説明

非水電解質電池用セパレーター

【課題】電解質の浸透性が適正に保たれ、厚み精度が高く、電解質に対する耐性を有する非水電解質電池用セパレーターを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)と、フィラーからなる充填剤(B)と、25℃において液体で且つ沸点が140℃以上である可塑剤(C)からなる樹脂組成物からなるフィルムで、該フィルムを縦方向に4.5倍および横方向に3.5〜4倍の延伸倍率の延伸により上記フィラーを起点とする空孔が設けられ、厚みが30〜15ミクロンで、且つ厚みの最大値と最小値とが厚みの平均の±6〜20%とされている多孔性フィルムからなる非水電解質電池用セパレーターであって、前記多孔性フィルムを1000Pa以下の状態で1時間放置し、フィルムを乾燥後、非水電解質の中に上記フィルムの下部を1cm漬けて、液面から液が5cm上昇するのにかかる時間が90〜200secである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質電池用セパレーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、小型の二次電池は、OA、FA、家電、通信機器等のポータブル電子機器用電源として幅広く使用されており、さらに機器に装備した場合に容積効率がよく、機器の小型化、軽量化につながることからリチウムイオン二次電池を使用したポータブル機器が増加している。
一方、大型の二次電池は、ロードレベリング、無停電電源(UPS)、電気自動車をはじめ、環境問題に関連する多くの分野に置いて研究開発が進められ、大容量、高出カ、高電圧、長期保存性に優れている点より、非水電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池の用途が広がっている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の使用電圧は、通常、4.1から4.2Vを上限として設計されている。このような高電圧では、水溶液は電気分解を起こすので電解質として使うことができない。そのため、高電圧でも耐えられる電解質として、有機溶媒を使用した所謂、非水電解質が用いられている。
非水電解質用の溶媒としては、より多くのリチウムイオンを存在させることができる高誘電率有機溶媒が用いられ、該高誘電率有機溶媒としてポリプロピレンカーボネートやエチレンカーボネート等の有機炭酸エステルが使用されている。また、溶媒中でリチウムイオン源となる支持電解質として、6フッ化リン酸リチウム等の反応性の高い電解質を溶媒中に溶かして使用している。
上記非水電解質を用いた場合、水溶液からなる電解質と比較してセパレータに対する浸透性が遅くなり、言わば、初期の濡れ性が低下する。よって、非水電解質注入にかかる時間が長くかかり生産性が悪くなる問題がある。よって、常温で注入される非水電解質に対する濡れ性(浸透性)が良いセパレータが求められている。
【0004】
また、リチウムイオン二次電池のセパレータは、正極と負極と直接接触させて介在させるために、内部短絡の防止の点から絶縁性が要求され、かつ、リチウムイオンの通路となる透気性と電解質の拡散・保持機能を付与するために微細孔構造とし、さらに、異常発熱時に孔を溶融・遮断するシャットダウン機能が要求される。
この安全性の観点から、高温(140〜160℃)状態になると、セパレータに開孔された微細な孔を閉塞し、その結果、電池内部のイオン伝導を遮断し、その後の電池内部の温度上昇を防止できるシャットダウン機能を具備したポリオレフィン系樹脂からなる微多孔膜を有するセパレータが提供されている。
しかし、シャットダウン後も何らかの理由で電池温度の上昇が続いてセパレータの耐熱温度を超えると、セパレータが溶融し、正極と負極との隔離性が著しく低下するため、電池内でショートが発生すると共に、最悪の場合に電池が発火する恐れがある。
【0005】
上記問題に対して、ポリオレフィン系樹脂と無機粉体または無機繊維とからなる混合物に対して、可塑剤として鉱物オイルが30〜70重量%配合された混練物からなる耐熱性に優れた無機質含有多孔膜のセパレータが、特開平10−50287号(特許文献1)で提供されている。
しかし、ポリオレフィン系樹脂と無機粉体を素材としてセパレータ用の多孔性フィルムを製造する際、上記ポリエチレン樹脂と無機粉体に大量の鉱物オイルからなる可塑剤を混合し、この混合物をシート状に成形する一次加工、該シートを延伸・圧延等して空孔を設ける二次加工を行った後に、配合している鉱物オイルを有機溶媒で抽出除去する工程が必要となり、この抽出工程で多量の有機溶剤等を使用すると共に工程数が増加する等、生産性が悪い問題がある。
【0006】
また、特開2001−164015号(特許文献2)には、ポリプロピレン系樹脂、充填剤及びアミド系可塑剤からなる多孔性フィルムが提供されている。
しかしながら、ポリプロピレンは融点が高く異常高温時での閉塞が困難で、シャットダウン機能を期待できない。よって、大容量の電池システム用のセパレーターとしては使用可能であるが、民生用電池のセパレーターとしては使用されていなのが現状である。
