説明

非水電解質二次電池用正極板の製造方法および非水電解質二次電池

【課題】溶媒を用い、活物質としてニッケルを含むリチウム含有複合酸化物を用い、水を溶媒に用いてスラリー化し、アルミニウムまたはその合金からなる集電体上に形成して得られる非水電解質二次電池用正極板にて、集電体表面が酸化し形成される絶縁被膜の生成を抑制し、合剤層と集電体表面の界面の抵抗の上昇する課題を解決し、出力特性に優れた非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】集電体21と、集電体に形成された正極合剤層23の間に、集電体の単分子層22としてカップリング剤の層を形成して、非水電解質二次電池用正極が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用正極板の製造方法および、前記非水電解質二次電池用正極板の製造方法を用いて作成された非水電解質電解質用正極板を用いた非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池を代表するリチウムイオン二次電池は、軽量でありながら起電力が高く、高エネルギー密度であるという特徴を有することから、携帯電話やデジタルカメラ、ビデオカメラ、ノート型パソコンなどの様々な種類の携帯電子機器や移動体通信機器の駆動用電源として需要が拡大している。
【0003】
そして、リチウムイオン二次電池は、リチウム含有複合酸化物よりなる正極板と、金属リチウムやリチウム合金またはリチウムイオンを吸蔵・放出する負極活物質を含む負極と、電解質とから構成されている。
【0004】
一般に、たとえば非水電解質二次電池用正極板の作成方法の一例を示すと、正極活物質としてLiCoO2と、導電剤としてアセチレンブラックと、結着剤としてのフッ素系樹脂とを混合し、カルボキシメチルセルロース水溶液に懸濁させて、正極活物質をスラリー化し集電体上に形成される。
【0005】
一方、活物質として用いられるリチウム含有複合酸化物を、水を溶媒としてスラリー化にすると、混練工程においてリチウムイオンが溶出してスラリーのpHは上昇してしまう。このため、スラリーを正極板用集電体として用いられるAl金属箔に塗布した際、集電体は酸化腐食され、電池特性が低下する。
【0006】
これらの課題を解決するために、活物質に表面にPTFEを有する保護膜を設け、正極活物質と溶媒として用いる水との反応を抑制し、スラリーのpHの上昇を抑制する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−157836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術の一般的方法においては、ディスパージョン状の結着剤が用いられるため、高温環境下や長期の保管中に、正極合剤層中に残留した溶媒の水によって、集電体の酸化腐食がおこる課題がある。
【0008】
特に、高容量化のためニッケルを含むリチウム含有複合酸化物を正極活物質に用いた場合、集電体表面の酸化腐食が著しく発生することがわかった。このような結果、集電体表面に形成された酸化膜によって、集電体の抵抗が高くなり、電池の内部抵抗が上昇し、電池の出力特性の低下が生じる。
【0009】
本発明は上記の課題を解決するものであり、活物質にニッケルを含むリチウム複合酸化物を用いたとき、アルミニウム箔またはその合金からなる集電体表面の酸化腐食を抑制し、出力特性に優れた非水電解質二次電池を実現するための非水電解質二次電池用正極板およびそれらを用いた非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の非水電解質二次電池用正極板の製造方法では、アルミニウム箔またはその合金からなる集電体に、カップリング剤を用いて、表面にカップリング処理を行う工程と、カップリング処理済みの集電体上にニッケルを含むリチウム含有複合酸化物からなる正極活物質と導電剤と結着剤と増粘剤と水からなるスラリーを塗布することで正極合剤層を形成する工程を少なくとも含む非水電解質二次電池用正極板の製造方法である。
【0011】
また、前記製造方法によって作製された非水電解質二次電池である。
【0012】
これにより、正極集電体として用いられるアルミニウム箔またはその合金からなる集電体の表面の酸化を防止し、出力特性に優れた非水電解質二次電池用正極板を実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の非水電解質二次電池用正極板の製造方法を用いれば、ニッケルを含むリチウム含有複合酸化物からなる正極活物質と導電剤と結着剤と増粘剤と水からなるスラリーを塗布することで正極合剤層を形成され作製される非水電解質二次電池用正極板にて、集電体の酸化を防止し、その結果、正極板の抵抗が、酸化により上昇することを抑制することができる。
【0014】
さらに、電池の出力特性に優れた非水電解質二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、アルミニウム箔またはその合金箔からなる集電体に、カップリング剤を用いて、表面にカップリング処理を行う工程と、カップリング処理済みの集電体上にニッケルを含むリチウム含有複合酸化物からなる正極活物質と導電剤と結着剤と増粘剤と水からなるスラリーを塗布することで正極合剤層を形成することで、集電体と合剤層の電子抵抗を増加させることなく、水系溶媒を用いても集電体の酸化腐食を防止することができ、集電体と合剤層の界面抵抗を小さくすることができる。
【0016】
