヌクレオチド体および3’デオキシヌクレオチド体を基質の全部または一部としたRNAポリメラーゼによるチェインターミネーション反応とそれを利用したシーケンス反応。
【0035】
(28)上記(27)の方法を利用した非天然型塩基をその一部または全部に持つ核酸配列を決定する核酸シーケンス反応装置および反応キット。
【0036】
(29)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基を含む核酸のハイブリダイゼーションを基本とした核酸検出反応。
【0037】
(30)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基を含む方法であって、その当該塩基の蛍光特性を用いたIn vivo または、In vitroの核酸検出法。
【0038】
(31)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基を含む物質を用いた電気泳動が検出工程の中にある核酸またはタンパク検出法。
【0039】
(32)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基を5’非翻訳領域、タンパクコード領域、3’非翻訳領域、ポリA領域にふくむRNAを用いた反応に基づくタンパク合成法とタンパク合成キット。
【0040】
(33)タンパク合成法が、In vitro translation法に基づく上記(32)のタンパク合成法およびタンパク合成キットとそれにより産出されるタンパク質。
【0041】
(34)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基を含む新しい翻訳コドン表に基づくタンパク合成法とタンパク合成キットおよびそれにより産出されるタンパク質。
【0042】
(35)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基を含むオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイとそれを用いた実験用キットと診断用キット。
【0043】
(36)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基を含むオリゴヌクレオチドを用いたアプタマー合成法とアプタマー。
【0044】
(37)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基を含むsiRNA分子及びそれを用いたRNA干渉(RNAi)法。
【0045】
(38)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基をddRNA、2’メチル化などの修飾を施したRNAなどを含む上記(37)記載のRNA干渉(RNAi)法。
【0046】
(39)上記(1)〜(20)のいずれか記載の非天然型塩基を含む核酸を保持するプラスミド、ファージ、菌体、細胞、動植物個体。
【0047】
(40)パイロシーケンスによる新規核酸および既知核酸の取り込み反応検定法およびそのキット。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
天然の核酸に組み込まれ安定に維持されるためには、非天然型塩基対は糖(デオキシリボースあるいはリボース)とリン酸からなる主鎖の2重らせん構造や前後に連なる塩基対が作るはしごのけたのような層構造にひずみを生じさせないことが必要である。つまり、非天然型塩基対の長さと主鎖間の距離が一致し、また非天然型塩基対が平面を構成する構造を持ち、さらにその平面が前後の塩基対と平行な構造をとらなくてはならない。平面を構成するとはすなわち、塩基の環を構成する原子がπ電子系で繋がっていて、塩基対全体の厚みが炭素原子の原子半径内に収まる程度であり、それ以上に折れ曲がった立体構造をとらないことである。また選択的な塩基対を構成するために、他の塩基と対合しない構造を持つことが重要である。図1のように天然塩基対のC−G塩基対はdonor/acceptor/acceptor−acceptor/donor/donorの3本の水素結合を持ち、A−T塩基対はacceptor/donor−donor/acceptorの2本の水素結合を持つ。本発明による非天然型塩基は図1のようにピリドトリアジンとアミノピロールはdonor/donor−acceptor/acceptorの2本の水素結合を構成するように設計されており、4種の天然塩基いずれとも水素結合を形成することが無く、さらに官能基のうち一部がとなりの塩基の官能基を水素結合を形成するようなスリッページ現象を起こすことが無いように設計されている。また、塩基が安定性を高めるためには互性変異体への遷移が起こりづらいことが重要であるが、本発明による非天然型塩基はそれぞれの互変異性体の生成エネルギーが高く、塩基が安定に存在するように設計されている。さらに、非天然型塩基を含むヌクレオチドがDNAポリメラーゼあるいはRNAポリメラーゼの基質となり得るためには、塩基部の2位および、3位にヘテロ原子を持つことが必要であるとの報告がなされており、本発明の塩基はこの条件を充足するように設計されている。
【0049】
今回発明されたアミノピロールヌクレオシドまたはアミノピロールヌクレオチドは、2−アミノ−4,5置換−1H−ピロール−3−イル基を塩基に有する。好ましくは、前記塩基の4位又は5位が、以下の 1)水素基、アルキル基、アリール基; 2)水酸基、アミノ基、チオール基、又はその誘導体; 3)ハロゲン基; 4)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体から選択される置換基によって置換されている。
【0050】
ピリドトリアジンヌクレオシドまたはピリドトリアジンヌクレオチドは、2−アミノ−6,7,8置換−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン−9−イル基を塩基として有する。好ましくは、前記塩基の6位、7位又は8位が、以下の 1)水素基、アルキル基、アリール基; 2)水酸基、アミノ基、チオール基、又はその誘導体; 3)ハロゲン基; 4)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体から選択される置換基によって置換されている。
【0051】
本発明の非天然型塩基が含まれるヌクレオチドはポリメラーゼの基質となり得るので、ポリメラーゼを用いた複製・増幅反応、転写反応、逆転写反応により核酸に組み入れることができる。複製・増幅はPCR法、SDA法、LAMP法、SMAP法、NASBA法、TMA法、ICAN法、TRC法、Q−ベータレプリカーゼ法などの従来の核酸増幅法のいずれの方法でも良い。非天然型塩基は塩基対合の選択性が高いため、ミスコーポレーションの確率が非常に低く複製回数と重ねても安定に塩基配列を維持することができ、また、ポリメラーゼの基質として取り込み効率も高い。また本発明の非天然型塩基を含むプライマーを作成することができ、非天然型塩基は天然塩基と対合することがないのでミスプライミングの確率が低下し、増幅反応の特異性を高めることが可能である。さらに、これらのポリメラーゼ反応を利用した核酸診断法へ応用することができる。
【0052】
ピリドトリアジンはそれ自身が蛍光を発する性質を持つので、基質として取り込ませた後、蛍光検出をすることができる。例えば従来の蛍光を使った検出方法としては、テトラゾリウム塩を生細胞に取り込ませ、生細胞中でホルマザン産物に変換される反応に基づいた生細胞測定システム(Non-Radioactive Cell Proliferation Assay、プロメガ社)があるが、この代わりに本発明の非天然型塩基を含むヌクレオチドを細胞内に取り込ませることにより、細胞測定を行うことができる。また、従来DNAのエタノール沈殿の際に用いる核酸共沈殿剤の代わりに本非天然型塩基を含むヌクレオチドをDNAに取り込ませておくことにより、DNAが蛍光を発するので、沈殿物を容易に目視することが可能となる。さらに、特定の配列をもった核酸分子の生体内、生体外の動態を観察するために、あらかじめ検出したい配列に非天然型塩基対を付加しておくことにより、蛍光により該核酸分子のトレーシングを行うことができる。
【0053】
核酸ハイブリダイゼーションアッセイにおいてバックグランンドを減少するためには、非天然型水素結合パターンにより塩基対を形成するヌクレオシド変異体を使用することにより、行われる。非天然塩基対はアデノシン(A)、チミジン(T)、シチジン(C)、グアノシン(G)または、ウリジン(U)以外のヌクレオチド単位の間で形成される。このような非天然型塩基対の一つはイソシトシン(イソC)とイソグアニン(イソG)との間で形成される。このイソシトシン(イソC)とイソグアニン(イソG)はいわゆるワトソン-クリックの塩基対の規則による塩基対を形成し得るが、シトシン(C)とグアニン(G)との間の水素結合とは異なる水素結合を含むため、天然塩基とハイブリダイズすることはない。
【0054】
非天然オリゴヌクレオチド単位を含有するハイブリダイゼーションは、マイクロアレイ検出にも応用が可能である。
【0055】
マイクロアレイなどを用いた検出では、バックグラウンドノイズの供給源を排除し、支持体に結合したプローブに誤った部分が結合する可能性を減少させることが重要となる。しかし、従来の方法では、オリゴヌクレオチド分子は、他のアッセイ成分または標的分析中の核酸配列に相補的であるため、そのような核酸配列を含有するように設計されている。そこで、目的の配列を含むオリゴヌクレオチドセグメントに本発明の非天然ヌクレオチドを取り込ませることにより、非特異的ハイブリダイゼーションを減少させることができる。
【0056】
さらに、標識された目的の配列を含むオリゴヌクレオチドセグメントを、非特異的に結合してバックグランドノイズを引き起こすアッセイ成分から分離することにより、アッセイ成分の非特異的結合を減少させることができる。
【0057】
非天然型塩基の応用はマイクロアレイに限定されるものではなく、ハイブリダイゼーションの原理を用いたすべての検出方法に応用できる。
【0058】
本発明による非天然型塩基はアプタマー分子にも応用することができる。SELEX法により合成・選択されるアプタマー(Tuerk, C. & Gold, L. (1990) Science 249, 505-510) に非天然型塩基対を導入することにより、従来の塩基配列のバリエーションが4n個だったのに対し6n個に増加し、天然型塩基のみでは得られなかった機能をもつアプタマーを合成・選択することが可能となる。
【0059】
また、機能性核酸分子としては、他にも例えばRNAiに用いるsiRNAに非天然型塩基対を導入することにより天然型塩基対のみでは得られなかった機能を付加することができたり、配列のバリエーションを増やすことにより、より多くの種類のsiRNAを得ることができる。その他、生体内で転写制御や翻訳制御、シグナル伝達などの機能性分子として働く核酸に非天然型塩基を導入することにより新たな機能を付加することが可能となる。
【0060】
また、非天然型塩基対は安定に複製維持されることができるので、細胞や微生物などに導入して、in vivoで維持させることも可能である。さらに、非天然型塩基対の導入により、タンパク質をコードするコドン種を43から63に大幅に拡大することができ、これらの非天然型塩基を含むコドンに新しいアミノ酸を振り当てて、それに対応するtRNAなどタンパク合成に必要な分子を供給することにより、非天然アミノ酸をタンパク質に導入することが可能となり、新たな機能性タンパク質を合成することができる。非天然のアミノ酸を導入する方法は、終止コドンを非天然アミノ酸に割り当てる方法(Wang, L., Brock, A., Herberich, B & Schultz, P., G. (2001) Science 292, 498-500)、4塩基コドンを用いる方法(Magliery, T. J., Anderson, J. C., and Schultz, P. G. (2001) J. Mol. Biol. 307, 755-769)などが報告されており、またisoC、isoG、x、y、s、など非天然塩基対を用いる方法(Piccirilli, J. A., Krauch, T., Moroney, S. E., and Benner, S. A.(1990) Nature 343, 33-37, Hirao, I., Ohtsuki, T., Fujiwara, T., Mitsui, T., Yokogawa, T., Okuni, T., Nakayama, H., Takio, K., Yabuki, T., Kigawa, T., Kodama, K., Nishikawa, K., and Yokoyama, S. (2002) Nat. Biotechnol. 20, 177-182)も研究されているが、精度や安定性、コドンの拡張性などにおいて本発明の非天然型塩基は従来のものと比較して非常に優れているといえる。
