説明

非水電解液二次電池用負極材料及びこれを用いた非水電解液二次電池

【課題】急速充放電特性と高サイクル特性を併せ持つリチウムイオン二次電池用混合炭素材料を提供する。
【解決手段】下記炭素材料Aと炭素材料Bとを含む負極活物質材料。(炭素材料A)黒鉛質粒子とその表面を被覆する非晶質炭素を含む複層構造炭素材料であり、X線回折法による面間隔(d002)が3.37Å以下、Lcが900Å以上、タップ密度が0.8g/cm以上、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比R値が0.25〜0.6である炭素材料。(炭素材料B)X線回折法による面間隔(d002)が3.37Å以下、Lcが900Å以上、タップ密度が0.8g/cm以上、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比R値が0.11〜0.2である炭素材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非水電解液二次電池の負極材料に関するものである。また本発明は該負極材料を用いた非水電解液二次電池用負極、及び該負極を備える非水電解液二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンを吸蔵・放出できる正極及び負極、並びにLiPFやLiBFなどのリチウム塩を溶解させた非水電解液からなる非水系リチウム二次電池が開発され、実用に供されている。
【0003】
この電池の負極材料としては種々のものが提案されているが、高容量であること及び放電電位の平坦性に優れていることなどから、天然黒鉛、コークス等の黒鉛化で得られる人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズピッチ、黒鉛化炭素繊維等の黒鉛質の炭素材料が用いられている。
【0004】
また、一部の電解液に対して比較的安定しているなどの理由で非晶質の炭素材料も用いられている。更には、黒鉛質炭素粒子の表面に非晶質炭素を被覆または付着させ、黒鉛と非晶質炭素の特性を併せもたせた炭素材料も用いられている。
【0005】
また、特許文献1では、本来は鱗片状、鱗状、板状である黒鉛質炭素粒子に力学的エネルギー処理を与えて、黒鉛質粒子表面にダメージを与えるとともに粒子形状を球形にすることで急速充放電特性を向上させた球形化黒鉛質炭素材料が用いられ、更に、球形化黒鉛質炭素粒子の表面に非晶質炭素を被覆あるいは付着させることで、黒鉛と非晶質炭素の特性、そして急速充放電性を併せ持った複層構造の球形化炭素材料を用いることが提案されている。
【0006】
しかし、昨今水系リチウム二次電池の用途展開が図られ、従来のノート型パソコンや、移動通信機器、携帯型カメラ、携帯型ゲーム機など向けに加え、電動工具、電気自動車向けなど、従来にも増した急速充放電性を持ち同時に高サイクル特性を併せ持つ非水系リチウム二次電池が望まれている。
【0007】
サイクル特性の改善には、例えば、特許文献2で、ラマンスペクトルから得られるR値が0.2以上である多層構造を有する炭素質物粒子とX線面間隔d002が3.36〜3.60Åにある結晶性の低い非晶質炭素質粒子を負極材に用いたが非水系リチウム二次電池が提案されている。
【0008】
しかし、非晶質炭素粒子に由来する不可逆容量の増加の問題があり、更には最近のリチウム二次電池に要望されるサイクル特性及び急速充放電特性には更なる改善が必要となってきている。
【0009】
また、特許文献3では、表面が非晶質炭素で被覆された被覆黒鉛粒子と、表面が非晶質炭素で被覆されていない非被覆黒鉛粒子とが混合した負極材が提案されている。
【0010】
特許文献3の明細書中に、非被覆黒鉛粒子とは、波長5145Åのアルゴンレーザーラマン分光測定における1360cm−1付近のピーク強度(I1360)と1580cm−1付近のピーク強度(I1580)の比〔I1360/I1580〕が0.10以下であるものをいうと記載されている。
【0011】
また、特許文献3には、被覆黒鉛粒子とは、波長5145Åのアルゴンレーザーラマン分光測定における1360cm−1付近のピーク強度(I1360)と1580cm−1付近のピーク強度(I1580)の比〔I1360/I1580〕が0.13以上0.23以下であるものをいうと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】日本国特許第3534391号公報
【特許文献2】日本国特許第3291756号公報
【特許文献3】日本国特開2005−294011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、本発明者らの検討によると、波長5145Åのアルゴンレーザーラマン分光測定における1360cm−1付近のピーク強度(I1360)と1580cm−1付近のピーク強度(I1580)の比〔I1360/I1580〕が0.10以下である非被覆黒鉛粒子として、波長5145Åのアルゴンレーザーラマン分光測定における1360cm−1付近のピーク強度(I1360)と1580cm−1付近のピーク強度(I1580)の比〔I1360/I1580〕が0.13以上0.23以下である被覆黒鉛粒子を混合した負極材を用いても、本発明者らが目標としている高容量で急速充放電性、サイクル特性までには至らなかった。
【0014】
したがって、本発明は、近年の電動工具や、電気自動車の用途にも適した、高容量で、急速充放電特性、高サイクル特性を併せ持つ非水電解液二次電池用の負極材料を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明者らは、鋭意検討の結果、役割の異なる2種類の炭素材料A及び炭素材料Bの2種類の炭素材料を含む負極材料を用いることで、急速充放電特性と、サイクル特性を合わせ持った非水電解液二次電池用の電極が得られ、上記課題を解決できることを見出した。
【0016】
炭素材料Aは特に急速充放電性に優れた材を選択し、炭素材料Bは特に導電性に優れた材を選択する。但し、炭素材料A及び炭素材料Bはともに、高容量で、急速放電特性を併せ持った炭素材料でなければならない。
【0017】
高容量で、急速放電特性を併せ持ち、特に急速充放電特性に優れた炭素材料Aは,球形化黒鉛質粒子及びその表面を被覆する非晶質炭素を含む複層構造炭素材料であり、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.37Å以下、Lcが900Å以上、タップ密度が0.8g/cm以上、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.25〜0.6である炭素材料である。
【0018】
高容量で、急速放電特性を併せ持ち、特に電子伝導性に優れた炭素材料Bは、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.37Å以下、Lcが900Å以上、タップ密度が0.8g/cm以上、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.11〜0.2である炭素材料である。
【0019】
すなわち本発明は、以下の通りである。1.以下の炭素材料Aおよび炭素材料Bを含む非水電解液二次電池用負極材料。
(炭素材料A)黒鉛質粒子及びその表面を被覆する非晶質炭素を含む複層構造炭素材料であり、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.37Å以下、Lcが900Å以上、タップ密度が0.8g/cm以上、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.25〜0.6である炭素材料
(炭素材料B)X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.37Å以下、Lcが900Å以上、タップ密度が0.8g/cm以上、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.11〜0.2である炭素材料
2.炭素材料Aと炭素材料Bの平均粒径の比(炭素材料Aの平均粒径/炭素材料Bの平均粒径)が0.7〜1.3の範囲内にある前項1に記載の非水電解液二次電池用負極材料。3.炭素材料A及び炭素材料Bの総量に対する炭素材料Bの割合が30〜70重量%である前項1又は2に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
4.炭素材料(A)に用いる黒鉛質粒子のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.37Å以下、Lcが900Å以上、タップ密度が0.8g/cm以上、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.2〜0.5である前項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
5.炭素材料(B)が球形化黒鉛質粒子とその表面を被覆する黒鉛質炭素を含む複層構造炭素材料である前項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
