説明

非接触給電装置付き誘導加熱装置及び暖房便座装置

【課題】非接触給電装置を介して誘導加熱コイルに簡単な回路構成で効率的に給電できるようにする。
【解決手段】
1次側ユニット2と、2次側ユニット3とを備え、1次側ユニット2には、1次コイル6と、1次コイル6に交流電気を供給するインバータ20とが設けられ、2次側ユニット3には、発熱体12と、発熱体12を誘導加熱する誘導加熱コイル11と、誘導加熱コイル11に接合すると共に1次コイル6と非接触でトランス結合する2次コイル7とが設けられ、1次側ユニット2に、1次コイル6と共振するコンデンサ13を1次コイル6に接続して1次側共振回路4を形成し、2次側ユニット3に、直列に接続する2次コイル7及び誘導加熱コイル11に、直列及び/又は並列にコンデンサC2,C3を接合して、2次コイル7とコンデンサC2及び誘導加熱コイル11とコンデンサC3の各組合せの共振周波数を同一とする2次側共振回路5を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電装置を介して給電された誘導加熱コイルで発熱体を誘導加熱する非接触給電装置付き誘導加熱装置、及び該非接触給電装置付き誘導加熱装置を適用した暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触給電装置付き誘導加熱装置を適用した暖房便座装置は、特許文献1に示す如く、便座支持体に、1次コイル及び1次コイルに交流電気を供給するインバータが設けられ、便座支持体と着脱可能な便座に、発熱体、発熱体を誘導加熱する誘導加熱コイル及び誘導加熱コイルに直列に接合した2次コイルが設けられ,1次コイルと2次コイルをトランス結合するように対面させ非接触で誘導加熱コイルに交流電気を供給するものがある。
【0003】
また、非接触電力伝送装置には、特許文献2に示す如く、小型かつ高効率で、1次コイルから不要輻射する高調波成分を低減させるために、結合トランスの1次側と2次側を個別に収容して、相互に分離可能に構成してなる1次側ユニットと2次側ユニットを具備し、1次コイルと共振するコンデンサを、前記1次コイルに直列に接続して1次側直列共振回路を形成し、この1次側直列共振回路と駆動回路との間に、コイル及びこのコイルに共振するコンデンサを有するL形共振回路を挿入し、このL形共振回路と1次側直列共振回路とを直列に接続し、2次コイルと共振するコンデンサを、2次コイルと直列に接続して2次側直列共振回路を形成したものがある。この非接触電力伝送装置は、2次側直列共振回路に接続して、負荷に給電する2次側整流回路が設けられている。
【特許文献1】特開2000−23880号
【特許文献2】国際公開WO2006/22365号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非接触給電装置を介して誘導加熱コイルに給電するには、誘導加熱コイルに2次コイルを直列に接合しただけでは達成することは不可能であり、特許文献1にも誘導加熱コイルへ効率的に給電するための具体的な技術について何ら開示されていない。
【0005】
そこで、非接触給電装置を介して誘導加熱コイルに給電する装置としては、特許文献1に記載の非接触電力伝送装置を利用して、2次側整流回路と誘導加熱コイルの間に2次側インバータを別途設けて、2次側インバータから誘導加熱コイルに高周波電流を給電して発熱体を誘導加熱することが考えられる。
しかし、2次側整流回路及び2次側インバータを併設することは、誘導加熱コイルを設けた便座等の2次側ユニットの回路構成が複雑になると共に、2次側整流回路及び2次側インバータに生じる損失で効率的に給電できない問題がある。
【0006】
本発明は、非接触給電装置を介して誘導加熱コイルに簡単な回路構成で効率的に給電できる非接触給電装置付き誘導加熱装置及び暖房便座装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
