説明

非接触ICラベルの管理システム

【課題】本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、非接触ICラベルにおいて、偽造ICチップを内装して作製した偽造非接触ICラベルであっても、そのラベルが偽造品であることが判断できる技術を提供することにある。
【解決手段】非接触ICラベルの平面画像の、少なくとも2以上の特徴点間の計測情報を記録してなる記録部を有するサーバーと、該非接触ICラベルの平面画像を赤外線カメラにより撮像する撮像手段と、撮像した非接触ICラベルの平面画像の、特徴点を検出し、少なくとも2以上の特徴点間の計測情報を算出する計測情報算出手段と、サーバーの記録部に記録されている特徴点間の計測情報と撮像した非接触ICラベルの平面画像から算出した計測情報を比較する比較手段を有する非接触ICラベルの管理システム、とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的な視覚効果を呈する光学変化デバイスを備え、外部のデータ読取装置との間で、非接触でデータの送受信をすることができる非接触ICラベルを管理する管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小売店やレンタル店等における商品管理に、ICチップとアンテナとを備えた非接触ICラベルが使用されている。これは、非接触ICラベルを、管理する商品を被接着体として取り付け、専用のデータ読み書き装置でICチップに格納されたデータを読み書きし、商品の出入庫管理、在庫管理、貸し出し管理等を行うものである。ICチップを備えている為、商品コードだけでなく、入荷日、担当者等の豊富な情報を商品と一体で管理することができる。
【0003】
また、非接触ICラベルが普及するにつれ、非接触ICラベルに光学変化デバイス(optical variable device:以下、「OVD」と称する。)を組み合わせることが期待されている。OVDとは、光の干渉を用いて立体画像や特殊な装飾画像を表現できるホログラムや回折格子、光学特性の異なる薄膜を重ねることにより見る角度により色の変化を生じる多層薄膜の総称である。これらOVDは立体画像や色の変化といった独特な印象を与えるため、優れた装飾効果を有しており、各種包装材や絵本、カタログ等の一般的な印刷物に利用されている。さらに、OVDは高度な製造技術を要することから偽造防止手段としてクレジットカード、有価証券、証明書類等にも利用されている。
【0004】
上述のRFIDのデータ読み書き機能とOVDの偽造防止機能や装飾効果を組み合わせることによって、より高レベルの偽造防止効果を実現したり、偽造防止効果又は装飾効果と商品管理機能を併せ持つラベルを構成したりすることができる等の利点がある。一例として、ホログラム加工を施した金属薄膜の一部をエッチング、レーザ照射などにより除去し残った導電性金属部分をアンテナパターンとした非接触型データ送受信体が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0005】
また、ホログラム加工を施したパターン状金属薄膜と、この金属薄膜上に絶縁層を介してICチップとICチップに接続されたアンテナ層(接続層)を設け、アンテナ層(接続層)と金属薄膜を容量結合で電気的に接続することでアンテナ層と金属薄膜が共同して一つのアンテナとして機能し良好な通信が可能となるRFID情報媒体が提案されている(例えば、下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−42088号公報
【特許文献2】WO2008/038672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非接触ICラベルにおいて、核となるICチップそのものが偽造されてしまう可能性がある。