6.球形化黒鉛質粒子のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.37Å以下、Lcが900Å以上、タップ密度が0.8g/cm以上、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.2〜0.5の範囲である前項5に記載の非水電解液二次電池用負極材料。

7.炭素材料AのX線広角回折法による菱面体黒鉛層の配向に基づく101面の強度3R(101)と六方晶系黒鉛層の配向に基づく101面の強度2H(101)との比3R/2Hが0.1以上である前項1〜6のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
8.炭素材料Aの比表面積が0.5〜8m/gである前項1〜7のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
9.炭素材料Aに用いる黒鉛質粒子の、フロー式粒子解析計で求められる平均円形度が0.88以上である前項1〜8のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
10.炭素材料Bの比表面積が0.5〜8m/gである前項1〜9のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
11.炭素材料Bに用いる球形化黒鉛質粒子の、フロー式粒子解析計で求められる平均円形度が0.88以上である前項1〜10のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負
極材料。
12.炭素材料A及び炭素材料Bの水銀圧入法による10nm〜100000nmの範囲の細孔容量が、0.4ml/g以上である前項1〜11のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
13.炭素材料Aの平均粒径が2〜30μmの範囲である前項1〜12のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
14.炭素材料Bの平均粒径が2〜30μmの範囲であることを特徴とする前項1〜13のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
15.炭素材料Aに用いる黒鉛質粒子の表面を被覆する非晶質炭素のX線広角回折法によ
る002面の面間隔(d002)が3.40Å以上、Lcが500Å以下であることを特徴とする前項1〜14のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
16.前項1〜15のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料及び結着樹脂を含有する負極層、並びに集電体を含む非水電解液二次電池用負極。
17.前項16に記載の負極、リチウムイオンを吸蔵放出できる正極及び非水電解液を備える非水電解液二次電池。
【発明の効果】
【0020】
本発明の非水電解液二次電池用負極材料を電極に用いた非水電解液二次電池は、急速充放電特性と高サイクル特性を併せ持った優れた性能を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の非水電解液二次電池用負極材料(以下、本発明の負極材料ともいう)は、以下の炭素材料Aおよび炭素材料Bを含む混合炭素材料である。(炭素材料A)黒鉛質粒子及びその表面を被覆する非晶質炭素を含む複層構造炭素材料であり、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.37Å以下、Lcが900Å以上、タップ密度が0.8g/cm以上、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.25〜0.6である炭素材料
(炭素材料B)X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.37Å以下、Lcが900Å以上、タップ密度が0.8g/cm以上、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.11〜0.2である炭素材料
【0022】
[炭素材料A]
(a)X線広角回折法による002面の面間隔(d002)
炭素材料AのX線広角回折法による002面の面間隔(d002)は、3.37Å以下でLcが900Å以上である。X線広角回折法による002面の面間隔(d002)は、実施例で後述する方法により測定する。
【0023】
X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.37Å以下でLcが900Å以上であることは、この炭素材料の粒子の表面を除くほとんどの部分の結晶性が高いということであり、非晶質炭素材料に見られるような不可逆容量が大きいことによる低容量化を生じない高容量負極材料となる炭素材料であることを示す。
【0024】
(b)タップ密度
炭素材料Aのタップ密度は0.8g/cm以上であり、0.85g/cm以上であることが好ましい。タップ密度は、実施例で後述する方法により測定する。タップ密度が0.8/cm以上であるということは、炭素材料Aが球状を呈していることを示している。
【0025】
また、タップ密度が0.8g/cm未満であるということは炭素材料Aの原料である球形黒鉛質粒子が充分な球形粒子となっていないことを示し、電極内での連続した空隙が充分確保されず、空隙に保持ざれた電解液内のLiイオンの移動性が落ちることで、急速充放電特性が低下してしまう。
【0026】
(c)ラマンR値
炭素材料Aのアルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値は0.25〜0.6であり、0.25〜0.5であることが好ましく、0.25〜0.4であること
がより好ましい。
【0027】
アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.25以上であるということは、黒鉛質炭素粒子の表面に非晶質炭素質が被覆或された複層構造炭素材料であること、且つ、被覆される前の球形黒鉛質炭素粒子表面が、力学的エネルギー処理によるダメージにより、微細なクラックや欠損、構造欠陥などが作られていることを示している。
【0028】
本発明者らの検討では、電極用複層構造炭素材料のラマンR値が0.25以下である炭素材料を用いた場合は、目的とする急速充放電特性に到達しないことが分かっている。複層構造炭素材料のラマンR値は、非晶質炭素を被覆する前の黒鉛質炭素のラマンR値と、被覆非晶質炭素のラマンR値との影響を受ける。複層構造炭素材料のラマンR値が低いということは、被覆する前の黒鉛質炭素のラマンR値が低いということで、黒鉛質炭素粒子の力学的エネルギー処理において粒子表面に充分なダメージを受けた球状化粒子となっていないことを表し、ダメージによる黒鉛質粒子表面の微細なクラックや欠損、構造欠陥などのLiイオンの受け入れもしくは放出の場所の量が少ないことでLiイオンの急速充放電性が悪くなる。
【0029】
また、炭素材料AのラマンR値が0.6より大きいということは、黒鉛質粒子を被覆している非晶質炭素の量が多いことを表し、非晶質炭素量の持つ不可逆容量の大きさの影響が大きくなり、その結果電池容量が小さくなってしまう。
【0030】
すなわち、炭素材料Aは扁平な黒鉛粒子が折り曲げや巻き込き、角取りをされながら球形化されると同時に粒子表面に微細なクラックや欠損、構造欠陥などが形成された黒鉛質粒子を非晶質炭素が被覆された材料である。
【0031】
また、炭素材料Aは、非晶質炭素のもつ高いLiイオンの受け入れ性と、核となる黒鉛質粒子表面の微細なクラックや欠損、構造欠陥による黒鉛内部結晶へのLiイオンの出入りのしやすさと球形化された粒子であることによって電極内で連通した空隙が確保できることによるLiイオンの良移動性との相乗効果で急速充放電性を向上させた炭素材料である。
【0032】
また同時に、炭素材料Aは、粒子の表面以外の粒子本体が黒鉛質であることでの高容量、被覆された非晶質炭素による電解液との過剰な反応の抑制効果による低不可逆容量性も併せ持った負極用炭素材料である。
【0033】
(d)3R/2H
X線広角回折法は、粒子全体の結晶性を表す指標として用いられ、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルは粒子の表面の性状を現す指標として利用されている。X線広角回折法は後述する実施例の方法により測定する。炭素材料Aは、X線広角回折法による菱面体黒鉛層の配向に基づく101面の強度3R(以下、菱面体3Rともいう)(101)と六方晶系黒鉛層の配向に基づく101面の強度2H(以下、六方晶体2Hともいう)(101)との比3R/2Hが0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることが更に好ましい。
【0034】
菱面体結晶構造とは、黒鉛の網面構造の積み重なりが3層おきに繰り返される結晶形態である。また、六方晶結晶構造とはとは黒鉛の網面構造の積み重なりが2層おきに繰り返される結晶形態である。菱面体結晶構造3Rの比率の多い結晶形態を示す黒鉛質粒子の場合、菱面体結晶構造3Rの比率の少ない黒鉛粒子に比べLiイオンの受け入れ性が高い。
【0035】
(e)BET法による比表面積
炭素材料AのBET法による比表面積は0.5〜8m/gの範囲であることが好ましく、1〜6m/gの範囲であることがより好ましく、2〜5m/gの範囲であることが更に好ましい。BET法による比表面積は、後述する実施例の方法により測定する。