また、上記製造方法を用いて作製された非水電解質二次電池用正極板を用いた非水電解質二次電池は、集電体と合剤層の界面抵抗が小さいため、優れた出力特性を実現することができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、本明細書に記載された基本的な特徴に基づく限り、以下に記載の内容に限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態による非水電解質二次電池の分解斜視図である。
【0019】
図1に示すように、角型の非水電解質二次電池(電池)は、負極1と、負極1に対向し放電時にリチウムイオンを還元する正極2と、負極1と正極2との間に介在し負極1と正極2の直接接触を防ぐセパレータ3とを有する。負極1および正極2は、セパレータ3とともに捲回されて電極群4を形成している。そして、電極群4は、非水電解質(図示せず)とともに電池ケース5内に収納されている。 さらに、電極群4の上部には、電極群4と封口板6とを隔離するとともに正極リード7と負極リード9を隔離する、例えば樹脂製の枠体11が配置されている。また、正極外部接続端子と兼用される電池ケース5の開口部には、負極リード9を外部機器と接続する負極外部接続端子10と非水電解質の注液口を封止する注液口封止部8を有する封口板6が設けられている。
【0020】
そして、負極1は集電体と負極合剤層とからなり、正極2は集電体と正極合剤層とを有する。
【0021】
以下に、本発明の実施の形態における非水電解質二次電池用正極について、図2を用いて詳細に説明する。
【0022】
通常は、集電体の両面に正極合剤層が形成させている。図2ではそのうち片面の構造のみを示しており、正極板2の断面図である。酸化防止機能を持つ単分子層22を集電体表面21に形成し、その上に正極合剤層23が形成されている。
【0023】
正極2に用いる集電体としては、アルミニウム(Al)および、Al合金などが使用可能である。特に限定されるものではないが、日本工業規格JISアルミニウム合金1050、1070、1080、1085、1100、1200、1N30、3003、3004、8021からなる群の少なくとも1種類により構成されていることが望ましい。
【0024】
また、酸化を防止する層22は、単分子層を形成する公知の酸化防止剤が使用できる。その酸化防止剤として、カップリング剤が好適な材料として選択され、好適なカップリング剤として、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、チタネート系カップリング剤などを用いることができる。
【0025】
シランカップリング剤としては、分子内に少なくとも1つの有機官能基と、複数の結合基とを有する。有機官能基は、様々な炭化水素骨格を有する。結合基は加水分解により、金属元素に直接結合した水酸基Si―OHを与える。有機官能基としては、例えばアルキル基、メルカプトプロピル基、トリフルオロプロピル基などが挙げられる。結合基としては、加水分解のアルコキシ基などが挙げられる。チタネート系カップリング剤としては、たとえばテトライソプロピルチタネート、テトラステアリルチタネート、チタニウムアセチルアセトネートエステル、ポリジブチルチタネート、テトラキス(2−エチルヘキシル)チタネートが挙げられる。アルミニウム系カップリング剤としてアルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロレート又はアルミニウムモノアセチルアセトネートがあげられる。
【0026】
そして、カップリング剤による処理とは、集電体として用いる金属箔の表面に存在する水酸基とカップリング剤の結合基との間でアルコール脱水反応を進行させるものである。また、金属箔の表面において、カップリング剤による処理の有無は、金属元素−酸素結合などの形成により、確認することができる。
【0027】
なお、正極活物質の粒子表面の水酸基との反応性を考慮する場合、シランカップリング剤は、アルコキシ基を結合基として有することが好ましい。さらに、シランカップリング剤は、電解液との副反応を抑制する観点から、有機官能基内に、メルカプト基、アルキル基、フルオロ基のうちの少なくともいずれか1種を有することが好ましい。
【0028】
カップリング剤は、直接使用してもよく、特に限定されないが、適当な有機溶媒、例えばジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)などのケトン類、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類、エタノールなどのアルコール類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、シリコーンオイルなどを用いて希釈して使用してもよい。
【0029】
以下に、図3から図5を用いて正極集電体表面にカップリング剤を用いたカップリング処理方法1から処理方法3について詳細に説明する。
【0030】
(処理方法1)
処理方法1について、図3を用いて説明する。
【0031】
図3は、処理方法1における集電体表面にカップリング剤の処理工程を説明する断面図である。
【0032】
まず、図3に示すように、集電体21の表面に、カップリング剤(図示せず)を含有する2本の転写ロール31を接触させてカップリング剤を塗布することによりカップリング剤による単分子層22を形成する。以下では、これを処理方法1として説明する。
【0033】
(処理方法2)
次に処理方法2について、図4を用いて説明する。
