説明

非晶性シナカルセト塩酸塩及びその調製

非晶性シナカルセト塩酸塩、その調製方法、及びそれを含む安定性医薬組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、非晶性シナカルセト(Cinacalcet)塩酸塩、その調製方法、及びそれを含む安定性医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
(R)−α−メチル−N−[3−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]プロピル]−1−ナフタレンメタンアミン(“シナカルセト”又は“CNC”)は、226256−56−0のCAS番号、C22H22F3Nの式、及び次の構造:
【0003】
【化1】

を有する。
【0004】
シナカルセトは、364782−34−3のCAS番号及び次の構造:
【化2】

【0005】
を有する、シナカルセト塩酸塩(“CNC−HCl”又は“シナカルセトHCl”)の遊離塩基形である。
【0006】
CNC−HClは、SENSIPARTMとして市販されており、そしてFDAにより許可されているカルシウム擬似薬(Calcimimetics)として知られている種類の化合物における最初の薬物であった。カルシウム擬似薬は、カルシウム受容体を活性化することにより副甲状腺ホルモン(“PTH”)の分泌を低める経口活性の小分子の種類である。PTHの分泌は通常、カルシウム感染性受容体により調節される。カルシウム擬似薬は、カルシウムに対するこの受容体の感受性を高め、副甲状腺ホルモンの放出を阻害し、そして数時間内にPTHレベルを低める。
【0007】
カルシウム擬似薬は、上皮小体亢進症、すなわち副甲状腺上のカルシウム受容体が血流におけるカルシウムに対して正しく応答するのに失敗する場合にもたらされるPTHの過剰分泌により特徴づけられる状態を処理するために使用される。二次上皮小体亢進症のインジケーターであるPTHの高められたレベルは、カルシウム及びリンの変更された代謝、骨の痛み、骨折、及び心血管死についての高められた危険性に関連している。カルシウム擬似薬として、CNC−HClは、慢性腎臓疾患を有する患者における二次上皮小体亢進症の透析による処理のために許可されている。CNC−HClによる処理は、PTHの血清レベル、及びカルシウム/リンイオン生成物、すなわち血液におけるカルシウム及びリンの量の程度を低める。
【0008】
アメリカ特許第6,011,068号は、無機イオン受容体活性、特にカルシウム受容体−活性分子、例えばシナカルセトの一般構造を有するそれらの分子を開示する。アメリカ特許第6,211,244号は、シナカルセトに関連するカルシウム受容体−活性化合物及びそのような化合物の製造方法を開示する。シナカルセト及びその鏡像異性体は、アメリカ特許第6,211,244号;Drugs of the Future, 27(9), 831(2002);アメリカ特許第5,648,541号、第4,966,988号;及びTetrahedron Letters (2004) 45: 8355, フィットノート12に開示される方法を用いて、種々の方法により生成され得る。
【0009】
新規非晶形の活性医薬成分(“API”)の発見は、医薬製品の性能特徴を改良するための機会を提供する。そのような発見は、配合科学者が標的化された開放プロフィール又は他の所望する特徴を有する薬物の医薬投与形を企画するために利用できる、材料の範囲を拡大する。
【0010】
一般的に、非晶性固形物は、それらの材料が同じ化合物の結晶形よりもより溶解性であるので、溶解性及び生物学的利用能の増強のための機会を提供する。溶解速度はまた、シロップ、エリキシル及び他の液体薬剤の配合において重要である。
上記に論じられる従来技術の文献は、シナカルセト塩酸塩の非晶形を開示していない。
【発明の開示】
【0011】
発明の要約
本発明は、非晶性シナカルセト塩酸塩に向けられる。好ましくは、非晶性シナカルセト塩酸塩は、図2に実質的に示されるようなX−線回折パターンにより特徴づけられる。
【0012】
本発明の非晶性シナカルセト塩酸塩は好ましくは、シナカルセト塩酸塩をクロロホルムに溶解し;脂肪族及び環式炭化水素から成る群から選択された抗−溶媒を混合し、沈殿物を得;そして25℃以上、より好ましくは約40℃〜60℃及び最も好ましくは約50℃の温度で、減圧下で、沈殿されたシナカルセト塩酸塩を乾燥することを含んで成る方法において調製される。沈殿されたシナカルセト塩酸塩は好ましくは、約16〜30時間、乾燥される。好ましくは、前記方法においては、非晶性シナカルセト塩酸塩は、シナカルセト塩酸塩1g当たり約5〜約10mlのクロロホルムの濃度で存在する。好ましくは、前記抗−溶媒は、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン又はシクロヘキサンである。前記抗−溶媒の混合に続いて、沈殿物は、約5分〜約20時間スラリーとして維持される。