この場合、既に出回っている正規品ラベルに搭載されたICチップの固有の識別情報(ユニークID)が読み取られ、読み取った識別情報を持つ偽造ICチップが大量に複製され、不正に非接触ICラベルとされる可能性がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、非接触ICラベルにおいて、偽造ICチップを内装して作製した偽造非接触ICラベルであっても、そのラベルが偽造品であることが判断できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基材と、基材上に形成した光学変化デバイス層と、光学変化デバイス上に形成されたパターン状導電性反射層と、パターン状導電性反射層上に設けられてなるマスク層と、光学変化デバイス層及びマスク層上に形成され、可視光を吸収し赤外光を透過する隠蔽層と、隠蔽層上に設けられ、隠蔽層およびマスク層を介して部分的にパターン状導電性反射層と重なり合いパターン状導電性反射層と電気的に接続されてなる一対の導電性接続層と、導電性接続層と電気的に接続され識別情報を有するICチップとを有する非接触ICラベルの管理システムであって、非接触ICラベルの平面画像の、少なくとも2以上の特徴点間の計測情報を記録してなる記録部を有するサーバーと、該非接触ICラベルの平面画像を赤外線カメラにより撮像する撮像手段と、撮像した非接触ICラベルの平面画像の、特徴点を検出し、少なくとも2以上の特徴点間の計測情報を算出する計測情報算出手段と、サーバーの記録部に記録されている特徴点間の計測情報と撮像した非接触ICラベルの平面画像から算出した計測情報を比較する比較手段を有する非接触ICラベルの管理システム、とする。
【0010】
また、前記特徴点が、非接触ICラベルの平面画像におけるICチップの頂点部又はバンプ痕、又は導電性接続層の頂点部、又はパターン状導電性反射層の頂点部であることを特徴とする非接触ICラベルの管理システム、とする。
【0011】
また、前記計測情報が、非接触ICラベルの平面画像におけるICチップの頂点部又はバンプ痕と導電性接続層の頂点部の間の計測情報1と、導電性接続層の頂点部、パターン状導電性反射層の頂点部の間の計測情報2と、非接触ICラベルの平面画像におけるICチップの頂点部又はバンプ痕とパターン状導電性反射層の頂点部の間の計測情報3であることを特徴とする非接触ICラベルの管理システム、とする。
【0012】
また、前記サーバーの記憶部に非接触ICラベルのICチップの識別情報が計測情報と対応して記録されており、さらに非接触ICラベルのICチップの識別情報を読み取る識別情報読み取り手段を有し、前記比較手段において、サーバーの記録部に記録されているICチップの識別情報及び計測情報と、算出した計測情報及び読取ったICチップの識別情報を比較することを特徴とする非接触ICラベルの管理システム、とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明になる非接触ICラベルは、偽造ICチップを内装して作製した偽造非接触ICラベルであっても、そのラベルが偽造品であることが判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の非接触ICラベルの表面透過図である。
【図2】非接触ICラベルの裏面図である。
【図3】図1の断面Aの拡大図である。
【図4】ICチップ付近の表面透過拡大図である。
【図5】ICチップ付近の表面透過拡大図である。
【図6】本発明の非接触ICラベル管理システムのブロック図である。
【図7】特徴点の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の非接触ICラベルについて、図1から図7を参照して説明する。
図1は本実施形態の非接触ICラベル1を示す表面透過図であり、図2は非接触ICラベル1の裏面図である。図1及び図2に示すように、非接触ICラベル1は、上面に設けられた基材2と、基材2の下面側に設けられたパターン状導電性反射層5と、パターン状導電性反射層5の下面側に設けられた導電性接続層4と、導電性接続層4に実装されたICチップ3とを備えている。
【0016】
図3は、図1のA−A線における断面図である。基材2は、パターン状導電性反射層5が視認できるような透明の樹脂等からなる。具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂(ABS)等の樹脂等からなる透明なシート状の材料を好適に採用することができる。なお、基材2は、下方のパターン状導電性反射層5が視認できれば、必ずしも無色でなくてもよく、透明性を有する有色の材料で形成されてもよい。