【0034】
図4は、処理方法2における集電体表面にカップリング剤の処理工程を説明する断面図である。
【0035】
図4に示すように、噴射ノズル41を用いて集電体21の表面にカップリング剤42を上下から吹き付けるスプレー法により塗布することにより、カップリング剤による単分子層22を形成する。以下では、これを処理方法2として説明する。
【0036】
上記で説明した処理方法1または処理方法2においては、集電体21の表面に塗布するカップリング剤の量は、転写ロール31に含有させる量または噴射ノズル41からの吐出量を制御することにより調整することが可能である。
【0037】
(処理方法3)
つぎに、処理方法3について図5を用いて説明する。
【0038】
図5は、処理方法3におけるに集電体21の表面にカップリング剤を用いたディップ工程を説明する断面図である。
【0039】
まず、図5に示すように、集電体21をカップリング剤54で満たされた浴槽52内に導入し、カップリング剤54中に浸漬する。
【0040】
つぎに、集電体の表面にカップリング剤54が塗布されて浸漬槽52から排出され、単分子層22となる。
【0041】
つぎに、噴射ノズル56から噴出する、例えば、乾燥空気またはアルゴンガスなどの乾燥不活性ガス58によって余分なカップリング剤を除去することにより、塗布量を制御する。
【0042】
上記各処理方法により、本発明の実施の形態における非水電解質二次電池用正極用の集電体が作製される。
【0043】
上記各処理方法に用いられるカップリング剤は、直接含浸してもよく、特に限定されないが、適当な有機溶媒、例えばジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)などのケトン類、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類、エタノールなどのアルコール類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、シリコーンオイルなどを用いて希釈して使用してもよい。
【0044】
ここで、集電体とともに正極2を構成する正極合剤層23としては、活物質としてニッケルを含むリチウム含有複合酸化物を含む。
【0045】
正極合剤層8はLixy1-y2のようなニッケルを含むリチウム含有複合酸化物、あるいはLiNiO2とLiCoO2や、LiMn24といったこれらの混合物の形態をとっていてもよい。特にニッケルを含むリチウム含有複合酸化は容量密度が大きいため好ましい。
【0046】
ニッケルを含むリチウム含有複合酸化物粒子の平均粒径は、特に限定されないが、例えば1〜30μmが好ましく、特に10〜30μmが好ましい。平均粒径は、例えばマイクロトラック社製の湿式レーザー粒度分布測定装置などにより測定することができる。この場合、体積基準における50%値(メディアン値:D50)を平均粒径と見なすことができる。
【0047】
ニッケルを含むリチウム含有複合酸化物は、一般式:Lix1-yy2で表され、一般式は、0.85≦x≦1.25および0≦y≦0.50を満たし、元素Mは、Niは必須であるが、Coを含んでも良く、元素Lは、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素、IIIb族元素およびIVb元素よりなる群から選択される少なくとも1種である。元素Lは、含リチウム複合酸化物に、熱安定性向上の効果などを与える。
【0048】
0<yの場合、含リチウム複合酸化物は、元素Lとして、Al、Mn、Ti、Mg、Zr、Nb、Mo、WおよびYよりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0049】
これらの元素は、含リチウム複合酸化物に元素Lとして単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。特にAlは、酸素との結合力が強いことから元素Lとして好適である。また、Mn、TiおよびNbも好ましい。元素Lとして、Ca、Sr、Si、Sn、Bなどを含んでもよいが、Al、Mn、Ti、Nbなどと併用することがより好ましい。
【0050】
Li含有量を表すxの範囲は、電池の充放電により増減する。完全放電状態(初期状態)におけるxの範囲は、0.85≦x≦1.25であればよいが、0.93≦x≦1.10がさらに好ましい。
【0051】
元素Lの含有量を表すyの範囲は、0≦y≦0.50であればよいが、容量、サイクル特性、熱安定性などのバランスを考慮すると、0<y≦0.50が好ましく、0.001≦y≦0.35であることが特に好ましい。
【0052】
なお、元素LがAlを含む場合、NiとCoと元素Lとの合計に対するAlの原子比aは0.005≦a≦0.1が好適であり、0.01≦a≦0.08がさらに好適である。
【0053】
元素LがMnを含む場合、Niと、Coと、元素Lとの合計に対するMnの原子比bは、0.005≦b≦0.5が好適であり、0.01≦b≦0.35がさらに好適である。
【0054】
正極活物質を構成するリチウム複合酸化物は、一次粒子であってもよく、複数の一次粒子が凝集して形成した二次粒子であってもよい。また、複数種類の正極活物質が凝集して二次粒子を形成していてもよい。
【0055】
正極合剤層23は、さらに導電剤と結着剤と増粘剤とを含有する。そして、導電剤としては、天然黒鉛や人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カー
