説明

面材支持構造および建具

【課題】面材の反りを確実に防止して外観や開閉操作性を良好に維持することができる面材支持構造および建具を提供すること。
【解決手段】樹脂パネル16の脱衣室側の表面に縦中桟20を接着したことで、縦中桟20の剛性によって樹脂パネル16の反りを防止することができる。縦中桟20が障子枠よりも脱衣室側に突出する見込み寸法を有していることで、縦中桟20の上下端部の固定度および部材剛性が確保でき、樹脂パネル16の反りを効果的に低減させることができる。従って、浴室と脱衣室との温度差によって樹脂パネル16が浴室側に反ることが防止できるので、障子10の開閉時に樹脂パネル16が縦骨等に摺接したり当接したりすることがなく、樹脂パネル16の傷や音鳴りが防止できるとともに、開閉操作の操作性を良好に維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面材支持構造および建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建具枠と、この建具枠に開閉可能に支持された障子とを備える浴室出入り口用の建具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載された浴室出入り口用建具における障子は、上框、下框および左右の縦框を四周框組みした内部に面材を嵌め込んで構成されており、上下左右の各框材には、面材の四周端縁を保持する溝が見付け方向内方に開口して形成されている。そして、障子の面材は、上下左右の各框材の溝に挿入されるとともに、溝の内部に設けたホットメルト(溶融樹脂接着剤)によって框材に固定されるようになっている。また、面材を保持する溝は、各框材の浴室側端部に形成され、つまり面材が浴室側に偏った位置に支持されるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−321343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、浴室出入り口用建具の障子において、面材としては、樹脂製パネル材が多用されている。このような樹脂製パネル材は、熱膨張率が大きく、浴室と脱衣室との温度差によって反ることがあり、内気温の高い浴室側の側面が暖められることで、パネル材の中央部分が浴室側に突出するような反りが生じてしまう。このような面材の反りは、特許文献1に記載の開き戸では、外観が劣化する以外にはさほど問題になることはないが、片引き戸や二枚建ての引き戸などにおいては、反った面材が建具枠の縦枠や縦骨、他の障子などに擦ってしまうこととなり、面材に傷が付いたり、開閉時に音鳴りがしたり、摩擦抵抗で開閉操作が阻害されたりなどの不都合が生じる可能性がある。特に、面材が浴室側に偏って設置された特許文献1に記載の障子を片引き戸等として用いた場合には、面材と縦枠や縦骨等とのクリアランスが小さくなることから、前記不都合の可能性が高まり問題である。
【0005】
本発明の目的は、面材の反りを確実に防止して外観や開閉操作性を良好に維持することができる面材支持構造および建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の面材支持構造は、上枠材、下枠材および左右の縦枠材を四周枠組みして構成されるとともに面材の外周端縁を保持する枠体と、前記枠体における前記上枠材と下枠材との間および前記左右の縦枠材間の少なくとも一方の枠材間に渡って設けられるとともに、当該枠材間の距離略全長に渡って前記面材の一方側の表面に接着される中間部材とを備え、前記枠体の見込み方向一方側端縁よりも前記中間部材が一方側に突出して設けられていることを特徴とする。
【0007】
ここで、中間部材は、上枠材と下枠材との間に設けられる1本または複数本の縦中桟で構成されてもよく、また左右の縦枠材間に設けられる1本または複数本の横中桟で構成されてもよく、さらには1本または複数本の縦中桟と1本または複数本の横中桟との両方、つまり格子状の中桟で構成されてもよい。また、枠体の端縁よりも中間部材が一方側に突出する状態としては、少なくとも中間部材の両端部に近接する枠材よりも中間部材が一方側に突出していればよい。さらに、中間部材は、枠材の一方側端縁の大半を構成する側面部等よりも一方側に突出していればよく、枠材の一方側端縁から部分的に突出する突出部(把手やノブ、ハンドル保持部、気密材保持部等)は、枠材の一方側端縁とはみなさず、このような突出部が中間部材よりも突出するような構成も本願発明に含まれる。
