説明

非撹拌エステル化反応器を用いるポリエステル製造システム

縦長エステル化反応器を用いるポリエステル製造システム。本発明のエステル化反応器は、例えば一実施態様において反応器が機械的撹拌をほとんど又は全く必要としないので、従来のCSTRエステル化反応器よりも改良されている。更に、一実施態様において、反応器の入口及び出口の位置付けが、従来技術のCSTRよりも改良された運転性能及び柔軟性を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融相ポリエステルの製造システムに関する。別の態様において、本発明は、機械的撹拌をほとんど又は全く必要としない縦長のエステル化反応器を利用するエステル化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
溶融相重合は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)のような種々のポリエステルの製造に使用できる。PETは、飲料、食品及び他の容器並びに合成繊維及び樹脂に広く使用されている。製造技術の進歩が需要の増加と相まって、PETの製造及び販売の市場はますます競争が激化している。従って、PETを製造するための低コストで高効率の方法が望まれている。
【0003】
一般に、PETの製造に使用する製造設備を含む溶融相ポリエステル製造設備はエステル化セクション及び重縮合セクションを用いる。エステル化セクションにおいて、ポリマー原料(即ち反応体)はポリエステルモノマー及び/又はオリゴマーに転化される。重縮合セクションにおいて、エステル化セクションから出たポリエステルモノマーは、目的とする最終鎖長を有するポリマー生成物に転化される。
【0004】
ほとんどの従来型の溶融相ポリエステル製造設備においては、エステル化が1つ又はそれ以上の機械的撹拌反応器、例えば連続撹拌槽型反応器(CSTR)中で実施される。しかし、CSTR及び他の機械的撹拌反応器には、ポリエステル製造設備全体の資本コスト、運転コスト及び/又は維持コストを増加させる可能性のある多数の欠点がある。例えば、典型的にはCSTRに関連する機械的撹拌機及び種々の制御装置は複雑で、高価であり、また、広範囲に及ぶメインテナンスを必要とする可能性がある。更に、従来型のCSTRは、反応器の内容積の一部分を占める内部熱交換管を使用することが多い。反応器の有効容積の減少を補うために、内部熱交換管を含むCSTRはより大きい総容積を必要とし、それが運転コストを増加する。更に、典型的にはCSTRに関連する内部熱交換コイルは、容器内の反応媒体のフローパターンを不所望に妨害し、その結果として転化率を低下させる可能性がある。生成物の転化率を増加させるために、多くの従来型のポリエステル製造設備は、直列で運転される複数のCSTRを用いてきたが、それが更に資本コストと運転コストの両方を増加させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、生成物の転化率を最大にしながら、資本コスト、運転コスト及び維持コストを最小限に抑える高効率のポリエステルプロセスに対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様において、(a)縦長エステル化反応器中で反応媒体をエステル化に供し;そして(b)任意的に、前記反応媒体を前記エステル化反応器中で撹拌することを含んでなり、前記撹拌の約50%未満を機械的撹拌によって行う方法が提供される。
【0007】
本発明の別の実施態様において、(a)第1エステル化ゾーン中において第1反応媒体をエステル化に供し、それによって少なくとも約70%の転化率を有する第1生成物を生成し;そして(b)前記第1生成物の少なくとも一部を、第2エステル化反応器によって規定される第2エステル化ゾーン中で更なるエステル化に供し、それによって少なくとも約80%の転化率を有する第2生成物を生成することを含んでなり、前記第2エステル化反応器が、第1生成物を受ける流体入口と第2生成物を排出する液体出口を規定し、前記液体出口を流体入口より高い位置に配する方法が提供される。
【0008】
本発明の更に別の実施態様において、反応器及び前記反応器内に配置された複数個の垂直方向に離間された熱交換管を含んでなる装置が提供される。この反応器は、直立中心延長軸に沿って長くなっている。この反応器は流体入口、複数個の垂直方向に離間された液体出口及び蒸気出口を規定している。流体入口は、蒸気出口よりも低い位置に配する。液体出口は、流体入口よりも高い位置であって蒸気出口よりも低位置に配する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施態様に従って構成された、溶融相ポリエステル製造設備への使用に適当な第1段階エステル化システムの概略図である。
【図2】本発明の一実施態様に従って構成された、溶融相ポリエステル製造設備への使用に適当な第2段階エステル化反応器の概略図である。
【図3】図2の線3−3に沿った、図2の第2段階エステル化反応器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の或る種の態様を、添付の図面を参照して以下に詳細に記載する。
【0011】
本発明は、種々の出発原料から種々のポリエステルを製造できる溶融相ポリエステル製造設備に使用できる。本明細書中で使用する用語「ポリエステル」は、ポリエステル誘導体、例えばポリエーテルエステル、ポリエステルアミド及びポリエーテルエステルアミドも包含する。本発明に従って製造できる溶融相ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)のホモポリマー及びコポリマー、PETG(1,4−シクロヘキサン−ジメタノール(CHDM)コモノマーで改質されたPET)、全芳香族又は液晶ポリエステル、生分解性ポリエステル、例えばブタンジオール、テレフタル酸及びアジピン酸残基を含むもの、ポリ(シクロヘキサン−ジメチレンテレフタレート)ホモポリマー及びコポリマー並びにCHDM及びシクロヘキサンジカルボン酸又はシクロヘキサンジカルボン酸ジメチルのホモポリマー及びコポリマーが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0012】
本発明の一実施態様において、少なくとも1種のアルコール及び少なくとも1種の酸を含むポリエステル出発原料を、プロセスの最初のセクションにおいてエステル化に供する。酸出発原料は、最終ポリエステル生成物が、炭素数が約4〜約15又は8〜12の範囲の少なくとも1種のジカルボン酸残基を含むようなジカルボン酸であることができる。本発明に使用するのに適当なジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン二酢酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニル−3,4’−ジカルボン酸、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。一実施態様において、酸出発原料は対応するエステル、例えばテレフタル酸ではなくてテレフタル酸ジメチルであることができる。
【0013】