非接触給電装置を介して誘導加熱コイルに簡単な回路構成で効率的に給電できるようにするために請求項1記載の本発明が採用した手段は、1次側ユニットと、1次側ユニットと別体に形成した2次側ユニットとを備え、1次側ユニットには、1次コイルと、1次コイルに交流電気を供給するインバータとが設けられ、2次側ユニットには、発熱体と、発熱体を誘導加熱する誘導加熱コイルと、誘導加熱コイルに接合すると共に1次コイルと非接触でトランス結合できる2次コイルとが設けられた非接触給電装置付き誘導加熱装置において、1次側ユニットに、1次コイルと共振するコンデンサを1次コイルに接続して1次側共振回路を形成し、2次側ユニットに、直列に接続する2次コイル及び誘導加熱コイルに、直列及び/又は並列にコンデンサを接合して、2次コイルとコンデンサの組合せ及び誘導加熱コイルとコンデンサの組合せの各々の共振周波数を同一とする2次側共振回路を形成したことを特徴とする非接触給電装置付き誘導加熱装置である。
【0008】
インバータから誘導加熱コイルへ効率的に給電できるようにするために請求項2記載の本発明が採用した手段は、前記1次側共振回路の共振周波数と、前記2次側共振回路の前記各組合せの共振周波数と、前記インバータが供給する交流電気の周波数とを同一にした請求項1記載の非接触給電装置付き誘導加熱装置である。
【0009】
1次コイルと2次コイルが離隔しも両コイルを大型化することなく安定して給電できるようにするために請求項3記載の本発明が採用した手段は、トランス結合した前記1次コイルと2次コイルの結合係数が0.1〜0.3であり、前記1次コイルのQ値が5〜10である請求項1又は2の非接触給電装置付き誘導加熱装置である。
【0010】
非接触給電装置を介して誘導加熱コイルに簡単な回路構成で効率的に給電できる暖房便座装置とするために請求項4記載の本発明が採用した手段は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非接触給電装置付き誘導加熱装置を用い、前記1次側ユニットで形成した支持体に、前記2次側ユニットで形成した便座を仰伏自在に枢支し、誘導加熱で生じた発熱体の発熱を便座の着座面へ伝達させることを特徴とする暖房便座装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の本発明に係る非接触給電装置付き誘導加熱装置は、直列に接続する2次コイル及び誘導加熱コイルに直列及び/又は並列にコンデンサを接合する簡単な回路構成で2次側共振回路を形成できると共に、2次コイルとコンデンサの組合せ及び誘導加熱コイルとコンデンサの組合せの各々を同一の共振周波数で共振させることで、2次コイルから誘導加熱コイルに効率的に給電することができる。
【0012】
請求項2記載の本発明に係る非接触給電装置付き誘導加熱装置は、1次コイル、2次コイル及び誘導コイルの各々が形成する共振回路の共振周波数をインバータが供給する交流電気の周波数と同一とすることでインバータから誘導加熱コイルに効率的に給電することができる。
【0013】
請求項3記載の本発明に係る非接触給電装置付き誘導加熱装置は、2次コイルとの結合係数を0.1〜0.3の範囲にした1次コイルのQ値を5〜10の範囲とすることで、トランス結合した1次コイルと2次コイルの間に形成される間隔の寸法が数mm程度(例えば、3〜5mm)大きくなっても、両コイルを大型化することなく安定して給電できる。
【0014】
請求項4記載の本発明に係る暖房便座装置は、便座に簡単な回路構成で2次側共振回路を容易に組込むことができると共に、非接触給電装置を介して誘導加熱コイルに効率的に給電できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は本発明に係る非接触給電装置付き誘導加熱装置(以下、「本発明誘導加熱装置」と言う)の第1の実施の形態の回路図である。
【0016】