また、特許文献2に開示された多孔性フィルムは、ポリプロピレンを用いているため、均一な透過性を有するフィルムを作成することが困難で、フィルムを特定の厚みおよび特定の厚み精度に保持しにくい。よって、フィルムの厚さが均一になりにくいため、圧力が負荷された時に薄い部分が裂け易くなり絶縁性に問題がある。かつ、巻芯を用いて正極、セパレータおよび負極を渦巻状に捲回する際に、フィルムが裂け易いため切断が困難で安定して電池を製造することができない。
【0007】
さらに、特開2003−82139(特許文献3)には、高密度ポリエチレン樹脂、炭酸カルシウム等からなる充填剤、分子量200〜500の脂肪族炭化水素または高級アルコール等の低分子量化合物の可塑剤とからなる樹脂組成物の混練物からシートを成形し、該シートを延伸して形成する多孔性フィルムが提供されている。
しかしながら、本発明者が追試した結果、上記可塑剤を用いた場合、均一な孔径を有するセパレーターを作ることが実際上困難、また、厚み精度も目的とする精度に制御することは非常に困難であった。そのため、円筒形、菱形または扁平形等の巻芯を用いて正極、セパレータおよび負極を重ねて渦巻状に捲回する際、所定のサイズに収めることができず、電池缶に収容出来なかったり、収容できても局所的に圧力がかかり短絡が発生する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−50287号公報
【特許文献2】特開2001−164015号公報
【特許文献3】特開2003−82139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、多孔性フィルムの厚みを最適範囲の厚みで均一に制御できると共に、セパレーターの含有する可塑剤の揮発により破裂する危険性がなく絶縁性を保持でき、かつ、電解質との濡れ性、保持性が良好である多孔性フィルムからなる非水電解質電池用セパレーターを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために、特に、フィルムの成形性、延伸性に影響を及ぼす可塑剤について鋭意検討した結果、25℃において液体(常温液体)でかつ沸点が140℃以上である可塑剤を用いると、成形するフィルムの厚さ精度を制御できると共に、揮発により破裂する危険性を無く絶縁性が高く、しかも、常温時における非水電解質との濡れ性も良くすることが出来る事を知見した。
【0011】
上記知見に基づき、本発明は、熱可塑性樹脂(A)と、フィラーからなる充填剤(B)と、25℃において液体で且つ沸点が140℃以上である可塑剤(C)からなる樹脂組成物からなるフィルムで、該フィルムを縦方向に4.5倍および横方向に3.5〜4倍の延伸倍率の延伸により上記フィラーを起点とする空孔が設けられ、厚みが30〜15ミクロンで、且つ厚みの最大値と最小値とが厚みの平均の±6〜20%とされている多孔性フィルムからなる非水電解質電池用セパレーターであって、
前記多孔性フィルムを1000Pa以下の状態で1時間放置し、フィルムを乾燥後、非水電解質の中に上記フィルムの下部を1cm漬けて、液面から液が5cm上昇するのにかかる時間が90〜200secであることを特徴とする非水電解質電池用セパレーターを提供している。
【0012】
上記可塑剤が25℃で液体とは、DSC(示差走査熱量測定)による測定で、溶融時の吸熱ピークが明確に25℃以下で且つ沸点が25℃以上あるもの、もしくはDSCによる測定で吸熱ピークを明確に有していないものは25℃の動粘度が100000mm2/sec未満のものと定義する。
沸点140℃以上とは、140℃での動粘度が100000mm2/sec未満、もしくは沸点が明確に140以上であるものと定義する。
【0013】
上記可塑剤として、25℃において液体で、沸点が140℃以上であるものを用いているのは、25℃で液体であると非水電解質と初期の濡れ性が高く、電解質注入の工程の時間短縮を可能できるからである。言い換えれば、可塑剤が25℃で固体であると初期の濡れ性が低下し、電解質注入工程に時間がかかることとなる。一方、可塑剤の沸点を140℃以上にしているのは、140℃未満の沸点とすると、140℃で液体でないものは、延伸加工時に熱可塑性樹脂の種類によっては軟化点まで加熱した時に、可塑剤が揮発して大きな空隙が発生し、微細孔を有する多孔性フィルムとして形成出来なくなるからである。
【0014】
具体的には、上記濡れ性は、本発明の多孔性フィルムを1000Pa以下の状態で1時間放置し、フィルムを乾燥後、非水電解質の中にの中に上記フィルムの下部を1cm漬けて、液面から液が5cm上昇するのにかかる時間が90〜200secの範囲となるようにしている。
【0015】
また、上記可塑剤は25℃での動粘度が1000mm2/sec未満であることが好ましい。
これは、25℃での動粘度が1000mm2/secをこえると常温での非水電解質の注入時にセパレータの濡れ性が悪くなるからである。なお、25℃での動粘度は好ましくは、500mm2/sec以下であり、1mm2/secが下限となる。
【0016】
上記可塑剤としては、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ一プチロラクトン、γ一バレロラクトン、ジメチルスルホキシドの中から選択された少なくとも1種を含み、かつ、25℃での動粘度が1000mm2/sec未満のものが好適に用いられる。
【0017】
