説明

非対称的に置換された成分を含むキナクリドン顔料組成物

本発明は、新規なキナクリドン顔料組成物、組成物の最終的製造用の混合アミン合成を用いる方法、および高分子量有機材料を顔料着色するための着色剤としてのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なキナクリドン顔料組成物、これらの組成物の製造方法、および高分子量有機材料を顔料着色する着色剤としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
キナクリドンは、顔料として使用される、周知の化合物である。キナクリドンは、通常、溶媒の存在下にアルカリ性媒体中でジヒドロキナクリドンを酸化し、次いで、得られた粗い結晶性粗顔料を乾式磨砕もしくは湿式磨砕することにより、または、ポリリン酸もしくはポリリン酸エステル中で2,5−ジアニリノテレフタル酸を閉環し、次いで、得られた微細な粗顔料を有機溶媒で相転換し、仕上げることにより製造される。
【0003】
ある条件下に、異なるキナクリドンが互いに混合されると、固溶体を形成するが、それは、化合物の双方の物理的な混合物および化合物それら自体とは極めて異なる。固溶体は、2種以上の成分の固体で均質な混合物として定義され、それは、ある限界の間で組成が変動しうるが、均質のままである。固溶体において、成分の分子は、通常、しかし常にではないが、成分の1種のそれと同一の結晶格子に入る。得られた結晶性固体のX線回折パターンは、その固体に特徴的であり、同じ成分の同じ割合の物理的混合物のパターンとは明確に区別することができる。そのような物理的混合物において、成分の各々のX線パターンは、識別することができ、これらの線の多くの消失が、固溶体の形成の基準の一つである。固溶体は、混晶とも称される。
【0004】
キナクリドン異性体の混合物は、英国出願第1,390,093号明細書およびHelvitica Chimica Acta (1972), 55(1), 85-100に開示されている。
【0005】
色が、通常、2種以上の成分の添加効果の直接的な関数である単純な物理的な混合物とは対照的に、固溶体は、予期されない及び予想できない色相を与える。色変化の方向や程度を一般化することは不可能である。
【0006】
また、固溶体の生成には、光堅牢性の著しい向上が伴うことがよく観察される。2種の顔料の物理的な混合物において、成分は、それらの個々の挙動を示し、一つが他のものよりも色があせるにつれて、色相の著しい変化を生じることがよくある。対照的に、固溶体は、色相におけるいかなる変化に関しても単一の物質として挙動し、特徴的に、優れた光堅牢性を示す。
【0007】
少なくとも1種の非対称キナクリドンを有する新規なキナクリドン組成物が、下記の混合アミン製造方法により製造することができることが見出された。用語「組成物」は、成分の固溶体をも包含する。製造方法は、ジアルキルスクシニロスクシナートおよび少なくとも2種の異なるアミンから出発してジアニリノテレフタル酸中間体を合成し、次いで、閉環反応に付してキナクリドン組成物を製造することを包含する。
【0008】
したがって、本発明は、(a)少なくとも1種の式(1):
【0009】
【化18】

【0010】
の対称キナクリドン、
(b)少なくとも1種の式(2):
【0011】
【化19】

【0012】
(式中、R1およびR2の少なくとも一つは、R3およびR4の各々とは異なり、および/または
1およびR2の位置の少なくとも一つは、R3およびR4の位置の各々とは異なる)
の非対称キナクリドンならびに
(c)少なくとも1種の式(3):
【0013】
【化20】

【0014】
の少なくとも1種の対称キナクリドン
(式中、R1、R2、R3およびR4は、各々互いに独立に、水素、非置換もしくはハロゲンで置換されたC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、カルバモイル、N−C1〜C4アルキルカルバモイル、N,N−ジ−C1〜C4アルキルカルバモイル、N,N−ジ−C1〜C4アルキルアミノ、カルボキシまたはニトロであるが、但し、非対称b)キナクリドンは1,10−ジメチルキナクリドンまたは1,10−ジクロロキナクリドンではない)
を含む、キナクリドン系列の顔料組成物を提供する。
【0015】
1〜C4アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルおよびイソブチル、好ましくは、メチルおよびエチル、特に、メチルが考慮に入れられる。C1〜C4アルキル基は、上で例示されたように、非置換であるか、または、ハロゲン、例えばフッ素もしくは塩素で一、二もしくは三置換されている。置換された基の例は、クロロメチルまたはトリフルオロメチル、好ましくはトリフルオロメチルである。
【0016】
非対称成分b)が二置換されており、置換基が同一である場合、好ましくは、キナクリドンは、キナクリドン環の1,10位で置換されていない。
【0017】
1〜C4アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシおよびイソブトキシ、好ましくは、メトキシおよびエトキシ、特に、メトキシが考慮に入れられる。
【0018】
ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素、好ましくは塩素およびフッ素、特に塩素が考慮に入れられる。
【0019】
N−C1〜C4アルキルカルバモイル基としては、例えば、N−メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−イソプロピルカルバモイル、N−ブチルカルバモイル、N−sec−ブチルカルバモイルおよびN−tert−ブチルカルバモイル、好ましくはN−メチルカルバモイルおよびN−エチルカルバモイル、特にN−メチルカルバモイルが考慮に入れられる。
【0020】
N,N−ジ−C1〜C4アルキルカルバモイル基としては、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−エチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイルおよびN,N−ジプロピルカルバモイル、好ましくはN,N−ジメチルカルバモイルが考慮に入れられる。
【0021】
N,N−ジ−C1〜C4アルキルアミノ基としては、例えば、N,N−ジメチルアミノおよびN,N−ジエチルアミノ、好ましくはN,N−ジメチルアミノが考慮に入れられる。
【0022】
式(1)のキナクリドン化合物の末端フェニル環の各々および式(2)のキナクリドン化合物の末端フェニル環の一つに結合した基R1は、同一の意味を有し、対応する位置に結合する。式(1)のキナクリドン化合物の末端フェニル環の各々および式(2)のキナクリドン化合物の末端フェニル環の一つに結合した基R2は、同一の意味を有し、対応する位置に結合する。式(3)のキナクリドン化合物の末端フェニル環の各々および式(2)のキナクリドン化合物の末端フェニル環の一つに結合した基R3は、同一の意味を有し、対応する位置に結合する。式(3)のキナクリドン化合物の末端フェニル環の各々および式(2)のキナクリドン化合物の末端フェニル環の一つに結合した基R4は、同一の意味を有し、対応する位置に結合する。
【0023】
本出願の目的で、「異なる位置」に対立する「対応する位置」は、一分子中の対立する末端フェニル環の各々に結合した基の同一の位置を意味し、例えば、式(1)、(2)または(3)の化合物中の番号付けられた位置「1」は番号付けられた位置「8」に対応し、「2」は「9」に対応し、「3」は「10」に対応し、また、「4」は「11」に対応する。本出願の目的で、「異なる位置」に対立する「対応する位置」は、さらに、式(1)、(2)及び(3)の化合物中の同一の数字で表示された位置に結合した基を包含し、例えば、式(1)の化合物中の番号付けられた位置「1」は、式(2)および(3)の化合物中の番号付けられた位置「1」に対応する。
【0024】
本出願の目的で、式(1)および(3)の化合物は、したがって、対称キナクリドンと称される。本出願の目的で、基R1とR2との少なくとも一つは、基R3とR4との各々とは異なるか、または基R1とR2とが基R3とR4と同一である場合、基R1とR2の位置の少なくとも一つは、R3とR4の位置の各々とは異なるので、式(2)の化合物は、したがって、非対称キナクリドンと称される。
【0025】
式(1)および(3)の対称キナクリドンは、例えば、非置換キナクリドン、3,10−ジクロロキナクリドン、2,9−ジクロロキナクリドン、2,9−ジフルオロキナクリドン、4,11−ジメチルキナクリドン、4,11−ジクロロキナクリドン、2,9−ジメチルキナクリドン、2,9−ジメトキシキナクリドン、2,9−ジ−N−メチルカルバモイルキナクリドンおよび2,9−ジメチル−3,10−ジクロロキナクリドンである。
【0026】
式(2)の非対称キナクリドンは、例えば、2−メチル−9−クロロキナクリドン、2−メチルキナクリドン、2−フルオロキナクリドン、4−クロロキナクリドン、2,10−ジクロロキナクリドン、3,11−ジメチルキナクリドン、2,11−ジクロロキナクリドン、4−メチル−9−メトキシキナクリドン、2−メチル−11−メトキシキナクリドン、2,11−ジメトキシキナクリドン、2−メチル−3−クロロキナクリドンおよび2−メチル−3,10−ジクロロキナクリドンである。
【0027】
本発明の好ましい実施態様において、R1、R2、R3およびR4は、各々互いに独立に、水素、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、カルバモイル、N−C1〜C4アルキルカルバモイル、N,N−ジ−C1〜C4アルキルカルバモイルまたはN,N−ジ−C1〜C4アルキルアミノ、特に、水素、塩素、フッ素、メチル、メトキシまたはN,N−ジメチルアミノを表す。
【0028】
本発明の興味深い実施態様において、組成物は、
a)少なくとも1種の式(1a):
【0029】
【化21】