本発明誘導加熱装置A1は、1次側ユニット2と、1次側ユニット2と別体に形成した2次側ユニット3とを備え、1次側ユニット2に、1次コイル6と、1次コイル6に交流電気を供給するインバータ20とが設けられると共に、2次側ユニット3に、発熱体12と、発熱体12と対向して配置され発熱体12を誘導加熱する誘導加熱コイル11と、誘導加熱コイル11に接合して1次コイル6と非接触でトランス結合できる2次コイル7とが設けられている。発熱体12は、鉄・銅・アルミニウム等の金属や、これらを主体とする合金又は金属化合物などの導電性材料をシート状の形態としたものが選択され、対向する誘導加熱コイル11の電磁誘導作用で渦電流が生じて発熱する。
【0017】
前記1次コイル6及び2次コイル7からなるトランス8は、図示は省略したが、1次側ユニット2に設けたU字型又はI字型等の1次コアの胴部に1次巻き線を巻回してインダクタンスL1の1次コイル6が形成され、また、2次側ユニット3に設けたU字型又はI字型等の2次コアの胴部に巻き線を巻回してインダクタンスL2の2次コイル7が形成され、1次コイル6の磁力線から高周波電力を2次コイル7で取り出すようにしてある。また、1次コイル6及び2次コイル7は、筒状のボビンの内部に、巻き線を巻回してなるコイルを内蔵させて形成することもある。1次側ユニット2と2次側ユニット3の間には、1次側ユニット2の樹脂製外郭と2次側ユニット3の樹脂製外郭が介在しており、トランス8は、1次コアの先端と2次コアの先端とが、これら樹脂製外郭により、数mm(例えば、3〜5mm)のギャップを隔てて対向してトランス結合するようになっている。
【0018】
なお、前記2次側ユニット3は、1次側ユニット2に対して移動可能に配置することもある。移動可能とは、1次側ユニット2に対して2次側ユニット3が接合して両ユニット2,3が一体化する状態から両ユニット2,3が分離して別体となる状態に変化する場合や、1次側ユニット2に対して2次側ユニット3が枢支部を介して揺動自在に設けられる場合等をいう。1次側ユニット2に対して2次側ユニット3が接合又は揺動等して1次コイル6及び2次コイル7が接近してトランス結合するときには、1次コイル6の磁力線から高周波電力を2次コイル7で取り出せる状態となり、逆に、1次側ユニット2に対して2次側ユニット3が分離又は揺動等して1次コイル6及び2次コイル7が離れてトランス結合しなくなるときには、1次コイル6の磁力線から高周波電力を2次コイル7で取り出せない状態となる。
【0019】
前記1次側ユニット2に設けられる1次側回路は、外部電源(AC100V)に接合される側から1次コイル6へ向かって順に、ラインフィルター17、整流・平滑回路18、2相発振器19、ハーフブリッジ形又はフルブリッジ形の高周波インバータ20、インダクタンスL4のコイル16及び容量C4のコンデンサ15から形成したL形共振回路14、及びインダクタンスL1の1次コイル6と共振する容量C1のコンデンサ13を1次コイル6に接続して形成した共振周波数f1 (式(1)参照)の1次側共振回路4を備え、2相発振器19で駆動される高周波インバータ20から1次コイル6に交流電気を供給するように構成してある。L形共振回路14は、特許文献2に示す非接触電力伝送装置と同様に、インバータ20が供給する交流電気の周波数f20よりも5%〜25%低い共振周波数とすることで、フィルター(ローパスフィルター)としての機能も併せ持ち、1次コイルL1からの高調波成分の不要輻射を低減することができるようになる。
【0020】
【数1】

【0021】
前記2次側ユニット3に設けられ、2次コイル7と誘導加熱コイル11を直列に接合する2次側共振回路5は、2次コイル7と共振する容量C2のコンデンサ9を2次コイル7に接続して形成した2次コイル側共振回路5aと、インダクタンスL3の誘導加熱コイル11と共振する容量C3のコンデンサ10を誘導加熱コイル11に接続して形成した誘導コイル側共振回路5bとを備え、2次コイル側共振回路5aの共振周波数f5a(式(2)参照)及び誘導コイル側共振回路f5b(式(3)参照)を同一にしてある。本実施の形態に係る本発明誘導加熱装置A1は、前記1次側共振回路4の前記共振周波数f1 、2次コイル側共振回路5aの共振周波数f5a及び誘導コイル側共振回路5bの共振周波数f5bを、インバータ20が供給する交流電気の周波数f20(例えば、80KHZ)と同一にして、インバータ20から誘導加熱コイル11に効率的に給電すると共に、1次コイル6と2次コイル7からの不要輻射のノイズを低減することができる。