なお、25℃において液体で且つ沸点が140℃以上で可塑剤と使用可能なものとして、エステル化合物、アミド化合物脂肪酸、アルコール化合物、アミン化合物、エポキシ化合物、エーテル化合物、鉱油、パラフィンワックス、液状シリコーン、フッ素オイル、液状ポリエーテル類、液状ポリブテン類、液状ポリブタジエン類、カルボン酸類、スルホン酸塩、アミン塩、カルボン酸化合物、フッ素系化合物等挙げられる。
さらに、「プラスチックス配合剤」(株式会社 大成社発行 昭和62年11月30日 第2版発行)のP29〜64の可塑剤の項目に記載され、P49からP50の表4と、P52〜P54の表6に列挙されている可塑剤(TCP、TOP,PS ESBO等)が使用可能である。但し、融点が25℃以上で沸点が140℃以上の可塑剤が使用できる。
【0018】
上記熱可塑性樹脂(A)として高密度ポリエチレンを用い、該高密度ポリエチレンを熱可塑性樹脂(A)の成分100質量部中に50〜100質量部含むものであることが好ましい。
上記高密度ポリエチレンは、成形するフィルムの剛性を所要に保持するために、密度0.94g/cm3以上、さらに密度0.95g/cm3以上であることが好ましい。なお、上限は0/97g/cm3である。
また、上記高密度ポリエチレンは、成形するフィルムの強度を所要に保持するために、メルトフローレートが1g/10分以下、好ましくは0.6以下、よりこのましくは0.1以下である。メルトフローレートが1g/10分より大きいと3倍以上の延伸が難しくなり、得られる多孔性フィルムの強度が低下する。なお、下限は0.01である。
【0019】
上記密度0.94g/cm以上、メルトフローレートが1g/10分以下の高密度ポリエチレンとして、ホモポリマーポリエチレン、或いはα−オレフインコモノマー含量が2モル%以下のコポリマーポリエチレンが挙げられ、特に、ホモポリマーポリエチレンが好ましい。なお、α−オレフインコモノマーの種類には特に制限はない。
また、高密度ポリエチレン樹脂を単独で用いても良いが、ポリオレフイン樹脂、フツ素樹脂、ポリスチレン、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、アセクール樹脂、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂との混合物でも良い。
好ましくは、ポロプロピレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリブテン、プロピレンエチレンブロック共重合体、プロピレンエチレンランダム共重合体等が挙げられる。
【0020】
上記高密度ポリエチレンの重合触媒には特に制限はなく、チーグラー型触媒、フイリップス型触媒、カミンスキー型触媒等いずれのものでも良い。ポリエチレンの重合方法として、一段重合、二段重合、もしくはそれ以上の多段重合等があり、いずれの方法でもよい。
【0021】
上記フィラーからなる充填剤(B)として、無機系及び有機系のいずれ充填剤も使用出来、1種又は2種以上を組み合わせて使用出来る。
無機充填剤の例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの塩化物、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ等の酸化物のほか、クルク、クレー、マイカなどのケイ酸塩等が挙げられる。これらの中でも、硫酸バリウムが最も好ましい。
【0022】
また、上記無機充填剤は樹脂中の分散性向上のため、表面処理剤で無機充填剤の表面を被覆して疎水化してもかまわない。この表面処理剤としては例えば、ステアリン酸、ラウリル酸等の高級脂肪酸またはそれらの金属塩を挙げることができる。
【0023】
充填剤が有機充填剤とする場合では、延伸温度において充填剤が溶融しないように、高密度ポリエチレンを主とする熱可塑性樹脂の融点よりも高い樹脂粒子が好ましく、ゲル分が4〜10%程度の架橋した樹脂粒子がさらに好ましい。
有機充填剤の例としては、超高分子量ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルフアイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、メラミン、ベンゾグアナミンなどの熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられ、これらの中でも、特に架橋させたポリスチレンなどが好ましい。
【0024】
上記充填剤の平均粒径は、0.1〜25μm程度、好ましくは0.5〜5μm程度である。平均粒径が0.1μm未満の場合には、充填剤同士の凝集により分散性が低下して延伸むらを引き起こすとともに、熱可塑性樹脂と充填剤との界面の接触面積が増大して、延伸による界面剥離が難しく、多孔化が困難になりやすい。一方、平均粒径が25μmを超えると、フィルムを薄くすることが困難となるのに加え、フィルムの機械的強度が低下する。
前記した理由より、本発明で用いるフィラーからなる充填剤としては、平均粒径0.1〜25μmの硫酸バリウムあるいは炭酸カルシウムが最も好適に用いられる。
【0025】
上記熱可塑性樹脂(A)、充填剤(B)と可塑剤(C)は、その配合比が、(A)100質量部に対し、(B)50〜400質量部、(C)1〜30質量部あることが好ましい。
