説明

非水系塗布材、塗装木質床材の製造方法及び塗装木質床材

【課題】 ディスペンサにより木質床材の実部に確実に塗布でき、実部の仕上がり外観を良好とし、実部同士の嵌合性を良好とすることができる非水系塗布材等を提供することを目的とする。
【解決手段】 非水系塗布材TZ1は、木質床材110に形成された実部113,123にディスペンサDPにより塗布するための塗布材である。そして、このディスペンサ用非水系塗布材TZ1は、非水系であり、粘度が10〜200mPa・sであり、かつ、表面張力が20〜38dyn/cmである。また、このディスペンサ用非水系塗布材TZ1は、イソシアネートを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質床材に形成された実部にディスペンサにより塗布するための非水系塗布材に関する。また、木質床材に形成された実部に非水系塗布材を塗布してなる塗装木質床材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、木質床材の側面には、木質床材同士を連結可能とするために、一般に、実部を設けている。木質床材の板表面は、通常、クリア塗料などで塗装されるのに対して、実部は基材が剥き出しになっているため、防水性が低く、吸水して経時的に膨れが生じることがある。特に、中密度繊維板(MDF)やパーティクルボード(PB)、硬質繊維板(HB)、配向性ストランドボード(OSB)等に代表されるエンジニアリングウッドやリサイクル木材は、吸水性が特に高いため、これらを木質床材に用いると、実部付近に経時的に膨れが生じ易い。
【0003】
これに対し、特許文献1では、木質床材同士を実結合させた後に、隣接し相対向する表面化粧板の角部を切削してV字溝を形成し、このV字溝に水溶性メラミン樹脂と界面活性剤とを混合してなる処理液を塗布し、その後、水溶性メラミン樹脂を硬化させている(特許文献1の特許請求の範囲等を参照)。このようにすることで、実部が補強され、継ぎ目部分から基材へ水分等がしみ込むのを防ぎ、基材の膨潤や反り、表面化粧板の膨れや基材からの剥離等を防止できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−50857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の処理方法は、建築現場で施行しなければらなず、また、その際にV字溝を形成する加工が必要であるという欠点がある。
そこで、本発明者は、木質床材の実部に予め塗布材を塗布し浸透させておくことにより、実部の防水性を向上させることを試みた。そして、木質床材の実部に塗布材を塗布するには、実部のみに選択的に塗布できるという利点や、塗布速度を上げて生産性を向上させることができるなどの理由から、ディスペンサによる塗布が適していることを見出した。しかし、使用する塗布材によっては、ディスペンサにより上手く塗布できなかったり、吸い込みが悪く実部の表面の塗膜にムラができるなど、実部の仕上がり外観が悪くなったり、実部同士の嵌合性が悪くなるなどの不具合が生じることがある。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、ディスペンサにより木質床材の実部に確実に塗布でき、良好な実部の仕上がり外観とし、実部同士の嵌合性を良好とすることができる非水系塗布材、この非水系塗布材を用いた塗装木質床材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、非水系であり、木質床材に形成された実部にディスペンサにより塗布するための非水系塗布材であって、粘度が10〜200mPa・sであり、かつ、表面張力が20〜38dyn/cmである非水系塗布材である。
【0008】
水を含有した塗布材を木質床材の実部に塗布すると、塗布材中の水分によって実部が膨れてしまい、実部同士の嵌合性が困難になる。これに対し、本発明の塗布材は、非水系であるので、実部に塗布した際、上記のような水分による膨れがなく、実部同士の嵌合性に影響を及ぼさない。
また、この非水系塗布材は、その粘度が10mPa・s以上であるので、これをディスペンサにより木質床材の実部に塗布する際に、ディスペンサからの吐出量の調整が容易となる。これにより、吐出の勢いが強くなりすぎることを防止し、塗布材が木質床材の実部から跳ね返るのを防止できる。一方で、この非水系塗布材の粘度は200mPa・s以下であるので、これをディスペンサにより木質床材の実部に塗布する際に、非水系塗布材がディスペンサの吐出口からタレて塗布し難いなどの不具合が生じ難く、非水系塗布材を実部に確実に塗布できる。
【0009】
また、この非水系塗布材は、表面張力が20dyn/cm以上であるので、表面張力を下げるための低表面張力シリコンやフッ素系界面活性剤を多く使用する必要がなく、塗装現場において、飛散やコンタミネーションにより、ハジキなどの不具合が生じるのを防止できる。一方で、この非水系塗布材の表面張力は38dyn/cm以下であるので、これを木質床材の実部に十分に浸透させることができるため、実部の表面に塗布材が厚く残ることがなく、良好な実部の仕上がり外観とし、実部同士の嵌合性を良好とすることができる。
【0010】
更に、上記の非水系塗布材であって、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートを含んでなる非水系塗布材とすると良い。
【0011】
この非水系塗布材は、上記の有機イソシアネートを含んでいるので、非水系塗布材を木質床材の実部に塗布し浸透させることにより、実部の防水性を向上させることができる。木質床材に含まれる水酸基と非水系塗布材に含まれる水酸基が架橋することにより、防水性が向上するものと考えられる。
2官能のイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等が挙げられる。更にこれらを変性することにより、3官能以上とすることもできる。変性の方法としては、例えば、ビウレット変性、アダクト変性、イソシアヌレート変性等が挙げられる。