【0017】
基材2のパターン状導電性反射層5に対向する面には、OVDとして機能する光学変化デバイス層6が形成されている。光学変化デバイス層6は、立体画像が表現されたり、見る角度によって色が変化するカラーシフトを生じたりする層状の構造であり、レリーフ型や体積型のホログラム、複数種類の回折格子が画素として配置されたグレーティングイメージやピクセルグラム等の回折格子画像、カラーシフトを生じるセラミクスや金属材料の薄膜積層体等が、適宜選択されて公知の方法により形成されている。
これらの中では、量産性やコストを考慮すると、レリーフ型ホログラム(回折格子)や多層薄膜方式のものが好ましい。
【0018】
パターン状導電性反射層5は、アルミ等の金属を機能層6上に蒸着することによって蒸着膜として形成されている。パターン状導電性反射層5は、ポリアミドイミド等からなる所望の形状のマスク層(絶縁層)7で被覆し、ディメタライズ処理を施すことによって、所望の形状に形成して意匠性を高めることができる。本実施形態の非接触ICラベル1においては、図1及び図2に示すように、一例としてパターン状導電性反射層5が蝶の形に形成されている。
【0019】
パターン状導電性反射層5は、導電性接続層4を介してICチップ3と接続されて、ICチップ3の非接触通信を可能にするとともに、光学変化デバイス層6が発揮する視覚効果を高める。特に、光学変化デバイス層6がレリーフホログラムや回折格子等の場合は、これらの回折効果が高められ、より美麗なデザインを得られると共に偽造防止にも効果がある。
【0020】
マスク層7の下面及び基材2の下面には、ICラベル1を上面から見たとき(平面視)に導電性接続層4及びICチップ3を可視光下で視認不能にするための隠蔽層8が設けられている。
【0021】
隠蔽層8は、後述するようにパターン状導電性反射層5と導電性接続層4とが電気的に接続できるように、非導電性材料で形成されている。本実施形態においては、非導電性インキを印刷することによって隠蔽層8が形成されている。電気的な接続としては、静電容量結合可能などが挙げられる。
また、本実施形態の隠蔽層8は、非導電性インキのうち、赤外線を透過する特性を有する赤外線透過インキを用いて形成されている。このような隠蔽層を形成するための材料としては、ゼラチン膜、オラゾールブラックやオラゾール2RG等の赤外線透過性の染料を含む塗料、通常の紫外線硬化型プロセスインキ等を採用することができる。このようにすると、ICチップ3の接続層4に対する実装状態を確認することができるという利点があるが、これについては後述する。
【0022】
隠蔽層8の可視光下における外観は、導電性接続層4及びICチップ3が平面視において見えなくなればその態様に特に制限はない。例えば、所定の波長の可視光線を反射して特定の色彩を呈するものでも良いし、すべての波長の可視光線を吸収するような黒色のものでもよい。さらに、すべての波長の可視光線を反射するものでもよい。
【0023】
上記のようなさまざまな態様の隠蔽層8は目的によって使い分けることが可能である。例えば、特定の色彩を呈するものであれば、非接触ICラベル1が接着される物品等の被接着体の色彩と隠蔽層8の色彩とを同一に揃えることによって、あたかも蝶の形のパターン状導電性反射層5のみが被接着体に接着されているような外観となる。したがって、より自然な印象を使用者に与えるように意匠性を高めることができる。
一方、すべての波長の可視光線を反射するものは外観が鏡面状となり、可視光下においてはパターン状導電性反射層5と区別できなくなる。導電性接続層4及びICチップ3の上面をパターン状導電性反射層5で完全に覆ってしまうと、ICチップ3の非接触通信ができなくなるが、このような態様の隠蔽層を導電性接続層4及びICチップ3の上面に設けると、可視光下における外観上は、導電性接続層4及びICチップ3を、パターン状導電性反射層5と一体に埋没させることができる。
【0024】
ICチップ3のデータ通信を補助する導電性接続層4は、銀ペーストインキ等の導電性ペーストを用いて隠蔽層8の下面に公知の方法で印刷されることによって、例えば図2に示すように帯状に形成されている。導電性接続層4の端部は、図2に示すように、平面視においてパターン状導電性反射層5と重畳するように形成されている。印刷された導電性接続層4の厚みは約5マイクロメートル(μm)であり、非接触ICラベル1の平坦性にはほとんど影響しない。