上記配合比としているのは、充填剤が50質量部未満の場合、目的とする良好な通気性が発現されにくくなり、外観、風合いも悪くなり易いからである。一方、充填剤が400質量部を超えるとフィルム成形の際に、樹脂焼けなど工程上の不具合を起こしやすくなるだけでなく、フィルム強度も大幅に低下することによる。
可塑剤は1質量部未満であると、目的とする良好な延伸性が発現されにくくなり、外観、風合いも悪くなりやすい。一方、30質量部を超えるとフィルム成形の際、樹脂焼けなど工程上の不具合を起こしやすくなるからである。
より好ましくは、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、充填剤が50〜300質量部、可塑剤が1〜20重量部である。
【0026】
さらに、本発明の多孔性フィルムでは、一般に樹脂組成物に配合される添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、スリップ剤、着色剤等を、多孔性フィルムの特性を損なわない程度の範囲で配合してもよい。
具体的には、前記「プラスチックス配合剤」のP154〜P158に記載されている酸化防止剤、P178〜P182に記載されている紫外線吸収剤、P271〜P275に記載されている帯電防止剤としての界面活性剤、P283〜294に記載されている滑剤が必要に応じて適宜に配合される。
【0027】
本発明の非水電解質電池用セパレーターとして用いる多孔性フィルムは、前記したように、上記樹脂組成物の溶融混練物をフィルムとして成形加工し、成形されたフィルムを延伸により上記フィラーを起点とする空孔を設け、厚みが30〜15ミクロンで、且つ厚みの最大値と最小値とが厚みの平均の±6〜20%とされている。
【0028】
多孔性フィルムの厚さは、上記熱可塑性樹脂(A)、充填剤(B)、可塑剤(C)の配合量、種類、延伸条件(延伸倍率、延伸温度等)によって自由に調整できる。
本発明の多孔性フィルム、は充填剤(B)を配合が少ない場合もしくは充填剤が配合されていない場合と比較して、充填剤(B)を熱可塑性樹脂(A)の50〜400質量部と比較的大量に充填しているため、強度が比較的低くなるため、厚みと厚み精度を十分に制御することが重要となる。
【0029】
そのため、上記した条件等を種々変化させることにより、多孔性フィルムの厚みを、前記したように、30〜15μmの範囲に設定している。これは、厚みが15μm未満であるとフィルムが破れやすくなり、一方、30μmを越えると電池用セパレータとして巻回し、同じ巻き径にする際、電池面積が小さくなり、電池容量が小さくなりためである。
また、厚み振れは、前記したように、厚みの最大値と最小値とが厚みの平均の±6〜20%としている。これは±20%を越えると、セパレータとして巻回した時に部分的に圧力がかかり、セパレータの絶縁性が低下するためである。
【0030】
上記多孔性フィルムの厚みは、1/1000mmのダイアルゲージにて、面内を不特定に30箇所測定し、その平均を厚みとしている。
また、厚み精度は、(最大厚み若しくは最小厚みー平均厚み)/平均厚み×100(%)の厚みの振れで表している。
【0031】
上記多孔性フィルムの延伸により形成される空孔は、三次元網状としフィルムの両面開口に連通させ、気体、水蒸気は透過可能とし、液滴は透過不可としている。詳細には空孔径は0.3μm以下とし100〜3000μmの水滴は透過させず、0・0004μm程度の水蒸気は透過可能としいる。こうして得られるフィルムは、非水電解質電池用セパレーターとして好適に使用でき、良好な非水電解質電池が得られる。
【0032】
上記多孔性フォルムを電池用セパレーターとして用いる場合、その透気度[sec/100cc]は50以上500以下、好ましくは100〜500[sec/100cc]としている。これは、透気度を50[sec/100cc]未満とすると、電解質の含浸性・保持性が低下して、二次電池の容量が低くなったり、サイクル性が低下する恐れがあるためである。一方、透気度が500〔sec/100cc〕を超えると、イオン伝導性が低くなり、非水電解質電池用セパレータとして用いた場合、十分な電池特性を得ることができないためである。
より好ましくは100〔sec/100cc〕〜300〔sec/100cc〕である。
上記透気度(ガーレ値)はJIS P8117に準拠して通気度を(秒/100cc)測定している。
【0033】
本発明の非水電解質電池用セパレーターとして用いる多孔性フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂はパウダーあるいはペレット状、充填材はパウダー、可塑剤は液状、延伸補助財はペレット状として、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサー等の粉体混合機で混合し、1軸あるいは2軸混練機、ニーダー等で加熱混練し、ペレット化して造粒する。このペレットはサイロ、ホッパーフレコン等の原料を保存する設備、容器に一時的に保存しておいても良い。
その後、ペレットを熱可塑性樹脂の融点以上、好ましくは融点+20℃以上で分解温度未満の温度条件下において押出成形機等を用いて溶融、製膜することによりフィルムを得ている。具体的にはTダイ成形、カレンダー成形、プレス成形等が挙げられる。なお、ペレット化せずに直接成型機で製膜することも出来る。
上記成形されるフィルムの厚さは延伸性等を損なわない範囲で適時選択できるが、0.02〜2mmの範囲内が好ましい。
【0034】