アルコール出発原料は、最終ポリエステル生成物が、炭素数が約3〜約25又は6〜20の範囲の少なくとも1種のジオール残基、例えば脂環式ジオールに由来するジオール残基を含むことができるようなジオールであることができる。適当なジオールとしては、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサン−ジメタノール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール−(2,4)、2−メチルペンタンジオール−(1,4)、2,2,4−トリメチルペンタン−ジオール−(1,3)、2−エチルヘキサンジオール−(1,3)、2,2−ジエチルプロパン−ジオール−(1,3)、ヘキサンジオール−(1,3)、1,4−ジ−(ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチル−シクロブタン、2,2,4,4−テトラメチル−シクロブタンジオール、2,2−ビス−(3−ヒドロキシエトキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−プロポキシフェニル)−プロパン、イソソルビド、ヒドロキノン、BDS−(2,2−スルホニルビス)−4,1−フェニレンオキシ))ビス(エタノール)及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0014】
更に、一実施態様において、出発原料は1種又はそれ以上のコモノマーを含むことができる。適当なコモノマーとしては、例えばテレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,6−ナフタレン−ジカルボン酸、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサン−ジメタノール(DHCM)、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、トランス−DMCD、トリメリット酸無水物、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸ジメチル、デカリン−2,6−ジカルボン酸ジメチル、デカリンジメタノール、デカヒドロナフタラン−2,6−ジカルボキシレート、2,6−ジヒドロキシメチル−デカヒドロナフタレン、ヒドロキノン、ヒドロキシ安息香酸及びそれらの混合物を含むコモノマーが挙げられる。
【0015】
本発明の一実施態様によれば、1種又はそれ以上の添加剤を、プロセス内の1つ又はそれ以上の場所で、出発原料、ポリエステル及び/又はポリエステル前駆体に添加することができる。適当な添加剤としては、例えば三官能価又は四官能価コモノマー、例えばトリメリット酸無水物、トリメチロールプロパン、ピロメリット酸二無水物、ペンタエリスリトール又は他の多酸若しくはポリオール;架橋剤又は分岐剤;着色剤;トナー;顔料;カーボンブラック;ガラス繊維;充填剤;耐衝撃性改良剤;酸化防止剤;UV吸収化合物;及び酸素捕捉化合物が挙げられる。
【0016】
一般に、本発明の一実施態様に係るポリエステル製造方法は2つの主なセクションを使用できる。第1セクションは出発原料(本明細書中では「原料」又は「反応体」とも称する)を反応させてモノマー及び/オリゴマーにする。第2セクションは前記モノマー及び/オリゴマーを更に反応させて最終ポリエステル生成物にする。
【0017】
第1セクションに入る出発原料が、例えばテレフタル酸又はイソフタル酸のような酸末端基を含む場合には、第1セクションはエステル化と称することができる。出発原料が、例えばテレフタル酸ジメチル又はイソフタル酸ジメチルのようなメチル末端基を有する場合には、第1セクションはエステル交換(ester exchange又はtrans-esterification)と称することができる。便宜上、本明細書中で使用する用語「エステル化」は、エステル化反応とエステル交換反応の両方を含む。従って、第1セクションをエステル化又はエステル交換に用いる場合には、プロセスの「エステル化セクション」と称することができる。本発明の一実施態様によれば、エステル化は約220〜約300℃又は約235〜約290℃又は245〜280℃の範囲の温度及び約25psig未満の圧力又は約1〜約10psig若しくは2〜5psigの範囲の圧力においてエステル化セクションの1つ又はそれ以上の段階において実施できる。一実施態様において、エステル化セクションから出るモノマー及び/又はオリゴマーの平均鎖長は約25未満、約1〜約20又は5〜15であることができる。
【0018】
プロセスの第2セクションは、重縮合セクションと称することができる。重縮合セクションは一段法を使用することもできるし、或いは予備重縮合(又は予備重合)工程と最終(若しくは仕上げ)重縮合工程に分けることができる。一般に、より長鎖のポリマーは多段重縮合法によって製造できる。一般に、重縮合は、重縮合セクションで約220〜約350℃又は約240〜約320℃の範囲の温度において減圧(例えば真空)下で実施できる。重縮合を二段法で実施する場合には、予備重合(又はプレポリマー)反応器が、エステル化セクションから出たモノマーを、約2〜約40、約5〜約35又は10〜30の範囲の平均鎖長を有するオリゴマーに転化できる。次に、仕上げ機反応器がオリゴマー/ポリマー混合物を、典型的には約30より長い、約50より長い、約75より長い又は90より長い目的平均鎖長を有する最終ポリマー生成物に転化する。
【0019】
本発明の一実施態様に従って構成した多段エステル化セクションを図1〜3に示してある。詳細には、図1は第1段階エステル化システムの例を示し、図2及び3は第2段階エステル化反応器の例を示す。図1〜3の多段エステル化セクションについて以下に詳述する。
【0020】
図1を参照すると、本発明の一実施態様に従って構成した第1段階エステル化システム10は、一般的に熱交換器12、エステル化容器14、蒸留カラム16及び再循環ループ18を含むものとして示されている。一般に、第1段階エステル化システム10において実施されるプロセスは、以下の広範な工程を含む:(1)エステル化供給材料を熱交換器12に供給し;(2)熱交換器12中で前記エステル化供給材料を加熱及び部分エステル化し;(3)熱交換器12からの前記の加熱及び部分エステル化された生成物の少なくとも一部をエステル化容器14に導入し;(4)エステル化容器14中で、熱交換器12からの前記部分エステル化生成物を更にエステル化し;(5)エステル化容器14中で、蒸気副生成物から液体生成物を分離し;(6)エステル化容器14からの前記蒸気副生成物の少なくとも一部を蒸留カラム16に導入し;(7)蒸留カラム16中で前記蒸気副生成物を、主に水の塔頂流(overhead stream)と主にアルコールの塔底流(bottom stream)に分離し;(8)エステル化容器14からの前記液体生成物の再循環部分を再循環ループ18を経て熱交換器12に戻し;(9)前記液体生成物の前記再循環部分が再循環ループ18を通って流れている間に、これに蒸留カラム16からの再循環アルコール、新鮮なアルコール、添加剤及び/又は酸を加え;そして(10)エステル化容器14からの前記液体生成物の生成物部分を、更なる下流処理のために回収する。
【0021】
前述の通り、第1段階エステル化は、エステル化システム10の熱交換器12及びエステル化容器14の両方において実施できる。従って、熱交換器12及びエステル化容器14をそれぞれ、それぞれが「第1段階エステル化ゾーン」の一部を規定する「第1段階エステル化反応器」と称することができる。しかし、熱交換器12のもう1つの機能はそこで処理される反応媒体を加熱することであることができるので、熱交換器12はまた、「加熱ゾーン」を規定する「ヒーター」と称することもできる。更に、エステル化容器14のもう1つの機能は、蒸気/液体離脱(disengagement)を促進することであることができるので、エステル化容器14はまた、「離脱ゾーン」を規定する「離脱容器」と称することができる。図1に示した第1段階エステル化システム10の構成及び運転について以下に詳述する。
