説明

非水系リチウム型蓄電素子

【課題】高エネルギー密度及び高出力密度に加え、高耐久性を兼ね揃えた非水系リチウム型蓄電素子を提供すること。
【解決手段】負極集電体に負極活物質層を設けた負極電極体、正極集電体に正極活物質層を設けた正極電極体、及びセパレータを積層してなる電極積層体、並びにリチウムイオンを含有した電解質を含む非水系電解液を外装体に収納してなる非水系リチウム型蓄電素子であって、該正極活物質は活性炭を主成分として含み、ここで、該活性炭は、直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とする時、0.3<V1≦0.8、かつ、0.5≦V2≦1.0を満足し、かつ、比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下であり、そして該負極活物質は黒鉛化物を主成分として含むことを特徴とする前記非水系リチウム型蓄電素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系リチウム型蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の保全および省資源を目指したエネルギーの有効利用の観点から、深夜電力貯蔵システム、太陽光発電技術に基づく家庭用分散型蓄電システム、電気自動車用の蓄電システムなどが注目を集めている。
これらの蓄電システムにおける第一の要求事項は、用いられる蓄電素子のエネルギー密度が高いことである。この様な要求に対応可能な高エネルギー密度電池の有力候補として、リチウムイオン電池の開発が精力的に進められている。
【0003】
第二の要求事項は、出力特性が高いことである。例えば、高効率エンジンと蓄電システムとの組み合わせ(例えば、ハイブリッド電気自動車)、又は燃料電池と蓄電システムとの組み合わせ(例えば、燃料電池電気自動車)において、加速時には蓄電システムにおける高出力放電特性が要求されている。
現在、高出力蓄電素子としては、電極に活性炭を用いた電気二重層キャパシタ(以下、単に「キャパシタ」ともいう。)が開発されており、耐久性(サイクル特性、高温保存特性)が高く、0.5〜1kW/L程度の出力特性を有する。これら電気二重層キャパシタは、上記高出力が要求される分野で最適の蓄電素子と考えられてきたが、そのエネルギー密度は、1〜5Wh/L程度に過ぎず、実用化には出力持続時間が足枷となっている。
【0004】
一方、現在ハイブリッド電気自動車で採用されているニッケル水素電池は、電気二重層キャパシタと同等の高出力を実現し、かつ160Wh/L程度のエネルギー密度を有している。しかしながら、そのエネルギー密度、出力をより一層高めるとともに、高温での安定性をさらに改善し、耐久性を高めるための研究が精力的に進められている。
また、リチウムイオン電池においても、高出力化に向けての研究が進められている。例えば、放電深度(素子の放電容量の何%を放電した状態かをあらわす値)50%において3kW/Lを超える高出力が得られるリチウムイオン電池が開発されているが、そのエネルギー密度は、100Wh/L以下であり、リチウムイオン電池の最大の特徴である高エネルギー密度を敢えて抑制した設計となっている。また、その耐久性(サイクル特性、高温保存特性)については電気ニ重層キャパシタに比べ劣る。そのため、実用的な耐久性を持たせるためには放電深度が0〜100%の範囲よりも狭い範囲でしか使用することができない。そのため実際に使用できる容量はさらに小さくなり、耐久性をより一層向上させるための研究が精力的に進められている。
【0005】
上記の様に高出力密度、高エネルギー密度、耐久性を兼ね備えた蓄電素子の実用化が強く求められているが、上述した既存の蓄電素子には一長一短がある。そのため、これらの技術的要求を充足する新たな蓄電素子が求められており、有力な候補としてリチウムイオンキャパシタと呼ばれる蓄電素子の開発が近年盛んになってきている。
【0006】
リチウムイオンキャパシタは、リチウムイオンを含有した電解質を含む非水系電解液を使用する蓄電素子(非水系リチウム型蓄電素子)であって、正極においては電気二重層キャパシタと同様の陰イオンの吸着・脱着による非ファラデー反応、負極においてはリチウムイオン電池と同様のリチウムイオンの吸蔵・放出によるファラデー反応によって充放電を行う蓄電素子である。上述のように、正極・負極の双方において非ファラデー反応による充放電を行う電気二重層キャパシタにおいては、出力特性に優れるがエネルギー密度が小さい。一方、正極・負極の双方においてファラデー反応による充放電を行う二次電池においては、エネルギー密度に優れるが、出力特性に劣る。リチウムイオンキャパシタは、正極では非ファラデー反応、負極ではファラデー反応による充放電を行うことによって、優れた出力特性と高いエネルギー密度の両立を狙う新たな蓄電素子である。
【0007】
このようなリチウムイオンキャパシタとしては、正極活物質として活性炭を用い、負極活物質として、天然黒鉛又は人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボン小球体、黒鉛化メソフェーズカーボン繊維、黒鉛ウイスカ、あるいは黒鉛化炭素繊維等を用いた蓄電素子が提案されている(以下、特許文献1参照)。また、正極活物質として活性炭を用い、負極活物質として難黒鉛化炭素又は黒鉛を用いた蓄電素子が提案されている(以下、特許文献2参照)。
【0008】
また、正極活物質として通常の活性炭とは異なる水素/炭素が0.05〜0.5であり、BET比表面積が300〜2,000m/gであり、、BJH法によるメソ孔容積が0.02〜0.3ml/gであり、MP法による全細孔容積が0.3〜1.0ml/gである細孔構造を有する炭化水素材料を用い、一方、負極活物質として黒鉛を除く光学的異方性炭素物質を賦活処理した材料を用いる蓄電素子が提案されている(以下、特許文献3参照)。
【0009】
また、正極活物質として易黒鉛化炭を活性化処理して得られた活性化非多孔性炭を用い、一方、負極材料として天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズカーボンマイクロビーズ、メソフェーズカーボンファイバー、コークス、気相成長炭素繊維、難黒鉛化性炭素等を用いた蓄電素子が提案されている(以下、特許文献4参照)。
【0010】
