説明

非水電解液二次電池用正極

【課題】充放電のサイクル特性が向上した非水電解液二次電池用の負極を提供すること。
【解決手段】活物質を含む活物質層を有する本発明の非水電解液二次電池用正極は、該活物質層に、該活物質とは別にLiyNi1-xTix2(式中、0<x<0.7であり、1≦y≦1.1である)で表される化合物が含有されていることを特徴とする。該化合物は、そのX線回折パターンにおける(003)面と(104)面とのピーク比であるI(003)/I(104)が0.4〜0.9であることが好ましい。活物質層における前記活物質の量に対する前記化合物の量の割合は、5〜50重量%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池などの非水電解液二次電池に用いられる正極に関する。また本発明は、該正極を備えた非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池などの非水電解液二次電池に用いられる正極の活物質としては、LiCoO2及びLiNiO2などの層状岩塩構造を有する化合物や、LiMn24などのスピネル型構造を有する化合物を始めとしたリチウム遷移金属複合酸化物が知られている。また、これらの複合酸化物における遷移金属の一部を、他の金属で置換した化合物も提案されている。
【0003】
例えば、LiNiO2におけるNiの一部をTiで置換した化合物について、これをリチウム二次電池の正極活物質として用いることが検討されている(例えば非特許文献1参照)。この文献においては、LixNi1-yTiy2(0.1≦y≦0.5)で表される化合物について、リチウム二次電池の正極活物質としての特性が検討されているところ、十分な容量が得られるものとは言えない。
【0004】
ところで正極活物質とは別に、リチウム二次電池の負極活物質として、現在一般的に用いられているグラファイト系の材料よりも理論容量の高い材料であるSi系やSn系の材料が種々検討されている。これらSi系やSn系の材料からなる負極活物質は、一般的に初回充電時の不可逆容量が大きい。したがって、これら負極活物質が有する高容量の特性を活用して、高容量でかつ充放電サイクル特性を向上させるためには、これら負極活物質を、高容量でありかつ適切な不可逆容量を有する正極活物質と組み合わせて使用する必要がある。しかし、正極活物質として現在一般的に用いられているLiCoO2等は、Si系やSn系の材料と組み合わせて用いるのに十分な不可逆容量を有しているとは言えない。
【0005】
【非特許文献1】S. H. Chang et al., Solid State Ionics, 86-88 (1996) p.171-175
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の目的は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得る非水電解液二次電池用の正極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、活物質を含む活物質層を有する非水電解液二次電池用正極において、該活物質層に、該活物質とは別にLiyNi1-xTix2(式中、0<x<0.7であり、1≦y≦1.1である)で表される化合物が含有されていることを特徴とする非水電解液二次電池用正極を提供するものである。
【0008】
また本発明は、LiyNi1-xTix2(式中、0<x<0.7であり、1≦y≦1.1である)で表される化合物からなることを特徴とする非水電解液二次電池用正極活物質の添加剤を提供するものである。
【0009】
更に本発明は、前記の正極を備えた非水電解液二次電池、及び該電池に対して充電を行うときに、該電池を組み立てた後に初めて行う充電である予備充電のカットオフ電位を、Li/Li+を基準として4.2〜5.0Vに設定することを特徴とする非水電解液二次電池の調整方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の正極は、初回充電時に、多量のリチウムを負極活物質へ供給することができるので、不可逆容量を低減させることができ、充放電のサイクル特性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の正極は、例えば集電体の少なくとも一面に正極活物質層が形成されてなるものである。正極活物質層には活物質が含まれている。活物質としては、当該技術分野において従来知られているものを特に制限なく用いることができる。例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24、LiCo1/3Ni1/3Mn1/32、LiCo0.5Ni0.52、LiNi0.7Co0.2Mn0.12、Li(LixMn2xCo1-3x)O2(式中、0<x<1/3である)、LiFePO4、LiMn1-zzPO4 (式中、0<z≦0.1であり、MはCo、Ni、Fe、Mg、Zn及びCuからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。)などのリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。特に、初回充電時のカットオフ電圧を高く設定しても結晶構造が破壊されにくい物質を用いることが好ましい。また、初回充電時の不可逆容量が大きいものを用いることも好ましい。そのような正極活物質としては、例えばLiCo1/3Ni1/3Mn1/32や、Li(LixMn2xCo1-3x)O2(式中、0<x<1/3である)等が挙げられる。
