説明

非接触型データ受送信体

【課題】 非接触型データ受送信体の厚みの増大を抑え、かつ、可撓性に優れるとともに、金属を少なくとも含む物品に接しても、ICチップの作動起電力を十分上回る起電力が誘起されて使用できる非接触型データ受送信体を提供する。
【解決手段】 ベース基材11とその一方の面11aに設けられ互いに接続されたアンテナ12およびICチップ13とからなるインレット14を備えてなる非接触型データ受送信体10において、アンテナ12はICチップ13を介してコイル状をなしており、その両端部12c,12cおよびその近傍領域を除き、アンテナ12およびICチップ13を覆うようにベース基材11上に磁性体層15を配する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency IDentification)用途の情報記録メディアのように、電磁波を媒体として外部から情報を受信し、また外部に情報を送信できるようにした非接触型データ受送信体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触ICタグなどのRFID(Radio Frequency IDentification)用途の情報記録メディアのように、電磁波を媒体として外部から情報を受信し、また、外部に情報を送信できるようにした非接触型データ受送信体が提案されている。
【0003】
非接触型データ受送信体の一例であるICラベルは、リーダ/ライタからの電磁波を受信すると共振作用によりアンテナに起電力が発生し、この起電力によりICラベル内のICチップが起動し、チップ内の情報を信号化し、この信号がICラベルのアンテナから発信される。
ICラベルから発信された信号は、リーダ/ライタのアンテナで受信され、コントローラーを介してデータ処理装置へ送られ、識別等のデータ処理が行われる。
【0004】
これらのICラベルが作動するためには、リーダ/ライタから発信された電磁波がICラベルのアンテナに十分取り込まれて、ICチップの作動起電力以上の起電力が誘導されなければならないが、ICラベルを金属製物品の表面に貼付した場合には、金属製物品の表面では磁束が金属物品の表面に平行になる。このため、ICラベルのアンテナを横切る磁束が減少して誘導起電力が低下するため、ICチップの作動起電力を下回り、ICチップが作動しなくなるという問題があった(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
図7は、ICラベルを金属物品の表面に載置した場合の、磁束の流れを示した模式図である。リーダ/ライタ101から発生した磁束102が金属物品103の表面では平行になるため、金属物品103の表面に載置されたICラベル104のアンテナ105を通過する磁束が減少し、アンテナ105に誘起される起電力が低下するため、ICチップ106が作動しなくなる。
【0006】
そこで、金属物品の上に載置しても、ICチップが作動するようにするために、フェライトコアにアンテナを巻いて、このアンテナの軸心が金属製物品の表面の磁束の方向と平行になるように配置し、アンテナ面を通過する磁束を増大させて、誘導起電力を増大させようとする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
図8は特許文献1の実施の形態によるICタグの斜視図で、角形のフェライトコア115の周囲にアンテナ111を巻き、アンテナ111が巻かれていない部分にはベース基材114を介してフェライトコア115の上にICチップ112とコンデンサ113などが搭載されている。
このICタグの角型のフェライトコア115の平面部(図3の下面)が金属物品の表面に貼付されると、金属物品の表面に平行な磁束がフェライトコア115を通るので、アンテナ111内を直角に通過するため、所要の誘起電圧が発生し、ICチップ112が作動する。
【0008】
一方、アンテナを平面状に形成して、そのアンテナの下面に設けた磁芯部材に磁束を通過させることによって、平面状に形成したアンテナ内に磁束を通過させて、アンテナに誘導起電力を発生させるとともに、磁芯部材の下面に導電部材を設けて、載置する物品からICラベルへの影響を防止しようとする提案がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
図9は特許文献2の実施の形態を示す断面図である。ICラベル用アンテナ121は、平面内で渦巻き状に巻回された導体121aからなり、ICラベル用アンテナ121の片面に接着された板状またはシート状の磁芯部材123と、この磁芯部材123の下面に導電材部124を備えている。
磁芯部材123は、ICラベル用アンテナ121が設けられたベース基材の他の面に、ICラベル用アンテナ121の一部を横断して、一方の端部がICラベル用アンテナ121の外側に出て、他の端部がICラベル用アンテナ121の中心部(内部)122に来るように積層される。
【0010】
このように磁芯部材123を積層すると、磁束は、磁芯部材123の一方の端部から入り、他の端部から抜けていくため、他の端部から出た磁束がICラベル用アンテナ121の内部を通過するようになり、導体121aにより形成されたICラベル用アンテナ121に誘導起電力が発生する。このため、このICラベルを物品125の表面に取付けて、ICラベル周囲の磁束方向がICラベル用アンテナ121の表面と平行になっても、磁束はICラベル用アンテナ121内を通過するようになる。これにより、ICチップを作動させるのに十分な電圧が誘導されるため、ICチップが確実に作動する。
【0011】