また、リチウムイオンキャパシタの負極材料としては、活性炭の表面に炭素質材料を被着させた炭素質材料であって、直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をVm1(cc/g)、直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をVm2(cc/g)とする時、0.01≦Vm1≦0.20、かつ、0.01≦Vm2≦0.40を満足する蓄電素子用負極材料が提案されている(以下、特許文献5参照)。該負極材料はリチウムイオンに対する充放電効率が高く、出力特性に優れた材料である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−107048号公報
【特許文献2】特開平9−283383号公報
【特許文献3】特開2005−93778号公報
【特許文献4】特開2007−294539号公報
【特許文献5】特開2003−346801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らが検討を行ったところ、上述の特許文献3に記載された蓄電素子は、エネルギー密度は大きいものの出力特性が十分ではないという課題を有していることがわかった。また、上述の特許文献4に記載された記載の蓄電素子は、正極材料として非多孔性炭を用いているため、出力特性が十分ではないという課題を有していることがわかった。また、上述の特許文献5に記載された蓄電素子は、充放電効率が高く出力特性に優れる一方で、耐久性を重視する用途においてはさらなる改良の余地があることが判明した。
そこで、本発明は、高エネルギー密度及び高出力密度に加え、高耐久性を兼ね揃えた蓄電素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、非水系リチウム型蓄電素子において、特定の細孔構造を有する活性炭を正極活物質として使用し、更に黒鉛化物を負極活物質として使用することにより、予想外に、該非水系リチウム型蓄電素子の高いエネルギー密度及び出力密度を維持したまま耐久性をも飛躍的に向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]負極集電体に負極活物質層を設けた負極電極体、正極集電体に正極活物質層を設けた正極電極体、及びセパレータを積層してなる電極積層体、並びにリチウムイオンを含有した電解質を含む非水系電解液を外装体に収納してなる非水系リチウム型蓄電素子であって、該正極活物質は活性炭を主成分として含み、ここで、該活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とする時、0.3<V1≦0.8、かつ、0.5≦V2≦1.0を満足し、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下であり、そして該負極活物質は黒鉛化物を主成分として含むことを特徴とする前記非水系リチウム型蓄電素子。
【0015】
[2]波長532nmのレーザーを用いたラマンスペクトルにおいて測定される前記黒鉛化物の1360cm−1のピーク強度(I1360)と1580cm−1のピーク強度(I1580)の比(I1360/I1580)が0.05以上0.90未満である、前記[1]に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【0016】
[3]X線広角回折法で得られる前記黒鉛化物の(002)面の面間隔が0.335nm以上0.340nm未満である、前記[1]又は[2]に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【0017】
[4]BET法により測定される前記黒鉛化物の比表面積が1m/g以上20m/g未満である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【0018】
[5]前記黒鉛化物の平均粒径が5〜30μmである、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【0019】
[6]前記黒鉛化物が、メソカーボン小球体黒鉛化物である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【発明の効果】
【0020】
本願発明により、高エネルギー密度及び高出力密度に加え、高耐久性を兼ね揃えた非水系リチウム型蓄電素子が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明する。
本発明は、負極集電体に負極活物質層を設けた負極電極体、正極集電体に正極活物質層を設けた正極電極体、及びセパレータを積層してなる電極積層体、並びにリチウムイオンを含有した電解質を含む非水系電解液を外装体に収納してなる非水系リチウム型蓄電素子であって、該正極活物質が活性炭を主成分として含み、該活性炭は、直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とする時、0.3<V1≦0.8、かつ、0.5≦V2≦1.0を満足し、BET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下であり、そして該負極活物質が黒鉛化物を主成分とすることを特徴とする。
【0022】
まず、本発明の蓄電素子における正極活物質について説明する。
本発明において、正極活物質は活性炭を主成分として含み、ここで、該活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とする時、0.3<V1≦0.8、かつ、0.5≦V2≦1.0を満足し、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下であることを特徴とする。ここで、主成分として含むとは、正極活物質の総重量を100%とする時に50%より多い量を含むことを意味する。
【0023】
上記活性炭の原料として用いられる炭素質材料としては、通常活性炭原料として用いられる炭素源であれば特に限定されるものではなく、たとえば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バカス、廃糖蜜などの植物系原料;泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタールなどの化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などの各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレンなどの合成ゴム;その他合成木材、合成パルプなど、あるいはそれらの炭化物が挙げられる。これらの原料の中でも、ヤシ殻、木粉などの植物系原料、又はそれらの炭化物が好ましく、ヤシ殻炭化物が特に好ましい。
