説明

非水電解質二次電池用電極とそれを用いた非水電解質二次電池

【課題】高容量化に好ましい活物質核にカーボンナノファイバ(CNF)を付着させた複合活物質を用いて、高容量と実用的なサイクル特性を備えた非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】本発明の非水電解質二次電池用負極では、圧縮応力の大きい第1のCNF36Aを付着させた第1の活物質核35Aを含む第1の複合負極活物質34Aと圧縮応力の小さい第2のCNF36Bを付着させた第2の活物質核35Bを含む第2の複合負極活物質34Bとを混在させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関し、より詳しくはカーボンナノファイバを活物質核に付着させた複合負極活物質を含む非水電解質二次電池用電極とそれを用いた非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器のポータブル化、コードレス化が進むにつれて、小型・軽量で、かつ高エネルギー密度を有する非水電解質二次電池への期待は高まりつつある。現在、黒鉛などの炭素材料が非水電解質二次電池の負極活物質として実用化されている。しかしながらその理論容量密度は372mAh/gである。そこで、さらに非水電解質二次電池を高エネルギー密度化するために、リチウムと合金化するケイ素(Si)、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)やこれらの酸化物および合金などが検討されている。これらの負極活物質材料の理論容量密度は、炭素材料に比べて大きい。特にSi粒子や酸化ケイ素粒子などの含ケイ素粒子は安価なため、幅広く検討されている。
【0003】
しかしながら、通常非水電解質二次電池の負極活物質として用いられる炭素材料は放電状態における体積に対する充電状態における体積の比が1.1以下であるのに対し、理論容量密度が炭素材料より大きく833mAh/cmを超えるこれらの材料では1.2以上の大きな体積変化が起こる。この大きな体積変化により活物質粒子は微粉化し、その結果、活物質粒子間の導電性が低下する。そのため、充分な充放電サイクル特性(以下、「サイクル特性」という)が得られていない。
【0004】
そこでリチウム合金を形成しうる金属または半金属を含む粒子を活物質核に、複数の炭素繊維を結合させて複合粒子化させることが提案されている。この構成では、活物質核の体積変化が起こっても導電性が確保され、サイクル特性が維持できることが報告されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−349056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらリチウム合金を形成しうる金属または半金属を含む活物質核に、複数の炭素繊維を結合させて複合粒子化させた場合でも、無作為に炭素繊維を配置すると、充電時に膨張した活物質核が放電時に収縮することで炭素繊維同士が互いに遠ざかる。したがって充放電を繰り返すと接触していた炭素繊維同士が徐々に非接触の状態になる。そのため充放電を繰り返すほど負極中の導電性が低下し、充放電容量が低下する。すなわち、サイクル特性が低い。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、高容量密度を有する活物質核を用い、サイクル特性を改善することで高容量かつ長寿命な非水電解質二次電池を実現する非水電解質二次電池用負極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の非電解質二次電池用電極は、活物質核に圧縮応力の大きいカーボンナノファイバ(CNF)が付着した複合活物質と、活物質核に圧縮応力の小さいCNFが付着した複合活物質とを含むことを特徴とする。ここで活物質核の放電状態における体積Bに対する充電状態における体積Aの比A/Bは、1.2以上であり、その理論容量密度は炭素材料より大きく833mAh/cmを超える。
【0008】
圧縮応力の大きいCNFは形状の維持性が高く、隣接する複合活物質の他のCNFと絡んで互いの接触を保てる半面、圧縮応力の大きさゆえに充電時に活物質核が膨張した際にCNFの反発力が強いために、隣接する複合活物質を弾き返し、負極の変形を促す。そこで圧縮応力の小さいCNFを適量活用し、上述した反発力を抑制することにより、高容量ながら充放電によって膨張・収縮する活物質核を用いた場合でも、非水電解質二次電池のサイクル特性を実用的なレベルに高めることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の非水電解質二次電池用電極を用いれば、高容量と実用的なサイクル特性とを実現することができる非水電解質二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の第1の発明は、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な第1の活物質核に第1のCNFが付着した第1の複合活物質と、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な第2の活物質核に第1のCNFより圧縮応力の小さい第2のCNFが付着した第2の複合活物質とを有する非水電解質二次電池用電極である。第1、第2の活物質核の放電状態における体積Bに対する充電状態における体積Aの比A/Bは、1.2以上である。第1の活物質核に付着した圧縮応力の大きい第1のCNFは他のCNFと絡んで互いの接触を保てる。ここへ圧縮応力の小さい第2のCNFが付着した第2の活物質核を含む第2の複合活物質を添加することにより、第1の活物質核の膨張に伴う第1のCNFの反発を抑制することにより、高容量ながら充放電によって膨張・収縮する活物質核を用いた場合でも、非水電解質二次電池のサイクル特性を実用的なレベルに高めることができる。
【0011】
本発明の第2の発明は、第1の発明において第1のCNFと第2のCNFとは実質的に同程度のバネ定数を有するとともに第2のCNFは第1のCNFより短い非水電解質二次電池用負極である。この構成はCNFの成長時間を変えることにより第1の発明を容易に具現化できる一手段である。
【0012】
本発明の第3の発明は、第1の発明において第1の活物質核の平均粒径と第2の活物質核の平均粒径とが実質的に同等であり、複合活物質全体に占める第1の複合活物質の重量比率を30%以上、50%以下とした非水電解質二次電池用負極である。第1の活物質核の平均粒径と第2の活物質核の平均粒径とが実質的に同等な場合、このような重量比率とすることによりCNF同士の接触を保ちつつ、第1のCNFによる反発が抑制されるためサイクル特性向上の観点から好ましい。
【0013】
本発明の第4の発明は、第1の発明において第1の活物質核の平均粒径を、第2の活物質核の平均粒径より大きくした非水電解質二次電池用負極である。活物質核の平均粒径を異ならせることにより、負極構成時に粒径の小さい第2の活物質核を有する第2の複合活物質が平均粒径の大きい第1の活物質核を有する第1の複合活物質同士の隙間に配置されるので、第1、第2の複合活物質の充填性が向上するのと同時に、その表面に付着させたCNF同士が接触する機会を増すことができる。そのため高容量化とサイクル特性の向上との観点から好ましい。
【0014】
本発明の第5の発明は、第4の発明において複合活物質全体に占める第1の複合活物質の重量比率を第2の複合活物質の重量比率より大きくした非水電解質二次電池用負極である。第4の発明の効果が顕著に発揮されるのは平均粒径の小さい第2の活物質核を有する第2の複合活物質が平均粒径の大きい第1の活物質核を有する第1の複合活物質同士の隙間に配置される状態の存在確率が大きい場合である。したがって第1の複合活物質の重量比率が第2の複合活物質の重量比率より大きいことが好ましい。