【0022】
再び図1を参照すると、再循環液体生成物流(以下により詳細に記載)は、第1段階エステル化システム10の再循環導管100を通して輸送される。図1に示されるように、再循環導管100を通って流れる前記再循環液体生成物流には、以下の材料:(a)導管104を経て導入される追加の新鮮なアルコール及び(b)導管106を経て導入される1種又はそれ以上の添加剤を加えることができる。別の実施態様において、導管104及び/又は106中の1つ又はそれ以上の流れの少なくとも一部を、導管114中でエステル容器14から出た流れに加えることができる(以下に詳述)。更に別の実施態様において、導管104及び/又は106中の1つ又はそれ以上の流れの少なくとも一部は、まだ記載していない再循環ポンプ40中に直接導入することができる。導管104中の新鮮なアルコールは、本発明のシステムにおいて出発原料として使用するのに適当なであると前述したアルコールのいずれかであることができる。一実施態様によれば、アルコールはエチレングリコールであることができる。導管106中の1種又はそれ以上の添加剤は、本発明のシステムでの使用に適当であると前述した添加剤のいずれかであることができる。
【0023】
導管108からの追加の酸もまた、再循環導管100を通って流れる流れに添加することができる。導管108を経て再循環導管100中に導入する酸は、本発明のシステムにおいて出発原料として使用するのに適当であると前述した酸のいずれかであることができる。導管108中の酸は液体、スラリー、ペースト又は乾燥固体の形態であることができる。一実施態様において、導管108中の酸はテレフタル酸の固体粒子であることができる。
【0024】
本発明の一実施態様において、導管108中の酸は、小さい、実質的に乾燥した固体粒子(例えば粉末)の形態で導管100中の再循環流に添加する。このような実施態様において、導管100に供給する酸は約5重量%未満、約2重量%未満又は1重量%未満の液体を含むことができる。このような乾燥酸添加方法は、得られた混合物をエステル化プロセスに導入する前に固体酸粒子をペースト又はスラリーにするために従来使用されている複雑で高価な機械撹拌タンクを不要にすることができる。
【0025】
図1に示すように、減圧器20を用いると、固体酸反応体は、ペースト又はスラリーの形態でなくても再循環導管100中に直接添加することができる。本発明の一実施態様において、固体酸反応体は、再循環流の圧力を減圧器20によって低下させた場所において、再循環導管100に添加できる。減圧器20は、減圧ゾーン近傍の開口部を経て減圧流に材料を添加できるように、主に流体の流れの圧力を低下できることが当業界で知られた任意の装置であることができる。エダクターは、減圧器20として使用するのに適当な装置の一例である。
【0026】
図1に示すように、導管108中の固体酸反応体は、追加アルコール及び添加剤注入点よりも下流において再循環ループ18に添加できる。更に、固体酸反応体は、再循環流中に下降するに従って固体酸粒子の溶解が促進されるように、再循環導管100の上部に導入するのが有利であり得る。再循環流中のポリエステルモノマー及び/又はオリゴマーの存在もまた、再循環導管100に添加される固体酸粒子の溶解を向上させることができる。本発明の一実施態様において、再循環導管100中の流れは、約1〜約20、約2〜約18又は5〜15の範囲の平均鎖長を有することができる。
【0027】
一般に、再循環導管100中の再循環流に添加するアルコール及び酸の量は、目的とする製造速度及び目的とするアルコール対酸比を実現するのに必要な任意の量であることができる。本発明の一実施態様において、再循環導管100から出ていくエステル化供給流のアルコール対酸のモル比は、約1.005:1〜約10:1、約1.01:1〜約8:1又は1.05:1〜6:1の範囲である。
【0028】
再循環導管100及び/又は減圧器20から出た混合流は、供給導管110を経てエステル化供給材料として熱交換器12の入口22に導入することができる。熱交換器12において、エステル化供給材料/反応媒体を加熱し、エステル化条件に供する。本発明の一実施態様によれば、熱交換器12の入口22と出口24の間における反応媒体の温度上昇は、少なくとも約50°F、少なくとも約75°F又は少なくとも85°Fであることができる。一般に、熱交換器12の入口22に入るエステル化供給材料音温度は約220〜約260℃、約230〜約250℃又は235〜245℃の範囲であることができる。一般に、熱交換器12の出口24から出ていくエステル化生成物の温度は、約240〜約320℃、約255〜約300℃又は275〜290℃の範囲であることができる。熱交換器12中の反応媒体は、約5〜約50psig、約10〜約35psig又は15〜25psigの範囲の圧力に保持できる。
【0029】
前述のように、熱交換器12を通って流れる反応媒体の少なくとも一部はエステル化されることができるので、熱交換器12はエステル化反応器と見なすこともできる。本発明に従って実施されるエステル化の量は、「転化率」に換算して定量化できる。本明細書中で使用する用語「転化率」は、エステル化に供された流れの液相の性質を記載するのに使用し、エステル化流の転化率は、エステル基に転化された(即ちエステル化された)元の酸末端基の百分率を示す。転化率は、百分率として表された[転化された末端基(即ちアルコール末端基)の数]÷[末端基(即ちアルコール末端基+酸末端基)の総数]として定量化できる。本明細書中においては転化率を用いるが、化合物が含むモノマー単位の平均数を表す平均鎖長も同様に、本発明の流れの特性を説明するのに適切であり得ることを理解すべきである。
【0030】
一実施態様によれば、熱交換器12中で実施されるエステル化反応は、入口22と出口24の間の反応媒体の転化率を少なくとも約5%ポイント、少なくとも約10%ポイント、少なくとも約15%ポイント、少なくとも約20%ポイント、少なくとも約30%ポイント又は少なくとも50%ポイント増加させることができる。一般に、熱交換器12の入口22に導入されるエステル化供給流は、約90%未満、約75%未満、約50%未満、約25%未満、約10%未満又は5%未満の転化率を有し、熱交換器12の出口24から出ていくエステル化生成物流は少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約95%又は少なくとも98%の転化率を有する。
【0031】
本発明の一実施態様において、熱交換器12中で実施されるエステル化反応は従来のエステル化方法に比較して著しく短縮された滞留時間で行われる。例えば熱交換器12を通って流れる反応媒体の平均滞留時間は約60分未満、約45分未満、約35分未満又は20分未満であることができる。この比較的短い滞留時間は高速の商業規模の製造速度であっても達成できる。従って、一実施態様において、生成物流は少なくとも約10,000ポンド/時(lb/h)、少なくとも約25,000lb/h、少なくとも約50,000lb/h又は少なくとも100,000lb/hの流速で熱交換器12の出口24から出ていく。
【0032】