【0024】
これらの原料を上記活性炭とするための炭化、賦活方式として、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式などの公知の方式を採用できる。
これらの原料の炭化方法としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、一酸化炭素、燃焼排ガスなどの不活性ガス、あるいはこれらの不活性ガスを主成分とした他のガスとの混合ガスを使用して、400〜700℃(特に450〜600℃)程度で30分〜10時間程度焼成する方法が挙げられる。
上記炭化方法により得られた炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素などの賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法が挙げられる。このうち、賦活ガスとして、水蒸気又は二酸化炭素を使用する方法が好ましい。
【0025】
この賦活方法では、賦活ガスを0.5〜3.0kg/h(特に0.7〜2.0kg/h)の割合で供給しながら、上記炭化物を3〜12時間(好ましくは5〜11時間、さらに好ましくは6〜10時間)かけて800〜1000℃まで昇温して賦活するのが好ましい。
さらに、上記炭化物の賦活処理に先立ち、予め上記炭化物を1次賦活してもよい。この1次賦活では、通常、炭素質材料を水蒸気、二酸化炭素、酸素などの賦活ガスを用いて、900℃未満の温度で焼成してガス賦活すればよい。
上記炭化方法における焼成温度/時間と、上記賦活方法における賦活ガス供給量/昇温速度/最高賦活温度とを適宜組み合わせることにより、以下の特徴を有する本発明の活性炭を製造することができる。
【0026】
このようにして得られた活性炭は、本発明において以下の特徴を有することが好ましい。
すなわち、活性炭のBJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とする時、0.3<V1≦0.8、かつ、0.5≦V2≦1.0が満たされる。
蓄電素子に組み込んだときの出力特性を大きくする点で、メソ孔量V1が0.3g/ccより大きい値であることが好ましく、また、蓄電素子の容量の低下を抑える点から、0.8以下であることが好ましく、より好ましくは0.35g/cc以上0.7g/cc以下、さらに好ましくは、0.4g/cc以上0.6g/cc以下である。
【0027】
一方、マイクロ孔量V2は、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.5g/cc以上であることが好ましく、また、活性炭の嵩を抑え、電極としての密度を増加し、単位体積あたりの容量を増加させるという点から、1.0g/cc以下であることが好ましく、より好ましくは、0.6g/cc以上1.0g/cc以下、さらに好ましくは、0.8g/cc以上1.0g/cc以下である。
【0028】
また、メソ孔量V1とマイクロ孔量V2は、0.3≦V1/V2≦0.9の範囲にあることが好ましい。これは、マイクロ孔量に比べてメソ孔量が多く、容量を得ながら、出力特性の低下を抑えるという点から、V1/V2が0.3以上であることが好ましく、また、メソ孔量に比べてマイクロ孔量が多く、出力特性を得ながら、容量の低下を抑えるという点から、V1/V2は0.9以下であることが好ましい。より好ましい範囲は、0.4≦V1/V2≦0.7、さらに好ましい範囲は、0.55≦V1/V2≦0.7である。
【0029】
本発明において、マイクロ孔量及びメソ孔量は以下のような方法により求めた値である。すなわち、試料を500℃で一昼夜真空乾燥を行い、窒素を吸着質とし吸脱着の等温線の測定を行なう。このときの脱着側の等温線を用いて、マイクロ孔量はMP法により、メソ孔量はBJH法により算出した。
MP法とは、「t−プロット法」(B.C.Lippens,J.H.de Boer,J.Catalysis,4319(1965))を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、及びマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、M.Mikhail, Brunauer, Bodorにより考案された方法である(R.S.Mikhail,S.Brunauer,E.E.Bodor,J.Colloid Interface Sci.,26,45 (1968))。また、BJH法は一般的にメソ孔の解析に用いられる計算方法で、BarrEtt, Joyner, Halendaらにより提唱されたものである(E. P. Barrett, L. G. Joyner and P. Halenda, J. Amer. Chem. Soc., 73, 373(1951))。
【0030】
正極活物質として使用される活性炭の平均細孔径は、出力を最大にする点から、17Å以上であることが好ましく18Å以上であることがより好ましく、20Å以上であることがさらに好ましい。また容量を最大にする点から、25Å以下であることが好ましい。本発明でいうところの平均細孔径とは、液体窒素温度における各相対圧力下での窒素ガスの各平衡吸着量を測定して得られる重量当たりの全細孔容積をBET比表面積で除して求めたものを示す。
【0031】
また、正極活物質として使用される活性炭は、そのBET比表面積が1,500m/g以上、3,000m/g以下が好ましい。より好ましくは、1,500m/g以上2,500m/g以下である。BET比表面積が1,500m/g未満の場合には、十分なエネルギー密度が得られず、一方、BET比表面積が3,000m/gを超える場合には、バインダーを多量に入れないと十分な電極の強度を保てず体積当りの性能が低下する。
【0032】
尚、正極活物質には、蓄電素子のエネルギー密度を向上させるという観点から、上記活性炭に加えて、リチウムイオン二次電池の正極活物質として公知のリチウムイオンを吸蔵放出する金属酸化物、例えば、コバルト酸リチウムを添加することも好ましい。正極活物質を活性炭とリチウムイオンを吸蔵放出する金属酸化物との混合物とする場合は、活性炭の全正極活物質に対する比率は、50重量%以上とすることが好ましい。
【0033】
