説明

非常用空気圧加圧装置を備える鉄道車両及び鉄道車両における空気管の加圧方法

【課題】空気圧縮機が故障して編成を直通する空気管の圧力が低下した場合であっても、当該鉄道車両が単独で空気管を加圧してブレーキを緩解し、待避線まで移動可能にする。
【解決手段】空気圧縮機10が故障した場合、空気管加圧手段200aを構成する第1コック170aを開放して非常用空気タンク160に蓄圧される圧力空気を第1空気管100に供給することによって、第1空気管100を加圧する。第1空気管100の圧力回復によって制御弁70が動作してブレーキを緩解するので、車両500は、救援車両を必要とせず、その後単独で待避線まで徐行運転にて移動可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気ブレーキを備える鉄道車両であって、編成に引き通される空気管を加圧する空気圧縮機とは別に非常用に空気管を加圧する装置を備える鉄道車両、及び鉄道車両における空気管の加圧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両を減速又は停止させるためのブレーキは、空気ブレーキと電気式ブレーキに大別される。空気ブレーキは、車両を走行可能に支持する台車に備えられるブレーキシリンダ(空気シリンダ)に、予め圧力空気が蓄えられた補助空気タンクから圧力空気を送り込み、ブレーキシリンダを動作させて、ブレーキシリンダにブレーキテコ等のリンクを介して連結した制輪子を車輪に押し当て車両を摩擦力によって減速又は停止させる方式である。一方、電気ブレーキは、電車の主電動機が電力を供給されることなく回転しているときに発電機として動作させて、生じた電力を車両に搭載している負荷抵抗器に流し、熱エネルギに変換してブレーキ力を得る方式である。また、電気ブレーキとしては、生じた電力を回生して架線に戻す或いはバッテリ等に蓄電する方式もある。
【0003】
空気ブレーキは、主に、複数の車両を連結して組成された編成に渡って引き通される空気管と、この空気管に接続される制御弁と、この制御弁に接続されるブレーキシリンダとから構成される。乗務員室に備えられるハンドル(マスコン等)を操作することによるブレーキ信号(電気信号)は、ハンドルと制御弁とを接続する指令線(電線)を介して制御弁に伝達され、制御弁はブレーキ信号に見合った空気圧でブレーキシリンダを動作させてブレーキ力を得る。この電気指令式空気ブレーキは、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−306272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
空気圧縮機が故障した場合、編成に引き通される空気管内の空気圧力を所定の圧力に維持できないため、鉄道車両が必要とするブレーキ力を得ることができず、安全が損なわれる可能性がある。このため、空気管内の空気を加圧する空気圧縮機が故障して、空気管内の圧力が所定の圧力より低下すると、自動的に非常ブレーキが作動して当該鉄道車両を停車させていた。複数の空気圧縮機を搭載する長い編成の鉄道車両であれば、故障した空気圧縮機が停止した場合であっても、他の空気圧縮機の稼働率を高めて空気管内の圧力を所定の圧力に維持できるため、直ちに非常ブレーキが作動して運行を停止する事態になることは少ないと考えられる。しかしながら、1台の空気圧縮機を搭載する短い編成の鉄道車両の場合、空気圧縮機の故障に起因して空気管の圧力が低下したときには、非常ブレーキにより緊急に停車して、本線上に立ち往生するおそれがあった。
【0006】
従来、空気圧縮機の故障によって本線上で立ち往生した当該鉄道車両を待避線まで回送する場合、救援車両を当該鉄道車両に連結した後、救援車両の空気管と当該鉄道車両の空気管とを接続管(ブレーキホース)で接続し、その後、救援車両から当該車両の空気管に圧力空気を供給して当該鉄道車両の空気管内の空気圧力を所定の圧力まで高めて非常ブレーキを解除した後、救援車両が当該車両を牽引して本線から退避線まで回送していた。救援車両が到着して退避線に回送するまでの間、本線上で立ち往生した当該鉄道車両は他の鉄道車両の運行の妨げとなり、当該鉄道車両のみならず他の鉄道車両の運行ダイヤまで大きく乱れる原因となっている。
【0007】
そこで、空気圧縮機が故障して空気管の圧力が低下した場合、当該車両が単独で退避線まで移動するのを可能にするために、空気管内を加圧して非常ブレーキを緩解する点において改善すべき課題がある。
【0008】
本発明の目的は、空気圧縮機の故障に起因して空気管の圧力が低下して非常ブレーキが作動した場合に、空気管を加圧して非常ブレーキを緩解できる手段を備え、救援車両の到着を待つことなく単独でも退避線まで移動可能な鉄道車両、及び鉄道車両における第1空気管の加圧方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記目的は、編成全体に渡って引き通される第1空気管と、前記第1空気管に高圧空気を供給する空気圧縮機と、を備える鉄道車両において、前記空気圧縮機とは別に、前記第1空気管を加圧する空気管加圧手段を備えること、を特徴とする鉄道車両によって達成できる。
【0010】
更に、本発明によれば、上記目的は、編成全体に渡って引き通される第1空気管と、前記第1空気管に高圧空気を供給する空気圧縮機と、空気動作する補助機器と、前記第1空気管に接続されるとともに前記補助機器に圧力空気を供給する圧力空気補助供給系とを備え、前記圧力空気補助供給系は、高圧空気を吐出する補助空気圧縮機と、前記補助空気圧縮機と前記補助機器とを接続し前記補助空気圧縮機からの前記高圧空気を前記補助機器に供給する空気管と、前記空気管と前記第1空気管とを接続する第2空気管と、前記第2空気管に設けられており前記第1空気管から前記空気管への圧力空気の流れを許容する逆止弁とを備えている鉄道車両であって、前記鉄道車両は更に、前記空気圧縮機とは別に、前記第1空気管を加圧する空気管加圧手段を備えており、前記空気管加圧手段は、前記圧力空気補助供給系において、前記逆止弁を迂回する第2バイパス管と、前記第2バイパス管に設けられた第2コックとを備えることによって構成されていること、を特徴とする鉄道車両によって達成できる。
【0011】
また上記目的は、編成全体に渡って引き通される第1空気管と、前記第1空気管に高圧空気を供給する空気圧縮機と、を備える鉄道車両における第1空気管の加圧方法において、