ここで熱交換器12の具体的構成に目を向ける。本発明の一実施態様によれば、熱交換器12は、横長のシェル・アンド・チューブ熱交換器であることができる。熱交換器12を通る内部流通路は、加熱及びエステル化の際に反応媒体が通って流れる熱交換管によって規定されることができる。この内部流通路は、第1段階エステル化システム10の「第1エステル化ゾーン」であると考えることができる。一般に、熱交換器を貫く内部流通路の総容積は、約10〜約1,500立方フィート(ft3)、約100〜約800ft3又は200〜600ft3の範囲であることができる。個々の熱交換管の平均内径は約4インチ未満又は約0.25〜約3インチ若しくは0.5〜2インチの範囲であることができる。
【0033】
図1に示されるように、加温された熱媒体(HTM)の流れは熱交換器12のシェル側に入り且つ少なくとも一部は熱交換管の少なくとも一部を取り囲んで、熱交換管を通って流れる反応媒体を加熱できるようになっている。本発明の一実施態様において、熱交換器12中の反応媒体の加熱に関連する熱伝導率は、約0.5〜約200BTU/時/°F/平方フィート(BTU/h・°F・ft2)、約5〜約100BTU/h・°F・ft2又は10〜50BTU/h・°F・ft2の範囲であることができる。熱交換器12中の反応媒体に伝導される熱の総量は約100〜約5,000BTU/ポンド(反応媒体)(BTU/lb)、約400〜約2,000BTU/lb又は600〜1,500BTU/lbの範囲であることができる。
【0034】
図1に示されるように、出口24を経て熱交換器12から出ていく部分エステル化生成物は、導管112を経てエステル化容器14に輸送されることができる。導管112中の部分エステル化流は流体入口26を経てエステル化容器14の内容積中に導入されることができる。前述の通り、エステル化容器14中において、部分エステル化流は更なるエステル化及び相分離に供される。従って、エステル化容器14内に規定される内容積は「エステル化ゾーン」及び/又は「離脱ゾーン」と考えることができる。一般に、エステル化容器14中の反応媒体は内容積を通って実質的に水平に流れる。反応媒体が流体入口26から流れ去って、エステル化されるにつれて、蒸気副生成物は液相から逃散し、一般に液相の上方を流れる。分離された液体生成物は液体出口28を経てエステル化容器14から出ていくことができ、分離された蒸気副生成物は蒸気出口30を経てエステル化容器14から出ていくことができる。
【0035】
エステル化容器14中で実施されるエステル化反応は、エステル化容器14内で処理される反応媒体の転化率を増加させることができ、従って液体出口28から出ていく液体生成物は、流体入口26に入る流体流の転化率よりも少なくとも約1%ポイント、少なくとも約2%ポイント又は少なくとも5%ポイント高い転化率を有する。一般に、エステル化容器14の液体出口28から出ていく液体生成物は少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約98%の転化率を有することができる。
【0036】
エステル化容器14内において達成される転化は、比較的短い滞留時間の間に入熱をほとんど又は全く行わずに、行うことができる。例えばエステル化容器12内における反応媒体の平均滞留時間は約200分未満、約60分未満、約45分未満、約30分未満又は15分未満であることができる。更に、エステル化容器14内の反応媒体に伝達される熱の量は、約100BTU/ポンド(反応媒体)(BTU/lb)未満、約20BTU/lb未満、約5BTU/lb未満又は1BTU/lb未満であることができる。
【0037】
エステル化容器14内の入熱を最小限に抑えるか全く行わずに、エステル化容器14の液体出口28から出ていく液体生成物の平均温度は、流体入口26を経てエステル化容器14に入る流体の平均温度の約50℃以内、約30℃以内、約20℃以内又は15℃以内であることができる。一般に、エステル化容器14の液体出口28から出ていく液体生成物の平均温度は約220〜約320℃、約240〜約300℃又は約250〜約275℃の範囲であることができる。
【0038】
ここでエステル化容器14の具体的構成に目を向ける。図1に示した実施態様において、エステル化容器14は、実質的に空であり、撹拌も加熱もされず、ほぼ円筒状の横長の容器である。エステル化容器14は、約10:1未満の、約1.25:1〜約8:1、約1.5:1〜約6:1又は2:1〜4.5:1の範囲の長さ対直径(L:D)比を有することができる。一実施態様において、充分なエステル化を行い且つ蒸気相、液相及びフォーム相の離脱/分離を向上させるように、流体入口26、液体出口28及び蒸気出口30を互いに離間させる。例えば液体出口28と蒸気出口30は、流体入口26から少なくとも約1.25D、少なくとも約1.5D又は少なくとも2.0Dだけ水平に離間させることができる。更に、液体出口28と蒸気出口30は互いに、少なくとも約0.5D、少なくとも約0.75D又は少なくとも0.95Dだけ垂直方向に離間させることができる。
【0039】
図1に示されるように、エステル化容器14は、エステル化容器14への供給材料の効果的な分配を助ける流体分配器32を含むことができる。図1に示した実施態様において、流体分配器は単に、下向きの流体入口26を規定する下方に湾曲した遠位末端を有する、実質的に水平に伸長するパイプである。或いは、流体分配器32は、エステル化容器14の中の、水平に離間された複数の場所に、部分エステル化供給材料を排出するための複数の開口部を規定することができる。本発明の一実施態様において、反応媒体はエステル化容器14を通って実質的に水平に移動する際に、エステル化容器14中の反応媒体の平均深さは約0.75D未満、約0.50D未満、約0.25D未満又は約0.15D未満に保持される。
【0040】
図1に示されるように、エステル化容器14に入ると、流体分配器32から出た反応媒体は、蒸気泡が反応媒体の液体部分から離脱するにつれて、発泡し始める可能性がある。一般に、フォームの生成はエステル化容器14の長さに沿って、蒸気が反応媒体の液相から離脱するにつれて減少し得るので、一実施態様においては、フォームはエステル化容器14の液体出口28及び/又は蒸気出口30から実質的に出ていかない。
【0041】
フォームがエステル化容器14の蒸気出口30から実質的に出ていかないことを確実にするのを助けるために、下向きに伸長するバッフル34をエステル化容器14中に使用できる。バッフル34は、一般に、エステル化容器14の流体入口26と蒸気出口30の間であって、流体入口26よりも蒸気出口30の近くに配置できる。バッフル34は、蒸気出口30の近傍においてエステル化容器14の上部から下向きに伸長することができ、蒸気出口30に向かうフォームの流れ(もしあれば)を物理的に遮断する働きをすることができる。本発明の一実施態様において、バッフル34の底縁は、エステル化容器14の底部から少なくとも約0.25D、少なくとも約0.5D又は少なくとも0.75D垂直方向に離間させることができる。図1に示した実施態様において、バッフルは下向きに伸長する部分36と横方向に伸長する部分38を含む。下向きに伸長する部分36は、蒸気出口30の近傍の位置から下向きに伸長することができ、横方向に伸長する部分38は、下向きに伸長する部分36の底端から蒸気出口30のほぼ下方の位置まで横に伸長できる。
【0042】