次に、本発明の蓄電素子における負極活物質について説明する。
負極活物質は、黒鉛化物を主成分として含むことを特徴とする。ここで、主成分として含むとは、負極活物質の総重量を100%とする時に50%より多い量を含むことを意味する。前述した特定の細孔構造を有する活性炭を正極活物質として使用し、更に負極活物質に黒鉛化物を使用した本発明の蓄電素子は、正極活物質として活性炭を使用し負極活物質として活性炭の表面に炭素質材料を被着させた複合多孔性材料を使用した特許文献5に記載された蓄電素子に対して、高いエネルギー密度及び出力密度を維持したまま、耐久性が飛躍的に向上する。
【0034】
上記理由は定かではないが、例えば、負極活物質に黒鉛化物を用いることで、負極における自己放電又はリーク電流を好適に防止することができるためであると考えられる。
本発明における黒鉛化物には、人造黒鉛及び/又は天然黒鉛が使用でき、特に制限はないが、以下のものを好ましいものとして例示することができる。石油又は石炭系ピッチと高分子化合物(例えばフェノール樹脂、フラン樹脂、フルフラール樹脂、セルロース系樹脂など)を加熱又は焼成して得られる炭素(例えばバルクメソフェーズ、メソフェース小球体など)を黒鉛化処理して得られる黒鉛、コークス(例えばコールタールピッチ、酸素架橋石油ピッチなど)を黒鉛化処理して得られる黒鉛が挙げられる。これらの黒鉛は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0035】
本発明における黒鉛化物としては、波長532nmのレーザーを用いたラマンスペクトルにおいて測定される1360cm−1のピーク強度(I1360)と1580cm−1のピーク強度(I1580)の比(I1360/I1580)が0.05以上0.90未満であるものが好ましい。黒鉛構造に基づく9種の格子振動のうち、網面内格子振動に相当するE2g型振動に対応した1580cm−1近傍のラマンスペクトルと、主に表層での結晶欠陥、積層不整などの結晶構造の乱れを反映した1360cm−1近傍のラマンスペクトルを、波長532nmのレーザーを用いたレーザーラマン分光装置(日本分光製、NRS−3200)により測定する。それぞれのラマンスペクトルのピーク強度からその強度比(I1360/I1580)を算出し、強度比が大きいものほど表面の結晶性が低いと評価する。
【0036】
強度比(I1360/I1580)が0.05以上であると、表層の結晶性が進みすぎるために起こる、電解液の分解反応が進みやすくなることによる不可逆容量の増大や、リチウムイオンのインターカーレーション/デインターカレーションが遅くなることによる出力特性の低下が少ない。また、強度比(I1360/I1580)が0.90未満であると、結晶性の著しい低下によるリーク電流の増大や自己放電の増大が起こりにくい。したがって、0.05以上0.90未満を示すものであることが好ましく、0.15以上0.50未満が更に好ましい。
【0037】
本発明における黒鉛化物の結晶構造としては、X線広角回折法で得られる(002)面の面間隔(以下、d002とする)が0.335nm以上0.340nm未満であるものが好ましい。ここでいうd002は、X線としてCuKα線を用い、高純度シリコンを標準物質に使用して黒鉛化物の(002)面の回折ピークを測定し、そのピーク位置から算出したものである。
002が0.340nm以上になると、黒鉛化度が低下してしまい適さないので、好ましくは0.337nm以下であり、更に好ましくは0.3365nm以下である。
【0038】
本発明における黒鉛化物の比表面積は、BET法により測定される比表面積で1m/g以上20m/g未満であることが好ましい。
黒鉛化物のBET比表面積が1m/g以上であれば、十分なエネルギー密度が得られやすい。一方、20m/g未満であれば、耐久性が低下しにくい。その理由は定かではないが、例えば、BET比表面積の向上に伴い電解液との接触面積も向上することにより、リーク電流の増大や自己放電の増大が起きやすいためと考えられる。従って、好ましくは2〜15m/gであり、更に好ましくは、3〜10m/gである。
【0039】
本発明における黒鉛化物の平均粒径は、5〜30μmであることが好ましい。ここで言う平均粒径とは、粒度分布測定装置を用いて粒度分布を測定した際、全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒子径を50%径とし、その50%径(Median径)のことを指す。
平均粒径が5μm以上であると、活物質層の密度を高くでき、体積当たりの容量も高くできるので好ましい。更には、平均粒径が大きいことは耐久性の向上にも寄与する。平均粒径が30μm以下であれば、高速充放電には適する。従って、好ましくは6〜25μmであり、更に好ましくは、7〜20μmである。
【0040】
上記のような物性をもつ黒鉛化物の中でも、メソカーボン小球体黒鉛化物が好ましい。メソカーボン小球体黒鉛化物は結晶子が球状粒子の中でラメラ状に配向しているため、充放電時のリチウムイオンのインターカーレーション/デインターカレーションがスムーズに進行でき、急速充放電と耐久性の両方を兼ね揃えるには好適である。
【0041】
尚、本発明における負極活物質は、上記黒鉛化物を中心炭素材として他の材料を被覆したものや、上記黒鉛化物に他の材料を混合したものも含む。例えば、上記黒鉛化物の表面を黒鉛化度の低い炭素質材料で被覆した複層(コア−シェル)構造(複合物)や、上記黒鉛化物と黒鉛化度の低い炭素質物を組み合わせたもの(混合物)が挙げられる。
黒鉛化度の低い炭素質物としては、易黒鉛化性炭素材料、難黒鉛化性炭素材料、活性炭の表面に炭素質材料を被着された複合多孔性材料、ポリアセン系物質などのアモルファス炭素質材料、ケッチェンブラックやアセチレンブラックといったカーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンナノフォーン、繊維状炭素質材料などで、上記黒鉛化物において好ましい物性として規定されている範囲に入らない炭素質材料が挙げられる。
また、本発明における負極活物質は、上記黒鉛化物と、リチウムチタン複合酸化物、導電性高分子など、公知のリチウムイオン二次電池用負極材料との複合物又は混合物であってもよい。以上のように複合物又は混合物とする場合、黒鉛化物の全負極活物質に対する比率は、50重量%以上とすることが好ましい。
【0042】
次に、本発明の非水系リチウム型蓄電素子について説明する。