【0022】
【数2】

【0023】
【数3】

【0024】
前記トランス8は、トランス結合するときの1次コイル6と2次コイル7の結合係数kを0.1〜0.3の範囲となるように構成するとよい。結合係数kが0.1を下回るときには、1次コイル6のインダクタンスL1及び2次コイル7のインダクタンスL2が大きくなり過ぎて、トランス8が大型化すると共にトランス8における損失の増加となり好ましくなく、また、結合係数kが0.3を超えるときには、1次側共振回路4及び2次コイル側共振回路5aの共振周波数の調整が難しくなると共に、後述する1次コイル6のQ値であるQ1を5〜10の範囲とすることが難しくなる。
【0025】
また、前記トランス8は、1次コイル6及び2次コイル6のQ値を定めるとき、1次コイル6のQ値であるQ1を5〜10の範囲となるように構成するとよい。Q1が5を下回るときには、1次コイル6のインダクタンスL1の電流波形や電圧波形が歪んで、トランス8より外側の空間への放射磁界強度が上昇する好ましくない状態となり、また、Q1が10を超えるときには、2相発振器19が発する駆動周波数の変動(経時変動や温度変動による変動)、1次側共振回路4の変動(1次コイル6やコンデンサ13の経時変動や温度変動による変動)及び/又は駆動周波数の設定のズレに敏感に反応して2次コイル7で取り出せる高周波電力の変動が大きくなり、安定した給電が困難となる。なお、上記Q1、Q2及び前記トランス8の結合係数kの間には、式(4)の関係がある。トランス8は、2次コイル7との結合係数を0.1〜0.3の範囲にした1次コイル6のQ値であるQ1を5〜10の範囲とすることで、前記1次側ユニット2及び2次側ユニット3の樹脂製外郭の介在により生じる1次コイル6と2次コイル7の間に形成される間隔の寸法が大きくなっても、両コイル6,7を大型化することなく安定して給電できる。
【0026】
【数4】

【0027】
前記誘導加熱コイル11は、前記共振周波数f5bの共振状態において、コイル単体の等価直列抵抗であるrと、磁気誘導作用で加熱する発熱体12と組み合わすことで生じる等価直列抵抗であるrcが等価的に存在する。そして、誘導加熱コイル11とコンデンサ10から形成した誘導コイル側共振回路5bは、共振状態において、誘導加熱コイル11のインダクタンスL3とコンデンサ10の容量C3の影響がなくなるため、等価直列抵抗RL=r+rcが純抵抗となって2次コイル7の負荷となる。前記2次側共振回路5は、直列共振回路による低インピーダンスの2次コイル側共振回路5aと、直列共振回路による低インピーダンスの誘導コイル側共振回路5bの負荷である等価直列抵抗RLとの整合が取り易くなる。
【0028】
(第2の実施の形態)
図2は第2の実施の形態に係る本発明誘導加熱装置A2の回路図である。本発明誘導加熱装置A2は、2次コイル7と誘導加熱コイル11を接続する2次側共振回路5が前記第1の実施の形態の本発明誘導加熱装置A1(図1参照)と相違するだけで、その他の点については第1の実施の形態の本発明誘導加熱装置A1と同一であり、同一の符号は同一の構成部材等を示す。
【0029】
本発明誘導加熱装置A2の2次コイル7と誘導加熱コイル11を直列に接続する2次側共振回路5は、2次コイル7及び誘導加熱コイル11の各々と同一の共振周波数f5 で共振する共用のコンデンサ21の一個を、2次コイル7及び誘導加熱コイル11に直列に接続して、回路構成の簡素化を更に図ってある。本実施の形態では、2次コイル7とコンデンサ21の組合せ及び誘導加熱コイル11とコンデンサ21の組合せの各々の共振周波数を同一にして、2次側共振回路5の共振周波数f5 が第1の実施の形態の共振周波数f5a及びf5bと同一となるようにしてある。本実施の形態のコンデンサ21の容量C5と、前記第1の実施の形態のコンデンサ9,10の容量C2,C3の関係は、式(5)に示す通りとなる。本実施の形態は、前記第1の実施の形態のコンデンサ9,10を共用のコンデンサ21に置換したものであり、共振回路の構成の簡略化を図っている。