エステル化容器14内に規定される総内容積は、例えばエステル化システム10の全流体力学的要件を含む多数の因子によって異なり得る。本発明の一実施態様において、エステル化容器14の総内容積は再循環ループ18の総内容積(以下により詳細に記載)の少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%又は少なくとも150%であることができる。本発明の更に別の実施態様において、エステル化容器14の総内容積は再循環ループ18、熱交換器12内の流路及び生成物導管112の総計内容積の少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%又は少なくとも150%であることができる。
【0043】
再び図1を参照すると、導管120を経てエステル化容器14の蒸気出口30から出ていく蒸気流は、蒸留カラム16の流体入口42に送られることができる。導管120中の蒸気副生成物流は水及びアルコールを含むことができる。水とアルコールは、蒸留カラム16中で実質的に互いに分離することによって、塔頂出口44を経て蒸留カラム16から出ていく主に水の塔頂蒸気流と、下方出口46を経て蒸留カラム16から出ていく主にアルコールの塔底流体流を生成できる。蒸留カラム16は、流れを供給流の成分の相対揮発度に基づいて、主に蒸気の塔頂生成物と主に液体の残液生成物に分離できる任意の装置であることができる。蒸留カラム16は、例えばトレイ、ランダムパッキング、構造パッキング又はそれらの任意の組合せのような内部構造物を含むことができる。
【0044】
本発明の一実施態様によれば、塔頂出口44を経て蒸留カラム16から出ていく主に水の塔頂蒸気流は少なくとも約50モル%、少なくとも約60%又は少なくとも75モル%の水を含むことができる。蒸留カラム16の出口44から排出された塔頂蒸気生成物は、導管122を経て、その後の加工、貯蔵又は廃棄に、例えば廃水処理ユニット又は例えば焼却を用いる廃棄手段に回されることができる。
【0045】
下方出口46を経て蒸留カラム14から出ていく主にアルコールの塔底液体流は少なくとも約50モル%、少なくとも約60モル%又は少なくとも75モル%のアルコール(例えばエチレングリコール)を含むことができる。本発明の一実施態様において、蒸留カラム16の下方出口46から回収される主にアルコールの流れは、少なくとも約150℃、約175〜約250℃又は190〜230℃の範囲の温度及び約0.25〜約50psig、約0.5〜約35psig又は1〜25psigの範囲の圧力を有することができる。図1に示されるように、蒸留カラムの下方出口46から排出された液体流は、導管124を経て更なる加工、貯蔵及び/又は再利用に回されることができる。
【0046】
図1に示すように、液体エステル生成物はエステル化容器14の液体出口28を出て、その後に再循環ループ18に導入することができる。再循環ループ18はエステル化容器14の液体出口28から熱交換器12の入口22までの流路を規定する。再循環ループ18は、一般に、液体生成物導管114、再循環ポンプ40、ポンプ吐出導管116、再循環導管100、減圧器20及び供給導管110を含む。エステル化容器14から排出された液体エステル生成物は、最初に、生成物導管114を通って再循環ポンプ40の吸い込み口まで流れることができる。ポンプ40から出た流れは、ポンプ吐出導管116を通され、その後に生成物導管118を経て輸送される生成物部分と再循環導管100を経て輸送される再循環部分とに分割されることができる。ポンプ40から出た流れの分割は、(導管100中の再循環部分の質量流速)対(導管118中の生成物部分の質量流速)の比が約0.25:1〜約30:1、約0.5:1〜約20:1又は2:1〜15:1の範囲となることができるように、実施できる。前述のように、導管100中の再循環部分は、導管104を経た新鮮なアルコール、導管106を経た添加剤及び/又は導管108を経た酸の添加の後に、最終的に熱交換器12への供給材料として使用することができる。
【0047】
導管118中の液体エステル生成物の生成物部分は、更なる加工、貯蔵又は他の用途のために、下流の場所に送ることができる。一実施態様において、導管118中の少なくともわずかの生成物部分は第2段階エステル化反応器(以下に詳述)において更なるエステル化に供することができる。
【0048】
ここで図2を参照すると、第1段階エステル化システム10(図1)からの生成物の一部は、導管Aを経て、第2段階エステル化反応器50の流体入口48(図2)に送ることができる。第2段階エステル化反応器50において、反応媒体が加熱され、エステル化条件に供される。しかし、先行技術の複雑でメインテナンス集約的なCSTRとは異なり、第2段階エステル化反応器50は、その中で処理される反応媒体に機械的撹拌をほとんど又は全く施さない単純で信頼性のある反応器であることができる。本発明の一実施態様において、第2段階エステル化反応器50中の反応媒体に施される撹拌の約50%未満、約25%未満、約10%未満、約5%未満又は実質的に0%が機械的撹拌によって施される。別の実施態様においては、図2に示されように、第2段階エステル化反応器50には撹拌機が装着されていない。
【0049】
一実施態様において、第2段階エステル化反応器50内に供給される熱は反応媒体の温度を少なくとも約5°F、少なくとも約10°F又は少なくとも25°F増加させる。一般に、反応媒体の入口温度は約200〜約300℃、約225〜約280℃又は240〜270℃の範囲であることができ、出口温度は約230〜約310℃、約240〜約290℃又は245〜約275℃の範囲であることができる。第2段階エステル化反応器50中の塔頂圧は約25psig未満、約15psig未満又は5psig未満の圧力に保持することができる。
【0050】
第2段階エステル化反応器50中でエステル化が実施された結果として、流体入口48を経て、第2段階エステル化反応器50に入る流れは、第2段階エステル化反応器50の流体入口48と液体出口52の間において、少なくとも約2%ポイント、少なくとも約5%ポイント又は少なくとも10%ポイントの転化率の増加を受けることができる。典型的には、第2段階エステル化反応器50の流体入口48に入る流れは、少なくとも約70%、少なくとも約75%又は少なくとも80%の転化率を有することができ、導管130を経て第2段階エステル化反応器50から出ていく流れは少なくとも80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも98%の転化率を有することができる。一般に、エステル化容器50中における反応媒体の滞留時間は約45分超、約60分超又は約70分超であることができる。
【0051】
ここで第2段階エステル化反応器50の具体的構成に目を向ける。図2に示される実施態様において、第2段階エステル化反応器50は最大直径(D)及び約1.15:1〜約10:1又は約1.25:1〜約8:1又は1.4:1〜6:1の範囲の高さ対直径(H:D)比を有する実質的に円筒形の縦長非撹拌容器である。第2段階エステル化反応器50は、下方端壁54、実質的に円筒形の側壁56及び上方端壁58を含むことができ、それらは、それぞれ、流体入口48、少なくとも1つの液体出口52及び蒸気出口60を規定している。一実施態様において、円筒形側壁56は、図2に上部液体出口、中間部液体出口及び下部液体出口52a、52b、52cとして示された、複数の垂直方向に離間された液体出口を含むことができる。流体入口48、液体出口52a〜c及び蒸気出口60は、先行技術のCSTRに比較して、第2段階エステル化反応器50を通って流れる媒体の転化率を最大にするように、互いに離間させることができる。例えば流体入口48は、液体出口52a〜cより低い位置に配することができ、蒸気出口60は液体出口52a〜cより高い位置に配することができる。一実施態様によれば、流体入口48は第2段階エステル化反応器50の下側部分(例えば、下側1/3)に配することができ、液体出口52a〜cは第2段階エステル化反応器50の中間部分及び/又は上側部分(例えば中間の1/3及び/又は上側2/3)に配することができ、蒸気出口60は第2段階エステル化反応器50の上部部分(例えば上部1/3)に配することができる。