ボン、アルミニウムなどの金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、フェニレン誘導体などの有機導電性材料を用いることができる。
【0056】
また、結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースなどの材料からなる水系ディスパージョンあるいは、水溶性高分子材料が使用可能である。
【0057】
また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体からなる水系ディスパージョンあるいは、水溶性高分子材料を用いてもよい。またこれらのうちから選択された2種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
増粘剤としては、水溶性のものを用い、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カルボキシメチルセルロースリチウム塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイドのいずれか、または上記の複数を組み合わせて用いることが好ましい。
【0059】
正極合剤層23としては、導電剤が正極活物質の0.2〜50重量%、特に0.2〜30重量%添加されるのが好ましい。
【0060】
これにより、出力特性に優れた非水電解質二次電池用正極が得られる。
【0061】
負極1に用いる集電体としては、ステンレス鋼、ニッケル、銅、チタンなどの金属箔、炭素や導電性樹脂の薄膜などが利用可能である。
【0062】
負極合剤層は少なくともリチウムイオンの吸蔵放出が可能な負極活物質を含む。この負極活物質としては、グラファイトや非晶質カーボンのような炭素材料を用いることができる。あるいはケイ素(Si)やスズ(Sn)などのように正極活物質材料よりも卑な電位でリチウムイオンを大量に吸蔵放出可能な材料を用いることができる。このような材料であれば、単体、合金、化合物、固溶体および含ケイ素材料や含スズ材料を含む複合負極活物質のいずれであっても、本発明の効果を発揮させることは可能である。特に含ケイ素材料は容量密度が大きく安価であるため好ましい。すなわち、含ケイ素材料として、Si、SiOx(0.05<x<1.95)、またはこれらのいずれかにB、Mg、Ni、Ti、Mo、Co、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Nb、Ta、V、W、Zn、C、N、Snからなる群から選択される少なくとも1つ以上の元素でSiの一部を置換した合金や化合物、または固溶体などを用いることができる。含スズ材料としてはNi2Sn4、Mg2Sn、SnOx(0<x<2)、SnO2、SnSiO3、LiSnOなどが適用できる。
【0063】
これらの材料は単独で負極活物質を構成してもよく、また複数種の材料により構成してもよい。上記複数種の材料により負極活物質を構成する例として、Siと酸素と窒素とを
含む化合物やSiと酸素とを含み、Siと酸素との構成比率が異なる複数の化合物の複合物などが挙げられる。この中でもSiOx(0.3≦x≦1.3)は、放電容量密度が大きく、かつ充電時の膨張率がSi単体より小さいため好ましい。
【0064】
負極合剤層は、さらに結着剤を含む。結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースなどが使用可能である。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。
【0065】
また、必要に応じて鱗片状黒鉛などの天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、銅やニッケルなどの金属粉末類、ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などの導電剤を負極合剤層に混入させてもよい。
【0066】
また、非水電解質(図示せず)としては、有機溶媒に溶質を溶解した電解質溶液や、これらを含み高分子で非流動化されたいわゆるポリマー電解質層が適用可能である。
【0067】
少なくとも電解質溶液を用いる場合には、正極2と負極1との間にポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、アミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミドなどからなる不織布や微多孔膜などのセパレータ3を用い、これに電解質溶液を含浸させるのが好ましい。また、セパレータ3の内部あるいは表面には、アルミナ、マグネシア、シリカ、チタニアなどの耐熱性フィラーを含んでもよい。セパレータ3とは別に、これらのフィラーと、正極2や負極1に用いるものと同様の結着剤とから構成される耐熱層を設けてもよい。
【0068】
非水電解質の材料は、正極活物質や負極活物質の酸化還元電位などを基に選択される。非水電解質に用いるのが好ましい溶質としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiN(CF3CO2)、LiN(CF3SO22、LiAsF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiF、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、ビス(1、2−ベンゼンジオレート(2−)−O、O’)ほう酸リチウム、ビス(2、3−ナフタレンジオレート(2−)−O、O’)ほう酸リチウム、ビス(2、2’−ビフェニルジオレート(2−)−O、O’)ほう酸リチウム、ビス(5−フルオロ−2−オレート−1−ベンゼンスルホン酸−O、O’)ほう酸リチウムなどのほう酸塩類、(CF3SO22NLi、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、(C25SO22NLi、テトラフェニルホウ酸リチウムなど、一般にリチウム電池で使用されている塩類が適用できる。