【0030】
の対称キナクリドン、
(b)少なくとも1種の式(2a):
【0031】
【化22】

【0032】
の非対称キナクリドンおよび
(c)少なくとも1種の式(3a):
【0033】
【化23】

【0034】
の対称キナクリドン
(式中、R1およびR3は、各々互いに独立に、水素、非置換もしくはハロゲンで置換されたC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、カルバモイル、N−C1〜C4アルキルカルバモイル、N,N−ジ−C1〜C4アルキルカルバモイル、N,N−ジ−C1〜C4アルキルアミノ、カルボキシまたはニトロであり、R1は、R3とは異なり、および/またはR1の位置は、R3の位置とは異なり、但し、非対称b)キナクリドンは1,10−ジメチルキナクリドンまたは1,10−ジクロロキナクリドンではない)
を含む。
【0035】
1は、R3とは異なり、すなわち、R1とR3は同一ではない。本発明の他の実施態様において、R1とR3とは同一であるが、互いに対応していない末端フェニル環の異なる位置に配置される。本発明のさらに別の実施態様において、R1とR3とは同一ではなく、互いに対応していない末端フェニル環の異なる位置に配置される。
【0036】
好ましくは、R1は、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、カルバモイル、N−C1〜C4アルキルカルバモイル、N,N−ジ−C1〜C4アルキルカルバモイル、N,N−ジ−C1〜C4アルキルアミノ、トリフルオロメチル、カルボキシまたはニトロ、特に、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、カルバモイル、N−C1〜C4アルキルカルバモイル、N,N−ジ−C1〜C4アルキルカルバモイルまたはN,N−ジ−C1〜C4アルキルアミノを表し、R3は水素である。
【0037】
特に、R1は、塩素、フッ素、メチル、メトキシまたはN,N−ジメチルアミノ、好ましくは塩素、メチルまたはメトキシを表し、R3は水素である。
特に好ましい実施態様において、R1はメチルを表し、R3は水素である。
【0038】
本発明に係るキナクリドン顔料組成物は、例えば、組成物中の式(1)、(2)および(3)の成分の全重量を基準にして、少なくとも1種の式(1)の対称成分0.2〜99重量%、少なくとも1種の式(3)の対称成分0.2〜99重量%、および少なくとも1種の式(2)の非対称成分0.1〜50重量%を含む。
【0039】
一つの実施態様において、本発明に係るキナクリドン顔料組成物は、例えば、組成物中の式(1)、(2)および(3)の成分の全重量に基づいて、少なくとも1種の式(1)の対称成分55〜99重量%、好ましくは65〜95重量%、特に70〜90重量%、少なくとも1種の式(2)の非対称成分および少なくとも1種の式(3)の対称成分の合計1〜45重量%、好ましくは5〜35重量%、特に10〜30重量%を含む。本発明に係るキナクリドン顔料組成物は、例えば、組成物中の式(1)、(2)および(3)の成分の全重量に基づいて、少なくとも1種の式(2)の非対称成分5〜44.9重量%、好ましくは10〜34.5重量%、特に10〜29重量%、少なくとも1種の式(3)の対称成分0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜25重量%、特に1〜20重量%を含む。
【0040】
好ましくは、本発明に係るキナクリドン顔料組成物は、式(1)、(2)および(3)のキナクリドン顔料以外の顔料を実質的な量では含有していない。
【0041】
本発明に係る組成物は、緊密に成分を混合することにより得ることができるが、好ましくは、下記の方法に従って製造される、2,5−ジアリールアミノテレフタル酸中間体の混合物の同時環化により製造される。
【0042】
本発明に係る好ましい組成物は、式(115)、(116)および(117):
【0043】
【化24】

【0044】
の化合物を、HPLCでの相対ピーク面積により確立される(90〜1):(50〜10):(85〜0.2)の比で含む。
【0045】
したがって、さらなる主題は、
(i)式(4):
【0046】
【化25】

【0047】
(式中、R5およびR6は、各々互いに独立に、C1〜C4アルキルである)
の化合物を、少なくとも2倍モル量の式(5)および(6):
【0048】
【化26】

【0049】
のアミンの混合物と、式(5)および(6)のアミンを同時にまたは逐次に添加して反応させて、少なくとも1種の式(7):
【0050】
【化27】

【0051】
の化合物、少なくとも1種の式(8):
【0052】
【化28】

【0053】
の化合物、および少なくとも1種の式(9):
【0054】
【化29】

【0055】
の化合物を含む組成物を生じ、
(ii)工程(i)に従って得られた組成物を、酸化および加水分解して、少なくとも1種の式(10):
【0056】
【化30】

【0057】
の化合物、少なくとも1種の式(11):
【0058】
【化31】

【0059】
の化合物、および少なくとも1種の式(12):
【0060】
【化32】

【0061】
の化合物を含む組成物を生じ、次いで、
(iii)工程(ii)に従って得られた組成物を環化して、上に規定したとおりの、
(a)少なくとも1種の式(1)の対称キナクリドン、
(b)少なくとも1種の式(2)の非対称キナクリドン、および
(c)少なくとも1種の式(3)の対称キナクリドン、
(式中、R1、R2、R3およびR4は、上記の意味および好ましさを有し、R1とR2との少なくとも一つは、R3とR4との各々とは異なり、および/またはR1とR2との位置の少なくとも一つは、R3とR4との位置の各々とは異なる)
を含む組成物を得る、製造方法。
【0062】
基R5およびR6は、各々互いに独立に、C1〜C4アルキル、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルおよびイソブチル、好ましくは、メチルおよびエチル、特に、メチルである。基R5およびR6は、同一または同一ではなく、好ましくは同一である。
【0063】
好ましくは、式(4)の化合物は、ジメチルスクシニロスクシナートまたはジエチルスクシニロスクシナート、特にジメチルスクシニロスクシナートである。
【0064】
好ましい実施態様において、R5およびR6が各々互いに独立にC1〜C4アルキルである式(4)の化合物と、少なくとも2倍〜4倍モル量の式(5)および(6)のアミンの混合物との間の縮合反応であって、式(5)および(6)のアミンが同時にまたは逐次に添加されて少なくとも1種の式(7)の化合物、少なくとも1種の式(8)の化合物および少なくとも1種の式(9)の化合物を含む組成物を生じる反応を、触媒として、式(4)の化合物1モルあたり0.04〜1.10の量の塩酸または硫酸の存在下に、及び、溶媒、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する低級アルコールの存在下に、酸素のない雰囲気で、80℃〜130℃の間の反応温度で行われる。
【0065】
式(10)、(11)および(12)の中間体2,5−ジアニリノテレフタル酸化合物の組成物は、式(4)のジアルキルスクシニロスクシナートを、少なくとも2倍モル量の式(5)および(6)の少なくとも2種の異なるアミンの混合物と、好適には、有機溶媒、例えば1〜4個の炭素原子を有するアルコールの存在下に、場合により、加温温度で常圧または加圧下に、縮合することにより製造される。賢明には、工程(i)に従って得られた式(7)、(8)および(9)の2,5−ジアニリノ−3,6−ジヒドロテレフタル酸エステル誘導体は、中間体生成物を単離してまたは単離せずに、好ましくは単離せずに、工程(ii)に従う酸化および加水分解に付される。
【0066】
本発明の興味深い実施態様において、式(7)、(8)および(9)の2,5−ジアニリノ−3,6−ジヒドロテレフタル酸エステル誘導体は、常圧下に製造される。
【0067】
好適な式(5)および(6)のアミンは、例えば、アニリン;p−クロロアニリン、o−クロロアニリン、p−フルオロアニリン、o−フルオロアニリンを含むハロゲン置換アニリン化合物;p−トルイジンおよびo−トルイジンを含むC1〜C4アルキル置換アニリン化合物;p−アニシジン、o−アニシジン、m−アニシジンを含むC1〜C4アルコキシ置換アニリン化合物;p−ジメチルアミノアニリン等のジアルキルアミノ置換アニリン;ならびに3−クロロ−4−メチルアニリン等の二置換アニリン化合物である。式(5)のアミンは、上記のように、基R1、R2、R3およびR4の意味および/または位置に関して、式(6)のアミンと異なる。
【0068】
好ましい式(5)および(6)のアミンは、アニリン、p−クロロアニリン、o−クロロアニリン、p−フルオロアニリン、p−トルイジン、p−アニシジン、またはp−ジメチルアミノアニリンである。
【0069】
本発明に係る製造方法の興味深い実施態様において、アニリンが式(5)のアニリンとして使用され、p−クロロアニリン、o−クロロアニリン、p−フルオロアニリン、p−トルイジン、p−アニシジン、またはp−ジメチルアミノアニリン、好ましくはp−クロロアニリン、o−クロロアニリン、p−トルイジン、p−アニシジンまたはp−アニシジン、特にp−トルイジンが式(6)のアミンとして使用される。
【0070】
好適には、式(5)のアミンは、反応混合物中の式(5)および(6)のアミンの全量に対して1〜70重量%の量で、好ましくは1〜45重量%の量で、また、特に、1〜30重量%の量で適用される。式(5)のアミンの下限は、反応混合物中の式(5)および(6)のアミンの全量に基づいて、好ましくは5重量%、特に10重量%である。
【0071】
式(5)および(6)のアミンは、式(7)のジアルキルスクシニロスクシナートに、同時にまたは逐次に添加される。好ましくは、アミンは反応物に逐次に加えられる。例えば、式(5)のアミンは、ジアルキルスクシニロスクシナートに、別個に加えられる。次いで、式(6)のアミンが、0.5〜4時間、好ましくは1〜3時間後に、反応混合物に加えられる。あるいは、式(6)のアミンがまず加えられ、その後、式(5)のアミンが加えられる。
【0072】
工程(ii)に従う式(7)、(8)および(9)の2,5−ジアニリノ−3,6−ジヒドロテレフタル酸エステル誘導体の混合物の酸化は、例えば、溶媒混合物または溶媒と水の混合物中で、酸化剤およびアルカリの存在下に、加温温度で常圧または加圧下に行われる。酸化剤としては、例えば、m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム、ニトロベンゼン、ニトロナフタレン、ニトロベンゼンスルホン酸またはニトロフェノール、好ましくはm−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムが考慮に入れられる。溶媒として、例えば、極性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトン、エチレングリコールもしくはグリコールエーテル、またはそれらの混合物、好ましくはメタノールまたはエタノールまたはそれらの混合物が考慮に入れられる。
【0073】
(ii)に従う酸化および加水分解工程後に得られる中間体化合物の好ましい組成物は、式(101)、(102)および(103):
【0074】
【化33】