【0015】
本発明の第6の発明は、第5の発明において第1の複合活物質の重量比率を70%以上、90%以下とした非水電解質二次電池用負極である。このような重量比率で第1の活物質核を用いることにより、より顕著に第4の発明の効果が得られる。
【0016】
本発明の第7の発明は、第1の発明において第2の活物質核の平均粒径を、第1の活物質核の平均粒径より大きくした非水電解質二次電池用負極である。活物質核の平均粒径を異ならせることにより、負極構成時に粒径の小さい第1の活物質核を有する第1の複合活物質が平均粒径の大きい第2の活物質核を有する第2の複合活物質同士の隙間に配置されるので、第1、第2の複合活物質の充填性が向上する。また、平均粒径の大きい第2の活物質核からなる第2の複合活物質は、第2の活物質核の粒径が第2の複合活物質の粒径に対して相対的に大きくなるために圧縮応力が小さくなる。したがって第2の活物質核に付着した第2のCNFによる反発で引き起こされる負極の膨張は小さくなる。このように高容量化とサイクル特性の向上との観点から好ましい。
【0017】
本発明の第8の発明は、第7の発明において複合活物質全体に占める第2の複合活物質の重量比率を第1の複合活物質の重量比率より大きくした非水電解質二次電池用負極である。第7の発明の効果が顕著に発揮されるのは平均粒径の小さい第1の活物質核を有する第1の複合活物質が平均粒径の大きい第2の活物質核を有する第2の複合活物質同士の隙間に配置される状態の存在確率が大きい場合である。したがって第2の複合活物質の重量比率が第1の複合活物質の重量比率より大きいことが好ましい。
【0018】
本発明の第9の発明は、第8の発明において第2の複合活物質の重量比率を70%以上、90%以下とした非水電解質二次電池用負極である。このような重量比率で第2の複合活物質を用いることにより、より顕著に第7の発明の効果が得られる。
【0019】
本発明の第10の発明は、第1の発明において第1の活物質核と第2の活物質核とを実質的に同じ物質とした非水電解質二次電池用負極である。このように単一の活物質核を用いれば充放電反応も単一になるため充放電時の電圧変動も比較的単純になる。
【0020】
本発明の第11の発明は、第10の発明において第1の活物質核と第2の活物質核とをケイ素を含む材料で構成した非水電解質二次電池用負極である。含ケイ素粒子は活物質核として高容量密度であるため好ましい。
【0021】
本発明の第12の発明は、第10の発明において第1の活物質核と第2の活物質核とを酸化ケイ素とし、ケイ素に対する酸素の比率を0.3以上、1.3以下とした非水電解質二次電池用負極である。含ケイ素粒子の中でもこのような組成範囲の酸化ケイ素を用いることにより、活物質容量を確保しつつ、充放電による体積変化を抑制することができる。
【0022】
本発明の第13の発明は、上記いずれかの非水電解質二次電池用電極を用いて構成した非水電解質二次電池である。
【0023】
以下、本発明の構成を負極に適用した実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、本明細書に記載された基本的な特徴に基づく限り、以下に記載の内容に限定されるものではない。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1による非水電解質二次電池の断面図である。図2は、図1に示す非水電解質二次電池の負極合剤層における複合負極活物質の概念図である。このコイン型の電池は、非水電解質二次電池用電極である負極1と、負極1に対向し放電時にリチウムイオンを還元する非水電解質二次電池用第2電極である正極2と、負極1と正極2との間に介在しリチウムイオンを伝導する非水電解質3とを有する。すなわち、正極2は負極1とは異なる電位でリチウムイオンの吸蔵・放出が可能である。負極1および正極2は、非水電解質3とともにガスケット4と蓋体5とを用いてケース6内に収納されている。正極2は集電体7と正極活物質を含む正極合剤層8からなる。負極1は集電体10と、その表面に設けられた負極合剤層12とを有する。
【0025】
正極合剤層8はLiCoOやLiNiO、LiMn、またはこれらの混合あるいは複合化合物などのような含リチウム複合酸化物を正極活物質として含む。正極活物質としては上記以外に、LiMPO(M=V、Fe、Ni、Mn)の一般式で表されるオリビン型リン酸リチウム、LiMPOF(M=V、Fe、Ni、Mn)の一般式で表されるフルオロリン酸リチウムなども利用可能である。さらにこれら含リチウム化合物の一部を異種元素で置換してもよい。金属酸化物、リチウム酸化物、導電剤などで表面処理してもよく、表面を疎水化処理してもよい。
【0026】
正極合剤層8はさらに導電剤と、結着剤とを含む。導電剤としては、天然黒鉛や人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウムなどの金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、フェニレン誘導体などの有機導電性材料を用いることができる。
【0027】
また結着剤としては、負極1に用いるものと同様のものを用いることができる。すなわち、PVDF、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースなどが使用可能である。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。またこれらのうちから選択された2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
正極2に用いる集電体7としては、アルミニウム(Al)、炭素、導電性樹脂などが使用可能である。またこのいずれかの材料に、カーボンなどで表面処理したものを用いてもよい。
【0029】
非水電解質3には有機溶媒に溶質を溶解した非水溶液系の電解質溶液や、これらを含み高分子で非流動化されたいわゆるポリマー電解質層が適用可能である。少なくとも電解質溶液を用いる場合には正極2と負極1との間にポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、アミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミドなどからなる不織布や微多孔膜などのセパレータ(図示せず)を用い、これに電解質溶液を含浸させるのが好ましい。またセパレータの内部あるいは表面には、アルミナ、マグネシア、シリカ、チタニアなどの耐熱性フィラーを含んでもよい。セパレータとは別に、これらのフィラーと、電極に用いるのと同様の結着剤とから構成される耐熱層を設けてもよい。
【0030】
非水電解質3の材料は、活物質の酸化還元電位などを基に選択される。非水電解質3に用いるのが好ましい溶質としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAlCl、LiSbF、LiSCN、LiCFSO、LiN(CFSO)、LiN(CSO、LiAsF、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiF、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、ビス(1,2−ベンゼンジオレート(2−)−O,O’)ほう酸リチウム、ビス(2,3−ナフタレンジオレート(2−)−O,O’)ほう酸リチウム、ビス(2,2’−ビフェニルジオレート(2−)−O,O’)ほう酸リチウム、ビス(5−フルオロ−2−オレート−1−ベンゼンスルホン酸−O,O’)ほう酸リチウムなどのほう酸塩類、テトラフェニルホウ酸リチウムなど、一般にリチウム電池で使用されている塩類が適用できる。
【0031】