【0012】
また、他の態様は、実部が形成された木質床材のうち、前記実部に塗布材を塗布してなる塗装木質床材の製造方法であって、前記塗布材として、非水系であり、粘度が10〜200mPa・sであり、かつ、表面張力が20〜38dyn/cmである非水系塗布材を用いて、前記木質床材の前記実部の全体にディスペンサにより前記塗布材を塗布する塗布材塗布工程を備える塗装木質床材の製造方法である。
【0013】
この塗装木質床材の製造方法は、上述の非水系塗布材を木質床材の実部の全体にディスペンサにより塗布する塗布材塗布工程を備える。
塗布材は、非水系であるので、実部に塗布した際、水分による膨れができず、実部同士の嵌合性に影響を及ぼさない。
また、非水系塗布材の粘度が10mPa・s以上であるので、塗布材塗布工程において、ディスペンサからの吐出量の調整が容易となる。これにより、吐出の勢いが強くなりすぎることを防止し、塗布材が木質床材の実部から跳ね返るのを防止できる。一方で、非水系塗布材の粘度は200mPa・s以下であるので、塗布材塗布工程において、非水系塗布材がディスペンサの吐出口からタレて塗布し難いなどの不具合が生じ難く、非水系塗布材を実部に確実に塗布できる。
【0014】
また、非水系塗布材の表面張力が20dyn/cm以上であるので、表面張力を下げるための低表面張力シリコンやフッ素系界面活性剤を多く使用する必要がなく、塗布材塗布工程において、飛散やコンタミネーションにより、ハジキなどの不具合が生じるのを防止できる。一方で、非水系塗布材の表面張力は38dyn/cm以下であるので、これを木質床材の実部に十分に浸透させることができるため、実部の表面に塗布材が厚く残ることがなく、良好な実部の仕上がり外観とし、実部同士の嵌合性を良好とすることができる。
【0015】
更に、上記の塗装木質床材の製造方法であって、前記塗布材塗布工程では、前記塗布材として、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートを含む前記非水系塗布材を用いる塗装木質床材の製造方法とすると良い。
【0016】
この塗装木質床材の製造方法では、塗布材(非水系塗布材)が上記の有機イソシアネートを含んでいるので、実部の防水性を向上させることができる。
【0017】
また、他の態様は、実部が形成された木質床材のうち、前記実部に塗布材を塗布してなる塗装木質床材であって、非水系であり、粘度が10〜200mPa・sであり、かつ、表面張力が20〜38dyn/cmである非水系塗布材を、前記木質床材の前記実部に塗布し浸透させてなる塗装木質床材である。
【0018】
この塗装木質床材は、上述の非水系塗布材を、木質床材の実部に塗布し浸透させたものである。
塗布材は、非水系であるので、実部に塗布した際、水分による膨れができず、実部同士の嵌合性に影響を及ぼさない。
また、非水系塗布材の粘度が10〜200mPa・sであるので、木質床材の実部に確実に塗布される。
また、非水系塗布材の表面張力が20〜38dyn/cmであるので、木質床材の実部に十分に浸透して、実部の表面に塗布材が厚く残ることがなく、良好な実部の仕上がり外観とし、実部同士の嵌合性を良好とすることができる。
【0019】
更に、上記の塗装木質床材であって、前記非水系塗布材は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートを含んでなる塗装木質床材とすると良い。
【0020】
この塗装木質床材では、非水系塗布材が上記の有機イソシアネートを含んでいるので、実部の防水性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係る塗装木質床材の全体を示す説明図である。
【図2】実施形態に係る塗装木質床材のうち木質床材の被着色面近傍の概略化した部分拡大断面図である。
【図3】実施形態に係る塗装木質床材のうち第1実部近傍を示す断面図である。
【図4】実施形態に係る塗装木質床材のうち第2実部近傍を示す断面図である。
【図5】実施形態に係る塗装木質床材の製造方法に関し、塗布材塗布工程において、ディスペンサにより、木質床材の第1実部に塗布材を塗布する様子を示す説明図である。
【図6】実施形態に係る塗装木質床材の製造方法に関し、塗布材塗布工程において、ディスペンサにより、木質床材の第2実部に塗布材を塗布する様子を示す説明図である。
【図7】実施形態に係る塗装木質床材の製造方法に関し、塗布材を硬化させた後の、木質床材の第1実部の様子を示す説明図である。
【図8】実施形態に係る塗装木質床材の製造方法に関し、塗布材を硬化させた後の、木質床材の第2実部の様子を示す説明図である。
【図9】実施形態に係る塗装木質床材の製造方法に関し、被着色面着色工程において、スポンジロール等により、木質床材の被着色面を着色する様子を示す説明図である。
【図10】実施形態に係る塗装木質床材の製造方法に関し、塗装工程において、ロールコータにより、木質床材の被着色面にクリア塗料を塗布する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。まず、本実施形態に係る塗装木質床材100について説明する。図1に、塗装木質床材100の全体を示す。また、図2に、塗装木質床材100のうち木質床材110の被着色面(板表面)110h近傍の拡大断面を示す。また、図3に、塗装木質床材100のうちの第1実部113近傍の断面を示し、図4に、塗装木質床材100のうちの第2実部123近傍の断面を示す。なお、図1では、第1実部113及び第2実部123を省略してある。
【0023】
この塗装木質床材100は、図2に示すように、木質床材110の被着色面110hに着色層131が形成され、更にその上には、3層からなるクリア塗料層133(内側から下塗クリア塗料層135、中塗クリア塗料層137及び上塗クリア塗料層139)が形成されている。また、木質床材110の各側面110a,110b,110c,110dには、塗布材(非水系塗布材)TZ1が塗布されて浸透し、図3及び図4に示すように、硬化して防水塗布材141となっている。