【0075】
の化合物を、HPLCでの相対ピーク面積により確立される(85〜1):(50〜10):(85〜1)の比で含む組成物である。
【0076】
賢明には、式(10)、(11)および(12)の2,5−ジアニリノテレフタル酸誘導体は、閉環剤の存在下に加熱することにより、工程(iii)に従って環化される。
【0077】
閉環剤としては、例えば、式(10)、(11)および(12)の2,5−ジアニリノテレフタル酸化合物の全量に基づいて、ポリリン酸またはポリリン酸エステル、例えばポリリン酸メチルエステルまたはそれらの混合物を重量で2.5〜10倍、好ましくは3〜6倍が用いられる。ポリリン酸またはエステルのP25含有量は、例えば、80〜87重量%、好ましくは83〜85重量%であり、110〜120%のリン酸当量に対応する。大量の閉環剤を使用することができるが、一般には不要である。閉環温度は、賢明には80〜200℃、好ましくは120〜140℃である。環化を完成させるためにかかる時間は、一般に、0.5〜24時間、通常は、単に、1〜3時間である。
【0078】
環化後に存在する閉環混合物は、例えば、少なくとも50℃、好ましくは50〜180℃、特に60〜125℃の温度で、水または希リン酸のみを用いて、または反応条件下で不活性である有機溶媒、例えば芳香族炭化水素の存在下に、場合により常圧または加圧下に、加水分解される。水または希リン酸が加水分解に使用される場合には、閉環混合物は、水または希リン酸に量り入れられる。あるいは、逆の方法が採用される。加水分解は、連続的にまたはバッチ式に行うことができる。ポリリン酸に対して、2〜10倍量の水または希リン酸が一般に使用される。加水分解の時間は量り入れる速度に依存し、例えば、0.5〜24時間、好ましくは0.5〜5時間である。
【0079】
代わりに、環化後に存在する閉環混合物は、例えば、少なくとも110℃、好ましくは120〜180℃、特に130〜160℃の温度で、加水分解される。この場合、閉環混合物は、所望ならば加圧下に、例えば、量り入れ添加の最後に少なくとも70重量%濃度、好ましくは75〜98重量%濃度、特に80〜90重量%濃度の量となるような水性オルトリン酸に量り入れることによりオルトリン酸に量り入れられ、加水分解された混合物中の水性オルトリン酸の濃度は、賢明には、少なくとも85重量%である。連続法またはバッチ法を使用することが可能である。ポリリン酸に対して、0.8〜10倍量のオルトリン酸を使用することが賢明である。原則として、70重量%濃度未満のオルトリン酸を使用することも可能である。好ましくは、加水分解の最後での加水分解混合物中のオルトリン酸の濃度は、87〜98重量%、特に88〜95重量%である。
【0080】
別の実施態様において、工程(ii)に従う加水分解および工程(iii)に従う環化は、工程(ii)に従う酸化の前に行なわれる。
【0081】
式(5)および(6)のアミンならびに従って式(10)、(11)および(12)のジアニリノテレフタル酸の量および種類、閉環条件および加水分解条件の選択によって、慣用の方法により単離することができる機能性混晶顔料が加水分解手順後に直接得られる。ある種の最終用途について、得られた微細な混晶(この場合、プレ顔料と称する)を加温温度で仕上げ処理に付することが有利になり得るか、あるいはまず、粗い結晶性混晶の粗顔料が得られ、それは、ある用途について、有利には、機械的磨砕に付され、次いで、直接にまたは仕上げ処理に引き続いて、機能性顔料形態に変換される。
【0082】
混晶プレ顔料は、予め単離してあるいは単離することなく、溶媒を添加してあるいは添加することなく、例えば50〜200℃の温度で、後処理に付すことができる。しかし、後処理工程は省略することができ、混晶プレ顔料は、後処理なしで使用できる準備ができている。液体媒体は、アルカリ性pH、例えば、7.5〜13を有することができるが、好ましくは、pHは中性である。粗い結晶性混晶の粗顔料は、機械的微細粉砕に付され、次いで、得られた混晶顔料は慣用の方法で単離され、あるいは、予め単離してまたは単離することなく、上記の仕上げ処理に付し、次いで液体媒体の分離に続いて、単離される。微細粉砕は、乾式または湿式磨砕によりもたらすことができる。この目的では、混合混晶粗顔料を乾燥することは不必要であるので、高エネルギーでの湿式磨砕が好ましい。
【0083】
乾式磨砕は、好適には、バッチ式または連続式振動ミルまたはロールミルを用いて行われ、湿式磨砕は、バッチ式または連続式攪拌ボールミル、ロールミルおよび振動ミルならびにまた混練装置を用いて行われる。湿式磨砕については、混晶粗顔料懸濁液は直接、あるいは、予め単離した後の湿潤プレスケーキまたは乾燥した、粗い結晶性混晶粗顔料は、水、希水酸化ナトリウム溶液および/または好ましくは水混和性溶媒で粉末化可能な粘稠度に希釈される。使用される磨砕媒体は、0.2〜20mm径の、酸化ジルコニウム、ジルコニウム混合酸化物、酸化アルミニウム、スチールまたは石英のビーズである。磨砕の期間は、例えば、5〜60分の間、好ましくは7.5〜30分の間である。
【0084】
加水分解または微細粉砕後に存在する混晶プレ顔料は、直接にまたは溶媒の添加後に、水性懸濁液中で、あるいは有機媒体中で、仕上げ処理に付すことができる。仕上げ処理を行うための条件は、混晶顔料の所望の特性に依存する程度が高く、各々の場合に、その目的に向けて方向付けられる。通常、適切な媒体中の混晶プレ顔料の懸濁液は、例えば、50〜200℃の温度で、大気圧または加圧下に、0.5〜24時間、好ましくは50〜150℃で1〜6時間処理される。一般に、湿式磨砕後に得られる懸濁液が、予めミルベースを単離することなく、この目的に使用される。ここで添加する溶媒の量は、広い範囲内で変えることができる。混晶プレ顔料の重量に基づいて、同量から5倍量までの溶媒を使用することが好ましい。仕上げの最後に、その目的に使用した溶媒を蒸留して回収し、再度使用することができる。入手可能な変形物をこの方法で利用して、最終用途に応じて、本発明の方法で得られる混晶プレ顔料を、より高度に隠蔽性のまたはより透明な形態に変換することができ、これは、適切な溶媒の溶解性、その濃度、選択された温度および仕上げ処理の時間により調節できる。
【0085】
色特性を改善し、特定の色効果を得るために、プロセスの任意の時点で、溶媒、界面活性剤、消泡剤、増量剤、硫酸ナトリウム等の無機塩類、または他の添加剤を加えることが可能である。これらの添加剤の混合物を使用することも可能である。添加剤は、全て一度にあるいは2回以上に分けて加えることができる。添加は、閉環の前、その間もしくはその後、高温加水分解の間、磨砕の間もしくは仕上げ処理の間、または単離の間もしくはその後に行うことができる。
【0086】
好適な界面活性剤は、アニオン系、カチオン系、および非イオン系界面活性剤である。好適なアニオン系界面活性剤の例は、タウリン化脂肪酸、N−メチルタウリン化脂肪酸、脂肪酸イセチオナート、アルキルベンゼンスルホナート、アルキルナフタレンスルホナート、硫酸アルキルフェノールポリグリコールエーテル、および硫酸脂肪アルコールポリグリコールエーテル、脂肪酸、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸石鹸、例えば脂肪酸、ナフタレン酸および樹脂酸(例えば、アビエチン酸)のアルカリ金属塩、ならびにアルカリ溶解性樹脂、例えばロジン変性マレイン酸樹脂である。
【0087】
好適なカチオン系界面活性剤の例は、四級アンモニウム塩、脂肪アミンエトキシラート、脂肪アミンポリグリコールエーテルおよび脂肪アミンである。非イオン系界面活性剤の例は、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、脂肪酸ポリグリコールエステルおよびアルキルフェノールポリグリコールエーテルである。
【0088】
溶媒の例は、脂環式炭化水素、例えばシクロヘキサン;C1〜C8アルカノール、脂環式アルコールおよび多価アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−もしくはイソプロパノール、n−もしくはイソブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン;C1〜C5ジアルキルケトンまたは環状ケトン、例えばアセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンまたはシクロヘキサノン;エーテルおよびグリコールエーテル、例えばエチレングリコールもしくはプロピレングリコールのモノメチルもしくはモノエチルエーテル、ブチルグリコール、エチルジグリコールまたはメトキシブタノール;芳香族炭化水素、例えばトルエン、o−、m−もしくはp−キシレンまたはエチルベンゼン、環状エーテル、例えばテトラヒドロフラン、塩素化芳香族炭化水素、例えばクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンまたはブロモベンゼン;置換芳香族化合物、例えば安息香酸、ニトロベンゼンまたはフェノール;脂肪族カルボキサミド、例えばホルムアミドまたはジメチルホルムアミド;環状カルボキサミド、例えばN−メチルピロリドン;カルボン酸C1〜C4アルキル、例えばギ酸ブチル、酢酸エチルまたはプロピオン酸プロピル;カルボン酸C1〜C4グリコールエステル、フタル酸C1〜C4アルキルおよび安息香酸C1〜C4アルキル、例えば安息香酸エチル;ヘテロ環塩基、例えばピリジン、キノリン、モルホリンまたはピコリン;ならびにまた、ジメチルスルホキシドおよびスルホランである。
【0089】
好ましい溶媒は、アルカノール、特にエタノール、プロパノール類、ブタノール類およびペンタノール類;脂肪族カルボキサミド、例えばホルムアミドまたはジメチルホルムアミド;環状カルボキサミド、特にN−メチルピロリドン;芳香族炭化水素、例えばトルエン、o−、m−もしくはp−キシレンまたはエチルベンゼン;ならびに塩素化芳香族炭化水素、例えばクロロベンゼンまたはo−ジクロロベンゼンである。
【0090】
非対称キナクリドン(b)が1,10−ジメチルキナクリドンであるものを包含する、本発明に従って製造される混晶顔料は、例えば、天然または合成起源の高分子量有機材料、例えばプラスチック、樹脂、コーティング材料または印刷インクを顔料着色するために使用することができる。
【0091】
該顔料で着色できる高分子量有機材料の例は、個々のまたは混合物としての、セルロースエーテルおよびセルロースエステル、例えばエチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロースまたは酪酸セルロース、天然樹脂または合成樹脂、例えば付加重合樹脂または縮合樹脂であり、例は、アミノ樹脂、特に、尿素−およびメラミン−ホルムアミド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリオレフィン、例えばポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリウレタンまたはポリエステル、ゴム、カゼイン、シリコーンおよびシリコーン樹脂である。好ましくは、該顔料で着色できる高分子量有機材料は、103〜108g/モルの範囲の分子量を有する。
【0092】
この関係において、挙げた高分子量有機化合物が、プラスチック材料もしくは溶融物の形態または紡糸溶液、ワニス、塗料もしくは印刷インクの形態であるかどうかは、関係のないことである。意図する使用に応じて、非対称キナクリドン(b)が1,10−ジメチルキナクリドンであるものを包含する、本発明に従って得られる顔料をブレンドとしてまたは調製液もしくは分散液の形態で利用することが有利であることが見出される。顔料着色すべき高分子質量有機材料に基づいて、本発明の顔料は、好ましくは0.1〜10%の量で用いられる。
【0093】
非対称キナクリドン(b)が1,10−ジメチルキナクリドンであるものを包含する、本発明の混合顔料は、電子写真用トナーおよび現像剤、例えば、一成分または二成分粉末トナー(いわゆる、一成分または二成分現像剤)、磁気トナー、液体トナー、ラテックストナー、重合トナーおよび特殊トナー中の着色剤として好適である。典型的なトナー結合剤は、個々のまたは組合せの、付加重合樹脂、ポリ付加樹脂および重縮合樹脂、例えばスチレン樹脂、スチレン−アクリレート樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール−エポキシ樹脂、ポリスルホン、ポリウレタン、およびまた、さらなる成分、例えば電荷調節剤、ワックスまたは流動補助剤をも含むことができ、あるいはその後これらの添加剤で修飾することができる、ポリエチレンおよびポリプロピレンである。
【0094】
非対称キナクリドン(b)が1,10−ジメチルキナクリドンであるものを包含する、本発明の顔料の懸濁液は、特に、印刷インクを調製するためのまたは優れた応用特性と高い色濃度の魅力的な彩色性を有する印刷インクに直接使用するための濃縮物として理想的に好適である。
【0095】
したがって、本発明は、さらに、非対称キナクリドン(b)が1,10−ジメチルキナクリドンであるものを包含する、本発明の顔料を含む印刷インク濃縮物用の印刷インクを提供する。
【0096】
さらに、非対称キナクリドン(b)が1,10−ジメチルキナクリドンであるものを包含する、本発明の混合顔料は、例えば金属、木材、プラスチック、ガラス、セラミック、コンクリート、繊維材料、紙またはゴムで作られた物品の表面をコーティングするために使用される、粉末および粉末状コーティング材料中の、特に摩擦電気的にまたは動電気学的に噴霧可能な粉末コーティング材料中の着色剤として好適である。粉末コーティング樹脂としては、慣用の硬化剤と共に、エポキシ樹脂、カルボキシおよびヒドロキシ含有ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂ならびにアクリル樹脂を使用することが典型的である。樹脂の組合せが同様に使用される。例えば、エポキシ樹脂は、しばしば、カルボキシおよびヒドロキシ含有ポリエステル樹脂と組み合わせて使用される。(樹脂系に応じた)典型的な硬化剤成分の例は、酸無水物、イミダゾールならびにまたジシアンジアミドおよびその誘導体、ブロックされたイソシアナート、ビスアシルウレタン、フェノール性樹脂およびメラミン樹脂、イソシアヌル酸トリグリシジル、オキサゾリン、ならびにジカルボン酸である。
【0097】
さらに、非対称キナクリドン(b)が1,10−ジメチルキナクリドンであるものを包含する、本発明の混晶顔料は、水性ベースのおよび非水性ベースのインクジェットインク中のならびにまた、ホットメルト法に従って作動するそれらのインク中の着色剤として好適である。
【0098】
そのような印刷インクは、例えば、顔料、結合剤ならびにまた場合により、溶媒および/または場合により水と添加剤を含む液状またはペースト状分散物である。液体印刷インクにおいては、結合剤および、適用される場合には、添加剤は、一般に溶媒に溶解される。ブルックフィールド粘度計における通例の粘度は、例えば、20〜5000mPa・s、液体印刷インクについて、例えば20〜1000mPa・sである。ペースト状印刷インクについては、その値は、例えば、1〜100Pa・s、好ましくは5〜50Pa・sである。当業者ならば、印刷インクの成分および組成についてよく知っていると思う。
【0099】
この分野で慣用の印刷インク調合物のような、好適な顔料は、一般に公知であり、広く記載されている。
印刷インクは、顔料を、有利には、印刷インクの全重量に基づいて、例えば0.01〜40重量%、好ましくは1〜25重量%、特には5〜10重量%の濃度で含む。
【0100】
印刷インクは、例えば、出版、包装または発送、物流、広告、セキュリティ印刷またはオフィス備品の分野において、一般に公知の調合を用いて、本発明の方法に従って予め処理された材料上への、例えば、凹版印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、リトグラフィーまたは連続的なもしくは一滴ずつのインクジェット印刷用に使用することができる。
【0101】
好適な印刷インクは、溶媒ベースの印刷インクおよび水ベースの印刷インクの双方である。興味のもたれるものは、例えば、水性アクリレートをベースとする印刷インクである。そのようなインクは、基:
【0102】
【化34】