【0061】
非天然型塩基対を含む核酸の塩基配列を決定するには、非天然型塩基を含むジデオキシヌクレオチド体をターミネーターとして用いることができる。標識としては従来のいずれの方法を用いても良く、例えばターミネーターに蛍光色素を付加するダイターミネーター法を用いることもでき、あるいはプライマーに標識する方法を用いることもできる。また、RIを用いた塩基配列の決定も可能である。
【0062】
さらに、Pyrosequencing法を用いた配列決定も可能である。従来のヌクレオチドの取込や取込ミス、反応速度論パラメータの測定には、放射性同位体や蛍光色素で標識したプライマーやヌクレオチドを用いて、目的のヌクレオチドを取り込ませて電気泳動で分離した上で、その放射活性や蛍光強度により測定していた。しかし、この方法ではプライマーかヌクレオチドのどちらかに標識が必要な上、取込を伸長鎖としてみているためにヌクレオチドの取込を直接観察しているわけではない。一方で、Pyrosequencing法はヌクレオチドの取込時に生じるピロリン酸を共役酵素系を使って測定しているので、実際の取込反応を観察することが出来、しかも一切の標識を必要としないため、簡便且つ迅速で汎用性が非常に高い。
【実施例1】
【0063】
5−アセチル‐2−アミノピロールデオキシリボヌクレオチド(dApTP)誘導体の合成(図4スキーム1、スキーム2)
2−アセチル−4−ヨード−1H−ピロール (A)
2−アセチルピロール (10 mmol, 1.09 g)をクロロホルム(20 mL)、四塩化炭素 (20 mL)に溶かし、この溶液にアンバーリスト15dry (触媒量)、N-ヨードコハク酸イミド (1 eq., 2.25 g)を加えた。70℃で24時間撹拌しアンバーリスト15dryを濾別した後、溶媒を留去し、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:3)で精製した。収率96% (2.266 g)。
【0064】
5−アセチル−3−ヨード−2−ニトロ−1H−ピロール (B)
200 mLのフラスコに2−アセチル−4−ヨード−1H−ピロール(9.3 mmol, 2.20 g)、無水酢酸 (10 mL)を加え-40℃に冷却した。70%-硝酸 (1.2 mL)を6分掛けて滴下し、-40℃で2時間撹拌した後室温に戻した。再び-40℃に冷却し、氷水 (80 mL)を加えて反応を止め、沈殿物を濾取した。得られた固体をジクロロメタン (50 mL)に溶かし、硫酸マグネシウムで脱水した後、シリカゲルクロマトグラフィーで単離した。収率43 % (1.11 g)
【0065】
2R,5R−5−(5−アセチル−2−ニトロ−1H−ピロール−3−イル)−2−tert−ブチルジメチルシロキシメチル−3−tert−ブチルジメチルシロキシ−2,5−ジヒドロフラン(C)
5 mLの反応管に5−アセチル−3−ヨード−2−ニトロ−1H−ピロール (1 mmol, 0.280 g)、ジクロロビス(トリ(o-トリル)ホスフィン)パラジウム (10 mol %, 79 mg)、2R,3S−3−(tert−ブチルジメチルシロキシ)−2−(tert−ブチルジメチルシロキシメチル)−2,3−ジヒドロフラン (1 mmol, 0.345 g)、塩化リチウム (5 eq., 0.212 g)、トリエチルアミン (4 eq., 0.405 g)、DMF (5 mL)を加え、マイクロ波反応装置で140℃10分反応させた。DMFを留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製した。収率48% (0.238 g)。
【0066】
5−(5−アセチル−2−ニトロ−1H−ピロール−3−イル)−2−ヒドロキシメチル−ジヒドロフラン−3−オン (D)
20 mLのフラスコに(C) (1.6 mmol, 0.793 g)、THF (10 mL)、酢酸 (8 eq., 0.763 g)、フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物 (4 eq., 2.02 g)を加え、室温で10時間撹拌した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル、Rf = 0.55)で精製した。収率80%(0.344 g)。
【0067】
5−アセチル−3−(2’-デオキシ−β−D−リボフラノシル)−2−ニトロ−1H−ピロール (E)
300 mLのフラスコに(D) (4.82 mmol, 1.292 g)、アセトニトリル (96 mL)、酢酸 (29 mL)を加え−40度に冷却した。この溶液に水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム (1.1 eq., 1.124 g)を少しずつ加え、1時間撹拌後、溶媒を留去し残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=9:1、Rf = 0.55)で精製した。収率87 % (1.128 g)。
【0068】
5−アセチル−3−[3’,5’−ビス(tert−ブチルジメチルシリル)−2’-デオキシ−β−D−リブフラノシル]−2−ニトロ−1H−ピロール (F)
200 mlのナスフラスコに(E) (3.86 mmol, 1.04 g)を入れDMF(20 ml)で希釈し、これにt-ブチルジメチルシリルクロリド(9.73 mmol, 1.47 g)とイミダゾール(23.9 mmol, 1.63 g)を加え一晩室温で撹拌した。この反応溶液に酢酸エチル(100 ml)を加え有機相を水(100 ml)で3回、飽和食塩水(100 ml)で1回洗浄した。この有機相に硫酸マグネシウムを加え乾燥させろ過した後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 10:1)で精製することにより目的物を得た(1.86 g, 97%)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) d 9.96(brs, 1H), 7.03(s, 1H), 5.63(m, 1H), 4.39(m, 1H), 3.97(m, 1H), 3.77(m, 1H), 3.71(m, 1H), 2.49(s, 3H), 2,41(m, 1H), 1.77(m, 1H), 0.92(m, 18H), 0.10(m, 12H).
【0069】
5−アセチル−2−アミノ−3−[3’,5’−ビス(tert−ブチルジメチルシリル)−2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−1H−ピロール(G)
300 mlのナスフラスコに(F) (3.24 mmol, 1.61 g)を入れメタノール(80 ml)で希釈し、これに10%パラジウムカーボン(166 mmol, 0.177 g) を加え水素雰囲気下2時間半室温で撹拌した。パラジウムカーボンを濾別した後に、溶媒を留去することにより目的物を得た(1.46 g, 96%)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) d 10.05(brs, 1H), 6.70(s, 1H), 5.05(m, 1H), 4.89(brs, 2H), 4.38(m 1H), 3.87(m, 1H), 3.75(m, 2H), 2.36(s, 3H), 2,07(m, 1H), 1.93(m, 1H), 0.92(m, 18H), 0.09(m, 12H).
【0070】
5−アセチル−3−[3’,5’−ビス(tert−ブチルジメチルシリル)−2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール(H)
300 mlのナスフラスコに(G)(3.24 mmol, 1.61 g)を入れ乾燥THF(20 ml)で希釈し、これにトリエチルアミン(4.25 mmol, 0.60 ml)およびフェノキシアセチルクロリド(4.36 mmol, 0.55 ml)を加え窒素雰囲気下14時間室温で撹拌した。この反応溶液に酢酸エチル(100 ml)を加え有機相を水(50 ml)で4回、飽和食塩水(50 ml)で1回洗浄した。これに硫酸マグネシウムを加え乾燥させろ過した後、溶媒を留去し、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 1:0→5:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(1.58 g, 82%)。1H-NMR (400 MHz, CDCl3) d 10.98(brs, 1H), 10.24(brs, 1H), 7.42(m, 2H), 7.15(t, J = 3.6 Hz, 1H), 7.05(d, J = 4.0 Hz, 1H), 6.67(s, 1H), 5.32(m, 1H), 4.72(s, 2H), 4.48(m, 1H), 4.08(m, 1H), 3.77(m, 2H), 2.44(s, 3H), 2,27(m, 1H), 2.01(m, 1H), 1.00(s, 9H), 0.88(s, 9H), 0.15(m, 12H).
【0071】
5−アセチル−3−[2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール (I)
300 mlのナスフラスコに(H) (1.96 mmol, 1.18 g)を入れTHF(60 ml)で希釈し、これに70%テトラブチルアンモニウムフルオリド(7.36 mmol, 2.34 g)および酢酸(17.5 mmol, 1.00 ml)を加え窒素雰囲気下18時間室温で撹拌した。溶媒を留去し、さらにイソプロパノールを加え減圧下共沸させて揮発物を除いた。この混合物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 3:1→0:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(0.333 g, 45%)。1H-NMR (400 MHz, CD3OD) d 7.32(t, J = 3.6 Hz, 2H), 7.03(m, 3H), 5.17(m, 1H), 4.74(s, 2H), 4.34(m, 1H), 3.95(m, 1H), 3.69(m, 2H),2,35(s, 3H), 2.04(m, 2H).
【0072】
5−アセチル−3−[2’−デオキシ−5’−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール (J)
マイクロ波照射装置用の試験管に(I) ( 0.26 mmol, 0.099 g)を入れ乾燥ピリジン(2 ml)で希釈し、これにジメトキシトリチルクロリド(0.35 mmol, 0.12 g)とトリエチルアミン(0.54 mmol, 75 ml)を加え窒素雰囲気下30分間100℃でマイクロ波を照射した。反応溶液にトルエンを加え溶媒を減圧下共沸させ留去した後にシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 1:0→1:2、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(0.043 g, 24%)。
【0073】
5−アセチル−3−[3’−(2−シアノエトキシ−ジイソプロピルアミノ)ホスフィニル−2’−デオキシ−5’−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール(K)
50 mlのナスフラスコに(J) (64 mmol, 0.043 g)を入れ乾燥ジクロロメタン(2 ml)で希釈し、これに2-シアノエチル-N,N,N',N'-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(95 mmol, 30 ml)、1H−テトラゾール(39 mmol, 2.7 mg)およびジイソプロピルアミン(36 mmol, 5.0 ml)を加え窒素雰囲気下15時間室温で撹拌した。反応溶液をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル = 1:0→10:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(0.019 g, 34%)。
31P-NMR (140 MHz, CDCl3) d 148.1, 147.9, 147.5.
