説明

非汚染性メタクリレート又はアクリレートポリマーから形成された埋め込み型デバイス

非汚染性アクリレート又はメタクリレートポリマーを有するポリマーを含む材料で形成された、又はコーティングされた埋め込み可能なデバイスが提供される。埋め込み型デバイスは、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離又は穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、開存性卵円孔、跛行、血管及び人工グラフトに対する吻合性増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍性閉塞、又はそれらの組合せなどの障害を治療又は予防するために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、一般に、非汚染性ペンダント基を有する、メタクリレート又はアクリレートを含有する材料から形成される、ステント又はステントのコーティングなどのコーティング又は埋め込み型デバイスに関する。
[背景の説明]
【0002】
ステントは機械的に十分機能しているものの、再狭窄の慢性的問題と、それほどではないにせよ、ステント血栓の問題が残っている。薬剤送達ステントの形態の薬理学的療法は、これらの生物学上生ずる問題に取り組むための実現可能な手段と思われる。ステント上に載せられたポリマーコーティングは、薬剤リザーバーとして作用し、且つ薬剤放出を制御するために働く。市販のポリマーでコーティングされた製品の1つが、Boston Scientific社製のステントである。例えば、Boston Scientific Corporation社に譲渡された米国特許第5,869,127号;同第6,099,563号;同第6,179,817号;及び同第6,197,051号には、コーティング医療デバイス用の様々な組成物が記載されている。それらの組成物は、それらの明細書に記載のステントに強化された生体適合性を付与し、任意選択で生理活性剤を含むことができる。Scimed Life Systems,Inc.社の米国特許第6,231,590号には、コーティング組成物が記載されており、それは、生理活性剤、コラーゲン材料、或いは任意選択で他の生理活性剤を含有する又は他の生理活性剤でコーティングされたコラーゲンコーティングを含む。
【0003】
生体材料における最近の構想は、インプラント表面でのタンパク質吸収の制御である。タンパク質吸収の非制御は、部分的に変性したタンパク質の混合層をもたらすものであり、最近の生体材料が埋め込まれた際の特徴となっている。このような表面は、フィブロゲン(fibrogen)及び免疫グロブリンGなど、吸収された血漿タンパク質から様々な細胞結合部位をもたらす。単球/マクロファージ及び好中球などの血小板及び炎症細胞が、これらの表面に接着する。望ましくない事態は、非汚染性表面を使用することによって制御することができる。これらはタンパク質を殆ど又は全く吸収しない材料であり、それは主にその材料の親水性表面の性質によるものである。
【0004】
最近の薬剤送達ステントの別の制限は、ステントが異物であることに起因する。再狭窄を制御するための薬剤送達ステントの使用は、抗増殖剤又は抗炎症性薬剤の制御放出を用いることによって功を奏することが証明された。しかし薬剤送達ステントは、低いとはいえ測定可能な亜急性血栓症の発生率を依然として有する。さらに薬剤送達ステントは、糖尿病患者或いは小血管及び/又は長いびまん性病変を有する患者など、特に、より困難な一部の患者グループにおける再狭窄をゼロのレベルに下げるまでには至っていない。薬剤送達ステントの成果をさらに改善するための生体材料をベースとする戦略は、ステントコーティングに生体に有益な材料又は表面を使用することである。生体に有益な材料は、非汚染性、血液適合性、活性な抗血栓性、又は抗炎症性を全て、治療活性薬剤の放出に依存せずに有することによって、デバイスの生体適合性を高める材料である。
【0005】
最近使用されているポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロペン)などのポリマー材料のいくつかは、良好な機械的性質及び許容可能な生体適合性を有するが、同時に薬剤に対する透過性が低い。この問題を解決するために提案される1つの解決法は、親水性ポリマーにブレンドすることである。しかし、ポリエチレンオキシド又はヒアルロン酸などの多くの親水性材料が水溶性であり、組成物から浸出し得るために、コーティングが生体への有益性を失うことがあることは当技術分野で公知である。このようなポリマーブレンドは、機械的性質、特に極限伸びを損なう可能性もある。
【0006】
本発明は、埋め込み型デバイスをコーティングするためのポリマー材料を提供し、デバイスを製造することができるポリマー材料を提供することによって、このような問題に取り組む。
【0007】
[発明の概要]
本明細書では、非汚染性ペンダント基を有するポリマーから形成されたコーティング又は埋め込み型医療デバイスが提供される。
【0008】
一実施形態では、ポリマーは、化学式Iの反復単位を含有するポリマーとすることができる。化学式I:
【化1】


式中、R、R、R、R、及びRは、独立に、H、CH、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、又はn−ブチルなどのC1〜C4アルキル、シリル基、シロキシ基、及びフェニルであり、Zは、O又はNHであり、Xは、なし、O、S、又はNRであり、Rは、H、CH、エチル、プロピル、イソプロピル、又はn−ブチルなどのC1〜C4アルキル、及びフェニルであり、nは、0又は例えば1〜100,000の範囲の正の整数であってよい。
【0009】
化学式Iの反復単位を含有するポリマーは、ホモポリマーでもコポリマーでもよい。コポリマーは、化学式Iの反復単位を含む、統計コポリマー、ランダムコポリマー、交互コポリマー、周期ブロックコポリマー、又はグラフトコポリマーであってよく、生体適合性ポリマーなどの他の反復単位及び/又は生体に有益な材料を含むことができる。