【0103】
を含む少なくとも1種のモノマーの重合により得られ、水または水含有有機溶媒中に溶解されたポリマーまたはコポリマーを包含するものとして理解すべきである。好適な有機溶媒は、当業者により慣用されている水混和性溶媒、例えば、アルコール、例えばメタノール、エタノールおよびプロパノール、ブタノールおよびペンタノールの異性体、エチレングリコールおよびそれらのエーテル、例えばエチレングリコールメチルエーテルおよびエチレングリコールエチルエーテル、ならびにケトン、例えばアセトン、エチルメチルケトンまたはシクロ、例えばイソプロパノールである。水およびアルコール類が好ましい。
【0104】
好適な印刷インクは、例えば、結合剤として、主としてアクリレートポリマーまたはコポリマーを含み、溶媒は、例えば、水、C1〜C5アルコール、エチレングリコール、2−(C1〜C5アルコキシ)エタノール、アセトン、エチルメチルケトンおよびそれらの任意の混合物よりなる群から選択される。
【0105】
結合剤に加えて、印刷インクは、また、当業者に公知の慣用の添加剤を慣用の濃度で含むことができる。
凹版印刷またはフレキソ印刷に対して、印刷インクは、通常、印刷インク濃縮物の希釈により製造され、次いで、それ自体公知の方法に従って使用される。印刷インクは、例えば、酸化的に乾燥するアルキド系をも含むことができる。印刷インクは、場合によりコーティングを加熱して、この分野で慣用の公知の方法で乾燥される。
【0106】
好適な水性印刷インク組成物は、例えば、顔料または顔料の組合せ、分散剤および結合剤を含む。
【0107】
考慮に入れられる分散剤として、例えば、慣用の分散剤、例えば1以上のアリールスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合生成物または1以上の水溶性オキシアルキル化フェノールをベースとする水溶性分散剤、非イオン性分散剤あるいはポリマー酸が挙げられる。
【0108】
アリールスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合生成物は、例えば、芳香族化合物、例えばナフタレンそれ自体またはナフタレン含有混合物のスルホン化および得られたアリールスルホン酸のホルムアルデヒドとの引き続く縮合により得られる。そのような分散剤は、公知であり、例えば、米国特許第5,186,846号明細書およびDE−A−19727767明細書に記載されている。好適なオキシアルキル化フェノールは、同様に、公知であり、例えば、米国特許第4,218,218号明細書およびDE−A−19727767明細書に記載されている。好適な非イオン性分散剤は、例えば、アルキレンオキシド付加物、ビニルピロリドン、酢酸ビニルもしくはビニルアルコールの重合生成物ならびにビニルピロリドンと酢酸ビニルおよび/またはビニルアルコールとのコポリマーもしくはターポリマーである。
【0109】
例えば、分散剤と結合剤の双方として作用するポリマー酸を使用することも可能である。
【0110】
挙げることができる好適な結合剤成分の例は、アクリレート基含有、ビニル基含有および/またはエポキシ基含有モノマー、プレポリマーおよびポリマーならびにそれらの混合物を包含する。更なる例は、メラミンアクリレートおよびシリコーンアクリレートである。アクリレート化合物は、非イオン的に変性(例えば、アミノ基でもたらされる)またはイオン的に変性(例えば、酸基またはアンモニウム基でもたらされる)されていてもよく、水性分散液または乳濁液の形態で使用される(例えば、EP−A−704469、EP−A−12339明細書)。さらに、所望の粘度を得るために、無溶媒アクリレートポリマーは、いわゆる反応性希釈剤、例えば、ビニル基含有モノマーと混合することができる。さらに好適な結合剤成分は、エポキシ基含有化合物である。
【0111】
印刷インク組成物は、追加成分として、例えば、組成物をインクジェット印刷に特に好適なものとする、水保持性作用を有する剤(湿潤剤)、例えば多価アルコール、ポリアルキレングリコールを含むこともできる。
【0112】
印刷インクは、例えば、特に(水性)インクジェットインク用ならびに印刷およびコーティング産業において慣用である、さらなる助剤、例えば、保存料(グルタルジアルデヒドおよび/またはテトラメチロールアセチレン尿素)、酸化防止剤、脱気剤/消泡剤、粘度調整剤、フロー改善剤、抗沈殿剤、光沢改善剤、潤滑剤、接着促進剤、抗皮膜剤、マット剤、乳化剤、安定剤、疎水化剤、光安定剤、操作性改善剤および帯電防止剤を含むということが理解されよう。そのような作用剤が組成物中に存在する場合、それらの合計量は、一般に、調合物の重量に対して、1重量%以下である。
【0113】
印刷インクは、例えば4〜9、特に5〜8.5のpH値を達成するために、緩衝物質、例えばホウ砂、ホウ酸塩、リン酸塩、ポリリン酸塩またはクエン酸塩を、例えば0.1〜3重量%の量で含むことも可能である。
【0114】
さらなる添加剤として、そのような印刷インクは、界面活性剤または湿潤剤を含むことができる。考慮に入れられる界面活性剤は、市販のアニオン系界面活性剤および非イオン系界面活性剤を包含する。考慮に入れられる湿潤剤は、印刷インク中に、例えば、0.1〜30重量%、特に2〜30重量%の量で、尿素あるいは乳酸ナトリウム(有利には、50〜60%水溶液の形態で)とグリセリンおよび/またはプロピレングリコールの混合物を包含する。
【0115】
さらに、印刷インクは、慣用の添加剤、例えば泡減少剤または特に、カビおよび/または細菌の増殖を阻害する物質をも含むことができる。そのような添加剤は、印刷インクの全量に対して、通常、0.01〜1重量%の量で使用される。
【0116】
印刷インクはまた、例えば所望量の水の中で、それぞれの成分を一緒に混合することにより、慣用の方法で製造することができる。
【0117】
既に述べたように、用途の性質に応じて、例えば印刷インクの粘度または他の物性、特に、問題の物質に対する印刷インクの親和性に影響を与えるそれらの特性が、それに沿って適合されることが必要である。
【0118】
印刷インクはまた、例えば、画像が形成される基材に向けて液滴の形態で小さな開口部から印刷インクが絞り出される種類の記録システムでの使用に好適である。好適な基材は、例えば、本発明に係る方法で予め処理された織物繊維材料、紙、プラスチックまたはアルミ箔である。好適な記録システムは、例えば、市販のインクジェットプリンターである。
【0119】
水性印刷インクが使用される印刷方法が好ましい。
【0120】
非対称キナクリドン(b)が1,10−ジメチルキナクリドンであるものを包含する、本発明の混合顔料は、また、加算的なまたは減算的な色生成の双方のための、色フィルター用の着色剤として好適である。
【0121】
非対称キナクリドン(b)が1,10−ジメチルキナクリドンであるものを包含する、本発明に係る混合顔料は、例えば、プラスチック用途において、卓越した彩色特性およびレオロジー特性、高度の色濃度、分散の容易さ、高い温度安定性、ならびに、例えば、塗料およびインク用途において、高い透明性で特徴付けられる。
【0122】
以下の実施例は、本発明をより詳細に例証する。それらは、本発明をいかなる形でも、限定するものではない。本発明は、特定の実施例の改変および修正の全てを包含するものであり、それらは本発明の精神および範囲から逸脱するものではない。特記しない限り、温度は℃であり、部は重量部であり、%は重量%に関する。重量部は、リットルに対するキログラムの比における容量部に関連する。
【0123】
実施例1
加圧反応器オートクレーブに、よく乾燥したジメチルスクシニロスクシナート(1,4−シクロヘキサンジオン−2,5−ジ−カルボン酸メチルエステル)30部、アニリン5.6部、p−トルイジン23.6部、メタノール300部および塩酸(35%)0.9部を仕込んだ。オートクレーブを密封し、窒素ガスでフラッシュし、圧力を0kg/cm2のゲージ圧に設定した。混合物を激しく攪拌しながら、オートクレーブ内の温度を15分かけて室温から90℃に上げ、混合物を5時間反応させた。次いで、反応混合物を30℃以下に冷却し、圧力を大気圧に下げた。オートクレーブに、水酸化ナトリウム溶液(50%)40gとm−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム34.6部を入れ、密封した。混合物を10分間攪拌し、オートクレーブ内の温度を、15分かけて、室温から90℃に上げた。次いで、混合物を5時間反応させ、30℃以下に冷却し、ろ過して、全ての固体を除去した。残った溶液を、攪拌しながら、30〜40℃の温度に加熱した。塩酸(35%)18部を滴下し、混合物を30分間この温度で保持した。その後、混合物をろ過し、得られたろ過ケーキを水/メタノール(1/1)混合物と冷水で洗浄し、次いで乾燥して、式(101)、(102)および(103):
【0124】
【化35】