【0013】
本発明の非晶性シナカルセト塩酸塩はまた、好ましくは、C2-C8エーテル、C5-8環状、枝分れ鎖及び/又はハロゲン化された炭化水素、C3-7エステル、C1-4アルコール、C3-6ケトン及びそれらの混合物から成る群から選択された溶媒中、シナカルセト塩酸塩の溶液を供給し;そして約50℃〜200℃の入口温度を有する窒素ガスによる噴霧乾燥により溶媒を蒸発し、そして除去することを含んで成る方法において調製される。前記溶媒は好ましくは、エタノール、THF、1,4―ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、イソブチルアセテート、アセトン、MEK及びアセトニトリルから成る群から選択され、そしてより好ましくは、エタノールである。前記シナカルセト塩酸塩は好ましくは、シナカルセト塩酸塩1g当たり約5〜約10mlの溶媒の濃度で存在する。前記蒸発された溶媒及び窒素は、約25℃〜約150℃の温度で噴霧乾燥機を出る。
【0014】
本発明の非晶性シナカルセト塩酸塩はまた好ましくは、溶媒中、シナカルセト塩酸塩の溶液を供給し、そして前記溶媒を、約760mmHg 以下の圧力及び約100℃以下の温度下での急速真空蒸発により除去することを含んで成る方法において調製される。温度は好ましくは、約100mmHg以下、及びより好ましくは、約70mmHg 以下である。温度は好ましくは、約20℃〜約80℃及びより好ましくは、約25℃〜約45℃である。好ましくは、前記溶媒の温度及び溶媒、及び前記真空蒸発の温度、真空及び供給速度は、シナカルセト塩酸塩が実質的に即座に沈殿するようなものである。
【0015】
有用な溶媒は、C1-4アルコール、C3-7ケトン、C3-7エステル、C5-7線状、枝分れ鎖又は環状、飽和又は不飽和炭化水素、C2-8エーテル又はそれらの混合物を包含するが、但しそれらだけには限定されない。好ましくは前記溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、ジエチルエーテルメチルイソプチルエーテル、又はそれらの混合物からの群から選択され、そしてより好ましくは、メタノール又はアセトンである。好ましくは、前記溶媒は、約20体積%以下の水、より好ましくは、約10体積%以下の水、及び最も好ましくは、約2体積%以下の水を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
発明の特定の記載
本明明細書において使用される場合、“周囲温度”とは、通常約18〜約25℃、好ましくは約20〜約22℃の温度での室温を言及する。
公開されたSummary Basis for Approval of New Drug Application#21688において、シナカルセト塩酸塩は周囲温度でわずか1つの安定性結晶形を有することが言及されている。このフォームは、本明細書においてフォームIとして企画され、そして約13.9°、19.0°、21.3°、及び25.5°2θ±0.2°2θデの粉末X−線回折(“PXRD”)により特徴づけられる。
【0017】
この結晶形はさらに、約15.0°、15.5°、16.0°、17.9°、23.7°及び24.3°2θ±0.2°2θでのピーク又は図1に実質的に示されるようなPXRDパターンにより特徴づけられ得る。この結晶形はさらに、図3に実質的に示されるように、約160℃〜約170℃及び175℃〜約185℃で2種の発熱ピークを示す示差走査熱量法(“DSC”)サーモグラムにより特徴づけられ得る。この結晶形は、1%以下の重量損失を示す。図4に実質的に示されるような熱重量分析(“TGA”)サーモグラムにより特徴づけられ得る。このフォームは、無水であると思われる。
【0018】
記載される非晶形を調製するために使用されるシナカルセト塩基は、当業界において知られているいずれかの方法、例えばアメリカ同時継続出願番号60/750,910号に記載される方法に従って調製され得る。
【0019】
1つの態様においては、本発明は非晶性シナカルセトを包含する。非晶性シナカルセトは、図2に実質的に示されるようなPXRDパターンにより特徴づけられる。この非晶形は、例1に示されるように、通常の条件において延長された貯蔵下で安定している。さらに、非晶形は、例2に示されるように、高い湿度レベル(100%の相対温度(“RH”))で安定し、そして非吸湿性である。
【0020】
もう1つの態様においては、本発明は、(a)シナカルセト塩酸塩をクロロホルムに溶解し;(b)脂肪族及び環式炭化水素から成る群から選択された抗−溶媒を混合し、沈殿物を得;そして(c)高められた温度で、減圧下で、沈殿されたシナカルセト塩酸塩を乾燥することを含んで成る方法を包含する。
【0021】