さらに上記塩を溶解させる有機溶媒には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシメタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、トリメトキシメタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのテトラヒドロフラン誘導体、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソランなどのジオキソラン誘導体、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、スルホラン、3−メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、エチルエーテル、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、フルオロベンゼンなどの1種またはそれ以上の混合物など、一般にリチウム電池で使用されているような溶媒が適用できる。
【0032】
さらに、ビニレンカーボネート、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、ジアリルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、カテコールカーボネート、酢酸ビニル、エチレンサルファイト、プロパンサルトン、トリフルオロプロピレンカーボネート、ジベニゾフラン、2,4−ジフルオロアニソール、o−ターフェニル、m−ターフェニルなどの添加剤を含んでいてもよい。
【0033】
なお、非水電解質3は、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエチレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンなどの高分子材料の1種またはそれ以上の混合物などに上記溶質を混合して、固体電解質として用いてもよい。また、上記有機溶媒と混合してゲル状で用いてもよい。さらに、リチウム窒化物、リチウムハロゲン化物、リチウム酸素酸塩、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiPO−LiSiO、LiSiS、LiPO−LiS−SiS、硫化リン化合物などの無機材料を固体電解質として用いてもよい。
【0034】
負極合剤層12は図2に示すように、第1の複合負極活物質34Aと第2の複合負極活物質34Bを含む。第1の複合負極活物質34Aは少なくともリチウムイオンの吸蔵放出が可能な第1の活物質核35Aとその表面に付着させた第1のカーボンナノファイバ(以下、CNFと略す)36Aを有する。第2の複合負極活物質34Bは少なくともリチウムイオンの吸蔵放出が可能な第2の活物質核35Bとその表面に付着させた第2のCNF36Bを有する。第1、第2のCNF36A、36Bは、第1、第2の活物質核35A、35Bの表面に付着あるいは固着しており、電池内では集電に対する抵抗が小さくなり、高い電子伝導性が維持される。第1の活物質核35Aと第2の活物質核35Bとは実質的に平均粒径が同じである。第1のCNF36Aは第2のCNF36Bに比べ圧縮応力が大きい。
【0035】
負極合剤層12はさらに図示しない結着剤を含む。結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースなどが使用可能である。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。
【0036】
集電体10には、ステンレス鋼、ニッケル、銅、チタンなどの金属箔、炭素や導電性樹脂の薄膜などが利用可能である。さらに、カーボン、ニッケル、チタンなどで表面処理を施してもよい。
【0037】
次に第1、第2の複合負極活物質34A、34Bについて詳細に説明する。第1、第2の活物質核35A、35Bとしては、ケイ素(Si)やスズ(Sn)などのように正極合剤層8に含まれる正極活物質材料よりも卑な電位でリチウムイオンを大量に吸蔵放出可能な材料を用いることができる。このような材料であれば、単体、合金、化合物、固溶体および含ケイ素材料や含スズ材料を含む複合活物質の何れであっても、本発明の効果を発揮させることは可能である。特に含ケイ素材料は容量密度が大きく安価であるため好ましい。すなわち、含ケイ素材料として、Si、SiO(0.05<x<1.95)、またはこれらのいずれかにB、Mg、Ni、Ti、Mo、Co、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Nb、Ta、V、W、Zn、C、N、Snからなる群から選択される少なくとも1つ以上の元素でSiの一部を置換した合金や化合物、または固溶体などを用いることができる。含スズ材料としてはNiSn、MgSn、SnO(0<x<2)、SnO、SnSiO、LiSnOなどが適用できる。
【0038】
これらの材料は単独で第1、第2の活物質核35A、35Bを構成してもよく、また複数種の材料により第1、第2の活物質核35A、35Bを構成してもよい。上記複数種の材料により第1、第2の活物質核35A、35Bを構成する例として、Siと酸素と窒素とを含む化合物やSiと酸素とを含み、Siと酸素との構成比率が異なる複数の化合物の複合物などが挙げられる。この中でもSiO(0.3≦x≦1.3)は、放電容量密度が大きく、かつ充電時の膨張率がSi単体より小さいため好ましい。
【0039】
また、第1の活物質核35Aと第2の活物質核35Bとは実質的に同組成で構成することが好ましい。このように単一の材料で第1、第2の活物質核35A、35Bを構成することにより充放電反応も単一になるため充放電時の電圧変動も比較的単純になる。
【0040】
第1、第2のCNF36A、36Bは、第1、第2の活物質核35A、35Bの表面に担持された触媒元素(図示せず)を核として成長して形成される。触媒元素として銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)およびマンガン(Mn)よりなる群から選択された少なくとも1種を用いることができ、第1、第2のCNF36A、36Bの成長を促進する。このように第1、第2のCNF36A、36Bが第1、第2の活物質核35A、35Bの表面に付着していることにより良好な充放電特性が期待できる。また触媒元素の介在によって第1、第2の活物質核35A、35Bへの結合力が強く、負極合剤層12を集電体10上に塗布する際の圧延負荷に対する負極1の耐久性を向上させることができる。
【0041】
第1、第2のCNF36A、36Bの成長が終了するまでの間、触媒元素が良好な触媒作用を発揮するためには、触媒元素が第1、第2の活物質核35A、35Bの表層部において金属状態で存在することが望ましい。触媒元素は、例えば粒径1nm〜1000nmの金属粒子の状態で存在することが望まれる。一方、第1、第2のCNF36A、36Bの成長終了後においては、触媒元素からなる金属粒子を酸化することが望ましい。
【0042】
第1、第2のCNF36A、36Bの繊維長は、1nm〜1mmが好ましく、500nm〜100μmがさらに好ましい。第1、第2のCNF36A、36Bの繊維長が1nm未満では、電極の導電性を高める効果が小さくなりすぎ、また繊維長が1mmを超えると、活物質密度や容量が小さくなる傾向がある。
【0043】
第1、第2のCNF36A、36Bの形態は、特に限定されないが、チューブ状カーボン、アコーディオン状カーボン、プレート状カーボンおよびヘーリング・ボーン状カーボンよりなる群から選択された少なくとも1種からなることが望ましい。第1、第2のCNF36A、36Bは、成長する過程で触媒元素を自身の内部に取り込んでもよい。また、第1、第2のCNF36A、36Bの繊維径は1nm〜1000nmが好ましく、10nm〜300nmがさらに好ましい。
【0044】