【0125】
の化合物を、HPLCでの相対ピーク面積により確立される72.24:25.86:1.9の比で含む組成物48部が得られた。
【0126】
実施例2
凝縮器と窒素導入管を備えたフラスコに、よく乾燥したジメチルスクシニロスクシナート(1,4−シクロヘキサンジオン−2,5−ジ−カルボン酸メチルエステル)30部、アニリン5.6部、p−トルイジン23.6部、エタノール300部および塩酸(35%)0.9部を入れ、窒素ガスでフラッシュした。混合物を激しく攪拌しながら、温度を15分かけて室温から78℃に上げ、混合物を4時間反応させた。反応混合物を30℃以下に冷却し、次いで、フラスコに水酸化カリウム水溶液(50%)72部とm−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム34.6部を入れた。攪拌しながら、温度を15分かけて78℃に上げ、混合物を5時間反応させた。反応混合物を30℃以下に冷却し、ろ過して、全ての固体を除去した。残った溶液を、攪拌しながら、30〜40℃の温度に加熱した。塩酸(35%)23部を滴下し、混合物を30分間この温度で保持した。その後、混合物をろ過し、得られたろ過ケーキを水/メタノール(1/1)混合物と冷水で洗浄し、次いで乾燥して、式(101)、(102)および(103)の化合物を、HPLCでの相対ピーク面積により確立される72.2:25.9:1.9の比で含む組成物48部が得られた。
【0127】
実施例2A
凝縮器と窒素導入管を備えたフラスコに、よく乾燥したジメチルスクシニロスクシナート(1,4−シクロヘキサンジオン−2,5−ジ−カルボン酸メチルエステル)30部、アニリン7.8部、エタノール300部および塩酸(35%)0.9部を入れ、窒素ガスでフラッシュした。混合物を激しく攪拌しながら、温度を15分かけて室温から78℃に上げ、混合物を2.5時間反応させた。反応混合物を40〜45℃に冷却し、p−トルイジン23.6部を添加し、混合物を2.5時間以上還流した。反応混合物を30℃以下に冷却し、次いで、フラスコに水酸化カリウム水溶液(50%)72部とm−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム34.6部を入れた。攪拌しながら、温度を15分かけて78℃に上げ、混合物を5時間反応させた。反応混合物を30℃以下に冷却し、ろ過して、全ての固体を除去した。残った溶液を、攪拌しながら、30〜40℃の温度に加熱した。塩酸(35%)23部を滴下し、混合物を30分間この温度で保持した。その後、混合物をろ過し、得られたろ過ケーキを水/メタノール(1/1)混合物と冷水で洗浄し、次いで乾燥して、式(101)、(102)および(103)の化合物を、HPLCでの相対ピーク面積により確立される63.6:21.5:4.6の比で含む組成物48部が得られた。
【0128】
実施例2B
凝縮器と窒素導入管を備えたフラスコに、よく乾燥したジメチルスクシニロスクシナート(1,4−シクロヘキサンジオン−2,5−ジ−カルボン酸メチルエステル)30部、p−トルイジン23.6部、エタノール300部および塩酸(35%)0.9部を入れ、窒素ガスでフラッシュした。混合物を激しく攪拌しながら、温度を15分かけて室温から78℃に上げ、混合物を2.5時間反応させた。反応混合物を40〜45℃に冷却し、アニリン7.08部を添加し、混合物を2.5時間以上還流した。反応混合物を30℃以下に冷却し、次いで、フラスコに水酸化カリウム水溶液(50%)72部とm−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム34.6部を入れた。攪拌しながら、温度を15分かけて78℃に上げ、混合物を5時間反応させた。反応混合物を30℃以下に冷却し、ろ過して、全ての固体を除去した。残った溶液を、攪拌しながら、30〜40℃の温度に加熱した。塩酸(35%)23部を滴下し、混合物を30分間この温度で保持した。その後、混合物をろ過し、得られたろ過ケーキを水/メタノール(1/1)混合物と冷水で洗浄し、次いで乾燥して、式(101)、(102)および(103)の化合物を、HPLCでの相対ピーク面積により確立される77.4:3.8:8.7の比で含む組成物48部が得られた。
【0129】
実施例3
実施例1の手順を繰り返したが、触媒として塩酸(35%)の代わりに氷酢酸10部を使用した。式(101)、(102)および(103)の化合物を含む組成物47.8部が、HPLCでの相対ピーク面積により確立される73.04:24.86:2.1の比で得られた。
【0130】
実施例4
実施例1の手順を繰り返したが、触媒として塩酸(35%)の代わりに硫酸(98%)4.5部を使用した。式(101)、(102)および(103)の化合物を含む組成物47.3部が、HPLCでの相対ピーク面積により確立される72.75:25.35:1.9の比で得られた。
【0131】
実施例5〜17
実施例1の手順を繰り返したが、各々の場合、表1の2欄および3欄に記載の量のアニリンおよびp−トルイジンを使用した。式(101)、(102)および(103)の化合物を含む組成物が、各々の場合に得られた。HPLCでの相対ピーク面積により確立される成分の比を、表1の4欄、5欄および6欄に示す。
【0132】
【表1】

