説明

非接触無線通信用コイル及び携帯無線端末

【課題】非接触無線通信用コイル、非接触電力伝送用コイル等の複数のコイルを共存させる場合に、各コイルの性能劣化を抑制しつつ、省スペースで実現可能にする。
【解決手段】コイルユニットは、コイルの厚さ方向において、第1磁性体11、非接触電力伝送用の第1コイル12、第2磁性体21、基板30、非接触無線通信用の第2コイル22の順に積層して配置される。第2コイル22が外部機器側に位置する。第1コイル12と第2コイル22は、少なくとも一部が重なった状態で配置され、第1コイルの内周側に第2コイルが重ならない領域を有するように、第1コイル12の外周寄りで第2コイル22と重なるように配置されている。また、第1コイル12の共振周波数が第2コイル22の共振周波数よりも低くなっており、第1磁性体11の透磁率が第2磁性体21の透磁率よりも高くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触無線通信が可能な非接触無線通信用コイル、及びこれを搭載した携帯無線端末に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話端末、スマートフォンなどの携帯無線端末では、FeliCa(登録商標)等を含むNFC(Near Field Communication)等の非接触無線通信(いわゆるRFID(Radio Frequency IDentification))の機能を搭載したものが普及している。この種の非接触無線通信によって、電子マネー機能、乗車券機能などを実現している。
【0003】
また、携帯無線端末において、近年、非接触で電力を伝送することにより、電池の充電(非接触充電)を行う機能を搭載したものが用いられつつある。非接触電力伝送の方式としては、電磁誘導方式、磁界共鳴方式などがあり、給電側のコイルと受電側のコイルを対向させて電力伝送を行うものが主流である。
【0004】
非接触充電機能を搭載した携帯無線端末では、充電用コイルが電池パックと一体化されたものが主流となっている。このため、さらなる端末の薄型化のために電池パックを薄くしようとすると、電池容量が少なくなるという大きな課題がある。一方、充電用コイルを電池パックと別体に構成する場合、上記の非接触無線通信機能を搭載した携帯無線端末では、非接触無線通信用コイルとの共存が課題となる。
【0005】
ここで、非接触無線通信用コイルと非接触電力伝送用コイルとを共存させる場合を想定する。2つのコイルを設けた従来例として、例えば特許文献1には、電力波用アンテナを形成する第1のコイルとデータ波用アンテナを形成する第2のコイルとを2重の輪となるように配設した無線カードが開示されている。この構成により、無線カードを保持する手の指などで第1のコイル及び第2のコイルが覆われるおそれが少なく、双方のコイルの受信状況をほぼ同様にすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−110854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の構成では、2つのコイルを2重の輪となるように配設しているため、コイルの配置面積が大きくなる。また、各コイルの性能を考慮せず、複数のコイルを単純に併設しただけでは、コイル間の電磁結合によって性能劣化が予想される。特に、コイルを搭載する端末を小型化するために、複数のコイルを近接させた場合、コイル間の電磁結合によって電力伝送効率、通信距離などの性能が劣化する。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、非接触無線通信用コイル、非接触電力伝送用コイル等の複数のコイルを共存させる場合に、各コイルの性能劣化を抑制しつつ、省スペースで実現可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1コイルと、第2コイルと、第1磁性体と、第2磁性体とを備え、コイルの厚さ方向において、前記第1磁性体、前記第1コイル、前記第2磁性体、前記第2コイルの順に積層して配置され、前記第1コイルと前記第2コイルの少なくとも一部が重なった状態である非接触無線通信用コイルを提供する。
上記構成により、複数のコイルを共存させる場合に、コイル間の電磁結合を低減でき、電磁結合による性能劣化が抑制される。また、複数のコイルを積層して配置することで、配置面積を削減でき、性能劣化の少ないコイルを省スペースで実現可能となる。
