説明

非接触ICタグのリーダライタ、アンテナ及びシステム

【課題】リーダライタに接続されたPC又は端末からの動作指令によりアンテナの偏波を変えて干渉を軽減できるリーダライタ及びアンテナを提供する。
【解決手段】リーダライタ21に設けられる送信部23は、処理制御部22からの制御指令に従って質問波を生成し、サーキュレータ25及び切替スイッチ26を介してアンテナポートPiへ出力する。処理制御部22は、PCやクライアント端末からの偏波切替指令信号に従って制御信号付加回路27に偏波制御信号を与え、制御信号付加回路27は上記偏波切替指令信号によって偏波制御信号をアンテナポートPiに付加する。アンテナポートPiに接続されるアンテナ41は、アンテナポートPiから給電される高周波信号から偏波制御信号を分離する制御信号分離回路50を備え、この制御信号分離回路50で分離された偏波制御信号に基づいてアンテナ放射素子44の偏波方向を切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICタグのリーダライタ、該リーダライタに使用されるアンテナ及び該装置により構成される非接触ICタグのリーダライタシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触ICタグシステムは、商品や物品等にICタグを取り付け、リーダライタのアンテナから上記ICタグに質問波を送信し、ICタグからの応答波を受信して固有のデータを読み取ることにより商品や物品等の管理を行えるものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、近年では、リーダライタに複数のアンテナポートを設けてそれぞれにアンテナを接続し、上記複数のアンテナを自動制御シーケンスにより一定の間隔で順次切替えることが行われている。上記複数のアンテナは商品や物品等を移動させるベルトコンベアの通過ゲートにおいてICタグとの書き込み、読み取りエリアを拡張するように設置される。即ち上記通過ゲートにおいて多面に配置されたアンテナにより小電力の電波信号でもベルトコンベア上の商品や物品等に取り付けられたICタグと確実に通信が行えるようにしている。
【0004】
上記複数のアンテナポートを備えた従来のリーダライタは、図4に示すように構成されている。図4において、11はリーダライタで、このリーダライタ11は、非接触ICタグシステムを管理するパーソナルコンピュータ(PC)10やクライアント端末(図示せず)にI/F(インタフェース)を経由して接続されている。
【0005】
上記リーダライタ11内には、上記パーソナルコンピュータ10から送られてくる動作指令に従って動作する処理制御部12が設けられると共に、この処理制御部12に接続される送信部13及び受信部14が設けられる。上記送信部13は、処理制御部12からの制御命令に従って質問波を生成する。この質問波は、サーキュレータ15の端子1→2を通り、切替スイッチ16により順次切替えられて例えば4つのアンテナポートP1〜P4へ送られる。上記切替スイッチ16は、処理制御部12のアンテナ切替えの自動制御シーケンスに従って一定の周期で切替え動作し、送信部13からサーキュレータ15を介して送られてくる質問波をアンテナポートP1〜P4に選択的に出力する。
【0006】
上記各アンテナポートP1〜P4には、同軸ケーブル17を介してアンテナ18が接続される。なお、図4では、アンテナポートP1に同軸ケーブル17を介してアンテナ18が接続されている状態を示している。上記アンテナ18としては、例えばパッチアンテナ18aが使用される。上記パッチアンテナ18aはパッチアンテナ用グランド面18bを設けた構成となっており、パッチアンテナ18aが同軸ケーブル17の中心導体に接続され、パッチアンテナ用グランド面18bが同軸ケーブル17の外導体に接続される。上記パッチアンテナとしては、例えば特許文献2に示されているものがある。
【0007】
上記アンテナ18は、送信部13から送られてくる質問波をICタグ(図示せず)に向けて送信し、ICタグからの応答波を受信して同軸ケーブル17を介してリーダライタ11へ出力する。上記アンテナ18から同軸ケーブル17を介して出力されるICタグの応答波は、リーダライタ11のアンテナポートP1に入力され、切替スイッチ16及びサーキュレータ15の端子2−3を通って受信部14に入力されて検波される。この検波されたICタグのデータは、処理制御部12で復号化され、上記パーソナルコンピュータ10やクライアント端末へ送られる。