【0036】
炭素材料Aの比表面積を0.5m/g以上とすることで、Liイオンの受け入れ性が向上し、8m/g以下とすることで、不可逆容量の増加による電池容量の減少を防ぐことができる。
【0037】
(e)細孔容量
炭素材料Aの水銀圧入法による10nm〜100000nmの範囲の細孔容量は、0.4ml/g以上であることが好ましく、0.5ml/g以上であることがより好ましい。細孔容量は後述する実施例の方法により測定する。細孔容量を0.4ml/g以上とすることで、Liイオンの出入りの面積が大きくなる。
【0038】
(g)平均粒径
炭素材料Aの平均粒径は2〜30μmの範囲であることが好ましく、4〜20μmの範囲であることがより好ましく、6〜15μmの範囲であることがさらに好ましい。平均粒径は、後述する実施例の方法により測定する。
【0039】
平均粒径を2μm以上とすることにより、比表面積が大きくなることによる不可逆容量の増加を防ぐことができる。また、30μm以下とすることにより、電解液と炭素材料Aの粒子との接触面積が減ることによる急速充放電性の低下を防ぐことができる。
【0040】
(h)黒鉛質粒子の002面の面間隔(d002)
炭素材料Aに用いる、非晶質炭素により被覆する前の黒鉛質粒子は、X線回析法による002面の面間隔(d002)は、3.37Å以下、Lcが900Å以上であることが好ましい。非晶質炭素により被覆する前の黒鉛質粒子の002面の面間隔(d002)を3.37Å以下、Lcを900Å以上とすることにより、不可逆容量の増大による低容量化を生じにくい高容量電極が得られる。
【0041】
(i)黒鉛質粒子のタップ密度
炭素材料Aに用いる、非晶質炭素により被覆する前の黒鉛質粒子のタップ密度は、0.8g/cm以上であることが好ましい。非晶質炭素により被覆する前の黒鉛質粒子のタップ密度を0.8g/cm以上とすることにより、高容量で、急速放電特性を併せ持った炭素材料を得ることができる。
【0042】
(j)黒鉛質粒子のラマンR値
炭素材料Aに用いる、非晶質炭素により被覆する前の黒鉛質粒子のアルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値は、0.2〜0.5であることが好ましく、0.2〜0.4であることがより好ましい。
【0043】
ラマンR値が0.2以上であるということは、黒鉛質粒子を球形化する過程で力学的エネルギー処理を与えることによるダメージにより、黒鉛質粒子表面に微細なクラックや欠損、構造欠陥などが作られていることを示している。また、ラマンR値が0.5以下であることにより、黒鉛質粒子の結晶構造自体を破壊するような過度の力学的エネルギー処理までは至っておらず、黒鉛質粒子の結晶構造が破壊されることで生じる不可逆容量の増加による電池容量の低下を生じないことを示している。
【0044】
(k)黒鉛質粒子の平均円形度
平均円形度は、液中に分散させた数千個の粒子を、CCDカメラを用いて1個ずつ撮影し、その平均的な形状パラメータを算出することが可能なフロー式粒子解析計において、10〜40μmの範囲の粒子を対象として、後述する実施例の方法により測定する。
【0045】
平均円形度は、粒子面積相当円の周囲長を分子とし、撮影された粒子投影像の周囲長を分母とした比率で、粒子像が真円に近いほど1に近づき、粒子像が細長い或いはでこぼこしているほど小さい値になる。
【0046】
炭素材料Aに用いる、非晶質炭素により被覆する前の黒鉛質粒子の平均円形度は、0.
88以上であることが好ましい。平均円形度を当該範囲とすることで、高容量で、急速放電特性を併せ持った炭素材料を得ることができる。また、炭素材料Aに用いる、非晶質炭素により被覆する前の黒鉛質粒子は、球形化黒鉛質粒子であることが好ましい。
【0047】
(l)非晶質炭素の002面の面間隔(d002)
炭素材料Aに用いる、黒鉛質粒子の表面を被覆する非晶質炭素のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)は3.40Å以上、Lcが500Å以下であることが好ましい。002面の面間隔(d002)を3.40Å以下、Lcが500Å以上とすることで、Liイオンの受け入れ性を向上することができる。
【0048】
(m)炭素材料Aの製造方法
炭素材料Aは、上記性状を具備していれば、どのような製法で作製しても問題ないが、例えば、特許第3534391号公報に記載の電極用複層構造炭素材料を用いることができる。具体的には、例えば、被覆前の黒鉛質粒子としては、鱗片、鱗状、板状および塊状の天然で産出される黒鉛、並びに石油コークス、石炭ピッチコークス、石炭ニードルコークスおよびメソフェーズピッチなどを2500℃以上に加熱して製造した人造黒鉛に、力学的エネルギー処理を与えることで製造することができる。
【0049】
力学的エネルギー処理は、例えば、ケーシング内部に多数のブレードを設置したローターを有する装置を用い、そのローターを高速回転することにより、その内部に導入した前記天然黒鉛および人造黒鉛に対し、衝撃圧縮、摩擦およびせん断力等の機械的作用を繰り返し与えることで製造できる。
【0050】
炭素材料Aは、前記黒鉛質粒子に石油系や石炭系のタールおよびピッチ、並びにポリビニルアルコール、ポリアクリルニトリル、フェノール樹脂およびセルロース等の樹脂を必要により溶媒等を使い混合し、非酸化性雰囲気で好ましくは500℃〜2500℃、より好ましくは700℃〜2000℃、特に好ましくは800〜1500℃で焼成することで得られる。焼成後必要により粉砕分級を行うこともある。
【0051】
黒鉛粒子に被覆される非晶質炭素の量である被覆率は、0.1〜20%の範囲であることが好ましく、0.2〜15%の範囲であることがより好ましく、0.4〜10%の範囲であることが特に好ましい。被覆率は、後述する実施例の方法により求めることができる。
【0052】
被覆率を0.1%以上とすることで、非晶質炭素の持つLiイオンの高受けいれ性を充分利用することができ、良好な急速充電性が得られる。また、被覆率を20%以下とすることで、非晶質炭素量の持つ不可逆容量の大きさの影響が大きくなることによる容量の低下を防ぐことができる。
【0053】
[炭素材料B]
(a)002面の面間隔(d002)
炭素材料BのX線広角回折法による002面の面間隔(d002)は、3.37Å以下、Lcが900Å以上である。X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.37Å以下、Lcが900Å以上であることは、炭素材料Bの粒子の表面を除く大部分の結晶性が高いということであり、非晶質炭素材料に見られるような不可逆容量が大きいことによる低容量化を生じない高容量電極となる炭素材料であることを示す。
【0054】
(b)タップ密度
炭素材料Bのタップ密度は、0.8g/cm以上であり、0.85g/cm以上が好ましい。
【0055】
炭素材料Bのタップ密度が0.8g/cm以上であるということは、該炭素材料Bが球状を呈していることを示している。タップ密度が0.8g/cmより小さい場合、炭素材料Bの原料である球形黒鉛質粒子が充分な球形粒子となっていないことを示す。タップ密度が0.8g/cmより小さいと、電極内で充分な連続空隙が確保されず、空隙に保持ざれた電解液内のLiイオンの移動性が落ちることで、急速充放電特性が低下してしまう。
【0056】
(c)ラマンR値
炭素材料Bのアルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値は0.11〜0.2である。
【0057】
ラマンR値が0.11〜0.2であるということは、炭素材料Bは、球形化黒鉛質粒子とその表面を被覆する黒鉛質炭素を含む複層構造炭素材料であることが好ましく、球形化黒鉛質炭素粒子の表面に被覆形成されている炭素が炭素材料Aのような非晶質炭素ではなく、黒鉛化された黒鉛質炭素であるということを示している。
【0058】
また、力学的エネルギー処理によるダメージにより、被覆される前の球形化黒鉛質炭素粒子の表面に、微細なクラックや欠損、構造欠陥などが作られていることで、一般的材料が黒鉛化後に示すラマンR値0.11以下とはなっていない。
【0059】
すなわち、炭素材料Bは、球扁平な黒鉛粒子が折り曲げや巻き込み、角取りをされながら球形化されると同時に粒子表面に微細なクラックや欠損、構造欠陥などが形成された球形化黒鉛質粒子およびその表面を被覆する黒鉛質炭素を含む材料であることが好ましい。
【0060】
球形化黒鉛質粒子とその表面を被覆する黒鉛質炭素を含む複層構造炭素材料である炭素材料Bは、球形化黒鉛質粒子及びその表面を被覆する黒鉛質炭素の両方が有する高い電子伝導性、そして、核となる黒鉛質粒子表面の微細なクラックや欠損、構造欠陥による黒鉛バルク結晶へのLiイオンの出入りのしやすさ、及び球形化された粒子であることでの電極内での連続した空隙の確保によるLiイオンの良移動性を併せ持つ高用容量で、電子伝導性、急速放電特性に優れた炭素材料である。
【0061】
(d)BET法による比表面積
炭素材料BのBET法による比表面積は8m/g以下であることが好ましく、6m/g以下であることがより好ましい。また、0.5m/g以上であることが好ましく、1m/g以上であることがより好ましい。
【0062】
比表面積を8m/g以下とすることにより、不可逆容量の増大による容量の低下を防