【0012】
活物質層には、正極活物質に加えて、以下の式(1)で表される化合物が含有されている。この化合物は、広い意味では上述したリチウム遷移金属複合酸化物の一種であり、非水電解液二次電池の正極活物質として理論上使用可能であるが、この化合物を単独で使用しても十分な性能を有する二次電池を得ることはできない。したがって本発明においては、式(1)で表される化合物は、正極活物質に含めない。本発明者らが種々検討したところ、式(1)で表される化合物は、初回充電時に不可逆容量として放出されるリチウムの量が多いことが判明した。特に、初回充電時のカットオフ電圧を高く設定した場合に、不可逆容量として放出されるリチウムの量が多いことが判明した。したがってこの化合物を、高容量を有する正極活物質の添加剤として該正極活物質とともに活物質層中に含有させることで、初回充電時に十分な量のリチウムを負極へ供給させることが可能となり、しかも正極活物質の特性を十分に引き出すことができる。
LiyNi1-xTix2 (1)
(式中、0<x<0.7であり、1≦y≦1.1である)
【0013】
式(1)で表される化合物において、xは、上述のとおり0超でかつ0.7未満の数である。xの値、即ちTiの量が多くても少なくても所望の不可逆容量が得られにくくなるので、xの値はこの範囲内にする。正極の充放電容量及び不可逆容量を考慮すると、xは0.01〜0.5、特に0.05〜0.3であることが好ましい。
【0014】
式(1)で表される化合物は、そのX線回折パターンにおける(003)面と(104)面とのピーク比、即ちI(003)/I(104)が0.4〜0.9、特に0.5〜0.8であることが好ましい。式(1)で表される化合物は、α−NaFeO2型、即ち層状岩塩構造の化合物であるところ、このピーク比は層状構造の尺度となるものであり、該ピーク比が大きいほど式(1)で表される化合物は、その層状構造が一層高度化する。そして、式(1)で表される化合物の該ピーク比を前記の範囲内とすることにより、初回充電時におけるリチウムの脱離が良好に進行する。
【0015】
式(1)で表される化合物は一般に固体粉末状の形態で用いられる。また、上述した各種正極活物質も一般に固体粉末状の形態で用いられる。これらの粉末の粒径は本発明において特に臨界的ではないが、正極活物質の粒子と式(1)で表される化合物の粒子とが、互いの隙間を埋めて高密度で充填されることが好ましいことに鑑みると、これらの粒子の好ましい粒径は、D50で表して、いずれも5〜30μmである。この場合、これら2種類の粒子において、〔D50が大きい方の粒子/D50が小さい方の粒子〕の値が1.5〜5であることが好ましい。
【0016】
(1)で表される化合物は、例えばLi2CO3と、Ni(OH)2と、TiO2とを原料とし、これらの粉末を混合して大気下に所定温度で焼成することで得られる。焼成時の温度や時間を始めとする各種の焼成条件を適切に調整することで、上述したI(003)/I(104)のピーク比を所望の好ましい範囲内にすることができる。主要な因子としては焼成温度が挙げられ、焼成温度を例えば600〜800℃に設定することで、前記の範囲内のピーク比を有する化合物を容易に得ることができる。
【0017】
正極の活物質層において、式(1)で表される化合物は正極活物質と併用されて、負極活物質へリチウムを供給するために補助的に用いられるものであり、この観点から、正極活物質の量に対する式(1)で表される化合物の量の割合は5〜50重量%、特に5〜45重量%、とりわけ5〜20重量%であることが好ましい。この割合を5重量%以上とすることで、充放電のサイクル特性を向上させることができる。この観点から、正極活物質の量に対する式(1)で表される化合物の量の割合は、高ければ高いほど好ましいが、それに伴い初期容量密度が低下する傾向にあるので、この割合を50重量%以下とすることで、初期容量密度の低下とサイクル特性の向上とをバランスさせることができる。
【0018】
本発明の正極は、例えば正極活物質及び式(1)で表される化合物を、アセチレンブラック等の導電剤及びポリフッ化ビニリデン等の結着剤とともに適当な溶媒に懸濁し、正極合剤を作製し、これをアルミニウム箔等の集電体の少なくとも一面に塗布、乾燥した後、ロール圧延、プレスすることにより得られる。
【0019】