【0010】
また、本発明は、上記の非接触無線通信用コイルであって、前記第1磁性体の透磁率が前記第2磁性体の透磁率よりも高いものを含む。
また、本発明は、上記の非接触無線通信用コイルであって、前記第1コイルの共振周波数が前記第2コイルの共振周波数よりも低いものを含む。
また、本発明は、上記の非接触無線通信用コイルであって、前記第1コイルの外周寄りで前記第2コイルの少なくとも一部が重なった状態であるものを含む。
また、本発明は、上記の非接触無線通信用コイルであって、前記第2コイルの少なくとも一部が前記第1コイルの外側に位置しているものを含む。
また、本発明は、上記の非接触無線通信用コイルであって、前記第1コイルが非接触電力伝送用であり、前記第2コイルが非接触無線通信用であるものを含む。
【0011】
また、本発明は、上記いずれかの非接触無線通信用コイルを搭載した携帯無線端末を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、非接触無線通信用コイル、非接触電力伝送用コイル等の複数のコイルを共存させる場合に、各コイルの性能劣化を抑制しつつ、省スペースで実現可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るコイルユニットの構成を示す平面図
【図2】第1の実施形態のコイルユニットの断面図であり、(A)は図1のA−A′線断面図、(B)は図1のB−B′線断面図
【図3】(A)、(B)は図1のA−A′線断面の位置(図2(A)の位置)におけるコイルユニットの磁界分布を示す図
【図4】(A)、(B)は図1のB−B′線断面の位置(図2(B)の位置)におけるコイルユニットの磁界分布を示す図
【図5】本実施形態のコイルユニットを搭載した携帯無線端末と外部機器としての充電器及びリーダ/ライタ装置の構成を示すブロック図
【図6】(A)〜(D)は本発明に係る実施例のコイルユニットの寸法を示す図
【図7】(A)、(B)は本発明に係る実施例のコイルユニットの性能として、非接触電力伝送時の電力伝送効率と非接触無線通信時の最大通信距離を測定した結果を示す図
【図8】本発明の第2の実施形態に係るコイルユニットの構成を示す図であり、図8(A)はコイルユニットの平面図、図8(B)は図8(A)のA−A′線断面図、図8(C)は図8(A)のB−B′線断面図
【図9】本発明の第3の実施形態に係るコイルユニットの構成を示す図であり、図9(A)はコイルユニットの平面図、図9(B)は図9(A)のA−A′線断面図、図9(C)は図9(A)のB−B′線断面図
【図10】(A)、(B)は第1コイルと第2コイルの内径及び外形を同じにした変形例
【図11】(A)〜(E)は第1コイルを楕円環状、第2コイルを方形環状とした場合に、両コイルの配置を変更した変形例
【図12】(A)〜(E)は第1コイルを方形角丸の環状、第2コイルを方形環状とした場合に、両コイルの配置を変更した変形例
【図13】比較例のコイルユニットの構成を示す図であり、図13(A)はコイルユニットの平面図、図13(B)は図13(A)のA−A′線断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施形態では、非接触無線通信用コイル及びこれを搭載した携帯無線端末の一例として、非接触無線通信用コイルと非接触電力伝送用コイルとを有するコイルユニットと、このコイルユニットを搭載した携帯無線端末の構成例を示す。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るコイルユニットの構成を示す平面図である。図2は第1の実施形態のコイルユニットの断面図であり、図2(A)は図1のA−A′線断面図、図2(B)は図1のB−B′線断面図である。
【0016】
本実施形態のコイルユニットは、第1磁性体11と、非接触電力伝送用コイルとして機能する第1コイル12と、第2磁性体21と、非接触無線通信用コイルとして機能する第2コイル22とを備える。第1磁性体11は第1コイル12に対応して設けられ、第2磁性体21は第2コイル22に対応して設けられる。
【0017】