上記成形された樹脂フィルムをロール延伸、テンター延伸、同時2軸延伸、圧延等の方法により、上樹脂の軟化点(JIS K6760による測定値)付近で少なくとも1軸方向の延伸(1軸延伸)、好ましくはフィルム長手方向の縦方向と直交す横方向の2軸方向の延伸(2軸延伸)している。
上記延伸により熱可塑性樹脂と充填剤との界面を剥離させることにより30〜15μmの厚さの多孔性フィルムを得ている。なお、開孔径を安定させるために、延伸後に熱処理してもよい。
【0035】
上記延伸倍率は、延伸時のフィルムの破れ、得られるフィルムの透気度、フィルムの硬さ等に対応させている。倍率が高すぎても低すぎても好ましくなく、かかる観点から2軸延伸とした場合、本発明では電池用セパレーターとして用いるフィルムでは、縦方向の延伸倍率は4.5倍横方向の延伸倍率は3.5〜4倍の延伸倍率としている。
【0036】
上記した本発明の多孔性フィルムは、厚みが30〜15μmで薄く、かつ、厚みの最大値と最小値とが厚みの平均の±6〜20%と厚さの均一化が図られている一方、透気性が50〜00〔sec/100cc〕であるため、従来存在しなかった均一な厚さと透気度を有するセパレーターを実現できる。
【発明の効果】
【0037】
上述した如く本発明に係わる非水電解質電池用セパレーターの多孔性フィルムは、厚さを15〜30μmと薄くしながら厚み精度が高められ、厚さを略均一に保持できるため、電池用セパレータとして正極板と負極板の間に介在させて渦巻き状に巻回して電池缶内に収容したとき、セパレータに局部的に負荷がかかることを抑制でき、その結果、セパレータの破損等が防止でき絶縁性を確実に保持することができる。かつ、セパレータの厚さを薄くしているため電池缶内への正極板、負極板の充填量を増加でき、電池容量を高めることができる。
さらに、25℃で液体である可塑剤を配合しているため、電池缶内に収容した後に、非水電解質が注入された時、該非水電解質の濡れ性が高めることができ、その結果、非水電解質の注入時間を短縮して生産性を高めることができる。
さらにまた、適性な透気性を保持する微細孔構造を持たせるために延伸法を採用しているため製造コストも安価でできる等の種々の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の非水電解質電池用セパレーターの多孔性フィルムの断面模式図である。
【図2】延伸による孔が形成される方法を示す説明図である。
【図3】電池内でのセパレータを示す一部破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
図1は本発明の非水電解質電池用セパレーターの多孔性フィルムの断面模式図であり、多孔性フィルム1は三次元網状の空孔1aを備え、該空孔1aは多孔性フィルムの両面1b、1cに連通し、多孔性フィルムの透気度は50〜500[sec/100cc]の範囲内としている。
多孔性フィルム1aの厚さは15〜30μm、かつ、厚みの振れを平均厚さの±6〜20%としている。
【0040】
上記多孔性フィルムは、原料として、熱可塑性樹脂として密度0.95g/cm3以上で且つメルトフローレートが1g/10分以下である高密度ポリエチレンを用い、充填剤として粒径0.1〜25μmの硫酸バリウムを用い、可塑剤として25℃で液体で且つ沸点が140℃以上で、25℃での動粘度が1000mm2/sec未満であるプロピレンカーボネート、プチレンカーボネート、γ一プチロラクトン、γ一バレロラクトン、あるいはジメチルスルホキシドを用いている。
【0041】
配合比は、上記高密度ポリエチレンからなる熱可塑性樹脂100質量部に対して充填剤は50〜400質量部(実施形態では100〜150質量部)、可塑剤は1〜30質量部(実施形態では5〜10質量部)配合している。
【0042】
上記原料を混合、混練して充填剤を樹脂中に分散させている。この混練物を所要温度で加熱して溶融した後、Tダイで成形してフィルムを成形している。得られたフィルムの厚さは0.02〜2mmとしている。
このフィルムを2軸延伸機で、まず、フィルムの長手方向(縦方向)に延伸倍率4.5倍で延伸し、ついで、長手方向と直交方向(横方向)に延伸倍率4倍で延伸している。
上記縦・横方向の2軸延伸で、図2に示すように、樹脂11中に充填剤12が分散されているフィルム10は、樹脂11と充填剤12との界面で剥離が生じ、この剥離した部分を空孔1aとして、多孔性フィルム1を得ている。其の際、多孔性フィルム1の厚さは前記したように15〜30μmで、厚さの振れが±6〜20%となっている。
上記多孔性フィルム1は、連続材からなるフィルム10を連続的に2軸延伸することで、連続材として得られ、コイル状に巻き取っている。
【0043】
得られた多孔性フィルム1を、本実施形態では、所要長さに切断して非水電解質電池用のセパレータ1’としている。
セパレータ1’は図3に示す円筒型のリチウム二次電池20の内部に、正極板21と負極板22との間に介在させて渦巻き状に巻回して収容している。
【0044】