【0069】
さらに、上記塩類を溶解させる有機溶媒には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、
ジメトキシメタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1、2−ジエトキシエタン、1、2−ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、トリメトキシメタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのテトラヒドロフラン誘導体、ジメチルスルホキシド、1、3−ジオキソラン、4−メチル−1、3−ジオキソランなどのジオキソラン誘導体、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、スルホラン、3−メチルスルホラン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、エチルエーテル、ジエチルエーテル、1、3−プロパンサルトン、アニソール、フルオロベンゼンなどの1種またはそれ以上の混合物など、一般にリチウム電池で使用されているような溶媒が適用できる。
【0070】
さらに、ビニレンカーボネート、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、ジアリルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、カテコールカーボネート、酢酸ビニル、エチレンサルファイト、プロパンサルトン、トリフルオロプロピレンカーボネート、ジベニゾフラン、2、4−ジフルオロアニソール、0−ターフェニル、m−ターフェニルなどの添加剤を含んでいてもよい。
【0071】
なお、非水電解質は、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエチレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンなどの高分子材料の1種またはそれ以上の混合物などに上記溶質を混合して、固体電解質として用いてもよい。また、上記有機溶媒と混合してゲル状で用いてもよい。さらに、リチウム窒化物、リチウムハロゲン化物、リチウム酸素酸塩、Li4SiO4、Li4SiO4−LiI−LiOH、Li3PO4−Li4SiO4、Li2SiS3、Li3PO4−Li2S−SiS2、硫化リン化合物などの無機材料を固体電解質として用いてもよい。
【実施例】
【0072】
以下に、本発明の実施の形態における具体的な実施例について説明する。
【0073】
(実施例1)
(正極の作製)
カップリング剤としてメチルトリメトキシシラン(信越化学(株)製KBM13)を用いた。まず、カップリング剤:純水:エタノール=5:5:90重量部で混合した。正極用集電体として、予めエタノールを用いて脱脂した厚み20μmのアルミニウム箔(三菱アルミ(株)製1N30)を用意し、上記カップリング剤の混合物を用いて、上記処理法1にて処理し、120℃で乾燥してカップリング剤を表面に設けた集電体を得た。
【0074】
つぎに、粉状のLiNi0.80Co0.15Al0.052を主成分とする正極活物質と、導電剤としてアセチレンブラック、結着剤としてPTFE水性ディスパージョン(ダイキン工業(株)製)、および増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(第一工業製薬(株))を固形分の重量比で100:3:3:0.5の割合で混合し、さらに溶媒として水を適量添加して、双腕式練合機を用いて、30℃で30分間攪拌し、正極合剤スラリーを調製した。
【0075】
つぎに、得られた正極合剤スラリーを上記のカップリング剤で表面処理したアルミニウム集電体に塗布し、120℃で15分間乾燥させた。その後露点−60℃の空気中において、120℃10時間乾燥し、続いて正極の総厚が160μmとなるようにロールプレスした。ロールプレスで用いたローラ径は直径40cm、プレス圧力を示す線圧は1000
0N/cmとした。
【0076】
そして、得られた正極を高さ50mm、幅34mm、厚み5mmの角型の電池ケースに挿入可能な幅に切断して、正極リードを備えた正極を得た。
【0077】
(負極の作製)
まず、人造黒鉛3kgを、日本ゼオン(株)製のBM−400B(固形分40重量%の変性スチレン−ブタジエンゴムの分散液)200g、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)50g、および適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極合剤ペーストを調製した。
【0078】
つぎに、得られた負極合剤ペーストを集電体となる厚さ12μmの銅箔の両面に塗布、120℃で乾燥し、負極の総厚が160μmとなるように圧延した。
【0079】
そして、得られた負極を、高さ50mm、幅34mm、厚み5mmの角形の電池ケースに挿入可能な幅に切断して、負極リードを備えた負極を得た。