前記鉄道車両は、前記空気圧縮機とは別に空気管加圧手段を備えており、前記空気管加圧手段は前記第1空気管に接続される第1バイパス管と、前記第1バイパス管に備えられる逆止弁と、空気タンクと、第1コックと、を備えており、前記鉄道車両は、更に、前記第1空気管と圧力空気によって動作する補助機器とに接続される第3空気管と、前記第3空気管に前記第1空気管への接続側から順に配設された第3コックと、空気タンクと、を備えており、まず、前記第3コックを閉鎖し、次に、前記第1コックを開放すること、を特徴とする鉄道車両における第1空気管の加圧方法によって達成できる。
【0012】
また上記目的は、編成全体に渡って引き通される第1空気管と、前記第1空気管に高圧空気を供給する空気圧縮機と、空気動作する補助機器と、前記補助機器に圧力空気を供給する圧力空気補助供給系と、を備えた鉄道車両における第1空気管の加圧方法において、
前記圧力空気補助供給系は、高圧空気を吐出する補助空気圧縮機と、前記補助空気圧縮機と前記補助機器とを接続する空気管と、前記空気管と前記第1空気管とを接続する第2空気管と、前記第2空気管に設けられており前記第1空気管から前記空気管への圧力空気の流れを許容する逆止弁と、を備えており、前記鉄道車両は、更に、前記空気圧縮機とは別の前記第1空気管を加圧する空気管加圧手段と、前記第1空気管と圧力空気によって動作する別の補助機器とに接続される第3空気管と、前記第3空気管に前記第1空気管への接続側から順に配設された第3コックと、空気タンクとを備えており、前記空気管加圧手段は、前記圧力空気補助供給系において前記逆止弁を迂回する第2バイパス管と、前記第2バイパス管に設けられた第2コックとから構成されており、まず、前記第3コックを閉鎖した後、前記第2コックを開放し、次に、前記補助空気圧縮機を起動すること、を特徴とする鉄道車両における第1空気管の加圧方法によって達成できる。
【0013】
また上記目的は、編成全体に渡って引き通される第1空気管と、前記第1空気管に高圧空気を供給する空気圧縮機と、空気動作する補助機器と、前記補助機器に圧力空気を供給する圧力空気補助供給系と、を備えた鉄道車両において、前記圧力空気補助供給系は、高圧空気を吐出する補助空気圧縮機と、前記補助空気圧縮機と前記補助機器とを接続する空気管と、前記空気管と前記第1空気管とを接続する第2空気管と、前記第2空気管に設けられており前記第1空気管から前記空気管への圧力空気の流れを許容する逆止弁と、から構成されており、前記鉄道車両は、更に、前記空気圧縮機とは別の前記第1空気管を加圧する空気管加圧手段と、前記第1空気管と圧力空気によって動作する補助機器とを接続する第3空気管と、前記第3空気管に前記第1空気管への接続側から順に配設された第3電磁バルブと、空気タンクと、を備えており、前記空気管加圧手段は、前記圧力空気補助供給系において前記逆止弁を迂回する第2バイパス管と、前記第2バイパス管に設けられた第2電磁バルブと、前記第1空気管に接続する圧力スイッチと、前記圧力スイッチに接続する制御装置と、前記第2電磁バルブおよび前記第3電磁バルブの開閉動作を指令するとともに、前記補助圧縮機の運転を制御する前記制御装置と、から構成されていること、
を特徴とする鉄道車両によって達成できる。
【0014】
また上記目的は、編成全体に渡って引き通される第1空気管と、前記第1空気管に高圧空気を供給する空気圧縮機と、空気動作する補助機器と、前記補助機器に圧力空気を供給する圧力空気補助供給系と、を備えた鉄道車両における第1空気管の加圧方法において、前記圧力空気補助供給系は、高圧空気を吐出する補助空気圧縮機と、前記補助空気圧縮機と前記補助機器とを接続する空気管と、前記空気管と前記第1空気管とを接続する第2空気管と、前記第2空気管に設けられており前記第1空気管から前記空気管への圧力空気のみの流れを許容する逆止弁と、から構成されており、前記鉄道車両は、更に、前記空気圧縮機とは別の前記第1空気管を加圧する空気管加圧手段と、前記第1空気管と圧力空気によって動作する補助機器とに接続される第3空気管と、前記第3空気管に前記第1空気管への接続側から順に配設された第3電磁バルブと、空気タンクと、を備えており、前記空気管加圧手段は、前記圧力空気補助供給系において前記逆止弁を迂回する第2バイパス管と、前記第2バイパス管に設けられた第2電磁バルブと、前記第1空気管に接続する圧力スイッチと、前記圧力スイッチからの出力を受信するとともに、前記第2電磁バルブおよび前記第3電磁バルブの開閉動作および前記補助空気圧縮機の運転を指令する制御装置と、から構成されており、前記圧力スイッチは、第1空気管の圧力低下情報を検知することに応じて、当該圧力低下情報を前記制御装置へ伝達し、前記制御装置は、前記圧力低下情報を受け取ることに応じて、前記第3電磁バルブを閉じた後に、前記第2電磁バルブを開放し、さらに、前記補助空気圧縮機を運転する制御を行うこと、を特徴とする鉄道車両における第1空気管の加圧方法によって達成できる。
【0015】
また上記目的は、編成全体に渡って引き通される第1空気管と、前記第1空気管に高圧空気を供給する空気圧縮機と、空気動作する補助機器と、を備えた鉄道車両において、前記鉄道車両は、前記空気圧縮機とは別の前記第1空気管を加圧する空気管加圧手段と、前記第1空気管と前記補助機器とを接続する第3空気管と、前記第3空気管に前記第1空気管への接続側から順に配設された第3電磁バルブと、空気タンクとを備えており、前記空気管加圧手段は、前記第1空気管に接続される第1バイパス管と、前記第1バイパス管と前記第1空気管との一方の接続部から順に配設された逆止弁と、空気タンクと、第1電磁弁と、前記第1空気管に接続する圧力スイッチと、前記圧力スイッチに接続されるとともに前記第1電磁バルブおよび前記第3電磁バルブの開閉動作を指令する制御装置と、から構成されていること、を特徴とする鉄道車両によって達成できる。
【0016】
更に上記目的は、編成全体に渡って引き通される第1空気管と、前記第1空気管に高圧空気を供給する空気圧縮機と、空気動作する補助機器と、を備えた鉄道車両における第1空気管の加圧方法において、前記鉄道車両は、前記空気圧縮機とは別の前記第1空気管を加圧する空気管加圧手段と、前記第1空気管と前記補助機器とを接続する第3空気管と、前記第3空気管に前記第1空気管への接続側から順に配設された第3電磁バルブと、空気タンクとを備えており、前記空気管加圧手段は、前記第1空気管に接続される第1バイパス管と、前記第1バイパス管と前記第1空気管との一方の接続部から順に配設された逆止弁と、空気タンクと、第1電磁弁と、前記第1空気管に接続する圧力スイッチと、前記圧力スイッチに接続されるとともに前記第1電磁バルブおよび前記第3電磁バルブの開閉動作を指令する制御装置と、から構成されており、前記圧力スイッチは、第1空気管の圧力低下情報を検知することに応じて、当該圧力低下情報を前記制御装置へ伝達し、前記制御装置は、前記圧力低下情報を受け取ることに応じて、前記第3電磁バルブを閉じた後に、前記第1電磁バルブを開放する制御を行うこと、を特徴とする鉄道車両における第1空気管の加圧方法によって達成できる。