第1磁性体11は、方形の板状に形成され、板面の一方の面上に第1コイル12が配置される。第1磁性体11は、例えばフェライトなどの透磁率が1よりも高い材料で構成される。第1磁性体11の比透磁率μr1は、例えばμr1=200〜2000のものを用いる。第1コイル12は、導体の巻線が楕円環状に巻回されてなるコイルで構成され、充電用のコイルとして、外部の充電器から供給される電力を受電するものである。第1コイル12の共振周波数f1は、第1コイル12の共振周波数を、第1コイル12に並列若しくは直列に接続したコンデンサ等を用いて調整した周波数であり、例えばf1≒100kHz程度である。
【0018】
第2磁性体21は、方形の環状の板状に形成され、板面の一方の面上に第2コイル22を搭載した基板30が配置される。第2磁性体21は、例えばフェライトなどの透磁率が1よりも高い材料で構成される。第2磁性体21の比透磁率μr2は、例えばμr2=10〜300のものを用いる。第2コイル22は、ガラスエポキシ基板等で構成される基板30上に形成された導体の配線パターンにより、方形環状に巻回されてなるコイルで構成される。第2コイル22は、非接触無線通信用のコイルとして、リーダ/ライタ装置等の外部機器との間でデータを送受信するものである。第2コイル22の共振周波数f2は、第2コイル22の共振周波数を、第2コイル22に並列若しくは直列に接続したコンデンサ等を用いて調整した周波数であり、例えばf2≒13.56MHz程度である。
【0019】
基板30の一端部には、第1コイル12用の第1端子31と、第2コイル22用の第2端子32とが導体の配線パターンにより形成されている。第1端子31は配線を介して第1コイル12と接続され、第2端子32は基板30の配線パターンによって第2コイル22と接続されている。
【0020】
本実施形態のコイルユニットは、コイルの厚さ方向(図2の上下方向)において、図2の下側から矢印H方向に、第1磁性体11、第1コイル12、第2磁性体21、基板30、第2コイル22の順に積層して配置される。コイルユニットを携帯無線端末に搭載する場合、第2コイル22よりさらに矢印H方向に筐体が位置し、筐体内にコイルユニットが収納されて設けられる。よって、外部機器側、すなわち携帯無線端末の筐体内壁からみた場合、第2コイル22、基板30、第2磁性体21、第1コイル12、第1磁性体11の順に積層して配置される。このように複数の磁性体と複数のコイルを積層した構成とすることで、両コイルの電磁結合による性能劣化を抑制でき、各コイルの性能を確保しつつ、コイルの配置面積を小さくでき、小型化を図れる。
【0021】
このとき、第1コイル12と第2コイル22とは、全部を重ねるようにしてもよいが、少なくとも一部が重ならない領域を有するものが好ましい。すなわち、全部ではなく第1コイル12と第2コイル22の少なくとも一部が重なった状態で配置するのが好ましい。図示例では、両コイルが重ならない領域を有するように、第1コイル12の外周の一部と第2コイル22の内周の一部が重なるように配置されている。また、第1コイル12は楕円形、第2コイル22は方形であるので、第2コイル22の四隅部分が重ならない領域となっており、この四隅部分で第2コイル22が第1コイル12の外側に位置している。このような構成により、両コイルの電磁結合を低減できる。
【0022】
また、本実施形態では、第1コイル12と第2コイル22の共振周波数の関係は、第1コイル12の共振周波数が第2コイル22の共振周波数よりも低い(f1<f2)ようにする。そして、第1磁性体11と第2磁性体21の透磁率の関係は、第1磁性体11の透磁率が第2磁性体21の透磁率よりも高い(比透磁率μr1>μr2)ようにするのが好ましい。上記のようにコイル及び磁性体の特性を設定することにより、両コイルの電磁結合による性能劣化をより効果的に低減できる。
【0023】
次に、本実施形態のコイルユニットの動作時の作用を説明する。図3は図1のA−A′線断面の位置(図2(A)の位置)におけるコイルユニットの磁界分布を示す図であり、図3(A)は第1コイル12の動作時、図3(B)は第2コイル22の動作時をそれぞれ示したものである。図4は図1のB−B′線断面の位置(図2(B)の位置)におけるコイルユニットの磁界分布を示す図であり、図4(A)は第1コイル12の動作時、図4(B)は第2コイル22の動作時をそれぞれ示したものである。
【0024】