【0008】
このような本発明によれば、面材の一方側の表面に中間部材を接着したことで、この中間部材の剛性によって面材の反りを防止することができる。そして、中間部材が枠体の対向する枠材間の距離略全長に渡って接着されるとともに、中間部材が枠体の見込み方向一方側端縁よりも突出する程度以上の見込み寸法を有して形成されていることで、中間部材と面材とが一体的に連結されて部材剛性が確保でき、面材の反りを効果的に低減させることができる。従って、枠体および面材から構成した障子を片引き戸等に用いた場合でも、面材が縦枠や縦骨等に摺接したり当接したりすることがなく、面材の傷や音鳴りが防止できるとともに、開閉操作の操作性を良好に維持することができる。さらに、中間部材が面材の一方側の表面に接着されることで、面材の他方側に中間部材が突出したり露出したりせず、面材の他方側と縦枠や縦骨、他の面材等とのクリアランスが確保できるとともに、他方側から中間部材が見えないか目立たなくできて意匠性が良好にできる。
【0009】
また、本発明の面材支持構造では、前記中間部材は、中空断面を有した長尺部材から構成され、この中間部材の長手方向両端部には、それぞれ中空部に挿入される端部部材が取り付けられ、これらの端部部材を介して当該中間部材が前記枠体に連結されていることが好ましい。
このような構成によれば、中空状の中間部材の両端部に端部部材を取り付け、これらの端部部材を介して中間部材を枠体に連結することで、中間部材に複雑な加工を施さなくても連結が容易にでき、加工コストや組立作業手間を低減させることができる。さらに、中間部材が枠材よりも一方側に突出して形成されているために、中間部材の端部が露出することになるが、端部部材を取り付けることで中間部材の端部を閉塞させることができ、内部への水や埃等の浸入を防止することができる。さらに、矩形枠状の枠体における互いに対向する枠材に中間部材の両端部を連結する、すなわち中間部材を中桟(縦中桟や横中桟)として架設することで、中間部材の端部固定度を高めることができ、一層効果的に面材の反りを防止することができる。
【0010】
この際、本発明の面材支持構造では、前記端部部材には、固着具を介して前記枠体の一方側面に固定される固定片部が形成されるとともに、前記固着具を覆うカバー部材が係脱自在に取り付けられていることが好ましい。
このような構成によれば、端部部材に固定片部を形成して枠体の一方側面に固定することで、固定作業が容易にでき、組立作業性を向上させることができる。さらに、端部部材にカバー部材を係合させて固定片部の固着具を覆うことで、固着具を隠蔽することができ、面材支持構造の外観を良好にすることができる。
【0011】
さらに、本発明の面材支持構造では、前記上枠材、下枠材および左右の縦枠材は、それぞれ見付け方向内方に開口して前記面材の端縁を保持する凹溝部を有して形成され、前記凹溝部は、前記面材を見込み方向一方側から保持する第1保持部および他方側から保持する第2保持部を有して形成され、この第2保持部は、前記上下左右の各枠材における見込み方向他方側の端面と略同一面に設けられた突片で構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、面材を他方側から保持する凹溝部の第2保持部を突片で構成し、この突片が枠材における他方側の端面と略同一面に設けられていることで、他方側に偏った位置に面材を支持することができる。このように面材が他方側に偏った場合でも、前述のように中間部材によって面材の反りが低減されていることで、面材が縦枠等に摺接することを確実に防止でき、フラットな外観を有して意匠性に優れた障子などを構成することが可能となる。
【0012】
また、本発明の面材支持構造では、前記中間部材は、前記面材に向かって突出するとともに当該中間部材の長手方向略全長に渡る一対の突条を有して形成され、これら一対の突条間に設けられた帯状の接着部材で前記面材に接着されていることが好ましい。