【0017】
更にまた、上記目的は、編成全体に渡って引き通される第1空気管と、前記第1空気管に高圧空気を供給する空気圧縮機と、空気動作する補助機器と、前記第1空気管に接続されるとともに前記補助機器に圧力空気を供給する圧力空気補助供給系とを備え、前記圧力空気補助供給系は、高圧空気を吐出する補助空気圧縮機と、前記補助空気圧縮機と前記補助機器とを接続し前記補助空気圧縮機からの前記高圧空気を前記補助機器に供給する空気管と、前記空気管と前記第1空気管とを接続する第2空気管と、前記第2空気管に設けられており前記第1空気管から前記空気管への圧力空気のみの流れを許容する逆止弁とを備えており、更に、前記空気圧縮機とは別に、前記第1空気管を加圧する空気管加圧手段を備えており、前記空気管加圧手段は、前記圧力空気補助供給系において、更に前記逆止弁を迂回する第2バイパス管と、前記第2バイパス管に設けられた第2コックとを備えることによって構成されており、前記第1空気管と圧力空気によって動作する別の補助機器とに接続される第3空気管と、前記第3空気管に前記第1空気管への接続側から順に配設された第3コックと、空気タンクとを備えている、鉄道車両における第1空気管の加圧方法であって、まず、前記第3コックを閉鎖し、次に、前記第2コックを開放し、次に、前記補助空気圧縮機を起動すること、を特徴とする鉄道車両における第1空気管の加圧方法によって達成できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明による上記構成を備える鉄道車両、又は鉄道車両における手順を特定した空気管の加圧方法によれば、空気圧縮機が故障して第1空気管の圧力が低下した場合であっても、高圧空気を第1空気管内に導入して、当該鉄道車両が単独で第1空気管を加圧して非常ブレーキを緩解することができるとともに、待避線まで移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、電気指令式空気ブレーキを備える鉄道車両であって、空気圧縮機とは別に空気管加圧手段を備えた鉄道車両の空気配管系統図である。
【図2】図2は、空気指令式空気ブレーキを備える鉄道車両であって、空気圧縮機とは別に空気管加圧手段を備えた鉄道車両の空気配管系統図である。
【図3】図3は、図1に示される鉄道車両に備えられる空気管加圧手段を構成するコックを乗務員室内に配設した鉄道車両の空気管系統図である。
【図4】図4は、電気指令式空気ブレーキを備える鉄道車両であって、空気圧縮機とは別に、他の空気管加圧手段を備えた鉄道車両の空気配管系統図である。
【図5】図5は、図4に示される鉄道車両に備えられる他の空気管加圧手段を構成するコックを乗務員室内に配設した鉄道車両の空気管系統図である。
【図6】図6は、図1に示される鉄道車両であって、編成に引き通される空気管と、空気動作する補助機器への圧力空気を畜圧する補助空気タンクとを接続する空気管にコックを備えた鉄道車両の空気配管系統図である。
【図7】図7は、図4に示される鉄道車両であって、編成に引き通される空気管と、空気動作する補助機器への圧力空気を畜圧する補助空気タンクとを接続する空気管にコックを備えた鉄道車両の空気配管系統図である。
【図8】図8は、図7に示される鉄道車両であって、鉄道車両に備えられるコックに電気指令によって開閉動作する電磁バルブを採用するとともに、これら電磁バルブの開閉指令と補助空気圧縮機の運転指令を判断する制御装置を備えた鉄道車両の配線系統図である。
【図9】図9は、図6に示される鉄道車両であって、鉄道車両に備えられるコックに電気指令によって開閉動作する電磁バルブを採用するとともに、これら電磁バルブの開閉を制御する制御装置を備えた鉄道車両の配線系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明による空気管加圧手段を備える鉄道車両及び鉄道車両における第1空気管の加圧方法の実施例を説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明による鉄道車両の一実施例であって、当該鉄道車両は電気指令式空気ブレーキを備えるとともに、空気圧縮機とは別に空気管加圧手段を備えており、そうした鉄道車両の空気配管系統図である。
【0022】
本発明による鉄道車両500は、空気管100(第1空気管)に接続する圧力調整装置30と、圧力調整装置30に接続する元空気タンク20と、元空気タンク20に接続する空気圧縮機10と、を備えている。空気圧縮機10は、元空気タンク20と圧力調整装置30を介して空気管100に高圧空気を供給する機器であり、空気ブレーキが必要とする圧力空気と、後述する空気動作する補助機器320の動力源となる圧力空気を作り出す。空気圧縮機10は、空気圧縮機10に付属する調圧器(図示なし)が元空気タンク20内の圧力(以下、簡単のため、「元空気タンク20の圧力」という。「空気管100の圧力」についても同様。)を検知して、元空気タンク20の圧力が所定の圧力(例えば、880kPa(9kgf/cm2))を維持するように間欠運転される。元空気タンク20は、空気圧縮機10の運転に起因する空気管内の圧力脈動を抑制するために備えられる。空気管100の圧力は、元空気タンク20に接続される圧力調整装置30によって780kPa(8kgf/cm2))前後に維持される。
【0023】
空気管100は、鉄道車両500と鉄道車両500との連結部において、接続管110を介して空気管100同士が接続されており、鉄道車両500からなる編成全体に渡って引き通されている。空気管100は、元ダメ管、メインリザーバ管(MR管)などと称される場合がある。
【0024】