第1コイル12の動作時、すなわち電力伝送時には、図3(A)、図4(A)に示すように、第1コイル12の近傍において、磁力線が第1磁性体11の中を通過して空間に出るように磁界が発生する。この場合、第1コイル12から第2コイル22への磁界の影響は少ない。また、第2コイル22の動作時、すなわち非接触無線通信のデータ伝送時には、図3(B)、図4(B)に示すように、第2コイル22の近傍において、磁力線が第2磁性体21の中を通過して空間に出るように磁界が発生する。この場合、第2コイル22から第1コイル12への磁界の影響は少ない。
【0025】
本実施形態では、積層された第1コイル12と第2コイル22において、重ならない領域を有するため、コイル間の電磁結合が小さくなる。特に、図4(A)、(B)のように両コイルが重なっていないコイルの四隅の領域では、電磁結合を十分小さくできる。
【0026】
図5は本実施形態のコイルユニットを搭載した携帯無線端末と外部機器としての充電器及びリーダ/ライタ装置の構成を示すブロック図である。
【0027】
携帯無線端末50は、充電用の第1コイル12と、非接触無線通信用の第2コイル22とを備える。第1コイル12は非接触充電部51と接続され、第2コイル22は非接触無線通信部52と接続される。ここで、第1コイル12には、コンデンサ54が並列に接続され、さらに非接触充電部51の整流回路55と接続されている。第2コイル22には、コンデンサ56が並列に接続され、さらに非接触無線通信部52の変復調回路57と接続される。非接触充電部51及び非接触無線通信部52は、制御回路53と接続され、制御回路53によって各部の動作が制御される。
【0028】
充電器60は、非接触電力伝送用コイル63を備える。非接触電力伝送用コイル63には、コンデンサ64が並列に接続され、さらに交流電源回路61と接続されている。交流電源回路61は、制御回路62と接続され、制御回路62によって充電用の交流電力の出力が制御される。
【0029】
リーダ/ライタ装置70は、非接触無線通信用コイル73を備える。非接触無線通信用コイル73には、コンデンサ74が並列に接続され、さらに変復調回路71と接続されている。変復調回路71は、制御回路72と接続され、制御回路72によって非接触無線通信によるデータの変調、復調の動作が制御される。
【0030】
上記構成において、携帯無線端末50の充電を行う場合は、充電器60の非接触電力伝送用コイル63と携帯無線端末50の第1コイル12とを近接させて対向して配置し、充電器60から携帯無線端末50へ給電する。このとき、非接触電力伝送用コイル63と第1コイル12とが電磁結合し、両コイルを介して非接触で充電用の電力が伝送される。非接触電力伝送用コイル63から第1コイル12へ給電するための共振周波数f1は、第1コイル12に並列に接続したコンデンサ54及び、非接触電力伝送用コイル63に並列に接続したコンデンサ64によって調整され、ここではf1=100kHzである。交流電源回路61で発生し出力した交流電力は、非接触電力伝送用コイル63から第1コイル12に伝送され、携帯無線端末50にて受電される。伝送された交流電力は、整流回路55にて整流されて直流電力に変換され、その直流出力が電池部58に供給されることにより充電が行われる。なお、直流出力を携帯無線端末50内の回路に供給し、各部の動作電源とすることも可能である。
【0031】
非接触無線通信を行う場合は、リーダ/ライタ装置70の非接触無線通信用コイル73と携帯無線端末50の第2コイル22とを近接させて対向して配置し、リーダ/ライタ装置70と携帯無線端末50との間でデータの送受信を行う。このとき、非接触無線通信用コイル73と第2コイル22が電磁結合し、両コイルを介して非接触無線通信のデータ伝送が行われる。非接触無線通信用コイル73と第2コイル22との間で通信するための共振周波数f2は、第2コイル22に並列に接続したコンデンサ56及び、非接触無線通信用コイル73に並列に接続したコンデンサ74によって調整され、ここではf2=13.56MHzである。リーダ/ライタ装置70から携帯無線端末50へ伝送するデータは、変復調回路71で変調され、非接触無線通信用コイル73から第2コイル22に伝送され、携帯無線端末50にて受信される。伝送されたデータは、携帯無線端末50の変復調回路57で復調される。携帯無線端末50からリーダ/ライタ装置70へ伝送するデータは、変復調回路57で変調され、第2コイル22から非接触無線通信用コイル73に伝送され、リーダ/ライタ装置70にて受信される。伝送されたデータは、リーダ/ライタ装置70の変復調回路71で復調される。このように、携帯無線端末50の非接触無線通信機能を用いて、リーダ/ライタ装置70から携帯無線端末50に対して非接触無線通信によるデータの書き込み、読み出しが可能である。