【0008】
アンテナポートP1〜P4に接続される複数のアンテナ18は例えば商品や物品等を移動させるベルトコンベアの通過ゲートに設置され、商品や物品等に取り付けられたICタグとの間で書き込み、読み取りエリアを拡張するように設置される。これにより小電力の電波信号でもベルトコンベア上の商品や物品等に取り付けられたICタグとの間で書き込み、読み取りが確実に行えるようにしている。
【0009】
また、複数のベルトコンベアラインが設置され系統の異なる通過ゲートが接近している場合、異なる系統の電波による干渉で、所望のICタグとの通信が阻害される可能性がある。そのため異なる偏波の電波を用いて交差偏波識別特性により相互の干渉を軽減することが行われる。このような目的で、例えば右旋円偏波と左旋円偏波のアンテナを用意して電波の干渉状況により使い分けることが行われる。
【特許文献1】特開2003−218736号公報
【特許文献2】特開2005−51536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように非接触ICタグシステムにおいて、複数のアンテナポートP1、P2、…を備えたリーダライタ11を複数設置して複数の系統で商品や物品を管理する場合、近接配置される系統の異なるアンテナとして異なる偏波のアンテナを使用することにより相互の影響を防止することができる。
【0011】
しかし、従来のリーダライタ11は、電波の伝播状況を事前に推測もしくは実際に電波の伝搬状況を測定して最も干渉の少なくなるようにアンテナポートP1、P2、…に右旋円偏波あるいは左旋円偏波のアンテナを単に接続しているだけであるので、一旦アンテナが設置された後は、周囲の環境変化により、電波の干渉状況が変化する場合は再度、上記の設定をやり直さなければならない。
【0012】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、複数のベルトコンベアラインが設置され系統の異なる通過ゲートが接近している場合、異なる系統の電波による干渉により、所望のICタグとの通信が阻害された場合などに、リーダライタに接続されたPCあるいはクライアント端末からの動作指令によりアンテナの偏波を変えて干渉を軽減し、ICタグとの通信の確度を向上させることが可能な非接触ICタグのリーダライタ、該リーダライタに使用されるアンテナ及び該装置により構成される非接触ICタグのリーダライタシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明に係る非接触ICタグのリーダライタは、ICタグへの質問波を出力する送信部と、右旋偏波と左旋偏波の切替え機能を備えたアンテナが接続される複数のアンテナポートと、前記送信部から出力される質問波を前記複数のアンテナポートに切替えて出力する切替スイッチと、外部指令信号に基づいて各内部回路の動作を制御する処理制御部と、前記切替スイッチと前記各アンテナポートとの間にそれぞれ設けられ、前記処理制御部から与えられる偏波切替指令信号により前記アンテナポートに偏波制御信号を付加する制御信号付加回路とを具備することを特徴とする。
【0014】
第2の発明は、第1の発明に係る非接触ICタグのリーダライタに使用されるアンテナにおいて、前記リーダライタの各アンテナポートから給電される高周波信号から偏波制御信号を分離する制御信号分離手段と、前記制御信号分離手段により分離された偏波制御信号に基づいて該アンテナの偏波方向を切替える偏波方向切替手段とを具備することを特徴とする。
【0015】
第3の発明は、第1の発明に係る非接触ICタグのリーダライタに使用されるアンテナにおいて、90度の位相差で給電される第1の給電点及び第2の給電点を有する一つの放射素子と、2端子が前記第1の給電点及び第2の給電点に接続され、他方の2端子がそれぞれ高周波リレーを介してアンテナ端子に接続される4端子のハイブリッド回路と、前記リーダライタのアンテナポートから前記アンテナ端子に供給される信号から偏波制御信号を分離する制御信号分離手段と、前記制御信号分離手段により分離された偏波制御信号に基づいて前記高周波リレーを切替え、前記ハイブリッド回路の他方の2端子の一方を前記前記アンテナ端子に接続すると共に該2端子の他方を終端抵抗器により接地して前記放射素子の偏波方向を設定する手段とを具備することを特徴とする。