さらに、この実施の形態では、ICラベル用アンテナ121が設けられたベース基材の他方の面に磁芯部材123を覆うように導電部材124が積層接着されているので、導電部材124が物品への電波の通過を遮蔽することになる。従って、ICラベル用アンテナ121は物品125が金属であるか否かに係わらず、その影響を受けることが少なくなり、物品125の表面が金属により形成されていても、その金属面に生じる渦電流などによる損失は発生せず、RFID用タグは、金属製物品125に取付けても確実に動作することになる。
【0012】
しかしながら、特許文献1では、誘導起電力を増大させるために、アンテナ111を通過する磁束を増大させようとしてアンテナ111の径を大きくすると、ICラベルの厚みが増大するという問題がある。
一方、特許文献2は、ベース基材の一方の面に磁芯部材と導電部材を設けるために、この場合もICラベルの厚みが増大するという問題がある。
【0013】
また、ICラベルの厚みが増大すると、ICラベルの可撓性が損なわれるという問題がある。ICラベルの可撓性が損なわれると、物品の曲面にICラベルを貼着し難くなる。加えて、ICラベルを物品に貼着したり、物品から剥離する際に、ICラベルに無理な力が加わり、アンテナやICチップが破損するおそれがある。
【非特許文献1】寺浦信之監修、「RFタグの開発と応用−無線ICチップの未来−」、初版、シーエムシー出版、2003年2月28日、p121、図2
【特許文献1】特開2003−317052号公報
【特許文献2】特開2003−108966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、非接触型データ受送信体の厚みの増大を抑え、かつ、可撓性に優れるとともに、金属を少なくとも含む物品に接しても、ICチップの作動起電力を十分上回る起電力が誘起されて使用できる非接触型データ受送信体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ベース基材とその一方の面に設けられ互いに接続されたアンテナおよびICチップとからなるインレットを備えてなる非接触型データ受送信体であって、前記アンテナはコイル状をなしており、その両端部およびその近傍領域を除き、前記アンテナおよび前記ICチップを覆うように前記ベース基材上に磁性体層が配されている非接触型データ受送信体を提供する。
【0016】
かかる構成によれば、アンテナの両端部およびその近傍領域を除き、アンテナおよびICチップを覆うようにベース基材上に磁性体層が配されていることにより、非接触型データ受送信体を、金属を少なくとも含む物品に接した場合でも、磁束が磁性体層を通ってアンテナに捕捉されるため、アンテナにICチップを作動させるのに十分な誘導起電力を発生させることができる。しかも、磁性体層は、アンテナおよびICチップを覆うように形成することにより、これらの保護層としての機能も発揮する。さらに、アンテナの両端部を結ぶ導電部の一部を、磁性体層のベース基材と接する面とは反対の面上に設けることができる。
【0017】
本発明は、ベース基材とその一方の面に設けられ互いに接続されたアンテナおよびICチップとからなるインレットを備えてなる非接触型データ受送信体であって、前記アンテナは前記ICチップを介してコイル状をなしており、その両端部およびその近傍領域、および、前記ICチップおよびその近傍領域を除き、前記アンテナを覆うようにベース基材上に磁性体層が配されている非接触型データ受送信体を提供する。
【0018】
かかる構成によれば、アンテナの両端部およびその近傍領域、および、ICチップおよびその近傍領域を除き、アンテナを覆うようにベース基材上に磁性体層が配されていることにより、金属を少なくとも含む物品に接した場合でも、磁束が磁性体層を通ってアンテナに捕捉されるため、アンテナにICチップを作動させるのに十分な誘導起電力を発生させることができる。しかも、磁性体層が扁平状の磁性微粒子を樹脂に含浸させたものであり、磁性微粒子と樹脂の混合比率を調節することにより、磁性体層の透磁率を高め、かつ絶縁性を保つことができるため、磁性体層は、アンテナを覆うように形成することにより、これらの保護層としての機能も発揮する。さらに、アンテナの両端部を結ぶ導電部の一部を、磁性体層のベース基材と接する面とは反対の面上に設けることができる。そして、磁性体層のベース基材と接する面とは反対の面、または、ベース基材の磁性体層と接する面とは反対の面のいずれを物品に貼着する面としても、非接触型データ受送信体を、金属を少なくとも含む物品に接するために撓ませた場合に、ICチップの側面と磁性体層の側面が接触し難くなるから、両者の接触によりICチップが破損するのを防止することができる。
【0019】
前記アンテナの両端部を結ぶ導電部の一部は、前記磁性体層の前記ベース基材と接する面とは反対の面上に設けられていることが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、磁性体層が扁平状の磁性微粒子を樹脂に含浸させたものであり、磁性微粒子と樹脂の混合比率を調節することにより、磁性体層の透磁率を高め、かつ絶縁性を保つことができるため、磁性体層が絶縁膜の要素も兼ねて、導電部がアンテナの両端部を結ぶために、アンテナのコイル部上に絶縁膜を介して導電部を形成する必要がなくなるから、非接触型データ受送信体を構成する要素(層、膜など)が少なくなるので、非接触型データ受送信体を、金属を少なくとも含む物品に接するために撓ませた場合に、各要素が形状の変化に追従し易くなり、結果として、各要素間における剥離などの不具合を防止することができる。また、非接触型データ受送信体の製造において、アンテナの両端部を結ぶために、アンテナのコイル部上に絶縁膜を介して導電部を形成する必要がなくなるから、製造工程を省略することができるので、製造コストを削減できる。
【0021】
前記導電部の一部は前記磁性体層の内部に設けられていることが好ましい。