【0032】
次に、本実施形態のコイルユニットの性能について、実際に作製した評価サンプルを用いて測定した実施例を示す。図6は実施例のコイルユニットの寸法を示す図である。図6(A)は第1コイル12のみ、図6(B)は第2コイル22のみ、図6(C)は第1コイル12と第2コイル22とを積層して組み合わせたコイルユニット(図1の構成)、図6(D)は図6(C)で示したコイルユニットの断面をそれぞれ示している。
【0033】
実施例では、第1磁性体11の長辺a=48mm、短辺b=32mm、第1コイル12の長手方向の外径c=41mm、短手方向の外径d=30mm、第2磁性体21及び第2コイル22の長辺e=41mm、短辺f=31mm、これらを積層したコイルユニットの厚さg=1.5mmとした。この場合、第1コイル12と第2コイル22を積層した状態において、両コイルの外周寸法は略一致して重なっており、内周側に両コイルが重ならない領域が存在している。また、第1コイル12は楕円形、第2コイル22は方形であるので、第2コイル22の四隅部分が重ならない領域となっている。
【0034】
図7は図6に示した実施例のコイルユニットの性能として、非接触電力伝送時の電力伝送効率と非接触無線通信時の最大通信距離を測定した結果を示す図である。図7(A)は電力伝送効率の測定結果、図7(B)は最大通信距離の測定結果をそれぞれ示している。ここでは、電力伝送効率は、コイルのみの伝送効率ではなく、図5に示したような充電器の交流電源回路から携帯無線端末の直流出力までを含めた充電システム全体の効率を測定した。
【0035】
図6(A)に示した第1コイル12単体の状態では、電力伝送効率が40.3[%]であった。また、図6(C)に示した第1コイル12と第2コイル22とを共存させた状態では、電力伝送効率が40.4[%]であった。この場合、2つのコイルを積層して共存させた状態であり、第1コイル12の外部機器側に第2コイル22が配置されていても、非接触電力伝送において電磁結合による性能劣化が生じない。
【0036】
図6(B)に示した第2コイル22単体の状態では、最大通信距離が126[mm]、不感領域(Null領域)は生じなかった。また、図6(C)に示した第1コイル12と第2コイル22とを共存させた状態では、最大通信距離が127[mm]、不感領域(Null領域)は生じなかった。この場合、2つのコイルを積層して共存させた状態であり、第2コイル22の近傍に第1コイル12が配置されていても、非接触無線通信において電磁結合による性能劣化が生じない。
なお、図6(C)の状態から、第2磁性体21を取り除いた状態では、コイル間の電磁結合により最大通信距離が120[mm]に劣化することを確認しており、第2コイルに対応する第2磁性体21を第1コイルとの間に設けることにより、非接触無線通信において電磁結合の発生を抑制でき、最大通信距離を向上できる。
【0037】
このように、本実施形態によれば、第1コイル12及び第2コイル22の複数のコイルを共存させる場合に、コイル間の電磁結合を低減でき、電磁結合による性能劣化を抑制できる。また、複数のコイルを積層して配置することで、配置面積を削減でき、性能劣化の少ないコイルを省スペースで実現できる。このため、本実施形態の非接触無線通信用コイルを含むコイルユニットを搭載した携帯無線端末において、小型化を図りつつ、非接触電力伝送時と非接触無線通信時の双方の性能劣化を抑制でき、省スペースのコイルユニットで所望の性能を得ることが可能となる。
【0038】
(第2の実施形態)
図8は本発明の第2の実施形態に係るコイルユニットの構成を示す図であり、図8(A)はコイルユニットの平面図、図8(B)は図8(A)のA−A′線断面図、図8(C)は図8(A)のB−B′線断面図である。なお、図1及び図2に示した第1の実施形態と同様の構成要素については同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