好ましくは、シナカルセト塩酸塩は、シナカルセト塩酸塩1g当たり約5〜約10mlのクロロホルムの濃度で、より好ましくは、シナカルセト塩酸塩1g当たり約5〜約8mlのクロロホルムの濃度でクロロホルムに溶解される。
前記抗−溶媒の混合に続いて、沈殿物は好ましくは、約5分〜約20時間スラリーとして維持される。
【0022】
好ましくは、前記抗−溶媒は、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン及びシクロヘキサンから成る群から選択される。
好ましくは、本明細書において使用される場合、用語“高められた温度”とは、室温よりも高い、すなわち約25℃以上、より好ましくは約40℃〜60℃及び最も好ましくは、約50℃の温度を意味する。好ましくは、乾燥は、約16〜30時間である。
【0023】
もう1つの態様においては、本発明は、噴霧乾燥により非晶性シナカルセト塩酸塩を調製するための方法を包含する。好ましくは、シナカルセト塩酸塩は、環状エーテル、トルエン、塩素化された炭化水素、エステル、C1-C4アルコール及びケトンから成る群から選択された溶媒に溶解される。好ましい環状エーテルは、テトラヒドロフラン(“THF”)及び1,4−ジオキサンを包含し、好ましい塩素化された炭素水素はジクロロメタン及びクロロホルムを包含し、好ましいエステルは酢酸エチル及びイソブチルアセテートを包含し、そして好ましいケトンは、アセトン、メチルエチルケトン(“MEK”)及びアセトニトリルを包含する。好ましくは、噴霧乾燥機の窒素ガスは、約50℃〜200℃の入口温度で存在する。特に好ましい態様においては、シナカルセト塩酸塩フォームIは、噴霧乾燥機の窒素ガスが約100℃の入口温度で維持されながらエタノールに溶解される。非晶性シナカルセト塩酸塩が得られる。
【0024】
もう1つの態様においては、本発明は、APIが早く乾燥される急速真空蒸発により非晶性シナカルセト塩酸塩を調製するための方法を包含する。溶液の流速は、API:溶媒の濃度、圧力、温度及び性質に依存して、約10〜約50cm3/時/ノズルの範囲である。
他の乾燥技法が実験規模、例えば約100g以下のバッチのために適切であるが、急速真空を用いての早い注入が、産業規模、すなわち少なくとも約500g、より好ましくは少なくとも約1kg及びもっとも好ましくは少なくとも約10kgのバッチでの非晶性シナカルセト塩酸塩の調製を可能にする。
【0025】
原則として、急速真空蒸発技法が、水性及び有機溶媒の両者に適用できる。しかしながら、有機溶媒は一般的に、水性溶媒よりもより揮発性であるので、有機溶媒と共にこの技法を使用することが好ましい。好ましい溶媒は、相対的に低い沸点を有する容易に揮発する有機溶媒、例えばC1-C4アルコール、C3-C7ケトン、C3-C7エステル、C5-C7直鎖又は環状飽和炭化水素、C2-C8エーテル、又はそれらの混合物である。特に好ましい溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、ジエチルエーテルメチルイソブチルエーテル、又はそれらの混合物からの群から選択される。特に好ましい溶媒は、メタノール又はアセトンである。好ましくは、約20体積%以下の水、より好ましくは約10体積%以下の水及び最も好ましくは2体積%の水を含むそれらの溶媒が使用される。溶媒の沸点は、周囲温度で大気圧下で、好ましくは約100℃以下、より好ましくは約70℃以下である。
【0026】
出発材料シナカルセト塩酸塩は好ましくは、約20〜約80m/m%、より好ましくは約60〜75%の濃度で存在し、そして注射器又は好ましくはノズルを通して高温で減圧チャンバー中に導入される。供給は、もう1つのタンクからポンプ圧力により又は乾燥チャンバーにおける真空により行われ得る。溶液が乾燥チャンバーに達する場合、溶媒は実質的に即座に蒸発し、そして溶解されたシナカルセト塩酸塩は、スカム(固体発泡体)又は時々、固体として沈殿する。スカムは、注射器/ノズル上に吊り下がる連続供給のために成長する。スカムが一定の塊状物に達する場合、それは乾燥チャンバーの底に落下する。
【0027】
濃度、溶媒型、温度、真空及び供給速度は、注射器から出るシナカルセト塩酸塩が即座に沈殿するよう設定される。乾燥チャンバーにおけるノズルのための入口の数は、真空の能力に依存する。乾燥チャンバーからの蒸気の除去は、不活性ガス、好ましくは窒素の小さな漏れにより促進され得る。
【0028】
乾燥装置は好ましくは、固形物を分解し、粉末を形成するために適切である攪拌機を含む。固形物の分解の後、API乾燥は、残留溶媒濃度が必要とされるFDAレベルに低下するまで、減圧下で、好ましくは攪拌を伴って続けられ得る。溶媒レベルは、溶媒型に依存するが、しかし好ましくは約5000ppm以下、より好ましくは約4000ppm以下、及び最も好ましくは約3000ppm以下である。攪拌の後、粉末の乾燥は好ましくは、減圧(1atm以下)下で、より好ましくは約100mmHg以下、最も好ましくは約50mmHg以下で実施される。温度は好ましくは、約30℃〜約50℃、より好ましくは約35℃〜約45℃である。乾燥は好ましくは、約1〜約10時間、行われる。