【0074】
5−アセチル−2−アミノ−3−(2’−デオキシ−5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−1H−ピロール (L)
20 mLのフラスコに(I) (0.3 mmol, 112 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去し、28 %-アンモニア水溶液 (10 mL)を加え、60℃で一晩撹拌した。減圧下で濃縮し残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、0.2 Mで溶出されたフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例2】
【0075】
5−アセチル−2−アミノピロールジデオキシリボヌクレオシド三リン酸(ddApTP)の合成(図5スキーム3)
5−アセチル−3−[5’−tert−ブチルジメチルシリル−2’−デオキシ−5’−(1−イミダゾイルチオカルボニル)−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ-1H−ピロール (M)
50 mlのナスフラスコに(I) (2.0 mmol, 749 mg)を入れDMF(20 ml)で希釈し、これにtert−ブチルジメチルシリルクロリド(2.5 mmol, 380 mg)とイミダゾール(2.5 mmol, 170 mg)を加え3時間0℃で撹拌した。この反応溶液に1,1’−チオカルボニルジイミダゾール(2.5 mmol, 495 mg)を加え2時間半80℃で撹拌した。室温まで冷やした後、水(75 ml)を加え、生じた沈殿をろ取し、さらに水(10 ml)で2回洗浄した。これを真空乾燥することにより目的物を得た(1.138 g, 95%)。
【0076】
5−アセチル−3−(2’,3’-ジデオキシ−β−D−リボフラノシル)−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール (N)
50 mlのナスフラスコに(M) (1.7 mmol, 1.018 g)を入れ1,4−ジオキサン(10 ml)で希釈し、これにAIBN(0.17 mmol, 28 mg)と水素化トリ−n−ブチルスズ(2.2 mmol, 0.59 ml)を加え窒素雰囲気下7時間加熱還流した。室温まで冷却した後、50%トリフルオロ酢酸水溶液(20 ml)を加え4時間室温で撹拌した。その後体積が1/3になるまで溶媒を減圧留去し、この反応溶液にアセトニトリル(10 ml)を加えシクロヘキサン(6 ml)で4回洗浄した。さらにアセトニトリル相を25%アンモニア水溶液で中和し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール = 1:0→9:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(457 mg, 75%)。
【0077】
5−アセチル−2−アミノ−3−(2’,3’−ジデオキシ−5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−1H−ピロール (O)
20 mLのフラスコに(N) (0.3 mmol, 108 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去し、28 %-アンモニア水溶液 (10 mL)を加え、60℃で一晩撹拌した。減圧下で濃縮し残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、0.2 Mで溶出されたフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例3】
【0078】
5−アセチル−2−アミノピロールリボヌクレオシド三リン酸(ApTP)の合成(図5スキーム4)
5−アセチル−2−ニトロ−3−トリブチルスタンニル−1H−ピロール (P)
ヘキサブチルジスタンナン(4.5 mmol, 2.6 g)とB (3.0 mmol, 840 mg)をトルエン60 mlに溶かし、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0.03 mmol, 35 mg)を加え、72時間60℃で撹拌した。反応液をフッ化カリウム水溶液で数回洗い、不溶物を取り除いた。有機相をベンゼンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、これをろ別した。溶媒を減圧留去後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製した(970 mg, 98%)。
【0079】
5−アセチル−3−(2’,3’,5’−トリス−O−ベンジル−β−D−リボフラノシル)−2−ニトロ−1H−ピロール(Q)
300 mlのナスフラスコに2,3,5−トリス−O−ベンジル−D−リボフラノシルブロミド(0.806 mmol, 390 mg)を入れ乾燥四塩化炭素(80 ml)で希釈し、これにP (1.61 mmol, 713 mg)と二塩化亜鉛のTHF溶液(0.8 M, 1.6 mmol, 2.0 ml)を加え40分間加熱還流した。溶媒を減圧留去後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製した(250 mg, 56%)。
【0080】
5−アセチル−2−アミノ−3−(β−D−リボフラノシル)−1H−ピロール (R)
300 mlのナスフラスコにQ (0.32 mmol, 180 mg)を入れメタノール(80 ml)で希釈し、これに10%パラジウムカーボン(17 mmol, 0.018 g) を加え水素雰囲気下2時間半室温で撹拌した。パラジウムカーボンをろ別した後に、溶媒を留去することにより目的物を得た(79 mg, 96%)。
【0081】
5−アセチル−2−アミノ−3−(5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−1H−ピロール (S)
20 mLのフラスコにR (0.3 mmol, 79 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去したあと、残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、目的物を含むフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例4】
【0082】
5−シアノ−2−アミノピロールデオキシリボヌクレオチド誘導体の合成(図6スキーム1、スキーム2)
2−シアノ−4−ヨード−1H−ピロール (i)
2−シアノピロール (10 mmol, 0.92 g)を四塩化炭素 (50 mL)に溶かし、この溶液にアンバーリスト15dry (0.75 g)、N-ヨードコハク酸イミド (1 eq., 2.25 g)を加えた。70℃で24時間撹拌しアンバーリスト15dryを濾別した後、溶媒を留去し、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:3)で精製した。収率94% (2.02 g)。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 12.62 (brs, 1H),7.33(dd, J = 1.5, 2.4 Hz, 1H), 7.08(dd, J = 2.4, 3.9 Hz, 1H)
【0083】
5−シアノ−3−ヨード−2−ニトロ−1H−ピロール (ii)
200 mLのフラスコに2−シアノ−4−ヨード-1H−ピロール(8.8 mmol, 1.92 g)、無水酢酸 (10 mL)を加え-40℃に冷却した。60%-硝酸 (1.22 g)を6分掛けて滴下し、-40℃で2時間撹拌した後室温に戻した。再び-40℃に冷却し、氷水 (80 mL)を加えて反応を止め、沈殿物を濾取した。得られた固体をジクロロメタン (50 mL)に溶かし、硫酸マグネシウムで脱水した後、シリカゲルクロマトグラフィーで単離した。収率55 % (1.20 g)
【0084】
2R,5R−5−(5−シアノ−2−ニトロ−1H−ピロール−3−イル)−2−tert-ブチルジメチルシロキシメチル−3−tert-ブチルジメチルシロキシ−2,5−ジヒドロフラン (iii)
5 mLの反応管に5−シアノ−3−ヨード−2−ニトロ-1H−ピロール (0.5 mmol, 0.13 g)、(ジフェニルホスフィノフェロセン)パラジウムジクロリド (10 mol %, 37 mg)、2R,3S−3−(tert−ブチルジメチルシロキシ)−2−(tert−ブチルジメチルシロキシメチル)−2,3−ジヒドロフラン (0.5 mmol, 0.172 g)、塩化リチウム (5 eq., 0.106 g)、トリエチルアミン (4 eq., 0.202 g)、DMF (5 mL)を加え、マイクロ波反応装置で140℃10分反応させた。DMFを留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=17:3)で精製した。収率25% (0.059 g)。
【0085】
5−(5−シアノ−2−ニトロ-1H−ピロール−3−イル)−2−ヒドロキシメチル−ジヒドロフラン−3−オン (iv)
20 mLのフラスコに(iii) (0.56 mmol, 0.27 g)、THF (6 mL)、酢酸 (8 eq., 0.27 g)、75%-フッ化テトラブチルアンモニウム(4 eq., 0.78 g)を加え、室温で一晩撹拌した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=9:1)で精製した。収率64 %(0.09 g)。
【0086】
5−シアノ−3−(2’-デオキシ−β−D−リボフラノシル)−2−ニトロ−1H−ピロール (v)
300 mLのフラスコに(iv) (1.5 mmol, 0.37 g)、アセトニトリル (30 mL)、酢酸 (8.7 mL)を加え−40度に冷却した。この溶液に水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム (1.1 eq., 0.34 g)を少しずつ加え、1時間撹拌後、溶媒を留去し残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=4:1)で精製した。収率90 % (0.34 g)。1H-NMR (400 MHz, CD3OD) d 7.10 (s, 1H),5.59(dd, J = 5.9, 9.8 Hz, 1H), 4.29(dd, J = 2.4, 5.9 Hz, 1H), 3.93-3.90 (m, 1H), 3.69-3.61 (m, 2H), 2.43 (ddd, J = 2.0, 5.9, 13.2 Hz, 1H), 1.87-1.80 (m, 1H)
【0087】
5−シアノ−3−[3’,5’−ビス(tert−ブチルジメチルシリル)−2’−デオキシ−β−D−リブフラノシル]−2−ニトロ−1H−ピロール (vi)
200 mlのナスフラスコに(v) (0.24 mmol, 0.062 g)を入れDMF(0.3 ml)で希釈し、これにt-ブチルジメチルシリルクロリド(0.54 mmol, 0.081 g)とイミダゾール(0.61 mmol, 0.042 g)を加え一晩室温で撹拌した。この反応溶液に酢酸エチル(10 ml)を加え有機相を水(10 ml)で3回、飽和食塩水(10 ml)で1回洗浄した。この有機相に硫酸マグネシウムを加え乾燥させろ過した後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 3:1)で精製することにより目的物を得た(0.025 g, 21%)。
【0088】
5−シアノ−2−アミノ−3−[3’,5’−ビス(tert−ブチルジメチルシリル)−2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−1H−ピロール (vii)
20 mlのシュレンク管に(vi) (1 mmol, 0.48 g)と5%白金黒(7.8 mg)を入れトリエチルアミン(3.9 mmol)に溶かした。この溶液に100℃でギ酸(3.3 mmol)を滴下し、2時間撹拌した。白金黒を濾別した後、シリカゲルクロマトグラフィーにより目的物を得た(0.41 g, 91%)。
【0089】
5−シアノ−3−[3’,5’−ビス(tert−ブチルジメチルシリル)−2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール (viii)
300 mlのナスフラスコに(vii) (1 mmol, 0.45 g)を入れ脱水THF(10 ml)で希釈し、これにトリエチルアミン(1.5 mmol)およびフェノキシアセチルクロリド(1.2 mmol)を加え窒素雰囲気下14時間室温で撹拌した。この反応溶液に酢酸エチル(20 ml)を加え有機相を水(20 ml)で4回、飽和食塩水(20 ml)で1回洗浄した。これに硫酸マグネシウムを加え乾燥させろ過した後、溶媒を留去し、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 1:0→5:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(0.53 g, 90%)。
【0090】
5−シアノ−3−[2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール (ix)
200 mlのナスフラスコに(viii) (1 mmol)を入れTHF(30 ml)で希釈し、これに70%テトラブチルアンモニウムフルオリド(4 mmol)および酢酸(8 mmol)を加え窒素雰囲気下18時間室温で撹拌した。溶媒を留去し、さらにイソプロパノールを加え減圧下共沸させて揮発物を除いた。この混合物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 3:1→0:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(0.303 g, 85%)。
【0091】
5−シアノ−3−[2’−デオキシ−5’−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール (x)
マイクロ波照射装置用の試験管に(ix) ( 1 mmol, 0.36 g)を入れ乾燥ピリジン(4 ml)で希釈し、これにジメトキシトリチルクロリド(1.3 mmol)とジイソプロピルエチルアミン(3 mmol)を加えマイクロ波反応装置で100℃で30分反応させた。反応溶液にトルエンを加え溶媒を減圧下共沸させ留去した後にシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 1:0→1:2、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(0.45 g, 68%)。
【0092】
5−シアノ−3−[3’−(2−シアノエトキシ-ジイソプロピルアミノ)ホスフィニル−2’−デオキシ−5’−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール (xi)
50 mlのナスフラスコに(x) (0.15 mmol, 0.10 g)を入れ乾燥ジクロロメタン(5 ml)で希釈し、これに2−シアノエチル−N,N,N’,N’−テトライソプロピルホスホロジアミダイト(0.23 mmol)、1H−テトラゾール(0.091 mmol)およびジイソプロピルアミン(0.085 mmol)を加え窒素雰囲気下15時間室温で撹拌した。反応溶液をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル = 1:0→10:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(0.019 g, 34%)。
31P-NMR (140 MHz, CDCl3) d 148.5, 148.1, 147.9.