第2の実施形態は、第1の実施形態における第1コイルの形状を変更した例である。第1磁性体11Aは、第1の実施形態と同様、方形の板状に形成されている。第1コイル12Aは、導体の巻線が方形角丸の環状に巻回されてなるコイルで構成される。第2磁性体21A及び第2コイル22Aは第1の実施形態と略同様の構成である。すなわち、第2磁性体21Aは方形の環状の板状に形成され、第2コイル22Aは、ガラスエポキシ基板等の基板30A上に形成された導体の配線パターンにより、方形環状に巻回されてなるコイルで構成される。
【0040】
そして、第1の実施形態と同様に、コイルの厚さ方向(図8(B)、図8(C)の上下方向)において、下側から矢印H方向に、第1磁性体11A、第1コイル12A、第2磁性体21A、基板30A、第2コイル22Aの順に積層して配置される。外部機器側、すなわち携帯無線端末の筐体内壁からみた場合、第2コイル22A、基板30A、第2磁性体21A、第1コイル12A、第1磁性体11Aの順に積層して配置される。
【0041】
第1コイル12Aと第2コイル22Aとは、一部に重ならない領域を有するように、第1コイル12Aと第2コイル22Aの少なくとも一部が重なった状態で配置される。このとき、コイルの内周側に両コイルが重ならない領域を有するように、第1コイル12Aと第2コイル22Aの外側が重なるように配置されている。また、第1コイル12Aは方形角丸形状、第2コイル22Aは方形であるので、第2コイル22Aの四隅部分が重ならない領域となっている。
【0042】
このような構成により、第1の実施形態と同様、2つのコイルを積層して共存させた状態であっても、両コイルの電磁結合を低減でき、電磁結合による性能劣化を抑制できる。また、2つのコイルを積層して配置することで、小型化を図れる。
【0043】
(第3の実施形態)
図9は本発明の第3の実施形態に係るコイルユニットの構成を示す図であり、図9(A)はコイルユニットの平面図、図9(B)は図9(A)のA−A′線断面図、図9(C)は図9(A)のB−B′線断面図である。なお、図1及び図2に示した第1の実施形態と同様の構成要素については同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
第3の実施形態は、第1の実施形態における第2コイルの形状を変更した例である。第1磁性体11B及び第1コイル12Bは第1の実施形態と略同様の構成である。すなわち、第1磁性体11Bは方形の板状に形成され、第1コイル12Bは、導体の巻線が楕円環状に巻回されてなるコイルで構成される。第2磁性体21Bは、楕円環状の板状に形成され、第2コイル22Bは、ガラスエポキシ基板等の基板30B上に形成された導体の配線パターンにより、楕円環状に巻回されてなるコイルで構成される。
【0045】
そして、第1の実施形態と同様に、コイルの厚さ方向(図9(B)、図9(C)の上下方向)において、下側から矢印H方向に、第1磁性体11B、第1コイル12B、第2磁性体21B、基板30B、第2コイル22Bの順に積層して配置される。外部機器側、すなわち携帯無線端末の筐体内壁からみた場合、第2コイル22B、基板30B、第2磁性体21B、第1コイル12B、第1磁性体11Bの順に積層して配置される。
【0046】
第1コイル12Bと第2コイル22Bとは、一部に重ならない領域を有するように、第1コイル12Bと第2コイル22Bの少なくとも一部が重なった状態で配置される。このとき、コイルの内周側に両コイルが重ならない領域を有するように、第1コイル12Bと第2コイル22Bの外側が重なるように配置されている。すなわち、第1コイル12Bの外周寄りで第1コイル12Bと第2コイル22Bの少なくとも一部が重なった構造となっている。
【0047】
このような構成により、第1の実施形態と同様、2つのコイルを積層して共存させた状態であっても、両コイルの電磁結合を低減でき、電磁結合による性能劣化を抑制できる。また、2つのコイルを積層して配置することで、小型化を図れる。
【0048】
(変形例)
以下に、第1コイルと第2コイルの配置を変更した変形例をいくつか示す。
【0049】
図10は第1コイルと第2コイルの内径及び外形を同じにした例である。図10(A)の例は、楕円環状の第1コイル12Cと、方形環状の第2コイル22Cとを積層して配置したものである。図10(B)の例は、方形角丸の環状の第1コイル12Dと、方形環状の第2コイル22Dとを積層して配置したものである。
【0050】
この場合、第1コイルと第2コイルとはほぼ全部が重なった状態であるが、図2に示したように第2コイルに対応する第2磁性体を第1コイルとの間に設けることで、電磁結合による性能劣化を低減できる。
