説明

非水電解質二次電池

【課題】 本発明は、振動や衝撃に対し高い耐久性を備える非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】 非水電解質二次電池は、外装材6と、外装材内に収納され、負極集電体9及び負極集電体の表面に形成された負極活物質層を有する複数の負極4と、正極集電体8及び正極集電体の表面に形成された正極活物質層を有する複数の正極3と、負極活物質層及び正極活物質層に挟まれ非水電解質が充填されたセパレータ5と、が積み重ねられた発電要素と、発電要素から突出した負極集電体の延部の夫々に、電気的に接続した負極端子2と、発電要素から突出した正極集電体の延部の夫々に、電気的に接続した正極端子1と、各々の負極集電体の延部の隙間及び各々の正極集電体の延部の隙間を埋める粘着テープ7と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型の非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
Liイオンが負極と正極とを移動することにより充放電が行われる非水電解質二次電池は、高エネルギー密度電池として盛んに研究開発が進められている。
【0003】
非水電解質二次電池は、その用途により様々な特性が望まれる。例えば、ハイブリッド電気自動車等の車載用では、高出力特性、放熱性の他、振動や衝撃に対する高い耐久性が望まれる。
【0004】
積層型の非水電解質二次電池は、高出力特性、放熱性等に優れるため、車載用として有望である。
【0005】
通常、積層型非水電解質二次電池においては、集電体の延部を負極及び正極の積層構造からなる発電要素から突出させ、その端を結合し、外部端子へと接続している。しかし、集電体は金属箔からなるため、発電要素及び外部端子に比して機械的強度が低く、振動に由来する金属疲労による破断や、衝撃による破損が生じやすかった。さらに、振動や衝撃により、集電体が発電要素端のセパレータを破損し、内部短絡を生じさせていた。
【0006】
一般に、このような内部短絡を避けるため、集電体の一部を絶縁性の粘着テープで覆うことが提案されている。例えば、円筒型二次電池において、発電要素上部から突出した集電体の端部を絶縁性の粘着テープで覆うことが提案されている。(特許文献1参照。)。特許文献1によれば、非水電解質の注入口を確保するため、粘着テープと集電体との間に隙間がある。このため、この発明は、確かに内部短絡を防ぐ効果があるが、振動及び衝撃により集電体の破損を防ぐ効果が不十分であった。
【特許文献1】特開平11−86833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、振動や衝撃に対し高い耐久性を備える非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
非水電解質二次電池は、外装材と、外装材内に収納され、負極集電体及び負極集電体の表面に形成された負極活物質層を有する複数の負極と、正極集電体及び正極集電体の表面に形成された正極活物質層を有する複数の正極と、負極活物質層及び正極活物質層に挟まれ非水電解質が充填されたセパレータと、が積み重ねられた発電要素と、発電要素から突出した負極集電体の延部の夫々に、電気的に接続した負極端子と、発電要素から突出した正極集電体の延部の夫々に、電気的に接続した正極端子と、各々の負極集電体の延部の隙間及び各々の正極集電体の延部の隙間を埋める粘着テープと、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、振動や衝撃に対し高い耐久性を備える非水電解質二次電池を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は発明の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0011】
図1は、本実施の形態に係わる非水電解質二次電池の一例を示す断面模式図である。図1には、便宜上、3層の正極3と2層の負極4とからなる発電要素を有する積層型の非水電解質二次電池を示した。また、便宜上、図1は縦方向に偏倍している。
【0012】
図1に示すように、正極3は、正極集電体8及び正極集電体8の両面に形成された正極活物質層からなる。同様に、負極4は、負極集電体9及び負極集電体9の両面に形成された負極活物質層からなる。正極3と負極4との間には、非水電解質が充填されたセパレータ5が挟まる。正極3と、負極4と、セパレータ5と、からなる積層構造が発電要素である。
【0013】
正極集電体8は、発電要素から突出した延部を有する。その延部の端では、各々の正極集電体8が結合され、その結合箇所が、正極端子1に接続する。負極集電体9についても同様である。
【0014】
粘着テープ7は、発電要素に隣接し、各々の正極集電体8の延部の隙間に備わる。粘着テープ7は、基材7aの両面に粘着材層7bを有し、正極集電体8の延部表面に粘着している。負極集電体8についても同様である。
【0015】
図2は、本実施の形態に係わる非水電解質二次電池の一例を示す上面模式図である。便宜上、正極3と、セパレータ5と、負極4と、からなる積層を示した。
【0016】