【0022】
かかる構成によれば、アンテナの両端部を結ぶための導電部が全て磁性体層に覆われるから、導電部の破損によるアンテナの断線を防止することができる。
【0023】
前記導電部は可撓性付与剤を含むポリマー型インクからなることが好ましい。
【0024】
かかる構成によれば、導電部の耐折り曲げ性が向上するので、非接触型データ受送信体を、金属を少なくとも含む物品に接するために撓ませた場合でも、導電部が破損して、非接触型データ受送信体の通信機能が損なわれることを防止することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の非接触型データ受送信体によれば、アンテナの両端部およびその近傍領域を除き、アンテナおよびICチップを覆うようにベース基材上に磁性体層が配されていることにより、金属を少なくとも含む物品に接した場合でも、磁束が磁性体層を通ってアンテナに捕捉されるため、アンテナにICチップを作動させるのに十分な誘導起電力を発生させることができる。しかも、磁性体層が扁平状の磁性微粒子を樹脂に含浸させたものであり、磁性微粒子と樹脂の混合比率を調節することにより、磁性体層の透磁率を高め、かつ絶縁性を保つことができるため、磁性体層は、アンテナおよびICチップを覆うように形成することにより、これらの保護層としての機能も発揮する。さらに、アンテナの両端部を結ぶ導電部の一部を、磁性体層のベース基材と接する面とは反対の面上に設けることができる。そして、磁性体層が扁平状の磁性微粒子を樹脂に含浸させたものであり、磁性微粒子と樹脂の混合比率を調節することにより、磁性体層の透磁率を高め、かつ絶縁性を保つことができるため、磁性体層が絶縁膜の要素も兼ねて、アンテナの両端部を結ぶ導電部の一部を、磁性体層のベース基材と接する面とは反対の面上に設ければ、導電部がアンテナの両端部を結ぶために、アンテナのコイル部上に絶縁膜を介して導電部を形成する必要がなくなるから、非接触型データ受送信体を構成する要素(層、膜など)が少なくなるので、非接触型データ受送信体を、金属を少なくとも含む物品に接するために撓ませた場合に、各要素が形状の変化に追従し易くなり、結果として、各要素間における剥離などの不具合を防止することができる。また、非接触型データ受送信体の製造において、アンテナの両端部を結ぶために、アンテナのコイル部上に絶縁膜を介して導電部を形成する必要がなくなるから、製造工程を省略することができるので、製造コストを削減できる。
【0026】
本発明の非接触型データ受送信体によれば、アンテナの両端部およびその近傍領域、および、ICチップおよびその近傍領域を除き、アンテナを覆うようにベース基材上に磁性体層が配されていることにより、金属を少なくとも含む物品に接した場合でも、磁束が磁性体層を通ってアンテナに捕捉されるため、アンテナにICチップを作動させるのに十分な誘導起電力を発生させることができる。しかも、磁性体層が扁平状の磁性微粒子を樹脂に含浸させたものであり、磁性微粒子と樹脂の混合比率を調節することにより、磁性体層の透磁率を高め、かつ絶縁性を保つことができるため、磁性体層は、アンテナおよびICチップを覆うように形成することにより、これらの保護層としての機能も発揮する。また、アンテナの両端部を結ぶ導電部の一部を、磁性体層のベース基材と接する面とは反対の面上に設けることができる。さらに、磁性体層が扁平状の磁性微粒子を樹脂に含浸させたものであり、磁性微粒子と樹脂の混合比率を調節することにより、磁性体層の透磁率を高め、かつ絶縁性を保つことができるため、磁性体層が絶縁膜の要素も兼ねて、アンテナの両端部を結ぶ導電部の一部を、磁性体層のベース基材と接する面とは反対の面上に設ければ、導電部がアンテナの両端部を結ぶために、アンテナのコイル部上に絶縁膜を介して導電部を形成する必要がなくなるから、非接触型データ受送信体を構成する要素(層、膜など)が少なくなるので、非接触型データ受送信体を、金属を少なくとも含む物品に接するために撓ませた場合に、各要素が形状の変化に追従し易くなり、結果として、各要素間における剥離などの不具合を防止することができる。そして、磁性体層のベース基材と接する面とは反対の面、または、ベース基材の磁性体層と接する面とは反対の面のいずれを物品に貼着する面としても、非接触型データ受送信体を、金属を少なくとも含む物品に接するために撓ませた場合に、ICチップの側面と磁性体層の側面が接触し難くなるから、両者の接触によりICチップが破損するのを防止することができる。また、非接触型データ受送信体の製造において、アンテナの両端部を結ぶために、アンテナのコイル部上に絶縁膜を介して導電部を形成する必要がなくなるから、製造工程を省略することができるので、製造コストを削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施した非接触型データ受送信体について詳細に説明する。
【0028】
(非接触型データ受送信体の第一の実施形態)
図1は、本発明に係る非接触型データ受送信体の第一の実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
この実施形態の非接触型データ受送信体10は、ベース基材11と、その一方の面11aに設けられ、互いに接続されたアンテナ12およびICチップ13とからなるインレット14と、磁性体層15とから概略構成されている。
【0029】
この非接触型データ受送信体10では、アンテナ12はICチップ13を介してコイル状をなしており、その両端部12c,12cおよびその近傍領域を除いて、アンテナ12およびICチップ13を覆うようにベース基材11上に磁性体層15が配されている。ここで、アンテナ12の両端部12cの近傍領域とは、アンテナ12において、両端部12cに連続する領域のことである。
【0030】