【0010】
本明細書で定義されるポリマーは、埋め込み型医療デバイス上にコーティングを形成し、又は埋め込み型医療デバイスそれ自体を形成するために、単独で、或いは別の生体適合性ポリマー及び/又は生体に有益な材料と組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、コーティング又は医療デバイスは、任意選択で生理活性剤を含む。
【0011】
本明細書に記載されるポリマー又はポリマーブレンドは、埋め込み型デバイス上にコーティング(複数可)を形成するために使用することができる。また本明細書に記載されるポリマー又はポリマーブレンドは、埋め込み型デバイスそれ自体を形成するために使用することができる。埋め込み型デバイスは、任意選択で生理活性剤を含むことができる。いくつかの例示的な生理活性剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣剤、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、及び40−O−テトラゾール−ラパマイシン、ABT−578、クロベタゾール、それらのプロドラッグ、それらのコドラッグ、並びにそれらの組合せである。埋め込み型デバイスは、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離又は穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、血管及び人工グラフトに対する吻合性増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍性閉塞、又はそれらの組合せなどの障害を治療又は予防するために、患者に埋め込むことができる。
[詳細な説明]
【0012】
本明細書では、非汚染性ペンダント基を有するポリマーから形成されたコーティング又は埋め込み型医療デバイスが提供される。本明細書で定義されるポリマーは、埋め込み型医療デバイス上にコーティングを形成し、又は埋め込み型医療デバイスそれ自体を形成するために、単独で、或いは別の生体適合性ポリマー及び/又は生体に有益な材料と組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、コーティング又は医療デバイスは、任意選択で生理活性剤を含む。いくつかの例示的な生理活性剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣剤、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、ABT−578、クロベタゾール、それらのプロドラッグ、それらのコドラッグ、及びそれらの組合せである。埋め込み型デバイスは、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離又は穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、2型糖尿病におけるプラーク崩壊、慢性完全閉塞、跛行、血管及び人工グラフトに対する吻合性増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍性閉塞、又はそれらの組合せなどの障害を治療、予防、又は改善するために、患者に埋め込むことができる。
【0013】
非汚染性ペンダント基を有するモノマーから形成されたポリマー
一実施形態では、ポリマーは、化学式Iの反復単位を含有するポリマーとすることができる。化学式I:
【化2】


式中、R、R、R、R、及びRは、独立に、H、CH、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、又はn−ブチルなどのC1〜C4アルキル、シリル基、シロキシ基、又はフェニルであり、Zは、O又はNHであり、Xは、なし、O、S、又はNRであり、Rは、H、CH、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、又はn−ブチルなどのC1〜C4アルキル、或いはフェニルであり、nは、0又は例えば1〜100,000の範囲の正の整数であってよい。
【0014】
化学式Iの反復単位を含有するポリマーは、ホモポリマーでもコポリマーでもよい。コポリマーは、化学式Iの反復単位、並びに/或いは以下に両方とも定義する生体適合性ポリマーなどの他の反復単位及び/又は生体に有益な材料を含む、統計コポリマー、ランダムコポリマー、交互コポリマー、周期ブロックコポリマー、又はグラフトコポリマーであってよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、化学式Iのポリマーにおいて、XはOである。
【0016】
化学式Iのいくつかの代表的なポリマーは、ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)(PMEA)、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)(PHEA)、ポリ(エチルアクリレート)(PEA)、(ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)(PEHA)、ポリ(2−フェノキシエチルアクリレート)(PPEA)、ポリ(2−エトキシエチルアクリレート)(PEEA)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、ポリ(2−メトキシエチルメタクリレート)(PMEMA)、ポリ(エチルメタクリレート)(PEMA)、(ポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)(PEHMA)、ポリ(2−フェノキシエチルメタクリレート)(PPEMA)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、ポリ(2−エトキシエチルメタクリレート)(PEEM)、及びそれらの組合せである。
【0017】