図2に示すように、セパレータ5より一回り小さい実線で表された長方形状の領域はセパレータ5の紙面表側にある正極3を指し、正極3より一回り小さい点線で表された長方形状の領域はセパレータ5の紙面裏側にある負極4を指す。電極群は積層からなり、紙面上面から順に、正極活物質層、正極集電体8、正極活物質層、セパレータ5、負極活物質層、負極集電体9、負極活物質層である。正極集電体8は突出した延部を有し、その延部は正極活物質層3未塗布である。負極集電体9も同様である。正極集電体8の延部と負極集電体9の延部とは対辺を向く。正極集電体8の延部は、正極端子1に接続し、負極集電体9の延部は、負極端子2に接続する。
【0017】
粘着テープ7は、セパレータ5に近接した正極集電体8の延部における紙面表裏の両面と、セパレータ5に近接した負極集電体9の延部における紙面表裏両面と、に備わる。
【0018】
本発明によれば、集電体延部の機械的強度の弱い部位に、緩衝効果及び補強効果を有する粘着テープを備えることにより、振動及び衝撃に対する耐久性を高めることができる。
【0019】
また、本発明によれば、粘着テープは発電要素に隣接した集電体に粘着されるため、集電体によるセパレータの破損を抑制し、振動及び衝撃に対する耐久性を高めることができる。
【0020】
また、本発明によれば、緩衝効果を有する粘着テープは発電要素に近接し、電極層の層間を保持するため、正極端子及び負極端子に加わる外部応力に起因する電極間隔のばらつきを補正できる。
【0021】
一般に、負極と正極との電極間隔にばらつきがある場合、電極が近接した箇所ほど、低抵抗となり、電流の流れが集中する。すると、当該箇所は、局所的に過放電及び過充電反応が生じ、電池劣化につながる。この現象は、急速充放電であると、顕著に表れる。従って、本実施の形態の非水電解質二次電池は、急速充放電が求められる場合に、好適である。
【0022】
また、この現象は、電極間隔が狭いほど、顕著に表れる。従って、本実施の形態の非水電解質二次電池は、狭い電極間隔、例えば、30μm以上100μm以下程度の正極及び負極厚さを要する場合に、好適である。なお、このような薄い電極は、車載用等の高出力特性が求められる場合に用いられる。
【0023】
また、本発明は、集電体の端を連結させる際に、超音波溶接法を用いる場合に好適である。本実施の形態の非水電解質二次電池の製造方法においては、正極負極夫々の集電体の延部に適宜粘着テープを張りつつ、正極と負極とセパレータとを積み重ね、その後、集電体の端を結合させる。この結合部作成の際に超音波溶接法を用いる場合、超音波溶接の振動を粘着テープが和らげるため、活物質層が集電体から剥れ難くなる。
【0024】
なお、本実施の形態の非水電解質二次電池は、上述したように、振動及び衝撃に優れるため、車載用電池に特に適する。
【0025】
以下、粘着テープ、正極、負極、セパレータ、非水電解質及び外装材について、詳細に説明する。
【0026】
1)粘着テープ
粘着テープは、基材及び基材の両面に備わる粘着材層、又は、粘着材層のみからなる。前者は、製造工程上粘着テープを張りやすいという利点があり、後者は、その柔軟性から緩衝効果が大きいという利点がある。
【0027】
基材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、フッ素樹脂、紙、不織布などが挙げられる。特に、PE及びPPは、柔軟であり、後述する下記(式1)を満たしやすいため、好ましい。
【0028】
粘着材としては、例えば、アクリル系粘着材、シリコーン系粘着材などが挙げられる。
【0029】
集電体について、厚さをt1、破断応力をσ1、伸びをε1とし、粘着テープについて、厚さをt2、破断応力をσ2、伸びをε2としたときに、
σ1t1>σ2t2かつε1<ε2 (式1)
を満たすことが好ましい。
【0030】
(式1)を満たす粘着テープは、振動及び衝撃の緩衝材としての効果が高く、集電体が金属疲労の蓄積により破断するのを抑制できる。
【0031】
また、粘着テープは、粘着テープ厚さをt2、正極厚さをt3、負極厚さをt4、セパレータ厚さをt5としたとき、
t3+t4<t2<t3+t4+t5×2 (式2)
の範囲であることが好ましい。
【0032】
粘着テープの厚さがこの上限であると、集電体の延部の厚さを、発電要素の厚さと同等以下にできる。粘着テープの厚さがこの下限であると、集電体の機械的自由度を低減し、発電要素の端のセパレータの破膜を効果的に低減できる。
【0033】
2)正極
正極は、正極集電体と、正極集電体の片面若しくは両面に担持され、正極活物質、正極導電剤及び結着剤を含む正極層と、を有する。
【0034】
正極活物質としては、酸化物、ポリマー等が挙げられる。
【0035】
例えば、酸化物としては、Liを吸蔵した二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、及び、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4またはLixMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1-yCoyO2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiMnyCo1-yO2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2-yNiyO4)、オリピン構造を有するリチウムリン酸化物(LixFePO4、LixFe1-yMnyPO4、LixCoPO4等)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5) 等が挙げられる。