集電体の材質は、蓄電素子にした際、溶出や反応などの劣化が起こらない金属箔であれば特に制限はなく、例えば、銅箔、アルミニウム箔などが挙げられる。本発明の蓄電素子においては、正極集電体をアルミニウム箔、負極集電体を銅箔とすることが好ましい。
また、集電体は貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、貫通孔を有する金属箔でも構わない。集電体の厚みは、特に制限はないが、1μmより小さいと電極体の形状や強度を十分に保持できなくなり、100μmより大きいと蓄電素子として重量及び体積が大きくなりすぎ、重量及び体積当たりの性能が劣ってしまうため、1〜100μmが好ましい。
【0043】
活物質層には、公知のリチウムイオン電池、キャパシタ等で活物質層に含まれる公知の成分を用いることができる。活物質層には、前述した正極活物質及び負極活物質以外に、公知の成分、例えば、バインダー、導電フィラー、増粘剤を含ませることができ、その種類には特に制限はない。
【0044】
以下、非水系リチウム型蓄電素子における活物質層の成分について、詳細に述べる。
活物質層には、必要に応じ導電性フィラーを添加してもよく、例えばカーボンブラックなどが挙げられる。その添加量は、活物質100質量%に対して0〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。導電性フィラーは、高出力密度の観点からは、混合したほうが好ましいが、30質量%より多いと、電極層に占める活物質量の割合が下がり、体積当たりの出力密度が低下するので用途に応じて適宜設定する。
【0045】
上記の活物質、更に必要に応じて添加された導電性フィラーを、活物質層として集電体上に固着させるために、バインダーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、スチレンブタジエン共重合体、セルロース誘導体などを用いることができ、その添加量は活物質100質量%に対して3〜20質量%の範囲が好ましく、5〜15質量%の範囲がより好ましい。バインダーの添加量が20質量%よりも多いと、活物質の表面をバインダーが覆ってしまい、イオンの出入りが遅くなり高出力密度が得られなくなることがある。また、バインダーの添加量が3質量%未満であると、活物質層を集電体上に固着することが難しい。
尚、本発明における電極体は、活物質層を集電体の上面(片面)のみに形成したものでもよいし、上下面(両面)に形成したものでも構わない。
【0046】
活物質層を集電体に固着させた電極体において、活物質層の厚みは、通常、30〜200μm程度が好ましい。活物質層の厚みが30μm未満であると、蓄電素子全体に対する活物質量の割合が少なくなり、エネルギー密度が低下する。また、活物質層の厚み200μmより大きくなると、電極内部の抵抗が大きくなり、出力密度が低下してしまう。
電極体は、公知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等の電極製造技術により製造することが可能であり、例えば、各種材料を水または有機溶剤によりスラリー状にし、活物質層を集電体上に塗布して乾燥し、必要に応じてプレスすることにより得られる。また、溶剤を使用せずに、乾式で混合し、活物質をプレス成型した後、バインダーなどを用いて貼り付けることも可能である。
【0047】
成型された正極電極体及び負極電極体は、セパレータを介して積層又は捲廻積層され、金属缶又はラミネートフィルムから形成された外装体内に挿入される。セパレータはリチウムイオン二次電池に用いられるポリエチレン製の微多孔膜若しくはポリプロピレン製の微多孔膜又は電気二重層コンデンサで用いられるセルロース製の不織紙などを用いることができる。
セパレータの厚みは10μm以上50μm以下が好ましい。10μm未満の厚みでは、内部のマイクロショートによる自己放電が大きくなるため好ましくない。また、50μmより厚いと、蓄電素子のエネルギー密度が減少するだけでなく、出力特性も低下するため好ましくない。
【0048】
外装体に使用される金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。また、外装体に使用されるラミネートフィルムとしては、金属箔と樹脂フィルムを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内装樹脂フィルムからなる3層構成のものが例示される。外層樹脂フィルムは接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロンやポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分やガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内装樹脂フィルムは、内部に収納する電解液から金属箔を保護するとともに、ヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変成ポリオレフィンが好適に使用できる。
【0049】
本発明の蓄電素子に用いられる非水系電解液の溶媒としては、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)に代表される環状炭酸エステル、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(MEC)に代表される鎖状炭酸エステル、γ−ブチロラクトン(γBL)などのラクトン類又はこれらの混合溶媒を用いることができる。
これら溶媒に溶解する電解質はリチウム塩である必要があり、好ましいリチウム塩としては、LiBF、LiPF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiN(SOCF)(SOH)又はこれらの混合塩を挙げることができる。
【0050】
非水系電解液中の電解質濃度は、0.5〜2.0mol/Lの範囲が好ましい。0.5mol/L未満では陰イオンが不足して蓄電素子の容量が低下する。また、2.0mol/Lを超えると未溶解の塩が該電解液中に析出したり、該電解液の粘度が高くなりすぎたりすることによって、逆に伝導度が低下して出力特性が低下する。
本発明の蓄電素子において、負極電極体には、リチウムイオンを予めドープしておくことができる。ドープする方法としては、公知の方法、例えば、負極電極体の負極活物質層にリチウム金属箔を積層した状態で電極体を組み立てて非水系電解液に入れる方法を使用することができる。リチウムイオンを予めドープしておくことにより、蓄電素子の容量および作動電圧を制御することが可能である。