いくつかの実施形態では、化学式IのR、R、R、R、R、Z、及びXは、以下「ポリマーブレンド」又は「生体に有益な材料」と題する区分で記載されるメタクリレート又はアクリレートポリマーのいずれかを、化学式Iから排除するように選択される。
【0018】
本明細書に記載されるポリマーは、当技術分野で知られる方法によって合成することができる(例えば、D.Braunら著、Polymer Synthesis:Theory and Practice.Fundamentals,Methods,Experiments、第3版、Springer出版、2001年;Hans R.Kricheldorf著、Handbook of Polymer Synthesis,Marcel Dekker Inc.出版、1992年;G.Odian,Principles of Polymerization、第3版、John Wiley&Sons著、1991年を参照)。例えば、ポリマーを製造するために使用することができる一方法は、フリーラジカル法でありうる(例えば、D.Braunら著、Polymer Synthesis:Theory and Practice.Fundamentals,Methods,Experiments、第3版、Springer出版、2001年;Hans R.Kricheldorf著、Handbook of Polymer Synthesis,Marcel Dekker Inc.出版、1992年を参照)。一般に、フリーラジカルによる開始を利用する懸濁又は乳化技術による重合が採用される。ブロックコポリマー及びターポリマーは、原子移動重合によって生成することができる。本明細書に記載されるポリマーを合成するために、溶媒中での重合を使用することもできる。
【0019】
ポリマーブレンド又は共役
別の実施形態では、本明細書に記載されるポリマーは、異なる親水性及び/又は可撓性を有する1種若しくは複数種の追加の生体適合性ポリマーとブレンドして、所望の生体適合性、可撓性、及び薬剤透過性を有するポリマーブレンドコーティング材料を作り出すことができる。別の実施形態では、本発明のポリマーは、1種若しくは複数種の追加の生体適合性ポリマーと、結合、共役、グラフト、又は架橋させることができる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、別々の層にコーティングすることができる。
【0020】
追加の生体適合性ポリマーは、生分解性(生体侵食性又は生体吸収性の両方)又は非分解性であってよく、親水性又は疎水性であってよい。いくつかの実施形態では、親水性は、約8.5(cal/cm1/2より大きい、例えば約9.5(cal/cm1/2より大きい、約10.5(cal/cm1/2より大きい、又は約11.5(cal/cm1/2のヒルデブラント溶解パラメータ値δを有すると定義される。δは、以下の等式で決定される。
δ=(ΔE/V)1/2
式中、ΔEは蒸発熱、cal/モルであり、Vはモル体積、cm/モルである。
【0021】
代表的な生体適合性ポリマーには、以下に限定されるものではないが、ポリ(エステルアミド)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ(3−ヒドロキシプロパノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシヘプタノエート)、及びポリ(3−ヒドロキシオクタノエート)などのポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシバレレート)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(4−ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(4−ヒドロキシオクタノエート)などのポリ(4−ヒドロキシアルカノエート)、及び3−ヒドロキシアルカノエート又は4−ヒドロキシアルカノエートのモノマー又はそれらのブレンドのいずれかを含むコポリマー、ポリポリエステル(poly polyesters)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド)、ポリグリコリド、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物)、ポリ(チロシンカーボネート)及びその誘導体、ポリ(チロシンエステル)及びその誘導体、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリシアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリウレタン、ポリホスファゼン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレン及びエチレン−αオレフィンコポリマー、アクリルポリマー及びコポリマー、ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化ビニルポリマー及びコポリマー、ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルエーテル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン化ポリビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレンなどのポリビニル芳香族、ポリビニルアセテートなどのポリビニルエステル、エチレン−メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、及びエチレン−ビニルアセテートコポリマーなどのビニルモノマー相互のコポリマー及びオレフィンとのコポリマー、ナイロン66及びポリカプロラクタムなどのポリアミド、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリ(グリセリルセバケート)、ポリ(プロピレンフマレート)、