【0036】
例えば、ポリマーとしては、ポリアニリンやポリピロール等の導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料等が挙げられる。その他に、イオウ(S)、フッ化カーボン等も使用できる。
【0037】
好ましい正極活物質としては、正極電圧が高いリチウムマンガン複合酸化物(LixMn2O4)、リチウムニッケル複合酸化物(LixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LixNi1-yCoyO2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2-yNiyO4)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(LixMnyCo1-yO2)、リチウムリン酸鉄(LixFePO4)等が挙げられる。(なお、x、yは0〜1の範囲であることが好ましい。)
集電性能を高め、集電体との接触抵抗を抑えるための正極導電剤としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、人工黒鉛、天然黒鉛等を挙げることができる。
【0038】
正極活物質と正極導電剤を結着させるための結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、水素もしくはフッ素が置換された変性PVdF、フッ化ビニリデン−6フッ化プロピレンの共重合体、ポリフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−6フッ化プロピレンの3元共重合体等を用いることができる。
【0039】
正極活物質、正極導電剤及び結着剤の配合比については、正極活物質は80重量%以上95重量%以下、正極導電剤は3重量%以上18重量%以下、結着剤は2重量%以上17重量%以下の範囲にすることが好ましい。正極導電剤については、3重量%以上であることにより上述した効果を発揮することができ、18重量%以下であることにより、高温保存下での正極導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。結着剤については、2重量%以上であることにより十分な電極強度が得られ、17重量%以下であることにより、電極の絶縁体の配合量を減少させ、内部抵抗を減少できる。
【0040】
正極集電体は、アルミニウム箔若しくはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金箔が好ましい。正極集電体の厚さは、8μm以上25μm以下が好ましい。
【0041】
正極は、例えば、正極活物質、正極導電剤及び結着剤を適当な溶媒に懸濁し、この懸濁し作製したスラリーを、正極集電体に塗布し、乾燥し、正極層を作製した後、プレスを施すことにより作成される。その他、正極活物質、正極導電剤及び結着剤をペレット状に形成し、正極層として用いても良い。
【0042】
正極活物質、正極導電剤及び結着剤を分散させるための溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)等が使用される。
【0043】
3)負極
負極は、負極集電体と、負極集電体の片面若しくは両面に担持され、負極活物質、負極導電剤および結着剤を含む負極層と、を有する。
【0044】
負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵放出することを特徴する炭素質物、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属合金などが挙げられる。
【0045】
炭素質物として、例えば、コークス、炭素繊維、熱分解気相炭素物、黒鉛、樹脂焼成体、メソフェーズピッチ系炭素繊維またはメソフェーズ球状カーボンの焼成体などを挙げることができる。中でも、2500℃以上で黒鉛化したメソフェーズピッチ系炭素繊維またはメソフェーズ球状カーボンを用いると電極容量が高くなるため好ましい。
【0046】
金属酸化物として、例えば、チタン酸リチウム(Li4+xTi5O12)、タングステン酸化物(WO3)、アモルファススズ酸化物(例えばSnB0.4P0.6O3.1)、スズ珪素酸化物(SnSiO3)、酸化珪素(SiO)などが挙げられる。中でも、チタン酸リチウム(Li4+xTi5O12)は、急速充放電においても、リチウムデンドライトが生じ難いため、好ましい。
【0047】
金属硫化物として、例えば、硫化リチウム(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2),硫化鉄(FeS、FeS2、LixFeS2)などが挙げられる。
【0048】