【0016】
第4の発明に係る非接触ICタグのリーダライタシステムは、ICタグへの質問波を出力する送信部と、複数のアンテナポートと、前記送信部から出力される質問波を前記複数のアンテナポートに切替えて出力する切替スイッチと、外部指令信号に基づいて各内部回路の動作を制御する処理制御部と、前記切替スイッチと前記各アンテナポートとの間にそれぞれ設けられ、前記処理制御部から与えられる偏波切替指令信号により前記アンテナポートに偏波制御信号を付加する制御信号付加回路とからなるリーダライタと、前記アンテナポートに接続され、右旋偏波と左旋偏波の切替え機能を備えたアンテナとを具備し、前記アンテナは、前記リーダライタのアンテナポートから送られてくる信号から偏波制御信号を検出する制御信号分離手段と、前記制御信号分離手段により分離された偏波制御信号に基づいて該アンテナの偏波方向を切替える偏波方向切替手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アンテナが設置された後に、周囲の環境変化により、電波の干渉状況が変化した場合でも、リーダライタに接続されたパーソナルコンピュータあるいはクライアント端末からの動作指令によりアンテナの偏波を変えて電波の干渉を軽減しICタグとの通信の確度を向上させることが可能なリーダライタ及びアンテナが実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0019】
図1は本発明の一実施形態に係るリーダライタ及びアンテナの構成図である。なお、図1では、4つのアンテナポートP1〜P4を備えたリーダライタを例として示している。
【0020】
図1において、21は非接触ICタグのリーダライタで、このリーダライタ21に非接触ICタグシステムを管理するパーソナルコンピュータ(PC)20やクライアント端末がI/F(インタフェース)を経由して接続される。
【0021】
上記リーダライタ21内には、上記パーソナルコンピュータ20やクライアント端末(図示せず)から送られてくる制御指令に従って動作する処理制御部22が設けられると共に、この処理制御部22に接続される送信部23及び受信部24が設けられる。上記処理制御部22は、パーソナルコンピュータ20やクライアント端末から例えば質問波の送信を指示する制御指令(制御コマンド)等が与えられ、その制御指令に従って送信部23等の動作を制御する。送信部23は、処理制御部22からの制御指令に従って質問波を生成する。この質問波は、サーキュレータ25の端子1→2を通り、切替スイッチ26を介してアンテナポートP1〜P4へ出力される。制御信号付加回路27−1〜27−4が上記アンテナポートP1〜P4と切替スイッチ26のラインGとの間に設けられる。制御信号付加回路27−1〜27−4は、処理制御部22からの偏波切替指令信号により上記切替スイッチ26のラインGに偏波制御信号をアンテナポートに付加するためのものである。制御信号付加回路27−1〜27−4については詳細を後述する。
【0022】
上記切替スイッチ26は、処理制御部22のアンテナ切替えの自動制御シーケンスに従って一定の周期で切替え動作し、送信部23からサーキュレータ25を介して送られてくる質問波をラインGのそれぞれの信号線を介してアンテナポートP1〜P4へ選択的に出力する。上記制御信号付加回路27−1〜27−4は、アンテナポートP1〜P4に接続される。このアンテナポートP1〜P4には、同軸ケーブル40を介してアンテナ41−1〜41−4が接続される。アンテナ41−1〜41−4は、それぞれ右旋偏波と左旋偏波の円偏波方向を自在に切替えられるように構成したもので、その詳細については後述する。
【0023】
アンテナ41−1〜41−4は、送信部23からアンテナポートP1〜P4を介して送られてくる質問波をICタグ(図示せず)に向けて送信し、ICタグからの応答波を受信してリーダライタ21へ出力する。上記アンテナ41−1〜41−4から出力されるICタグの応答波は、リーダライタ21のアンテナポートP1〜P4からラインGの信号線を介して切替スイッチ26に入力され、この切替スイッチ26により選択された後、サーキュレータ25の端子2−3を通って受信部24に入力されて検波される。この検波されたICタグのデータは、処理制御部22で復号化され、上記パーソナルコンピュータ20やクライアント端末へ送られる。
【0024】