【0024】
このうち、木質床材110は、図1に示すように、被着色面(板表面)110hと、裏面(板裏面)110rと、4つの側面(第1長側面110a,第2長側面110b,第1短側面110c,第2短側面110d)とを有する矩形板状をなす。その寸法は、長さ1800mm×幅300mm×厚み12mmである。
この木質床材110は、基材108としてのパーティクルボード(PB)の表面に、化粧単板109(具体的にはナラ単板)を張り付けたものである(図2〜図4も参照)。なお、木質床材110の基材108には、後述するように、ラワン合板等の種々の合板やMDFなどを用いることもできる。
この木質床材110の被着色面110hには、長手方向(図1中、左右方向)に沿って凹溝(縦凹溝)111,111,…が複数形成され、また、この長手方向と直交する短手(幅)方向(図1中、上下方向)にも凹溝(横凹溝)112,112,…が複数形成されている。これらの凹溝111,112は、幅1〜2mm、深さ1〜2mmである。
【0025】
また、この木質床材110のうち、その短手方向の一端をなして長手方向に延びる第1長側面110aと、長手方向の一端をなして短手方向に延びる第1短側面110cには、それぞれ、図3に示す形態の第1実部113が設けられている。この第1実部113は、第1雄実部114と、これよりも被着色面110h側で木質床材110の拡がり方向内側に位置する第1雌実部115とを有する。このうち、第1雄実部114は、断面矩形状をなし、木質床材110の拡がり方向外側に向かって突出している。また、第1雌実部115は、断面コ字状をなし、木質床材110の拡がり方向内側に向かって凹設されている。
【0026】
また、この木質床材110のうち、その短手方向の一端をなして長手方向に延びる第2長側面110bには、図4に示すように、第1長側面110aに形成された第1実部113と嵌合可能な第2実部123が設けられている。また、木質床材110のうち、その長手方向の一端をなして短手方向に延びる第2短側面110dにも、図4に示すように、第1短側面110cに形成された第1実部113と嵌合可能な第2実部123が設けられている。
【0027】
この第2実部123は、第2雌実部124と、これよりも被着色面110h側で木質床材110の拡がり方向外側に位置する第2雄実部125とを有する。このうち、第2雌実部124は、第1実部113のうちの第1雄実部114と嵌合可能な断面コ字状をなし、木質床材110の拡がり方向内側に向かって凹設されている。また、第2雄実部125は、第1実部113のうちの第1雌実部115と嵌合可能な断面矩形状をなし、木質床材110の拡がり方向外側に向かって突出している。
【0028】
着色層131は、木質床材110の木目等をより美しく見せるなどの目的で形成されており、水性ステイン(着色材)を用いて形成されている。着色層131は、図2〜図4に示すように、木質床材110の被着色面110hに形成されている。
この着色層131上には、図2〜図4に示すように、3層からなるクリア塗料層133が形成されている。このクリア塗料層133のうち、下塗クリア塗料層135は、厚みが10〜30μmで下塗り用のUV塗料から形成されている。また、中塗クリア塗料層137は、厚みが10〜80μmで中塗り用のUV塗料から形成されている。また、上塗クリア塗料層139は、厚みが10〜80μmで上塗り用のUV塗料から形成されている。
【0029】
木質床材110のうち、第1実部113が形成された、第1長側面110aの全体及び第1短側面110cの全体には、非水系であり、粘度が10〜200mPa・sであり、かつ、表面張力が20〜38dyn/cmであり、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートを含む非水系塗布材TZ1が塗布・含浸されて、図3に示すように、第1実部113の表面から2cm程度の深さまで浸透し、硬化した防水塗布材141となっている。同様に、第2実部123が形成された、第2長側面110bの全体及び第2短側面110dの全体にも、上記の非水系塗布材TZ1が塗布・含浸されて、図4に示すように、第2実部123の表面から2cm程度の深さまで浸透し、硬化した防水塗布材141となっている。
【0030】
以上で説明したように、この塗装木質床材100は、非水系であり、粘度が10〜200mPa・sであり、かつ、表面張力が20〜38dyn/cmである非水系塗布材TZ1を、木質床材110の第1実部113及び第2実部123に塗布し浸透させている。
非水系塗布材TZ1は、非水系であるので、第1実部113及び第2実部123に塗布した際、水分による膨れができず、第1実部113と第2実部123との嵌合性に影響を及ぼさない。
【0031】
また、非水系塗布材TZ1は、その粘度が10〜200mPa・sであるので、第1実部113及び第2実部123に確実に塗布されている。
また、非水系塗布材TZ1は、その表面張力が20〜38dyn/cmであるので、第1実部113及び第2実部123に十分に浸透しており、第1実部113及び第2実部123の表面に非水系塗布材TZ1が厚く残ることがなく、良好な仕上がり外観となっており、また、第1実部113と第2実部123との嵌合性も良好である。
また、非水系塗布材TZ1は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートを含んでいるので、第1実部113及び第2実部123の防水性を大きく向上させることができる。木質床材110に含まれる水酸基と非水系塗布材TZ1に含まれる水酸基が架橋することにより、防水性が向上するものと考えられる。
【0032】
次いで、この塗装木質床材100の製造方法について説明する。
まず、上記のように、凹溝111,112、第1実部113及び第2実部123を形成した前述の木質床材110を用意する。