触媒元素は、金属状態で第1、第2のCNF36A、36Bを成長させるための活性点を与える。すなわち触媒元素が金属状態で表面に露出した第1、第2の活物質核35A、35Bを、第1、第2のCNF36A、36Bの原料ガスを含む高温雰囲気中に導入すると、第1、第2のCNF36A、36Bの成長が進行する。活物質粒子の表面に触媒元素が存在しない場合には、第1、第2のCNF36A、36Bは成長しない。
【0045】
第1、第2の活物質核35A、35Bの表面に触媒元素からなる金属粒子を設ける方法は、特に限定されないが、例えば固体の金属粒子を第1、第2の活物質核35A、35Bと混合することが考えられる。また金属粒子の原料である金属化合物の溶液に、第1、第2の活物質核35A、35Bを浸漬する方法が好適である。溶液に浸漬後の第1、第2の活物質核35A、35Bから溶媒を除去し、必要に応じて加熱処理すると、表面に均一にかつ高分散状態で、粒径1nm〜1000nm、好ましくは10nm〜100nmの触媒元素からなる金属粒子を担持した第1、第2の活物質核35A、35Bを得ることが可能である。
【0046】
触媒元素からなる金属粒子の粒径が1nm未満の場合、金属粒子の生成が非常に難しく、また1000nmを超えると、金属粒子の大きさが極端に不均一となり、第1、第2のCNF36A、36Bを成長させることが困難になったり、導電性に優れた電極が得られなくなったりすることがある。そのため、触媒元素からなる金属粒子の粒径は1nm以上、1000nm以下であることが望ましい。
【0047】
上記溶液を得るための金属化合物としては、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、硝酸鉄、硝酸銅、硝酸マンガン、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物などを挙げることができる。また溶液に用いる溶媒には、化合物の溶解度、電気化学的活性相との適性を考慮して、水、有機溶媒および水と有機溶媒との混合物の中から好適なものを選択すればよい。有機溶媒としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、テトラヒドロフランなどを用いることができる。
【0048】
一方、触媒元素を含む合金粒子を合成し、これを第1、第2の活物質核35A、35Bとして用いることもできる。この場合、Si、Snなどと触媒元素との合金を、通常の合金製造方法により合成する。Si元素やSn元素などは、電気化学的にリチウムと反応して合金を生成するので、電気化学的活性相が形成される。一方、触媒元素からなる金属相の少なくとも一部は、例えば粒径10nm〜100nmの粒子状で合金粒子の表面に露出する。
【0049】
触媒元素からなる金属粒子もしくは金属相は、第1、第2の活物質核35A、35Bの0.01重量%〜10重量%であることが望ましく、1重量%〜3重量%であることがさらに望ましい。金属粒子もしくは金属相の含有量が少なすぎると、第1、第2のCNF36A、36Bを成長させるのに長時間を要し、生産効率が低下する場合がある。一方、触媒元素からなる金属粒子もしくは金属相の含有量が多すぎると、触媒元素の凝集により、不均一で太い繊維径の第1、第2のCNF36A、36Bが成長するため、合剤層中の導電性や活物質密度の低下につながる。また、電気化学的活性相の割合が相対的に少なくなり、第1、第2の複合負極活物質34A、34Bを高容量の電極材料とすることが困難となる。
【0050】
次に、第1の活物質核35Aと第1のCNF36Aとから構成された第1の複合負極活物質34Aの製造方法について述べる。この製造方法は以下の4つのステップで構成される。
【0051】
(a)リチウムの吸蔵放出が可能な第1の活物質核35Aの少なくとも表層部に、第1のCNF36Aの成長を促進するCu、Fe、Co、Ni、MoおよびMnよりなる群から選択された少なくとも1種の触媒元素を設けるステップ。
【0052】
(b)炭素含有ガスおよび水素ガスを含む雰囲気中で、第1の活物質核35Aの表面に、第1のCNF36Aを成長させるステップ。
【0053】
(c)不活性ガス雰囲気中で、第1のCNF36Aが付着した第1の活物質核35Aを400℃以上、1600℃以下で焼成するステップ。
【0054】
(d)第1のCNF36Aが付着した第1の活物質核35Aを解砕してタップ密度を0.42g/cm以上、0.91g/cm以下に調整するステップ。
【0055】
ステップ(c)の後、さらに、大気中で第1の複合負極活物質34Aを100℃以上、400℃以下で熱処理して触媒元素を酸化してもよい。100℃以上、400℃以下の熱処理であれば、第1のCNF36Aを酸化させずに触媒元素だけを酸化することが可能である。
【0056】
ステップ(a)としては、第1の活物質核35Aの表面に触媒元素からなる金属粒子を担持するステップ、触媒元素を含む第1の活物質核35Aの表面を還元するステップ、Si元素やSn元素と触媒元素との合金粒子を合成するステップなどが挙げられる。ただしステップ(a)は上記に限られるものではない。
【0057】
次に、ステップ(b)において、第1の活物質核35Aの表面に第1のCNF36Aを成長させる際の条件について説明する。少なくとも表層部に触媒元素を有する第1の活物質核35Aを、第1のCNF36Aの原料ガスを含む高温雰囲気中に導入すると第1のCNF36Aの成長が進行する。例えばセラミック製反応容器に第1の活物質核35Aを投入し、不活性ガスもしくは還元力を有するガス中で100℃〜1000℃、好ましくは300℃〜600℃の高温になるまで昇温させる。その後、第1のCNF36Aの原料ガスである炭素含有ガスと水素ガスとを反応容器に導入する。反応容器内の温度が100℃未満では、第1のCNF36Aの成長が起こらないか、成長が遅すぎて生産性が損なわれる。また、反応容器内の温度が1000℃を超えると、原料ガスの分解が促進され第1のCNF36Aが成長し難くなる。
【0058】
原料ガスとしては、炭素含有ガスと水素ガスとの混合ガスが好適である。炭素含有ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、ブタン、一酸化炭素などを用いることができる。混合ガスにおける炭素含有ガスのモル比(体積比)は、20%〜80%が好適である。第1の活物質核35Aの表面に金属状態の触媒元素が露出していない場合には、水素ガスの割合を多めに制御することで、触媒元素の還元と第1のCNF36Aの成長とを並行して進行させることができる。第1のCNF36Aの成長を終了させる際には、炭素含有ガスと水素ガスとの混合ガスを不活性ガスに置換し、反応容器内を室温まで冷却する。
【0059】
続いて、ステップ(c)にて、第1のCNF36Aが付着した第1の活物質核35Aを、不活性ガス雰囲気中にて400℃以上、1600℃以下で焼成する。このようにすることで電池の初期充電時に進行する電解質と第1のCNF36Aとの不可逆反応が抑制され、優れた充放電効率を得ることができるため好ましい。このような焼成行程を行わないか、もしくは焼成温度が400℃未満では、上記の不可逆反応が抑制されず電池の充放電効率が低下することがある。また、焼成温度が1600℃を超えると、第1の活物質核35Aの電気化学的活性相と第1のCNF36Aとが反応して活性相が不活性化したり、電気化学的活性相が還元されて容量低下を引き起こしたりすることがある。例えば、第1の活物質核35Aの電気化学的活性相がSiである場合には、Siと第1のCNF36Aとが反応して不活性な炭化ケイ素が生成してしまい、電池の充放電容量の低下を引き起こす。なお、第1の活物質核35AがSiの場合、焼成温度は1000℃以上、1600℃以下が特に好ましい。なお、成長条件によって第1のCNF36Aの結晶性を高めることもできる。このように第1のCNF36Aの結晶性が高い場合には電解質と第1のCNF36Aとの不可逆反応も抑制されるため、ステップ(c)は必須ではない。
【0060】