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン−トリアセテート、セルロースアセテート、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、ポリ(エチレングリコール)(PEG)などのポリエーテル、コポリ(エーテル−エステル)(例えば、ポリ(エチレンオキシド/ポリ(乳酸)(PEO/PLA))、ポリ(エチレンオキシド)などのポリアルキレンオキシド、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エーテルエステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ホスホリルコリン、コリン、ポリ(アスピリン)、(先に定義した)化学式Iのポリマー以外の、ヒドロキシル基を担持するモノマーのポリマー及びコポリマー、PEGアクリレート(PEGA)、PEGメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)及びn−ビニルピロリドン(VP)、メタクリル酸(MA)、アクリル酸(AA)、アルコキシメタクリレート、アルコキシアクリレート、及び3−トリメチルシリルプロピルメタクリレート(TMSPMA)などのモノマーを担持するカルボン酸、ポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)−PEG(SIS−PEG)、ポリスチレン−PEG、ポリイソブチレン−PEG、ポリカプロラクトン−PEG(PCL−PEG)、PLA−PEG、ポリ(メチルメタクリレート)−PEG(PMMA−PEG)、ポリジメチルシロキサン−co−PEG(PDMS−PEG)、ポリ(フッ化ビニリデン)−PEG(PVDF−PEG)、PLURONIC(商標)界面活性剤(ポリプロピレンオキシド−co−ポリエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ヒドロキシ官能性ポリ(ビニルピロリドン)、生体分子、例えばコラーゲン、アルギネート、フィブリン、フィブリノゲン、アルブミン、セルロース、デンプン、コラーゲン、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸のフラグメント及び誘導体、ヘパリン、ヘパリンのフラグメント及び誘導体、グリコサミノグリカン(GAG)、GAG誘導体、多糖類、エラスチン、キトサン、アルギネート、並びにそれらの組合せが含まれる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、前述のポリマーのいずれか1つを除外することができる。
【0022】
本明細書では、用語ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、及びポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)は、それぞれ、用語ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D,L−乳酸−co−グリコール酸)、及びポリ(L−乳酸−co−グリコール酸)と同義に使用することができる。
【0023】
生体に有益な材料
本明細書に記載されるポリマー又はポリマーブレンドは、任意選択で生体に有益な材料と共に、ステントなどの埋め込み型デバイス上にコーティングを形成し、又はステントなどの埋め込み型デバイスを形成することができる。その組合せを、混合、ブレンド、結合、共役、架橋、グラフトさせることができ、又は別々の層としてコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)であってよい。本明細書に記載のコーティングに有用な生体に有益な材料は、ポリマー材料又は非ポリマー材料であってよい。生体に有益な材料は、好ましくは非毒性、非抗原性、及び非免疫原性である。生体に有益な材料は、非汚染性、血液適合性、活性な抗血栓性、又は抗炎症性を全て、治療活性薬剤の放出に依存せずに有することによって、デバイスの生体適合性を高める材料である。
【0024】
代表的な生体に有益な材料には、以下に限定されるものではないが、ポリエーテル、例えばポリ(エチレングリコール)、コポリ(エーテル−エステル)(例えば、PEO/PLA);ポリアルキレンオキシド、例えばポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エーテルエステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ホスホリルコリン、コリン、ポリ(アスピリン)、ヒドロキシル基を担持するモノマーのポリマー及びコポリマー、例えばヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)アクリレート(PEGA)、PEGメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、及びn−ビニルピロリドン(VP)、モノマーを担持するカルボン酸、例えばメタクリル酸(MA)、アクリル酸(AA)、アルコキシメタクリレート、アルコキシアクリレート、及び3−トリメチルシリルプロピルメタクリレート(TMSPMA)、ポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)−PEG(SIS−PEG)、ポリスチレン−PEG、ポリイソブチレン−PEG、ポリカプロラクトン−PEG(PCL−PEG)、PLA−PEG、ポリ(メチルメタクリレート)−PEG(PMMA−PEG)、ポリジメチルシロキサン−co−PEG(PDMS−PEG)、ポリ(フッ化ビニリデン)−PEG(PVDF−PEG)、PLURONIC(商標)界面活性剤(ポリプロピレンオキシド−co−ポリエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ヒドロキシ官能性ポリ(ビニルピロリドン)、生体分子、例えばフィブリン、フィブリノゲン、アルブミン、セルロース、デンプン、コラーゲン、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸のフラグメント及び誘導体、ヘパリン、ヘパリンのフラグメント及び誘導体、グリコサミノグリカン(GAG)、GAG誘導体、多糖類、エラスチン、キトサン、アルギネート、シリコーン、PolyActive(商標)、並びにそれらの組合せが含まれる。いくつかの実施形態では、コーティングは、前述のポリマーのいずれか1つを除外することができる。