空気管100に空気配管を介して制御弁70が接続され、制御弁70にはブレーキシリンダ80が接続される。制御弁70には、運転席に設けられるハンドル(マスコン等)40からのブレーキ指令を伝える指令線45と、空気管100に空気配管を介して接続される圧力スイッチ55からの指令線46と、が接続されている。制御弁70は、ハンドル40から発せられるブレーキ指令に基づいて、ブレーキシリンダ80を制御する。また、圧力スイッチ55は、空気管100の圧力が所定の圧力より低くなった場合にこれを検知して、制御弁70に対して非常ブレーキ指令を発する。
【0025】
鉄道車両500の乗務員室には、空気配管を介して空気管100に接続される圧力計50が配設されている。鉄道車両500には、空気管100から分岐する空気管104(第3空気管)と、空気管104に接続する補助空気タンク360と、補助空気タンク360に接続する補助機器320(制御機器300とは別の補助機器)が備えられる。補助機器320は、警笛、鉄道車両500の長手方向の両端部を支持する台車の上部に備えられる空気バネ、側引戸の空気動作式ドアエンジン、ブレーキ制御装置など圧力空気で動作する機器である。
【0026】
一方、鉄道車両500には、補助空気圧縮機180が備えられており、補助空気圧縮機180に接続する空気管106を介して、空気動作する保護接地スイッチ(図示なし)、遮断器(図示なし)、集電装置310を上下降させる電磁弁(電磁バルブ)などの空気動作をする補助機器としての制御機器300へ高圧空気を供給する。空気管106と空気管100とは空気管108(第2空気管)で接続されており、空気管108には逆止弁150が備えられる。この逆止弁150は、空気管100から空気管106への圧力空気の流れのみを許容する。補助空気圧縮機180、空気管106、空気管108(第2空気管)及び逆止弁150は、鉄道車両500において、制御機器300への圧力空気を供給するための圧力空気補助供給系を構成している。
【0027】
本発明による鉄道車両500は、上記した構成に加えて、空気圧縮機10とは別に、空気管100を加圧できる空気管加圧手段200aを備えている。空気管加圧手段200aは、空気管100から分岐し、再び空気管に合流する空気管102(第1バイパス管)の空気管100との一方の接続部から順に、逆止弁150、非常用空気タンク160、第1コック170aを直列に接続したものである。通常、第1コック170aは閉じられており、非常用空気タンク160の内部には、空気管100から非常用空気タンク160への空気の流れのみを許容する逆止弁150を経由して、空気管100の圧力と同じ圧力の空気が蓄圧される。ハンドル40の操作によって圧力空気を消費することに起因して空気管100の圧力が変化(低下)した場合であっても、第1コック170aを開放しない限り逆止弁150の作用によって、非常用空気タンク160の内部には当該変化前の空気管100の圧力と同程度の圧力空気が蓄圧・維持されている。
【0028】
空気圧縮機10が故障して空気管100の圧力が低下すると、空気管100に接続する圧力スイッチ55が非常ブレーキを制御弁70に指令する。非常ブレーキ指令を受けた制御弁70はブレーキシリンダ80を制御して鉄道車両500を停車させる。本発明による鉄道車両500は、空気管加圧手段200aを備えているので、空気管加圧手段200aを構成する第1コック170aを開放して非常用空気タンク160に蓄圧される圧力空気を空気管100へ供給して、空気管100の圧力を所定の圧力まで高めるとともに、圧力スイッチ55を復位することができる。このため、鉄道車両500は、救援車両を必要とすることなく、単独で非常ブレーキを緩解した後、他の鉄道車両の運行を妨げることのない待避線まで移動し停車させることができるので、当該鉄道車両500の空気圧縮機10の故障に起因する運行ダイヤの乱れを小さくすることができる。
【実施例2】
【0029】
図2は、本発明による鉄道車両の別の実施例であって、空気指令式空気ブレーキを備えるとともに、空気圧縮機とは別に空気管加圧手段を備えた鉄道車両の空気配管系統図である。図1に示した電気指令式空気ブレーキとの相違点のみ記述し、共通点の記述は省略する。
【0030】
空気指令式空気ブレーキを備える鉄道車両510からなる編成は、空気管100と同様に、編成全体に渡ってブレーキ管220が引き通される。ブレーキ管220にはハンドル40と、制御弁70とが、それぞれ空気配管によって接続される。空気管100には、空気管100の側から順に、逆止弁150と、補助空気タンク60とを備える空気管222によって、制御弁70が接続されるとともに、補助空気タンク60には空気管100と同じ圧力の高圧空気が畜圧される。
【0031】
ハンドル40の操作によって、ブレーキ管220の圧力を低下することによって制御弁70にブレーキ指令を伝達し、制御弁70を経て補助空気タンク60に畜圧された高圧空気をブレーキシリンダ80に供給することにより、ブレーキ管220の減圧量に比例したブレーキ力を得る。同様に、ハンドル40の操作により、空気管100の高圧空気をブレーキ管220へ供給すると、ブレーキ管220の圧力が高められ、ブレーキを緩解することができる。
【0032】
空気圧縮機10が故障した場合、空気管100の圧力低下に伴い、ブレーキ管220の圧力も低下する。このため、ブレーキ管220の圧力低下は、ハンドル40のブレーキ操作時と同様に、制御弁70に対するブレーキ指令となるため、鉄道車両510にブレーキが作用して停車する。ブレーキを緩解するためには、空気管100を経由してブレーキ管220を加圧して制御弁70にブレーキ緩解を指令して、ブレーキを緩めなければならないが、空気圧縮機10が故障しているため、ブレーキを緩解することができずに本線上に立ち往生する可能性がある。
【0033】
本発明による鉄道車両510は、空気圧縮機10とは別に、空気管100を加圧できる空気管加圧手段200aを備えている。空気管加圧手段200aは、空気管100から分岐し、再び空気管に合流する空気管102(第1バイパス管)に、逆止弁150、非常用空気タンク160、第1コック170aを直列に接続したものである。
【0034】
空気圧縮機10が故障して空気管100の圧力が低下して非常ブレーキが作用した場合であっても、空気管加圧手段200aを構成する第1コック170aを開放して非常用空気タンク160に蓄圧される圧力空気を空気管100へ供給して、空気管100の圧力を所定の圧力まで高めることができる。空気管100の圧力上昇に伴い、ハンドル40の操作によってブレーキ管220の圧力を高めることができるため、鉄道車両510単独で、非常ブレーキを緩解できる。このため、他の鉄道車両の運行を妨げることのない待避線まで移動できるので、当該鉄道車両510の空気圧縮機10の故障に起因する運行ダイヤの乱れを小さくすることができる。