そして、塗布材塗布工程において、図5に示すように、木質床材110のうち、第1実部113が形成された第1長側面110a及び第1短側面110cの全体に、厚み方向に直交する側方から、ディスペンサDPにより非水系塗布材TZ1を塗布する。同様に、図6に示すように、木質床材110のうち、第2実部123が形成された第2長側面110b及び第2短側面110dの全体に、厚み方向に直交する側方から、ディスペンサDPにより非水系塗布材TZ1を塗布する。
【0033】
具体的には、木質床材110を図示しない真空吸着装置に載置し、木質床材110を真空吸着させる。そして、これを吸着させた状態のまま搬送して所定位置で停止させる。続いて、90度屈曲したカーブニードルCNを有するディスペンサDP(武蔵エンジニアリング製)を搭載した図示しない3軸直交ロボット(IAI製)を用いて、木質床材110の第1長側面110a、第2長側面110b、第1短側面110c及び第2短側面110dに、それぞれ、12g/尺2 の量の非水系塗布材TZ1を塗布する。なお、真空吸着装置を用いるのは、木質床材110の位置ズレを防止すると共に、木質床材110特有の反りを矯正するためである。
【0034】
なお、本実施形態では、カーブニードルCNの内径を0.58mmとしている。また、非水系塗布材TZ1には、非水系であり、粘度が10〜200mPa・sであり、かつ、表面張力が20〜38dyn/cmである非水系塗料を用いる。本実施形態では、イソシアネートを含有するUV塗料を用いる。この非水系塗布材TZ1には、後述するように、種々のUV塗料の他に、例えば、ウレタン塗料等の熱硬化性塗料などを用いることもできる。
【0035】
その後、塗布材硬化工程において、木質床材110に塗布し浸透させた非水系塗布材TZ1を硬化させる(図7及び図8参照)。本実施形態では、非水系塗布材TZ1がUV塗料であるので、UVドライヤーを用いて、非水系塗布材TZ1を乾燥させ硬化させる。UVが届かない、木質床材110の内部に浸透した非水系塗布材TZ1は、イソシアネートにより徐々に架橋する。これにより、第1実部113及び第2実部123の防水性が大幅に向上し、第1実部113及び第2実部123が水分等により膨張するのを防止できる。なお、非水系塗布材TZ1に熱硬化性塗料を用いる場合には、加熱により、非水系塗布材TZ1を熱硬化させればよい。
【0036】
次に、被着色面着色工程において、図9に示すように、木質床材110の被着色面110h側に水性着色材TZ2を塗布して、木質床材110の被着色面110h側を全体的に着色する。具体的には、木質床材110を搬送させつつ、スポンジロールSRを木質床材110の被着色面110hに接触させて、木質床材110の被着色面110hに、水性着色材TZ2(具体的には、ナトコ社製フローラ)を塗布する。その後続いて、掻取ロールKRを順回転させてながら、木質床材110の被着色面110hに接触させて、木質床材110の被着色面110hに余分に塗布された水性着色材TZ2を取り除く。
【0037】
その後、水性着色材乾燥工程において、木質床材110に塗布した水性着色材TZ2を乾燥させる。具体的には、ジェット乾燥機を用いて、木質床材110に塗布した水性着色材TZ2を乾燥させる。これにより、被着色面110hの全体に、図2〜図4に示した着色層131が形成される。
【0038】
次に、塗装工程のうちの下塗塗布工程において、図10に示すように、ロールコータRCにより、木質床材110の被着色面110h側に、下塗り用のUV塗料CT1を塗布する。その後、塗装工程のうちの下塗硬化工程において、UVドライヤーにより、下塗り用のUV塗料CT1を硬化させて、着色層131上に下塗クリア塗料層135を形成する(図2参照)。
【0039】
次に、塗装工程のうちの中塗塗布工程において、ロールコータRCにより、下塗クリア塗料層135上に中塗り用のUV塗料CT2を塗布する(図10参照)。その後、塗装工程のうちの中塗硬化工程において、UVドライヤーにより、中塗り用のUV塗料CT2を硬化させて、下塗クリア塗料層135上に中塗クリア塗料層137を形成する(図2参照)。その後、塗装工程のうちの研磨工程で、#320のサンドペーパにより、中塗クリア塗料層137の表面を研磨する。
【0040】
次に、塗装工程のうちの上塗塗布工程で、ロールコータRCにより、中塗クリア塗料層137上に上塗り用のUV塗料CT3を塗布する(図10参照)。その後、塗装工程のうちの上塗塗料硬化工程で、UVドライヤーにより、上塗り用のUV塗料CT3を硬化させて、中塗クリア塗料層137上に上塗クリア塗料層139を形成する(図2参照)。これにより、図2〜図4に示したように、着色層131上にクリア塗料層133が形成され、上記の塗装木質床材100が完成する。
【0041】
以上で説明したように、この塗装木質床材100の製造方法は、非水系であり、粘度が10〜200mPa・sであり、かつ、表面張力が20〜38dyn/cmである非水系塗布材TZ1を、第1実部113及び第2実部123の全体に、ディスペンサDPにより塗布する塗布材塗布工程を備える。
非水系塗布材TZ1は、非水系であるので、第1実部113及び第2実部123に塗布した際、水分による膨れができず、第1実部113と第2実部123との嵌合性に影響を及ぼさない。
【0042】
また、非水系塗布材TZ1は、その粘度が10mPa・s以上であるので、塗布材塗布工程において、ディスペンサからの吐出量の調整が容易となる。これにより、吐出の勢いが強くなりすぎることを防止し、非水系塗布材TZ1が第1実部113及び第2実部123から跳ね返るのを防止できる。一方で、非水系塗布材TZ1の粘度は200mPa・s以下であるので、塗布材塗布工程において、非水系塗布材TZ1がディスペンサDP1の吐出口からタレて塗布し難いなどの不具合が生じ難く、非水系塗布材TZ1を第1実部113及び第2実部123に確実に塗布できる。
【0043】