【0025】
用語PolyActive(商標)は、可撓性ポリ(エチレングリコール)及びポリ(ブチレンテレフタレート)ブロック(PEGT/PBT)を有するブロックコポリマーを表す。PolyActive(商標)は、PEG及びPBTのこのようなセグメントを有するAB、ABA、BABコポリマー(例えば、ポリ(エチレングリコール)−ブロックポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロックポリ(エチレングリコール)(PEG−PBT−PEG))を含むとされる。
【0026】
好ましい一実施形態では、生体に有益な材料は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)又はポリアルキレンオキシドなどのポリエーテルであってよい。
【0027】
生理活性剤
化学式Iのポリマー、或いは化学式Iのポリマーを有するポリマーブレンド又は共役(例えば、結合している又はグラフトしている)は、任意選択で1種又は複数の生理活性剤と共にコーティング又は埋め込み型デバイスを形成することができる。これらの生理活性剤は、治療剤、予防剤、寛解剤、又は診断用薬剤であり得る任意の薬剤であってよい。これらの薬剤は、抗増殖性又は抗炎症性を有することができ、或いは抗腫瘍性、抗血小板作用、抗凝固性、抗フィブリン性、抗トロンビン性、抗有糸分裂性、抗菌性、抗アレルギー性、抗酸化特性、並びに細胞増殖抑制剤などの他の性質を有することができる。適切な治療剤、予防剤、又は寛解剤の例には、治療活性、予防活性、又は診断用活性を有する合成無機化合物及び有機化合物、タンパク質及びペプチド、多糖類及び他の糖類、脂質、並びにDNA及びRNA核酸配列が含まれる。核酸配列には、遺伝子、転写を阻害するために相補的DNAと結合するアンチセンス分子、及びリボザイムが含まれる。他の生理活性剤のいくつかの他の例には、抗体、受容体リガンド、酵素、接着性ペプチド、血液凝固因子、阻害剤又はストレプトキナーゼ及び組織プラスミノーゲン活性化因子などの血栓溶解剤、免疫抗原、ホルモン及び成長因子、アンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムなどのオリゴヌクレオチド、並びに遺伝子療法に使用するレトロウィルスベクターが含まれる。抗増殖性薬剤の例には、ラパマイシン及びその機能的又は構造的誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)及びその機能的又は構造的誘導体、並びにパクリタキセル及びその機能的及び構造的誘導体が含まれる。ラパマイシン誘導体の例には、40−epi−(Nl−テトラゾリル)−ラパマイシン(ABT−578)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、及び40−O−テトラゾール−ラパマイシンが含まれる。パクリタキセル誘導体の例には、ドセタキセルが含まれる。抗腫瘍性薬剤及び/又は抗有糸分裂性薬剤の例には、メトトレキセート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン(例えば、Pharmacia&Upjohn社、Peapack N.J.製のAdriamycin(登録商標))、及びマイトマイシン(例えば、Bristol−Myers Squibb Co.社、Stamford,Conn.製のMutamycin(登録商標))が含まれる。このような抗血小板薬、抗凝固剤、抗フィブリン、及び抗トロンビンの例には、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組換えヒルジン、Angiomax a(Biogen,Inc.社、Cambridge、Mass.)などのトロンビン阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬(ニフェジピンなど)、コルヒチン、線維芽細胞増殖因子(FGF)アンタゴニスト、魚油(ω3−脂肪酸)、ヒスタミンアンタゴニスト、ロバスタチン(HMG−CoA還元酵素の阻害剤、コレステロール低下薬、Merck&Co.,Inc.社、Whitehouse Station、NJ製の商品名Mevacor(登録商標))、モノクローナル抗体(血小板由来成長因子(PDGF)受容体に特異的なものなど)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGFアンタゴニスト)、酸化窒素又は酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣剤、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、エストラジオール、抗癌剤、様々なビタミンなどの栄養補助食品、並びにそれらの組合せが含まれる。ステロイド系及び非ステロイド系抗炎症性薬剤を含めた抗炎症性薬剤の例には、タクロリムス、デキサメタゾン、クロベタゾール、それらの組合せが含まれる。このような細胞増殖抑制物質の例には、アンジオペプチン、カプトプリル(例えば、Bristol−Myers Squibb Co.社、Stamford、Conn.製のCapoten(登録商標)及びCapozide(登録商標))、シラザプリル又はリシノプリル(例えば、Merck&Co.,Inc.社、Whitehouse Station、NJ製のPrinivil(登録商標)及びPrinzide(登録商標))などのアンジオテンシン変換酵素阻害剤が含まれる。抗アレルギー薬の例は、ペミロラストカリウムである。適切であり得る他の治療物質又は薬剤には、ミドスタウリン、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、αインターフェロン、生物活性RGD、及び遺伝子組換え上皮細胞が含まれる。前記物質は、それらのプロドラッグ又はコドラッグの形態で使用することもできる。前記物質は、例として掲載され、それに限定されるものではない。現在入手可能な又は将来開発され得る他の活性薬剤も同様に利用することができる。