アンテナ41−1〜41−4において、リーダライタ21のアンテナポートP1〜P4から給電される高周波信号は各アンテナのアンテナ端子A1〜A4を経て、偏波切替回路52、ハイブリッド回路(HYB)51、アンテナ放射素子44と伝わる。上記アンテナ端子A1〜A4には、制御信号分離回路50が接続されている。制御信号分離回路50は、リーダライタ21のアンテナポートP1〜P4に付加された偏波制御信号を分離する。なお、制御信号分離回路50を含めアンテナ41−1〜41−4の構成については詳細を後述する。
【0025】
以下の説明において、複数ある同一構成の構成要素、回路については区別せず、アンテナポートPi、アンテナ端子Ai(i=1〜N、本実施形態では、N=4)と表記する。制御信号付加回路27−1〜27−4は全て同一の回路構成なので、以下制御信号付加回路27として説明する。また、アンテナ41−1〜41−4も全て同一の回路構成なので、以下アンテナ41として説明する。
【0026】
異なる系統の電波による干渉により、所望のlCタグとの通信が阻害された場合などに、リーダライタ21に接続された上記パーソナルコンピュータ20あるいはクライアント端末からの動作指令により、処理制御部22は偏波切替指令信号を出力する。上記偏波切替指令信号は制御信号付加回路27を制御して、偏波制御信号を生成し、更に偏波制御信号は制御信号付加回路27により、アンテナポートPiと切替スイッチ26の間のラインGの信号線に付加される。アンテナポートPiに付加された偏波制御信号はアンテナポートPiから同軸ケーブル40を経由してアンテナ41に送られる。
【0027】
アンテナ41において制御信号分離回路50により分離された偏波制御信号に基づいて偏波切替回路52は、上記ハイブリッド回路51の端子を選択し、アンテナ放射素子44が放射する円偏波の方向を切替える。
【0028】
図2は上記制御信号付加回路27の構成図である。
【0029】
図2において、切替スイッチ26から送信波は制御信号付加回路27の端子31に入力され直流電圧阻止用のコンデサC1を介して制御信号付加回路27の端子32からアンテナポートPiに送られる。上記制御信号付加回路27の端子32にはチョークコイルCH1が接続され、またチョークコイルCH1の他端は直列接続のダイオード回路DF1及び直列接続のダイオード回路DF2を接続する。ダイオード回路DF1はダイオード4素子をトランジスタQ1のコレクタ側をアノードにして同方向に直列に接続している。また、ダイオード回路DF2はダイオード2素子をトランジスタQ2のコレクタ側をアノードにして同方向に直列に接続している。上記ダイオードはスイッチング用のシリコンダイオードで構成する。ダイオード回路DF2のカソード側は、チョークコイルCH1に接続している。トランジスタQ1、Q2のエミッタは電源電圧V1(6V)の電源端子34に接続している。トランジスタQ1のベースは抵抗器R1を介して制御信号付加回路27の端子33に接続する。一方、トランジスタQ2のベースは抵抗器R2を介して制御信号付加回路27の端子33に信号反転回路Q3を経由して接続する。なお、抵抗器R1、抵抗器R2はトランジスタQ1、Q2のベース電流制限用に挿入される抵抗で、例えば3.3kオームに設定する。
【0030】
処理制御部22から偏波切替指令信号が制御信号付加回路27の端子33に与えられ、上記偏波切替指令信号に従って制御信号付加回路27は端子32に接続されるアンテナポートPiに偏波制御信号を付加する。
【0031】
例えばアンテナポートPiに接続されるアンテナに対し、右旋の円偏波をリーダライタ21が指定し、その際、偏波切替指令信号がHigh状態の場合について、制御信号付加回路27の動作を説明する。この場合、トランジスタQ1により構成されるスイッチ回路はOFF状態であり、電源電圧V1(6V)による電流はダイオード回路DF1には流れない。一方、トランジスタQ2のベースは信号反転回路Q3を経由して偏波切替指令信号とは逆のLow状態の電圧が与えられ、この結果、トランジスタQ2によるスイッチ回路はON状態となる。
【0032】