本発明の正極を備えた二次電池のサイクル特性を向上させるためには、予備充電及び初回以降の充電条件を調整することが好ましい。予備充電に関しては、カットオフの電位を高めに設定して、式(1)で表される化合物から放出されるリチウムの量を多くして、負極活物質に不可逆容量として蓄積させることが好ましい。この観点から、予備充電のカットオフ電位は、Li/Li+を基準として4.2〜5.0Vに設定することが好ましく、4.4〜5.0Vに設定することが更に好ましい。なお予備充電とは、電池を組み立てた後に初めて行う充電のことであり、一般には電池の製造業者が製品を市場に出荷する前に行うものである。つまり市場で販売されているリチウム二次電池は既に予備充電されていることが通常である。したがって、予備充電及びそれに引き続く該予備充電後の放電の後に初めて行う充放電が初回の充放電に当たる。その意味で、以後の説明においては「予備充電後の放電よりも後の充放電」のことを、「初回以降の充放電」という。
【0020】
また、予備充電のカットオフの電位を上述のとおりに設定することで、式(1)で表される化合物の可逆容量が増大し、これによって電池の容量が一層増加するという付加的効果も奏される。この理由は、予備充電のカットオフ電位を高めに設定することで、式(1)で表される化合物の構造変化が起こり、可逆性が発現して、初回以降の放電容量が増大するからであると考えられる。
【0021】
一方、初回以降の充電におけるカットオフ電圧は、予備充電のカットオフ電圧と同じか又はそれによりも低く設定することが好ましい。尤も、カットオフ電圧を低くし過ぎると、式(1)で表される化合物を用いた利点を十分に生かせないことになる。一方、カットオフ電圧を高くし過ぎると、非水電解液がダメージを受ける傾向となる。したがって初回以降の充電におけるカットオフ電位は、Li/Li+を基準として4.2〜5.0V、特に4.25〜4.5Vとすることが好ましい。
【0022】
本発明の正極は、負極、セパレータ、非水電解液等とともに用いられて非水電解液二次電池を構成する。負極は、例えば集電体の少なくとも一面に負極活物質層が形成されてなるものである。負極活物質層には活物質が含まれている。負極活物質は、リチウムの吸蔵放出が可能な材料からなる。負極活物質としては、当該技術分野において従来知られているものを特に制限なく用いることができるところ、本発明の正極の特徴を生かす観点からは、初回充電時の不可逆容量が大きく、かつ理論容量が高い材料を用いることが好ましい。そのような材料としては、Si又はSnを含む材料が挙げられる。
【0023】
Siを含む負極活物質はリチウムイオンの吸蔵放出が可能なものである。その例としては、シリコン単体、シリコンと金属との合金、シリコン酸化物などを用いることができる。これらの材料はそれぞれ単独で、あるいはこれらを混合して用いることができる。前記の金属としては、例えばCu、Ni、Co、Cr、Fe、Ti、Pt、W、Mo及びAuからなる群から選択される1種類以上の元素が挙げられる。これらの金属のうち、Cu、Ni、Coが好ましく、特に電子伝導性に優れる点、及びリチウム化合物の形成能の低さの点から、Cu、Niを用いることが望ましい。また、負極を電池に組み込む前に、又は組み込んだ後に、Siを含む材料からなる活物質に対してリチウムを吸蔵させてもよい。特に好ましいSiを含む材料は、リチウムの吸蔵量の高さの点からシリコン又はシリコン酸化物である。
【0024】
一方、Snを含む負極活物質の例としては、スズ単体、スズと金属との合金などを用いることができる。これらの材料はそれぞれ単独で、あるいはこれらを混合して用いることができる。スズと合金を形成する前記の金属としては、例えばCu、Ni、Co、Cr、Fe、Ti、Pt、W、Mo及びAuからなる群から選択される1種類以上の元素が挙げられる。これらの金属のうち、Cu、Ni、Coが好ましく、特にCu、Niを用いることが望ましい。
【0025】
負極活物質層は、例えば、前記の負極活物質からなる連続薄膜層、前記の負極活物質の粒子を含む塗膜層、前記の負極活物質の粒子を含む焼結体層等であり得る。また、以下に述べる図1に示す構造の層であり得る。前記の負極活物質が粒子の形態である場合、負極活物質層は、粒子からなる該負極活物質と金属粒子との混合物を含む場合があり得る。
【0026】
図1には本発明において用いられる負極の好適な一実施形態の断面構造の模式図が示されている。本実施形態の負極10は、集電体11と、その少なくとも一面に形成された活物質層12を備えている。なお図1においては、便宜的に集電体11の片面にのみ活物質層12が形成されている状態が示されているが、活物質層は集電体の両面に形成されていてもよい。
【0027】
活物質層12においては、Siを含む活物質の粒子12aの表面の少なくとも一部が、リチウム化合物の形成能の低い金属材料で被覆されている。この金属材料13は、粒子12aの構成材料と異なる材料である。該金属材料で被覆された該粒子12aの間には空隙が形成されている。つまり該金属材料は、リチウムイオンを含む非水電解液が粒子12aへ到達可能なような隙間を確保した状態で該粒子12aの表面を被覆している。図1中、金属材料13は、粒子12aの周囲を取り囲む太線として便宜的に表されている。なお同図は活物質層12を二次元的にみた模式図であり、実際は各粒子は他の粒子と直接ないし金属材料13を介して接触している。「リチウム化合物の形成能の低い」とは、リチウムと金属間化合物若しくは固溶体を形成しないか、又は形成したとしてもリチウムが微量であるか若しくは非常に不安定であることを意味する。