金属窒化物として、例えば、リチウムコバルト窒化物(LixCoyN、0<x<4,0<y<0.5)などが挙げられる。
【0049】
導電剤として、炭素材料を用いることができる。例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、黒鉛等を挙げることができる。
【0050】
結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を用いることができる。
【0051】
負極集電体は、1.0Vよりも貴である電位範囲において電気化学的に安定であるアルミニウム箔若しくはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金箔が好ましい。負極集電体の厚さは、8μm以上25μm以下が好ましい。
【0052】
負極活物質層中の、負極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、負極活物質80重量%以上95重量%以下、導電剤3重量%以上20重量%以下、結着剤2重量%以上7重量%以下の範囲にすることが好ましい。導電剤については、20重量%以下であることにより、高温保存下での導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。結着剤については、2重量%以上であることにより十分な電極強度が得られ、7重量%以下であることにより、電極の絶縁体の割合を減少させることが出来る。
【0053】
負極は、例えば、負極活物質、負極導電剤及び結着剤を汎用されている溶媒に懸濁し作製したスラリーを、負極集電体に塗布し、乾燥し、負極層を作製した後、プレスを施すことにより作製される。その他、負極活物質、負極導電剤及び結着剤をペレット状に形成し、負極層として用いても良い。
【0054】
負極活物質、負極導電剤及び結着剤を分散させるための溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)等が使用される。
【0055】
4)セパレータ
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、またはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、合成樹脂製不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン又はポリプロピレンからなる多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能であり、安全性向上の観点から好ましい。
【0056】
5)非水電解質
非水電解質としては、電解質を有機溶媒に溶解することにより調整される液状非水電解質、液状電解質と高分子材料を複合化したゲル状非水電解質が挙げられる。また、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)を使用してもよい。
【0057】
液状非水電解質は、電解質を0.5~2mol/lの濃度で有機溶媒に溶解することにより、調製される。
【0058】
電解質としては、例えば、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、Li(CF3SO2)3C、LiB[(OCO)2]2などの一種以上の電解質を挙げることができる。
【0059】
有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)などの環状カーボネートや、ジエチレルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)などの鎖状カーボネートや、ジメトキシエタン(DME)、ジエトエタン(DEE)などの鎖状エーテルや、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン(DOX)などの環状エーテルや、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、スルホラン(SL)−などの単独もしくは混合溶媒を挙げることができる。
【0060】
高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。
【0061】
また、常温溶融塩(イオン性融体)は、リチウムイオン、有機物カチオンおよび有機物アニオンから構成され、100℃以下、好ましくは室温以下でも液状である。
【0062】
6)外装材
外装材としては、肉厚0.2mm以下のラミネートフィルムや、肉厚0.5mm以下の金属製容器が挙げられる。肉厚0.2mm以下であるとより好ましい。
【0063】
ラミネートフィルムは、金属層と金属層を被覆する樹脂層とからなる多層フィルムである。軽量化のために、金属層はアルミニウム箔若しくはアルミニウム合金箔が好ましい。樹脂層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子を用いることができる。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより成形する。
【0064】