【実施例3】
【0035】
図3は、図1に示される鉄道車両に備えられる空気管加圧手段を構成するコックを乗務員室内に配設した鉄道車両の空気管系統図である。図3に示す例においては、空気管加圧手段200aを構成する第1コック170aは乗務員室400の内部に備えられている。第1コック170aを乗務員室400内に備えることによって、乗務員は鉄道車両500から車外へ降りることなく第1コック170aを扱うことができるので、速やかに非常ブレーキを緩解して鉄道車両500を待避線まで移動することができる。第1コック170aを乗務員室400内に設けることは、輸送密度があまり大きくない線区で運用される乗務員が1名(例えば、1両編成、或いは2両編成のワンマン運転)の鉄道車両500において特に有効である。
【0036】
なお、図3では乗務員室400は運転手が乗務する部位として記載したが、乗務員室400は車掌のみが乗務する部屋であってもよい。実施例3は図1に示される電気指令式空気ブレーキを備える鉄道車両500の例を記したが、図2に示される空気指令式空気ブレーキを備える鉄道車両510にも適用できる。
【実施例4】
【0037】
図4は、本発明による鉄道車両の更に別の実施例であって、電気指令式空気ブレーキを備えるとともに、空気圧縮機とは別に、他の空気管加圧手段を備えた鉄道車両の空気配管系統図である。空気管加圧手段200bは、補助空気圧縮機180と、これに接続される空気管106と、空気管106と空気管100とを接続する空気管108(第2空気管)と、空気管108に設けられた逆止弁150とを備えて成る図1に示す圧力空気補助供給系において、更に逆止弁150をバイパスする第2バイパス管と、当該第2バイパス管に設けられた第2コック170bを備えることで構成されている。通常、第2コック170bは閉鎖されているため、逆止弁150の作用により、空気管100から当該逆止弁150を通じて空気管106へのみ高圧空気が供給される。
【0038】
空気圧縮機10が故障して空気管100の圧力が低下してブレーキを緩解できない場合、第2コック170bを開放するとともに、補助空気圧縮機180を運転する。補助空気圧縮180によって生成される高圧空気は、空気管106と空気管108を経由して、空気管108に備えられる逆止弁150をバイパスする空気管(第2バイパス管)に備えられる第2コック170bを経て、空気管100に至る。
【0039】
空気圧縮機10が故障して空気管100の圧力が低下して非常ブレーキが作用した場合であっても、空気管加圧手段200bを構成する第2コック170bを開放するとともに補助空気圧縮機180を運転することによって圧力空気を空気管100へ供給して、空気管100の圧力を所定の圧力まで高めることができる。そして、空気管100の圧力の回復によって圧力スイッチ55を復位することができる。このため、鉄道車両500単独で、非常ブレーキを緩解した後、他の鉄道車両の運行を妨げることのない待避線まで移動できるので、当該鉄道車両500の空気圧縮機10の故障に起因する運行ダイヤの乱れを小さくすることができる。実施例4では図1に示される電気指令式空気ブレーキを備える鉄道車両500の例を記したが、図2に示される空気指令式空気ブレーキを備える鉄道車両510にも適用できる。
【実施例5】
【0040】
図5は、図4に示される鉄道車両に備えられる他の空気管加圧手段を構成するコックを乗務員室内に配設した鉄道車両を模式的に示す空気管系統図である。図5に示される例においては、空気管加圧手段200bを構成する第2コック170bは乗務員室400内に備えられている。第2コック170bを乗務員室400内に備えることによって、乗務員は鉄道車両500から車外へ降りることなく第2コック170bを扱うことができ、その操作後、補助空気圧縮機180を運転することができるので、速やかに非常ブレーキを緩解して当該鉄道車両500を待避線まで移動することができる。
【0041】
第2コック170bを乗務員室内に設けることは、輸送密度があまり大きくない線区で運用される乗務員が1名の鉄道車両500において特に有効である。なお、図5では乗務員室400は運転手が乗務する部位として記載したが、乗務員室400は車掌のみが乗務する部屋であってもよい。実施例5は図1に示される電気指令式空気ブレーキを備える鉄道車両500の例を記したが、図2に示される空気指令式空気ブレーキを備える鉄道車両510にも適用できる。
【実施例6】
【0042】
図6は、図1に示される鉄道車両であって、編成に引き通される空気管と、空気動作する補助機器への圧力空気を畜圧する補助空気タンクとを接続する空気管にコックを備えた鉄道車両の空気配管系統図である。空気管加圧手段200aを構成する非常用空気タンク160の容量は小型軽量であることが望ましい。空気管100には空気で動作する補助機器320に安定的に高圧空気を供給するために、空気管100と補助機器320との間に補助空気タンク360が備えられる場合がある。非常用空気タンク160に蓄圧された高圧空気によって空気管100を加圧する場合、空気管100に接続される補助空気タンク360へ圧力空気が流入するため、空気管100の圧力を、非常ブレーキを緩解するために要求される圧力まで高めるには、大きな容量の非常用空気タンク160を備えなければならない。
【0043】
図6に示される鉄道車両500は、空気管100と補助空気タンク360とを接続する空気管104に第3コック170cを備えている。空気圧縮機10が故障した際に、補助空気タンク160で空気管100を加圧する時に、まず、第3コック170cを閉鎖して、次に、空気管加圧手段200aの第1コック170aを開放する。補助空気タンク360への高圧空気の流入を低減又は遮断できるので、少ない圧力空気で空気管100の圧力を非常ブレーキを緩解できる程度まで高めることができる。このため、空気管加圧手段200aを構成する非常用空気タンク160の容量を小さくすることができるとともに、鉄道車両500単独で、非常ブレーキを緩解した後、他の鉄道車両の運行を妨げることのない待避線まで移動できるので、当該鉄道車両500の空気圧縮機10の故障に起因する運行ダイヤの乱れを小さくすることができる。
【0044】