【0093】
5−シアノ−2−アミノ−3−(2’−デオキシ−5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−1H−ピロール (xii)
20 mLのフラスコに(ix) (0.3 mmol, 107 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去し、28 %-アンモニア水溶液 (10 mL)を加え、60℃で一晩撹拌した。減圧下で濃縮し残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、0.2 Mで溶出されたフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例5】
【0094】
5−シアノ−2−アミノピロールジデオキシリボヌクレオシド三リン酸の合成(図7スキーム3)
5−シアノ−3−[5’−tert−ブチルジメチルシリル−2’-デオキシ−5’−(1−イミダゾイルチオカルボニル)−β−D−リボフラノシル]−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール (xiii)
50 mlのナスフラスコにix(2.0 mmol, 714 mg)を入れDMF(20 ml)で希釈し、これにtert-ブチルジメチルシリルクロリド(2.5 mmol, 380 mg)とイミダゾール(2.5 mmol, 170 mg)を加え3時間0℃で撹拌した。この反応溶液に1,1'−チオカルボニルジイミダゾール(2.5 mmol, 495 mg)を加え2時間半80℃で撹拌した。室温まで冷やした後、水(75 ml)を加え、生じた沈殿をろ取し、さらに水(10 ml)で2回洗浄した。これを真空乾燥することにより目的物を得た(1105 mg, 95%)。
【0095】
5−シアノ−3−(2’,3’−ジデオキシ−β−D−リボフラノシル)−2−フェノキシアセチルアミノ−1H−ピロール (xiv)
50 mlのナスフラスコにxiii(1.7 mmol, 989 mg)を入れ1,4-ジオキサン(10 ml)で希釈し、これにAIBN(0.17 mmol, 28 mg)と水素化トリ-n-ブチルスズ(2.2 mmol, 0.59 ml)を加え窒素雰囲気下7時間加熱還流した。室温まで冷却した後、50%トリフルオロ酢酸水溶液(20 ml)を加え4時間室温で撹拌した。その後体積が1/3になるまで溶媒を減圧留去し、この反応溶液にアセトニトリル(10 ml)を加えシクロヘキサン(6 ml)で4回洗浄した。さらにアセトニトリル相を25%アンモニア水溶液で中和し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール = 1:0→9:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(435 mg, 75%)。
【0096】
5−シアノ−2−アミノ−3−(2’,3’−ジデオキシ−5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−1H−ピロール (xv)
20 mLのフラスコにxiv (0.3 mmol, 102 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去し、28 %-アンモニア水溶液 (10 mL)を加え、60℃で一晩撹拌した。減圧下で濃縮し残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、目的物を含むフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例6】
【0097】
5−シアノ−2−アミノピロールリボヌクレオシド三リン酸の合成(図7スキーム4)
5−シアノ−2−ニトロ−3−トリブチルスタンニル−1H−ピロール (xvi)
ヘキサブチルジスタンナン(4.5 mmol, 2.6 g)とii(3.0 mmol, 789 mg)をトルエン60 mlに溶かし、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0.03 mmol, 35 mg)を加え、72時間60℃で撹拌した。反応液をフッ化カリウム水溶液で数回洗い、不溶物を取り除いた。有機相をベンゼンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、これをろ別した。溶媒を減圧留去後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製した(1252 mg, 98%)。
【0098】
5−シアノ−3−(2’,3’,5’-トリス−O−ベンジル−β−D−リボフラノシル)−2−ニトロ−1H−ピロール (xvii)
300 mlのナスフラスコに2,3,5−トリス−O−ベンジル−D−リボフラノシルブロミド(0.806 mmol, 390 mg)を入れ乾燥四塩化炭素(80 ml)で希釈し、これにxvi (1.61 mmol, 772 mg)と二塩化亜鉛のTHF溶液(0.8 M, 1.6 mmol, 2.0 ml)を加え40分間加熱還流した。溶媒を減圧留去後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製した(242 mg, 56%)。
【0099】
5−シアノ−2−アミノ−3−(β−D−リボフラノシル) −1H−ピロール (xviii)
20 mlのシュレンク管に(xvii) (0.32 mmol, 173 mg)と5%白金黒(2.6 mg)を入れトリエチルアミン(1.3 mmol)に溶かした。この溶液に100℃でギ酸(1.1 mmol)を滴下し、2時間撹拌した。白金黒を濾別した後、シリカゲルクロマトグラフィーにより目的物を得た(73 mg, 96%)。
【0100】
5−シアノ−2−アミノ−3−(5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−1H−ピロール (xix)
20 mLのフラスコにxviii (0.3 mmol, 72 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去したあと、残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、目的物を含むフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例7】
【0101】
2−アミノピリドトリアジンデオキシリボヌクレオチド(dPtTP)誘導体の合成(図8スキーム1、スキーム2)
2−アミノ−3−ヨードピリジン (1)
100 mLのシュレンク管に2−アミノ−3−ブロモピリジン (17.3 mmol,3 g)、ヨウ化ナトリウム (34.6 mmol, 5.19 g)、ヨウ化第一銅 (5 mol %, 0.165 g)を加え、窒素置換した後、無水ジオキサン (36 mL)、trans-N,N'-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジアミン (10 mol%, 0.246 g)を加えて110℃で24時間撹拌した。水を加えてエーテルで抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1,Rf = 0.45)で精製した。収率86 % (3.29 g)。
【0102】
2−アミノ−9−ヨードピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (2)
200 mLのフラスコに(1) (10 mmol, 2.2 g)を無水DMF (50 mL)に溶かし、撹拌しながらイソチオシアン酸エトキシカルボニル (10 mmol, 1.312 g)を加えた。室温で2時間撹拌した後、反応液を0℃に冷却し、0.5 M-アンモニア−ジオキサン溶液 (35 mmol, 70 mL)と塩化第2水銀 (10 mmol, 2.715 g)を加えた。0℃で15分撹拌した後、室温に戻し更に4時間撹拌した。反応液に酢酸エチル (75 mL)を加え、沈殿物をセライトでろ過した。溶媒を留去した後、残渣をDMF (20 mL)に溶かし、マイクロ波反応装置で160℃で800秒反応させた。溶媒を留去後、アセトニトリルから再結晶した。収率 58 % (1.66 g)。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 8.63(m, 1H), 8.46(d, J = 5.9 Hz, 1H), 7.43(brs, 2H), 6.77(t, J = 6.9 Hz, 1H)。
【0103】
2−アミノ−9−[2R,5R4−(tert−ブチルジメチルシロキシ)−5−(tert-ブチルジメチルシロキシメチル)−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (3)
5 mLの反応管に(2)(1 mmol, 0.288 g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体 (5 mol %, 52 mg)、トリ(tert-ブチル)ホスフィン (20 mol %, 40 mg)、2R,3S−3−(tert-ブチルジメチルシロキシ)−2−(tert-ブチルジメチルシロキシメチル)-2,3-ジヒドロフラン (1 mmol, 0.345 g)、ジイソブチルエチルアミン (4.5 eq., 0.516 g)、DMF (5 mL)を加え、マイクロ波反応装置で160℃10分反応させた。DMFを留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1、Rf = 0.4)で精製した。収率22% (0.11 g)。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 8.58(m, 1H), 8.11(d, J = 6.8 Hz, 1H), 7.31(d, J = 6.8 Hz, 2H), 6.99(t, J = 7.3 Hz, 1H), 6.04(d, J = 3.9 Hz, 1H), 5.09 (s, 1H), 4.56(2, 1H), 3.84(m, 1H), 3.72(m, 1H), 0.91(s, 9H), 0.83(s, 9H), 0.22(s, 3H), 0.16(s, 3H), 0.04(s, 3H), 0.01(s, 3H)。
【0104】
2−アミノ−9−(2R,5R−5−ヒドロキシメチル−4−オキソ-テトラヒドロフラン−2−イル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (4)
20 mLのフラスコに(3)(0.2 mmol, 100 mg)、THF (2 mL)、酢酸 (8 eq., 95 mg)、フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物 (4 eq., 250 mg)を加え、室温で10時間撹拌した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=9:1、Rf = 0.5)で精製した。収率99%(54 mg)。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 8.60(m, 1H), 8.19(d, J = 6.8 Hz, 1H), 7.33(brs, 1H), 7.20(brs, 1H), 7.08(t, J = 7.3 Hz, 1H), 5.44 (m, 1H), 5.03(brs, 1H), 4.10(m, 1H), 3.70(m, 2H), 3.12(m, 1H), 2.25(m, 1H)。
【0105】
2−アミノ−9−(2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (5)
30 mLのフラスコに(4) (0.92 mmol, 0.264 g)、アセトニトリル (60 mL)、酢酸 (20 mL)を加え−40度に冷却した。この溶液に水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム (1.1 eq., 0.214 g)を少しずつ加え、1時間撹拌後、溶媒を留去し残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=2:1)で精製した。収率86 % (0.219 g)。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 8.56(d, J = 6.8 Hz, 1H), 8.02(d, J = 6.8 Hz, 1H), 7.27(brs, 2H), 7.02(t, J = 6.8 Hz, 1H), 5.37 (m, 1H), 5.10(d, J = 3.9 Hz, 1H), 4.81(t, J = 7.3 Hz, 1H), 4.10(m, 1H), 3.82(m, 1H), 3.48(m, 2H), 2,42(m, 1H), 1.67(m, 1H).13C-NMR (100 MHz, DMSO-d6) d 163.6 153.2, 150.2, 135.8, 135.7, 127.6, 112.8, 87.4, 74.0, 72.0, 62.1, 41.5。
【0106】
2−アミノ−9−(2’−デオキシ−5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (6)
20 mLのフラスコに(5) (0.3 mmol, 83 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去したあと、残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、0.3 Mで溶出されたフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
31P-NMR (140 MHz, D2O) d -7.73 (br s), -10.67 (d, J = 17.78 Hz), -22.34 (t, J = 17.78 Hz )。
【0107】
2−イソブチリルアミノ−9−ヨードピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (7)
20 mlのシュレンク管に、(2)(0.5 mmol, 144 mg)を入れピリジン(2.8 ml)に溶解し、塩化イソブチリル(78.6 ml、 0.75 mmol)を加えて115 ℃で2時間、攪拌した。反応液を減圧下濃縮し、その残渣に30 mlのアセトニトリルを加え溶解させた。この有機相にシリカゲルを加え有機物を吸着させ、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒 酢酸エチル:ヘキサン=2:1)で、精製し目的物175 mg(0.49 mmol、98%)を得た。
1H-NMR(400 MHz、DMSO-d6) δ 10.42(s、1H )、8.84(d、J = 6.8 Hz、1H)、8.70(d、J = 5.6 Hz、1H)、7.10(t、J = 7.2 Hz、1H)、3.47(m、1H)、1.11(d、J = 6.8 Hz、6H)。
【0108】
2−イソブチリルアミノ−9−[2R,5R4−(tert−ブチルジメチルシロキシ)−5−(tert−ブチルジメチルシロキシメチル)−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (8)