また、非水系塗布材TZ1は、その表面張力が20dyn/cm以上であるので、表面張力を下げるための低表面張力シリコンやフッ素系界面活性剤を多く使用する必要がなく、塗布材塗布工程において、飛散やコンタミネーションにより、ハジキなどの不具合が生じるのを防止できる。一方で、非水系塗布材TZ1の表面張力は38dyn/cm以下であるので、これを第1実部113及び第2実部123に十分に浸透させることができるため、第1実部113及び第2実部123を良好な仕上がり外観とし、第1実部113と第2実部123との嵌合性を良好なものとすることができる。
【0044】
(実施例)
次いで、本発明の効果を検証するために行った試験の結果について説明する。実施例1〜19として、表1及び表2に示すように、非水系塗布材TZ1の種類や粘度、表面張力などを変更して製造した19種類の塗装木質床材100を用意した。また、比較例1〜15として、表3及び表4に示すように、非水系塗布材TZ1の種類や粘度、表面張力などを変更して製造した15種類の塗装木質床材を用意した。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
具体的には、表1に示すように、実施例1では、非水系塗布材TZ1として、UV硬化性官能基を有するモノマーであるトリプロピレングリコールジアクリレート(ダイセル・サイテック株式会社製、TPGDA)を用いた。この塗布材TZ1は、表2に示すように、粘度が12mPa・s、表面張力が33dyn/cmである。
実施例2では、非水系塗布材TZ1として、UV硬化性官能基を有するモノマーであるアクリロイルモルホリン(株式会社興人製、ACMO)79.9wt%と、UV硬化性官能基を有するオリゴマーであるエポキシアクリレート(DIC株式会社製、ユニディックV−5509)20wt%と、表面張力調整剤としてのシリコーン塗料添加剤(信越化学株式会社製、KP−327)0.1wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が13mPa・s、表面張力が22dyn/cmである。
【0048】
実施例3では、非水系塗布材TZ1として、上記のアクリロイルモルホリン79.9wt%と、UV硬化性官能基を有するオリゴマーであるポリエステルアクリレート(東亜合成株式会社製、アロニックスM−7100)20wt%と、表面張力調整剤としてのポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン株式会社製、BYK−300)0.1wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が13mPa・s、表面張力が26dyn/cmである。
実施例4では、非水系塗布材TZ1として、上記のトリプロピレングリコールジアクリレート80wt%と、UV硬化性官能基を有するモノマーであるEO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(東亜合成株式会社製、アロニックスM−350)8wt%と、UV硬化性官能基を有するオリゴマーであるウレタンアクリレート(DIC株式会社製、ユニディックV−4395)12wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が25mPa・s、表面張力が33dyn/cmである。
【0049】
実施例5では、非水系塗布材TZ1として、上記のトリプロピレングリコールジアクリレート80wt%と、上記のポリエステルアクリレート20wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が25mPa・s、表面張力が34dyn/cmである。
実施例6では、非水系塗布材TZ1として、上記のトリプロピレングリコールジアクリレート75wt%と、UV硬化性官能基を有するモノマーであるペンタエリスリトールトリアクリレート(ダイセル・サイテック株式会社製、PETIA)25wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が25mPa・s、表面張力が34dyn/cmである。
【0050】
実施例7では、非水系塗布材TZ1として、上記のトリプロピレングリコールジアクリレート80wt%と、上記のエポキシアクリレート20wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が35mPa・s、表面張力が34dyn/cmである。
実施例8〜11では、非水系塗布材TZ1として、上記のトリプロピレングリコールジアクリレート76wt%と、上記のエポキシアクリレート19wt%と、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(三井化学株式会社製、タケネートD−170N)5wt%からなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が35mPa・s、表面張力が34dyn/cmである。なお、実施例8〜11は、非水系塗布材TZ1は同様であるが、後述するように、木質床材110の基材の種類やディスペンサDPのカーブニードルCNの形状が異なる。
【0051】
実施例12では、非水系塗布材TZ1として、1液ウレタン塗料であるポリエーテル変性ウレタン(ナトコ株式会社製、建材シーラー)を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が50mPa・s、表面張力が32dyn/cmである。
実施例13では、非水系塗布材TZ1として、上記のトリプロピレングリコールジアクリレート50wt%と、上記のペンタエリスリトールトリアクリレート50wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が66mPa・s、表面張力が35dyn/cmである。
【0052】
実施例14では、非水系塗布材TZ1として、上記のトリプロピレングリコールジアクリレート60wt%と、上記のエポキシアクリレート40wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が85mPa・s、表面張力が34dyn/cmである。