金属製容器は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等が挙げられる。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等の元素を含む合金が好ましい。一方、鉄、銅、ニッケル、クロム等の遷移金属は100ppm以下にすることが好ましい。
【0065】
形状としては、ラミネート型、角型、コイン型、ボタン型等が挙げられる。なお、無論、携帯用電子機器等に積載される小型電池の他、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型電池でも良い。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明は以下に掲載される実施例に限定されるものでない。
【0067】
実施例1〜4及び比較例1に示す非水電解質二次電池を作製し、振動耐久試験を行った。
【0068】
(実施例1)
正極活物質としてリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)と、導電剤として黒鉛粉末と、結着剤としてPVdFと、を重量比で87:8:5となるように配合し、NMP溶媒に分散してスラリーを調整した後、厚さ15μmのアルミニウム箔(純度99.99%)の両面に塗布、乾燥、プレス工程を経て厚さ80μmの正極を作成した。
【0069】
また、負極活物質として平均粒子径0.5μmのチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)と、導電剤として平均粒子径0.4μmの炭素粉末と、結着剤としてPVdFと、を重量比で90:7:3となるように配合し、NMP溶媒に分散してスラリーを調整した後、厚さ15μmのアルミニウム箔(純度99.99%)に塗布、乾燥、プレス工程を経て厚さ100μmの負極を作成した。
【0070】
得られた正極及び負極は、高さ75mm幅55mmの電極塗布部の上部に、幅20mmの電極未塗布の集電体延部が位置するように裁断した。正極21枚と負極20枚とを、厚さ12μmのPE製多孔質フィルムのセパレータを挟みつつ、交互に積層して一体化し、さらにプレスして成型し、発電要素を作製した。このとき、積層工程にて、適宜、集電体に幅20mm長さ10mmの粘着テープの両面を、正極及び負極の各集電体の延部に貼付した。
【0071】
正極端子及び負極端子としてアルミニウム製の厚さ0.2mm、幅20mm、長さ30mmを用意した。超音波溶接法を用いて、正極集電体の延部の端及び負極集電体の延部の端を夫々正極端子及び負極端子に接続した後、肉厚0.1mmのアルミラミネートフィルムからなる外装材に挿入した。これに、リチウム塩としてLiBFを、ECとGBLとの混合溶媒(体積比1:2)に1.5mol/l溶解して調製した非水電解質を注液し、厚さ3.8mm、幅63mm、高さ95mmの図1及び図2に対応する積層型非水電解質電池を作製した。
【0072】
粘着テープは、基材としてPE、その両面に粘着材層としてアクリル系粘着材を担持させた。粘着テープについて、基材の厚さ15μm、全体の厚さt2=200μm、引張強度σ2=2MPa、伸びε2=4である。正極集電体及び負極集電体について、厚さt1=15μm、引張強度σ1=60MPa、伸びε1=0.06である。さらに、正極厚さt3=80μm、負極厚さt4=100μm、セパレータ厚さt5=12μmである。
【0073】
従って、実施例1の粘着テープは、(式1)及び(式2)を満たしている。
【0074】
(実施例2)
アクリル系粘着材のみからなり、引張強度σ2=0.05MPa、伸びε2=10の粘着テープを使用した以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0075】
従って、実施例2の粘着テープは、(式1)及び(式2)を満たしている。
【0076】
(実施例3)
基材を、厚さ100μmのPETとし、引張強度σ2=110MPa、伸びε2=0.9の粘着テープを使用した以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0077】
従って、実施例3の粘着テープは、(式1)を満たさず、(式2)を満たしている。
【0078】
(実施例4)
粘着材の層を薄くし、t2=100μmとし、引張強度σ2=1.9MPa、伸びε2=4の粘着テープを使用した以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0079】
従って、実施例4の粘着テープは、(式1)を満たし、(式2)を満たしていない。
【0080】
(比較例1)
粘着テープを用いない以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0081】
実施例1〜4及び比較例1を、それぞれ10個づつ用意した。2.8V、1.5Aの定電圧定電流充電を3時間行う充電と、1.5Vまで1.5A定電流で行う放電と、を3回繰り返し、放電容量を測定した。その後、上述した充電条件にて電池を満充電にし、放電容量の50%まで1.5A定電流にて放電し、50%の充電状態とした。
【0082】