【0025】
ICチップ3は、シリコンの単結晶等からなり、図示しないバンプが異方導電性接着剤等を用いて加熱加圧接着されることによって導電性接続層4に電気的に接続されて実装されている。パターン状導電性反射層5と導電性接続層4とは、両者の間に介在する絶縁性のマスク層7及び隠蔽層8を誘電体として静電容量結合されて電気的に接続されており、ICチップ3が、外部の読取装置と電波方式の非接触データ通信が可能となっている。ICチップ3と外部の読取装置との交信に使用する周波数は、マイクロ波帯(2.45ギガヘルツ)及びUHF波帯(850〜960メガヘルツ)となっている。
【0026】
ICチップ3として、1個1個異なる識別情報(ユニークID、以下、「UID」と称する。)が付されたものが用いられる。UIDは、例えば、数字、英文字、記号等またはこれらの組み合わせからできており、それぞれのICチップのメモリに、対応するUIDが記憶されている。このようなICチップを用いると、UIDを読み取り利用することによって、そのICチップ(又はそのICチップが付いた非接触ICラベル)のトレーサビリティを確保することができる。
【0027】
ICチップ3及び導電性接続層4を含む隠蔽層8の下方全体には、接着層9が設けられており、その接着力によって非接触ICラベル1の下面を各種物品等の被接着体に接着することができる。
【0028】
本発明では、非接触ICラベルの特徴点を複数測定し、特徴点間の距離を算出して計測情報を比較することにより真贋判定を行うことを特徴とする。
非接触ICラベルの特徴点としては、非接触ICラベルを撮像して検出できる部分であればどのようなものを用いても良いが、例えば非接触ICラベルの平面画像におけるICチップの頂点部又はバンプ痕、又は導電性接続層の頂点部、又はパターン状導電性反射層の頂点部を用いることができる。
【0029】
非接触ICラベルの平面画像は撮像手段を用いて得ることができる。撮像手段としては赤外線カメラを好適に用いることができる。
図4に、図1のICチップ付近の上面透過拡大図を示す。
隠蔽層8は、上述のように赤外線を透過するインキで形成されているので、赤外線を照射すると、赤外線が隠蔽層8を透過して導電性接続層4及びICチップ3を視認することができる。
【0030】
以下図4および図5は赤外光下における図を用いて説明する。
以下に特徴点として用いるICチップのバンプ痕について説明する。
導電性接続層4にはICチップ3が実装されており、そのバンプ痕10が図に示すように導電性接続層4上に現れている。バンプ痕とは、四角形また円形の形状で約10μmの高さを持つICチップ3のバンプ(アンテナ接続端子)が、チップ実装時の加圧によって接続層4を形成する銀ペーストインキ層が層方向に潰れ、当該バンプの形状が導電性接続層4の上面にシルエットとして見えるものである。
バンプ痕は陰影であって色の変化ではないため、赤外光域の単波長下であっても見ることができる。したがって、赤外線カメラ等を用いることによって、ICラベル1を製造した後に、ICチップ3の接続層4に対する実装状態を確認することができる。
バンプ痕を用いる場合、中心点を特徴点として用いることができる。
図4は、ICチップ3の4つあるバンプの内、右下のバンプ痕10の中心点を用いた例である。
【0031】
特徴点として用いるICチップの頂点部としては、例えば四角形状のICチップ3において、4つの角部を頂点部として用いることができる。ここで、図4においてはICチップ3の4つの角部は導電性接続層4に隠れており、導電性接続層4は赤外光を遮断する場合赤外線カメラで測定できないが、チップの配置によっては露出する場合、その露出した部分におけるICチップの角部を用いることができる。
また、特徴点としてICチップ3のシリコン上に形成された回路、配線、検査用パッドなどでもよく、光学的に計測可能な特徴点であればどれであってもよい。さらにICチップ3は導電性接続層4へのチップ実装時に回転角の実装誤差を生じる。この回転角の誤差もICラベル1の識別情報として利用可能であり、例えば図4の特徴点13の対角にあるもう一つのバンプ痕(左上)など、特徴点13から離れた場所に、第二の特徴点を設けることでそれが可能となる。