【0133】
実施例18
実施例1の手順を繰り返したが、アニリン5.6部およびp−トルイジン23.6部の代わりにアニリン11.8部およびp−クロロアニリン28.7部を使用した。式(104)、(105):
【0134】
【化36】

【0135】
および(103)の化合物を含む組成物49.2部が、HPLCでの相対ピーク面積により確立される54.9:35.0:10.1の比で得られた。
【0136】
実施例19
実施例1の手順を繰り返したが、アニリン5.6部およびp−トルイジン23.6部の代わりにアニリン11.8部およびo−クロロアニリン28.7部を使用した。式(106)、(107):
【0137】
【化37】

【0138】
および(103)の化合物を含む組成物43.3部が、HPLCでの相対ピーク面積により確立される40.7:39.0:20.3の比で得られた。
【0139】
実施例20
実施例2の手順を繰り返したが、アニリン5.6部およびp−トルイジン23.6部の代わりにアニリン11.8部およびp−アニシジン27.63部を使用した。式(108)、(109):
【0140】
【化38】

【0141】
および(103)の化合物を含む組成物46.3部が、HPLCでの相対ピーク面積により確立される56.9:20.4:22.7の比で得られた。
【0142】
実施例21
実施例2の手順を繰り返したが、アニリン5.6部およびp−トルイジン23.6部の代わりにアニリン11.8部およびp−フルオロアニリン25部を使用した。式(110)、(111):
【0143】
【化39】

【0144】
および(103)の化合物を含む組成物47.1部が、HPLCでの相対ピーク面積により確立される45.0:45.3:9.7の比で得られた。
【0145】
実施例22
実施例2の手順を繰り返したが、アニリン5.6部およびp−トルイジン23.6部の代わりにアニリン11.8部、o−クロロアニリン13.5部およびp−アニシジン10.8部を使用した。式(103)、(106)、(107)、(108)、(109)および(112):
【0146】
【化40】

【0147】
の化合物を含む組成物45.1部が得られた。
【0148】
実施例23
実施例2の手順を繰り返したが、アニリン5.6部およびp−トルイジン23.6部の代わりにアニリン11.8部、p−アニシジン13.5部およびp−トルイジン10.8部を使用した。式(101)、(102)、(103)、(108)、(109)および(113):
【0149】
【化41】

【0150】
の化合物を含む組成物45.1部が得られた。
【0151】
実施例24
実施例2の手順を繰り返したが、アニリン5.6部およびp−トルイジン23.6部の代わりにアニリン11.8部、p−アニシジン13.5部およびp−フルオロアニリン10.8部を使用した。式(103)、(108)、(109)、(110)、(111)および(114):
【0152】
【化42】