実施例15は、非水系塗布材TZ1として、上記のトリプロピレングリコールジアクリレート50wt%と、上記のポリエステルアクリレート50wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が148mPa・s、表面張力が35dyn/cmである。
【0053】
実施例16では、非水系塗布材TZ1として、上記のトリプロピレングリコールジアクリレート50wt%と、上記のEO変性トリメチロールプロパントリアクリレート20wt%と、上記のウレタンアクリレート30wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が150mPa・s、表面張力が35dyn/cmである。
実施例17では、非水系塗布材TZ1として、上記のトリプロピレングリコールジアクリレート50wt%と、上記のエポキシアクリレート50wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が188mPa・s、表面張力が35dyn/cmである。
【0054】
実施例18では、非水系塗布材TZ1として、上記のトリプロピレングリコールジアクリレート415wt%と、上記のエポキシアクリレート58.9wt%と、上記のシリコンKP−327の0.1wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が195mPa・s、表面張力が24dyn/cmである。
実施例19では、非水系塗布材TZ1として、上記のトリプロピレングリコールジアクリレート41wt%と、上記のエポキシアクリレート59wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が195mPa・s、表面張力が36dyn/cmである。
【0055】
なお、実施例1〜8,11,13〜19では、木質床材110の基材108として、パーティクルボード(PB)を用いた。また、実施例9では、木質床材110の基材108として、MDFを用い、実施例10,12では、木質床材110の基材108として、ラワン合板を用いた。
また、実施例11では、90度屈曲したカーブニードルCNを有するディスペンサDPの代わりに、45度屈曲したカーブニードルを有するディスペンサを用いて、非水系塗布材TZ1の塗布を行った。
また、実施例1〜16では、カーブニードルCNの内径を0.58mmとし、実施例17〜19では、カーブニードルCNの内径を0.84mmとした。
【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
比較例1では、表3に示すように、非水系塗布材TZ1として、上記のアクリロイルモルホリンを用いた。この非水系塗布材TZ1は、表4に示すように、粘度が13mPa・s、表面張力が41dyn/cmである。
比較例2では、非水系塗布材TZ1として、上記のアクリロイルモルホリン80wt%と、上記のウレタンアクリレート20wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が25mPa・s、表面張力が40dyn/cmである。
【0059】
比較例3では、非水系塗布材TZ1として、上記のアクリロイルモルホリン80wt%と、上記のポリエステルアクリレート20wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が25mPa・s、表面張力が41dyn/cmである。
比較例4では、非水系塗布材TZ1として、上記のアクリロイルモルホリン80wt%と、上記のエポキシアクリレート20wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が35mPa・s、表面張力が41dyn/cmである。
【0060】
比較例5では、非水系塗布材TZ1として、上記のアクリロイルモルホリン80wt%と、UV硬化性官能基を有するモノマーであるポリエチレングリコールジアクリレート(第一工業製薬株式会社製、ニューフロンティアPE−300)20wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が50mPa・s、表面張力が41dyn
/cmである。
比較例6では、非水系塗布材TZ1として、上記のポリエーテル変性ウレタンを用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が50mPa・s、表面張力が32dyn/cmである。なお、この非水系塗布材TZ1は、実施例12の非水系塗布材TZ1と同様であるが、ディスペンサDPの代わりに、スプレを用いて、非水系塗布材TZ1の塗布を行った。
【0061】
比較例7では、非水系塗布材TZ1に代えて、水性エマルジョン(ニチゴー・モビニール株式会社製、モビニール801)50wt%と、水50wt%とからなる水系の塗料を用いた。この水系塗布材は、粘度が75mPa・s、表面張力が35dyn/cmである。
比較例8では、非水系塗布材TZ1に代えて、酢ビエマルジョン(801)の70wt%と、水30wt%とからなる水系の塗料を用いた。この水系塗布材は、粘度が100mPa・s、表面張力が35dyn/cmである。
【0062】
比較例9では、非水系塗布材TZ1として、上記のアクリロイルモルホリン50wt%と、上記のポリエステルアクリレート50wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が130mPa・s、表面張力が41dyn/cmである。
比較例10では、非水系塗布材TZ1として、上記のトリプロピレングリコールジアクリレート25wt%と、上記のペンタエリスリトールトリアクリレート74.9wt%と、上記のシリコンKP−327の0.1wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が207mPa・s、表面張力が24dyn/cmである。
【0063】