【0032】
また、導電性接続層の頂点部も特徴点として用いることができる。
例えば、図4において、導電性接続層4の造形で左下の角を頂点部12(破線円の中心点)と定めている。
【0033】
また、パターン状導電性反射層の頂点部も特徴点として用いることができる。
例えば、図4において、パターン状導電性反射層5が蝶のデザインにディメタライズ処理によりパターニングされており、蝶の腹部先端を頂点部として用いることができる。
【0034】
基材2の下面にはディメタライズされたパターン状導電性反射層5の造形があって、その下面には基材2の全面に隠蔽層8が設けられ、その隠蔽層8の下面に導電性接続層4が印刷によって設けられる層構成である。通常のスクリーン印刷機で導電性接続層4を印刷した場合、パターン状導電性反射層5の造形に対する印刷の合わせ精度は、一般的な値としては約100μm以下である。しかし、導電性接続層4のICチップ付近は、隠蔽層8があることによって導電性接続層4の造形とパターン状導電性反射層5との造形の合わせの状態を目視で見ることができないため、印刷の合わせ精度には限界があり、非接触ICラベル毎にばらつきがある。
また、後工程では接続層4の上にICチップ3が実装されるが、このICチップ3の実装においても回転角を含め実装精度があり、一般的なICチップ実装機の実装精度値は約20μm以下である。
このように、パターン状導電性反射層、導電性接続層、ICチップの位置精度はそれぞれ異なる要因でばらつく。
そのため、特徴点として、非接触ICラベルの平面画像におけるICチップの頂点部又はバンプ痕と、導電性接続層の頂点部と、パターン状導電性反射層の頂点部を用いることが好ましい。
そして、非接触ICラベルの平面画像におけるICチップの頂点部又はバンプ痕と導電性接続層の頂点部の間の距離のデータ(計測情報1)と、導電性接続層の頂点部、パターン状導電性反射層の頂点部の間の距離のデータ(計測情報2)、非接触ICラベルの平面画像におけるICチップの頂点部又はバンプ痕とパターン状導電性反射層の頂点部の間の距離のデータ(計測情報3)のうち、少なくとも2つを用いることができる。
要因の異なるばらつきを用いることで、個々の非接触ICラベル固有の情報としての信頼性が高まる。
これらの計測情報の長さの最小単位は1μmであり、後述する距離計測装置によって1μmオーダーで高精度に距離計測がなされる。
またここでは計測情報として距離データの例で説明したが、各頂点部の相対的な座標軸データを用いてもよい。
【0035】
前述のパターン状導電性反射層5に対する導電性接続層4の位置合わせおよびICチップ3の実装位置の双方がばらついた状態の一例を図5に示す。パターン状導電性反射層5が左上側に寄り、ICチップが左回りに回転している状態を表しており、その結果、図に示すようにICチップのバンプ痕とパターン状導電性反射層の頂点部の間の距離(図中B)の長さ(計測情報3)およびICチップのバンプ痕と導電性接続層の頂点部の間の距離の(図中C)の長さ(計測情報1)が、図4の状態と比べ変わっているのが判る。このようにICラベルの生産において導電層処理、接続層印刷、ICチップ実装のそれぞれの行程は、異なった製造装置で加工・製造され、その行程毎にばらつきが生じていた。
なお、この程度のばらつきであればICラベルのRFIDとしての通信性能にはほとんど影響しない。
【0036】
次に本発明の非接触ICラベル管理システムについて説明する。
図6に非接触ICラベル管理システムのブロック図を示す。
距離計測装置14には、撮像手段として赤外デジタルカメラ15、赤外光源16、RFIDタグリーダー17、真贋判定結果ランプ18が備えられており、ネットワーク19を介してサーバー装置20に繋がっている。また、距離計測部は、撮像した画像から計測情報を算出する計測情報算出手段が備えられている。サーバー20には計測情報を記録する記録部を有している。
図6の中央の台上には前述の非接触ICラベル1が置かれている。
【0037】
距離計測装置14の計測時の分解能は1μmであり、総合的な測定精度は5μm以下である。測定精度とは、赤外光源16の光量変動および照射角度誤差、赤外デジタルカメラ15の感度変動および分解能差、各位置計測点の生成誤差など考えられる全ての誤差要因を含んだ精度をいう。
【0038】