【0030】
【数5】

【0031】
(第3の実施の形態)
図3は第3の実施の形態に係る本発明誘導加熱装置A3の回路図である。本発明誘導加熱装置A3は、2次コイル7と誘導加熱コイル11を接続する2次側共振回路5が前記第1の実施の形態の本発明誘導加熱装置A1(図1参照)と相違するだけで、その他の点については第1の実施の形態の本発明誘導加熱装置A1と同一であり、同一の符号は同一の構成部材等を示す。
【0032】
本発明誘導加熱装置A3の2次コイル7と誘導加熱コイル11を直列に接続する2次側共振回路5は、2次コイル7と共振する容量C2のコンデンサ9を2次コイル7に直列に接続して形成した2次コイル側共振回路5aと、インダクタンスL3の誘導加熱コイル11と共振する容量C3のコンデンサ10を誘導加熱コイル11に並列に接続して形成した誘導コイル側共振回路5bとを備え、2次コイル側共振回路5aの共振周波数f5a(式(2)参照)及び誘導コイル側共振回路f5b(式(3)参照)を同一にしてある。
【0033】
(第4の実施の形態)
図4は第4の実施の形態に係る本発明誘導加熱装置A4の回路図である。本発明誘導加熱装置A4は、2次コイル7と誘導加熱コイル11を接続する2次側共振回路5が前記第1の実施の形態の本発明誘導加熱装置A1(図1参照)と相違するだけで、その他の点については第1の実施の形態の本発明誘導加熱装置A1と同一であり、同一の符号は同一の構成部材等を示す。
【0034】
本発明誘導加熱装置A4の2次コイル7と誘導加熱コイル11を直列に接続する2次側共振回路5は、2次コイル7と共振する容量C2のコンデンサ9を2次コイル7に並列に接続して形成した2次コイル側共振回路5aと、インダクタンスL3の誘導加熱コイル11と共振する容量C3のコンデンサ10を誘導加熱コイル11に並列に接続して形成した誘導コイル側共振回路5bとを備え、2次コイル側共振回路5aの共振周波数f5a(式(2)参照)及び誘導コイル側共振回路f5b(式(3)参照)を同一にしてある。2次側共振回路5は、並列共振回路による高インピーダンスの2次コイル側共振回路5aと、並列共振回路による高インピーダンスの誘導コイル側共振回路5bの負荷である等価直列抵抗RLとの整合が取り易くなる。
【0035】
(第5の実施の形態)
図5は第5の実施の形態に係る本発明誘導加熱装置A5の回路図である。本発明誘導加熱装置A5は、2次コイル7と誘導加熱コイル11を接続する2次側共振回路5が前記第1の実施の形態の本発明誘導加熱装置A1(図1参照)と相違するだけで、その他の点については第1の実施の形態の本発明誘導加熱装置A1と同一であり、同一の符号は同一の構成部材等を示す。
【0036】
本発明誘導加熱装置A5の2次コイル7と誘導加熱コイル11を直列に接続する2次側共振回路5は、2次コイル7及び誘導加熱コイル11の各々と同一の共振周波数f5 (共振周波数f5 は、第1の実施の形態の共振周波数f5a及びf5bと同一である。)で共振する共用のコンデンサ22の一個を、2次コイル7及び誘導加熱コイル11に並列に接続して、回路構成の簡素化を更に図ってある。なお、コンデンサ22の容量C6と、前記第4の実施の形態の本発明誘導加熱装置A1のコンデンサ9,19の容量C2,C3の関係は、式(6)に示す通りとなる。
【0037】
【数6】

【0038】
(第6の実施の形態)
図6乃至図9は前記本発明誘導加熱装置A1乃至A5のいずれか一つを適用した暖房便座装置30の第6の実施の形態を示すものであり、図6は暖房便座装置30の概略構成を示す平面図であって、便座32の左半分に誘導加熱コイル11を示すと共に右半分に発熱体12を示すものである。図7は暖房便座装置30の左側面図であって、図(A)はロック装置49のロック状態を示し、図(B)はロック装置49の非ロック状態を示すものである。図8は図7(A)の一点鎖線イで囲まれた箇所を拡大して示す断面図、図9は便座の枢支部X2に組み込まれた1次コイル6及び2次コイル7からなるトランス8の近辺を示す正面図であって,図(A)は支持体6に便座32を取り付けてトランス8を形成した状態を示し、図(B)は支持体6から便座32を分離した状態を示すものである。