アンテナポートPiに直流の負荷抵抗(1kオーム程度)Rdcをもつアンテナ41が接続されていれば、トランジスタQ2のコレクタからダイオード回路DF2に数mA程度の直流電流Idcが流れる電流経路が形成される。上記電流がダイオードに流れた場合、シリコンダイオードでは、1素子当り約0.7Vの順方向電圧が生じることが知られている。従って、ダイオード回路DF2にはダイオード2素子分の順方向電圧による電圧(約1.4V)を生じる。この結果、約4.6V(=V1−1.4)の電圧がチョークコイルCH1を経て端子32からアンテナポートPiに供給される。一方、Pi〜CH1〜DF1〜Q1〜V1の経路はダイオード回路DF1が逆バイアス状態となるのでアンテナポートPi対して影響を与えない。
【0033】
次にアンテナポートPiに接続されるアンデナに対し、左旋の円偏波をリーダライタ21が指定し、上記偏波切替指令信号がLow状態となった場合、トランジスタQ2のベース電圧は信号反転回路Q3を経由するため偏波切替指令信号の状態とは逆のHigh状態となる。この結果、トランジスタQ2によるスイッチ回路はOFF状態となり、トランジスタQ2のコレクタからダイオード回路DF2へは電流が流れない。一方、トランジスタQ1のベースはLow状態となるため、トランジスタQ1によるスイッチ回路はON状態となる。トランジスタQ1のコレクタからダイオード回路DF1には電流が流れて、ダイオード回路DF1にはダイオード4素子分の順方向電圧による電圧(約2.8V)を生じる。この結果、約3.2V(=V1−2.8)の電圧がチョークコイルCH1を経て端子32からアンテナポートPiに供給される。一方、Pi〜CH1〜DF2〜Q2〜V1の経路は、ダイオード回路DF2が逆バイアス状態となるのでアンテナポートPi対して影響を与えない。
【0034】
以上詳記したように、制御信号付加回路27は、アンテナポートPiに接続するアンテナを右旋偏波とする場合は、当該アンテナポートPiに約4.6Vの直流電圧を付加し、左旋偏波とする場合は、当該アンテナポートPiに約3.2Vの直流電圧を付加する。
【0035】
図3は本発明の一実施態様に係るアンテナ41の構成図である。
【0036】
アンテナ41には、リーダライタ21のアンテナポートPiからの高周波信号が入出力されるアンテナ端子Aiが設けられる。このアンテナ端子Aiには直流電流Idcを側路するためチョークコイルCH2が接続される。リーダライタ21のアンテナポートPiに付加された直流電圧はチョークコイルCH2から3Vの電圧レギュレータQ4に入力され、3Vの直流の定電圧が出力として得られる。上記3Vの直流定電圧出力は後述のコンパレータ、高周波リレーなどを動作させるための駆動電源となる。アンテナ端子AiからチョークコイルCH2、抵抗器R3(500オーム)、抵抗器R4(500オーム)を直列に接続した直流電流経路K1は接地されて、アンテナポートPiに付加された直流電圧により直流電流Idcが流れる。コンパレータQ5の(+)入力端子が直流電流経路K1の抵抗器R3と抵抗器R4の接続点(C点)に接続される。コンパレータQ5の(−)入力端子には比較基準電圧Vr(2V)が付与される。コンパレータQ5はC点の電圧を(−)入力端子の比較基準電圧Vr(2V)と比較し、C点の電圧が比較基準電圧Vr(2V)より高い場合は、コンパレータQ5はHigh(約3V)を出力し、C点の電圧が比較基準電圧Vrより低い場合は、コンパレータQ5はLow(0V)を出力する。
【0037】
偏波切替回路52を構成する高周波リレーRY1及び高周波リレーRY2の駆動コイルは、上記コンパレータQ5の出力により駆動されて接点の切替えを行う。上記高周波リレーRY1は切替接点y1、常開接点a1、常閉接点b1を有し、上記高周波リレーRY2は切替接点y2、常開接点a2、常閉接点b2を有する。上記高周波リレーRY1の常開接点a1と上記高周波リレーRY2の常閉接点b2を共通に接続した接続点に、直流電圧阻止のためのコンデサC2が接続される。コンデサC2の他端はアンテナ端子Aiに接続され、アンテナ端子Aiと高周波リレーRY1、RY2の接点間にコンデサC2により高周波信号の経路が形成される。この高周波信号の経路は更に上記高周波リレーRY1、RY2の接点を経由してハイブリッド回路51からアンテナ放射素子44に至り右旋左旋切替えの円偏波アンテナ回路を形成する。以下、右旋左旋切替えの円偏波アンテナ回路について詳述する。
【0038】