比較例11では、非水系塗布材TZ1として、上記のトリプロピレングリコールジアクリレート25wt%と、上記のペンタエリスリトールトリアクリレート75wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が207mPa・s、表面張力が36dyn/cmである。
比較例12では、非水系塗布材TZ1として、上記のトリプロピレングリコールジアクリレート40wt%と、上記のエポキシアクリレート30wt%と、上記のポリエステルアクリレート30wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が230mPa・s、表面張力が36dyn/cmである。
【0064】
比較例13では、非水系塗布材TZ1として、上記のトリプロピレングリコールジアクリレート40wt%と、上記のエポキシアクリレート60wt%とからなる塗料を用いた。この非水系塗布材TZ1は、粘度が260mPa・s、表面張力が36dyn/cmである。
比較例14,15では、いずれも非水系塗布材TZ1の塗布を行わずに、塗装木質床材を製造した。これら比較例14,15は、次述するように、木質床材110の基材の種類が異なる。
【0065】
なお、比較例1〜5,7〜14では、木質床材110の基材108として、パーティクルボード(PB)を用いた。また、比較例6では、木質床材110の基材108として、ラワン合板を用い、比較例15では、木質床材110の基材108として、MDFを用いた。
また、比較例1〜5,7〜9では、カーブニードルCNの内径を0.58mmとし、比較例10〜13では、カーブニードルCNの内径を0.84mmとした。
【0066】
次いで、各実施例及び各比較例の塗装木質床材100について、ディスペンサDPによる非水系塗布材TZ1の塗布状態を評価した(表2及び表4参照)。なお、比較例6では、前述のように、スプレにより非水系塗布材TZ1を塗布したので、この評価は行って
いない。また、比較例14,15では、前述のように、非水系塗布材TZ1の塗布を行っ
ていないので、この評価も行っていない。
【0067】
具体的には、非水系塗布材TZ1がディスペンサDPのカーブニードルCNの吐出口からタレずに、非水系塗布材TZ1を第1実部113及び第2実部123に均一に塗布できたものを良好「○」と評価した。一方、 非水系塗布材TZ1がディスペンサDPのカーブニードルCNの吐出口からタレて、非水系塗布材TZ1を第1実部113及び第2実部123に均一に塗布できなかったものを不良「×」と評価した。
【0068】
表2及び表4によれば、実施例1〜19及び比較例1〜5,7〜9は、ディスペンサDPによる非水系塗布材TZ1(比較例7,8では水系塗布材)の塗布状態が良好(評価「○」)であった。これらに対し、比較例10〜13は、ディスペンサDPによる非水系塗布材TZ1の塗布状態が不良(評価「×」)であった。なお、比較例6では、前述のように、スプレにより非水系塗布材TZ1を塗布したが、このスプレによる塗布では、非水系塗布材TZ1が飛散してしまい、非水系塗布材TZ1を第1実部113及び第2実部123に選択的に塗布することができなかった。
【0069】
このことから、非水系塗布材TZ1の粘度を、10〜200mPa・sの範囲内とすれば、ディスペンサDPによる非水系塗布材TZ1の塗布状態が良好となることが判る。一方、非水系塗布材TZ1の粘度が200mPa・sを超える(例えば207mPa・sとする)と、ディスペンサDPによる非水系塗布材TZ1の塗布状態が不良となることが判った。
【0070】
次に、各実施例及び各比較例の塗装木質床材100について、第1実部113及び第2実部123の仕上がり外観を評価した。なお、比較例14,15は、前述のように、非水系塗布材TZ1の塗布を行っていないので、この評価も行っていない。
具体的には、非水系塗布材TZ1が第1実部113及び第2実部123に十分に浸透して、表面にムラがなく、外観が良好なものを「○」と評価した。一方、 非水系塗布材TZ1が第1実部113及び第2実部123に十分に浸透せずに、表面にムラなどができたものを、外観が不良として「×」と評価した。
【0071】
表2及び表4によれば、実施例1〜19及び比較例7,8は、第1実部113及び第2実部123の仕上がり外観が良好(評価「○」)であった。これらに対し、比較例1〜5,9〜13は、第1実部113及び第2実部123の仕上がり外観が不良(評価「×」)であった。
このことから、非水系塗布材TZ1の粘度を、10〜200mPa・sの範囲内とし、かつ、非水系塗布材TZ1の表面張力を、20〜38dyn/cmの範囲内とすることで、第1実部113及び第2実部123の仕上がり外観が良好となることが判る。一方、非水系塗布材TZ1の粘度が200mPa・sを超える(例えば207mPa・sとする)か、或いは、非水系塗布材TZ1の表面張力が38dyn/cmを超える(例えば40dyn/cmとする)と、第1実部113及び第2実部123の仕上がり外観が不良となることが判った。
【0072】
次に、各実施例及び各比較例の塗装木質床材100について、第1実部113及び第2実部123近傍の吸水厚さ膨張率を評価した。なお、比較例1〜4,6,9,10,12,13では、この評価を行っていない。
具体的には、塗装木質床材100の吸水厚さ膨張率は、JIS A 5905(2003) 6.9に準じて測定した。即ち、塗装木質床材100を温度20℃、湿度
65%RHの標準状態にて24時間放置後、外形寸法が10cm×10cmの試験片を3枚切り出した。次に、1枚の試験片について、第1実部113及び第2実部123近傍における板厚を測定し、これを20±1℃の水面下約3cmに水平に置き、24時間浸した後、取り出して水分をふき取り、再び板厚を測定し、次式によって吸水厚さ膨張率を求めた。これを、他の2枚の試験片についても行い、3枚の試験片の算術平均値を算出した。
吸水厚さ膨張率(%)=(t2−t1)/t1×100
t1:吸水前の厚さ(mm),t2:吸水後の厚さ(mm)