【0052】
ここで図3を参照すると、一実施態様において、流体入口48及び/又は液体出口52は、従来型のCSTRに比較して第2段階エステル化反応器50中の反応媒体の転化率を最大にするように、互いに半径方向及び/又は円周方向に離間させることができる。図3に示すように、第2段階エステル化反応器50は、直立中心延長軸62を規定でき、流体入口48及び/又は液体出口52はこの軸から半径方向にそれぞれ距離ri及びroだけ離間されることができる。一実施態様において、riは少なくとも約0.15D、少なくとも約0.25D又は少なくとも0.4Dであることができる(「D」は、エステル化反応器50内に定義される容積の最大横寸法である)。一実施態様において、roは少なくとも約0.4D、少なくとも約0.45D又は少なくとも0.5Dであることができる。中心軸62から半径方向に離間される他に、流体入口48及び液体出口52は、図3に示すように、円周方向に互いに角度θだけ離間されることができる。一実施態様において、θは少なくとも約45°、少なくとも約90°、少なくとも約120°又は少なくとも約175°であることができる。
【0053】
再び図2を参照すると、第2段階エステル化反応器50は、そこを通って流れる反応媒体に、一般に流体入口48の上方であって蒸気出口60の下方に位置付けられた複数の垂直方向に離間された内部伝熱部材によって、熱を提供することができる。一実施態様において、伝熱部材は熱交換管であることができる。熱交換管は、図2に示すように、上部群、中間群及び下部群64a、64b及び64cのような、2つ又はそれ以上の垂直方向に離間された群で配列することができる。各群の熱交換管は、対応する上部、中間部及び下部HTM入口66a、66b、66cを通る加温熱媒体(HTM)の流れを受けることができる。HTMは、次に、反応媒体を第2段階エステル化反応器50中で加熱するように、熱交換管を通って流れる。本発明の一実施態様において、第2段階エステル化反応器50中の反応媒体の加熱に関連する熱伝達率は約10〜約150BTU/時/平方フィート/°F(BTU/h・ft2・°F)、約25〜約100BTU/h・ft2・°F又は35〜80BTU/h・ft2・°Fの範囲であることができる。伝熱部材によって第2段階エステル化反応器50中の反応媒体に伝達される熱の総量は、約100〜約5,000BTU/ポンド(反応媒体)(BTU/lb)、約400〜約2,000BTU/lb又は600〜1,500BTU/lbの範囲であることができる。冷却されたHTMは、熱交換管の上部群、中間群及び下部群64a〜cからそれぞれのHTM出口(図示せず)を経て出ていき、その後にHTMシステム全体に再循環することできる。
【0054】
熱交換管群64a〜cへのHTMの流れは、上部、中間部及び下部HTMバルブ68a、68b、68cで制御することができる。本発明の一実施態様において、熱交換管の群64a〜cは、独立に、操作することができるので、1つ又はそれ以上の群が第2段階エステル化反応器50中で反応媒体に加熱を行うことができる一方で、1つ又はそれ以上の群は実質的に加熱を行わない。1つ又はそれ以上の熱交換管群64a〜cの独立した操作は、先行技術のCSTRよりも、第2段階エステル化反応器50の操作柔軟性を増加させることができる。例えば、図2に示されるように、第2段階エステル化反応器50中の反応媒体の液面(レベル)72が上部熱交換管群64aよりも下側にある場合には、上部HTMバルブ68aを閉じることによって、上部熱交換管群64aへの加温HTMの流れを妨げることができる。第2段階エステル化反応器50が様々なレベル(液面)の反応媒体を用いて操作できることは、運転の間中、常に伝熱管を完全に水面下に沈めておくように、一定レベル(水面)の反応媒体を用いて一般に運転される先行技術のCSTRとは全く対照的である。
【0055】
再び図2を参照すると、主に蒸気の生成物が蒸気出口60を経て第2段階エステル化反応器50から出ていくことができる。本発明の一実施態様において、主に蒸気の生成物は水及び/又はアルコール、例えばエチレングリコールを含むことができる。第2段階エステル化反応器50から出た後、蒸気流は導管128に流れ込み、その後、更なる加工、貯蔵及び/又は廃棄に回すことができる。
【0056】
図2に示すように、液体生成物は1つ又はそれ以上の液体出口52a〜cを経て第2段階エステル化反応器50から回収することができる。熱交換管群64a〜cの1つ又はそれ以上が独立して操作する実施態様において、1つ又はそれ以上の対応する液体生成物出口も、生成物バルブ70a〜cを用いて同様に切り離すことができる。例えば、反応媒体液面(レベル)72が上部熱交換管群64aより下方にあり且つ上部熱交換管が前述のように熱の提供から切り離される場合には、図2に示すように、上部生成物バルブ70aを閉じることによって、上部液体出口52aを更に切り離すことができる。同様に、1つ又はそれ以上の液体出口を独立して切り離すことができることによって、第2段階エステル化反応器50に更なる操作柔軟性が与えられる。
【0057】
液体エステル化生成物は、導管130を経て第2段階エステル化反応器50から出ていき、その後に、例えば下流の重縮合セクションにおけるような更なる加工又は貯蔵に回すことができる。
【0058】
数値範囲
本明細書の説明は、本発明に関連するいくつかのパラメーターを定量化するために数値範囲を用いる。数値範囲が示される場合には、このような範囲は、範囲の上端値のみを記載するクレーム限定と共に、範囲の下端値のみを記載するクレーム限定に対する文言サポートを提供するものと解釈できると理解すべきである。例えば10〜100の開示された数値範囲は、「10より大きい」(上限がない)を記載するクレームと「100未満」(下限がない)を記載するクレームに対する文言サポートを提供する。
【0059】
定義
本明細書中で使用する単数形の表現(“a”,“an”,“the”及び“said”)は、1つ(1種)又はそれ以上を意味する。
【0060】
本明細書中で使用する用語「撹拌」は、流体の流れ及び/又は混合を引き起こす反応媒体中に散逸される仕事を意味する。
【0061】
本明細書中で使用する用語「及び/又は」は、2つ又はそれ以上の項目のリストに用いる場合には、列挙された項目の任意の1つを単独でも使用できるし、或いは列挙された項目の2つ又はそれ以上の任意の組合せを使用することもできることを意味する。例えば、組成物が成分A、B及び/又はCを含むものとして記載されている場合には、その組成物はAのみ;Bのみ;Cのみ;AとBの組合せ;AとCの組合せ;BとCの組合せ;又はA、B及びCの組合せを含むことができる。
【0062】
本明細書中で使用する用語「含んでなる(“comprising”,“comprises”及び“comprise”)」はこの用語の前に記載された対象から、この用語の後に記載された1つ又はそれ以上のエレメントへの移行(transition)に用いられる限界のない移行用語(transition term)であり、その対象を構成するのは必ずしも、この移行用語の後に列挙された1つ又はそれ以上のエレメントだけではない。