詳しくは、電解質としては、例えば、リチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した電解質が用いられる。有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、たとえば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、プチレンカーボネート、γ−プチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、プロピオン酸メチル、酢酸プチルなどのエステル頼、アセトニトリル等のニトリル頼、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシメタン、ジメトキシプロパン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2一メチルテトラヒドロフラン、4−メチルー1,3一ジオキソランなどのエーテル類、さらにはスルフオランなどの単独、もしくは二種類以上の混合溶媒が使用できる。
【0045】
本実施形態では、エチレンカーボネートが1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部の混合溶媒中にL1PF6を1.4モル/リットルの割合で溶解した電解質を調整している。
【0046】
負極としてはアルカリ金属またはアルカリ金属を含む化合物をステンレス銅製網などの集電材料と一体化したものが用いられる。その際、アルカリ金属として、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。
上記アルカリ金属を含む化合物としては、例えばアルカリ金属とアルミニウム、鉛、インジウム、カリウム、カドミウム、スズ、マグネシウムなどの合金、さらにはアルカリ金属と炭素材料との化合物、低電位のアルカリ金属と金属酸化物、硫化物との化合物などが挙げられる。
負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としては、リチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
【0047】
本実施形態では、負極板22は、平均粒径10μmの炭素材料を、フッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液と混合してスラリーにした。この負極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きなものを取り除いた後、厚さ18μmの帯状の銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形し切断し、帯状の負極板としている。
【0048】
正極としては、例えばリチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウム、クロム酸化物、などの金属酸化物、二硫化モリブデンなどの金属窒化物などが活物質として用いられる。これらの正極活物質に導電助剤やポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤などを適宜添加した合剤を、ステンレス銅製網などの集電材料を芯材として成形体に仕上げたものが用いられる。
【0049】
本実施形態では、正極板21は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)に導電助剤としてリン状黒鉛を重量比90:5で加えて混合し、この混合物と、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液とを混合してスラリーにした。この正極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きなものを取り除いた後、厚さ20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形した後、切断し、帯状の正極板としている。
【0050】
上記正極板21、負極板22の両極をセパレータ1’を介して互いに重なるようにして、渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体としている。この渦巻き状に巻回する際、セパレータ1’は厚さが15〜30μmである。
【0051】
上記正極板21、セパレータ1’および負極板22を一体的に巻き付けた捲回体を有底円筒状の電池ケース内に充填し、正極及び負極のリード体24、25と溶接している。上記巻回した正極板21、セパレータ1’および負極板21を電池ケース内に収容し、ついで、上記電解質を電池缶内に注入し、セパレータ1’などに十分に電解質が浸透した後、電池缶の開口周縁にガスケット26を介して正極蓋27を封口し、予備充電、エージングを行い、筒型の二次リチウム電池を作製している。
【0052】
上記多孔性フィルム1からなるセパレータは、絶縁性を有するため、両面に直接接触する正極板21と負極板22との短絡を防止し、リチウムイオンは空孔1aを透過する一方、液は透過させないため、電解質の拡散・保液を図ることができる。
【0053】
本発明の非水電解質電池用セパレーターとして用いる多孔性フィルムからなる実施例と、比較例の多孔性フィルムを作製して、厚み、厚み精度、透気度、電解質の浸透性、絶縁性を測定した。
【0054】
「実施例1」