【実施例】
【0051】
以下に、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、実施例及び比較例に用いる負極材料(黒鉛化物)の作製方法を以下に示す。
コールタールを450℃で1時間加熱処理をして、ピッチマトリックス中に黒鉛化物前駆体を生成させる。次に、上記混合物から、黒鉛化物前駆体を取り出すために、抽出溶媒としてタール重油を使用し、ピッチマトリックス中から黒鉛化物を得た。得られた黒鉛化物を窒素気流中、500℃3時間で一度焼結した後室温まで冷却し、黒鉛質製容器に入れ、窒素気流中、3,000℃3時間で高温熱処理を行うことで、実施例4及び8に用いる黒鉛化物4を得た。
上記作製方法において、3,000℃の高温熱処理時間を短くすることで、実施例2及び6に用いる黒鉛化物2を得た。
上記黒鉛化物2を、ハイブリダイゼーションシステム((株)奈良機械製作所製)を用いて、周速40m/s、処理時間5分でメカノケミカル処理することで、実施例1及び5、比較例1及び4に用いる黒鉛化物1を得た。
上記黒鉛化物1に再度、同条件のメカノケミカル処理することで、実施例3及び7に用いる黒鉛化物3を得た。
【0052】
<実施例1>
[正極電極体の作製]
破砕されたヤシ殻炭化物を、小型炭化炉において窒素中、500℃で3時間炭化処理した。処理後の該炭化物を賦活炉内へ入れ、1kg/hの水蒸気を予熱炉で加温した状態で該賦活炉内へ投入し、900℃まで8時間かけて昇温した後に取り出し、窒素雰囲気下で冷却して活性炭を得た。得られた活性炭を10時間通水洗浄を行った後に水切りした。その後、115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行い、正極材料となる活性炭1を得た。
本活性炭1を、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)で、細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積は2,360m/g、メソ孔量(V1)は0.52cc/g、マイクロ孔量(V2)は0.88cc/gであった。この活性炭1を正極活物質に用い、該活性炭1を80.8重量部、ケッチェンブラック6.20重量部、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)10.0重量部およびPVP(ポリビニルピロリドン)3.00重量部とNMP(N−メチルピロリドン)を混合して、スラリーを得た。次いで、得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、乾燥し、プレスして、活物質層の厚さが55μmの正極電極体を得た。
【0053】
[負極電極体の作製]
上述した方法で作製した黒鉛化物1の物性評価を行った。レーザーラマン分光装置(日本分光製、NRS−3200)を用いて、レーザー波長532nmにおける強度比(I1360/I1580)を測定した結果、0.30であった。次に、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いてBET比表面積を測定した結果、7.4m/gであった。また、島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて平均粒径を測定した結果、7.5μmであった。さらに、X線広角回折測定(理学電機製、RINT−2500)をX線としてCuKα線を用いて行い、高純度Siを内標に使用して(002)面の回折ピークを測定した結果、d002は0.336であった。
上記黒鉛化物1を93.0重量部、アセチレンブラック2.0重量部およびPVDF(ポリフッ化ビニリデン)5.0重量部とNMP(N−メチルピロリドン)を混合して、スラリーを得た。次いで、得られたスラリーを厚さ15μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥し、プレスして、活物質層の厚さが厚さ60μmの負極電極体を得た。この電極体に、黒鉛化物単位重量あたり290mAh/gに相当するリチウムイオンを、リチウム金属箔を用いて電気化学的にドーピングした。
【0054】
[蓄電素子の組立と性能]
得られた負極電極体、及び正極電極体の間に、ポリエチレン系セパレータ(厚み30μm)を積層して、ラミネートフィルムから形成された外装体内に挿入し、電解液を注入して該外装体を密閉し、非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートを1:4重量比で混合した溶媒に1mol/lの濃度でLiN(SOを溶解した溶液を、電解液として使用した。
組立てた蓄電素子を0.5mAの電流で4.0Vまで充電し、その後、4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、0.5mAの定電流で2.5Vまで放電した。これを1サイクルとし、続けて13サイクルまで充放電を繰り返した。13サイクル目の放電容量を本蓄電素子の容量とした際、本蓄電素子の容量は、44mAh/gであった。
また、作製した蓄電素子を1mAの電流で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。次いで、1mAの定電流で2.5Vまで放電した。放電容量は、0.333mAhであった。次に同様の充電を行い250mAで2.5Vまで放電したところ、0.150mAhの容量が得られた。すなわち、1mAでの放電容量に対する250mAでの放電容量の比(以下「出力特性」ともいう。)は0.450であった。
さらに、組立てた蓄電素子の耐久性試験を60℃、3.8V印加の条件で行った。試験開始時(0hとする)と1000h経過後における抵抗倍率を測定した。ここでいう抵抗倍率とは、(1000h経過後の0.1Hzでの抵抗値)/(0hでの0.1Hzでの抵抗値)で表される数値とする。1000h経過後の抵抗倍率は1.05であった。
【0055】
<実施例2>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様のものを用いた。
[負極電極体の作製]
上述した方法で作製した黒鉛化物2の物性評価を実施例1と同様な手法で行った。強度比I1360/I1580は0.15、BET比表面積は3.1m/g、平均粒径は15μm、d002は0.336であった。