【0028】
好ましい治療効果を生じるために必要とされる生理活性剤の用量又は濃度は、その生理活性剤が毒性作用を生じるレベルより低く、非治療的結果が得られるレベルより高くあるべきである。生理活性剤の用量又は濃度は、患者特有の状況、外傷の性質、所望の療法の性質、投与される成分が血管部位に残存する時間、並びに他の活性薬剤が用いられる場合、その物質又は物質の組合せの性質及びタイプなどの要因に応じて決めることができる。治療有効用量は、実験的に、例えば適切な動物モデル系の脈管に注入し、薬剤及びその効果を検出するために免疫組織化学、蛍光、又は電子顕微鏡法を用いることによって、或いは適切なin vitro研究を行うことによって決定することができる。用量を決定するための標準的な薬理学試験法は、当業者に理解される。
【0029】
埋め込み型デバイスの例
本明細書では、埋め込み型デバイスは、ヒトの患者及び患蓄に埋め込むことができる任意の適切な医療基材であってよい。このような埋め込み型デバイスの例には、自己拡張性ステント、バルーン拡張性ステント、ステントグラフト、グラフト(例えば、大動脈グラフト)、人工心臓弁、脳脊髄液シャント、ペースメーカー電極及び心内膜用リード(例えば、Guidant Corporation社、Santa Clara、CAから入手可能なFINELINE及びENDOTAK)が含まれる。デバイスの基本的な構造は、実質的にどんな設計のものでもよい。デバイスは、金属製材料、或いは以下に限定されるものではないが、コバルトクロム合金(ELGILOY)、ステンレス鋼(316L)、高窒素ステンレス鋼、例えばBIODUR108、コバルトクロム合金L−605、「MP35N」、「MP20N」、ELASTINITE(ニチノール)、タンタル、ニッケル−チタン合金、プラチナ−イリジウム合金、金、マグネシウム、又はそれらの組合せなどの合金から製造することができる。「MP35N」及び「MP20N」は、Standard Press Steel Co.社、Jenkintown、PAから入手可能な、コバルト、ニッケル、クロム、及びモリブデンの合金に対する商品名である。「MP35N」は、コバルト35%、ニッケル35%、クロム20%、及びモリブデン10%からなる。「MP20N」は、コバルト50%、ニッケル20%、クロム20%、及びモリブデン10%からなる。生体吸収性の又は生体安定性ポリマーから製造されるデバイスも、本発明の実施形態と共に使用することができる。ステントなどのデバイスそれ自体も、本発明の記載のポリマー又はポリマーブレンドから製造することができる。
【0030】
使用方法
本発明の実施形態によれば、記載の様々な実施形態のコーティングは、埋め込み型デバイス又はプロテーゼ、例えばステント上に形成することができる。1種又は複数の活性薬剤を含むコーティングでは、その薬剤は、デバイスの送達及び拡張の間、ステントなどの医療デバイス上に保持され、埋め込み部位で所望の速度で及び所定の期間放出される。本発明のいくつかの他の実施形態によれば、生体吸収性又は非分解性デバイスは、化学式Iのポリマーを含有する材料から形成することができる。その材料は、化学式Iのポリマーであってよく、或いは、1種又は複数の生体適合性ポリマーと共に、任意選択で、先に定義した生体に有益な材料及び/又は生理活性剤と共に、化学式Iのポリマーを含有するポリマーブレンドであってよい。好ましくは、医療デバイスはステントである。上記のコーティングを有するステントは、一例として、胆管、食道、気管/気管支、及び他の生体通路における腫瘍によって生じる障害の治療を含めた様々な医療処置に有用である。上記のコーティングを有するステントは、特に、平滑筋細胞の異常な、又は不適切な移動及び増殖、血栓、及び再狭窄によって生じる血管閉塞領域の治療に有用である。ステントは、動脈及び静脈両方の様々な血管に置くことができる。部位の代表的な例には、腸骨、腎臓、及び冠状動脈が含まれる。
【0031】
ステントの埋め込みでは、まず血管造影を実施して、ステント療法に適切な位置を決める。血管造影は一般に、X線を撮影する時に、動脈又は静脈に挿入されたカテーテルを通して放射線不透過性の造影剤を注入することによって実現される。その際、病変又は治療計画部位を貫いてガイドワイヤを進める。送達カテーテルをガイドワイヤに通し、潰れた形状のステントが、通路に挿入されるようにする。送達カテーテルを、経皮的に又は手術によって大腿動脈、上腕動脈、大腿静脈、又は上腕静脈に挿入し、蛍光透視鏡の誘導下で血管系を通してカテーテルを導くことによって、適切な血管内へと進める。次いで、上述のコーティングを有するステントは、所望の治療領域で拡張することができる。挿入後の血管造影も、適切な位置を確認するために利用することができる。
【実施例】
【0032】
本発明の実施形態を、以下に示す実施例によって例示する。全てのパラメータ及びデータは、本発明の実施形態の範囲を不当に制限するものと解釈されるべきではない。
【0033】
実施例1:ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)(PMEA)の血液適合性の研究