ぐことができる。また、比表面積を0.5m/g以上とすることにより、リチウムを受け入れる、或いは放出する面積が大きくなり、急速充電、或いは急速放電性に優れた電極とすることができる。
【0063】
(e)細孔容量
炭素材料Bの水銀圧入法による10nm〜100000nmの範囲の細孔容量は、0.4ml/g以上であることが好ましい。細孔容量を0.4ml/g以上とすることで、Liイオンの出入りの面積が大きくなる。
【0064】
(f)平均粒径
炭素材料Bの平均粒径は2〜30μmの範囲であることが好ましく、4〜20μmの範囲であることがより好ましく、6〜15μmの範囲であることがさらに好ましい。平均粒径を2μm以上とすることで、比表面積が大きくなることによる不可逆容量の増加を防ぐことができる。また、平均粒径を30μm以下とすることで、電解液と炭素材料Bの粒子との接触面積が減ることによる急速充放電性の低下を防ぐことができる。
【0065】
(g)球形化黒鉛質粒子の002面の面間隔(d002)
炭素材料Bに用いる、黒鉛質炭素により被覆する前の球形化黒鉛質粒子のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)は、3.37Å以下、Lcが900Å以上であることが好ましい。黒鉛質炭素により被覆する前の球形化黒鉛質粒子の002面の面間隔(d002)を3.37Å以下、Lcを900Å以上とすることにより、不可逆容量の増大による低容量化を生じにくい高容量電極が得られる。
【0066】
(h)球形化黒鉛質粒子のタップ密度
炭素材料Bに用いる、黒鉛質炭素により被覆する前の球形化黒鉛質粒子のタップ密度は、0.8g/cm以上であることが好ましい。
【0067】
黒鉛質炭素により被覆する前の球形化黒鉛質粒子のタップ密度を0.8g/cm以上とすることにより、高容量で、急速放電特性を併せ持った炭素材料を得ることができる。
【0068】
(i)球形化黒鉛質粒子のラマンR値
炭素材料Bに用いる、黒鉛質炭素により被覆する前の球形化黒鉛質粒子のアルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値は、0.2〜0.5であることが好ましく、0.2〜0.4であることがより好ましい。
【0069】
黒鉛質炭素により被覆する前の球形化黒鉛質粒子のラマンR値が0.2〜0.5の範囲にあるということは、扁平な黒鉛粒子が折り曲げや巻き込み、角取りをされながら球形化されると同時に粒子表面に微細なクラックや欠損、構造欠陥などが作られていることを示している。
【0070】
すなわち、前記球形化黒鉛粒子は、球形化されると同時に粒子表面に微細なクラックや欠損、構造欠陥などが形成された黒鉛質粒子であることを示している。
【0071】
また、前記球形化黒鉛粒子は、その表面における微細なクラックや欠損、構造欠陥による黒鉛バルク結晶へのLiイオンの入りやすさ、及び球形化黒鉛球形化された粒子であることでの電極内での空隙確保によるLiイオンの良移動性の相乗効果で急速充放電性を向上させた炭素材料であることを示している。
【0072】
(j)球形化黒鉛質粒子の平均円形度
炭素材料Bに用いる、黒鉛質炭素により被覆する前の球形化黒鉛質粒子は、前述のようにして測定した平均円形度が0.88以上であることが好ましい。黒鉛質炭素により被覆する前の球形化黒鉛質粒子の平均円形度を0.88以上とすることにより、高容量で、急速放電特性を併せ持った炭素材料を得ることができる。
【0073】
(k)黒鉛質炭素の002面の面間隔(d002)
炭素材料Bに用いる、黒鉛質粒子の表面を被覆する黒鉛質炭素のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)は3.40Å以下、Lcが500Å以上であることが好ましい。002面の面間隔(d002)を3.40Å以下、Lcを500Å以上とすることにより、炭素材料Bの電子伝導性の向上、及び不可逆容量の低減が可能となる。
【0074】
(l)炭素材料Bの製造方法
炭素材料Bは、上記性状を具備していれば、どのような製法で作製しても問題ないが、例えば、特許第3534391号公報に記載の電極用複層構造炭素材料をそのまま、または1500℃以上で焼成することで得ることができる。
【0075】
具体的には、被覆前の球形化黒鉛質粒子は、例えば、鱗片、鱗状、板状および塊状の天然で産出される黒鉛、並びに石油コークス、石炭ピッチコークス、石炭ニードルコークスおよびメソフェーズピッチなどを2500℃以上に加熱して製造した人造黒鉛に、前述のような力学的エネルギー処理を与えることで製造することができる。
【0076】
炭素材料Bが球形化黒鉛質粒子とその表面を被覆する黒鉛質炭素を含む複層構造炭素材料である場合、前記球形化黒鉛質粒子に、石油系および石炭系のタールおよびピッチ、並びにポリビニルアルコール、ポリアクリルニトリル、フェノール樹脂およびセルロース等の樹脂を必要により溶媒等を使い混合し、非酸化性雰囲気で好ましくは1500℃以上、より好ましくは1800℃、特に好ましくは2000℃以上で焼成することで得られる。焼成後、必要により粉砕分級を行うこともある。
【0077】
球形化黒鉛粒子を被覆している黒鉛質炭素の量である被覆率は、0.1〜50%の範囲であることが好ましく、0.5〜30%の範囲であることがより好ましく、1〜20%の範囲であることが特に好ましい。
【0078】
被覆率を0.1%以上とすることで、黒鉛質炭素で被覆したことで得られる不可逆容量の低減効果、すなわち核となる球形化黒鉛質粒子の持つ不可逆容量を黒鉛質炭素で被覆することで生じる不可逆容量の低減効果を充分に生かすことができる。また、被覆率を50%以下とすることで、焼成後、被覆黒鉛質炭素による粒子同士結着力が強くることにより焼成後に粒子の戻すために行う粉砕で、粉砕回転数を高める、多段粉砕にする等の操作が必要となるのを防ぐことができる。また、被覆率を50%以下とすることで、前記被覆黒鉛質炭素による粒子同士結着力が強くなることに伴い黒鉛質炭素被覆黒鉛粒子のBET法比表面積が増加して不可逆容量が増加するのを防ぐことができる。
【0079】
以上述べたように、炭素材料Aは黒鉛粒子及びその表面を被覆する非晶質炭素を含む複層構造炭素黒材料である。また、炭素材料Bは、球形化黒鉛粒子及びその表面を被覆する黒鉛質炭素を含む複層構造炭素黒材料であることが好ましい。
【0080】
[非水電解液二次電池用負極材料]
(a)炭素材料A及び炭素材料Bの混合割合
本発明の負極材料は、上記の炭素材料A及び炭素材料を含む混合材料である。本発明の負極材料において、炭素材料A及び炭素材料Bの総量に対する炭素材料Bの割合は10〜90重量%とすることが好ましく、20〜80重量%とすることがより好ましく、30〜
70重量%とすることが特に好ましい。
【0081】
炭素材料A及び炭素材料Bの総量に対する炭素材料Bの割合を90重量%以下とすることで、炭素材料Aの特に優れた特性である被覆された非晶質炭素由来の急速充電性が小さくなるのを防ぎ、良好な急速充電特性が得られる。また、炭素材料Bの割合を10重量%以上とすることで、炭素材料Bの特に優れた特性である電子伝導性が充分に生かした電極となり、十分なサイクル特性が得られる。
【0082】
(b)炭素材料A及び炭素材料Bの平均粒径の比
混合する炭素材料Aと炭素材料Bの平均粒径の比(炭素材料Aの平均粒径/炭素材料Bの平均粒径)は0.7〜1.3の範囲にあることが好ましく、0.8〜1.2の範囲内にあることがより好ましい。
【0083】
炭素材料Aと炭素材料Bの平均粒径の差が大きいと、混合炭素材料の粒度分布が広くなってしまい、混合炭素材料を電極とした場合に、粒子間の空隙が、小さい粒径の粒子で埋められてしまい、電解液の保持量が減少してしまい、Liイオンが移動しにくくなってしまう。
【0084】
これに対し、混合する炭素材料の平均粒径の差が小さい、すなわち、混合する炭素材料Aと炭素材料Bの平均粒径の比が0.7〜1.3の範囲にあると混合した炭素材料は粒度分布がシャープとなり、粒子間の空隙を埋めるほどの小さい粒子の量が少なく、当該炭素材料を電極とした場合に電解液を保持する充分な粒子間空隙を確保することができる。
【0085】
[負極]
本発明の負極材料を用いて負極を作製するには、負極材料に結着樹脂を配合したものを水性または有機系媒体でスラリーとし、必要によりこれに増粘材を加えて集電体に塗布し、乾燥すればよい。
【0086】
結着樹脂としては、非水電解液に対して安定で、かつ非水溶性のものを用いるのが好ましい。例えば、スチレン、ブタジエンゴム、イソプレンゴムおよびエチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートおよび芳香族ポリアミド等の合成樹脂;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体やその水素添加物、スチレン・エチレン・ブタジエン、スチレン共重合体、スチレン・イソプレンおよびスチレンブロック共重合体並びにその水素化物等の熱可塑性エラストマー;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、およびエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニデンフルオライド、ポリペンタフルオロプロピレンおよびポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素化高分子などを用いることができる。有機系媒体としては、例えば、N−メチルピロリドンおよびジメチルホルムアミドを挙げることができる。