上記高周波リレーRY1の切替接点y1、高周波リレーRY2の切替接点y2は4端子を有するハイブリッド回路51の端子h3、端子h4にそれぞれ接続する。ハイブリッド回路51のもう一方の2端子、端子h1、端子h2はパッチ状に形成されたアンテナ放射素子44の給電点S1、S2にそれぞれ接続する。これによりアンテナ放射素子44の給電点S1、S2には互いに90度位相が異なる信号が給電される。高周波リレーRY1及び高周波リレーRY2の駆動コイルを、リーダライタ21側からの制御信号に従って駆動することにより、本発明に係るアンテナ41は円偏波の方向を右旋もしくは左旋に対応するように切替える。高周波リレーの接点b1、a2には終端抵抗器R5、R6(例えば50オーム)が接続され、信号経路に接続されず空き端子となるハイブリッド回路51の端子h3、h4のいずれか一方を終端する。このため本実施形態の偏波切替回路では交差偏波信号のアイソレーションを良好に保つことができる。
【0039】
なお、パッチ状のアンテナ放射素子44とハイブリッド回路51により円偏波信号を取扱う技術に関しては、先行技術文献の特開2000−22440、特開2001−267835などに記載があるので詳細な説明は省略する。
【0040】
アンテナ端子Aiとリーダライタ21のアンテナポートPiとの間を同軸ケーブル40で接続すると、上記アンテナポートPiに付加された直流電圧によりチョークコイルCH2、抵抗器R3、抵抗器R4で形成される直流電流経路K1に電流が流れる。
【0041】
右旋偏波の場合、制御信号付加回路27によりアンテナポートPiに約4.6Vの電圧が付加されるから直流電流経路K1を流れる電流をI(右)とすると
I(右)=4.6/(R3+R4)となる。
【0042】
左旋偏波の場合、制御信号付加回路27によりアンテナポートPiに約3.2Vの電圧が付加されるから、直流電流経路K1を流れる電流をI(左)とすると
I(左)=3.2/(R3+R4)となる。
【0043】
R3、R4の抵抗値はそれぞれ500オームなので、I(右)、I(左)の電流値は
I(右)=4.6mA、I(左)=3.2mA
となり、上記電流が流れる抵抗器R3と抵抗器R4の接続点(C点)の電圧は、
右旋の場合は約2.3V、左旋の場合は約1.6Vとなる。
【0044】
C点にはコンパレータQ5の(+)入力端子が接続され、C点の電圧はコンパレータQ5の(−)端子の比較基準電圧Vr(2V)と比較される。
【0045】
右旋偏波の場合、C点の電圧は約2.3Vなので比較基準電圧Vrの電圧(2V)より高い。このためコンパレータQ5の出力はHigh状態(約3V)となる。この結果、高周波リレーRY1、RY2の接点はb1、b2側に切替わる。
【0046】
この切替えによりハイブリッド回路51の端子h4とアンテナ端子Aiとの間が接続され、アンテナ41は右旋偏波対応となる。
【0047】
左旋偏波の場合、C点の電圧は約1.6Vで比較基準電圧Vrの電圧(2V)より低い。このためコンパレータQ5の出力はLow状態(0V)となる。この結果、高周波リレーRY1、RY2の接点はa1、a2側に切替わる。
【0048】
これによりハイブリッド回路51の端子h3とアンテナ端子Aiとの間が接続されアンテナ41は左旋偏波対応となる。
【0049】
以上説明したように、リーダライタ21のアンテナポートPiに付加された直流電圧を偏波切替のための情報として検出し、アンテナの対応円偏波を右旋もしくは左旋に切替える機能を持つ上記アンテナ41を接続することで、リーダライタ21に接続されたパーソナルコンピュータ20あるいはクライアント端末側でアンテナ41の対応偏波を切替えることができる。
【0050】
本発明のリーダライタ21及びアンテナ41を使用すれば、上記したようにリーダライタ21に接続されたパーソナルコンピュータ20もしくはクライアント端末により、アンテナ41の遠隔の位置で自在にアンテナの偏波を切替えることができるので、アンテナが設置された後に、周囲の環境変化により、電波の干渉状況が変化した場合でも、非接触ICタグのリーダライタシステムにおけるアンテナ同志の電波干渉による障害に効率的に対処することが可能である。
【0051】
なお、上記実施形態では、リーダライタ21に4つのアンテナポートP1〜P4を設けた場合について示したが、アンテナポートの数は任意に設定し得るものである。
【0052】
また、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る非接触ICタグシステムにおけるリーダライタ及びアンテナの構成図である。
【図2】同実施形態における制御信号付加回路の構成図である。
【図3】同実施形態におけるアンテナの構成図である。
【図4】従来の非接触ICタグシステムにおけるリーダライタの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0054】