実施例6は図1に示される電気指令式空気ブレーキを備える鉄道車両500の例を記したが、図2に示される空気指令式空気ブレーキを備える鉄道車両510にも適用できる。さらに、図示はしないが第3コック107cを図3に示すように乗務員室400の内部に備えることにより、乗務員は鉄道車両500,510の車外へ降りることなく第3コック170cを閉鎖した後、第1コック170aを開放できるので、当該鉄道車両500,510を速やかに待避線まで移動することができる。
【実施例7】
【0045】
図7は、図4に示される鉄道車両であって、編成に引き通される空気管と、空気動作する補助機器への圧力空気を蓄圧する補助空気タンクとを接続する空気管にコックを備えた鉄道車両の空気配管系統図である。空気圧縮機10が故障した場合に、補助空気圧縮機180によって空気管100を加圧するときに、まず、補助空気タンク360への圧力空気の流入を防止するため第3コック170cを閉鎖する。次に、空気管加圧手段200bの第2コック170bを開放するとともに補助空気圧縮機180を運転することによって、非常ブレーキを緩解できる程度まで空気管100を加圧する。補助空気タンク360への高圧空気の流入を低減又は遮断できるので、短時間で、空気管100の圧力を高めることができる。つまり、空気管加圧手段200bを構成する補助空気圧縮機180の運転時間を小さくすることができる。
【0046】
実施例7は図4に示される電気指令式空気ブレーキを備える鉄道車両500についての例であるが、図2に示される空気指令式空気ブレーキを備える鉄道車両510にも適用できる。さらに、図示はしないが第3コック107cを図5に示すように乗務員室400の内部に備えることにより、乗務員は鉄道車両500,510の車外へ降りることなく第3コック170cを閉鎖した後、第2コック170bを開放するとともに補助空気圧縮機180を運転できるので、当該鉄道車両500,510を速やかに待避線まで移動することができ、運行ダイヤの乱れを小さくできる。
【実施例8】
【0047】
図8は、図7に示される鉄道車両であって、鉄道車両に備えられるコック(第2コック170b、第3コック170c)に電気指令によって開閉動作する電磁バルブを採用するとともに、これら電磁バルブに開閉指令と補助空気圧縮機の運転指令とを指令する制御装置を備えた鉄道車両の配線系統図である。実施例1から実施例7に示した第1コック170a、第2コック170b、第3コック170cは乗務員等が手で扱うハンドルを回動することによって配管の流路を開閉する手動式コックの例を示したが、これら手動式コックに代えて、電気指令によって流路を開閉することができる電磁バルブを採用することもできる。
【0048】
以下に、実施例7に示した第2コック170bと第3コック170cに電磁バルブを採用した実施例8を示す。空気圧縮機10が接続される空気管100の圧力を検知する圧力スイッチ56が接続されており、この圧力スイッチ56と制御装置90とが電気的な出力を伝送する指令線によって接続されている。さらに、制御装置90と、第2電磁バルブ171b(第2コック170bに相当)と第3電磁バルブ171c(第3コック170cに相当)と補助空気圧縮機180とが指令線47,47,47によって接続されている。図示はしないが、制御装置90と乗務員室などに備えられるモニタ装置とを指令線47で接続して、制御装置90からの情報をモニタ装置に表示してもよい(実施例9も同様)。制御装置90には、圧力スイッチ56から空気管100の圧力が低下した情報を受信した際に、各電磁バルブの開閉順序および補助空気圧縮機180の起動タイミングなどの処理手順が予め記憶されている。
【0049】
空気圧縮機10の故障等により、空気管100の圧力が所定の圧力より低下した場合、圧力スイッチ56が空気管100の圧力低下を検知して、空気管100の圧力低下情報を制御装置90へ伝える。この圧力低下情報を受信した制御装置90は、まず、補助空気タンク360への圧力空気の流入を防止するため第3電磁バルブ171cを閉鎖した後、空気管加圧手段200bの第2電磁バルブ171bを開放する。次に、補助空気圧縮機180を起動して、空気管100の圧力を高める。
【0050】
この処理手順によって、非常ブレーキを緩解できる程度まで空気管100を自動的に加圧することができる。補助空気タンク360への高圧空気の流入を低減又は遮断できるので、短時間で、空気管100の圧力を高めることができる。つまり、空気管加圧手段200bを構成する補助空気圧縮機180の運転時間を短くすることができる。なお、制御装置90と圧力スイッチ56などを一纏めにして制御箱95に格納し、鉄道車両500(510)の床下など任意の取付箇所へ取り付けても良い(実施例9も同様)。
【0051】
実施例8(実施例9も同様)は図1に示される電気指令式空気ブレーキを備える鉄道車両500についての例であるが、図2に示される空気指令式空気ブレーキを備える鉄道車両510にも適用できる。また、第2コック170bおよび第3コック170cを第2電磁バルブ171bと第3電磁バルブ171cに置き換えることにより、手動でコックを扱う必要がなくなるので、電磁バルブの設置場所を乗務員室等に限定することなく、任意の設置場所を選定することができる。また、実施例8(実施例9も同様)では空気管100の圧力低下情報を圧力スイッチ56が検知するとともに制御装置90へ圧力低下情報を伝達したが、圧力スイッチ56からの伝達に代えて、乗務員室に備えられるモニタと制御装置90とを指令線47で接続する(図示なし)ことによって、空気管100の圧力低下情報を得た乗務員がモニタを操作して制御装置90に伝達しても良い。
【0052】
空気管100の圧力低下を自動的に圧力スイッチ56で検知するとともに、この圧力低下情報を制御装置90に伝えることによって、制御装置90に予め記憶された処理手順に従って空気管100の圧力を高めることにより、非常ブレーキを緩解することができる。このため、当該鉄道車両500(510)を速やかに待避線まで移動することができ、運行ダイヤの乱れを小さくできる。
【実施例9】
【0053】
図9は、図6に示される鉄道車両であって、鉄道車両に備えられるコックに電気指令によって開閉動作する電磁バルブを採用するとともに、これら電磁バルブの開閉を制御する制御装置を備えた鉄道車両の配線系統図である。
実施例9は、実施例6(図6)に示した第1コック170aと第3コック170cに電磁バルブを採用した例である。
【0054】