【0153】
の化合物を含む組成物45.1部が得られた。
【0154】
実施例25
25(85.0%)を含むポリリン酸250部を攪拌容器に量り入れた。次いで、実施例1に従って得られた生成物45部を、攪拌しながら、90℃で加え、混合物を125℃で3時間加熱したところ、その間に閉環が生起した。混合物を110℃に冷却し、水6部を徐々に10分間かけて加えた。その後、混合物を50℃の水750部の中に注ぎ入れ、60℃で1.5時間攪拌した。固体をろ過により収集し、洗浄水が中性になるまで水洗した。得られたプレスケーキ100部を、メタノール170部の中で再スラリー化し、スラリーを耐圧反応器中、約90℃で3時間加熱した。混合物を冷却し、pHを水酸化ナトリウム溶液(50%)で9〜9.5に調整した。固体をろ過により収集し、水洗した。湿潤プレスケーキをオーブン中で乾燥し、そのまま使用した。80℃のオーブン中で乾燥すると、約19部の固溶体が、式(115)、(116)および(117):
【0155】
【化43】

【0156】
の化合物を、HPLCでの相対ピーク面積により確立される69.7:28.1:2.2の比で含んで、収集された。
【0157】
実施例25A
25(85.0%)を含むポリリン酸250部を攪拌容器に量り入れた。次いで、実施例2Aに従って得られた生成物45部を、攪拌しながら、90℃で加え、混合物を125℃で3時間加熱したところ、その間に閉環が生起した。混合物を110℃に冷却し、水6部を徐々に10分間かけて加えた。その後、混合物を50℃の水750部の中に注ぎ入れ、60℃で1.5時間攪拌した。固体をろ過により収集し、洗浄水が中性になるまで水洗した。得られたプレスケーキ100部を、メタノール170部の中で再スラリー化し、スラリーを耐圧反応器中、約90℃で3時間加熱した。混合物を冷却し、pHを水酸化ナトリウム溶液(50%)で9〜9.5に調整した。固体をろ過により収集し、水洗した。湿潤プレスケーキをオーブン中で乾燥し、そのまま使用した。80℃のオーブン中で乾燥すると、約19部の固溶体が、式(115)、(116)および(117)の化合物を、HPLCでの相対ピーク面積により確立される70.3:25.2:4.5の比で含んで、収集された。
【0158】
実施例25B
25(85.0%)を含むポリリン酸250部を攪拌容器に量り入れた。次いで、実施例2Bに従って得られた生成物45部を、攪拌しながら、90℃で加え、混合物を125℃で3時間加熱したところ、その間に閉環が生起した。混合物を110℃に冷却し、水6部を徐々に10分間かけて加えた。その後、混合物を50℃の水750部の中に注ぎ入れ、60℃で1.5時間攪拌した。固体をろ過により収集し、洗浄水が中性になるまで水洗した。得られたプレスケーキ100部を、メタノール170部の中で再スラリー化し、スラリーを耐圧反応器中、約90℃で3時間加熱した。混合物を冷却し、pHを水酸化ナトリウム溶液(50%)で9〜9.5に調整した。固体をろ過により収集し、水洗した。湿潤プレスケーキをオーブン中で乾燥し、そのまま使用した。80℃のオーブン中で乾燥すると、約19部の固溶体が、式(115)、(116)および(117)の化合物を、HPLCでの相対ピーク面積により確立される86.6:4.6:8.9の比で含んで、収集された。
【0159】
実施例26
25(85.0%)を含むポリリン酸250部を攪拌容器に量り入れた。次いで、実施例1に従って得られた生成物45部を、攪拌しながら、90℃で加え、混合物を125℃で3時間加熱したところ、その間に閉環が生起した。混合物を110℃に冷却し、水6部を徐々に10分間かけて加えた。その後、混合物を50℃の水750部の中に注ぎ入れ、60℃で1.5時間攪拌した。固体をろ過により収集し、洗浄水が中性になるまで水洗した。得られたプレスケーキ100部を、エタノール150部、水酸化ナトリウム溶液(50%)15部およびC−33界面活性剤(ココアルキル四級アンモニウム塩、33%溶液)の中で再スラリー化し、スラリーを耐圧反応器中、約120℃で5時間加熱した。混合物を冷却し、固体をろ過により収集し、水洗した。湿潤プレスケーキを80℃のオーブン中で乾燥した。約19部の固溶体が、式(115)、(116)および(117)の化合物を、HPLCでの相対ピーク面積により確立される69.7:28.1:2.2の比で含んで、収集された。
【0160】
実施例27〜39
実施例26の手順を繰り返したが、出発原料として、表1に示した実施例5〜17に従うテレフタル酸の混合物を使用した。約19部の固溶体が、各々の場合に、式(115)、(116)および(117)の化合物を含んで、収集された。HPLCでの相対ピーク面積により確立される成分の比を、表2の3欄、4欄および5欄に記載した。
【0161】
【表2】

【0162】
実施例40
実施例26の手順を繰り返したが、出発原料として、実施例18に従うテレフタル酸の混合物を使用した。約19部の固溶体が、式(118)、(119):
【0163】
【化44】

【0164】
および(117)の化合物を、HPLCでの相対ピーク面積により確立される50.9:36.1:23.0の比で含んで、収集された。
【0165】
実施例41
実施例26の手順を繰り返したが、出発原料として、実施例19に従うテレフタル酸の混合物を使用した。約39部の固溶体が、式(120)、(121):
【0166】
【化45】

【0167】
および(117)の化合物を、HPLCでの相対ピーク面積により確立される42.3:37.2:20.5の比で含んで、収集された。
【0168】
実施例42
実施例26の手順を繰り返したが、出発原料として、実施例20に従うテレフタル酸の混合物を使用した。約29部の固溶体が、式(122)、(123):
【0169】
【化46】

【0170】
および(117)の化合物を、HPLCでの相対ピーク面積により確立される52.1:25.7:22.2の比で含んで、収集された。
【0171】
実施例43
実施例26の手順を繰り返したが、出発原料として、実施例21に従うテレフタル酸の混合物を使用した。約39部の固溶体が、式(124)、(125):
【0172】
【化47】

【0173】
および(117)の化合物を、HPLCでの相対ピーク面積により確立される44.9:43.1:12の比で含んで、収集された。
【0174】
実施例44
実施例26の手順を繰り返したが、出発原料として、実施例22に従うテレフタル酸の混合物を使用した。約38部の固溶体が、式(117)、(120)、(121)、(122)、(123)および(126):
【0175】
【化48】

【0176】
の化合物を、HPLCでの相対ピーク面積により確立される8.8:26.2:25.7:25.9:13.4の比で含んで、収集された。
【0177】
実施例45
実施例26の手順を繰り返したが、出発原料として、実施例23に従うテレフタル酸の混合物を使用した。約19部の固溶体が、式(115)、(116)、(117)、(122)、(123)および(127):
【0178】
【化49】

【0179】
の化合物を、HPLCでの相対ピーク面積により確立される39.7:35.3:9.7:9.5:5.8の比で含んで、収集された。
【0180】
実施例46
実施例26の手順を繰り返したが、出発原料として、実施例24に従うテレフタル酸の混合物を使用した。約39部の固溶体が、式(117)、(122)、(123)、(124)、(125)および(128):
【0181】
【化50】

【0182】
の化合物を、HPLCでの相対ピーク面積により確立される13.1:22.8:27.1:30.5:6.5の比で含んで、収集された。
【0183】
応用例
インクジェット用濃縮物の調製
【0184】
実施例47
本発明の方法で製造した顔料を、高速ウルトラトゥラックス(turrax)ミキサーで表3中の成分と混合した。次いで、混合物の一部を、ダイノミル(KDL型スペジアル(Spezial)ミル)に移した。250mlの酸化ジルコニウムビーズ(直径0.3〜0.4mm)を、600gのミルベースと共に粉砕室に加え、4500rpmで4時間分散させた。粉砕中の温度が30℃〜40℃に保たれるように、水冷で調節した。
【0185】
【表3】

【0186】
インクジェット(印刷)用途の標準インクの製造
実施例47に従う濃縮物45.3gを、水170.2g、二官能性アルコールの混合物48g、グリセリン15g、界面活性剤0.5g、およびN−メチルピロリドン21gと混合した。続いて、この混合物をウルトラトゥラックス(turrax)中で10分間混合し、次いで、3000rpm〜8000rpmの間で60分間遠心分離して、大き過ぎる粒子を除去した。遠心分離の後、上澄み分散液をデカンテーションし、さらに55mm径の公称カットオフ0.7μmのワットマンGF/Fグラスフィルターを通して吸引ろ過した。このようにして得られたインクは、インクジェット印刷用途に要求されるような、優れた粒径分布、粘度、界面張力および保存安定性の特性を示した。インクを、慣用の広フォーマット市販インクジェットプリンターに挿入した。
【0187】
【表4】