【0063】
本明細書中で使用する用語「含む(“containing”,“contains”及び“contain”)」は以下に示す「含んでなる(“comprising”,“comprises”及び“comprise”)」と同様な限界のない意味を有する。
【0064】
本明細書中で使用する用語「蒸留分離」は分離される物質の相対揮発度に基づいて、1種又はそれ以上の化学物質を1種又はそれ以上の他の化学物質から分離することを意味する。
【0065】
本明細書中で使用する用語「有する(“having”,“has”及び“have”)」は前述の「含んでなる(“comprising”,“comprises”及び“comprise”)」と同じ限界のない意味を有する。
【0066】
本明細書中で使用する用語「含む(“including”,“includes”及び“include”)」は前述の「含んでなる(“comprising”,“comprises”及び“comprise”)」と同じ限界のない意味を有する。
【0067】
本明細書中で使用する用語「機械的撹拌」は反応媒体に対して又は反応媒体内で硬質又は軟質エレメントの物理的運動によって引き起こされる反応媒体の撹拌を意味する。
【0068】
本明細書中で使用する用語「反応媒体」は化学反応に供される任意の媒体を意味する。
【0069】
本明細書中で使用する用語「残基」は、その部分が実際にその化学種から得られたかどうかにかかわらず、特定の反応機構又はその後の配合若しくは化学生成物におけるその化学種の得られる産物である部分を意味する。
【0070】
クレームは開示した実施態様には限定されるものではない
前述の本発明の好ましい形態は、説明としてのみ用いることができ、本発明の範囲を解釈するために限定的な意味で用いてはならない。本発明の精神から逸脱しなければ、前記の例となる実施態様の変更は当業者によって容易に行うことができるであろう。
【0071】
本発明者らは、添付した特許請求の範囲に記載した本発明の文言範囲から著しく逸脱しないが本発明の文言範囲の外側にある任意の装置に関する本発明の正当に正しい範囲を決定し且つ評価するために、均等論に依拠する意志をここに言明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)縦長のエステル化反応器中で反応媒体をエステル化に供し;そして
(b)任意的に、前記反応媒体を前記エステル化反応器中で撹拌する
ことを含んでなり、前記撹拌の約50%未満を機械的撹拌によって行う方法。
【請求項2】
前記反応媒体の転化率が前記エステル化反応器中で初期転化率から最終転化率まで増加し、前記初期転化率が少なくとも約70%である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最終転化率が少なくとも80%である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記初期転化率が少なくとも約75%であり且つ前記最終転化率が少なくとも約85%である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記エステル化反応器が約1.15:1〜約10:1の範囲の高さ対直径比を有する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記エステル化反応器が流体入口及び液体出口を規定し、前記反応媒体の少なくとも第1部分が前記流体入口を通して前記エステル化反応器に入り、前記反応媒体の少なくとも第2部分を前記液体出口を通して前記エステル化反応器から排出し、前記流体入口を前記液体出口より低い位置に配する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記エステル化反応器が蒸気出口を更に含み、蒸気エステル化副生成物を前記液体出口を通して前記エステル化反応器から排出し、前記蒸気出口を前記液体出口より高い位置に配する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記流体入口を前記エステル化反応器の下側1/3に配し、前記液体出口を前記エステル化反応器の上側2/3に配する請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記エステル化反応器が直立中心延長軸を規定し、前記液体出口を前記中心軸から半径方向に離間させる請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記流体入口を前記中心軸から半径方向に離間させる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記エステル化反応器が最大水平径(D)を有し、前記液体出口を前記中心軸から半径方向に少なくとも約0.4D離間させ、前記流体入口を前記中心軸から半径方向に少なくとも約0.15D離間させる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記流体入口及び液体出口を円周方向に互いに少なくとも約90°離間させる請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記エステル化反応器が1つの流体入口及び複数の垂直方向に離間された液体出口を規定し、前記反応媒体の少なくとも第1部分が前記流体入口を通って前記エステル化反応器に入り、前記反応媒体の少なくとも第2部分を前記液体出口の1つ又はそれ以上を通して前記エステル化反応器から排出し、前記流体入口を前記流体出口より低い位置に配する請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記エステル化反応器が直立中心延長軸を規定し、前記流体入口及び前記液体出口を前記中心軸から半径方向に離間させ、前記入口と出口とを円周方向に互いに少なくとも約120°離間させる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記出口を前記エステル化反応器の直立で実質的に円筒形の側壁に規定し、前記入口を前記エステル化反応器の下端壁に規定する請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記エステル化の間中、前記エステル化反応器中で前記反応媒体を加熱することを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記加熱を、複数の垂直方向に離間された伝熱部材によって、行う請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記の垂直方向に離間された伝熱部材を独立して操作することができ、それによって前記熱交換部材の1つ又はそれ以上が前記反応媒体を加熱できる一方で、前記熱交換部材の他の1つ又はそれ以上が前記反応媒体を加熱しない請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記加熱を、熱媒体を、複数の垂直方向に離間された熱交換管群に通して流すことによって行う請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記反応媒体のレベルが熱交換管の前記群の少なくとも1つよりも下方にある場合には、熱交換管の前記群の前記の少なくとも1つを通る前記熱媒体の流れを実質的に排除することを更に含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記撹拌の約25%未満を機械的撹拌によって提供する請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記反応媒体が前記エステル化の間中、実質的に機械的撹拌を受けない請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記エステル化反応器中における前記反応媒体の滞留時間が約45分より長い請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記エステル化を約200〜約300℃の範囲の温度において実施する請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記エステル化を約25psig未満の圧力において実施する請求項1に記載の方法。