【0080】
(電池の作製)
まず、上記のようにして作製した負極1と正極2とをセパレータ3を介して捲回し、渦巻状の電極群4を構成した。ここで、セパレータ3としてポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム(セルガード(株)製の2300、厚さ25μm)を用いた。
【0081】
つぎに、負極外部接続端子10を備えた封口板6で電池ケース5の開口部を封口し、注液口から非水電解液を注入した後、注液口封止部8で封止した。非水電解液にはエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:1の割合で混合した混合溶媒にLiPF6を1mol/l溶解したものを用いた。このようにして、高さ50mm、幅34mm、厚み5mmの角型の電池を作製した。なお、電池の設計容量は900mAhとした。
【0082】
上記方法によって作製された正極を有する非水電解質二次電池をサンプル1とする。
【0083】
(実施例2)
正極活物質としてLiMn1/3Ni1/3Co1/32を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル2とする。
【0084】
(実施例3)
正極活物質としてLiNi0.80Co0.15Al0.052を用い、集電体の単分子層として用いるカップリング剤に、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製KBM7103)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル3とする。
【0085】
(実施例4)
正極活物質としてLiNi0.80Co0.15Al0.052を用い、カップリング剤としてジメチルジメトキシシラン(信越化学(株)製KBM22)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル4とする。
【0086】
(実施例5)
正極活物質としてLiNi0.80Co0.15Al0.052を用い、集電体の単分子層として用いるカップリング剤として、メチルトリエトキシシラン(信越化学(株)製KBE13)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル
5とする。
【0087】
(実施例6)
正極活物質としてLiNi0.80Co0.15Al0.052を用い、集電体の単分子層として用いるカップリング剤として、デシルトリメトキシシラン(信越化学(株)製KBM3103)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル6とする。
【0088】
(実施例7)
正極活物質としてLiNi0.80Co0.15Al0.052を用い、集電体の単分子層として用いるカップリング剤として、ヘキシルトリメトキシシラン(信越化学(株)製KBM3063)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル7とする。
【0089】
(実施例8)
正極活物質としてLiNi0.80Co0.15Al0.052を用い、集電体の単分子層として用いるカップリング剤として、テトラステアリルチタネートを用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル8とする。
【0090】
(実施例9)
正極活物質としてLiNi0.80Co0.15Al0.052を用い、集電体の単分子層として用いるカップリング剤としてアルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロレート(アルミキレートM、川研ファインケミカル社製)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル9とする。
【0091】
(実施例10)
まず、上記処理方法2を用いて、予め集電体の表面をシランカップリング剤処理した以外は、実施例1と同様にして、作製した正極を用いた非水電解質二次電池をサンプル10とする。
【0092】
(実施例11)
正極活物質としてLiMn1/3Ni1/3CoO2を用いた以外は、実施例10と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル11とする。
【0093】
(実施例12)
正極活物質としてLiNi0.80Co0.15Al0.052を用い、シランカップリング剤としてトリフルオロプロピルトリメトキシシランを用いた以外は、実施例10と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル12とする。
【0094】
(実施例13)
正極活物質としてLiNi0.80Co0.15Al0.052を用い、シランカップリング剤としてジメチルジメトキシシランを用いた以外は、実施例10と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル13とする。
【0095】
(実施例14)
正極活物質としてLiNi0.80Co0.15Al0.052を用い、シランカップリング剤としてメチルトリエトキシシランを用いた以外は、実施例10と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル14とする。
【0096】
(実施例15)