【0188】
インク組成物での試験印刷物は、高い色濃度と輝度で注目される。
【0189】
プラスチック中での安定性評価
【0190】
実施例48
材料は、高密度ポリエチレンを用いて、プラスチックバッグ中で、手で混合し、振盪した。濃度は、マストーンに対して0.10%であった。材料は、二重経路での200℃のレイストリッツ(Leistritz)押出機で混合した。熱安定性は、200、240、260、280および300℃での標準的な5分間の滞留時間を用いて、アルブルグ(Arburg)射出成形機で評価した。
【0191】
【表5】

【0192】
実施例48は、本発明の赤色が、標準的C.I.ピグメントレッド122よりも、高い色安定性を有することを示す。
【0193】
一般的トレードセール塗料系
【0194】
実施例49
磨砕プレミックス
ガラス製ビーカーに、プロピレングリコール441.67g、脱イオン水201.72g、アルコレックS(Alcolec S)(American Lecthin Company, Danbury Conn.製)55.12gおよびIGEPAL CO−530(GAF Chemicals, Wayne N.J.製)100.68gを入れ、1時間磨砕して、磨砕ベースプレミックスを形成した。
【0195】
ミルベース
プレミックス79.50gを、8オンスのガラス瓶に、本発明の顔料10g、タルク10gおよびガラスビーズ100gと共に入れ、スカンデックス(Skandex)ブレンダーで90分間振盪して、着色剤ミルベースを形成した。
【0196】
レットダウン調合物
ミルベース1gとつや無し水性ラテックス50gを混合して、パステル調配合物を形成した。ミルベース5gとつや無し水性ラテックス50gを混合して、濃色調配合物を形成した。
【0197】
【表6】

【0198】
実施例49の色比較は、標準に比較して、本発明の赤色が高い色濃度であることを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の式(1):
【化1】


の対称キナクリドン、
(b)少なくとも1種の式(2):
【化2】


(式中、R1とR2との少なくとも一つは、R3とR4との各々とは異なり、および/または
1とR2との位置の少なくとも一つは、R3とR4との位置の各々とは異なる)
の非対称キナクリドンならびに
(c)少なくとも1種の式(3):
【化3】


の対称キナクリドン
(式中、R1、R2、R3およびR4は、各々互いに独立に、水素、非置換もしくはハロゲンで置換されたC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、カルバモイル、N−C1〜C4アルキルカルバモイル、N,N−ジ−C1〜C4アルキルカルバモイル、N,N−ジ−C1〜C4アルキルアミノ、カルボキシまたはニトロであるが、但し、非対称b)キナクリドンは1,10−ジメチルキナクリドンまたは1,10−ジクロロキナクリドンではない)
を含む、キナクリドン顔料組成物。
【請求項2】
1、R2、R3およびR4が、各々互いに独立に、水素、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、カルバモイル、N−C1〜C4アルキルカルバモイル、N,N−ジ−C1〜C4アルキルカルバモイルまたはN,N−ジ−C1〜C4アルキルアミノを表す、請求項1記載のキナクリドン顔料組成物。
【請求項3】
(a)少なくとも1種の式(1a):
【化4】


の対称キナクリドン、
(b)少なくとも1種の式(2a):
【化5】


の非対称キナクリドンおよび
(c)少なくとも1種の式(3a):
【化6】


の対称キナクリドン
(式中、R1およびR3は、各々互いに独立に、水素、非置換もしくはハロゲンで置換されたC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、カルバモイル、N−C1〜C4アルキルカルバモイル、N,N−ジ−C1〜C4アルキルカルバモイル、N,N−ジ−C1〜C4アルキルアミノ、カルボキシまたはニトロであり、R1はR3とは異なりおよび/または
1の位置は、R3の位置とは異なる)
を含む、キナクリドン顔料組成物。
【請求項4】
1が、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、カルバモイル、N−C1〜C4アルキルカルバモイル、N,N−ジ−C1〜C4アルキルカルバモイル、N,N−ジ−C1〜C4アルキルアミノ、トリフルオロメチル、カルボキシまたはニトロであり、R3が水素である、請求項2記載のキナクリドン顔料組成物。
【請求項5】
組成物中の式(1)、(2)および(3)の成分の全重量に基づいて、少なくとも1種の式(1)の対称成分0.2〜99重量%、少なくとも1種の式(3)の対称成分0.2〜99重量%、および少なくとも1種の式(2)の非対称成分0.1〜50重量%を含む、請求項1記載のキナクリドン顔料組成物。
【請求項6】
(a)少なくとも1種の式(1):
【化7】


の対称キナクリドン、
(b)少なくとも1種の式(2):
【化8】


の非対称キナクリドンおよび
(c)少なくとも1種の式(3):
【化9】


の対称キナクリドン
(式中、R1、R2、R3およびR4は、各々互いに独立に、水素、非置換もしくはハロゲンで置換されたC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ハロゲン、カルバモイル、N−C1〜C4アルキルカルバモイル、N,N−ジ−C1〜C4アルキルカルバモイル、N,N−ジ−C1〜C4アルキルアミノ、カルボキシまたはニトロであり、R1とR2との少なくとも一つは、R3とR4の各々とは異なり、および/または
1とR2の位置の少なくとも一つは、R3とR4の位置の各々とは異なる)
を含む、キナクリドン組成物の製造方法であって、
(i)式(4):
【化10】


(式中、R5およびR6は、各々互いに独立に、C1〜C4アルキルである)
の化合物を、少なくとも2倍モル量の式(5)および(6):
【化11】


のアミンの混合物と、式(5)および(6)のアミンを同時にまたは逐次に添加して反応させて、少なくとも1種の式(7):
【化12】


の化合物、
少なくとも1種の式(8):
【化13】


の化合物、および
少なくとも1種の式(9):
【化14】


の化合物を含む組成物を生じ、
(ii)工程(i)に従って得られた組成物を、単離してまたは単離せずに、酸化および加水分解して、少なくとも1種の式(10):
【化15】


の化合物、
少なくとも1種の式(11):
【化16】


の化合物、および
少なくとも1種の式(12):
【化17】


の化合物を含む組成物を生じ、そして、
(iii)工程(ii)に従って得られた組成物を環化して、請求項1に記載の、
(a)少なくとも1種の式(1)の対称キナクリドン、
(b)少なくとも1種の式(2)の非対称キナクリドン、および
(c)少なくとも1種の式(3)の対称キナクリドン
(式中、R1、R2、R3およびR4は、請求項1に定義されたとおりであり、R1とR2との少なくとも一つは、R3とR4の各々とは異なり、および/または
1とR2の位置の少なくとも一つは、R3とR4の位置の各々とは異なる)
を含む組成物を生じる、製造方法。
【請求項7】
工程(ii)に従う加水分解および工程(iii)に従う環化が、工程(ii)に従う酸化の前に行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式(4)の化合物がジメチルスクシニロスクシナートである、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
式(5)および(6)のアミンが、アニリン、p−クロロアニリン、o−クロロアニリン、p−フルオロアニリン、o−フルオロアニリン、p−トルイジン、o−トルイジン、p−アニシジン、o−アニシジン、m−アニシジン、p−ジメチルアミノアニリン、および3−クロロ−4−メチルアニリンよりなる群から選択される、請求項6〜8のいずれか一に記載の方法。
【請求項10】
アニリンが式(5)のアニリンとして使用され、p−クロロアニリン、o−クロロアニリン、p−フルオロアニリン、p−トルイジン、p−アニシジンまたはp−ジメチルアミノアニリンが式(6)のアミンとして使用される、請求項6〜9のいずれか一に記載の方法。
【請求項11】
式(5)のアミンが、反応混合物中の式(5)および(6)のアミンの全重量に基づいて1〜70重量%の量で適用され、好ましくは、式(5)のアミンが、反応混合物中の式(5)および(6)のアミンの全重量に基づいて1〜45重量%の量で適用され、また、より好ましくは、式(5)のアミンが、反応混合物中の式(5)および(6)のアミンの全重量に基づいて1〜30重量%の量で適用される、請求項6〜10のいずれか一に記載の方法。
【請求項12】
非対称キナクリドン(b)が1,10−ジメチルキナクリドンであるものを包含する請求項1〜5のいずれか一に記載のキナクリドン組成物の着色有効量を、着色すべき高分子量有機材料またはインクジェットインクに加える工程を含む、高分子量有機材料またはインクジェットインクの着色方法。
【請求項13】
請求項3に記載のキナクリドン組成物の着色有効量を着色すべき該インクジェットに加える工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
高分子量有機材料がプラスチック、樹脂、コーティング材料、印刷インクまたは電子写真用トナーもしくは現像剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれか一に記載のキナクリドン組成物を含有する、インクジェットインク、印刷インクまたは電子写真用トナーもしくは現像剤。

【公表番号】特表2007−500254(P2007−500254A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520823(P2006−520823)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051430
【国際公開番号】WO2005/014728
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】