【請求項26】
(a)第1エステル化ゾーン中で第1反応媒体をエステル化に供し、それによって少なくとも約70%の転化率を有する第1生成物を生成し;そして
(b)前記第1生成物の少なくとも一部を受ける流体入口と前記第2生成物の少なくとも一部を排出する液体出口を規定し、前記液体出口を前記流体入口よりも高い位置に配した、第2エステル化反応器によって規定される第2エステル化ゾーン中で、前記第1生成物の少なくとも一部を更なるエステル化に供し、それによって少なくとも約80%の転化率を有する第2生成物を生成することを含んでなる方法。
【請求項27】
前記第1生成物が少なくとも約75%の転化率を有し且つ前記第2生成物が少なくとも約85%の転化率を有する請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第2エステル化反応器が縦長である請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記第2エステル化反応器が蒸気出口を更に含み、前記蒸気出口を前記液体出口よりも高い位置に配する請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記流体入口を前記第2エステル化反応器の下側1/3に配し、前記液体出口を前記第2エステル化反応器の上側2/3に配する請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記第2エステル化反応器が直立中心軸を規定し、前記第2エステル化反応器が最大水平径(D)を有し、前記液体出口を前記中心軸から半径方向に少なくとも0.4D離間させ、前記流体入口を前記中心軸から半径方向に少なくとも0.15D離間させ、前記流体入口と液体出口とを円周方向に互いに少なくとも約90°離間させる請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記第2エステル化反応器が、前記第2生成物の少なくとも一部を排出するための、複数の垂直方向に離間された液体出口を規定し、前記流体入口を前記液体出口より低い位置に配する請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記第2エステル化反応器が直立中心軸を規定し、前記流体入口と前記液体出口とを前記中心軸から半径方向に離間させ、前記流体入口と前記液体出口とを円周方向に互いに少なくとも約120°離間させる請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第2エステル化反応器中において反応媒体を加熱することを更に含む請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記加熱を、複数の垂直方向に離間された熱交換管群を通って流れる熱媒体を用いる間接的熱交換によって、行う請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記反応媒体のレベルが熱交換管の前記群の少なくとも1つよりも下方にある場合には、熱交換管の前記群の前記の少なくとも1つを通る前記熱媒体の流れを実質的に排除することを更に含む請求項35に記載の方法。
【請求項37】
任意的に、前記第2エステル化反応器中で反応媒体を撹拌することを更に含み、前記撹拌の約50%未満を機械的撹拌によって行う請求項26に記載の方法。
【請求項38】
前記反応媒体が前記第2エステル化反応器中で実質的に機械的撹拌を受けない請求項37に記載の方法。
【請求項39】
反応器及び前記反応器中に配置された複数の垂直方向に離間された熱交換管を含んでなり;前記反応器が直立中心延長軸に沿って長く;前記反応器が1つの流体入口、複数の垂直方向に離間された液体出口及び1つの蒸気出口を規定し;前記流体入口が前記蒸気出口よりも低い位置に配置され;前記液体出口が前記流体入口よりも上方であって且つ前記蒸気出口よりも下方の位置に配置されている装置。
【請求項40】
前記反応器に機械的撹拌機が装着されていない請求項39に記載の装置。
【請求項41】
前記熱交換管が、前記流体入口より上方であって且つ前記蒸気出口より下方の位置に配置されている請求項39に記載の装置。
【請求項42】
前記反応器が約1.15:1〜約8:1の範囲の高さ対直径比を有する請求項39に記載の装置。
【請求項43】
前記反応器が最大水平径(D)を有し、前記液体出口が前記中心軸から半径方向に少なくとも約0.4D離間されており、前記流体入口が前記中心軸から半径方向に少なくとも約1.5D離間されている請求項42に記載の装置。
【請求項44】
前記液体出口及び流体入口が円周方向に互いに少なくとも90°離間されている請求項43に記載の装置。
【請求項45】
前記反応器が前記液体出口を規定する、概ね直立で、実質的に円筒形の側壁を含む請求項39に記載に装置。
【請求項46】
前記液体出口が前記反応器の下側1/3に配され、前記蒸気出口が前記反応器の上側1/3に配され、前記液体出口が前記反応器の上側2/3に配されている請求項39に記載の装置。
【請求項47】
上流熱交換器及び上流離脱容器を更に含んでなり;前記上流熱交換器が1つの交換器入口及び1つの交換器出口を規定し;前記上流離脱容器が1つの離脱流体用入口、1つの離脱蒸気出口及び1つの離脱液体出口を規定し;前記交換器出口と前記離脱流体用入口とが互いに流体流通的に連結され;前記離脱液体出口と前記反応器の前記流体用入口とが互いに流体流通的に連結され;前記離脱液体出口を前記交換器入口とが互いに流体流通的に連結される請求項39に記載の装置。
【請求項48】
前記熱交換器がシェル・アンド・チューブ熱交換器である請求項47に記載の装置。
【請求項49】
前記離脱容器が横長である請求項47に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−520357(P2010−520357A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552686(P2009−552686)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/002270
【国際公開番号】WO2008/108928
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】