不活性ガス中で焼成後の第1の複合負極活物質34Aは、さらに触媒元素からなる金属粒子もしくは金属相の少なくとも一部(例えば表面)を酸化するために、大気中で、100℃以上、400℃以下で熱処理することが好ましい。熱処理温度が100℃未満では、金属を酸化することは困難であり、400℃を超えると成長させた第1のCNF36Aが燃焼してしまうことがある。
【0061】
ステップ(d)では第1のCNF36Aが付着した焼成後の第1の活物質核35Aを解砕する。このようにすることにより、充填性の良好な第1の複合負極活物質34Aが得られるため好ましい。ただし、タップ密度が0.42g/cm以上、0.91g/cm以下の場合は必ずしも解砕する必要はない。すなわち、充填性のよい活物質核を原料に用いた場合、解砕する必要がない場合もある。
【0062】
第2の活物質核35Bと第2のCNF36Bとから構成された第2の複合負極活物質34Bも基本的には第1の複合負極活物質34Aと同様にして製造できる。ここで、第1のCNF36Aは第2のCNF36Bよりも圧縮応力が大きい。この差は、ステップ(a)で第1のCNF36Aの成長を促進する触媒元素を設けるステップで触媒径を変える制御をすることによって太さの異なるCNFを成長させたり、また、CNFの成長ステップでその反応時間を変えることによってCNFの長さを変えたりすることによって実現できる。図3は、CNFの長さを変えることで圧縮応力の異なる第1、第2のCNF36A、36Bを設けた状態を示している。
【0063】
次に負極合剤層12における第1、第2の複合負極活物質34A、34Bの状態とその効果について説明する。図2に示すように、本実施の形態における負極合剤層12では、圧縮応力の大きい第1のCNF36Aを含む第1の複合負極活物質34Aと圧縮応力の小さい第2のCNF36Bを含む第2の複合負極活物質34Bとが混在している。第1のCNF36Aは他の第1のCNF36Aや第2のCNF36Bと絡んで互いの接触を保てる半面、圧縮応力が大きいために反発力が大きく充電時に第1の活物質核35Aが膨張した際に第1のCNF36Aが反発して第1の活物質核35Aを弾き返し、負極1の変形を促す。そこで圧縮応力の小さい第2のCNF36Bを適量活用し、上述した反発を抑制することにより、高容量ながら課題の多い第1、第2の活物質核35A、35Bを用いた場合でも、非水電解質二次電池のサイクル特性を実用的なレベルに高めることができる。
【0064】
なお第1、第2のCNF36A、36Bの圧縮応力の大きさは以下のようにして判断できる。まず第1、第2のCNF36A、36Bの径が略同一でバネ定数が実質的に同等である場合、長いものほど圧縮応力は高い。また第1、第2のCNF36A、36Bの長さが略同一である場合、径が大きいのほど圧縮応力は高い。さらに第1、第2のCNF36A、36Bの径・長さともに略同一である場合、第1、第2の活物質核35A、35Bの表面に対する付着の角度が直角に近いものほど圧縮応力は高い。以上の判断は、走査型電子顕微鏡あるいは透過型電子顕微鏡による外観観察や、複合活物質から超音波でCNFを脱離させて、フロー式の粒子画像解析法で解析することによって可能である。
【0065】
図2では、第1のCNF36Aの長さを第2のCNF36Bの長さより長くすることにより第1のCNF36Aの圧縮応力を第2のCNF36Bの圧縮応力より大きくしているが、第1のCNF36A、36Bの径を10〜100nm、長さを10〜30μm、第2のCNF36Bの長さに対する第1のCNF36Aの長さの比率を2〜7とすれば、本発明の効果が得られやすい。
【0066】
なお第1、第2の活物質核35A、35Bの平均粒径が実質的に同等である場合、第1の活物質核35Aに圧縮応力が大きい第1のCNF36Aを付着させた第1の複合負極活物質34Aと第2の活物質核35Bに圧縮応力が小さい第2のCNF36Bを付着させた第2の複合負極活物質34Bとの重量比が30:70から50:50の範囲であることが好ましい。第1の複合負極活物質34Aと第2の複合負極活物質34Bとの重量比が30:70より小さい場合、圧縮応力の大きい第1のCNF36Aが不足するため他の第1、第2のCNF36A、36Bとの接触を保つのが困難になり、サイクル特性が若干低下する。また第1の複合負極活物質34Aと第2の複合負極活物質34Bとの重量比が50:50を超える場合、充電時に第1、第2の活物質核35A、35Bが膨張した際に第1のCNF36Aの反発がやや大きくなり、負極1が変形しやすくなってサイクル特性がやや低下する。
【0067】
なお、図3の概念図に示すように、第1の活物質核35Aの平均粒径が第2の活物質核35Bの平均粒径より大きいことが好ましい。このように第1、第2の活物質核35A、35Bの粒径を異ならせることにより、負極合剤層12中で粒径の小さい第2の活物質核35Bが粒径の大きい第1の活物質核35Aの隙間に配置される。そのため第1、第2の複合負極活物質34A、34Bの充填性が向上する。このため表面に付着させた第1のCNF36A同士、あるいは第1のCNF36Aと第2のCNF36Bとが接触する機会が増える。そのためサイクル特性がさらに向上する。
【0068】
この効果のメカニズムは鋭意解析中であるが、第2の活物質核35Bが第1のCNF36Aの圧縮応力を緩和する役割を担っていると考えられる。この状態で第1のCNF36Aは第2のCNF36Bと強固に絡み合えるので、放電時に第1の活物質核35Aが収縮して第1の活物質核35A同士の距離が大きくなった際に、第1のCNF36A同士が接触していた部分が徐々に非接触になっていくという不具合を起こすことはない。なお負極合剤層12における第1、第2の活物質核35A、35Bの充填密度が向上するため、電池容量も増加する。これらの効果によって、実用的なサイクル特性を有する非水電解質二次電池が得られる。
【0069】
また、第1の活物質核35Aの平均粒径が第2の活物質核35Bの平均粒径より大きい場合、第1、第2の複合負極活物質34A、34Bの総重量に占める第1の複合負極活物質34Aの重量比率が第2の複合負極活物質34Bの重量比率より大きいことが好ましい。これにより、第2の活物質核35Bが第1の活物質核35A同士の隙間に入り込んで上述の効果が得られやすい。また、第1の複合負極活物質34Aの重量比率は70%以上、90%以下であることがさらに好ましい。第1の複合負極活物質34Aの重量比率がこの範囲を逸脱すると、第2の活物質核35Bが第1の活物質核35Aの隙間に配置されることによる上述の効果が低下する。すなわち、第1の複合負極活物質34Aの重量比率がこの範囲にあることにより上述の効果が顕著に現れる。
【0070】
逆に、図4の概念図に示すように、第2の活物質核35Bの平均粒径が第1の活物質核35Aの平均粒径より大きくてもよい。粒径が大きい第2の活物質核35Bの隙間に粒径の小さい第1の活物質核35Aが配置されるので充填性が向上し、これらの表面に付着させた第2のCNF36Bと第1のCNF36Aとが接触する機会が増える。この構造では第2の活物質核35Bの表面に付着させた第2のCNF36Bの圧縮応力が相対的に小さいので、第1のCNF36Aの大きい圧縮応力によって起こる充填時の反発が抑制され、第1、第2の活物質核35A、35Bの充填性をさらに高めることができる。一方、第2のCNF36Bの圧縮応力が小さいため相互に絡み合う力が小さく、放電時に第1、第2の活物質核35A、35Bの距離が大きくなった際に、第2のCNF36B同士が接触していた部分が徐々に非接触になっていく。ここで第1の活物質核35Aの表面に付着させた第1のCNF36Aの圧縮応力が相対的に大きいことにより、第1のCNF36Aが第2のCNF36Bと強固に絡み合える。このため第2のCNF36B同士の非接触箇所の増加を防ぐことができる。さらに充放電に伴う第1、第2の活物質核35A、35Bの膨張収縮率が同じであっても、粒径が小さいために第1の活物質核35Aの膨張収縮の絶対量もまた小さい。そのため、充電時に第1の活物質核35Aが第2の活物質核35B同士の間隔を押し広げて負極1を変形させるような不具合を起こすことはない。これらの効果によって、実用的なサイクル特性を有する非水電解質二次電池が得られる。