空気圧縮機10が接続される空気管100の圧力を検知する圧力スイッチ56が接続されており、この圧力スイッチ56と制御装置90とが電気的な出力を伝送する指令線によって接続されている。さらに、制御装置90と、第1電磁バルブ171a(第1コック170aに相当)と第3電磁バルブ171c(第3コック170cに相当)が指令線47,47によって接続されている。制御装置90には、圧力スイッチ56から空気管100の圧力が低下した情報を受信した際に、各電磁バルブの開閉順序などの処理手順が予め記憶されている。
【0055】
空気圧縮機10の故障等により、空気管100の圧力が所定の圧力より低下した場合、圧力スイッチ56が空気管100の圧力低下を検知して、空気管100の圧力低下情報を制御装置90へ伝える。この圧力低下情報を受信した制御装置90は、まず、補助空気タンク360への圧力空気の流入を防止するため第3電磁バルブ171cを閉鎖した後、空気管加圧手段200aの第1電磁バルブ171aを開放して非常用空気タンク160に畜圧された圧力空気によって空気管100の圧力を高める。この処理手順によって、非常ブレーキを緩解できる程度まで空気管100を自動的に加圧することができる。補助空気タンク360への高圧空気の流入を低減又は遮断できるので、短時間で、空気管100の圧力を高めることができる。
【0056】
空気管100の圧力低下を自動的に圧力スイッチ56で検知するとともに、この圧力低下情報を制御装置90に伝えることによって、制御装置90に予め記憶された処理手順に従って空気管100の圧力を高めることにより、非常ブレーキを緩解することができる。このため、当該鉄道車両500(510)を速やかに待避線まで移動することができ、運行ダイヤの乱れを小さくできる。
【符号の説明】
【0057】
10…空気圧縮機 20…元空気タンク
30…圧力調整装置 40…ハンドル
45,46,47…指令線
50…圧力計 55、56…圧力スイッチ
60…補助空気タンク 70…制御弁(三道弁、三方弁)
80…ブレーキシリンダ
90…制御装置 95…制御箱
100,102,104,106,108、222…空気管
110…ブレーキホース 160…非常用空気タンク
170a,170b,170c…第1〜第3コック
171a,171b,171c…第1〜第3電磁バルブ
180…補助空気圧縮機
200a,200b…空気管加圧手段
220…ブレーキ管
300…制御機器 310…集電装置
320…補助機器 360…補助空気タンク
400…乗務員室 500,510…鉄道車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
編成全体に渡って引き通される第1空気管と、
前記第1空気管に高圧空気を供給する空気圧縮機と、
を備える鉄道車両において、
前記鉄道車両に、前記空気圧縮機とは別に、前記第1空気管を加圧する空気管加圧手段が備えられること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記空気管加圧手段は、
前記第1空気管に接続される第1バイパス管と、
前記第1バイパス管と前記第1空気管との一方の接続部から順に配設されるとともに前記第1バイパス管に備えられた逆止弁と、空気タンクと、第1コックと、を備えていること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項2に記載された鉄道車両において、
前記第1コックが前記鉄道車両の乗務員室の内部に備えられること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
編成全体に渡って引き通される第1空気管と、
前記第1空気管に高圧空気を供給する空気圧縮機と、
空気動作する補助機器と、
前記第1空気管に接続されるとともに前記補助機器に圧力空気を供給する圧力空気補助供給系とを備え、
前記圧力空気補助供給系は、高圧空気を吐出する補助空気圧縮機と、前記補助空気圧縮機と前記補助機器とを接続し前記補助空気圧縮機からの前記高圧空気を前記補助機器に供給する空気管と、前記空気管と前記第1空気管とを接続する第2空気管と、前記第2空気管に設けられるとともに前記第1空気管から前記空気管への圧力空気の流れを許容する逆止弁と、を備えている鉄道車両において、
前記鉄道車両は更に、前記空気圧縮機とは別に、前記第1空気管を加圧する空気管加圧手段を備えており、
前記空気管加圧手段は、前記圧力空気補助供給系において、前記逆止弁を迂回する第2バイパス管と、前記第2バイパス管に設けられた第2コックとを備えること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
請求項4に記載された鉄道車両において、
前記第2コックが前記鉄道車両の乗務員室の内部に備えられること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項6】
請求項5に記載される鉄道車両において、
圧力空気によって動作する補助機器が、第3空気管を介して前記第1空気管に接続されており、
前記第3空気管には、前記第1空気管への接続側から順に、第3コック、空気タンクが備えられていること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項7】
編成全体に渡って引き通される第1空気管と、
前記第1空気管に高圧空気を供給する空気圧縮機と、
を備える鉄道車両における第1空気管の加圧方法において、
前記鉄道車両は、前記空気圧縮機とは別に空気管加圧手段を備えており、前記空気管加圧手段は前記第1空気管に接続される第1バイパス管と、前記第1バイパス管に備えられる逆止弁と、空気タンクと、第1コックと、を備えており、
前記鉄道車両は、更に、前記第1空気管と圧力空気によって動作する補助機器とに接続される第3空気管と、前記第3空気管に前記第1空気管への接続側から順に配設された第3コックと、空気タンクと、を備えており、
まず、前記第3コックを閉鎖し、
次に、前記第1コックを開放すること、
を特徴とする鉄道車両における第1空気管の加圧方法。
【請求項8】
編成全体に渡って引き通される第1空気管と、
前記第1空気管に高圧空気を供給する空気圧縮機と、
空気動作する補助機器と、
前記補助機器に圧力空気を供給する圧力空気補助供給系と、を備えた鉄道車両における第1空気管の加圧方法において、
前記圧力空気補助供給系は、高圧空気を吐出する補助空気圧縮機と、前記補助空気圧縮機と前記補助機器とを接続する空気管と、前記空気管と前記第1空気管とを接続する第2空気管と、前記第2空気管に設けられており前記第1空気管から前記空気管への圧力空気の流れを許容する逆止弁と、を備えており、