【0039】
本実施の形態に係る暖房便座装置30は、前記非接触給電装置付き誘導加熱装置A1乃至A5のいずれか一つを適用したものであって、図6及び図7に示す如く、便器(図示省略)の後方上面に設置される1次側ユニット2である支持体31と、支持体31に揺動自在に支持される2次側ユニット3である便座32と、支持体31に便座32を揺動自在に枢支する左右の一方(本例では「左」を言う。以下同様)の枢支部X1及び左右の他方(本例では「右」を言う。以下同様)の枢支部X2とを備え、支持体31に対して便座32が両方の枢支部X1,X2を介して揺動自在且つ着脱可能になっている。なお、暖房便座装置30は、図6に示す態様のものと左右対称に形成して、一方を「右」とすると共に他方を「左」とすることもある。
【0040】
前記便座32は、図6乃至図8に示す如く、着座面(着座した使用者の臀部の接触が予定される部分)33aを形成した本体部33と、本体部33の揺動中心側となる後方の両側に突設した一方の取付用腕部34及び他方の取付用腕部35とからなり、本体部33の内部に加熱手段H及び便座側制御部B2を設けてある。加熱手段Hは、本体部33の着座面33aを形成する表面材33bの裏面側に設けた鉄・銅・アルミニウム等の金属や、これらを主体とする合金又は金属化合物などの導電性材料をシート状の形態とした発熱体12(図6は発熱体12の右側を示しているが、左側にも発熱体12が設けられる)と、発熱体12の下方側で底板33c上などに設けた誘導加熱コイル11(図6は誘導加熱コイル11の右側を示しているが、左側にも誘導加熱コイル11が設けられる)と、発熱体12と誘導加熱コイル11の間に充填した断熱層36(図8参照)との組み合わせからなり、誘導加熱コイル11で発熱体12に渦電流を生じさせて発熱体12を瞬時に発熱させ、着座面33aを迅速に昇温するようにしてある。便座側制御部B2は、前記本発明誘導加熱装置A1乃至A5の2次側ユニット3に設けた2次側共振回路5のコンデンサ9,10(又は21,22)を備え、2 次コイル7と誘導加熱コイル11を接続している。
【0041】
前記誘導加熱コイル11は、図6に示す如く、導線を四角状等に巻き上げた薄い面状のものであって、複数個を直列に接続され、発熱体12との間の距離の違いに応じ導線の捲き数及び/又は平面積(外側の導線で囲まれた内側の面積)を調整して、発熱体12の発熱量を均等化してある。本例では、誘導加熱コイル11の配置領域(便座本体部33の底板33c上面)を、発熱体12との距離に応じて複数の領域に区画し、各領域に配置する分割した誘導加熱コイル11a〜11gにおける導線の捲き数及び/又は平面積を、通電時に電磁誘導で加熱される発熱体12の発熱量が全域にわたり出来るだけ均等化されるよう設定して、着座面33aの全域にわたって温度の均一化を図ってある。分割した複数の誘導加熱コイル11a〜11gは、便座32の本体部33に環状に配置されて直列/又は並列に接合されて誘導加熱コイル11を形成して、便座側制御部B2に接合される。
【0042】
前記支持体31は、図6に示す如く、例えば箱状の形態を有し、前記便座32の両方の取付用腕部34,35で挟まれる膨出部37を前面部に形成してある。前記支持体31の内部に設けた支持体側制御部B1は、前記本発明誘導加熱装置A1乃至A5(図1〜図5参照)の1次側ユニット2に設けたラインフィルター17、整流・平滑回路18、2相発振器19、高周波インバータ20、L形共振回路14及び1次側共振回路4のコンデンサ13を備え、電源Wに接続して電力の供給を受けると共に、他方の枢支部X2に設けた給電装置であるトランス8と、もう一方の枢支部X1に設けた便座・便蓋揺動用駆動モータMとに電力を供給するようにしてある。トランス8は、支持体側制御部B1に接続した1次コイル6(図5参照)と、便座側制御部B2に接続した2次コイル7とからなり、両コイル間の電磁誘導で給電を行うようにしてある。駆動モータMは、便座32を強制的に揺動させたり、便蓋(図示略)を自動開閉したりするものである。