このような構成によれば、一対の突条間に設けた帯状の接着部材(例えば、両面テープ)で中間部材を面材に接着することで、突条によって接着部材を隠蔽することができ、外観意匠性を向上させることができる。さらに、突条の突出寸法と接着部材の厚さ寸法とを適宜に設定しておく、すなわち接着部材のつぶれ量に応じて突条の突出寸法を設定しておくことで、接着部材の接着力を均一化させることができる。すなわち、中間部材を面材に向かって押圧して接着部材を接着させる際に、接着部材がつぶれつつ所定の押圧力において突条が面材に当接するように構成しておくことで、中間部材の全長に渡って接着部材のつぶれ量つまり接着力を均一にすることができる。
【0013】
一方、本発明の建具は、建具枠と、この建具枠に左右スライド開閉自在に支持された少なくとも1枚の障子と、開放した前記障子を収納する障子収納部とを備えた建具であって、前記障子は、四周框組みされた枠体と、この枠体内部に支持される面材とを有して構成され、この面材が前記いずれかの面材支持構造で前記枠体に支持されていることを特徴とする。
このような構成によれば、左右スライド自在に支持された障子において、枠体に支持される面材の反りを中間部材で低減させることができ、障子収納部の端縁を構成する縦骨などに面材が擦ることがなく、面材の傷や音鳴りが防止できるとともに、障子の開閉操作を円滑に実施することができる。
【0014】
この際、本発明の建具は、浴室出入り口に設置される建具であって、前記面材支持構造を構成する中間部材が前記面材における浴室と反対側の側面に接着されていることが好ましい。
このような構成によれば、内外の温度差が大きい浴室の出入り口に設置される建具において、障子の面材の反りを効果的に低減させることができ、外観や開閉操作性を良好に維持することができる。さらに、中間部材が浴室と反対側(例えば、脱衣室側)に接着されることで、浴室内部から見た障子の外観が良好にでき、建具の意匠性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る建具である浴室出入り口用の片引き戸1を示す横断面図である。図2は、片引き戸1を示す縦断面図である。
図1および図2において、本実施形態の片引き戸1は、繊維強化プラスチック製の浴槽(不図示)や浴室床F1(防水パン)、浴室壁等からなる浴室ユニットで構成された浴室と、この浴室に隣接する脱衣室との出入り口に用いられる建具である。この片引き戸1は、上枠2、下枠3および左右の縦枠4,5を枠組みした建具枠6と、この建具枠6内部に片引き形式に開閉可能に支持された1枚の障子10と、建具枠6内部に固定される固定面材8とを備えて構成されている。建具枠6の上枠2、下枠3および縦枠4,5は、脱衣室の天井材Cや床材F2、額縁材G等に固定されており、建具枠6の内部には、上枠2と下枠3とに渡って上下に延びる縦骨7が架設されている。
【0016】
そして、建具枠6の内部における図1の左側略半分の領域には、左右の縦枠のうち左側(図1の左側)の縦枠4と縦骨7との間に出入り用の開口部6Aが形成され、建具枠6の内部における図1の右側略半分の領域に固定面材8が支持され、この固定面材8の脱衣室側に障子10を収納する障子収納部8Aが形成されている。
障子10は、上框11、下框12および左右の縦框13,14を四周框組みした枠体としての障子枠15に、樹脂パネル16を嵌めこんで構成されている。そして、樹脂パネル16の脱衣室側側面には、上框11と下框12との間に架設される縦中桟20が接着されている。また、一方(図1の左側)の縦框13(戸先框)には、障子10を開閉操作するためのハンドル17が固定されている。このような障子10は、上枠2に設けられた上レール2Aと下枠3に設けられた下レール3Aとに、それぞれ上框11と下框12の戸車とが案内されて左右にスライド開閉できるようになっている。そして、障子10は、縦框13が縦枠4に当接し、かつ縦框14が縦骨7の脱衣室側に重なって開口部6Aを覆う閉鎖位置と、当該障子10の略全体が障子収納部8Aに収納される開放位置と、の間を開閉移動可能に構成されている。
【0017】
以下、障子10の構造について、図3〜図6も参照して詳しく説明する。ここで、図3および図4は、それぞれ障子10を拡大して示す縦断面図および横断面図である。図5は、縦中桟20の上下端部に設けられる端部部材21を示す斜視図であり、図6は、端部部材21に取り付けられるカバー部材22を示す斜視図である。