(7) (179 mg、0.5 mmol)に2R,3S−3−(tert-ブチルジメチルシロキシ)−2−(tert-ブチルジメチルシロキシメチル)−2,3−ジヒドロフラン (344 mg、1 mmol) 、トリ(o-トリル)ホスフィン(30.4 mg、0.1 mmol)、トリエチルアミン(210 ml、1.5 mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム錯体(30 mg、0.1 mmol) をガラス反応管に入れ、5 mlのN−メチルピロリドンに溶解し、マイクロ波照射し160℃で10分間攪拌した。反応溶液に25 mlの酢酸エチルを加え25 mlの水で3回分液し、有機相を得た。これを無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 酢酸エチル:ジクロロメタン=1:1)で、精製し目的物172 mg(0.3 mmol、60%)を得た。
1H-NMR(400 MHz、CDCl3) δ 8.80(d、J = 6.8 Hz、1H)、8.52(d、J = 7.2 Hz、1H)、7.70(s、1H )、7.10(t、J = 7.2 Hz、1H)、6.22(s、1H)、5.11(s、1H)、4.66(s、1H)、3.90(m, 2H)、3.61(m、1H)、1.27(d、J = 6.8 Hz、6H)、0.90(d、J = 26.4 Hz、18H)、0.24(s、3H) 、0.17(s、3H) 、0.09(s、3H) 、0.03(s、3H)。
【0109】
2−イソブチリルアミノ−9−(2R,5R−5−ヒドロキシメチル−4−オキソ-テトラヒドロフラン−2−イル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (9)
(8)(2.1 g、3.7 mmol)を100 mlフラスコに入れ、40 mlのTHFに溶解し、フッ化テトラブチルアンモニウム(5.6 g、14.9 mmol)、酢酸(1.8 g、29.8 mmol)を加え室温で一時間攪拌した。この反応液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 酢酸エチル:メタノール=10:1)で精製し目的物1.2 g (3.6 mmol、96%)を得た。1H-NMR(400 MHz、CDCl3) δ 8.95(d、J = 7.2 Hz、1H)、8.63(m、1H)、8.36(d、J = 7.2 Hz、1H )、7.30(t、J = 6.8 Hz、1H)、5.69(m、1H)、4.16(m、1H )、4.04(m、1H)、3.59(m、1H)、2.96(m、1H)、2.37(m、1H)、1.26(d、J = 6.8 Hz、6H)、1.00(m、1H )。
【0110】
2−イソブチリルアミノ−9−(2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (10)
(9)(640mg、1.9 mmol)を200 mlシュレンク管に入れ100 mlのアセトニトリルに溶解し、30 mlの酢酸を加え、−40℃で20分間冷却しながら攪拌した。これに水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(295 mg、1.4 mmol)を加え−40℃で3時間攪拌した。さらに反応温度を0℃にして30分攪拌し、この後反応液を減圧下濃縮した。ここで得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 酢酸エチル:メタノール=4:1)で精製し、目的物430 mg (1.2 mmol、66%)を得た。1H-NMR(400 MHz、DMSO-d6) δ 10.44(s、1H)、8.79(d,J = 7.2 Hz、1H)、8.29(d、J = 7.2 Hz、1H)、7.39(t、J = 7.0 Hz、1H)、5.48(m、1H)、5.13(m、1H)、4.83(m、1H)、4.19(m、1H)、3.88(m、1H)、3.36(m、1H)、3.14(m、1H)、2.62(m、1H)、1.72(m、1H)、1.28(d、J = 6.8 Hz、6H)、0.92(m、1H)。
【0111】
2−イソブチリルアミノ−9−[2’−デオキシ−5’−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル]−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (11)
(10)(642 mg、1.84 mmol)を300 mlフラスコに入れ、10 mlの無水ピリジンで三回共沸した。残渣を減圧下で30分乾燥した後、20 mlのピリジンに溶解し、ジイソプロピルエチルアミン(713 mg、5.5 mmol)、塩化ジメトキシトリチル(810 mg、2.4 mmol)を加え、室温で一時間攪拌した後反応液を減圧下濃縮した。この残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 酢酸エチル:メタノール=20:1)で精製し、目的物1.04 g (1.6 mmol、89%)を得た。
1H-NMR(400 MHz、DMSO-d6) δ 10.46(s、1H)、8.76(d、J = 6.8 Hz、1H)、8.11(d、J = 7.2 Hz、1H)、7.42(m、2H)、7.29(m、8H)、6.90(m,5H)、5.48(m、1H)、5.20(m、1H)、4.14(m、1H)、4.02(m、1H)、3.74(m、6H)、3.17(m、1H)、3.11(m、1H)2.67(m、1H)、1.77(m、1H)、1.10(d、J = 6.8 Hz、6H)。
【0112】
2−イソブチリルアミノ−9−[3’−(2−シアノエチル−ジイソプロピルアミノ)ホスフィニル−2’−デオキシ−5’−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル]−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (12)
(11) (200 mg、0.3 mmol)を二口フラスコに入れ、減圧下で3時間乾燥した。これを窒素雰囲気下、3 mlの無水ジクロロメタンで溶解した後、ジイソプロピルアミン(24 ul、0.17 mmol)、1H−テトラゾール(11 mg、0.15 mmol)、2-シアノエチル-N',N',N',N',-テトライソプロピルホスホロジアミジド(142 ul、0.45 mmol)を加えて室温で3時間攪拌した。これを減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 酢酸エチル)で精製し、目的物アミダイト 222 mg (0.26 mmol、85%)を得た。
31P-NMR(160 MHz、DMSO-d6)δ:147.56、146.98
FAB-MS (m/e) 302.1(96.5) 、363.8(14.8)、851.3(11.7)、459.8(5.5)
【実施例8】
【0113】
2−アミノピリドトリアジンジデオキシリボヌクレオチド三リン酸(ddPtTP)の合成(図9スキーム3)
2−アミノ−9−[5’−tert−ブチルジメチルシリル−2’−デオキシ-5’−(1−イミダゾイルチオカルボニル)−β−D−リボフラノシル]−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (13)
50 mlのナスフラスコに(5)(2.0 mmol, 556 mg)を入れDMF(20 ml)で希釈し、これにtert-ブチルジメチルシリルクロリド(2.5 mmol, 380 mg)とイミダゾール(2.5 mmol, 170 mg)を加え3時間0℃で撹拌した。この反応溶液に1,1'-チオカルボニルジイミダゾール(2.5 mmol, 495 mg)を加え2時間半80℃で撹拌した。室温まで冷やした後、水(75 ml)を加え、生じた沈殿をろ取し、さらに水(10 ml)で2回洗浄した。これを真空乾燥することにより目的物を得た(955 mg, 95%)。
【0114】
2−アミノ−9−(2’,3’−ジデオキシ−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (14)
50 mlのナスフラスコに(13) (1.7 mmol, 854 mg)を入れ1,4−ジオキサン(10 ml)で希釈し、これにAIBN(0.17 mmol, 28 mg)と水素化トリ−n−ブチルスズ(2.2 mmol, 0.59 ml)を加え窒素雰囲気下7時間加熱還流した。室温まで冷却した後、50%トリフルオロ酢酸水溶液(20 ml)を加え4時間室温で撹拌した。その後体積が1/3になるまで溶媒を減圧留去し、この反応溶液にアセトニトリル(10 ml)を加えシクロヘキサン(6 ml)で4回洗浄した。さらにアセトニトリル相を25%アンモニア水溶液で中和し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール = 1:0→9:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(334 mg, 75%)。
【0115】
2−アミノ−9−(2’,3’−ジデオキシ−5’-トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (15)
20 mLのフラスコに(14) (0.3 mmol, 79 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去したあと、残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、目的物を含むフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例9】
【0116】
2−アミノピリドトリアジンリボヌクレオチド三リン酸(PtTP)の合成(図9スキーム4)
2−アミノ−9−トリブチルスタンニルピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (16)
ヘキサブチルジスタンナン(4.5 mmol, 2.6 g)と(2) (3.0 mmol, 860 mg)をトルエン60 mlに溶かし、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0.03 mmol, 35 mg)を加え、72時間60℃で撹拌した。反応液をフッ化カリウム水溶液で数回洗い、不溶物を取り除いた。有機相をベンゼンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、これをろ別した。溶媒を減圧留去後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製した(990 mg, 98%)。
【0117】
2−アミノ−9−(2’,3’,5’−トリス−O−ベンジル−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (17)
300 mlのナスフラスコに2,3,5−トリス−O−ベンジル−D−リボフラノシルブロミド(0.806 mmol, 390 mg)を入れ乾燥四塩化炭素(80 ml)で希釈し、これに(16) (1.61 mmol, 726 mg)と二塩化亜鉛のTHF溶液(0.8 M, 1.6 mmol, 2.0 ml)を加え40分間加熱還流した。溶媒を減圧留去後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製した(255 mg, 56%)。
【0118】
2−アミノ−9−(β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (18)
300 mlのナスフラスコに(17) (0.32 mmol, 181 mg)を入れメタノール(80 ml)で希釈し、これに10%パラジウムカーボン(17 mmol, 0.018 g) を加え水素雰囲気下2時間半室温で撹拌した。パラジウムカーボンをろ別した後に、溶媒を留去することにより目的物を得た(90 mg, 96%)。
【0119】
2−アミノ−9−(5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (19)
20 mLのフラスコに(18) (0.3 mmol, 79 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去したあと、残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、目的物を含むフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例10】
【0120】
2−ジメチルアミノピリドトリアジンデオキシリボヌクレオチド誘導体の合成(図10スキーム1、スキーム2)
2−ジメチルアミノ−9−ヨードピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (52)
200 mLのフラスコに2−アミノ−3−ヨードピリジン (10 mmol, 2.2 g)を無水DMF (50 mL)に溶かし、撹拌しながらイソチオシアン酸エトキシカルボニル (10 mmol, 1.31 g)を加えた。室温で2時間撹拌した後、反応液を0℃に冷却し、ジメチルアミン塩酸塩 (25 mmol, 0.82 g)、トリエチルアミン(40 mmol, 4.05 g)と塩化第2水銀 (10 mmol, 2.72 g)を加えた。0℃で15分撹拌した後、室温に戻し更に4時間撹拌した。反応液に酢酸エチル (75 mL)を加え、沈殿物をセライトでろ過した。溶媒を留去した後、残渣を飽和塩化水素ジオキサン溶液中で4時間還流させ、固体をろ別した。ろ液を酢酸エチル、炭酸水素カリウム水溶液で分液し、シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル=2:1)により単離した。収率 85 % (2.673 g)。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 8.62(dd, J = 0.97, 6.8 Hz, 1H), 8.47(dd, J = 1.5, 7.3 Hz, 1H), 6.78(t, J = 6.8, 7.3 Hz, 1H), 3.27 (s, 3H), 3,25 (s, 3H)。
【0121】
2−ジメチルアミノ−9−[2R,5R4−(tert−ブチルジメチルシロキシ)−5−(tert-ブチルジメチルシロキシメチル)−2,5−ジヒドロフラン−2−イル]−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (53)
5 mLの反応管に52 (1 mmol, 0.316 g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体 (5 mol %, 52 mg)、トリ(tert−ブチル)ホスフィン (20 mol %, 40 mg)、2R,3S−3−(tert-ブチルジメチルシロキシ)−2−(tert-ブチルジメチルシロキシメチル)−2,3−ジヒドロフラン (1 mmol, 0.345 g)、ジイソブチルエチルアミン (4.5 eq., 0.582 g)、DMF (5 mL)を加え、マイクロ波反応装置で160℃15分反応させた。DMFを留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル=4:1)で精製した。収率57 %。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 8.68(d, J = 5.4 Hz, 1H), 8.20(d, J = 6.8 Hz, 1H), 6.82(t, J = 6.8 Hz, 1H), 6.12(brs, 1H), 5.11 (brs, 1H), 4.64(brs, 1H), 3.95(dd, J = 2.4, 11.2 Hz, 1H), 3.79(dd, J = 3.4, 11.7 Hz, 1H), 3.25 (s, 3H), 3.24 (s, 3H), 0.94(s, 9H), 0.87(s, 9H), 0.22(s, 3H), 0.16(s, 3H), 0.08(s, 3H), 0.03(s, 3H)。