【0028】
金属材料13は導電性を有するものであり、その例としては銅、ニッケル、鉄、コバルト又はこれらの金属の合金などが挙げられる。特に金属材料13は、活物質の粒子12aが膨張収縮しても該粒子12aの表面の被覆が破壊されにくい延性の高い材料であることが好ましい。そのような材料としては銅を用いることが好ましい。
【0029】
金属材料13は、活物質層12の厚み方向全域にわたって活物質の粒子12aの表面に存在していることが好ましい。そして金属材料13のマトリックス中に活物質の粒子12aが存在していることが好ましい。これによって、充放電によって該粒子12aが膨張収縮することに起因して微粉化しても、その脱落が起こりづらくなる。また、金属材料13を通じて活物質層12全体の電子伝導性が確保されるので、電気的に孤立した活物質の粒子12aが生成すること、特に活物質層12の深部に電気的に孤立した活物質の粒子12aが生成することが効果的に防止される。金属材料13が活物質層12の厚み方向全域にわたって活物質の粒子12aの表面に存在していることは、該材料13を測定対象とした電子顕微鏡マッピングによって確認できる。
【0030】
金属材料13は、粒子12aの表面を連続に又は不連続に被覆している。金属材料13が粒子12aの表面を連続に被覆している場合には、金属材料13の被覆に、非水電解液の流通が可能な微細な空隙を形成することが好ましい。金属材料13が粒子12aの表面を不連続に被覆している場合には、粒子12aの表面のうち、金属材料13で被覆されていない部位を通じて該粒子12aへ非水電解液が供給される。このような構造の金属材料13の被覆を形成するためには、例えば後述する条件に従う電解めっきによって金属材料13を粒子12aの表面に析出させればよい。
【0031】
活物質の粒子12aの表面を被覆している金属材料13は、その厚みの平均が好ましくは0.05〜2μm、更に好ましくは0.1〜0.25μmという薄いものである。つまり金属材料13は最低限の厚みで以て活物質の粒子12aの表面を被覆している。これによって、エネルギー密度を高めつつ、充放電によって粒子12aが膨張収縮して微粉化することに起因する脱落を防止している。ここでいう「厚みの平均」とは、活物質の粒子12aの表面のうち、実際に金属材料13が被覆している部分に基づき計算された値である。したがって活物質の粒子12aの表面のうち金属材料13で被覆されていない部分は、平均値の算出の基礎にはされない。
【0032】
金属材料13で被覆された粒子12a間に形成された空隙は、リチウムイオンを含む非水電解液の流通の経路としての働きを有している。この空隙の存在によって非水電解液が活物質層12の厚み方向へ円滑に流通するので、サイクル特性を向上させることができる。更に、粒子12a間に形成されている空隙は、充放電で活物質の粒子12aが体積変化することに起因する応力を緩和するための空間としての働きも有する。充電によって体積が増加した活物質の粒子12aの体積の増加分は、この空隙に吸収される。その結果、該粒子12aの微粉化が起こりづらくなり、また負極10の著しい変形が効果的に防止される。
【0033】
活物質層12は、好適には粒子12a及び結着剤を含むスラリーを集電体上に塗布し乾燥させて得られた塗膜に対し、所定のめっき浴を用いた電解めっきを行い、粒子12a間に金属材料13を析出させることで形成される。
【0034】
非水電解液の流通が可能な空隙を活物質層12内に必要且つ十分に形成するためには、前記の塗膜内にめっき液を十分浸透させることが好ましい。これに加えて、該めっき液を用いた電解めっきによって金属材料13を析出させるための条件を適切なものとすることが好ましい。めっきの条件にはめっき浴の組成、めっき浴のpH、電解の電流密度などがある。めっき浴のpHに関しては、これを7.1〜11に調整することが好ましい。pHをこの範囲内とすることで、活物質の粒子12aの溶解が抑制されつつ、該粒子12aの表面が清浄化されて、粒子表面へのめっきが促進され、同時に粒子12a間に適度な空隙が形成される。pHの値は、めっき時の温度において測定されたものである。
【0035】
めっきの金属材料13として銅を用いる場合には、ピロリン酸銅浴を用いることが好ましい。また該金属材料としてニッケルを用いる場合には、例えばアルカリ性のニッケル浴を用いることが好ましい。特に、ピロリン酸銅浴を用いると、活物質層12を厚くした場合であっても、該層の厚み方向全域にわたって、前記の空隙を容易に形成し得るので好ましい。また、活物質の粒子12aの表面には金属材料13が析出し、且つ該粒子12a間では金属材料13の析出が起こりづらくなるので、該粒子12a間の空隙が首尾良く形成されるという点でも好ましい。ピロリン酸銅浴を用いる場合、その浴組成、電解条件及びpHは次のとおりであることが好ましい。
・ピロリン酸銅三水和物:85〜120g/l
・ピロリン酸カリウム:300〜600g/l
・硝酸カリウム:15〜65g/l
・浴温度:45〜60℃
・電流密度:1〜7A/dm2
・pH:アンモニア水とポリリン酸を添加してpH7.1〜9.5になるように調整する。
【0036】