また、アンテナ12の両端部12c,12cを結び、導電部16の一部をなす第一部16Aは、磁性体層15のベース基材11と接する面とは反対の面(以下、「一方の面」と言う。)15a上に設けられている。なお、導電部16は、一体に設けられた第一部16Aと第二部16Bからなり、第二部16Bは、アンテナ12の両端部12c,12cから磁性体層15の一方の面15aに設けられた第一部16Aに渡って設けられている。
【0031】
非接触型データ受送信体10において、アンテナ12は、ベース基材11の一方の面11aに所定の間隔をおいてコイル状に設けられている。さらに、ICチップ13の厚みは、アンテナ12の厚みよりも厚くなっている。
【0032】
また、非接触型データ受送信体10において、インレット14を構成するアンテナ12とICチップ13が互いに接続されるとは、アンテナ12の端部がICチップ13の両極端子にそれぞれ接続されることである。
【0033】
さらに、磁性体層15が、アンテナ12の両端部12c,12cおよびその近傍領域を除いて、インレット14を構成するアンテナ12およびICチップ13を覆うように配されるとは、アンテナ12の両端部12c,12cおよびその近傍領域を除いて、磁性体層15が、アンテナ12とICチップ13が隠れる程度に覆うことである。そして、磁性体層15の表面(開放面)が平坦になるように、磁性体層15がアンテナ12とICチップ13を覆うことがより好ましい。
【0034】
また、磁性体層15は、少なくとも磁性微粒子からなるフィラーを樹脂に含有してなる複合体から構成されている。このような磁性体層15において、非接触型データ受送信体10をベース基材11の一方の面11a側から見て、磁性体層15を構成する多数の磁性微粒子は、少なくともその一部が互いに重なり、連接した1つの磁性体を形成している。
また、コイル状に設けられたアンテナ12の間には、磁性体層15をなす複合体が充填されるように配されており、この複合体をなす磁性微粒子の全部または一部がアンテナ12の間に配されている。
【0035】
また、導電部16の第一部16Aは、磁性体層15の一方の面15aに直接設けられている。導電部16の第一部16Aを磁性体層15の一方の面15aに直接設ければ、非接触型データ受送信体10を構成する要素(層、膜など)が少なくなるので、非接触型データ受送信体10を、金属を少なくとも含む物品に接する際に撓ませた場合に、各要素が形状の変化に追従し易くなり、結果として、各要素間における剥離などの不具合を防止することができる。また、非接触型データ受送信体10の製造において、従来のように、アンテナ12の両端部12c,12cを結ぶために、アンテナ12のコイル部12aを覆う絶縁膜を設ける必要がなくなるから、製造工程を省略することができるので、製造コストを削減できる。
【0036】
ベース基材11としては、少なくとも表層部には、ガラス繊維、アルミナ繊維などの無機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれらを組み合わせたもの、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれらを組み合わせたものや、あるいはこれらに樹脂ワニスを含浸させて成形した複合基材や、ポリアミド系樹脂基材、ポリエステル系樹脂基材、ポリオレフィン系樹脂基材、ポリイミド系樹脂基材、エチレン−ビニルアルコール共重合体基材、ポリビニルアルコール系樹脂基材、ポリ塩化ビニル系樹脂基材、ポリ塩化ビニリデン系樹脂基材、ポリスチレン系樹脂基材、ポリカーボネート系樹脂基材、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合系樹脂基材、ポリエーテルスルホン系樹脂基材などのプラスチック基材や、あるいはこれらにマット処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、フレームプラズマ処理、オゾン処理、または各種易接着処理などの表面処理を施したものなどの公知のものから選択して用いられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートまたはポリイミドからなる電気絶縁性のフィルムまたはシートが好適に用いられる。
【0037】
アンテナ12は、ベース基材11の一方の面11aにポリマー型導電インクを用いて所定のパターン状にスクリーン印刷により形成されてなるものか、もしくは、導電性箔をエッチングしてなるものである。
【0038】
本発明におけるポリマー型導電インクとしては、例えば、銀粉末、金粉末、白金粉末、アルミニウム粉末、パラジウム粉末、ロジウム粉末、カーボン粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)などの導電微粒子が樹脂組成物に配合されたものが挙げられる。
【0039】
樹脂組成物として熱硬化型樹脂を用いれば、ポリマー型導電インクは、200℃以下、例えば100〜150℃程度でアンテナ12をなす塗膜を形成することができる熱硬化型となる。アンテナ12をなす塗膜の電気の流れる経路は、塗膜をなす導電微粒子が互いに接触することによる形成され、この塗膜の抵抗値は10-5Ω・cmオーダーである。
【0040】
また、本発明におけるポリマー型導電インクとしては、熱硬化型の他にも、光硬化型、浸透乾燥型、溶剤揮発型といった公知のものが用いられる。
【0041】