【0122】
2−ジメチルアミノ−9−(2R,5R−5−ヒドロキシメチル−4−オキソ-テトラヒドロフラン−2−イル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (54)
20 mLのフラスコに(53) (2.8 mmol, 1.28 g)、THF (30 mL)、酢酸 (8 eq., 0.86 g)、フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物 (4 eq., 2.51 g)を加え、室温で10時間撹拌した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=9:1)で精製した。収率88%(0.763 g)。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 8.60(d, J = 6.8 Hz, 1H), 8.22(d, J = 6.8 Hz, 1H), 7.09(t, J = 6.8 Hz, 1H), 5.57 (dd, J = 6.4, 10.3 Hz, 1H), 5.01 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 4.11 (t, J = 2.9 Hz, 1H), 3.79-3.65 (m, 2H), 3.19 (s, 3H), 3.12 (s, 3H), 3.11 (dd, J = 6.3, 18.1 Hz, 1H), 2.22 (dd, J = 10.2, 18.1 Hz, 1H)
【0123】
2−ジメチルアミノ−9−(2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (55)
30 mLのフラスコに(54) (2.5 mmol, 0.75 g)、アセトニトリル (50 mL)、酢酸 (15 mL)を加え−40℃に冷却した。この溶液に水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム (1.1 eq., 0.575 g)を少しずつ加え、1時間撹拌後、溶媒を留去し残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=4:1)で精製した。収率78 % (0.591 g)。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 8.54(d, J = 6.8 Hz, 1H), 8.01(d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.02(dd, J = 6.8, 7.3 Hz, 1H), 5.35 (dd, J = 6.8, 8.3 Hz, 1H), 5.09(t, J = 2.0 Hz, 1H), 4.78(dd, J = 5.4, 5.9 Hz, 1H), 4.15(brs, 1H), 3.86-3.81(m, 1H), 3.20(s, 3H), 3.12(s, 3H), 1.7-1.63(m, 1H)。
【0124】
2−ジメチルアミノ−9−(2’−デオキシ−5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (56)
20 mLのフラスコに(55) (0.3 mmol, 92 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去したあと、残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、0.3 Mで溶出されたフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。収率19% (36.5 mg) 31P-NMR (140 MHz, D2O) d -10.69 (d, J = 23.7 Hz), -11.13 (d, J = 23.7 Hz), -23.07 (t, J = 23.7 Hz )。
【0125】
2−ジメチルアミノ−9−[2’−デオキシ−5’−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル]−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (57)
(55) (0.5 mmol, 153 mg)を30 mlフラスコに入れ、10 mlの無水ピリジンで三回共沸した。残渣を減圧下で30分乾燥した後、5 mlのピリジンに溶解し、ジイソプロピルエチルアミン(1.5 mmol, 173 mg)、塩化ジメトキシトリチル(0.65 mmol, 220 mg)を加え、室温で一時間攪拌した後反応液を減圧下濃縮した。この残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=19:1)で精製し、目的物 226 mg (74%)を得た。1H-NMR(400 MHz、CDCl3) δ8.68 (dd, J = 1.5, 6.8 Hz, 1H), 7.91 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 7.44(d, J = 7.8 Hz, 2H), 7.36-7.19 (m, 7H), 6.83 (d, J = 8.7 Hz, 4H), 6.75 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 5.52 (brt, J = 7.8 Hz, 1H), 4.40-4.35 (m, 1H), 4.12-4.08 (m, 1H), 3.79 (s, 6H), 3.42-3.31 (m, 2H), 3.24 (s, 6H), 2.67 (dd, J = 3.4, 6.8 Hz, 1H), 1.95-1.88 (m, 1H)。
【0126】
2−ジメチルアミノ−9−[3’−(2−シアノエチル−ジイソプロピルアミノ)ホスフィニル−2’−デオキシ−5’−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノシル]−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (58)
20 mlのナスフラスコに(57) (0.11 mmol, 0.069 g)を入れ乾燥ジクロロ メタン(2 ml)で希釈し、これに2-シアノエチル-N,N,N',N'-テトライソプロピ ルホスホロジアミダイト(0.19 mmol, 60 ul)、1H−テトラゾール(39 mmol, 3.9 mg)およびジイソプロピルアミン(69 mmol, 69 ml)を加え窒素雰囲気下8時 間室温で撹拌した。反応溶液をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:THF = 10:1)で精製することにより目的物を得た(0.040 g, 44%)。 31P-NMR (140 MHz, CDCl3) δ 148.4, 147.7
【実施例11】
【0127】
2−ジメチルアミノピリドトリアジンジデオキシリボヌクレオチド三リン酸の合成(図11スキーム3)
2−ジメチルアミノ−9−[5’-tert−ブチルジメチルシリル−2’−デオキシ−5’−(1−イミダゾイルチオカルボニル)−β−D−リボフラノシル]−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (59)
50 mlのナスフラスコに(55) (2.0 mmol, 613 mg)を入れDMF(20 ml)で希釈し、これにtert-ブチルジメチルシリルクロリド(2.5 mmol, 380 mg)とイミダゾール(2.5 mmol, 170 mg)を加え3時間0℃で撹拌した。この反応溶液に1,1'-チオカルボニルジイミダゾール(2.5 mmol, 495 mg)を加え2時間半80℃で撹拌した。室温まで冷やした後、水(75 ml)を加え、生じた沈殿をろ取し、さらに水(10 ml)で2回洗浄した。これを真空乾燥することにより目的物を得た(1008 mg, 95%)。
【0128】
2−ジメチルアミノ−9−(2’,3’−ジデオキシ−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (60)
50 mlのナスフラスコに(59)(1.7 mmol, 902 mg)を入れ1,4-ジオキサン(10 ml)で希釈し、これにAIBN(0.17 mmol, 28 mg)と水素化トリ-n-ブチルスズ(2.2 mmol, 0.59 ml)を加え窒素雰囲気下7時間加熱還流した。室温まで冷却した後、50%トリフルオロ酢酸水溶液(20 ml)を加え4時間室温で撹拌した。その後体積が1/3になるまで溶媒を減圧留去し、この反応溶液にアセトニトリル(10 ml)を加えシクロヘキサン(6 ml)で4回洗浄した。さらにアセトニトリル相を25%アンモニア水溶液で中和し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール = 1:0→9:1、グラジエント)で精製することにより目的物を得た(370 mg, 75%)。
【0129】
2−ジメチルアミノ−9−(2’,3’-ジデオキシ-5’-トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (61)
20 mLのフラスコに(60) (0.3 mmol, 87 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去したあと、残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、目的物を含むフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例12】
【0130】
2−ジメチルアミノピリドトリアジンリボヌクレオチド三リン酸の合成(図11スキーム4)
2−ジメチルアミノ−9−トリブチルスタンニルピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (62)
ヘキサブチルジスタンナン(4.5 mmol, 2.6 g)と(52) (3.0 mmol, 948 mg)をトルエン60 mlに溶かし、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0.03 mmol, 35 mg)を加え、72時間60℃で撹拌した。反応液をフッ化カリウム水溶液で数回洗い、不溶物を取り除いた。有機相をベンゼンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、これをろ別した。溶媒を減圧留去後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製した(1409 mg, 98%)。
【0131】
2−ジメチルアミノ−9−(2’,3’,5’−トリス−O−ベンジル−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (63)
300 mlのナスフラスコに2,3,5−トリス−O−ベンジル−D−リボフラノシルブロミド(0.806 mmol, 390 mg)を入れ乾燥四塩化炭素(80 ml)で希釈し、これに(62) (1.61 mmol, 772 mg)と二塩化亜鉛のTHF溶液(0.8 M, 1.6 mmol, 2.0 ml)を加え40分間加熱還流した。溶媒を減圧留去後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製した(267 mg, 56%)。
【0132】
2−ジメチルアミノ−9−(β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (64)
300 mlのナスフラスコに(63)(0.32 mmol, 190 mg)を入れメタノール(80 ml)で希釈し、これに10%パラジウムカーボン(17 mmol, 0.018 g) を加え水素雰囲気下2時間半室温で撹拌した。パラジウムカーボンをろ別した後に、溶媒を留去することにより目的物を得た(99 mg, 96%)。
【0133】
2−ジメチルアミノ−9−(5’−トリホスホリル−β−D−リボフラノシル)−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン (65)
20 mLのフラスコに(64)(0.3 mmol, 97 mg)、プロトンスポンジ (1.5 eq., 96 mg)、無水リン酸トリメチル (1.5 mL)を加え、0℃でオキシ塩化リン (1.1 eq. 51 mg)を滴下した。室温に戻し2時間撹拌した後、1 M-ピロリン酸ビストリブチルアンモニウム−DMF溶液 (1.5 mL)、トリブチルアミン (0.3 mL)を素早く加えた。1分撹拌した後、0.2 M-重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液 (12 mL)を加えて反応を停止した。溶媒を留去したあと、残渣を水に溶かし、DEAEセファデックスカラムで0~0.4 M 重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液のグラジエントを掛け、目的物を含むフラクションを取り出した。溶媒を留去した後、メタノール:アセトン:過塩素酸ナトリウム−アセトン飽和溶液=1:1:1を加え、得られた沈殿物を遠心分離機でペレット状にし、これをアセトンで洗浄して目的物を得た。
【実施例13】
【0134】
蛍光測定
1. ピリドトリアジンに観察された蛍光について、その励起波長と蛍光スペクトルを測定した。
2. ピリドトリアジンの吸収スペクトルから、励起波長を330 nmとして、その励起波長を与えたときの蛍光スペクトルを測定したところ、図2のようなスペクトルを得た。
3. このときの最大蛍光波長は385.8 nmであった。
【実施例14】
【0135】
転写反応
1. 上流にT7プロモーター領域を持ち、アミノピロールデオキシリボヌクレオシド(dAp)、ピリドトリアジンデオキシリボヌクレオシド(dPt)をそれぞれ一塩基導入した一本鎖鋳型、
TempAp、TempPtを用意した。
TempAp:5’-CTAATACGACTCACTATAGGG-TTAAApCACC (下線部はT7プロモーター領域)
TempPt:5’-CTAATACGACTCACTATAGGG-TTAAPtTACC(下線部はT7プロモーター領域)
2. T7プロモーター領域でアニールする一本鎖DNAを用意し、それぞれとアニールさせ
た(3’-GATTATGCTGAGTGATATCCC)
3. T7プロモーター領域で二本鎖となった鋳型に対し±rPtTP、±rApTP存在下で、T7 RNA Polymerase反応を行った。
4. 反応条件:40mM Tris-HCl pH8.0、8mM MgCl2、2mM スペルミジン、5mM DTT、2mM NTPs、RNAse Inhibitor 20U、鋳型 20ng-1ug、T7 RNA polymerase(TAKARA)。
5. 42℃で2時間酵素反応を行い、反応産物を尿素変性8%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動して精製した結果,目的とする転写物を得た