ヒト血小板接着性、血小板の形態変化、ヒト血漿から吸収された総タンパク質、吸収されたBSA(ウシ血清アルブミン)の量、吸収されたヒトのフィブリノゲン、並びにタンパク質構造の変化を含めたin vitro血液適合性の測定値を、ポリマーPPEA、PEHA、PEA、PMEA、PHEMA、及びPHEAの円二色性によって測定した(M,Tanaka M.ら著、Biomaterials 21:1471−1481(2000)参照)。図1は、ポリマーの表面に接着した血小板の数を示し(**P<0.01対PMEA、平均±SD、n=5)、図2は、ポリマー上に吸収されたヒト血漿からのタンパク質の総量を示す(P<0.05対PMEA;**P<0.01対PMEA、平均±SD、n=5)。この統計的分析において、値Pは、実際に種々のポリマー間のタンパク質吸収レベルが等しいかどうか(帰無仮説)を決定するための仮説検証から導かれる。ここで0〜1の範囲のPは、実際には帰無仮説が真である場合に、帰無仮説を誤って退ける確率である。したがって、P<0.05は、2つのグループ間に見られる差がサンプリング誤差から生じた可能性が5%未満であることを意味する。これは2つのグループが異なる信頼度が95%であることを意味するものと換言されることが多い。
【0034】
図示のように、PMEAコーティングは、試験したポリマーのうちで吸収された血小板の数が最も少なく、血漿タンパク質吸収率も最少である。
【0035】
実施例2:ポリマーコーティングされた埋め込み型医療デバイスの製造
プライマー層
ポリ(n−ブチルメタクリレート)を、1:1(重量)のアセトン:キシレンに溶かして、2重量%の溶液を得る。EFD,Inc.社、East Providence、Rhode Island製のVALVEMATE 7040制御システムを備えるEFD 780S噴霧ノズルを使用して、ポリマー溶液をステント上に噴霧する。組成物の塗布のプロセス中、任意選択で、長手方向軸を中心に50〜約150rpmの速度でステントを回転させることができる。ステントは、塗布中、同じ軸に沿って直線的に移動させることもできる。
【0036】
ポリマーの2%溶液を、1回10秒の一連の通過で12−mmVISION(商標)ステント(Guidant Corporation社から入手可能)に塗布して、1回の噴霧を通過させるにつき10μgのコーティングを付着させる。噴霧の通過と通過の間に、80℃の空気流を使用して、ステントを10秒間乾燥させる。5回の噴霧通過を施して、50μgのプライマー層を形成し、その後プライマー層を80℃で1時間焼成する。
【0037】
薬剤含有層
ポリ(n−ブチルメタクリレート)2重量%、エベロリムス1.0重量%、及び1:1(重量)のアセトン:シクロヘキサノン97重量%からなる混合物を調製する。ステント上へのプライマー層の噴霧に使用したのと同じ装置を使用して、薬剤層を塗布する。10回の噴霧通過を実施して、175μgの薬剤−ポリマー層を形成し、次いで薬剤−ポリマー層を50℃で1時間乾燥させる。
【0038】
生体に有益なトップコーティング層
次いで、プライマー層及び薬剤含有層のコーティングに使用したのと同じ装置を使用して、ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)2重量%及び60:40のアセトン:シクロヘキサノン98重量%を含むトップコーティング層を、薬剤含有層上に塗布する。6回の噴霧通過を実施して、100μgのトップコーティング層を形成し、次いで50℃で1時間乾燥させる。
【0039】
本発明の特定の実施形態を示し、記載してきたが、本発明から逸脱することなく、より広い態様において変更および改変を行うことができることが、当業者にとって明らかとなるであろう。したがって、添付した特許請求の範囲は、本発明の精神および範囲内に該当するすべてのこのような変更および改変をその範囲内に包含することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、ポリ(メタクリレート)ポリマーコーティングの表面に接着した血小板の数を示す図である。
【図2】図2は、ポリ(メタクリレート)ポリマーコーティングの表面上に吸収されたヒト血漿からのタンパク質の総量を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式Iの反復単位を含むポリマーを含むコーティングを有する埋め込み型デバイス。
化学式I:
【化1】


(式中、R、R、R、R、及びRは、独立に、H、C1〜C4アルキル基、シリル基、シロキシ基、及びフェニルであり、
Zは、O又はNHであり、
Xは、なし、O、S、又はNRであり、Rは、H、C1〜C4アルキル、又はフェニルである)。
【請求項2】
、R、R、R、及びR、Rが、独立に、CH、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、又はn−ブチルであり、
ZがOである、
請求項1に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項3】
ZがOであり、
Xが、O又はNHである、
請求項1に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項4】
前記ポリマーが、ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)(PMEA)、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)(PHEA)、ポリ(エチルアクリレート)(PEA)、(ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)(PEHA)、ポリ(2−フェノキシエチルアクリレート)(PPEA)、ポリ(2−エトキシエチルアクリレート)(PEEA)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、ポリ(2−メトキシエチルメタクリレート)(PMEMA)、ポリ(エチルメタクリレート)(PEMA)、(ポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)(PEHMA)、ポリ(2−フェノキシエチルメタクリレート)(PPEMA)、ポリ(2−エトキシエチルメタクリレート)(PEEM)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載のポリマーとブレンドされた又は結合した生体適合性ポリマーをさらに含む、請求項1に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項6】