正極活物質としてLiNi0.80Co0.15Al0.052を用い、シランカップリング剤としてデシルトリメトキシシランを用いた以外は、実施例10と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル15とする。
【0097】
(実施例16)
正極活物質としてLiNi0.80Co0.15Al0.052を用い、カップリング剤としてテトラステアリルチタネートを用いた以外は、実施例10と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル16とする。
【0098】
(実施例17)
正極活物質としてLiNi0.80Co0.15Al0.052を用い、カップリング剤としてアルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロレート(アルミキレートM、川研ファインケミカル社製)を用いた以外は、実施例10と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル17とする。
【0099】
(実施例18)
まず、上記処理方法3を用いて、予め集電体の表面をシランカップリング剤処理した以外は、実施例1と同様にして、作製した正極を用いた非水電解質二次電池をサンプル18とする。
【0100】
(実施例19)
正極活物質としてLiMn1/3Ni1/3CoO2を用い、シランカップリング剤としてメチルトリメトキシシランを用いた以外は、実施例18と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル19とする。
【0101】
(実施例20)
正極集電体として20μmのアルミニウム箔(三菱アルミ(株)製1050)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル20とする。
【0102】
(実施例21)
正極集電体として20μmのアルミニウム箔(三菱アルミ(株)製1085)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル20とする。
【0103】
(実施例22)
正極集電体として20μmのアルミニウム箔(三菱アルミ(株)製3003)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル22とする。
【0104】
(実施例23)
正極集電体として20μmのアルミニウム箔(三菱アルミ(株)製3004)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプル23とする。
【0105】
(比較例1)
カップリング剤による処理を施していないアルミニウム箔(三菱アルミ(株)製1N30)を用いて、正極合剤層を形成する以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプルC1とする。
【0106】
(比較例2)
カップリング剤による処理を施していないアルミニウム箔(三菱アルミ(株)製1N30)を用いて、正極合剤層を形成する以外は、実施例2と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプルC2とする。
【0107】
(比較例3)
カップリング剤による処理を施していないアルミニウム箔(三菱アルミ(株)製1050)を用いて、正極合剤層を形成する以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプルC3とする。
【0108】
(比較例4)
カップリング剤による処理を施していないアルミニウム箔(三菱アルミ(株)製1085)を用いて、正極合剤層を形成する以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプルC4とする。
【0109】
(比較例5)
カップリング剤による処理を施していないアルミニウム箔(三菱アルミ(株)製3003)を用いて、正極合剤層を形成する以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプルC5とする。
【0110】
(比較例6)
カップリング剤による処理を施していないアルミニウム箔(三菱アルミ(株)製3004)を用いて、正極合剤層を形成する以外は、実施例1と同様の方法により作製した非水電解質二次電池をサンプルC6とする。
【0111】
(比較例7)
上記処理方法2を用いて、予め集電体の表面をフッ素系樹脂コーティング剤(フロロサーフ((株)フロロテクノロジー製))を塗布処理した以外は、実施例10と同様にして、作製した正極を用いた非水電解質二次電池をサンプルC7とする。
【0112】
(比較例8)
上記処理方法2を用いて、予め集電体の表面をフッ素系樹脂コーティング剤(フロロサーフ((株)フロロテクノロジー製))を塗布処理した以外は、実施例11と同様にして、作製した正極を用いた非水電解質二次電池をサンプルC8とする。
【0113】
上記の各処理方法により処理した正極を、下記に示す(A)、(B)の保存環境条件下でそれぞれ保存し、作製したサンプル1〜23およびサンプルC1〜C8の角型の非水電解質二次電池に対し、以下に示す評価を行った。
【0114】
(電池の評価方法)
(1)内部抵抗測定
上記、各実施例および各比較例の角型の各非水電解質二次電池を、25℃環境温度において、を0.9Aとし、4.2Vにて定電圧充電した。終了条件は50mAとした。充電後2時間25℃環境下で放置し、LCRメータ(日置電機(株)ACミリオームハイテスタ3560)を用い、1kHz周波数にて、電池の内部抵抗を測定した。