【実施例15】
【0136】
転写反応産物の塩基組成分析
1. [α-32P]ATPもしくは[α-32P]GTP存在下でT7転写反応を行った。
2. AもしくはGの5’側に隣接するヌクレオシド3’リン酸(Np)がそれぞれ32Pで標識されるので、精製したRNAをRNAse T2(Sigma)を用いてNpに完全分解した。
3. 完全分解:ラベルされたRNAにRNAse T2(Invitrogen、10U/ul、10mM 酢酸ナトリウムpH6.7)を加え全量750ulとし、37℃で一晩酵素反応を行った。
4. 分解された産物の一部を2D-TLCで分離するために、10cm×10cmのTLC板(フナセルSF、フナコシ)にスポットした。一次元目および二次元目の展開液の組成は、イソ酪酸66:アンモニア1:水33(体積比)、および2-プロパノール70:塩酸15:水15(体積比)である。
5. 展開後のスポットをバイオイメージングアナライザー(BAS、富士フィルム)で検出
し、それぞれのヌクレオチドを定量した。
6. その結果、鋳型中のApに対して、PtTPが、鋳型中のPtに対してApTPが選択的に取り込まれることが分かった。
【実施例16】
【0137】
RIシーケンス
1.精製標品を用いて、RIシーケンスを行った。
2.鋳型はPCRで増幅させた二本鎖を使用した。
3.鋳型:5’-tgtggaattgtgagcggataacaaggtctaa(Pt)cttggctaat(Ap)ttacagttacaacgtcgtgactgggaaac
4.プライマーは5’- gttttcccagtcacgacgttgtaa
5.プライマーは[32P-γ]dATPでラベルした。
6.反応溶液を調製した。鋳型0.1pmol、ラベルしたプライマー0.7pmol、5*Buffer(400mM Tris-HCl pH9.0、10mM MgCl2) 4ul、精製標品1ul(適宜希釈)を加え、全量を18ulとした。
7.反応溶液18ulから、4ulを分取し、dddNTPmix 2ulを加えたのち、PTC-200 Peltier
Thermal Cycler を用いて[94℃、0.5分―60℃、0.5分―72℃、1分]×15サイクル、[94℃、0.5分―72℃、1分]×15サイクルで反応した。
8.dddNTPmix:dNTP 3uM、ddNTP 75nM
9.反応後のサンプルを尿素変性20%アクリルアミドゲルで、電気泳動した。
10.泳動後、ゲルを乾燥し、オートラジオグラム(BAS、富士フィルム)で検出し、Ptの
箇所にはApが、Apの箇所にはPtが選択的に取り込まれていることが確認できた。
【実施例17】
【0138】
Pyrosequencerによる複製の確認法
1. 反応溶液は、鋳型 0.1uM、プライマー 0.3uM、Polymeraseを抜いた酵素Mix 5ul(Pyrosequencing)、基質Mix 5ul(Pyrosequencing)、20mM Tris-Acetate、5mMMgAC2の反応系50ulに対して、Taq DNAポリメラーゼを2ul(適宜希釈)添加した。
2. Polymeraseを抜いた酵素Mix、基質Mixはともに、Pyrosequencing社より提供を受けた。
3. 鋳型として3’-GTCACTTAACATTATGCTGA(Ap)TG(Ap)TATCもしくは3’-GTCACTTAACATTATGCTGA(Pt)TG(Pt)TATC、プライマーとして5’-CAGTGAATTGTAATACGACTを用いた。
4. あらかじめ0.1μMの鋳型と0.3μMプライマーを混合して95℃で1分間変性させた後に室温で10分放置することによりアニーリングを行った。
5. この1.の反応液に4.のアニーリング溶液を混合した後にpyrosequencer PSQ96Aに供し、鋳型に対応する塩基の取り込みを観察したところ、図3に示すとおり十分なシグナルが得られ、塩基の取り込みをみることが可能であった。
【実施例18】
【0139】
PCR反応
1. Taq DNAポリメラーゼ (タカラバイオ)を用いてPCR反応を行った。
2. 緩衝液は酵素購入時に添付の緩衝液を用いた。
3. 鋳型には
5’-tgtggaattgtgagcggataacaa tactacaaattgctcagctcgaaaaagagctgcaggcgctggtctaa(Pt)cttggctaat(Ap)ttacag ggaaaagaaaatgcgcagctggaatgggaactgcttgctgttacaacgtcgtgactgggaaac
を0.01pMの濃度で添加した。
4. センスプライマーには5’-tgtggaattgtgagcggataacaa、アンチセンスプライマーには5’-gtttcccagtcacgacgttgtaaを各0.25μMの濃度で添加した。
5. 反応液をPTC225サーマルサイクラー(MJ Research)を用いて、95℃1分、55.6℃1分、72℃1分のサイクルを30回繰り返した後、72℃5分インキュベートして反応を行った。
6. 反応産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動に供して、鋳型の増幅を確認した。図12に示すように反応物を確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】天然塩基対のC−G塩基対、A−T塩基対及び本発明による非天然型塩基を示す図である。
【図2】実施例13におけるピリドトリアジンに観察された蛍光について、その励起波長と蛍光スペクトルの測定結果の図である。
【図3】実施例17におけるPyrosequencerによる複製の確認を示す図である。
【図4】本発明の修飾塩基の合成を示すスキーム図である。
【図5】本発明の修飾塩基の合成を示すスキーム図である。
【図6】本発明の修飾塩基の合成を示すスキーム図である。
【図7】本発明の修飾塩基の合成を示すスキーム図である。
【図8】本発明の修飾塩基の合成を示すスキーム図である。
【図9】本発明の修飾塩基の合成を示すスキーム図である。
【図10】本発明の修飾塩基の合成を示すスキーム図である。
【図11】本発明の修飾塩基の合成を示すスキーム図である。
【図12】実施例18における電気泳動によるPCR反応物の確認図である。1レーン目のマーカーサイズは、上から、501、489、404、331、242、190、147、111 bpである。2レーン目がPCR反応産物を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本鎖DNAまたは二本鎖RNAなどの二本鎖核酸内でその主鎖に大きな歪みを生じさせないような塩基対を形成する非天然型塩基と、当該塩基を有するヌクレオシドまたはヌクレオチド、およびαチオ体に代表される誘導体、またはそれらの塩基を有する一本鎖または二本鎖以上の核酸またはPNA。
【請求項2】
複素環構造の骨格構造を形成する原子の一部または全部がπ電子系でつながった同一平面上に並んでいる非天然型塩基または非天然型塩基対を有する請求項1記載の物質。
【請求項3】
アデニン:チミン、グアニン:シトシンの天然型塩基対が占有する空間内に収まる非天然型塩基対を有する請求項1または2記載の物質。
【請求項4】
非天然型塩基対において非天然型塩基間の水素結合の平行性を保つようにデザインされた請求項1〜3のいずれか記載の物質。
【請求項5】
非天然型塩基対において非天然型塩基間の水素結合の配向が、天然型塩基対と一致しないようにデザインされた請求項1〜4のいずれか記載の物質。
【請求項6】
非天然型塩基対において非天然型塩基間のすべての水素結合の配向性が、一つの非天然型塩基が水素のドナーであり、もう一つの非天然型塩基がアクセプターであるようにデザインされた請求項1〜5のいずれか記載の物質。
【請求項7】
対合する2つの非天然型塩基が、水溶液中で構造を維持できるように設計された請求項1〜6のいずれか記載の物質。
【請求項8】
対合する2つの非天然型塩基のおのおのにおいて、目的の水素結合の配向を持つ互変異性体が熱力学的に優位になる上記当該非天然型塩基を有する請求項1〜7のいずれか記載の物質。
【請求項9】
請求項1記載にあるヌクレオシド、ヌクレオチドの塩基のうち、単環の複素環または2環式以上の複素環について、グリコシド結合している原子が参加する環の中心から、グリコシド結合との立体角が0から90度の範囲内の空間に、当該塩基の骨格原子または側鎖の原子として、非共有電子対をもった原子の中心が存在するような構造を持った請求項1〜8のいずれか記載の物質。
【請求項10】
請求項1記載にあるヌクレオシド、ヌクレオチドの塩基のうち、単環または2環以上の複素環について、「グリコシド結合している原子のとなりに位置する複素環の骨格原子」または「グリコシド結合している原子のとなりに位置する複素環の骨格原子に結合する側鎖または隣の環を形成する原子の一つ」が非共有電子対を有する原子である請求項1〜9のいずれか記載の物質。
【請求項11】
非共有電子対が酸素、窒素、リン、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などである請求項9または10記載の物質。
【請求項12】
請求項1記載のヌクレオシド、ヌクレオチドが、2’デオキシ体、3’デオキシ体、リボ体、2’3’ダイデオキシ体、アミダイト、または、その誘導体である請求項1〜11いずれか記載の物質。
【請求項13】
2−アミノ−4,5置換−1H−ピロール−3−イル基またはその誘導体である下記の式
【化1】
(式中R及びR’は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表される非天然型塩基、または、当該非天然型塩基を含む2’デオキシ体、3’デオキシ体、リボ体、2’3’ダイデオキシ体とそれらの誘導体から下記の化学式
【化2】
(式中X及びYは、ヒドロキシル基又は水素であり、R及びR’は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるヌクレオシドとそれらの誘導体または、当該非天然型塩基を含む下記の化学式
【化3】
(式中X及びYは、ヒドロキシル基又は水素であり、R及びR’は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、又はその誘導体
4)ハロゲン基;
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるヌクレオチドとそれらの誘導体、または、当該非天然型塩基を含む下記の化学式
【化4】
(式中Xは、ヒドロキシル基又は水素であり、R及びR’は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるアミダイトとそれらの誘導体、および当該非天然型塩基を含む一本鎖または二本鎖以上の核酸またはPNA。
【請求項14】
電子吸引基が導入された2−アミノピロール−3−イル基と特徴とする請求項13に記載の物質、および電子吸引基が導入することによる2−アミノピロール−3−イル基の安定化方法、または、電子吸引基が導入された2−アミノピロール−3−イル基と特徴とする請求項13に記載の物質の製造方法。
【請求項15】
3−ハロ−2−ニトロピロール誘導体やデオキシリボース誘導体とのパラジウム触媒反応を経る請求項13または請求項14の記載のヌクレオシド誘導体またはヌクレオチド誘導体またはアミダイト誘導体の合成方法。
【請求項16】
請求項13〜請求項15いずれか記載の非天然塩基の保護基としてフェノキシアセチル基を代表とするフェノキシアシル基を用いる合成方法。
【請求項17】
2,6,7,8置換−ピリドトリアジン−9−イル基またはその誘導体である下記の化学式
【化5】
(式中R1、R2、R3及びR4は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表される非天然型塩基、または、当該非天然型塩基を含む2’デオキシ体、3’デオキシ体、リボ体、2’3’ダイデオキシ体とそれらの誘導体からなる下記の化学式
【化6】
(式中X及びYは、ヒドロキシル基又は水素であり、R1、R2、R3及びR4は、以下の
1)水素基
2)アルキル基、アリール基
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるヌクレオシドとそれらの誘導体または、当該非天然型塩基を含む下記の化学式
【化7】
(式中X及びYは、ヒドロキシル基又は水素であり、R1、R2、R3及びR4は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるヌクレオチドとそれらの誘導体、または、当該非天然型塩基を含む
【化8】
(式中Xは、ヒドロキシル基又は水素であり、R1、R2、R3及びR4は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるアミダイトとそれらの誘導体、および当該非天然型塩基を含む一本鎖または二本鎖以上の核酸またはPNA。
【請求項18】
電子供与基が導入されたピリドトリアジン−4−オン−9−イル基である請求項17に記載の物質、および電子供与基が導入することによるピリドトリアジン−4−オン−9−イル基の安定化方法、または、電子供与基が導入された請求項17に記載の物質の製造方法。
【請求項19】
上記電子供与基が、ピリドトリアジンの2位にアミノ基、置換アミノ基、アルコキシ基および、ハロゲン基である請求項17または18記載の物質、および塩基の安定化方法、または、当該物質の製造方法。
【請求項20】
マイクロ波反応装置を用いる請求項17〜請求項19いずれか記載の非天然型塩基またはヌクレオシド誘導体、ヌクレオチド誘導体の合成方法。
【請求項21】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の2’デオキシヌクレオチド体を基質全部または一部、または非天然型塩基を含むプライマーを用いたDNAポリメラーゼによる合成反応方法とそれを利用したPCR、または等温増幅反応方法または、DNAハイブリダイゼーション反応工程を含むDNA増幅方法。
【請求項22】
等温増幅反応が、LAMP法、SDA法、SMAP法、NASBA法、ICAN法、UCAN法、TMA法、Padlock probe法、Roling Circle(RCA)法、bDNA(branched DNA) 法、PALSAR法、Invader法、TRC法、CPT(Cycling Probe Technology)法などである請求項21記載の核酸増幅反応方法または核酸ハイブリダイゼーション反応または核酸のライゲーション反応工程を含むDNA増幅方法。
【請求項23】
請求項21〜23のいずれかの方法を利用したDNA増幅装置、実験用キット、診断用キット。
【請求項24】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の2’デオキシヌクレオチド体および2’3’ダイデオキシヌクレオチド体を基質の全部または一部とした、または当非天然型塩基を含むプライマーを用いたDNAポリメラーゼによるチェインターミネーション反応とそれを利用したシーケンス反応。
【請求項25】
請求項24の方法を利用した非天然型塩基をその一部または全部に持つ核酸配列を決定するDNAシーケンス反応装置および反応キット。
【請求項26】
請求項1〜請求項20のいずれか記載のリボヌクレオチド体を基質に含有するRNAポリメラーゼによるRNA合成反応方法とそれを利用したキット。
【請求項27】
請求項1〜請求項20のいずれか記載のリボヌクレオチド体および3’デオキシヌクレオチド体を基質の全部または一部としたRNAポリメラーゼによるチェインターミネーション反応とそれを利用したシーケンス反応。
【請求項28】
請求項27の方法を利用した非天然型塩基をその一部または全部に持つ核酸配列を決定する核酸シーケンス反応装置および反応キット。