前記鉄道車両は、更に、前記空気圧縮機とは別の前記第1空気管を加圧する空気管加圧手段と、前記第1空気管と圧力空気によって動作する別の補助機器とに接続される第3空気管と、前記第3空気管に前記第1空気管への接続側から順に配設された第3コックと、空気タンクとを備えており、
前記空気管加圧手段は、前記圧力空気補助供給系において前記逆止弁を迂回する第2バイパス管と、前記第2バイパス管に設けられた第2コックとから構成されており、
まず、前記第3コックを閉鎖した後、前記第2コックを開放し、
次に、前記補助空気圧縮機を起動すること、
を特徴とする鉄道車両における第1空気管の加圧方法。
【請求項9】
編成全体に渡って引き通される第1空気管と、
前記第1空気管に高圧空気を供給する空気圧縮機と、
空気動作する補助機器と、
前記補助機器に圧力空気を供給する圧力空気補助供給系と、を備えた鉄道車両において、
前記圧力空気補助供給系は、
高圧空気を吐出する補助空気圧縮機と、
前記補助空気圧縮機と前記補助機器とを接続する空気管と、
前記空気管と前記第1空気管とを接続する第2空気管と、
前記第2空気管に設けられており前記第1空気管から前記空気管への圧力空気の流れを許容する逆止弁と、から構成されており、
前記鉄道車両は、
更に、前記空気圧縮機とは別の前記第1空気管を加圧する空気管加圧手段と、
前記第1空気管と圧力空気によって動作する補助機器とを接続する第3空気管と、
前記第3空気管に前記第1空気管への接続側から順に配設された第3電磁バルブと、
空気タンクと、を備えており、
前記空気管加圧手段は、
前記圧力空気補助供給系において前記逆止弁を迂回する第2バイパス管と、
前記第2バイパス管に設けられた第2電磁バルブと、
前記第1空気管に接続する圧力スイッチと、前記圧力スイッチに接続する制御装置と、
前記第2電磁バルブおよび前記第3電磁バルブの開閉動作を指令するとともに、前記補助圧縮機の運転を制御する前記制御装置と、から構成されていること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項10】
編成全体に渡って引き通される第1空気管と、
前記第1空気管に高圧空気を供給する空気圧縮機と、
空気動作する補助機器と、
前記補助機器に圧力空気を供給する圧力空気補助供給系と、を備えた鉄道車両における第1空気管の加圧方法において、
前記圧力空気補助供給系は、
高圧空気を吐出する補助空気圧縮機と、
前記補助空気圧縮機と前記補助機器とを接続する空気管と、
前記空気管と前記第1空気管とを接続する第2空気管と、
前記第2空気管に設けられており前記第1空気管から前記空気管への圧力空気のみの流れを許容する逆止弁と、から構成されており、
前記鉄道車両は、
更に、前記空気圧縮機とは別の前記第1空気管を加圧する空気管加圧手段と、
前記第1空気管と圧力空気によって動作する補助機器とに接続される第3空気管と、
前記第3空気管に前記第1空気管への接続側から順に配設された第3電磁バルブと、
空気タンクと、を備えており、
前記空気管加圧手段は、
前記圧力空気補助供給系において前記逆止弁を迂回する第2バイパス管と、
前記第2バイパス管に設けられた第2電磁バルブと、
前記第1空気管に接続する圧力スイッチと、
前記圧力スイッチからの出力を受信するとともに、前記第2電磁バルブおよび前記第3電磁バルブの開閉動作および前記補助空気圧縮機の運転を指令する制御装置と、から構成されており、
前記圧力スイッチは、第1空気管の圧力低下情報を検知することに応じて、当該圧力低下情報を前記制御装置へ伝達し、
前記制御装置は、前記圧力低下情報を受け取ることに応じて、前記第3電磁バルブを閉じた後に、前記第2電磁バルブを開放し、さらに、前記補助空気圧縮機を運転する制御を行うこと、
を特徴とする鉄道車両における第1空気管の加圧方法。
【請求項11】
編成全体に渡って引き通される第1空気管と、
前記第1空気管に高圧空気を供給する空気圧縮機と、
空気動作する補助機器と、
を備えた鉄道車両において、
前記鉄道車両は、前記空気圧縮機とは別の前記第1空気管を加圧する空気管加圧手段と、前記第1空気管と前記補助機器とを接続する第3空気管と、前記第3空気管に前記第1空気管への接続側から順に配設された第3電磁バルブと、空気タンクとを備えており、
前記空気管加圧手段は、前記第1空気管に接続される第1バイパス管と、
前記第1バイパス管と前記第1空気管との一方の接続部から順に配設された逆止弁と、空気タンクと、第1電磁弁と、前記第1空気管に接続する圧力スイッチと、前記圧力スイッチに接続されるとともに前記第1電磁バルブおよび前記第3電磁バルブの開閉動作を指令する制御装置と、から構成されていること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項12】
編成全体に渡って引き通される第1空気管と、
前記第1空気管に高圧空気を供給する空気圧縮機と、
空気動作する補助機器と、
を備えた鉄道車両における第1空気管の加圧方法において、
前記鉄道車両は、前記空気圧縮機とは別の前記第1空気管を加圧する空気管加圧手段と、前記第1空気管と前記補助機器とを接続する第3空気管と、前記第3空気管に前記第1空気管への接続側から順に配設された第3電磁バルブと、空気タンクとを備えており、
前記空気管加圧手段は、前記第1空気管に接続される第1バイパス管と、
前記第1バイパス管と前記第1空気管との一方の接続部から順に配設された逆止弁と、空気タンクと、第1電磁弁と、前記第1空気管に接続する圧力スイッチと、前記圧力スイッチに接続されるとともに前記第1電磁バルブおよび前記第3電磁バルブの開閉動作を指令する制御装置と、から構成されており、
前記圧力スイッチは、第1空気管の圧力低下情報を検知することに応じて、当該圧力低下情報を前記制御装置へ伝達し、
前記制御装置は、前記圧力低下情報を受け取ることに応じて、前記第3電磁バルブを閉じた後に、前記第1電磁バルブを開放する制御を行うこと、
を特徴とする鉄道車両における第1空気管の加圧方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−245949(P2012−245949A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121500(P2011−121500)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(591146893)九州旅客鉄道株式会社 (18)
【Fターム(参考)】