【0115】
(2)低温出力測定
角型の各非水電解質二次電池を、25℃環境温度において以下の条件で充電した。
【0116】
最大電流値を0.9Aとし、4.2Vにて定電圧充電した。終了条件は50mAとした
。充電後30分間休止した。
【0117】
その後、5時間かけて温度0℃に電池を冷却し、温度0℃の恒温槽で定電流0.9Aで放電した。終止電圧は3.0Vとし、その時の放電容量を測定した。
【0118】
以下に、サンプル1〜23とサンプルC1〜C8の諸元と評価結果を(表1)に示す。
【0119】
【表1】

【0120】
表1から明らかな様に、サンプル1、2、20、21、22および23と、サンプルC1〜C6を比較すると、サンプルC1〜C6では、内部抵抗の上昇と低温放電での容量減少が大きい。サンプルC1〜C6では、正極活物質のスラリー化において、溶媒に水を用いることによって、集電体の酸化腐食が生じ、正極板の電子抵抗が上昇したため、内部抵抗の上昇と容量低下が起きたと考えられる。また、上記の比較において、アルミニウムの含有量および合金組成によらず、カップリング剤の酸化腐食防止の効果を確認した。
【0121】
また、サンプル1〜19を比較すると、内部抵抗や放電特性に差異ななく、いずれのカ
ップリング剤やいずれの処理法によって、酸化防止の効果を得られることができた。
【0122】
また、サンプルC1とC2を比較すると、C1の抵抗上昇が大きいが、活物質に含まれるNi含有量の多いC1にて、活物質の分解生成物から水和物が生成され、正極合剤中の水の保持量が大きくなるためであると考えられる。
【0123】
また酸化防止剤として、フッ素樹脂皮膜を形成したサンプルC7、C8では、集電体の酸化腐食は防止されているが、内部抵抗の上昇と容量低下が起こった。フッ素樹脂が集電体と合剤層の界面に樹脂状で偏在し、単分子層を形成しないため、合剤層と集電体の間での電子抵抗が大きくなったと考えられる。
【0124】
また、活物質LiNi0.80Co0.15Al0.052を用いたサンプル1、10および18を比較すると、集電体のカップリング処理法による差異はほとんどない。また、活物質LiMn1/3Ni1/3CoO2を用いたサンプル2、11および19でも、集電体のカップリング処理法による差異はほとんどない。いずれの処理法においても、スラリー中の水溶媒による酸化腐食を抑制でき、いずれも有効の処理方法であることがわかった。また、正極活物質中のニッケル含有量が異なるサンプル1とサンプル2の比較で、差異が生じていないことより、正極合剤層の含有水分量によらず、集電体をカップリング処理すると、集電体の表面に良好な単分子層が形成され、溶媒として用いた水による集電体の酸化を防止し、電池特性悪化を防止することができる。
【0125】
なお、本発明の実施の形態では、捲回式の角型の非水電解質二次電池に適用した例で説明したが、本発明に係わる電池の形状は角型に限定されるものではなく、平型の電池、捲回式の円筒型の電池または積層構造のコイン型電池やラミネート型電池にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、ニッケルを含むリチウム含有酸化物を溶媒に水を用いてスラリー化して、正極板を作製しても、集電体の表面への酸化物絶縁体層の形成を抑制し、放電特性に優れた電池を製造することができるため、小型機器用の電池として有用であり、さらに、電気自動車用電源や電力貯蔵など大型で大容量の電池にも有効であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の実施の形態における非水電解質二次電池の一部展開斜視図
【図2】本発明の実施の形態における正極2の一部断面図
【図3】本発明の一実施の形態におけるカップリング剤の工程を示す一部断面図
【図4】本発明の他の実施の形態におけるカップリング剤の工程を示す一部断面図
【図5】本発明の第3の実施の形態におけるカップリング剤の工程を示す一部断面図
【符号の説明】
【0128】
1 負極
2 正極
3 セパレータ
4 電極群
5 電池ケース
6 封口板
7 正極リード
8 注液口封止部
9 負極リード
10 負極外部接続端子
11 枠体
21 正極用集電体
22 単分子層
42、54 カップリング剤
23 正極合剤層
31 転写ロール
41、56 噴射ノズル
52 浸漬槽
58 不活性ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム箔またはその合金からなる集電体に、カップリング剤を用いて、表面にカップリング処理を行う工程と、カップリング処理済みの集電体上にニッケルを含むリチウム含有複合酸化物からなる正極活物質と導電剤と結着剤と増粘剤と水からなるスラリーを塗布することで正極合剤層を形成する工程を少なくとも含む非水電解質二次電池用正極板の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の非水電解質二次電池用正極板の製造方法を用いて作成された非水電解質二次電池用正極板を用いた非水電解質二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−153053(P2008−153053A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339665(P2006−339665)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】