光硬化型のポリマー型導電インクは、光硬化性樹脂を樹脂組成物に含むものであり、硬化時間が短いので、製造効率を向上させることができる。光硬化型のポリマー型導電インクとしては、例えば、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、導電微粒子が60質量%以上配合され、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、溶剤揮発型かあるいは架橋/熱可塑併用型(ただし熱可塑型が50質量%以上である)のものや、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、架橋型かあるいは架橋/熱可塑併用型のものなどが好適に用いられる。
【0042】
また、非接触型データ受送信体10により可撓性が要求され、その結果として、アンテナ12において耐折り曲げ性がさらに要求される場合には、このポリマー型導電インクに可撓性付与剤を配合してもよい。
可撓性付与剤としては、例えば、ポリエステル系可撓性付与剤、アクリル系可撓性付与剤、ウレタン系可撓性付与剤、ポリ酢酸ビニル系可撓性付与剤、熱可塑性エラストマー系可撓性付与剤、天然ゴム系可撓性付与剤、合成ゴム系可撓性付与剤およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0043】
一方、アンテナ12をなす導電性箔としては、銅箔、銀箔、金箔、白金箔、アルミニウム箔などが挙げられる。
【0044】
ICチップ13としては、特に限定されず、アンテナ12を介して非接触状態にて情報の書き込みおよび読み出しが可能なものであれば、非接触型ICタグや非接触型ICラベル、あるいは非接触型ICカードなどのRFIDメディアに適用可能なものであればいかなるものでも用いられる。
【0045】
磁性体層15をなす複合体は、磁性微粒子からなるフィラーと、樹脂とから概略構成されている。
この複合体は、磁性微粒子からなるフィラーと、樹脂と、添加剤と、溶媒とを含む磁性塗料を塗布、乾燥することによって、磁性微粒子がほぼ均一に分散した形態に成形される。
【0046】
また、磁性微粒子としては、粉末状の磁性体粉末、または、この磁性体粉末をボールミルなどで微細化して粉末を成形した後、この粉末を機械的に扁平化して得られた扁平状のフレークなどからなる磁性体フレークが挙げられる。これらの中でも、磁性微粒子としては、扁平状のものが好ましい。磁性微粒子が扁平状であれば、非接触型データ受送信体10をベース基材11の一方の面11a側から見て、磁性体層15を構成する多数の磁性微粒子が、少なくともその一部が互いに重なり、連接した1つの磁性体を形成しやすい。したがって、より磁束が磁性体層を通ってアンテナに捕捉され易くなる。
【0047】
さらに、磁性体粉末としては、例えば、センダスト(Fe−Si−Al合金)粉末、カーボニル鉄粉末、パーマロイなどのアトマイズ粉末、還元鉄粉末などが挙げられる。磁性体フレークとしては、例えば、前記磁性体粉末をボールミルなどで微細化して粉末を成形した後、この粉末を機械的に扁平化して得られたフレークや、鉄系またはコバルト系アモルファス合金の溶湯を水冷銅板に衝突させて得られたフレークなどが挙げられる。これらの中でも、磁性微粒子としては、センダストからなる磁性体粉末または磁性体フレークが好ましく、センダストからなる磁性体フレークがより好ましい。磁性微粒子が、センダストからなる磁性体粉末または磁性体フレークであれば、これらを構成要素として含む磁性体層15の飽和磁束密度および透磁率が高くなるので、より磁束が磁性体層を通ってアンテナに捕捉され易くなる。
【0048】
なお、磁性体層15をなす磁性微粒子の形状は、その全てが粉末状あるいは扁平状のいずれか一方である必要はない。磁性体層15には、粉末状の磁性微粒子と扁平状の磁性微粒子が混在していてもよく、このように形状の異なる磁性微粒子が混在していても、本発明の非接触型データ受送信体は十分に効果を発揮する。
【0049】
磁性体層15をなす複合体を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂などが挙げられる。
【0050】
熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニル共重合体、メタクリル酸エステル−エチレン共重合体、ポリ弗化ビニル、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(セルロースアセテートブチレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロース)、スチレンブタジエン共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、あるいは、スチレン系ゴム、フッ素系ゴム、シリコン系ゴム、エチレン・プロピレン共重合体ゴムなどのポリマー系の合成ゴム材料などが挙げられる。
【0051】
熱硬化性樹脂または反応型樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
【0052】
また、磁性体層15をなす複合体には、磁性体層15に粘着性を付与するために、各種粘着剤が含まれていてもよい。
【0053】
また、磁性体層15をなす複合体を形成するために用いられる磁性塗料に含まれる添加剤としては、粘度調整剤、消泡剤、レベリング剤などが挙げられる。
【0054】
さらに、この磁性塗料に含まれる溶媒としては、シクロヘキサノン、アセトン、ベンゼン系、エチル系などの有機溶媒が挙げられる。
【0055】
導電部16の第一部16Aは、磁性体層15の一方の面15aに、上述のアンテナ12の形成に用いられるものと同様のポリマー型導電インクなどを用いて所定のパターン状にスクリーン印刷などにより形成されてなるものである。
【0056】
また、非接触型データ受送信体10に対して、より可撓性が要求される場合、導電部16の第一部16Aをなすポリマー型導電インクに可撓性付与剤を配合することが好ましい。このようにすれば、導電部16の第一部16Aの耐折り曲げ性が向上するので、非接触型データ受送信体10を、金属を少なくとも含む物品に接するために撓ませても、導電部16の一部16Aが破損して、非接触型データ受送信体10の通信機能が損なわれることを防止することができる。