【0029】
粉末は、当業者に知られているいずれかの従来の手段により、攪拌機を回転しながら、チャンバーの底に位置する出口を通して、乾燥機から放出され得る。弁は、粉末の放出のために開放され得、そして圧力が放出を促進するために適用される。
【0030】
本発明の方法は好ましくは、次の性質を有する供給システムにより行われる:好ましくは約3mm以下、より好ましくは約2mm以下の直径の注射器/ノズルのディストリビューター;API溶液の連続供給、ここで溶液は有機又は水性溶媒における;好ましくは約760mmHg以下、より好ましくは約100mmHg以下、より好ましくは約50mmHg以下、最も好ましくは約20mmHg以下の作業圧力;約100℃以下、好ましくは約20℃〜約80℃、より好ましくは約25℃〜約45℃の作業温度;任意の不活性ガス流(例えば、N2);及び攪拌機及び放出装置を備えた乾燥チャンバー。微量添加が可能であるが、産業規模での使用のための工程の拡大が注射器及び連続供給により容易される。
【0031】
非制限的な例によれば、15gのシナカルセト塩酸塩は好ましくは、次のパラメーターを必要とする:4時間、60±5℃及び80mmHg。溶液は周囲温度で乾燥機中に供給され、そして非晶性シナカルセト塩酸塩が得られる。
【0032】
もう1つの態様においては、本発明は、非晶性シナカルセト塩酸塩を含んで成る医薬組成物を包含し、ここで製剤は物理的及び化学的転移に対して実質的に安定しており、又は製剤は、許容できるGood Manufacturing Process(“GMP”)必要条件に従って製造される。
次の非制限的な例は本発明の好ましい態様の単なる例示であり、そして本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0033】
計測器
熱分析
DSC分析を、Mettler Toledo 821 Stareを用いて行った。るつぼを、分析の前、刻み目を付け、そしてパンチした。サンプルの重量は約3〜5mgであり;サンプルを、30℃〜250℃まで10℃/分の速度で走査した。オーブンを、40ml/分の流速で窒素ガスにより一定にパージした。3個の穴を有する蓋により被覆された標準の40μlのアルミニウム製るつぼを使用した。
【0034】
熱重量変化の測定を、Mettler TG50熱重量分析機上で行った。7〜15mgのサンプルを、アルミニウムパンに配置し、そして装置に配置した。データを、10℃/分の速度で約50℃〜約350℃まで収集した。
【0035】
PXRD
粉末X−線回折データを、固体状態検出器及び種々の測角器を備えたSCINTAG粉末X−線回折計モデルX’TRAを用いて得た。1.5418Åの銅放射線を使用した。サンプルホルダーは、丸形ゼロバックグラウンド及び25(直径)*0.5(深さ)mmの穴を備えた丸形標準アルミニウムサンプルホルダーである。走査パラメーターは、2〜40°2θの範囲及び3°/分の連続走査速度であった。
【0036】
噴霧乾燥のための装置
製造業者:Hosokawa Micron Corporation; Model:AGM−2M−SD
【0037】
非晶性シナカルセト塩酸塩の安定性
例1
非晶性シナカルセト塩酸塩を、密封したビンに周囲温度で2ヶ月間、貯蔵した。サンプルをPXRDにより試験し、非晶性含有率を示す。
【0038】
湿度への暴露の後の非晶性シナカルセト塩酸塩の含有率
例2
100mgの非晶性シナカルセト塩酸塩を、薄層として広げ、そして100%相対湿度に8日間、暴露した。次に、サンプルを、PXRD及びKarl Fisher(“KF”)滴定により試験した。1.4%の水含有率を有する非晶性シナカルセト塩酸塩を得た。
【0039】
シナカルセト塩基の調製
例3
25.5gのメシレート(VI)を、アセトニトリル(204ml)に溶解した。(R)−1−ナフチルエチルアミン(14.5ml)及び非晶性K2CO3(24.9g)を添加し、そしてその反応混合物を還流温度に加熱し、そして還流下に16時間、維持した。次に塩を濾過し、そして溶媒を減圧下で除去した。残渣をDCM(75ml)に溶解した。得られる溶液を、5%HCl水溶液(pH=1)、次に飽和NaHCO3溶液(pH=8〜9)、及び最終的に水により洗浄した。次に、有機相を分離し、そしてNa2SO4上で乾燥し(任意である)、そして濾過した。溶媒を、乾燥まで蒸発し、33.4gのシナカルセト塩基を得た。
【0040】
非晶性シナカルセト塩酸塩の調製−溶媒−抗溶媒方法
例4
0.52gのシナカルセト塩酸塩を、クロロホルム(3.5ml)に室温で溶解した。次に、n−ペンタン(30ml)を、沈殿物を得るために少しずつ添加した。そのスラリーを室温で5分間、攪拌した。次に、固形物を濾過により単離し、そして真空オーブンにおいて50℃で16時間、乾燥し、非晶性シナカルセト塩酸塩を得た。