ピロリン酸銅浴を用いる場合には特に、P27の重量とCuの重量との比(P27/Cu)で定義されるP比が5〜12であるものを用いることが好ましい。P比が5未満のものを用いると、活物質の粒子12aを被覆する金属材料13が厚くなる傾向となり、粒子12a間に所望の空隙を形成させづらい場合がある。また、P比が12を超えるものを用いると、電流効率が悪くなり、ガス発生などが生じやすくなることから生産安定性が低下する場合がある。更に好ましいピロリン酸銅浴として、P比が6.5〜10.5であるものを用いると、活物質の粒子12a間に形成される空隙のサイズ及び数が、活物質層12内での非水電解液の流通に非常に有利になる。
【0037】
アルカリ性のニッケル浴を用いる場合には、その浴組成、電解条件及びpHは次のとおりであることが好ましい。
・硫酸ニッケル:100〜250g/l
・塩化アンモニウム:15〜30g/l
・ホウ酸:15〜45g/l
・浴温度:45〜60℃
・電流密度:1〜7A/dm2
・pH:25重量%アンモニア水:100〜300g/lの範囲でpH8〜11となるように調整する。
このアルカリ性のニッケル浴と前述のピロリン酸銅浴とを比べると、ピロリン酸銅浴を用いた場合の方が活物質層12内に適度な空隙が形成される傾向があり、負極の長寿命化を図りやすいので好ましい。
【0038】
上述の各種方法によって形成される活物質層全体の空隙の割合、つまり空隙率は、15〜45体積%程度、特に20〜40体積%程度であることが好ましい。空隙率をこの範囲内とすることで、非水電解液の流通が可能な空隙を活物質層12内に必要且つ十分に形成することが可能となる。活物質層12の空隙量は、水銀圧入法(JIS R 1655)で測定される。水銀圧入法は、固体中の細孔の大きさやその容積を測定することによって、その固体の物理的形状の情報を得るための手法である。水銀圧入法の原理は、水銀に圧力を加えて測定対象物の細孔中へ圧入し、その時に加えた圧力と、押し込まれた(浸入した)水銀体積の関係を測定することにある。この場合、水銀は活物質層12内に存在する大きな空隙から順に浸入していく。本発明においては、圧力90MPaで測定した空隙量を全体の空隙量とみなしている。活物質層12の空隙率(%)は、前記の方法で測定された単位面積当たりの空隙量を、単位面積当たりの活物質層12の見かけの体積で除し、それに100を乗じることにより求める。
【0039】
負極においては、水銀圧入法で測定された活物質層12の空隙量から算出された空隙率が前記の範囲内であることに加えて、10MPaにおいて水銀圧入法で測定された活物質層12の空隙量から算出された空隙率が10〜40%であることが好ましい。また、1MPaにおいて水銀圧入法で測定された活物質層12の空隙量から算出された空隙率が0.5〜15%であることが好ましい。更に、5MPaにおいて水銀圧入法で測定された活物質層12の空隙量から算出された空隙率が1〜35%であることが好ましい。上述したとおり、水銀圧入法よる測定では、水銀の圧入条件を次第に高くしていく。そして低圧の条件下では大きな空隙に水銀が圧入され、高圧の条件下では小さな空隙に水銀が圧入される。したがって圧力1MPaにおいて測定された空隙率は、主として大きな空隙に由来するものである。一方、圧力10MPaにおいて測定された空隙率は、小さな空隙の存在も反映されたものである。
【0040】
上述した大きな空隙は、主として活物質の粒子12a間の空間に由来するものである。一方、上述した小さな空隙は、主として活物質の粒子12aの表面に析出する金属材料13の結晶粒間の空間に由来するものであると考えられる。大きな空隙は、主として活物質の粒子12aの膨張収縮に起因する応力を緩和するための空間としての働きを有している。一方、小さな空隙は、主として非水電解液を活物質の粒子12aに供給する経路としての働きを有している。これら大きな空隙と小さな空隙の存在量をバランスさせることで、サイクル特性が一層向上する。
【0041】
活物質の粒子12aの粒径を適切に選択することによっても、前記の空隙率をコントロールすることができる。この観点から、粒子12aはその最大粒径が好ましくは30μm以下であり、更に好ましくは10μm以下である。また粒子の粒径をD50値で表すと0.1〜8μm、特に0.3〜4μmであることが好ましい。粒子の粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定、電子顕微鏡観察(SEM観察)によって測定される。
【0042】
負極全体に対する活物質の量が少なすぎると電池のエネルギー密度を十分に向上させにくく、逆に多すぎると強度が低下し活物質の脱落が起こりやすくなる傾向にある。これらを勘案すると、活物質層の厚みは10〜40μm、好ましくは15〜30μm、更に好ましくは18〜25μmである。
【0043】
本実施形態の負極10においては、活物質層12の表面に薄い表面層(図示せず)が形成されていてもよい。また負極10はそのような表面層を有していなくてもよい。表面層の厚みは、0.25μm以下、好ましくは0.1μm以下という薄いものである。表面層の厚みの下限値に制限はない。表面層を形成することで、微粉化した活物質の粒子12aの脱落を一層防止することができる。尤も、本実施形態においては、活物質層12の空隙率を上述した範囲内に設定することによって、表面層を用いなくても微粉化した活物質の粒子12aの脱落を十分に防止することが可能である。