以下、実施例1と同様にて電極体を作製した。
[蓄電素子の組立と性能]
以下、実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てて評価を行った。本蓄電素子の容量は、45mAh/gであった。また。出力特性は、0.453であった。さらに、組立てた蓄電素子の耐久性試験を60℃、3.8V印加の条件で行った。1000h経過後、抵抗倍率は1.10であった。
【0056】
<実施例3>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様のものを用いた。
[負極電極体の作製]
上述した方法で作製した黒鉛化物3の物性評価を実施例1と同様な手法で行った。強度比I1360/I1580は1.1、BET比表面積は13m/g、平均粒径は5.0μm、d002は0.339であった。
以下、実施例1と同様にて電極体を作製した。
[蓄電素子の組立と性能]
以下、実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てて評価を行った。本蓄電素子の容量は、43mAh/gであった。また。出力特性は、0.460であった。さらに、組立てた蓄電素子の耐久性試験を60℃、3.8V印加の条件で行った。1000h経過後、抵抗倍率は1.55であった。
【0057】
<実施例4>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様のものを用いた。
[負極電極体の作製]
上述した方法で作製した黒鉛化物4の物性評価を実施例1と同様な手法で行った。強度比I1360/I1580は0.03、BET比表面積は0.55m/g、平均粒径は25μm、d002は0.335であった。
以下、実施例1と同様にて電極体を作製した。
[蓄電素子の組立と性能]
以下、実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てて評価を行った。本蓄電素子の容量は、40mAh/gであった。また。出力特性は、0.385であった。さらに、組立てた蓄電素子の耐久性試験を60℃、3.8V印加の条件で行った。1000h経過後、抵抗倍率は1.08であった。
【0058】
<比較例1>
[正極電極体の作製]
活物質として、市販の活性炭2を用い、この活性炭2の物性評価を実施例1と同様な方法にて行った。その結果、BET比表面積は1,620m/g、メソ孔量(V1)は0.18cc/g、マイクロ孔量(V2)は0.67cc/gであった。
以下、実施例1と同様にて電極体を作製した。
[負極電極体の作製]
実施例1と同様のものを用いた。
[蓄電素子の組立と性能]
以下、実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てて評価を行った。本蓄電素子の容量は、38mAh/gであった。また。出力特性は、0.302であった。さらに、組立てた蓄電素子の耐久性試験を60℃、3.8V印加の条件で行った。1000h経過後、抵抗倍率は1.80であった。
【0059】
<比較例2>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様のものを用いた。
[負極電極体の作製]
市販の活性炭3(BET法による比表面積が1,955m/g)150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ300gを入れたステンレス製バットの上に置き、電気炉 (炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱反応を行った。熱処理は窒素雰囲気下で、670℃まで4時間で昇温し、同温度で4時間保持し、続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、炉から取り出し、複合多孔性材料1が得られた。
得られた複合多孔性材料1の物性を、実施例1と同様な手法で行った。強度比I1360/I1580は1.0、BET比表面積は255m/g、平均粒径は2.9μm、d002は0.369であった。
次いで、上記で得た複合多孔性材料 83.4重量部、アセチレンブラック8.30重量部およびポリフッ化ビニリデン(PVdF)8.30重量部とN−メチルピロリドン(NMP)を混合してスラリーを得た。次いで、得られたスラリーを厚さ15μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥し、プレスして、活物質層の厚さが60μmの負極電極体を得た。この電極体に、複合多孔性材料1重量あたり760mAh/gに相当するリチウムイオンを、リチウム金属箔を用いて電気化学的にドーピングした。
[蓄電素子の組立と性能]
以下、実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てて評価を行った。本蓄電素子の容量は、42mAh/gであった。また。出力特性は、0.491であった。さらに、組立てた蓄電素子の耐久性試験を60℃、3.8V印加の条件で行った。1000h経過後、抵抗倍率は1.70であった。
【0060】
<比較例3>
[正極電極体の作製]
比較例1と同様のものを用いた。
[負極電極体の作製]
比較例2と同様のものを用いた。
[蓄電素子の組立と性能]
以下、実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てて評価を行った。本蓄電素子の容量は、41mAh/gであった。また。出力特性は、0.354であった。さらに、組立てた蓄電素子の耐久性試験を60℃、3.8V印加の条件で行った。1000h経過後、抵抗倍率は2.02であった。
【0061】
【表1】

【0062】
<実施例5>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様のものを用いた。
[負極電極体の作製]
実施例1と同様のものを用いた。
[蓄電素子の組立と性能]
得られた負極電極体、及び正極電極体の間に、ポリエチレン系セパレータ(厚み30μm)を積層して非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートを1:4重量比で混合した溶媒に1mol/lの濃度でLiPFを溶解した溶液を、電解液として使用した。
以下、実施例1と同様に蓄電素子の組立と性能評価を行った。本蓄電素子の容量は、40mAh/gであった。また。出力特性は、0.443であった。さらに、組立てた蓄電素子の耐久性試験を60℃、3.8V印加の条件で行った。1000h経過後、抵抗倍率は1.03であった。