なお、第1実部113及び第2実部123以外からの吸水を防止するために、第1実部113及び第2実部123以外には防水テープを貼り付けて、水に触れないようにしてから、上記吸水試験を行った。
【0073】
表2及び表4によれば、実施例1〜19及び比較例5,11は、吸水厚さ膨張率が3.0%以下と小さく、良好であった。これらに対し、比較例7,8,14,15は、吸水厚さ膨張率が約5%以上と大きく、不良であった。
このことから、塗布材として、非水系の塗布材TZ1を用いれば、防水性が向上して、吸水厚さ膨張率が小さくなることが判る。一方、塗布材として、水系の塗布材を用いたり(比較例7,8)、非水系塗布材TZ1の塗布を行わない場合(比較例14,15)には、防水性が低下して、吸水厚さ膨張率が大きくなりがちであることが判る。
また、実施例7と実施例8との比較から、非水系塗布材TZ1にイソシアネートを加えることにより、防水性が大きく向上して、吸水厚さ膨張率が小さくなることが判る。
【0074】
次に、各実施例及び各比較例の塗装木質床材100について、塗装木質床材100同士の第1実部113と第2実部123との嵌合性を評価した。
具体的には、第1実部113と第2実部123とを無理なく嵌合(実結合)できたものを良好「○」と評価した。一方、第1実部113と第2実部123との嵌合(実結合)が難しかったものを不良「×」と評価した。
【0075】
その結果、実施例1〜19は、第1実部113と第2実部123との嵌合が無理なくできて良好(評価「○」)であった。一方、比較例1〜5,7〜14,15は、第1実部113と第2実部123との嵌合が難しく不良(評価「×」)であった。
このことから、(1)塗布材TZ1として、非水系のものを用い、(2)非水系塗布材TZ1の粘度を10〜200mPa・sの範囲内とし、かつ、(3)非水系塗布材TZ1の表面張力を20〜38dyn/cmの範囲内とすることで、第1実部113と第2実部123との嵌合性が良好となることが判る。一方、非水系塗布材TZ1の塗布を行わないか、塗布材TZ1として水系のものを用いるか、非水系塗布材TZ1の粘度が200mPa・sを超えるか、或いは、非水系塗布材TZ1の表面張力が38dyn/cmを超えると、第1実部113と第2実部123との嵌合性が不良となることが判る。
【0076】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態では、クリア塗料層133を3層(クリア塗料層135,137,139)形成しているが、クリア塗料層の総数は特に限定されない。例えば、クリア塗料層を1層としてもよいし、或いは2層としてもよい。また、クリア塗料層133を全く形成しない形態とすることもできる。
【0077】
また、上記実施形態では、被着色面着色工程をスポンジロールSR等により行い、塗装工程をロールコータRCにより行っているが、これらの工程の塗布方法は、適宜変更できる。他の塗布方法としては、例えば、ハケ塗り、スプレ塗り、カーテンフローコータ及びフローコータ等の流し塗り、ロールコータ及びローラブラシ等のローラ塗装、減圧塗装法、浸漬塗装法などが挙げられる。
【符号の説明】
【0078】
100 塗装木質床材
108 基材
109 化粧単板
110 木質床材
110h 被着色面(板表面)
110r 裏面(板裏面)
110a 第1長側面
110b 第2長側面
110c 第1短側面
110d 第2短側面
113 第1実部
114 第1雄実部
115 第1雌実部
123 第2実部
124 第2雌実部
125 第2雄実部
131 着色層
133 クリア塗料層
141 防水塗布材
DP ディスペンサ
CN カーブニードル
TZ1 塗布材(非水系塗布材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水系であり、木質床材に形成された実部にディスペンサにより塗布するための非水系塗布材TZ1であって、
粘度が10〜200mPa・sであり、かつ、
表面張力が20〜38dyn/cmである
非水系塗布材。
【請求項2】
請求項1に記載の非水系塗布材であって、
1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートを含んでなる
非水系塗布材。
【請求項3】
実部が形成された木質床材のうち、前記実部に塗布材を塗布してなる塗装木質床材の製造方法であって、
前記塗布材として、非水系であり、粘度が10〜200mPa・sであり、かつ、表面張力が20〜38dyn/cmである非水系塗布材を用いて、前記木質床材の前記実部の全体にディスペンサにより前記塗布材を塗布する塗布材塗布工程を備える
塗装木質床材の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の塗装木質床材の製造方法であって、
前記塗布材塗布工程では、
前記塗布材として、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートを含む前記非水系塗布材を用いる
塗装木質床材の製造方法。
【請求項5】
実部が形成された木質床材のうち、前記実部に塗布材を塗布してなる塗装木質床材であって、
非水系であり、粘度が10〜200mPa・sであり、かつ、表面張力が20〜38dyn/cmである非水系塗布材を、前記木質床材の前記実部に塗布し浸透させてなる
塗装木質床材。
【請求項6】
請求項5に記載の塗装木質床材であって、
前記非水系塗布材は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートを含んでなる
塗装木質床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−31496(P2011−31496A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180043(P2009−180043)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(392007566)ナトコ株式会社 (42)
【Fターム(参考)】