【0044】
負極10が前記の厚みの薄い表面層を有するか又は該表面層を有していないことによって、負極10を用いて二次電池を組み立て、当該電池の初期充電を行うときの過電圧を低くすることができる。このことは、二次電池の充電時に負極10の表面でリチウムが還元することを防止できることを意味する。リチウムの還元は、両極の短絡の原因となるデンドライトの発生につながる。
【0045】
負極10が表面層を有している場合、該表面層は活物質層12の表面を連続又は不連続に被覆している。表面層が活物質層12の表面を連続に被覆している場合、該表面層は、その表面において開孔し且つ活物質層12と通ずる多数の微細空隙(図示せず)を有していることが好ましい。微細空隙は表面層の厚さ方向へ延びるように表面層中に存在していることが好ましい。微細空隙は非水電解液の流通が可能なものである。微細空隙の役割は、活物質層12内に非水電解液を供給することにある。微細空隙は、負極10の表面を電子顕微鏡観察により平面視したとき、金属材料13で被覆されている面積の割合、即ち被覆率が95%以下、特に80%以下、とりわけ60%以下となるような大きさであることが好ましい。被覆率が95%を超えると、高粘度な非水電解液が浸入しづらくなり、非水電解液の選択の幅が狭くなるおそれがある。
【0046】
表面層は、リチウム化合物の形成能の低い金属材料から構成されている。この金属材料は、活物質層12中に存在している金属材料13と同種でもよく、あるいは異種でもよい。また表面層は、異なる2種以上の金属材料からなる2層以上の構造であってもよい。負極10の製造の容易さを考慮すると、活物質層12中に存在している金属材料13と、表面層を構成する金属材料とは同種であることが好ましい。
【0047】
以上の構造を有する負極10は、例えば本出願人の先の出願に係る特開2008−066278号公報に記載の方法で製造することができる。
【0048】
上述した正極及び負極とともに用いられるセパレータとしては、合成樹脂製不織布、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、又はポリテトラフルオロエチレンの多孔質フィルム等が好ましく用いられる。電池の過充電時に生じる電極の発熱を抑制する観点からは、ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面にフェロセン誘導体の薄膜が形成されてなるセパレータを用いることが好ましい。セパレータは、突刺強度が0.2N/μm厚以上0.49N/μm厚以下であり、巻回軸方向の引張強度が40MPa以上150MPa以下であることが好ましい。充放電に伴い大きく膨張・収縮する負極活物質を用いても、セパレータの損傷を抑制することができ、内部短絡の発生を抑制することができるからである。
【0049】
非水電解液は、支持電解質であるリチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液からなる。リチウム塩としては、CF3SO3Li、(CF3SO2)NLi、(C25SO22NLi、LiClO4、LiA1Cl4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCl、LiBr、LiI、LiC49SO3等が例示される。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのリチウム塩のうち、耐水分解性が優れている点から、CF3SO3Li、(CF3SO2)NLi、(C25SO22NLiを用いることが好ましい。有機溶媒としては、例えばエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。特に、非水電解液全体に対し0.5〜5重量%のビニレンカーボネート及び0.1〜1重量%のジビニルスルホン、0.1〜1.5重量%の1,4−ブタンジオールジメタンスルホネートを含有させることが充放電サイクル特性を更に向上する観点から好ましい。その理由について詳細は明らかでないが、1,4−ブタンジオールジメタンスルホネートとジビニルスルホンが段階的に分解して、正極上に被膜を形成することにより、硫黄を含有する被膜がより緻密なものになるためであると考えられる。
【0050】
以上の各部材等から構成される非水電解液二次電池は、円筒型、角型、コイン型等の形態であり得る。しかしこれらの形態に制限されるものではない。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
【0052】
〔実施例1〕
(1)正極の製造
正極活物質としてのLiCo1/3Ni1/3Mn1/32(D50=13μm)、添加剤としてのLiNi0.9Ti0.12(D50=21μm)、導電材としてのアセチレンブラック、及び結着剤としてのポリフッ化ビニリデンを、溶媒であるポリビニルピロリドンに懸濁させ正極合剤を得た。この正極合剤をアルミニウム箔からなる集電体に塗布、乾燥した後、ロール圧延及びプレスを行い、正極を得た。LiCo1/3Ni1/3Mn1/32の重量:LiNi0.9Ti0.12の重量は、87:13であった。また、LiNi0.9Ti0.12のX線回折パターンにおけるI(003)/I(104)のピーク比は0.6であった。LiNi0.9Ti0.12は、次の手順で調製した。