【0087】
結着樹脂は、負極材料100重量部に対して、通常は0.1重量部以上、好ましくは0.2重量部以上用いるのが好ましい。結着樹脂の割合を負極材料100重量部に対して0.1重量部以上とすることにより、負極材料相互間や負極材料と集電体との結着力が十分となり、負極から負極材料が剥離することによる電池容量の減少およびリサイクル特性の悪化を防ぐことができる。
【0088】
また、結着樹脂は負極材料100重量部に対して通常は10重量部以下、好ましくは7重量部以下となるように用いるのが好ましい。結着樹脂の割合を負極材料100重量部に対して10重量部以下とすることで、負極の容量の減少を防ぎ、かつリチウムイオンの負
極材料への出入が妨げられるなどの問題を防ぐことができる。
【0089】
スラリーに添加する増粘材としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性セルロース類、ポリビニルアルコール並びにポリエチレングリコール等を用いればよい。なかでも好ましいのはカルボキシメチルセルロースである。増粘材は負極材料100重量部に対して、通常は0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜7重量部となるように用いるのが好ましい。
【0090】
負極集電体としては、従来からこの用途に用い得ることが知られている、例えば、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル、チタンおよび炭素などを用いればよい。集電体の形状は通常はシート状であり、その表面に凹凸をつけたもの、ネットおよびパンチングメタルなどを用いるものも好ましい。
【0091】
集電体に負極材料と結着樹脂のスラリーを塗布・乾燥した後は、加圧して集電体上に形成された電極の密度を大きくし、もって負極層単位体積当たりの電池容量を大きくするのが好ましい。電極の密度は1.2〜1.8g/cmの範囲にあることが好ましく、1.3〜1.6g/cmであることがより好ましい。
【0092】
電極密度を1.2g/cm以上とすることで、電極の厚みの増大に伴う電池の容量の低下を防ぐことができる。また、電極密度を1.8g/cm以下とすることで、電極内の粒子間空隙が減少に伴い空隙に保持される電解液量が減り、Liイオンの移動性が小さくなり急速充放電性が小さくなるのを防ぐことができる。
【0093】
[非水電解液二次電池]
本発明に係る非水電解液二次電池は、上記の負極を用いる以外は、常法に従って作成することができる。正極材料としては、例えば、基本組成がLiCoOで表されるリチウムコバルト複合酸化物、LiNiOで表されるリチウムニッケル複合酸化物、LiMnOおよびLiMnで表されるリチウムマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物、二酸化マンガン等の遷移金属酸化物、並びにこれらの複合酸化物混合物等を用いればよい。さらには、TiS、FeS、Nb、Mo、CoS、V、CrO、V、FeO、GeOおよびLiNi0.33Mn0.33Co0.33等を用いればよい。
【0094】
前記正極材料に結着樹脂を配合したものを適当な溶媒でスラリー化して集電体に塗布・乾燥することにより正極を作製できる。なおスラリー中にはアセチレンブラックおよびケッチェンブラック等の導電材を含有させるのが好ましい。また所望により増粘材を含有させてもよい。増粘材および結着樹脂としては、この用途に周知のもの、例えば、負極の作成に用いるものとして例示したものを用いればよい。
【0095】
正極材料100重量部に対する配合比率は、導電剤は0.5〜20重量部が好ましく、特に1〜15重量部が好ましい。増粘材は0.2〜10重量部が好ましく、特に0.5〜7重量部が好ましい。
【0096】
結着樹脂は水でスラリー化するときは0.2〜10重量部、特に0.5〜7重量部が好ましく、N−メチルピロリドンなどの結着樹脂を溶解する有機溶媒でスラリー化するときには0.5〜20重量部、特に1〜15重量部が好ましい。
【0097】
正極集電体としては、例えば、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブおよびタンタル等並びにこれらの合金が挙げられる。なかでもアルミニウム、チタン
およびタンタル並びにその合金が好ましく、アルミニウムおよびその合金が最も好ましい。
【0098】
電解液も従来周知の非水溶媒に種々のリチウム塩を溶解させたものを用いることができる。非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートおよびビニレンカーボネート等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル、クラウンエーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメチルテトラヒドロフランおよび1,3−ジオキソラン等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテルなどを用いればよい。通常はこれらをいくつか併用する。なかでも環状カーボネートと鎖状カーボネート、又はこれに更に他の溶媒を併用するのが好ましい。
【0099】
また、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、無水コハク酸、無水マレイン酸、プロパンスルトン、ジエチルスルホン等の化合物やジフルオロリン酸リチウムのようなジフルオロリン酸塩等が添加されていても良い。更に、ジフェニルエーテル、シクロヘキシルベンゼン等の過充電防止剤が添加されていても良い。
【0100】
非水溶媒に溶解させる電解質としては、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)およびLiC(CFSOなどを用いればよい。電解液中の電解質の濃度は通常は0.5〜2モル/リットル、好ましくは0.6〜1.5モル/リットルとすることが好ましい。
【0101】
正極と負極との間に介在させるセパレーターには、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンの多孔性シートや不織布を用いるのが好ましい。
【0102】
本発明に係る非水電解液二次電池は、負極/正極の容量比を、1.01〜1.5に設計することが好ましく、1.2〜1.4に設計することがより好ましい。
【実施例】
【0103】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0104】
なお、本明細書における粒径、タップ密度、BET法比表面積、真密度、X線回折、複層構造炭素粉材料の被覆率、ラマンRなどの測定は次記により行った。
【0105】
粒径;ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの2(容量)%水溶液約1mlに、炭素粉末約20mgを加え、これをイオン交換水約200mlに分散させたものを、レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所製 LA−920)を用いて体積基準粒度分布を測定し、平均粒径(メジアン径)、10%積算部のd10粒径、90%積算部のd90粒径を求めた。測定条件は超音波分散1分間、超音波強度2、循環速度2、相対屈折率1.50とした。
【0106】
タップ密度;粉体密度測定器タップデンサーKYT−3000((株)セイシン企業社製)を用いて測定した。目開き300μmの篩から20ccのタップセルに炭素粉末を落下させ、セルに満杯に充填したのち、ストローク長10mmのタップを1000回行って、そのときの密度をタップ密度とした。
【0107】
平均円形度;フロー式粒子像分析装置(東亜医療電子社製FPIA−2000)を使用
し、円相当径による粒径分布の測定および円形度の算出を行った。分散媒としてイオン交換水を使用し、界面活性剤としてポリオキシエチレン(20)モノラウレートを使用した。円相当径とは、撮影した粒子像と同じ投影面積を持つ円(相当円)の直径であり、円形度とは、相当円の周囲長を分子とし、撮影された粒子投影像の周囲長を分母とした比率である。測定した10〜40μmの範囲の粒子の円形度を平均し、平均円形度とした。
【0108】
BET法比表面積;大倉理研社製 AMS−8000を用いて測定した。250℃で予備乾燥し、更に30分間窒素ガスを流したのち、窒素ガス吸着によるBET1点法により測定した。
【0109】
細孔容量(10nm〜100000nmの範囲の細孔容量);水銀ポロシメーター(機種名:マイクロメリティックス社製・オートポア9220)を用い水銀圧入法により実施した。試料を5ccパウダー用セルに封入し水銀ポロシメーターで真空下(50・Hg)室温(24℃)にて10分間の前処理(脱気)を行った後、水銀圧力を4.0psiaから40,000psiaに上昇させ、次いで15psiaまで降下させた(全測定点数120ポイント)。測定した120ポイントでは、30psia迄は5秒間、それ以降は各圧力10秒間の平衡時間の後、水銀の圧入量を測定した。
【0110】
こうして得られた水銀圧入曲線から、Washburnの方程式(D=−(1/P)4γcosψ)を用いて細孔分布を算出した。尚、Dは細孔直径、Pはかかる圧力、γは水銀の表面張力((485dynes/cmを使用)、ψは接触角(140゜を使用))を示す。