生理活性剤をさらに含む、請求項1に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項7】
前記生理活性剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣剤、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、及び40−O−テトラゾール−ラパマイシン、ABT−578、クロベタゾール、それらのプロドラッグ、それらのコドラッグ、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項8】
ステントである、請求項1に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項9】
ステントである、請求項7に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項10】
化学式Iの反復単位を含むポリマーを含む材料から形成される吸収性デバイス。
化学式I:
【化2】


(式中、R、R、R、R、及びRは、独立に、H、C1〜C4アルキル基、シリル基、シロキシ基、及びフェニルであり、
Zは、O又はNHであり、
Xは、なし、O、S、又はNRであり、Rは、H、C1〜C4アルキル、又はフェニルである)。
【請求項11】
、R、R、R、及びR、R6が、独立に、CH、エチル、プロピル、イソプロピル、又はn−ブチルであり、
ZがOである、
請求項10に記載の吸収性デバイス。
【請求項12】
ZがOであり、
XがO又はNHである、
請求項10に記載の吸収性デバイス。
【請求項13】
前記ポリマーが、ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)(PMEA)、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)(PHEA)、ポリ(エチルアクリレート)(PEA)、(ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)(PEHA)、ポリ(2−フェノキシエチルアクリレート)(PPEA)、ポリ(2−エトキシエチルアクリレート)(PEEA)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、ポリ(2−メトキシエチルメタクリレート)(PMEMA)、ポリ(エチルメタクリレート)(PEMA)、(ポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)(PEHMA)、ポリ(2−フェノキシエチルメタクリレート)(PPEMA)、ポリ(2−エトキシエチルメタクリレート)(PEEM)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の吸収性デバイス。
【請求項14】
生理活性剤をさらに含む、請求項10に記載の吸収性デバイス。
【請求項15】
前記生理活性剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣剤、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、及び40−O−テトラゾール−ラパマイシン、ABT−578、クロベタゾール、それらのプロドラッグ、それらのコドラッグ、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項14に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項16】
ステントである、請求項10に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項17】
障害が、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離又は穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、開存性卵円孔、跛行、血管及び人工グラフトに対する吻合性増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍性閉塞、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の埋め込み型デバイスを患者に埋め込むステップを含む、患者の障害を治療する方法。
【請求項18】
前記障害が、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離又は穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、開存性卵円孔、跛行、血管及び人工グラフトに対する吻合性増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍性閉塞、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項16に記載の埋め込み型デバイスを患者に埋め込むステップを含む、患者の障害を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−534062(P2008−534062A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503133(P2008−503133)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/010420
【国際公開番号】WO2006/102418
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507135788)アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド (92)
【Fターム(参考)】