その後、振動耐久試験として、加速度20Gにて、50Hzから500Hzの振動数を5分間で繰り返し掃引する条件で120時間行い、24時間ごとに、振動耐久試験前と比較し、電池電圧低下及びDC(Direct Current)インピーダンスを測定した。DCインピーダンスは、10Aの充電・放電電流を各0.5秒づつ印加し、電池電圧の変化から算出した。
【0083】
結果、実施例1〜4及び比較例1のそれぞれについて、数個の非水電解質二次電池に電圧低下及びDCインピーダンスの上昇が確認できた。表1に、実施例1〜4及び比較例1のそれぞれについて、最も電圧低下の大きかった非水電解質二次電池、最もDCインピーダンスの大きかった非水電解質二次電池の値を示す。
【表1】

【0084】
表1に示すように、実施例1〜4は、比較例1に比して、電圧低下量及びDCインピーダンスが小さい。従って、本実施の形態の非水電解質二次電池は、振動や衝撃に対する耐久性が高い。
【0085】
実施例1、2及び4は、実施例3に比して、DCインピーダンスが小さい。従って、(式1)を満たすと、集電体の破断に起因するインピーダンスの上昇を低減できる。
【0086】
実施例1〜3は、実施例4に比して、電圧低下量が小さい。従って、(式2)を満たすと、セパレータの破膜による内部短絡に起因する電圧低下を低減できる。
【0087】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限られず、特許請求の範囲に記載の発明の要旨の範疇において様々に変更可能である。また、本発明は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本実施の形態に係わる非水電解質二次電池の一例を示す断面模式図
【図2】本実施の形態に係わる非水電解質二次電池の一例を示す上面模式図
【符号の説明】
【0089】
1・・・正極端子
2・・・負極端子
3・・・正極
4・・・負極
5・・・セパレータ
6・・・外装材
7・・・粘着テープ
7a・・・粘着テープの基材
7b・・・粘着材層
8・・・正極集電体
9・・・負極集電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装材と、
前記外装材内に収納され、負極集電体及び前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層を有する複数の負極と、正極集電体及び前記正極集電体の表面に形成された正極活物質層を有する複数の正極と、前記負極活物質層及び前記正極活物質層に挟まれ非水電解質が充填されたセパレータと、が積み重ねられた発電要素と、
前記発電要素から突出した前記負極集電体の延部の夫々に、電気的に接続した負極端子と、
前記発電要素から突出した前記正極集電体の延部の夫々に、電気的に接続した正極端子と、
各々の前記負極集電体の延部の隙間及び各々の前記正極集電体の延部の隙間を埋める粘着テープと、を具備することを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
外装材と、
前記外装材内に収納され、負極集電体及び前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層を有する複数の負極と、正極集電体及び前記正極集電体の表面に形成された正極活物質層を有する複数の正極と、前記負極活物質層及び前記正極活物質層に挟まれ非水電解質が充填されたセパレータと、が積み重ねられた発電要素と、
前記発電要素から突出し端が互いに結合した前記負極集電体の延部に、電気的に接続した負極端子と、
前記発電要素から突出し端が互いに結合した前記正極集電体の延部に、電気的に接続した正極端子と、
各々の前記負極集電体の延部の隙間及び各々の前記正極集電体の延部の隙間を埋める粘着テープと、を具備することを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記負極集電体及び前記正極集電体について、厚さをt1、破断応力をσ1、伸びをε1とし、前記粘着テープについて、厚さをt2、破断応力をσ2、伸びをε2としたとき、σ1t1>σ2t2かつε1<ε2を満たすことを特徴とする請求項1又は2記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記粘着テープは、粘着材のみからなることを特徴とする請求項1乃至3記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記粘着材テープの基材は、ポリエチレンもしくはポリプロピレンからなることを特徴とする請求項1乃至3記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記負極集電体及び前記正極集電体は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1乃至5記載の非水電解質二次電池。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−92973(P2006−92973A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278278(P2004−278278)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】