高密度ポリエチレン[三井化学社製 HI−ZEX7000FP、密度:0.956g/cm3、メルトフローレート:0.04g/10min]100質量部、可塑剤としてプロピレンカーボネート[和光純薬工業社製 試薬 融点−49℃ 沸点242℃]8質量部、充填剤として平均粒径が0.66μmの硫酸バリウム[堺化学社製 B−55]110重量部をブレンドしてコンパウンドを行った。次に、温度200℃でTダイ成形を行い原反シートを得た。原反シートの厚みは平均250μmであった。
次に得られた原反シートを80℃でシートの長手方向(MD)に4.5倍、次いで125℃で直交する横方向(TD)に4倍の延伸倍率で逐次延伸を行い厚み平均30μmの多孔性フィルムを作製した。
【0055】
「実施例2」
充填剤として硫酸バリウム[堺化学社製 B−55]は100質量部とし、可塑剤としてγ−プチロラクトン[和光純薬工業社製 試薬 融点−42℃、沸点204℃]に変更した以外は実施例1と同様として原反シートを成形した。該シートをMD方向に4.5倍延伸し、次いでTD方向に3.5倍延伸して、厚みは平均15μmの多孔性フィルムを作製した。
【0056】
「実施例3」
熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン[三井化学社製 HI−ZEX3300F、密度;0.950g/cm3、メルトフローレート;1.1g/10min]を、20メッシュスルーの大きさ以下に粉砕したものを100質量部、可塑剤としてトリメリット酸トリ2エチルへキシル[花王社製 トリメックスT−08 融点−45℃ 140℃1時間加熱後の重量減少率0.9%]5質量部にした以外は実施例1と同じとして原反シートを成形、延伸を行い、厚み平均30μmの多孔性フィルムを作製した。
【0057】
「実施例4」
充填剤として炭酸カルシウム[日東粉化社製 NCC#2310]を100質量部用い、可塑剤としてジメチルシリコーン[GE東芝シリコーン社製 商品名TSF451−100 25℃での動粘度 100mm2/sec 140℃1時間加熱後の重量減少率0.2%〕l0質量部にした以外は実施例1と同様とし、厚みは平均25μmの多孔性フィルムを作製した。
【0058】
「実施例5」
可塑剤としてγ−プチロラクトン[和光純薬工業社製 試薬 融点−42℃ 沸点204℃]5質量部とプロピレンカーボネート[和光純薬工業社製 試薬 融点−49℃ 沸点242℃]5質量部として合わせて10質量部とし、充填剤を120質量部に変更した以外は実施例1と同様とし、厚みは平均30μmの多孔性フィルムを作製した。
【0059】
「実施例6」
可塑剤としてプロピレンカーボネート[和光純薬工業社製 試薬 融点−49℃ 沸点242℃]10質量部、充填剤を120質量部に変更した以外は実施例1と同様とし、厚み平均30μmの多孔性フィルムを作製した。
【0060】
「実施例7」
線状低密度ポリエチレン[三井化学社製 ウルトゼックス2023FP、密度;0.920g/cm3、メルトフローレート:2.1g/10min]に変更し、充填剤を122質量部、可塑剤を10質量部に変更した以外は実施例1と同様とし、厚みは平均30μmの多孔性フィルムを作製した。
【0061】
「比較例1」
充填剤を122質量部に変更した以外は実施例1と同じく原反シートを成形した。該シートをMDに4.5倍、次いでTDに2倍延伸して、厚み30μmの多孔性フィルムを作製した。
【0062】
「比較例2」
充填剤を硫酸バリウム[堺化学社製 B−55]90質量重量部に変更した以外は実施例1と同じく原反シートを成形した。該シートをMD4倍延伸し、TDに4.5倍延伸し、厚み4μmの多孔性フィルムを作製した。
【0063】
「比較例3」
可塑剤をビス(P−メチルペンジリデン)ソルビトール[三井化学社製 NC−6 融点244℃ 140℃1時間加熱後の重量減少率が0.1%]に変更し、10質量部配合し、充填剤を122質量部に変更した以外は実施例1と同様とし、厚み30μmの多孔性フィルムを作製した。
【0064】
「比較例4」
可塑剤をステアリン酸リチウム[ケイエフ・トレーデイング社製 LiST 融点210℃ 140℃1時間加熱後の重量減少率が0.1%]に変更し、10質量部配合し、充填剤を122質量部に変更した以外は実施例1と同様とし、厚みを25μmの多孔性フィルムを作製した。
【0065】
(厚みの測定)
前記したように、1/1000mmのダイアルゲージにて、面内を不特定に30箇所測定し、その平均を厚みとした。
(厚み精度=厚みの振れの測定)
上記測定方法で測定した(最大厚みー平均厚み)/平均厚み×100(%)
同じく(最小厚みー平均厚み)/平均厚み×100(%)から算出した。
【0066】
(透気度)
JIS P8117に準拠して、通気度(秒/100cc)を測定した。
【0067】
(電解質の浸透性)
多孔性フィルムを1000Pa以下の状態で1時間放置し、フィルムを乾燥させ、幅1cm、長さ10cmの短冊状に切断した。
調整した電解質の中に上記フィルムを下部を1cm漬けて、液面から液が5cm上昇するのにかかった時間を測定した。
【0068】
(絶縁性)
長さ50cm、幅59mm正極板と負極板を用い、上記多孔性フィルムからなるセパレータを2枚用い、該セパレータ2枚と上記正極板と負極板とを交互に重ね、正極板に3.92N/cm、負極板に3.92N/cm、セパレータに0.29N/cmの力をかけ、直径4mmでセパレータを2枚分挟めるようなスリットを入れてある金属製の巻芯を用いて、この巻芯に巻き付けるように捲回した。