障子10の上框11、下框12および左右の縦框13,14は、それぞれ中空断面を有したアルミ形材製であり、枠体における上枠材、下枠材および左右の縦枠材を構成するものである。また、樹脂パネル16は、半透明の樹脂製板材からなり、本発明の面材を構成するもので、縦中桟20は、中空断面を有したアルミ形材製であり、本発明の中間部材を構成するものである。縦中桟20は、その上下端部の中空内部に挿入されて取り付けられる端部部材21を介して上框11および下框12に連結されるとともに、帯状の接着部材としての両面テープ23によって樹脂パネル16の脱衣室側(見込み方向一方側)側面に当該縦中桟20の浴室側(見込み方向他方側)側面が接着固定されている。
【0018】
上框11、下框12および縦框13,14は、図3、図4に示すように、脱衣室側に面する第1側面部111,121,131,141と、浴室側に面する第2側面部112,122,132,142と、見付け方向内側に面する見込み面部113,123,133,143とを有して形成されている。そして、上框11、下框12および縦框13,14には、各々の見込み面部113,123,133,143から見付け方向外側に凹み、見付け方向内方に開口した凹溝部114,124,134,144が形成されている。これらの凹溝部114,124,134,144は、樹脂パネル16の四周端縁を保持するものであって、樹脂パネル16を脱衣室側(一方側)から保持する第1保持部115,125,135,145と、樹脂パネル16を浴室側(他方側)から保持する第2保持部としての突片116,126,136,146とを有して形成されている。
【0019】
そして、第1保持部115,125,135,145と樹脂パネル16の脱衣室側側面との間には、弾性変形可能な接着剤16Aが介挿され、これらの接着剤16Aで樹脂パネル16が浴室側に押圧されることで、突片116,126,136,146と樹脂パネル16とが密接されるようになっている。また、突片116,126,136,146は、各框11,12,13,14の見込み方向他方側の端面である第2側面部112,122,132,142と略同一面に設けられるとともに、板状に形成され、凹溝部114,124,134,144が各框11,12,13,14の浴室側寄りに形成されている。従って、各框11,12,13,14つまり障子枠15に対して樹脂パネル16が浴室側に偏った位置に支持され、障子10の浴室側の側面が全体略フラットに形成されるようになっている。なお、縦框13における浴室側のハンドル17を支持するハンドル支持部137は、障子10の全開時に縦骨7の開口部6A側面に位置し、縦框14における係合片部147は、障子10の全開時に縦骨7に係合するものである。従って、縦框13,14において、ハンドル支持部137および係合片部147が、それぞれ第2側面部132,142よりも浴室側に突出して形成されていても、障子10の開閉操作を支障なく実施できるようになっている。
【0020】
次に、縦中桟20は、浴室側に位置して樹脂パネル16に対向する固定面部24と、この固定面部24の両側端縁から脱衣室側に延びる一対の見込み面部25と、これら一対の見込み面部を連結して脱衣室側に延び曲面状に形成された延出面部26とを有して形成されている。さらに、縦中桟20の固定面部24には、一対の見込み面部25に連続し浴室側に突出する一対の突条27が、当該縦中桟20の長手方向略全長に渡って形成されている。この縦中桟20の見込み面部25および延出面部26は、上框11、下框12および縦框13,14の第1側面部111,121,131,141よりも脱衣室側に突出して設けられており、すなわち障子枠15よりも一方側としての脱衣室側に突出する見込み寸法を有して縦中桟20が形成されている。これにより、縦中桟20が把手としての機能も有し、縦中桟20を持ったり縦中桟20に指を掛けて操作することで障子10の開閉操作が実施可能になる。
【0021】
また、固定面部24の脱衣室側側面における一対の突条27間に前記両面テープ23が設けられており、この両面テープ23の上下方向の長さ寸法は、縦中桟20の全長と略同一、すなわち、上框11および下框12の見込み面部113,123間の距離と略同一に設定されている。また、両面テープ23の厚さ寸法は、突条27の突出寸法よりも若干大きく設定されるとともに、縦中桟20を樹脂パネル16に向かって押圧して両面テープ23を変形させた状態で突条27が樹脂パネル16に当接する程度の寸法に設定されている。このような両面テープ23で縦中桟20を樹脂パネル16に接着することで、縦中桟20の全長に渡り連続的かつ均一に接着できるようになっている。
【0022】