【0051】
図11は、図1と同様に第1コイルを楕円環状、第2コイルを方形環状とした場合に、両コイルの配置を変更した例である。図11(A)の例は、楕円環状の第1コイル12Eと方形環状の第2コイル22Eとをコイル長手方向の両端2辺の外周側で重ねて配置したものである。図11(B)の例は、楕円環状の第1コイル12Fと方形環状の第2コイル22Fとをコイル短手方向の両端2辺の外周側で重ねて配置したものである。
【0052】
図11(C)の例は、楕円環状の第1コイル12Gと方形環状の第2コイル22Gとを隣り合う2辺の外周側で重ねて配置したものである。図11(D)の例は、楕円環状の第1コイル12Hと方形環状の第2コイル22Hとを1辺の外周側で重ねて配置したものである。図11(E)の例は、楕円環状の第1コイル12Iと方形環状の第2コイル22Iとを3辺の外周側で重ねて配置したものである。
【0053】
この場合も第1の実施形態と同様、第1コイルの外周側の一部で第2コイルと重なった状態であるが、図2に示したように第2コイルに対応する第2磁性体を第1コイルとの間に設けることで、電磁結合による性能劣化を低減できる。
また、第1コイルと第2コイルとが重ならない辺が多いほど、コイル全体の配置面積が大きくなる一方で、コイル間の電磁結合による特性劣化をより軽減できる。
【0054】
図12は、図8と同様に第1コイルを方形角丸の環状、第2コイルを方形環状とした場合に、両コイルの配置を変更した例である。図12(A)の例は、方形角丸の環状の第1コイル12Jと方形環状の第2コイル22Jとをコイル長手方向の両端2辺の外周側で重ねて配置したものである。図12(B)の例は、方形角丸の環状の第1コイル12Kと方形環状の第2コイル22Kとをコイル短手方向の両端2辺の外周側で重ねて配置したものである。
【0055】
図12(C)の例は、方形角丸の環状の第1コイル12Lと方形環状の第2コイル22Lとを隣り合う2辺の外周側で重ねて配置したものである。図12(D)の例は、方形角丸の環状の第1コイル12Mと方形環状の第2コイル22Mとを1辺の外周側で重ねて配置したものである。図12(E)の例は、方形角丸の環状の第1コイル12Nと方形環状の第2コイル22Nとを3辺の外周側で重ねて配置したものである。
【0056】
この場合も第1、第2の実施形態と同様、第1コイルの外周側の一部で第2コイルと重なった状態であるが、図2および図8に示したように第2コイルに対応する第2磁性体を第1コイルとの間に設けることで、電磁結合による性能劣化を低減できる。
また、第1コイルと第2コイルとが重ならない辺が多いほど、コイル全体の配置面積が大きくなる一方で、コイル間の電磁結合による特性劣化をより軽減できる。
【0057】
(比較例)
図13は比較例のコイルユニットの構成を示す図であり、図13(A)はコイルユニットの平面図、図13(B)は図13(A)のA−A′線断面図である。
【0058】
比較例のコイルユニットは、第1磁性体511と、非接触電力伝送用コイルとして機能する第1コイル512と、非接触無線通信用コイルとして機能する第2コイル522とを備える。
【0059】
第1磁性体511は、方形の板状に形成され、板面の一方の面上に第1コイル512及び第2コイル522が配置される。第1コイル512は、導体の巻線が楕円環状に巻回されてなるコイルで構成され、充電用のコイルとして、外部の充電器から供給される電力を受電するものである。第2コイル522は、ガラスエポキシ基板等で構成される基板530上に形成された導体の配線パターンにより、楕円環状に巻回されてなるコイルで構成される。第2コイル522は、非接触無線通信用のコイルとして、リーダ/ライタ装置等の外部機器との間でデータを送受信するものである。第2コイル522は、第1コイル512の外周側に配置され、第1コイル512と第2コイル522とが重ならずに略同一平面上に位置している。
【0060】
基板530の一端部には、第1コイル512用の第1端子531と、第2コイル522用の第2端子532とが導体の配線パターンにより形成されている。第1端子531は配線を介して第1コイル512と接続され、第2端子532は基板530の配線パターンによって第2コイル522と接続されている。
【0061】