【0043】
前記一方(左)の枢支部X1は、図6に示す如く、前記モータMの出力軸であって支持体31の膨出部37の一方側面から更に一方方向(左方向)へ向かって突出する一方枢軸47と、図7に示す如く、便座32の一方の取付用腕部34に設けられ、軸装部48a及び軸装部48aへ一方枢軸47を出し入れするための一方枢軸出入用開口部48bを有する一方軸受部48と、軸装部48aへ挿着した一方枢軸47が抜け出すのを阻止するためのロック装置49とを備えている。
【0044】
前記他方(右)の枢支部X2は、図9に示す如く、便座32の他方の取付用腕部35から一方の方向(左方向)へ向かって突出する短円柱状の他方枢軸43と、支持体31の膨出部37の他方側(右側)に開設した横向きの嵌挿用凹部45へ開口端45bから他方枢軸43を出し入れできる他方軸受部44とからなる。他方軸受部44は、支持体31の一方枢軸47及び他方軸受部44が形成する支持体軸芯Y1(便座32を揺動自在に枢支するときの支持体側の枢支中心となるもの)と分離状態の便座32の一方軸受部48及び他方枢軸43が形成する便座軸芯Y2(便座32を揺動自在に枢支するときの便座側の枢支中心となるもの)との交差角θを大きくした便座傾斜姿勢E(図(B)参照)のまま他方枢軸43を受け入れでき、更に、他方枢軸43を受け入れたまま両軸芯Y1,Y2の交差角θを小さくさせる便座傾斜姿勢(図示略)を経て両軸芯Y1,Y2を合致させる便座接合姿勢(図(A)参照)へ移行させるのに伴い、前記一方(左)の枢支部X1の一方枢軸47を、一方軸受部48の開口部48bを通過させて軸装部48aへ挿着できるように、嵌挿用凹部45の奥側45aに比べて開口端45b側を大径となるように傾斜部45cを形成してある。
【0045】
前記他方(右)の枢支部X2は、図9に示す如く、他方軸受部44の嵌挿用凹部45より奥側に給電装置であるトランス8の1次コイル6を埋設すると共に、他方枢軸43にトランス8の2次コイル7を埋設してある。1次コイル6は、ボビン6aの内部にコイル6bを内蔵させたものであり、また、2次コイル7は、ボビン7aの内部にコイル7bを内蔵させたものである。トランス8は、1次コイル6の先端と2次コイル7の先端とが、他方軸受部44を形成する樹脂製外郭及び他方枢軸43を形成する樹脂製外郭により、数mm(例えば、3〜5mm)のギャップを隔てて対向してトランス結合している。トランス8は、前述の如く、1次コイル6と2次コイル7の結合係数が0.1〜0.3であり、1次コイル6のQ値が5〜10となるように構成されている。
【0046】
(第7の実施の形態) 図10は前記本発明誘導加熱装置A1乃至A5のいずれか一つを適用した暖房便座装置の第7の実施の形態を示すものであり、暖房便座装置50の概略構成を示す平面図であって、便座32の左半分に誘導加熱コイル11を示すと共に右半分に発熱体12を示すものである。
【0047】
本実施の形態に係る暖房便座装置50は、第6の実施の形態に係る暖房便座装置30とトランス8が相違し、その他の点については第6の実施の形態の暖房便座装置30と実質的に同一であり、同一の符号は同一の構成部材等を示す。
【0048】
本実施の形態のトランス8は、支持体6に内蔵され、U字型の1次コアの胴部に1次巻き線を巻回して形成した1次コイル6と、便座本体部33に内蔵され、U字型の2次コアの胴部に巻き線を巻回して形成した2次コイル7とからなり、便座32を着座可能な伏倒状態としたときに、1次コイル6と2次コイル7が対峙してトランス結合し、1次コイル6の磁力線から高周波電力を2次コイル7で取り出すようにしてある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る非接触給電装置付き誘導加熱装置の第1の実施の形態の回路図である。