距離計測装置14および外部のサーバー装置20で構成された非接触ICラベルの管理システムの主な機能としては、非接触ICラベルの識別情報登録と、非接触ICラベルの真贋判定の二つである。
【0039】
最初に本非接触ICラベル管理システムの識別情報登録について説明する。
図中央の台上に計測対象の非接触ICラベル1を置いたのち、赤外光源16の赤外光を対象の非接触ICラベル1に照射し、赤外デジタルカメラ15で撮影する。撮影されたデジタル画像は装置内部の画像分析機能により、パターン状導電性反射層位置計測点11、導電性接続層位置計測点12、チップ位置計測点13の3点の位置を計測し、それぞれの距離を算出し計測情報とする。
次にRFIDタグリーダー17を稼働させラベル内のICチップのUIDを読み込み、先の計測情報と合わせて外部のサーバー装置20に向けネットワーク19を介して情報を転送する。ネットワーク19上での情報の転送に際しては、後述する真贋判定における情報の転送も含め公開鍵暗号方式など公知の暗号化処理を行っている。外部のサーバー装置20の内部では、非接触ICラベルを管理するデータベース機能を備えたアプリケーションが実行されており、前述のICチップの識別情報および計測情報は、このアプリケーションが情報を受信してデータベースの記憶部に格納している。なお、ICチップの識別情報と計測情報は対応付けられて記憶されている。
以上の処理が非接触ICラベル1の識別情報登録である。
【0040】
次に本非接触ICラベル管理システムの真贋判定について説明する。
図中央の台上に計測対象の非接触ICラベル1を置いたのち、赤外光源16の赤外光を対象の非接触ICラベル1に照射し、赤外デジタルカメラ15で撮影する、撮影されたデジタル画像は装置内部の画像分析機能により、すくなくともパターン状導電性反射層位置計測点11、導電性接続層位置計測点12、チップ位置計測点13の3点の位置を計測し、距離を算出し計測情報とする。次にRFIDタグリーダー17を稼働させラベル内のICチップのUID(第一の識別情報)を読み込み、先の計測情報と合わせて外部のサーバー装置20に向けネットワーク19を介して情報を転送する。
【0041】
外部のサーバー装置20のアプリケーションがICチップ3の識別情報および計測情報を受け取り、データベース内をICチップ3の識別情報で検索し、該当する登録情報がなかった場合は未登録として距離計測装置14に通知する。該当する登録情報があった場合は次に計測情報の比較を行う。データベース内に登録されている計測情報と送られてきた計測情報との比較を、予め決められた距離計測装置の測定精度および非接触ICラベルの経時変化、温湿度による収縮を許容して行い、計測情報の全てが許容内であった場合は正規品と判定し、計測情報のいずれかが許容外であった場合は偽造品と判定し、その判定結果を距離計測装置14に通知する。距離計測装置14はこれらの結果を真贋判定結果ランプ18(正規品=緑色、未登録=黄色、偽造品=赤色)を点灯させ真贋判定の処理を終了する。
【0042】
外部のサーバー装置20のアプリケーションは、前述の識別情報登録および真贋判定しかできないよう機能が制限されており、よってデータベース内の格納情報は外部から読み出すことはできない。
【0043】
なお、本説明では、特徴点としてICチップの頂点部又はバンプ痕、導電性接続層の頂点部、パターン状導電性反射層の頂点部等を例示しているが、図7に示すように角部において、直線が曲線で接続されている場合、二辺の直線それぞれに接線21を引き、その二本の接線21から延長線を描き、公差する点(仮想点)を位置計測点22としてもよい。
【0044】
また、導電性接続層4は、上面に隠蔽層8があるため表面からは見えない、よってその造形は自由であり、導電性接続層位置計測点12となる光学的な特徴点を予め導電性接続層4上にデザインしておくことができる。導電性接続層位置計測点12専用の位置合わせトンボ、微少ドットなどを用意してもよい。
【0045】
上記例では、パターン状導電性反射層位置計測点11、導電性接続層位置計測点12、チップ位置計測点13をそれぞれ1点としたが、各位置計測点は複数としてもよく、この場合、例えば真贋判定において、複数の情報の中に誤った計測情報(誤計測)が含まれていてもそれを無視して補完するなど、システムとしての信頼性を向上させることが可能となる。