【0071】
また、第2の活物質核35Bの平均粒径が第1の活物質核35Aの平均粒径より大きい場合、第1、第2の複合負極活物質34A、34Bの総重量に占める第2の複合負極活物質34Bの重量比率が第1の複合負極活物質34Aの重量比率より大きいことが好ましい。これにより、第1の活物質核35Aが第2の活物質核35B同士の隙間に入り込んで上述の効果が得られやすい。また、第2の複合負極活物質34Bの重量比率は70%以上、90%以下であることがさらに好ましい。第2の複合負極活物質34Bの重量比率がこの範囲を逸脱すると、第1の活物質核35Aが第2の活物質核35Bの隙間に配置されることによる上述の効果が低下する。すなわち、第2の複合負極活物質34Bの重量比率がこの範囲にあることにより上述の効果が顕著に現れる。
【0072】
なお第1の活物質核35Aと第2の活物質核35Bとは実質的に同じ物質とすることが好ましい。このように同組成の材料を用いれば充放電反応も単一になるため充放電時の電圧変動も比較的単純になる。
【0073】
次に、本発明の各実施の形態における具体的な実施例について説明する。なお、以下の実施例では、負極1の効果を明確にする目的で、正極2の代わりに金属リチウムを用いて図1と同様のコイン型二次電池を作製し評価した。
【0074】
(1)負極の作製
第1、第2の活物質核35A、35Bとして、サンプル1では、粒径10μm以下に粉砕したO/Si比(ケイ素に対する酸素の比率)がモル比で1.01である酸化ケイ素を使用した。
【0075】
また、触媒元素をこの酸化ケイ素粒子の表層部に結合するために、硝酸鉄9水和物(特級)1gをイオン交換水100gに溶解させた溶液を使用した。なお、酸化ケイ素粒子のモル比の測定は、JIS Z2613に基づく重量分析法に準じて行った。この酸化ケイ素粒子と硝酸鉄溶液との混合物を、1時間攪拌後、エバポレータ装置で水分を除去することで、酸化ケイ素粒子の表層部に均一に、かつ高分散状態で、粒径が、1nm〜1000nmの硝酸鉄を担持させた。
【0076】
次に、この硝酸鉄を担持した第1、第2の活物質核35A、35Bをセラミック製反応容器に投入し、ヘリウムガス存在下で500℃まで昇温させた。その後、ヘリウムガスを、水素ガス50体積%と一酸化炭素ガス50体積%との混合ガスにより置換し、500℃で保持した。この際の反応時間を、第1の活物質核35Aでは40分、第2の活物質核35Bでは7分とした。これにより、硝酸鉄を還元するとともに第1、第2の活物質核35A、35Bの表面に、繊維径が約80nmのプレート状の第1、第2のCNF36A、36Bを成長させた。第1のCNF36Aの繊維長は22μm、第2のCNF36Bの繊維長は7μmであった。
【0077】
次に、混合ガスを再びヘリウムガスにより置換し、反応容器内を室温になるまで冷却させた。成長した第1、第2のCNF36A、36Bの量は、酸化ケイ素100重量部当たりそれぞれ67重量部、20重量部であった。このようにして第1、第2の複合負極活物質34A、34Bを得た。これらを等重量ずつ採り、乾式で混合した。以下、この混合物を単に複合負極活物質と呼ぶ。
【0078】
次に、ペースト作製のために、複合負極活物質の100重量部に対し、結着剤として平均分子量が15万のポリアクリル酸1%水溶液を固形分に換算して10重量部と、コアシェル型変性スチレン−ブタジエン共重合体を10重量部とを混合し、さらに蒸留水200重量部を添加して混合分散し、負極合剤ペーストを調製した。
【0079】
この負極合剤ペーストを用いて、厚さ14μmのCu箔よりなる集電体10の片面にドクターブレード法により塗布、乾燥し、乾燥後の総厚み(銅箔を含む)が100μmとなるように負極合剤層12を形成した。その後、直径12.5mmの円形に打ち抜いて負極1を得た。
【0080】
サンプル2〜5では、第1、第2のCNF36A、36Bの成長時間を変えた以外はサンプル1と同様にして負極1を得た。サンプル2では第1、第2のCNF36A、36Bの成長時間をそれぞれ80分、3分とし、第1のCNF36Aの繊維長を33μm、第2のCNF36Bの繊維長を5μmとした。サンプル3では第1、第2のCNF36A、36Bの成長時間をそれぞれ55分、5分とし、第1のCNF36Aの繊維長を27μm、第2のCNF36Bの繊維長を6μmとした。サンプル4では第1、第2のCNF36A、36Bの成長時間をそれぞれ25分、9分とし、第1のCNF36Aの繊維長を17μm、第2のCNF36Bの繊維長を9μmとした。サンプル5では第1、第2のCNF36A、36Bの成長時間をそれぞれ20分、11分とし、第1のCNF36Aの繊維長を14μm、第2のCNF36Bの繊維長を10μmとした。
【0081】
サンプル6〜9では、第1、第2の複合負極活物質34A、34B全体に占める第1複合負極活物質34Aの配合比率を重量比率でそれぞれ25%、30%、60%、75%とした。これ以外はサンプル1と同様にして負極1を得た。
【0082】
サンプルA1では、第1、第2の活物質核35A、35Bとしてそれぞれ平均粒径15μm、5μmに粉砕しO/Si比(ケイ素に対する酸素の比率)がモル比で1.01である酸化ケイ素を使用した。また第1、第2のCNF36A、36Bの成長時間をそれぞれ20分、20分とし、第1のCNF36Aの繊維長を22μm、第2のCNF36Bの繊維長を7μmとした。成長した第1、第2のCNF36A、36Bの量は、酸化ケイ素100重量部当たりそれぞれ45重量部、41重量部であった。それ以外はサンプル1と同様にして負極1を得た。なお、第1、第2の複合負極活物質34A、34B全体に占める第1複合負極活物質34Aの配合比率はそれぞれ80%、20%とした。
【0083】
サンプルA2〜A5では、サンプルA1と同様の第1、第2の活物質核35A、35Bを用い、第1、第2のCNF36A、36Bの成長時間を変えた以外はサンプルA1と同様にして負極1を得た。サンプルA2では第1、第2のCNF36A、36Bの成長時間をそれぞれ38分、12分とし、第1のCNF36Aの繊維長を33μm、第2のCNF36Bの繊維長を5μmとした。サンプルA3では第1、第2のCNF36A、36Bの成長時間をそれぞれ30分、14分とし、第1のCNF36Aの繊維長を27μm、第2のCNF36Bの繊維長を6μmとした。サンプルA4では第1、第2のCNF36A、36Bの成長時間をそれぞれ14分、27分とし、第1のCNF36Aの繊維長を17μm、第2のCNF36Bの繊維長を9μmとした。サンプルA5では第1、第2のCNF36A、36Bの成長時間をそれぞれ10分、30分とし、第1のCNF36Aの繊維長を14μm、第2のCNF36Bの繊維長を10μmとした。
【0084】
サンプルA6〜A9では、第1、第2の複合負極活物質34A、34B全体に占める第1複合負極活物質34Aの配合比率を重量比率でそれぞれ40%、30%、10%、5%とした。これ以外はサンプル1と同様にして負極1を得た。
【0085】
サンプルB1では、第1、第2の活物質核35A、35Bとしてそれぞれ平均粒径5μm、15μmに粉砕しO/Si比(ケイ素に対する酸素の比率)がモル比で1.01である酸化ケイ素を使用した。第1、第2のCNF36A、36Bの成長時間をそれぞれ120分、5分とし、第1のCNF36Aの繊維長を22μm、第2のCNF36Bの繊維長を7μmとした。成長した第1、第2のCNF36A、36Bの量は、酸化ケイ素100重量部当たりそれぞれ133重量部、16重量部であった。それ以外はサンプル1と同様にして負極1を得た。なお、第1、第2の複合負極活物質34A、34B全体に占める第1、第2の複合負極活物質34A、34Bの配合比率はそれぞれ80%、20%とした。
【0086】