【0057】
このように、この実施形態の非接触型データ受送信体10によれば、アンテナ12の両端部12c,12cおよびその近傍領域を除き、アンテナ12およびICチップ13を覆うようにベース基材11上に磁性体層15が配されていることにより、非接触型データ受送信体10を、金属を少なくとも含む物品に接した場合でも、磁束が磁性体層15を通ってアンテナ12に捕捉されるため、アンテナ12にICチップ13を作動させるのに十分な誘導起電力を発生させることができる。しかも、磁性体層15が磁性微粒子を樹脂に含浸させたものであり、磁性微粒子と樹脂の混合比率を調節することにより、磁性体層15の透磁率を高め、かつ絶縁性を保つことができるため、磁性体層15は、アンテナ12およびICチップ13を覆うように形成することにより、これらの保護層としての機能も発揮する。さらに、磁性体層15が磁性微粒子を樹脂に含浸させたものであり、磁性微粒子と樹脂の混合比率を調節することにより、磁性体層15の透磁率を高め、かつ絶縁性を保つことができるため、磁性体層15が絶縁膜の要素も兼ねて、アンテナ12の両端部12c,12cを結ぶ導電部16の第一部16Aを、磁性体層15の一方の面15a上に設けることによって、導電部16の第一部16Aがアンテナ12の両端部12c,12cを結ぶために、アンテナ12のコイル部12a上に絶縁膜を介して導電部を形成する必要がなくなるから、非接触型データ受送信体10を構成する要素(層、膜など)が少なくなるので、非接触型データ受送信体10を、金属を少なくとも含む物品に接するために撓ませた場合に、各要素が形状の変化に追従し易くなり、結果として、各要素間における剥離などの不具合を防止することができる。
【0058】
(非接触型データ受送信体の製造方法)
次に、図2および図3を参照して、この実施形態の非接触型データ受送信体の製造方法について説明する。
まず、ベース基材11の一方の面11aに、所定の厚み、所定のパターンをなすアンテナ12を設ける(アンテナ形成工程)。
【0059】
この工程では、アンテナ12をポリマー型導電インクで形成する場合、スクリーン印刷法により、ベース基材11の一方の面11aに、所定の厚み、所定のパターンとなるようにポリマー型導電インクを印刷した後、このポリマー型導電インクを乾燥・硬化させることにより、所定の厚み、所定のパターンをなすアンテナ12を形成する。
【0060】
また、アンテナ12を導電性箔で形成する場合、以下のような手順に従う。
ベース基材11の一方の面11aの全面に導電性箔を貼り合わせた後、シルクスクリーン印刷法により、この導電性箔に耐エッチング塗料を所定のパターンに印刷する。この耐エッチング塗料を乾燥・固化させた後、エッチング液に浸して、耐エッチング塗料が塗布されていない銅箔を溶解除去し、耐エッチング塗料が塗布された銅箔部分をベース基材11の一方の面に残存させることにより、所定のパターンをなすアンテナ12を形成する。
【0061】
次いで、図2(a)に示すように、アンテナ12に設けられた接点12b,12bと、ICチップ13に設けられた接点(図示略)を、導電性ペースト、または、はんだからなる導電材を介して電気的に接続して、ICチップ13をベース基材11の一方の面11aに実装する(ICチップ実装工程)。
【0062】
次いで、図2(b)に示すように、スクリーン印刷法などにより、磁性微粒子からなるフィラーと、樹脂と、添加剤と、溶媒とを含む磁性塗料を、ベース基材11の一方の面11aにおいて、アンテナ12とICチップ13が僅かに隠れる程度に塗布するか、あるいは、十分に隠れる程度に塗布する。磁性塗料を塗布した後、室温で放置するか、または所定の温度で、所定の時間、加熱して乾燥・固化することにより、磁性体層15を形成する(磁性体層形成工程)。この磁性体層形成工程では、図2(b)および図3に示すように、磁性体層15の一方の面15aから、アンテナ12の両端部12c,12cに渡る貫通孔15b,15bが開口するように、ベース基材11の一方の面11aに磁性塗料を塗布して、磁性体層15を形成する。
【0063】
次いで、図2(c)に示すように、スクリーン印刷法などにより、磁性体層15の貫通孔15b,15b内にポリマー型導電インクを充填すると共に、磁性体層15の一方の面15aに、所定の厚み、所定のパターンとなるようにポリマー型導電インクを印刷した後、このポリマー型導電インクを乾燥・硬化させることにより、所定の厚み、所定のパターンをなす第一部16Aと第二部16Bからなる導電部16を形成する(導電部形成工程)。
【0064】
このように、磁性体層15の一方の面15aから、アンテナ12の両端部12c,12cに渡る貫通孔15b,15bが開口するように、ベース基材11の一方の面11aに磁性塗料を塗布して、磁性体層15を形成した後、アンテナ12の両端部12c,12cを電気的に接続するための導電部16を設ければ、従来のように、アンテナ12の両端部12c,12cを接続するために、アンテナ12のコイル部12a上に絶縁膜を介して導電部を形成する必要がなくなるから、製造工程を省略することができるので、製造コストを削減することができる。
【0065】
なお、この実施形態では、アンテナ12の形成方法として、スクリーン印刷法、エッチングによる方法を例示したが、本発明はこれらに限定されない。本発明にあっては、蒸着法やインクジェット式印刷方法によりアンテナを形成することもできる。
【0066】
(非接触型データ受送信体の第二の実施形態)
図4は、本発明に係る非接触型データ受送信体の第二の実施形態を示す概略断面図である。