【0063】
<実施例6>
[正極電極体の作製]
実施例2と同様のものを用いた。
[負極電極体の作製]
実施例2と同様のものを用いた。
[蓄電素子の組立と性能]
実施例5と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てて評価を行った。本蓄電素子の容量は、42mAh/gであった。また。出力特性は、0.432であった。さらに、組立てた蓄電素子の耐久性試験を60℃、3.8V印加の条件で行った。1000h経過後、抵抗倍率は1.08であった。
【0064】
<実施例7>
[正極電極体の作製]
実施例3と同様のものを用いた。
[負極電極体の作製]
実施例3と同様のものを用いた。
[蓄電素子の組立と性能]
実施例5と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てて評価を行った。本蓄電素子の容量は、40mAh/gであった。また。出力特性は、0.458であった。さらに、組立てた蓄電素子の耐久性試験を60℃、3.8V印加の条件で行った。1000h経過後、抵抗倍率は1.51であった。
【0065】
<実施例8>
[正極電極体の作製]
実施例4と同様のものを用いた。
[負極電極体の作製]
実施例4と同様のものを用いた。
[蓄電素子の組立と性能]
実施例5と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てて評価を行った。本蓄電素子の容量は、38mAh/gであった。また。出力特性は、0.388であった。さらに、組立てた蓄電素子の耐久性試験を60℃、3.8V印加の条件で行った。1000h経過後、抵抗倍率は1.12であった。
【0066】
<比較例4>
[正極電極体の作製]
比較例1と同様のものを用いた。
[負極電極体の作製]
比較例1と同様のものを用いた。
[蓄電素子の組立と性能]
実施例5と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てて評価を行った。本蓄電素子の容量は、35mAh/gであった。また。出力特性は、0.303であった。さらに、組立てた蓄電素子の耐久性試験を60℃、3.8V印加の条件で行った。1000h経過後、抵抗倍率は2.52であった。
【0067】
<比較例5>
[正極電極体の作製]
比較例2と同様のものを用いた。
[負極電極体の作製]
比較例2と同様のものを用いた。
[蓄電素子の組立と性能]
実施例5と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てて評価を行った。本蓄電素子の容量は、45mAh/gであった。また。出力特性は、0.636であった。さらに、組立てた蓄電素子の耐久性試験を60℃、3.8V印加の条件で行った。1000h経過後、抵抗倍率は2.33であった。
【0068】
<比較例6>
[正極電極体の作製]
比較例3と同様のものを用いた。
[負極電極体の作製]
比較例3と同様のものを用いた。
[蓄電素子の組立と性能]
実施例5と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てて評価を行った。本蓄電素子の容量は、42mAh/gであった。また。出力特性は、0.401であった。さらに、組立てた蓄電素子の耐久性試験を60℃、3.8V印加の条件で行った。1000h経過後、抵抗倍率は3.02であった。
【0069】
【表2】

【0070】
以上より、本願発明に係る蓄電素子は、高エネルギー密度及び高出力密度に加え、高耐久性を兼ね揃えた特性であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の蓄電素子は、自動車において、内燃機関または燃料電池、モーター、及び蓄電素子を組み合わせたハイブリット駆動システムの分野、さらには瞬間電力ピークのアシスト用途などで好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体に負極活物質層を設けた負極電極体、正極集電体に正極活物質層を設けた正極電極体、及びセパレータを積層してなる電極積層体、並びにリチウムイオンを含有した電解質を含む非水系電解液を外装体に収納してなる非水系リチウム型蓄電素子であって、該正極活物質は活性炭を主成分として含み、ここで、該活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とする時、0.3<V1≦0.8、かつ、0.5≦V2≦1.0を満足し、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下であり、そして該負極活物質は黒鉛化物を主成分として含むことを特徴とする前記非水系リチウム型蓄電素子。
【請求項2】
波長532nmのレーザーを用いたラマンスペクトルにおいて測定される前記黒鉛化物の1360cm−1のピーク強度(I1360)と1580cm−1のピーク強度(I1580)の比(I1360/I1580)が0.05以上0.90未満である、請求項1に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【請求項3】
X線広角回折法で得られる前記黒鉛化物の(002)面の面間隔が0.335nm以上0.340nm未満である、請求項1又は2に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【請求項4】
BET法により測定される前記黒鉛化物の比表面積が1m/g以上20m/g未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【請求項5】
前記黒鉛化物の平均粒径が5〜30μmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【請求項6】
前記黒鉛化物が、メソカーボン小球体黒鉛化物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。

【公開番号】特開2010−205846(P2010−205846A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48302(P2009−48302)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】