【0111】
真密度;ピクノメーターを用い、媒体として界面活性剤の0.1%水溶液を用いて測定した。
【0112】
X線回折;炭素粉末に総量の約15重量%のX線標準高純度シリコン粉末を加えて混合したものを材料とし、グラファイトモノクロメーターで単色化したCuKα線を線源とし、反射式ディフラクトメーター法で広角X線回折曲線を測定し、学振法を用いて面間隔(d002)及び結晶子の大きさ(Lc)を求め、菱面体晶系黒鉛層の配向に基づく101面の・BR>ュ度3R(101)と六方晶系黒鉛層の配向に基づく101面の強度2H(1
01)の比から3R/2Hを求めた。
【0113】
複素構造炭素材料の被覆率;次式により求めた。
被覆率(重量%)=100−(K×D)/((K+T)×N)×100
この式において、Kはタールピッチとの混合に供した球形黒鉛質炭素の重量(Kg)、Tは球形黒鉛質炭素との混合に供した被覆原料であるタールピッチの重量(kg)、DはKとTの混合物のうち実際に焼成に供した混合物量、Nは焼成後の被覆球形黒鉛質炭素材料の重量を示す。
【0114】
ラマン測定;日本分光社製NR−1800を用い、波長514.5nmのアルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析において、1580cm−1の付近のピークPAの強度IA、1360cm−1の範囲のピークPBの強度IBを測定し、その強度の比R=IB/IAを求めた。試料の調製にあたっては、粉末状態のものを自然落下によりセルに充填し、セル内のサンプル表面にレーザー光を照射しながら、セルをレーザー光と垂直な面内で回転させて測定を行った。
【0115】
プレス荷重;幅5cmに塗布した電極を、ロードセル付きの250mφロールプレスにより目的とする密度に調整し、このとき必要とした荷重をロードセルで測定し、この値をプレス荷重とした。
【0116】
[実施例1]
(炭素材料Aの作製)
原料黒鉛として、天然に産出する黒鉛で、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.46g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.13、平均粒径28.7μm、真密度2.27g/cmにある鱗片状黒鉛粒子を用いた。
【0117】
前記鱗片状黒鉛粒子を、(株)奈良機械製作所製社製ハイブリダイゼーションシステムを用いて、ローターの周速度60m/秒、10分の条件で20kg/時間の処理速度で連続的に処理することで、黒鉛粒子表面にダメージを与えながら球形化処理を行った。その後更に分級処理により微粉を除去した。
【0118】
得られた球形化黒鉛質炭素は、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.83g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.24、平均粒径11.6μm、BET法比表面積7.7m/g、真密度2.27g/cm、平均円形度が、0.909であった。
【0119】
次に前記球形化黒鉛質炭素100重量部と石炭由来のタールピッチ9.4重量部を捏合機で160℃にて加熱混合し、次いで非酸化性雰囲気で2週間かけて1000℃まで焼成し、その後室温まで冷却し、更に粉砕分級を行うことで、複層構造球形化炭素材料を得た。
【0120】
前記複層構造球形化炭素材料は、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.98g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.31、平均粒径11.6μm、d10粒径7.6μm、d90粒径17.5μm、BET法比表面積は3.5m/g、被覆率は5.0%で、X線広角回折法による菱面体3Rと六方晶体2Hとの比3R/2Hが0.26、10nm〜100000nmの範囲の細孔容量は、0.74ml/gあった。また、別途石炭由来のピッチを単独で非酸化性雰囲気で1000℃まで焼成し、その後室温まで冷却し、更に粉砕分級を行った非晶質炭素単独でのX線広角回折法による002面の面間隔(d002)は3.45Å、Lcは24Åであった。
【0121】
(炭素材料Bの作製)
原料黒鉛として、天然に産出する黒鉛で、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.75g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.15、平均粒径61.1μm、真密度2.27g/cmにある鱗片状黒鉛粒子を用いた。
【0122】
前記鱗片状黒鉛粒子を、(株)奈良機械製作所製社製ハイブリダイゼーションシステムを用いて、ローターの周速度60m/秒、10分の条件で20kg/時間の処理速度で連続的に処理することで、黒鉛粒子表面にダメージを与えながら球形化処理を行い、その後更に分級処理により微粉を除去した。
【0123】
得られた球形化黒鉛質炭素は、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が
3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.96g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.23、平均粒径13.1μm、BET法比表面積8.2m/g、真密度2.26g/cm、平均円形度0.919であった。
【0124】
次に前記球形化黒鉛質炭素100重量部に石炭由来のピッチ30重量部を160℃で加熱混合し、次いで非酸化性雰囲気で2週間かけて1000℃まで焼成、次いで更に1週間かけて3000℃まで焼成し、その後室温まで冷却し、更に粉砕分級を行うことで、複層構造球形化炭素材料を得た。
【0125】
前記複層構造球形化炭素材料はX線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が1.19g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.13、平均粒径13.1μm、d10粒径79.0μm、d90粒径19.5μm、BET法比表面積は4.4m/g、被覆率は16.8%、10nm〜100000nmの範囲の細孔容量は、0.46ml/gであった。
【0126】
(混合炭素材料の作製)
上記の炭素材料Aに上記炭素材料Bを、炭素材料A及び炭素材料Bの総量に対する炭素材料Bの割合が30重量%となるように混合し、混合炭素材料を得た。炭素材料Aの平均粒径と炭素材料Bの平均粒径の比は、11.6μm/13.1μm=0.89とした。
【0127】
(性能評価用電池の作製)
上記混合炭素材料100重量部に、カルボキシメチルセルロースの1重量%水溶液100重量部、及びをスチレンブタジエンゴムの50重量%水分散液2重量部を加えて混練し、スラリーとした。銅箔上にこのスラリーをドクターブレード法で目付け4.4mg/cm2に塗布した。110℃で乾燥したのち、幅5cmの塗布電極を250mmφロールプ
レスにより密度が1.40g/cmとなるように圧密化した。このときの圧密化に要したプレス荷重は240kgであった。これを32mm×42mm角に切り出し、190℃で減圧乾燥して負極とした。
【0128】
リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体85重量部に、カーボンブラック10重量部、ポリビニレデンフルオロライド12重量%N−メチルピロリドン溶液41.7重量部、及び適量のN−メチルピロリドンを加え混練し、スラリーとした。アルミニウム箔にこのスラリーをドクターブレード法で目付け8.8mg/cmに塗布した。110℃で乾燥し、更に正極層の密度が2.45g/cmとなるようにロールプレスで圧密化した。これを30mm×40mm角に切り出し、140℃で乾燥して正極とした。
【0129】
上記の負極と正極とを電解液を含浸させたセパレーターを介して重ねて、充放電試験用の電池を作製した。電解液としてはエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:3:4(重量比)混合液に、LiPFを1モル/リットルとなるように溶解させたものを用いた。
【0130】
この電池に、先ず0.2Cで4.1Vまで充電し、さらに4.1Vで0.1mAとなるまで充電したのち、0.2Cで3.0Vまで放電、次いで、0.2Cで4.2Vまで充電し、さらに4.2Vで0.1mAとなるまで充電したのち、0.2Cで3.0Vまで放電を2回繰り返し、初期調整とした。
【0131】
(急速放電性評価)
それぞれ充電は、0.2C(5時間で充電)で4.2Vまで充電し更に4.2Vで2時間充電したのち(0.2C−CCCV)、0.2C(5時間で放電)、1C(1時間で放電)、2C(0.5時間で放電、5C(0.2時間で放電)、10C(0.1時間で放電)、15C(0.07時間で放電)で3.0Vまでの放電試験を実施し、0.2C(5時間で放電)の放電容量に対する各レートでの放電容量を%で表した結果を表1に記した。
【0132】
(急速充電性評価)