Pi(P1〜P4)…アンテナポート、Ai…(A1〜A4)アンテナ端子、C1、C2…コンデサ、R1、R2、R3、R4…抵抗器、R5、R6…終端抵抗器、CH1、CH2…チョークコイル、Q1、Q2…トランジスタ、Q3…信号反転回路、Q4…電圧レギュレータ、Q5…コンパレータ、DF1、DF2…直列接続のダイオード回路、RY1、RY2…高周波リレー、K1…直流電流経路、Vr…比較基準電圧、I/F…インタフェース、20…パーソナルコンピュータ、21…リーダライタ、22…処理制御部、23…送信部、24…受信部、25…サーキュレータ、26…切替スイッチ、27(27−1〜27−4)…制御信号付加回路、31〜33…制御信号付加回路の端子、34…電源端子、40…同軸ケーブル、41(41−1〜41−4)…アンテナ、44…アンテナ放射素子、50…制御信号分離回路、51…ハイブリッド回路(HYB)、52…偏波切替回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICタグへの質問波を出力する送信部と、右旋偏波と左旋偏波の切替え機能を備えたアンテナが接続される複数のアンテナポートと、前記送信部から出力される質問波を前記複数のアンテナポートに切替えて出力する切替スイッチと、外部指令信号に基づいて各内部回路の動作を制御する処理制御部と、前記切替スイッチと前記各アンテナポートとの間にそれぞれ設けられ、前記処理制御部から与えられる偏波切替指令信号により前記アンテナポートに偏波制御信号を付加する制御信号付加回路とを具備することを特徴とする非接触ICタグのリーダライタ。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触ICタグのリーダライタに使用されるアンテナにおいて、
前記リーダライタの各アンテナポートから給電される高周波信号から偏波制御信号を分離する制御信号分離手段と、前記制御信号分離手段により分離された偏波制御信号に基づいて該アンテナの偏波方向を切替える偏波方向切替手段とを具備することを特徴とするアンテナ。
【請求項3】
請求項1に記載の非接触ICタグのリーダライタに使用されるアンテナにおいて、
90度の位相差で給電される第1の給電点及び第2の給電点を有する一つの放射素子と、2端子が前記第1の給電点及び第2の給電点に接続され、他方の2端子がそれぞれ高周波リレーを介してアンテナ端子に接続される4端子のハイブリッド回路と、前記リーダライタのアンテナポートから前記アンテナ端子に供給される信号から偏波制御信号を分離する制御信号分離手段と、前記制御信号分離手段により分離された偏波制御信号に基づいて前記高周波リレーを切替え、前記ハイブリッド回路の他方の2端子の一方を前記前記アンテナ端子に接続すると共に該2端子の他方を終端抵抗器により接地して前記放射素子の偏波方向を設定する手段とを具備することを特徴とするアンテナ。
【請求項4】
ICタグへの質問波を出力する送信部と、複数のアンテナポートと、前記送信部から出力される質問波を前記複数のアンテナポートに切替えて出力する切替スイッチと、外部指令信号に基づいて各内部回路の動作を制御する処理制御部と、前記切替スイッチと前記各アンテナポートとの間にそれぞれ設けられ、前記処理制御部から与えられる偏波切替指令信号により前記アンテナポートに偏波制御信号を付加する制御信号付加回路とからなるリーダライタと、
前記アンテナポートに接続され、右旋偏波と左旋偏波の切替え機能を備えたアンテナとを具備し、
前記アンテナは、前記リーダライタのアンテナポートから送られてくる信号から偏波制御信号を検出する制御信号分離手段と、前記制御信号分離手段により分離された偏波制御信号に基づいて該アンテナの偏波方向を切替える偏波方向切替手段とを具備することを特徴とする非接触ICタグのリーダライタシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−65537(P2009−65537A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232994(P2007−232994)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(504378814)八木アンテナ株式会社 (190)
【Fターム(参考)】