図4において、図1に示した非接触型データ受送信体10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態の非接触型データ受送信体20は、非接触型データ受送信体10と、接着剤層21と、剥離基材22と、上紙23とから概略構成されている。
【0067】
非接触型データ受送信体20では、接着剤層21が、非接触型データ受送信体10を覆うように設けられている。
【0068】
また、剥離基材22が、接着剤層21の磁性体層15と接する面とは反対の面(物品に貼着される面)に貼着されている。
【0069】
さらに、上紙23が、接着剤層21のベース基材11と接する面とは反対の面(物品に貼着されない面)に貼着されている。
【0070】
接着剤層21をなす接着剤としては、フェノール系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系などの接着剤が挙げられる。なお、その他の接着剤でも、公知のものを適宜用いることができる。
【0071】
剥離基材22としては、シリコーン系、非シリコーン系などの剥離剤が塗布された、紙、合成紙、コート紙、ポリプロピレンフィルム、PETフィルムなどの基材が挙げられる。なお、その他、剥離剤、基材ともに、公知のものを適宜用いることができる。
【0072】
上紙23としては、紙、合成紙、コート紙、ポリプロピレンフィルム、PETフィルムなどの基材が挙げられる。なお、その他、剥離剤、基材ともに、公知のものを適宜用いることができる。
【0073】
この実施形態の非接触型データ受送信体20は、磁性体層15が設けられた非接触型データ受送信体10が接着剤層21で覆われ、接着剤層21で覆われた非接触型データ受送信体10が剥離基材22および上紙23で囲まれているので、磁性体層15への埃や塵埃などが付着しない。そして、剥離基材22を取り除いて新たに露出した接着剤層21により、金属を含む物品に磁性体層15が接するようにして、非接触型データ受送信体20をこの物品に貼付することができる。また、非接触型データ受送信体20は、接着剤層21のベース基材11と接する面とは反対の面側の面(物品に貼着されない面)に上紙23が設けられているから、この上紙23に模様を設けたり、各種情報を印刷することができる。
【0074】
なお、この実施形態では、接着剤層21が、非接触型データ受送信体10の磁性体層15のベース基材11と接する面とは反対の面を除く部分を覆うように設けられている非接触型データ受送信体20を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、接着剤層が、磁性体層のベース基材と接する面とは反対の面に設けられていてもよい。また、ベース基材のアンテナおよびICチップが設けられている面とは反対の面には、接着剤層が設けられていなくてもよい。
【0075】
また、この実施形態では、剥離基材22が、磁性体層15のベース基材11と接する面とは反対の面、および、接着剤層21の磁性体層15のベース基材11と接する面とは反対の面側の面(物品に貼着される面)に貼着されている非接触型データ受送信体20を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、剥離基材が、磁性体層のベース基材と接する面とは反対の面のみに貼着されていてもよい。
【0076】
(非接触型データ受送信体の第三の実施形態)
図5は、本発明に係る非接触型データ受送信体の第三の実施形態を示す概略断面図である。
図5において、図1に示した非接触型データ受送信体10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0077】
この実施形態の非接触型データ受送信体30が、上述の非接触型データ受送信体10と異なる点は、導電部16の第一部16Aが磁性体層15の内部に設けられている点である。
【0078】
このような非接触型データ受送信体30を製造するには、図1に示す非接触型データ受送信体10を製造した後、磁性体層15Aの一方の面15aおよび導電部16の第一部16Aを覆うように磁性塗料を塗布した後、室温で放置するか、または所定の温度で、所定の時間、加熱して乾燥・固化することにより、磁性体層15Bを形成すればよい。
【0079】
このようにすれば、アンテナ12の両端部12c,12cを結ぶための導電部16が全て磁性体層15に覆われるから、導電部16の破損によるアンテナ12の断線を防止することができる。また、非接触型データ受送信体30の表面に導電部16が存在しないので、非接触型データ受送信体30の表面を平坦にすることができるから、非接触型データ受送信体30の表面への印刷などを行い易くなる。
【0080】
(非接触型データ受送信体の第四の実施形態)
図6は、本発明に係る非接触型データ受送信体の第四の実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
図6において、図1に示した非接触型データ受送信体10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0081】
この実施形態の非接触型データ受送信体40が、上述の非接触型データ受送信体10と異なる点は、アンテナ12の両端部12c,12cおよびその近傍領域、および、ICチップ13およびその近傍領域を除き、アンテナ12を覆うようにベース基材11上に磁性体層15が配されている点である。
【0082】
また、この非接触型データ受送信体40では、ICチップ13の側面13aと磁性体層15の側面15cとの間には間隙が設けられている。
【0083】
ICチップ13の側面13aと磁性体層15の側面15cとの間の間隙の大きさは特に限定されず、非接触型データ受送信体10が貼着される金属物品などの曲面の形状や、ICチップ13の形状、大きさなどに応じて、適宜設定される。