上記巻き込み電極群100個を速度10℃/minで昇温させ、130℃のオーブンに1時間入れ、正負電極間の絶縁抵抗を測定し、1MΩ以下となった数を数え、%で表示した。この比率が大きいと、電池としての初期不良率が増大する。
【0069】
上記実施例1〜7、比較例1〜4の素材、配合割合、上記方法で測定した多孔性フィルムの平均厚さ、厚さ精度(厚さの振れ)、透気度、含浸性(電解質の浸透性)、絶縁性を下記の表1に示す。
表1中において、可塑剤の項目で、可塑剤の種類、融点、25℃での状態が液
体(液)か固体(固)を示す。また、樹脂の種類のHDPEは高密度ポリエチレン、LLDPEは線状低密度ポリエチレンを示す。
【0070】
【表1】

【0071】
表1に示すように、実施例1〜7の多孔性フィルムの厚さは15〜30μmの範囲で、厚み精度は6〜20%であった。
これに対して、比較例1の厚み精度は78%、比較例3、4の厚み精度は25%でいずれも本発明で規定する厚み精度25%未満より外れていた。
また、多孔性フィルムの含浸性は実施例1〜7は90〜200secであった。これに対して比較例3、4は400sec〜600secであった。この結果から、実施例1〜7は比較例3、4と比べて電解質の浸透性が高く、濡れ性が良いことが確認出来た。
絶縁性については、実施例1〜7の絶縁性は1%〜12%であり、比較例3は絶縁性81%、比較例4は88%であった。よって、実施例1〜7は比較例3、4に比べて電池としての初期不良率が著しく低いことが確認できた。また、絶縁性でのテストで絶縁性の良好な電池を常温での実際に充放電テストをしたところいずれも問題なかった。絶縁不良となった電池を良品と同じくテストしたところいずれも安全装置が働き電池として使えなくなった。
【0072】
上記測定結果より本発明の実施例の多孔性フィルムは電解質の浸透性が適正でかつフィルムとしての耐性が高く、安定して電池を製造することが出来、電池としての初期不良率が低くなることが確認出来た。
【符号の説明】
【0073】
1 多孔性フィルム
1a 空孔
1’ セパレータ
10 フィルム
11 樹脂
12 充填剤
20 電池
21 正極板
22 負極板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)と、フィラーからなる充填剤(B)と、25℃において液体で且つ沸点が140℃以上である可塑剤(C)からなる樹脂組成物からなるフィルムで、該フィルムを縦方向に4.5倍および横方向に3.5〜4倍の延伸倍率の延伸により上記フィラーを起点とする空孔が設けられ、厚みが30〜15ミクロンで、且つ厚みの最大値と最小値とが厚みの平均の±6〜20%とされている多孔性フィルムからなる非水電解質電池用セパレーターであって、
前記多孔性フィルムを1000Pa以下の状態で1時間放置し、フィルムを乾燥後、非水電解質の中に上記フィルムの下部を1cm漬けて、液面から液が5cm上昇するのにかかる時間が90〜200secであることを特徴とする非水電解質電池用セパレーター
【請求項2】
上記可塑剤の25℃での動粘度が1000mm2/sec未満である請求項1に記載の非水電解質電池用セパレーター。
【請求項3】
上記可塑剤がプロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ一ブチロラクトン、γ一バレロラクトン、ジメチルスルホキシドの中から選択された少なくとも1種を含む請求項1または請求項2に記載の非水電解質電池用セパレーター
【請求項4】
上記熱可塑性樹脂(A)として高密度ポリエチレンを用いると共に、上記フィラーからなる充填剤(B)として平均粒径0.1〜25μmの硫酸バリウムあるいは炭酸カルシウムを用いている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の非水電解質電池用セパレーター
【請求項5】
上記熱可塑性樹脂(A)、充填剤(B)と可塑剤(C)の配合比が、(A)100質量部に対し、(B)50〜400重量部、(C)1〜30重量部である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の非水電解質電池用セパレーター
【請求項6】
電池缶内で正極と負極との間に介在させて渦巻き状に巻回され、透気度が50〔sec/100cc〕以上500〔sec/100cc〕である請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の非水電解質電池用セパレーター
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の非水電解質電池用セパレーターを収容している非水電解質電池

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−267622(P2010−267622A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150632(P2010−150632)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【分割の表示】特願2004−162634(P2004−162634)の分割
【原出願日】平成16年5月31日(2004.5.31)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】