サンプルB2〜B5では、サンプルB1と同様の第1、第2の活物質核35A、35Bを用い、第1、第2のCNF36A、36Bの成長時間を変えた以外はサンプルA1と同様にして負極1を得た。サンプルB2では第1、第2のCNF36A、36Bの成長時間をそれぞれ240分、3分とし、第1のCNF36Aの繊維長を33μm、第2のCNF36Bの繊維長を5μmとした。サンプルB3では第1、第2のCNF36A、36Bの成長時間をそれぞれ180分、4分とし、第1のCNF36Aの繊維長を27μm、第2のCNF36Bの繊維長を6μmとした。サンプルB4では第1、第2のCNF36A、36Bの成長時間をそれぞれ80分、8分とし、第1のCNF36Aの繊維長を17μm、第2のCNF36Bの繊維長を9μmとした。サンプルB5では第1、第2のCNF36A、36Bの成長時間をそれぞれ55分、10分とし、第1のCNF36Aの繊維長を14μm、第2のCNF36Bの繊維長を10μmとした。
【0087】
サンプルB6〜B9では、第1、第2の複合負極活物質34A、34B全体に占める第2の複合負極活物質34Bの配合比率を重量比率でそれぞれ60%、70%、90%、95%とした。これ以外はサンプルB1と同様にして負極1を得た。
【0088】
なお、比較のため、以下のサンプルを作製した。サンプルC1、C2ではそれぞれ、サンプル1における第1の複合負極活物質34Aのみ、第2の複合負極活物質34Bのみを使用した。それ以外はサンプル1と同様にして負極1を得た。サンプルC3では、サンプルA1と同様の第1、第2の活物質核35A、35Bを用い、その両方にサンプルA1における第1のCNF36Aと同様の繊維長22μmのCNFを付着させた。それ以外はサンプルA1と同様にして負極1を得た。サンプルC4では、サンプルB1と同様の第1、第2の活物質核35A、35Bを用い、その両方にサンプルB1における第2のCNF36Bと同様の繊維長22μmのCNFを付着させた。それ以外はサンプルB1と同様にして負極1を得た。
【0089】
(2)電池の作製と評価
上記のように作製した負極1を、直径20mm、厚さ1.6mmのケース6に挿入した。その上に厚さ20μmのセパレータを介してリチウム金属を配置後、非水電解質3である電解液を数滴注入し、封口して理論容量5mAh前後の電池を作製した。電解液は、EC:EMC=3:7(体積比)である混合溶媒に1.0mol/dmのLiPFを溶解させて調製した。
【0090】
このようにして作製した各電池を0.5mAの定電流で0Vまで放電し、続いて0.5mAの定電流で1Vまで充電した。この操作を3回繰り返した。この3回目の充電容量を初期容量とした。その後、0.5mAの定電流で0Vまで放電し、続いて0.5mAの定電流で1Vまで充電する充放電サイクルを100回繰り返した。そして100回目の充電容量を初期容量で除して容量維持率を算出し、サイクル特性の指標とした。なお、本実施例では金属リチウムより電位の貴な負極1を金属リチウムと組み合わせて電池を構成しているため、充電により負極1がリチウムイオンを放出し、放電により負極1がリチウムイオンを吸蔵する。すなわち、通常の電池の場合と逆になっている。
【0091】
まずサンプル1〜9とサンプルC1、C2の諸元と評価結果を(表1)に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
サンプル1とサンプルC1、C2とを比較すると、明らかにサンプル1のほうが良好なサイクル特性を示している。サンプル1では負極合剤層12中で長さが異なり圧縮応力の異なる第1、第2のCNF36A、36Bがそれぞれ設けられた第1、第2の複合負極活物質34A、34Bが混在している。圧縮応力の大きい第1のCNF36Aは他の第1のCNF36Aや第2のCNF36Bと絡んで互いの接触を保てる。ここへ圧縮応力の小さい第2のCNF36Bが付着した第2の複合負極活物質34Bが添加されることにより、第1のCNF36Aによる反発が抑制されている。このため第1のCNF36Aによる負極1の変形が抑制されることにより、サイクル特性が向上している。
【0094】
一方、サンプルC1では全ての第1、第2の活物質核35A、35Bに圧縮応力の大きい第1のCNF36Aが付着しているため、充放電に伴う第1の活物質核35Aの膨張、収縮により負極1が変形するためサイクル特性が低下している。またサンプルC2では全ての第1、第2の活物質核35A、35Bに圧縮応力の小さい第2のCNF36Bが付着している。そのため、第2のCNF36B同士の接触が充分でなく、負極合剤層12内の導電ネットワークの形成が充分ではない。そのためサイクル特性が低下している。
【0095】
サンプル1〜5の中では、特にサンプル1のサイクル特性が良好であり、次いでサンプル3、4が良好となっている。以上より、第1、第2のCNF36A、36Bの長さの比率には好ましい範囲があることがわかる。すなわち、第1、第2のCNF36A、36Bの長さの比は大きすぎても小さすぎても好ましくない。これは第1のCNF36Aが長すぎると圧縮応力が大きすぎて第1の活物質核35Aの膨張に伴う応力を第2の複合負極活物質34Bが吸収できないからである。また第1、第2のCNF36A、36Bの長さの比が小さいと、両者の長さが異なることによる効果が減少するためと考えられる。
【0096】
サンプル1およびサンプル6〜9の比較では、第1の複合負極活物質34Aの重量比率が30%〜50%の場合にサイクル特性が良好である。このように第1、第2の活物質核35A、35Bの平均粒径が同等である場合には、このような重量比率とすることが好ましい。
【0097】
次にサンプルA1〜A9とサンプルC3の諸元と評価結果を(表2)に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
サンプルA1とサンプルC3とを比較すると、明らかにサンプルA1のほうが良好なサイクル特性を示している。サンプルA1では負極合剤層12中に、長さが長く圧縮応力の大きい第1のCNF36Aが平均粒径の大きい第1の活物質核35Aに付着した第1の複合負極活物質34Aと、長さが短く圧縮応力の小さい第2のCNF36Bが平均粒径の小さい第2の活物質核35Bに付着した第2の複合負極活物質34Bが混在している。この状態では、第1の活物質核35A同士の隙間に第2の活物質核35Bが入り込む。この状態で第1のCNF36Aは第2のCNF36Bと強固に絡み合えるので、放電時に第1の活物質核35Aが収縮して第1の活物質核35A同士の距離が大きくなった際に、第1のCNF36A同士が接触していた部分が徐々に非接触になっていくという不具合を起こすことはない。そのためサイクル特性が向上している。
【0100】
一方、サンプルC3では第1、第2の活物質核35A、35Bともに、長さが長く圧縮応力の大きい第1のCNF36Aと同様のCNFが付着している。そのため充電により第1、第2の活物質核35A、35Bが膨張した際の第1のCNF36A同士の反発が大きく、負極1が変形する。そのためサイクル特性が低い。
【0101】
サンプルA1〜A5の中では、特にサンプルA1のサイクル特性が良好であり、次いでサンプルA3、A4が良好となっている。以上より、サンプルA1〜A5の場合と同様に、第1のCNF36A、36Bの長さの比率には好ましい範囲があることがわかる。
【0102】
サンプルA1およびサンプルA6〜A9の比較では、第1の複合負極活物質34Aの重量比率が70%〜90%の場合にサイクル特性が良好である。このように第1の活物質核35Aの平均粒径が第2の活物質核35Bの平均粒径より大きい場合には、このような重量比率とすることが好ましい。
【0103】
次にサンプルB1〜B9とサンプルC4の諸元と評価結果を(表3)に示す。
【0104】
【表3】

【0105】
サンプルB1とサンプルC4とを比較すると、明らかにサンプルB1のほうが良好なサイクル特性を示している。サンプルB1では負極合剤層12中に、長さが長く圧縮応力の大きい第1のCNF36Aが平均粒径の小さい第1の活物質核35Aに付着した第1の複合負極活物質34Aと、長さが短く圧縮応力の小さい第2のCNF36Bが平均粒径の大きい第2の活物質核35Bに付着した第2の複合負極活物質34Bが混在している。この状態では、第1の活物質核35A同士の隙間に第2の活物質核35Bが入り込む。この状態で第1のCNF36Aは第2のCNF36Bと強固に絡み合えるので、放電時に第2の活物質核35Bが収縮して第2の活物質核35B同士の距離が大きくなった際に、第2のCNF36B同士が接触していた部分が徐々に非接触になっていくという不具合を起こすことはない。そのためサイクル特性が向上している。