【0084】
さらに、ICチップ13の側面13aと対向する位置にある磁性体層15の側面15cは、磁性体層15のアンテナ12と接する面から、磁性体層15の一方の面15aに向かって次第に開口径が大きくなるテーパ状をなしている。
【0085】
ICチップ13の側面13aと対向する位置にある磁性体層15の側面15bのテーパ状をなしているが、その形状はとくに限定されず、非接触型データ受送信体10が貼着される金属物品などの曲面の形状や、ICチップ13の形状、大きさなどに応じて、適宜設定される。
【0086】
この実施形態の非接触型データ受送信体40によれば、アンテナ12の両端部12c,12cおよびその近傍領域、および、ICチップ13およびその近傍領域を除き、アンテナ12を覆うようにベース基材11上に磁性体層15が配されていることにより、非接触型データ受送信体40を、金属を少なくとも含む物品に接するために撓ませた場合に、磁性体層15が形状の変化により追従し易くなり、結果として、各構成要素間における剥離などの不具合を防止することができる。
【0087】
また、ICチップ13の側面13aと磁性体層15の側面15cとの間に間隙を設け、さらには、ICチップ13の側面13aと対向する位置にある磁性体層15の側面15cを、磁性体層15のアンテナ12と接する面から、磁性体層15の一方の面15aに向かって次第に開口径が大きくなるテーパ状とすれば、磁性体層15の一方の面15aまたはベース基材11の磁性体層15と接する面とは反対の面のいずれを物品に貼着する面としても、非接触型データ受送信体40を、金属を少なくとも含む物品に接するために撓ませた場合に、ICチップ13の側面13aと磁性体層15の側面15cが接触し難くなるから、両者の接触によりICチップ13が破損するのを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の非接触型データ受送信体は、2枚の基材の間に組み込まれた形態のICタグなどに限定されることなく、剥離基材から剥がして使用される形態の非接触型データ受送信体にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明に係る非接触型データ受送信体の第一の実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
【図2】本発明に係る非接触型データ受送信体の第一の実施形態の製造方法を示す概略断面図である。
【図3】本発明に係る非接触型データ受送信体の第一の実施形態の製造方法を示す概略断平面図である。
【図4】本発明に係る非接触型データ受送信体の第二の実施形態を示す概略断面図である。
【図5】本発明に係る非接触型データ受送信体の第三の実施形態を示す概略断面図である。
【図6】本発明に係る非接触型データ受送信体の第四の実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図7】通常の非接触型データ受送信体を金属物品の表面に載置した場合の磁束の流れを示す模式図である。
【図8】従来の非接触型データ受送信体の一例を示す概略斜視図である。
【図9】従来の非接触型データ受送信体の他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0090】
10,20,30,40・・・非接触型データ受送信体、11・・・ベース基材、12・・・アンテナ、13・・・ICチップ、14・・・インレット、15・・・磁性体層、16・・・導電部、21・・・接着剤層、22・・・剥離基材、23・・・上紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基材とその一方の面に設けられ互いに接続されたアンテナおよびICチップとからなるインレットを備えてなる非接触型データ受送信体であって、
前記アンテナは前記ICチップを介してコイル状をなしており、その両端部およびその近傍領域を除き、前記アンテナおよび前記ICチップを覆うように前記ベース基材上に磁性体層が配されていることを特徴とする非接触型データ受送信体。
【請求項2】
ベース基材とその一方の面に設けられ互いに接続されたアンテナおよびICチップとからなるインレットを備えてなる非接触型データ受送信体であって、
前記アンテナは前記ICチップを介してコイル状をなしており、その両端部およびその近傍領域、および、前記ICチップおよびその近傍領域を除き、前記アンテナを覆うようにベース基材上に磁性体層が配されていることを特徴とする非接触型データ受送信体。
【請求項3】
前記アンテナの両端部を結ぶ導電部の一部は、前記磁性体層の前記ベース基材と接する面とは反対の面上に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触型データ受送信体。
【請求項4】
前記導電部の一部は前記磁性体層の内部に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触型データ受送信体。
【請求項5】
前記導電部は可撓性付与剤を含むポリマー型インクからなることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触型データ受送信体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−227788(P2006−227788A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38963(P2005−38963)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】