この比較例では、第1コイル512と第2コイル522とを積層せずに配置し、また、第2磁性体を設けない構成となっているので、第1コイル512と第2コイル522とが近接すると、両コイル間の電磁結合が大きくなり、その影響によって性能劣化が生じ、例えば非接触無線通信の最大通信距離が117[mm]に劣化することを確認しており、本発明の実施形態のコイルユニットによる非接触無線通信の最大通信距離の向上を実現することが困難となる。また、第1コイル512の外側に第2コイル522を配置して、2つのコイルを重ならないように併設することで、コイルの配置面積が大きくなり、コイルユニットを搭載する無線通信端末が大型になる。
【0062】
一方、本発明に係る実施形態では、上述した構成によって、複数のコイルを共存させる場合に、構成の小型化と各コイルの性能劣化の抑制とを両立することができる。
【0063】
なお、本発明は、本発明の趣旨ならびに範囲を逸脱することなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が様々な変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、非接触無線通信用コイル、非接触電力伝送用コイル等の複数のコイルを共存させる場合に、各コイルの性能劣化を抑制しつつ、省スペースで実現可能にできるという効果を有し、例えば携帯電話端末、スマートフォン等の非接触無線通信が可能な非接触無線通信用コイル、及びこれを搭載した携帯無線端末等として有用である。
【符号の説明】
【0065】
11、11A、11B 第1磁性体
12、12A〜12N 第1コイル
21、21A、21B 第2磁性体
22、22A〜22N 第2コイル
30、30A、30B 基板
31 第1端子
32 第2端子
50 携帯無線端末
51 非接触充電部
52 非接触無線通信部
53 制御回路
55 整流回路
57 変復調回路
58 電池
60 充電器
61 交流電源回路
62 制御回路
63 非接触電力伝送用コイル
70 リーダ/ライタ装置
71 変復調回路
72 制御回路
73 非接触無線通信用コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コイルと、
第2コイルと、
第1磁性体と、
第2磁性体とを備え、
コイルの厚さ方向において、
前記第1磁性体、前記第1コイル、前記第2磁性体、前記第2コイルの順に積層して配置され、
前記第1コイルと前記第2コイルの少なくとも一部が重なった状態である非接触無線通信用コイル。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触無線通信用コイルであって、
前記第1磁性体の透磁率が前記第2磁性体の透磁率よりも高い非接触無線通信用コイル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の非接触無線通信用コイルであって、
前記第1コイルの共振周波数が前記第2コイルの共振周波数よりも低い非接触無線通信用コイル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の非接触無線通信用コイルであって、
前記第1コイルの外周寄りで前記第2コイルの少なくとも一部が重なった状態である非接触無線通信用コイル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の非接触無線通信用コイルであって、
前記第2コイルの少なくとも一部が前記第1コイルの外側に位置している非接触無線通信用コイル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の非接触無線通信用コイルであって、
前記第1コイルが非接触電力伝送用であり、前記第2コイルが非接触無線通信用である非接触無線通信用コイル。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の非接触無線通信用コイルを搭載した携帯無線端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−98846(P2013−98846A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241255(P2011−241255)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】