【0106】
一方、サンプルC4では第1、第2の活物質核35A、35Bともに、長さが長く圧縮応力の大きい第2のCNF36Bが付着している。そのため充電により第1、第2の活物質核35A、35Bが膨張した際の第2のCNF36B同士の反発が大きく、負極1が変形する。そのためサイクル特性が低い。
【0107】
サンプルB1〜B5の中では、特にサンプルB1のサイクル特性が良好であり、次いでサンプルB3、B4が良好となっている。以上より、サンプル1〜5の場合と同様に、第1、第2のCNF36A、36Bの長さの比率には好ましい範囲があることがわかる。
【0108】
サンプルB1およびサンプルB6〜B9の比較では、第2の複合負極活物質34Bの重量比率が70%〜90%の場合にサイクル特性が良好である。このように第2の活物質核35Bの平均粒径が第1の活物質核35Aの平均粒径より大きい場合には、このような重量比率とすることが好ましい。
【0109】
なお、本実施例ではコイン型二次電池について説明したが、本発明に係わる電池の形状は、これに限定するものではなく、平型電池、捲回式の円筒型電池、捲回式または積層構造の角形電池にも適用することができる。また、本実施の形態では圧縮応力の異なる2種類の第1、第2のCNF36A、36Bを用いた例を説明したが、圧縮応力の異なる3種類以上のCNFを用いてもよい。
【0110】
また、上記説明では本発明の構成を負極に適用した場合について説明したが、活物質核の放電状態における体積に対する充電状態における体積の比が1.2以上であれば、正極に適用してもよい。この場合には非水電解質二次電池用電極は正極、非水電解質二次電池用電極とは異なる電位でリチウムイオンの吸蔵・放出が可能な非水電解質二次電池用第2電極は負極となる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能で放電状態における体積に対する充電状態における体積の比が、1.2以上である活物質核に圧縮応力の異なるCNFが付着した2種類以上の複合負極活物質を用いて負極合剤層を形成している。このような構成により、実用的なサイクル特性を有する非水電解質二次電池が得られる。すなわち本発明は、炭素材料よりも高容量密度な活物質核にCNFが付着した複合負極活物質を用いる非水電解質二次電池のサイクル特性向上に寄与する。そのため、今後大きな需要が期待されるリチウム二次電池の高エネルギー密度に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の実施の形態1による非水電解質二次電池の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における負極中の複合負極活物質の概略図
【図3】本発明の実施の形態1における負極中の複合負極活物質の他の概略図
【図4】本発明の実施の形態1における負極中の複合負極活物質のさらに他の概略図
【符号の説明】
【0113】
1 負極
2 正極
3 非水電解質
4 ガスケット
5 蓋体
6 ケース
7,10 集電体
8 正極合剤層
12 負極合剤層
34A 第1の複合負極活物質
34B 第2の複合負極活物質
35A 第1の活物質核
35B 第2の活物質核
36A 第1のカーボンナノファイバ(CNF)
36B 第2のカーボンナノファイバ(CNF)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な第1の活物質核に第1のカーボンナノファイバを付着させた第1の複合負極活物質と、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な第2の活物質核に第2のカーボンナノファイバを付着させた第2の複合活物質とからなり、第2の複合活物質を圧縮したときの圧縮応力が第1の複合活物質を圧縮した時の圧縮応力より小さいことを特徴とし、かつ前記第1、第2の活物質核の放電状態における体積に対する充電状態における体積の比を1.2以上とした非水電解質二次電池用電極。
【請求項2】
前記第1のカーボンナノファイバと前記第2のカーボンナノファイバとは同等のバネ定数を有するとともに前記第2のカーボンナノファイバを前記第1のカーボンナノファイバより短くした請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項3】
前記第1の活物質核の平均粒径と前記第2の活物質核の平均粒径とが同等であり、前記第1の複合活物質と前記第2の複合活物質とを含む複合活物質全体に占める前記第1の複合活物質の重量比率を30%以上、50%以下とした請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項4】
前記第1の活物質核の平均粒径を、前記第2の活物質核の平均粒径より大きくした請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項5】
前記第1の複合活物質と前記第2の複合活物質とを含む複合活物質全体に占める前記第1の複合活物質の重量比率を、前記第2の複合活物質の重量比率より大きくした請求項4に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項6】
前記第1の複合活物質の重量比率を70%以上、90%以下とした請求項5に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項7】
前記第2の活物質核の平均粒径を、前記第1の活物質核の平均粒径より大きくした請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項8】
前記第1の複合活物質と前記第2の複合活物質とを含む複合活物質全体に占める前記第2の複合活物質の重量比率を、前記第1の複合活物質の重量比率より大きくした請求項7に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項9】
前記第2の複合活物質の重量比率を70%以上、90%以下とした請求項8に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項10】
前記第1の活物質核と前記第2の活物質核とを同じ物質とした請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項11】
前記非水電解質二次電池用電極は負極であり、前記第1の活物質核と前記第2の活物質核とがケイ素を含む材料で構成した請求項10に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項12】
前記第1の活物質核と前記第2の活物質核とが酸化ケイ素であり、ケイ素に対する酸素の比率を0.3以上、1.3以下とした請求項11に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池用電極と、前記非水電解質二次電池用電極とは異なる電位でリチウムイオンの吸蔵・放出が可能な非水電解質二次電池用第2電極と、前記非水電解質二次電池用電極と前記非水電解質二次電池用第2電極との間に介在させた非水電解質とを備えた非水電解質二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−227138(P2007−227138A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46553(P2006−46553)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】