【請求項29】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基を含む核酸のハイブリダイゼーションを基本とした核酸検出反応。
【請求項30】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基を含む方法であって、その当該塩基の蛍光特性を用いたIn vivo または、In vitroの核酸検出法。
【請求項31】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基を含む物質を用いた電気泳動が検出工程の中にある核酸またはタンパク検出法。
【請求項32】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基を5’非翻訳領域、タンパクコード領域、3’非翻訳領域、ポリA領域にふくむRNAを用いた反応に基づくタンパク合成法とタンパク合成キット。
【請求項33】
タンパク合成法が、In vitro translation法に基づく請求項32記載のタンパク合成法およびタンパク合成キットとそれにより産出されるタンパク質。
【請求項34】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基を含む新しい翻訳コドン表に基づくタンパク合成法とタンパク合成キットおよびそれにより産出されるタンパク質。
【請求項35】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基を含むオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイとそれを用いた実験用キットと診断用キット。
【請求項36】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基を含むオリゴヌクレオチドを用いたアプタマー合成法とアプタマー。
【請求項37】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基を含むsiRNA分子及びそれを用いたRNA干渉(RNAi)法。
【請求項38】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基をddRNA、2’メチル化などの修飾を施したRNAなどを含む請求項37記載のRNA干渉(RNAi)法。
【請求項39】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基を含む核酸を保持するプラスミド、ファージ、菌体、細胞、動植物個体。
【請求項40】
パイロシーケンスによる新規核酸および既知核酸の取り込み反応検定法およびそのキット。
【請求項1】
二本鎖DNAまたは二本鎖RNAなどの二本鎖核酸内でその主鎖に大きな歪みを生じさせないような塩基対を形成する非天然型塩基と、当該塩基を有するヌクレオシドまたはヌクレオチド、およびαチオ体に代表される誘導体、またはそれらの塩基を有する一本鎖または二本鎖以上の核酸またはPNA。
【請求項2】
複素環構造の骨格構造を形成する原子の一部または全部がπ電子系でつながった同一平面上に並んでいる非天然型塩基または非天然型塩基対を有する請求項1記載の物質。
【請求項3】
アデニン:チミン、グアニン:シトシンの天然型塩基対が占有する空間内に収まる非天然型塩基対を有する請求項1または2記載の物質。
【請求項4】
非天然型塩基対において非天然型塩基間の水素結合の平行性を保つようにデザインされた請求項1〜3のいずれか記載の物質。
【請求項5】
非天然型塩基対において非天然型塩基間の水素結合の配向が、天然型塩基対と一致しないようにデザインされた請求項1〜4のいずれか記載の物質。
【請求項6】
非天然型塩基対において非天然型塩基間のすべての水素結合の配向性が、一つの非天然型塩基が水素のドナーであり、もう一つの非天然型塩基がアクセプターであるようにデザインされた請求項1〜5のいずれか記載の物質。
【請求項7】
対合する2つの非天然型塩基が、水溶液中で構造を維持できるように設計された請求項1〜6のいずれか記載の物質。
【請求項8】
対合する2つの非天然型塩基のおのおのにおいて、目的の水素結合の配向を持つ互変異性体が熱力学的に優位になる上記当該非天然型塩基を有する請求項1〜7のいずれか記載の物質。
【請求項9】
請求項1記載にあるヌクレオシド、ヌクレオチドの塩基のうち、単環の複素環または2環式以上の複素環について、グリコシド結合している原子が参加する環の中心から、グリコシド結合との立体角が0から90度の範囲内の空間に、当該塩基の骨格原子または側鎖の原子として、非共有電子対をもった原子の中心が存在するような構造を持った請求項1〜8のいずれか記載の物質。
【請求項10】
請求項1記載にあるヌクレオシド、ヌクレオチドの塩基のうち、単環または2環以上の複素環について、「グリコシド結合している原子のとなりに位置する複素環の骨格原子」または「グリコシド結合している原子のとなりに位置する複素環の骨格原子に結合する側鎖または隣の環を形成する原子の一つ」が非共有電子対を有する原子である請求項1〜9のいずれか記載の物質。
【請求項11】
非共有電子対が酸素、窒素、リン、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などである請求項9または10記載の物質。
【請求項12】
請求項1記載のヌクレオシド、ヌクレオチドが、2’デオキシ体、3’デオキシ体、リボ体、2’3’ダイデオキシ体、アミダイト、または、その誘導体である請求項1〜11いずれか記載の物質。
【請求項13】
2−アミノ−4,5置換−1H−ピロール−3−イル基またはその誘導体である下記の式
【化1】
(式中R及びR’は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表される非天然型塩基、または、当該非天然型塩基を含む2’デオキシ体、3’デオキシ体、リボ体、2’3’ダイデオキシ体とそれらの誘導体から下記の化学式
【化2】
(式中X及びYは、ヒドロキシル基又は水素であり、R及びR’は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるヌクレオシドとそれらの誘導体または、当該非天然型塩基を含む下記の化学式
【化3】
(式中X及びYは、ヒドロキシル基又は水素であり、R及びR’は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、又はその誘導体
4)ハロゲン基;
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるヌクレオチドとそれらの誘導体、または、当該非天然型塩基を含む下記の化学式
【化4】
(式中Xは、ヒドロキシル基又は水素であり、R及びR’は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるアミダイトとそれらの誘導体、および当該非天然型塩基を含む一本鎖または二本鎖以上の核酸またはPNA。
【請求項14】
電子吸引基が導入された2−アミノピロール−3−イル基と特徴とする請求項13に記載の物質、および電子吸引基が導入することによる2−アミノピロール−3−イル基の安定化方法、または、電子吸引基が導入された2−アミノピロール−3−イル基と特徴とする請求項13に記載の物質の製造方法。
【請求項15】
3−ハロ−2−ニトロピロール誘導体やデオキシリボース誘導体とのパラジウム触媒反応を経る請求項13または請求項14の記載のヌクレオシド誘導体またはヌクレオチド誘導体またはアミダイト誘導体の合成方法。
【請求項16】
請求項13〜請求項15いずれか記載の非天然塩基の保護基としてフェノキシアセチル基を代表とするフェノキシアシル基を用いる合成方法。
【請求項17】
2,6,7,8置換−ピリドトリアジン−9−イル基またはその誘導体である下記の化学式
【化5】
(式中R1、R2、R3及びR4は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表される非天然型塩基、または、当該非天然型塩基を含む2’デオキシ体、3’デオキシ体、リボ体、2’3’ダイデオキシ体とそれらの誘導体からなる下記の化学式
【化6】
(式中X及びYは、ヒドロキシル基又は水素であり、R1、R2、R3及びR4は、以下の
1)水素基
2)アルキル基、アリール基
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるヌクレオシドとそれらの誘導体または、当該非天然型塩基を含む下記の化学式
【化7】
(式中X及びYは、ヒドロキシル基又は水素であり、R1、R2、R3及びR4は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるヌクレオチドとそれらの誘導体、または、当該非天然型塩基を含む
【化8】
(式中Xは、ヒドロキシル基又は水素であり、R1、R2、R3及びR4は、以下の
1)水素基;
2)アルキル基、アリール基;
3)アミノ基、チオール基、エーテル基、又はその誘導体
4)ハロゲン基、無機エステル基、又はその誘導体
5)カルボニル基、ニトリル基、カルボキシル基、又はその誘導体
から選択される置換基を示す。)
で表されるアミダイトとそれらの誘導体、および当該非天然型塩基を含む一本鎖または二本鎖以上の核酸またはPNA。
【請求項18】
電子供与基が導入されたピリドトリアジン−4−オン−9−イル基である請求項17に記載の物質、および電子供与基が導入することによるピリドトリアジン−4−オン−9−イル基の安定化方法、または、電子供与基が導入された請求項17に記載の物質の製造方法。
【請求項19】
上記電子供与基が、ピリドトリアジンの2位にアミノ基、置換アミノ基、アルコキシ基および、ハロゲン基である請求項17または18記載の物質、および塩基の安定化方法、または、当該物質の製造方法。
【請求項20】
マイクロ波反応装置を用いる請求項17〜請求項19いずれか記載の非天然型塩基またはヌクレオシド誘導体、ヌクレオチド誘導体の合成方法。
【請求項21】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の2’デオキシヌクレオチド体を基質全部または一部、または非天然型塩基を含むプライマーを用いたDNAポリメラーゼによる合成反応方法とそれを利用したPCR、または等温増幅反応方法または、DNAハイブリダイゼーション反応工程を含むDNA増幅方法。
【請求項22】
等温増幅反応が、LAMP法、SDA法、SMAP法、NASBA法、ICAN法、UCAN法、TMA法、Padlock probe法、Roling Circle(RCA)法、bDNA(branched DNA) 法、PALSAR法、Invader法、TRC法、CPT(Cycling Probe Technology)法などである請求項21記載の核酸増幅反応方法または核酸ハイブリダイゼーション反応または核酸のライゲーション反応工程を含むDNA増幅方法。
【請求項23】
請求項21〜23のいずれかの方法を利用したDNA増幅装置、実験用キット、診断用キット。
【請求項24】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の2’デオキシヌクレオチド体および2’3’ダイデオキシヌクレオチド体を基質の全部または一部とした、または当非天然型塩基を含むプライマーを用いたDNAポリメラーゼによるチェインターミネーション反応とそれを利用したシーケンス反応。
【請求項25】
請求項24の方法を利用した非天然型塩基をその一部または全部に持つ核酸配列を決定するDNAシーケンス反応装置および反応キット。
【請求項26】
請求項1〜請求項20のいずれか記載のリボヌクレオチド体を基質に含有するRNAポリメラーゼによるRNA合成反応方法とそれを利用したキット。
【請求項27】
請求項1〜請求項20のいずれか記載のリボヌクレオチド体および3’デオキシヌクレオチド体を基質の全部または一部としたRNAポリメラーゼによるチェインターミネーション反応とそれを利用したシーケンス反応。
【請求項28】
請求項27の方法を利用した非天然型塩基をその一部または全部に持つ核酸配列を決定する核酸シーケンス反応装置および反応キット。
【請求項29】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基を含む核酸のハイブリダイゼーションを基本とした核酸検出反応。
【請求項30】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基を含む方法であって、その当該塩基の蛍光特性を用いたIn vivo または、In vitroの核酸検出法。
【請求項31】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基を含む物質を用いた電気泳動が検出工程の中にある核酸またはタンパク検出法。
【請求項32】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基を5’非翻訳領域、タンパクコード領域、3’非翻訳領域、ポリA領域にふくむRNAを用いた反応に基づくタンパク合成法とタンパク合成キット。
【請求項33】
タンパク合成法が、In vitro translation法に基づく請求項32記載のタンパク合成法およびタンパク合成キットとそれにより産出されるタンパク質。
【請求項34】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基を含む新しい翻訳コドン表に基づくタンパク合成法とタンパク合成キットおよびそれにより産出されるタンパク質。
【請求項35】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基を含むオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイとそれを用いた実験用キットと診断用キット。
【請求項36】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基を含むオリゴヌクレオチドを用いたアプタマー合成法とアプタマー。
【請求項37】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基を含むsiRNA分子及びそれを用いたRNA干渉(RNAi)法。
【請求項38】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基をddRNA、2’メチル化などの修飾を施したRNAなどを含む請求項37記載のRNA干渉(RNAi)法。
【請求項39】
請求項1〜請求項20のいずれか記載の非天然型塩基を含む核酸を保持するプラスミド、ファージ、菌体、細胞、動植物個体。
【請求項40】
パイロシーケンスによる新規核酸および既知核酸の取り込み反応検定法およびそのキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−224013(P2007−224013A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330667(P2006−330667)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(501293666)株式会社ダナフォーム (25)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(501293666)株式会社ダナフォーム (25)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]