【図2】本発明に係る非接触給電装置付き誘導加熱装置の第2の実施の形態の回路図である。
【図3】本発明に係る非接触給電装置付き誘導加熱装置の第3の実施の形態の回路図である。
【図4】本発明に係る非接触給電装置付き誘導加熱装置の第4の実施の形態の回路図である。
【図5】本発明に係る非接触給電装置付き誘導加熱装置の第5の実施の形態の回路図である。
【図6】本発明に係る暖房便座装置の第6の実施の形態を示すものであり、暖房便座装置の概略構成を示す平面図である。
【図7】第6の実施の形態に係る暖房便座装置の左側面図であって、図(A)はロック装置のロック状態を示し、図(B)はロック装置の非ロック状態を示すものである。
【図8】図7(A)の一点鎖線イで囲まれた箇所を拡大して示す断面図である。
【図9】便座の枢支部に組み込まれた1次コイル及び2次コイルからなるトランスの近辺を示す正面図であって,図(A)は支持体に便座を取り付けてトランスを形成した状態を示し、図(B)は支持体から便座を分離した状態を示すものである。
【図10】本発明に係る暖房便座装置の第7の実施の形態を示すものであり、暖房便座装置の概略構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0050】
2…1次側ユニット、3…2次側ユニット、4…1次側共振回路、5…2次側共振回路、6…1次コイル、7…2次コイル、8…トランス、9…2次コイル側コンデンサ、10…誘導加熱コイル側コンデンサ、11…誘導加熱コイル、12…発熱体、13…1次コイル側コンデンサ、20…高周波インバータ、21(22)…共用のコンデンサ、30(50)…暖房便座装置、31…支持体、32…便座、33…本体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次側ユニットと、1次側ユニットと別体に形成した2次側ユニットとを備え、1次側ユニットには、1次コイルと、1次コイルに交流電気を供給するインバータとが設けられ、2次側ユニットには、発熱体と、発熱体を誘導加熱する誘導加熱コイルと、誘導加熱コイルに接合すると共に1次コイルと非接触でトランス結合できる2次コイルとが設けられた非接触給電装置付き誘導加熱装置において、
1次側ユニットに、1次コイルと共振するコンデンサを1次コイルに接続して1次側共振回路を形成し、
2次側ユニットに、直列に接続する2次コイル及び誘導加熱コイルに、直列及び/又は並列にコンデンサを接合して、2次コイルとコンデンサの組合せ及び誘導加熱コイルとコンデンサの組合せの各々の共振周波数を同一とする2次側共振回路を形成した
ことを特徴とする非接触給電装置付き誘導加熱装置。
【請求項2】
前記1次側共振回路の共振周波数と、前記2次側共振回路の前記各組合せの共振周波数と、前記インバータが供給する交流電気の周波数とを同一にした請求項1記載の非接触給電装置付き誘導加熱装置。
【請求項3】
トランス結合した前記1次コイルと2次コイルの結合係数が0.1〜0.3であり、前記1次コイルのQ値が5〜10である請求項1又は2の非接触給電装置付き誘導加熱装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非接触給電装置付き誘導加熱装置を用い、前記1次側ユニットで形成した支持体に、前記2次側ユニットで形成した便座を仰伏自在に枢支し、誘導加熱で生じた発熱体の発熱を便座の着座面へ伝達させることを特徴とする暖房便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−113992(P2010−113992A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286690(P2008−286690)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【出願人】(300044894)北伸電機株式会社 (8)
【Fターム(参考)】