【0041】
例5
0.58gのシナカルセト塩酸塩を、クロロホルム(6ml)に室温で溶解した。次に、n−ヘプタン(30ml)を、沈殿物を得るために少しずつ添加した。そのスラリーを室温で16時間、攪拌した。次に、固形物を濾過により単離し、そして真空オーブンにおいて50℃で20.5時間、乾燥し、非晶性シナカルセト塩酸塩を得た。
【0042】
例6
0.62gのシナカルセト塩酸塩を、クロロホルム(4ml)に室温で溶解した。次に、n−ヘキサン(30ml)を、沈殿物を得るために少しずつ添加した。そのスラリーを室温で16時間、攪拌した。次に、固形物を濾過により単離し、そして真空オーブンにおいて50℃で24.5時間、乾燥し、非晶性シナカルセト塩酸塩を得た。
【0043】
例7
0.47gのシナカルセト塩酸塩を、クロロホルム(3.5ml)に室温で溶解した。次に、シクロヘキサン(30ml)を、沈殿物を得るために少しずつ添加した。そのスラリーを室温で16時間、攪拌した。次に、固形物を濾過により単離し、そして真空オーブンにおいて50℃で18.5時間、乾燥し、非晶性シナカルセト塩酸塩を得た。
【0044】
例8
0.49gのシナカルセト塩酸塩を、クロロホルム(5ml)に室温で溶解した。次に、シクロヘキサン(30ml)を、沈殿物を得るために少しずつ添加した。そのスラリーを室温で3時間、攪拌した。次に、固形物を濾過により単離し、そして真空オーブンにおいて50℃で24時間、乾燥し、非晶性シナカルセト塩酸塩を得た。
【0045】
噴霧乾燥機による非晶性シナカルセト塩酸塩の調製
例9
5.0gのシナカルセト塩酸塩を、95%エタノール(25ml)に室温で溶解した。その溶液を、1.4mmのノズルキャップを有する、0.7mmの直径の標準ノズルを用いて、Buchiミニ噴霧乾燥機B−290により噴霧乾燥した。窒素ガスは、入口で100℃の温度であった。蒸発される溶媒及び窒素は、65〜60℃の温度で噴霧乾燥機に残った。非晶性シナカルセト塩酸塩を得た。
【0046】
急速真空蒸発による非晶性シナカルセト塩酸塩の調製
例10
15gのシナカルセト塩酸塩を、95%エタノール(75ml)に室温で溶解する。その溶液を、予備加熱された(60℃)の1Lの反応器に真空(約80mバール)下で供給し、非晶性シナカルセト塩酸塩を得る。乾燥を約4時間、行った。非晶性シナカルセト塩酸塩を得る。
【0047】
特定の好ましい態様及び例示的な例に関して本発明を記載して来たが、当業者は、本明細書に開示されるような本発明の範囲内で本発明を修飾できることを理解している。例は、本発明の理解を助けるために示され、そして本発明の範囲を制限するものではない。例は、従来の方法の詳細な説明は包含しない。そのような方法は、当業者に良く知られており、そして多くの出版物に記載されている。本明細書に言及されるすべての引例は引用により組込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、シナカルセト塩酸塩フォームIのX−線粉末回折パターンを示す。
【図2】図2は、非晶性シナカルセト塩酸塩のX−線粉末回折パターンを示す。
【図3】図3は、シナカルセト塩酸塩フォームIのDSCサーモグラムを示す。
【図4】図4は、シナカルセト塩酸塩フォームIのTGAサーモグラムを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶性シナカルセト(Cinacalcet)塩酸塩。
【請求項2】
図2に実質的に示されるようなX−線回折パターンにより特徴づけられる請求項1記載の非晶性シナカルセト塩酸塩。
【請求項3】
請求項1記載の非晶性シナカルセト塩酸塩の調製方法であって、シナカルセト塩酸塩をクロロホルムに溶解し;脂肪族及び環式炭化水素から成る群から選択された抗−溶媒を混合し、沈殿物を得;そして25℃以上の温度で、減圧下で、沈殿されたシナカルセト塩酸塩を乾燥することを含んで成る方法。
【請求項4】
非晶性シナカルセト塩酸塩が、シナカルセト塩酸塩1g当たり約5〜約10mlのクロロホルムの濃度で存在する請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記抗−溶媒が、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン又はシクロヘキサンである請求項3又は4記載の方法。
【請求項6】