0.2C(5時間で充電)で4.2Vまで充電し更に4.2Vで2時間充電(0.2C−CCCV)、及び0.2C(5時間で充電)、1C(1時間で充電)、2C(0.5時間で充電)、5C(0.2時間で充電)、8C(0.13時間で充電)、10C(0.1時間で充電)での4.2Vまでの充電試験を実施し、0.2C(5時間で充電)で4.2Vまで充電し更に4.2Vで2時間充電(0.2C−CCCV)した時の充電容量に対する各充電試験での充電容量を%で表した結果を表1に示す。なお、それぞれの充電の後、0.2Cで3.0Vまでの放電を行った。
【0133】
(サイクル特性評価)
上記電池で、2Cで4.2Vまで充電、3Cで3.0Vまでの放電を繰り返し、1サイクル目の放電容量に対する300サイクル、500サイクル目の放電容量をそれぞれ300サイクル維持率、500サイクル維持率として%で表した結果を表1に示す。
【0134】
[実施例2]
炭素材料A及び炭素材料Bの総量に対する炭素材料Bの割合を50重量%とした以外は実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0135】
[実施例3]
炭素材料A及び炭素材料Bの総量に対する炭素材料Bの割合を70重量%とした以外は実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0136】
[実施例4]
(炭素材料Aの作製)
原料黒鉛として、天然に産出する黒鉛で、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.46g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.13、平均粒径28.7μm、真密度2.27g/cmにある鱗片状黒鉛粒子を用いた。
【0137】
前記鱗片状黒鉛粒子を(株)奈良機械製作所製社製ハイブリダイゼーションシステムを用いて、ローターの周速度60m/秒、10分の条件で20kg/時間の処理速度で連続的に処理することで、黒鉛粒子表面にダメージを与えながら球形化処理を行い、その後更に分級処理により微粉を除去した。
【0138】
得られた球形化黒鉛質炭素は、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.83g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.24、平均粒径11.6μm、BET法比表面積7.7m/g、真密度2.27g/cm、平均円形度0.909であった。
【0139】
次に前記球形化黒鉛質炭素100重量部と石炭由来のピッチ7.8重量部を捏合機で1
60℃にて加熱混合し、次いで窒素雰囲気中2時間で1000℃まで昇温し、2時間保持後室温まで冷却し、更に粉砕分級を行うことで、複層構造球形化炭素材料を得た。
【0140】
前記複層構造球形化炭素材料は、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.97g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.31、平均粒径11.1μm、d10粒径7.2μm、d90粒径17.1μm、BET法比表面積は4.4m/g、被覆率は4.4%で、X線広角回折法による菱面体3Rと六方晶体2Hとの比3R/2Hが0.27、10nm〜100000nmの範囲の細孔容量は、0.75ml/gであった。
【0141】
また、使用した石炭由来のピッチを単独で窒素雰囲気中2時間で1000℃まで昇温し、2時間保持後室温まで冷却し、粉砕分級を行った非晶質炭素単独のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)は3.45Å、Lcは24Åであった。
【0142】
(炭素材料Bの作製)
炭素材料Bは、実施例1と同じものを使用した。
【0143】
(混合炭素材料の作製)
上記の炭素材料A及び上記炭素材料Bの総量に対する炭素材料Bの割合を50重量%として混合し、混合炭素材料を得た。炭素材料Aの平均粒径と炭素材料Bの平均粒径の比は、11.1μm/13.1μm=0.85であった。
【0144】
他は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0145】
[実施例5]
(炭素材料Aの作製)
原料黒鉛として、天然に産出する黒鉛で、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.46g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.13、平均粒径28.7μm、真密度2.27g/cmにある鱗片状黒鉛粒子を用いた。
【0146】
前記鱗片状黒鉛粒子を(株)奈良機械製作所製社製ハイブリダイゼーションシステムを用いて、ローターの周速度60m/秒、10分の条件で20kg/時間の処理速度で鱗片状黒鉛粒子を連続的に処理することで、黒鉛粒子表面にダメージを与えながら球形化処理を行い、その後更に分級処理により微粉を除去した。
【0147】
得られた球形化黒鉛質炭素は、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.83g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.24、平均粒径11.6μm、BET法比表面積7.7m2/g、真密度2.27g/cm、平均円形度0.909であっ
た。
【0148】
次に前記球形化黒鉛質炭素1000重量部と石炭由来のピッチ4.5重量部を(株)マツボー社製のレーディゲミキサーに投入し、160℃で混練を行った。次いで非酸化性雰囲気で2週間かけて1000℃まで焼成し、その後室温まで冷却し、更に粉砕分級を行うことで、複層構造球形化炭素材料を得た。
【0149】
前記複層構造球形化炭素材料はX線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.99g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.35、平均粒径11.7μm、d10粒径7.7μm、d90粒径17.9μm、BET法比表面積は4.0m/g、被覆率は2.9%で、X線広角回折法による菱面体3Rと六方晶体2Hとの比3R/2Hが0.26、10nm〜100000nmの範囲の細孔容量は、0.69ml/gであった。
【0150】
また、別途石炭由来のピッチを単独で非酸化性雰囲気で1000℃まで焼成し、その後室温まで冷却し、更に粉砕分級を行うことで得た非晶質炭素材単独のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)は3.45Å、Lcは24Åであった。
【0151】
(炭素材料Bの作製)
炭素材料Bは、実施例1と同じものを使用した。
【0152】
(混合炭素材料の作製)
上記炭素材料A及び上記炭素材料Bの総量に対する炭素材料Bの割合が50重量%となるように混合し、混合炭素材料を得た。炭素材料Aの平均粒径と炭素材料Bの平均粒径の比は、11.7μm/13.1μm=0.89であった。
【0153】
他は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0154】
[比較例1]
炭素材料Aへ炭素材料Bを混合しない以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0155】
[比較例2]
炭素材料Aへ炭素材料Bを混合しない以外は実施例5と同様に行った。結果を表1に示す。
【0156】
[比較例3]
原料黒鉛として、天然に産出する黒鉛で、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.46g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.13、平均粒径28.7μm、真密度2.27g/cmにある鱗片状黒鉛粒子を用いた。
【0157】
前記鱗片状黒鉛粒子を、(株)奈良機械製作所製社製ハイブリダイゼーションシステムを用いて、ローターの周速度60m/秒、10分の条件で20kg/時間の処理速度で連続的に処理することで、黒鉛粒子表面にダメージを与えながら球形化処理を行い、その後更に分級処理により微粉を除去した。
【0158】
得られた球形化黒鉛質炭素は、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.83g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.24、平均粒径11.6μm、BET法比表面積7.7m/g、真密度2.27g/cm、平均円形度0.909であった。
【0159】
次に前記球形化黒鉛質炭素100重量部と石油由来のピッチ10重量部を(株)マツボー社製のレーディゲミキサーに投入し、90℃で混練を行った。次いで窒素雰囲気で2時間かけて1300℃まで焼成し、2時間保持後室温まで冷却し、更に粉砕分級を行うことで、複層構造球形化炭素材料を得た。
【0160】
前記複層構造球形化炭素材料はX線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.99g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.22、平均粒径11.6μm、d10粒径7.7μm、d90粒径17.5μm、BET法比表面積3.8m2/g、真密度
2.27g/cmであり、被覆率が3.0%で、X線広角回折法による菱面体3Rと六方晶体2Hとの比3R/2Hが0.24、10nm〜100000nmの範囲の細孔容量は、0.62ml/gであった。