次に、縦中桟20の上下端部に取り付けられる端部部材21は、図5に示すように、縦中桟20の上下端部の開口を覆うキャップ部211と、このキャップ部211から突出して縦中桟20の中空内部に挿入される挿入部212と、この挿入部212の反対側に向かってキャップ部211から突出する固定片部213とを有して形成されている。そして、端部部材21は、図3に示すように、固定片部213を脱衣室側から貫通する固着具としてのビス214を第1側面部111,121に螺合することで、上框11および下框12に固定されるようになっている。また、端部部材21のキャップ部211には、カバー部材22を係止する一対の第1係止部215と、第2係止部216とが形成されている。第1係止部215は、見込み方向に反った案内溝状に形成され、後述するカバー部材22の突出片222を案内するとともに、突出片222先端の係止突起223を係止可能に構成されている。また、第2係止部216は、カバー部材22の係止凹部224と係合することで、カバー部材22の脱衣室側端部がキャップ部211から浮き上がりを防止できるように構成されている。
【0023】
カバー部材22は、図5に示すように、端部部材21のキャップ部211と固定片部213とに渡って配置される半ドーム状のカバー本体221と、このカバー本体221の底面側(キャップ部211側)に一対で設けられる突出片222と、突出片222の先端部に形成された係止突起223と、カバー本体221内部の脱衣室側端部に形成された係止凹部224とを有して形成されている。このカバー部材22は、カバー本体221の底面を端部部材21のキャップ部211に摺接させつつ、脱衣室側から浴室側に向かって押し込むことで、端部部材21に取り付けられる。この際、突出片222が端部部材21の第1係止部215に案内されるとともに、所定の取付位置において、係止突起223が第1係止部215の浴室側端部に係止され、かつ係止凹部224に端部部材21の第2係止部216が挿入されることで、移動不能に端部部材21に支持されるようになっている。また、カバー部材22と端部部材21の固定片部213との間にマイナスドライバー等を挿入して脱衣室側に引くことで、端部部材21からカバー部材22を取り外すことも可能に構成されている。
【0024】
以上の縦中桟20を障子10に取り付ける取付手順について、図7(A)〜(D)に基づいて説明する。
先ず、図7(A)に示すように、縦中桟20の固定面部24に両面テープ23の一方の接着面を接着するとともに、縦中桟20の上下端部の中空内部に挿入部212を挿入して端部部材21を取り付け、図7(B)に示すように、縦中桟20を組み立てておく。
次に、図7(C)に示すように、障子枠15内部に樹脂パネル16を嵌め込んだ状態の障子10に対し、脱衣室側から組み立てた縦中桟20を取り付ける。この際、両面テープ23の他方の接着面を樹脂パネル16の脱衣室側表面に接着するとともに、上下の端部部材21の固定片部213をビス214によって上框11および下框12の第1側面部111,121に固定する。
次に、図7(D)に示すように、カバー部材22を脱衣室側から端部部材21に係合させて取り付ける。この際、カバー部材22の突出片222を第1係止部215に挿通させるとともに、係止突起223が第1係止部215に係止され、係止凹部224(図6)に第2係止部216が挿入される位置までカバー部材22を押し込むことで、カバー部材22が移動不能に端部部材21に取り付けられる。
以上のようにして縦中桟20の障子10への取付作業が完了する。
【0025】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、樹脂パネル16の脱衣室側の表面に縦中桟20が接着され、この縦中桟20の上下端部が端部部材21を介して上框11および下框12に連結されていることで、縦中桟20の剛性によって樹脂パネル16の反りを防止することができる。そして、縦中桟20が上下左右の框11,12,13,14よりも脱衣室側に突出する見込み寸法を有して形成されていることで、縦中桟20の上下端部の固定度および部材剛性が確保でき、樹脂パネル16の反りを効果的に低減させることができる。従って、浴室と脱衣室との温度差によって樹脂パネル16が浴室側に反ることが防止できるので、障子10の開閉時に樹脂パネル16が縦骨7に摺接したり当接したりすることがなく、樹脂パネル16の傷や音鳴りが防止できるとともに、開閉操作の操作性を良好に維持することができる。また、縦中桟20が把手として機能することで、高さ方向の任意の位置で障子10を開閉操作することができ、利便性を向上させることができる。