前記抗−溶媒の混合に続いて、沈殿物が、約5分〜約20時間スラリーとして維持される請求項3〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記温度が約40℃〜60℃である請求項3〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記温度が約50℃である請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記沈殿されたシナカルセト塩酸塩が、約16〜30時間、乾燥される請求項3〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
請求項1記載の非晶性シナカルセト塩酸塩の調製方法であって、C2-C8エーテル、C5-8環状、枝分れ鎖及び/又はハロゲン化された炭化水素、C3-7エステル、C1-4アルコール、C3-6ケトン及びそれらの混合物から成る群から選択された溶媒中、シナカルセト塩酸塩の溶液を供給し;そして約50℃〜200℃の入口温度を有する窒素ガスによる噴霧乾燥により溶媒を蒸発し、そして除去することを含んで成る方法。
【請求項11】
前記溶媒が、エタノール、THF、1,4―ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、イソブチルアセテート、アセトン、MEK及びアセトニトリルから成る群から選択される請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒がエタノールである請求項11記載の方法。
【請求項13】
シナカルセト塩酸塩が、シナカルセト塩酸塩1g当たり約5〜約10mlの溶媒の濃度で存在する請求項10〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記蒸発された溶媒及び窒素が、約25℃〜約150℃の温度で噴霧乾燥機を出る請求項10〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
請求項1記載の非晶性シナカルセト塩酸塩の調製方法であって、溶媒中、シナカルセト塩酸塩の溶液を供給し、そして前記溶媒を、約760mmHg 以下の圧力及び約100℃以下の温度下での急速真空蒸発により除去することを含んで成る方法。
【請求項16】
前記圧力が、約100mmHg 以下である請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記圧力が、約70mmHg 以下である請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記温度が約20℃〜約80℃である請求項15〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記温度が約25℃〜約45℃である請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記溶液の温度及び溶媒、及び前記真空蒸発の温度、真空及び供給速度は、シナカルセト塩酸塩が実質的に即座に沈殿するようなものである請求項15〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記溶媒が、C1-4アルコール、C3-7ケトン、C3-7エステル、C5-7線状、枝分れ鎖又は環状、飽和又は不飽和炭化水素、C2-8エーテル又はそれらの混合物から成る群から選択される請求項15〜20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記溶媒が、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、ジエチルエーテルメチルイソブチルエーテル、又はそれらの混合物からの群から選択される請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記溶媒が、メタノール又はアセトンである請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記溶媒が、約20体積%以下の水を含む請求項15〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記溶媒が、約10体積%以下の水を含む請求項15〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記溶媒が、約2体積%以下の水を含む請求項15〜23のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−507567(P2008−507567A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522853(P2007−522853)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/020316
【国際公開番号】WO2006/127941
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】