【0053】
Li2CO3、Ni(OH)2、TiO2を、Li:Ni:Ti=1:0.9:0.1のモル比となるように秤量した。これらを混合して湿式微粉砕機でスラリー化した後、スプレードライヤで乾燥・造粒した。得られた造粒粉を800℃で20時間焼成し、目的とするLiNi0.9Ti0.12を得た。
【0054】
(2)負極の製造
厚さ18μmの電解銅箔からなる集電体を室温で30秒間酸洗浄した。処理後、15秒間純水洗浄した。集電体の両面上にケイ素からなる粒子を含むスラリーを膜厚15μmになるように塗布し塗膜を形成した。スラリーの組成は、粒子:スチレンブタジエンラバー(結着剤):アセチレンブラック=100:1.7:2(重量比)であった。粒子の平均粒径D50は2μmであった。平均粒径D50は、日機装(株)製のマイクロトラック粒度分布測定装置(No.9320−X100)を使用して測定した。
【0055】
塗膜が形成された集電体を、以下の浴組成を有するピロリン酸銅浴に浸漬させ、電解により、塗膜に対して銅の電解めっきを行い、活物質層を形成した。電解の条件は以下のとおりとした。陽極にはDSEを用いた。電源は直流電源を用いた。
・ピロリン酸銅三水和物:105g/l
・ピロリン酸カリウム:450g/l
・硝酸カリウム:30g/l
・P比:7.7
・浴温度:50℃
・電流密度:3A/dm2
・pH:アンモニア水とポリリン酸を添加してpH8.2になるように調整した。
【0056】
電解めっきは、塗膜の厚み方向全域にわたって銅が析出した時点で終了させた。このようにして目的とする負極を得た。活物質層の縦断面のSEM観察によって該活物質層においては、活物質の粒子は、平均厚み240nmの銅の被膜で被覆されていることを確認した。また、活物質層の空隙率は30%であった。
【0057】
このようにして得られた正極及び負極を、20μm厚のポリプロピレン製セパレータを挟んで対向させた。電解液として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1:1体積%混合溶媒に1mol/lのLiPF6を溶解した溶液に対して、ビニレンカーボネートを2体積%外添したものを用い、リチウム二次電池を製造した。二次電池において、正極と負極の容量比が、充電のカットオフ電圧4.3Vにおいて1:2となるように、正極活物質及び負極活物質の量を調整した。
【0058】
〔実施例2〕
正極において、LiCo1/3Ni1/3Mn1/32の重量:LiNi0.9Ti0.12の重量を60:40とする以外は実施例1と同様にして正極を製造した。その後は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を得た。
【0059】
〔実施例3及び4〕
正極活物質としてLiMn24(D50=20μm)を用いた。そして、正極の活物質層におけるLiMn24とLiNi0.9Ti0.12との重量比を85:15(実施例3)及び68:32(実施例4)とした。これら以外は実施例1と同様にして正極を製造した。その後は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を得た。
【0060】
〔実施例5及び6〕
正極活物質としてLiCoO2(D50=8μm)を用いた。そして、正極の活物質層におけるLiCoO2とLiNi0.9Ti0.12との重量比を77:23(実施例5)及び55:45(実施例6)とした。これら以外は実施例1と同様にして正極を製造した。その後は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を得た。
【0061】
〔比較例1〕
正極において、LiNi0.9Ti0.12を用いない以外は実施例1と同様にして正極を製造した。その後は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を得た。
【0062】
〔比較例2〕
正極において、LiNi0.9Ti0.12を用いない以外は実施例3と同様にして正極を製造した。その後は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を得た。
【0063】
〔比較例3〕
正極において、LiNi0.9Ti0.12を用いない以外は実施例5と同様にして正極を製造した。その後は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を得た。