【0046】
このようにすることで、正規品ラベルに搭載されたICチップの固有の識別情報(ユニークID)が読み取られ、読み取った識別情報を持つ偽造ICチップが大量に複製されても、前述の通り正規品と同じ特徴点を有する非接触ICラベルを作り出すことができないため、実質的に本ICラベルの偽造はできないこととなり、本発明の仕組みは偽造抑止の効果も得られることになる。
【0047】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものでなく、本発明の内容や目的に応じて適宜その構成や材料等において最適化することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 非接触ICラベル
2 基材
3 ICチップ
4 接続層
5 導電層(OVDアンテナ)
6 機能層
7 マスク層(絶縁層)
8 隠蔽層
9 接着層
10 バンプ痕
11 導電層位置計測点
12 接続層位置計測点
13 チップ位置計測点
14 距離計測装置
15 赤外デジタルカメラ
16 赤外光源
17 RFIDリーダー
18 真贋判定結果ランプ
19 ネットワーク
20 サーバー装置
21 接線(延長線)
22 位置計測点
A 断面
B 特徴点間距離
C 特徴点間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、基材上に形成した光学変化デバイス層と、光学変化デバイス上に形成されたパターン状導電性反射層と、パターン状導電性反射層上に設けられてなるマスク層と、光学変化デバイス層及びマスク層上に形成され、可視光を吸収し赤外光を透過する隠蔽層と、隠蔽層上に設けられ、隠蔽層およびマスク層を介して部分的にパターン状導電性反射層と重なり合いパターン状導電性反射層と電気的に接続されてなる一対の導電性接続層と、導電性接続層と電気的に接続され識別情報を有するICチップとを有する非接触ICラベルの管理システムであって、
非接触ICラベルの平面画像の、少なくとも2以上の特徴点間の計測情報を記録してなる記録部を有するサーバーと、
該非接触ICラベルの平面画像を赤外線カメラにより撮像する撮像手段と、
撮像した非接触ICラベルの平面画像の、特徴点を検出し、少なくとも2以上の特徴点間の計測情報を算出する計測情報算出手段と、
サーバーの記録部に記録されている特徴点間の計測情報と撮像した非接触ICラベルの平面画像から算出した計測情報を比較する比較手段を有する非接触ICラベルの管理システム。
【請求項2】
前記特徴点が、非接触ICラベルの平面画像におけるICチップの頂点部又はバンプ痕、又は導電性接続層の頂点部、又はパターン状導電性反射層の頂点部であることを特徴とする請求項1記載の非接触ICラベルの管理システム。
【請求項3】
前記計測情報が、非接触ICラベルの平面画像におけるICチップの頂点部又はバンプ痕と導電性接続層の頂点部の間の計測情報1と、導電性接続層の頂点部、パターン状導電性反射層の頂点部の間の計測情報2と、非接触ICラベルの平面画像におけるICチップの頂点部又はバンプ痕とパターン状導電性反射層の頂点部の間の計測情報3であることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触ICラベルの管理システム。
【請求項4】
前記サーバーの記憶部に非接触ICラベルのICチップの識別情報が計測情報と対応して記録されており、
さらに非接触ICラベルのICチップの識別情報を読み取る識別情報読み取り手段を有し、
前記比較手段において、サーバーの記録部に記録されているICチップの識別情報及び計測情報と、算出した計測情報及び読取ったICチップの識別情報を比較することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非接触ICラベルの管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−178148(P2011−178148A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47551(P2010−47551)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】