【0161】
また、使用した石油由来のピッチを単独で窒素性雰囲気中1300℃まで焼成し、2時間保持後室温まで冷却し、粉砕を行うことで得た非晶質炭素単独材のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)は3.45Å、Lcは22Åであった。他は、比較例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0162】
[比較例4]
(炭素材料Aの作製)
炭素材料Aは、比較例3と同じものを使用した。
【0163】
(炭素材料Bの作製)
原料黒鉛として、天然に産出する黒鉛で、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.46g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.13、平均粒径28.7μm、真密度2.27g/cmにある鱗片状黒鉛粒子を用いた。
【0164】
前記鱗片状黒鉛粒子を、(株)奈良機械製作所製社製ハイブリダイゼーションシステムを用いて、ローターの周速度60m/秒、10分の条件で15kg/時間の処理速度で連続的に処理することで、黒鉛粒子表面にダメージを与えながら球形化処理を行い、その後更に分級処理により微粉を除去した。
【0165】
得られた球形化黒鉛質炭素は、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.77g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.21、平均粒径10.6μm、BET法比表面積8.5m/g、真密度2.26g/cm、平均円形度0.909であった。
【0166】
次に前記球形化黒鉛質炭素100重量部に石炭由来のタール6重量部を160℃で加熱混合し、次いで非酸化性雰囲気で2週間かけて1000℃まで焼成、次いで更に1週間かけて2000℃まで焼成し、その後室温まで冷却し、更に粉砕分級を行うことで、複層構造球形化炭素材料を得た。
【0167】
前記複層構造球形化炭素材料はX線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1000Å以上、タップ密度が0.90g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360
cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.10、平均粒径10.6μm、d10粒径7.0μm、d90粒径16.2μm、BET法比表面積は4.5m/g、被覆率は3.0%、10nm〜100000nmの範囲の細孔容量は、0.77ml/gであった。
【0168】
(混合炭素材料の作製)
上記炭素材料A及び上記炭素材料Bの総量に対する炭素材料Bの割合が50重量%となるように混合し、混合炭素材料を得た。炭素材料Aの平均粒径と炭素材料Bの平均粒径の比は、11.6μm/10.6μm=1.09とした。
【0169】
他は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0170】
【表1】

【0171】
表1に示すように、本発明による負極材料を用いた実施例1〜5は、本発明によらない負極材料を用いた比較例1〜4と比較して、優れた急速充放電特性およびサイクル特性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明の負極材料用いる電極を備える非水電解液二次電池は、急速充放電特性と高サイクル特性を併せ持った優れた性能を示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の炭素材料Aおよび炭素材料Bを含む非水電解液二次電池用負極材料。
(炭素材料A)黒鉛質粒子及びその表面を被覆する非晶質炭素を含む複層構造炭素材料であり、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.37Å以下、Lcが900Å以上、タップ密度が0.8g/cm以上、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.25〜0.6である炭素材料
(炭素材料B)X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.37Å以下、Lcが900Å以上、タップ密度が0.8g/cm以上、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.11〜0.2である炭素材料
【請求項2】
炭素材料Aと炭素材料Bの平均粒径の比(炭素材料Aの平均粒径/炭素材料Bの平均粒径)が0.7〜1.3の範囲内にある請求項1に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
【請求項3】
炭素材料A及び炭素材料Bの総量に対する炭素材料Bの割合が30〜70重量%である請求項1又は2に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
【請求項4】
炭素材料(A)に用いる黒鉛質粒子のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.37Å以下、Lcが900Å以上、タップ密度が0.8g/cm以上、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.2〜0.5である請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
【請求項5】
炭素材料(B)が球形化黒鉛質粒子とその表面を被覆する黒鉛質炭素を含む複層構造炭素材料である請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
【請求項6】
球形化黒鉛質粒子のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.37Å以下、Lcが900Å以上、タップ密度が0.8g/cm以上、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.2〜0.5の範囲である請求項5に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
【請求項7】
炭素材料AのX線広角回折法による菱面体黒鉛層の配向に基づく101面の強度3R(101)と六方晶系黒鉛層の配向に基づく101面の強度2H(101)との比3R/2Hが0.1以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
【請求項8】
炭素材料Aの比表面積が0.5〜8m/gである請求項1〜7のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
【請求項9】
炭素材料Aに用いる黒鉛質粒子の、フロー式粒子解析計で求められる平均円形度が0.
88以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
【請求項10】
炭素材料Bの比表面積が0.5〜8m/gである請求項1〜9のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
【請求項11】
炭素材料Bに用いる球形化黒鉛質粒子の、フロー式粒子解析計で求められる平均円形度
が0.88以上である請求項1〜10のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極
材料。
【請求項12】
炭素材料A及び炭素材料Bの水銀圧入法による10nm〜100000nmの範囲の細孔容量が、0.4ml/g以上である請求項1〜11のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
【請求項13】
炭素材料Aの平均粒径が2〜30μmの範囲である請求項1〜12のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
【請求項14】
炭素材料Bの平均粒径が2〜30μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
【請求項15】
炭素材料Aに用いる黒鉛質粒子の表面を被覆する非晶質炭素のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.40Å以上、Lcが500Å以下であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用負極材料及び結着樹脂を含有する負極層、並びに集電体を含む非水電解液二次電池用負極。
【請求項17】
請求項16に記載の負極、リチウムイオンを吸蔵放出できる正極及び非水電解液を備える非水電解液二次電池。

【公開番号】特開2010−251314(P2010−251314A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73163(P2010−73163)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】