【0064】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られたリチウム二次電池について充放電を繰り返し行い、80%の容量が維持されるときのサイクル数を測定した。また、各実施例について、2サイクル目の容量密度を測定した。それらの結果を表1に示す。充放電は次の条件で行った。予備充電は0.05Cで、カットオフ電位(対Li/Li+、以下同じ)を4.6Vに設定し、定電流・定電圧とした(定電圧充電のカットオフ電流値は定電流値の1/5とした)。また、予備充電のカットオフ電位を4.6V以外に、4.3Vに設定しての予備充電も行った。予備充電に続く放電は、0.05Cで、カットオフ電位を3.0Vに設定し、定電流とした。初回以降の充電は0.5Cで、カットオフ電位を4.2Vに設定し、定電流・定電圧とした。初回以降の放電は0.5Cで、カットオフ電位を3.0Vに設定し、定電流とした。容量維持率は、予備充電に続く放電の容量に対する比率とした。2サイクル目の容量密度は、2サイクル目の充放電容量曲線から容量を求め、その値を正極活物質層の体積で除して算出した。
【0065】
【表1】


【0066】
表1に示す結果から明らかなように、各実施例で得られた電池は、比較例で得られた電池に比べて、充放電のサイクルを重ねたときの容量維持率が高い値に維持されていることが判る。この結果から、各実施例で得られた電池は、充放電のサイクル特性が良好であることが判る。特に、予備充電のカットオフ電位を4.6Vに設定した場合と4.3Vに設定した場合とでの対比から明らかなように、予備充電のカットオフ電圧を4.6Vに設定した場合の方が、容量維持率が高いことが判る。なお、実施例1及び2では、サイクル数の値に違いがあるが、いずれのサイクル数も実使用において満足すべき値である。実施例3及び4、並びに実施例5及び6についても同様である。
【0067】
また、実施例1と2との対比から明らかなように、いずれの実施例もサイクル数に関しては満足すべき結果が得られ、容量密度に関しては実施例1の方が実施例2よりも容量密度が高くなっている。つまり、実施例2よりも実施例1の方が、正極の容量密度が損なわれていない。したがって、全体としての性能を比較すると、LiNi0.9Ti0.12の使用量が実施例2よりも少ない実施例1の方が、優れていると判断できる。実施例3と4、及び実施例5と6についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明で好適に用いられる負極の一実施形態の断面構造を示す模式図である。
【符号の説明】
【0069】
10 非水電解液二次電池用負極
11 集電体
12 活物質層
12a 活物質の粒子
13 リチウム化合物の形成能の低い金属材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質を含む活物質層を有する非水電解液二次電池用正極において、該活物質層に、該活物質とは別にLiyNi1-xTix2(式中、0<x<0.7であり、1≦y≦1.1である)で表される化合物が含有されていることを特徴とする非水電解液二次電池用正極。
【請求項2】
前記活物質が、リチウム遷移金属複合酸化物(ただし、LiyNi1-xTix2(式中、0<x<0.7であり、1≦y≦1.1である)を除く)からなる請求項1記載の非水電解液二次電池用正極。
【請求項3】
前記化合物のX線回折パターンにおける(003)面と(104)面とのピーク比であるI(003)/I(104)が0.4〜0.9である請求項1又は2記載の非水電解液二次電池用正極。
【請求項4】
前記活物質の量に対する前記化合物の量の割合が5〜50重量%である請求項1ないし3のいずれかに記載の非水電解液二次電池用正極。
【請求項5】
LiyNi1-xTix2(式中、0<x<0.7であり、1≦y≦1.1である)で表される化合物からなることを特徴とする非水電解液二次電池用正極活物質の添加剤。
【請求項6】
請求項6記載の非水電解液二次電池に対して充電を行うときに、該電池を組み立てた後に初めて行う充電である予備充電のカットオフ電位を、Li/Li+を基準として4.2〜5.0Vに設定することを特徴とする非水電解液二次電池の調整方法。
【請求項7】
予備充電より後の充電である初回以降の充電のカットオフ電圧を、予備充電のカットオフ電圧と同じか又はそれよりも低い電圧に設定して充電を行う請求項6記載の非水電解液二次電池の調整方法。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれかに記載の正極を備えた非水電解液二次電池。
【請求項9】
Si又はSnを含む材料からなる負極活物質を含む活物質層を有する負極を備えた請求項8記載の非水電解液二次電池。
【請求項10】
前記負極の活物質層が、Si又はSnを含む負極活物質の粒子を含有し、該粒子の表面の少なくとも一部がリチウム化合物の形成能の低い金属材料で被覆されていると共に、該金属材料で被覆された該粒子どうしの間に空隙が形成されている請求項9記載の非水電解液二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2010−129481(P2010−129481A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305519(P2008−305519)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】