【0026】
(2)さらに、障子枠15に対して浴室側に偏った位置に樹脂パネル16を設け、浴室側をフラットに形成した障子10において、縦中桟20が樹脂パネル16の脱衣室側に接着されているので、浴室側に縦中桟20が突出したり露出したりせず、障子10と縦骨7とのクリアランスが確保できるとともに、浴室側から縦中桟20が見えないか目立たなくできて意匠性が良好にできる。また、縦中桟20の略全長を樹脂パネル16に接着することで、樹脂パネル16と縦中桟20との一体性を高めることができ、一層効果的に樹脂パネル16の反りを防止することができる。
【0027】
(3)また、上下両端部に取り付けられた端部部材21を介して縦中桟20が上框11および下框12に連結されているので、縦中桟20に複雑な加工を施さなくても連結が容易にでき、加工コストや組立作業手間を低減させることができる。さらに、中空断面を有する縦中桟20が上下左右の框11,12,13,14よりも脱衣室側に突出して設けられていても、その端部が端部部材21で塞がれているので、縦中桟20の端部が露出することなく、内部への水や埃等の浸入を防止することができる。また、端部部材21の固定片部213が脱衣室側からのビス214で上框11および下框12の第1側面部111,121に固定されるので、固定作業が容易にでき、組立作業性を向上させることができる。さらに、端部部材21にカバー部材22を取り付けてビス214を覆うことで、ビス214を隠蔽することができ、障子10の外観を良好にすることができる。
【0028】
(4)また、縦中桟20の一対の突条27間に設けた両面テープ23を樹脂パネル16に接着することで、突条27によって両面テープ23を隠蔽することができ、外観意匠性を向上させることができる。さらに、両面テープ23の厚さ寸法と突条27の突出寸法とを適宜に設定し、接着時に両面テープ23が変形した際に突条27が樹脂パネル16に当接するようにしたことで、縦中桟20の全長に渡って両面テープ23の接着力を均一化させることができる。
【0029】
なお、本発明は前記実施形態の構成に限定されるものではない。
例えば、前記実施形態では、浴室出入り口用の建具としての片引き戸1を例示して説明したが、本発明の建具は、浴室出入り口用の建具に限らず、建物の窓や出入り口に用いられるものであってもよい。また、前記実施形態では、1枚の障子10を有した片引き形式の建具について説明したが、これに限らず、2枚以上の障子が開閉自在に支持された二枚建てや三枚建ての引き戸でもよく、さらには開き形式のドアや折れ戸であってもよい。
【0030】
また、前記実施形態では、中間部材として、障子10の上框11と下框12との間に架設される縦中桟20を例示したが、中間部材としては、縦中桟に限らず、左右の縦框13,14間に架設される横中桟であってもよく、さらには縦横格子状に架設される中桟であってもよい。また、中間部材は、1本に限らず、複数本で構成されていてもよい。
また、前記実施形態では、障子10において枠体(障子枠15)に対して面材(樹脂パネル16)が他方側(浴室側)に偏って配置されたものを例示したが、これに限らず、枠体の見込み方向略中央に面材が配置されたものでもよく、また枠体の見込み方向一方側に偏心して面材が配置されたものでもよい。
【0031】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含
まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る建具を示す横断面図である。
【図2】前記建具を示す縦断面図である。
【図3】前記建具における障子を拡大して示す縦断面図である。
【図4】前記障子を拡大して示す横断面図である。
【図5】前記障子の中間部材に取り付けられる端部部材を示す斜視図である。
【図6】前記端部部材に取り付けられるカバー部材を示す斜視図である。
【図7】前記障子の組立手順を示す断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1…片引き戸(建具)、6…建具枠、8A…障子収納部、10…障子、11…上框(上枠材)、12…下框(下枠材)、13,14…縦框(縦枠材)、15…障子枠(枠体)、16…樹脂パネル(面材)、20…縦中桟(中間部材)、21…端部部材、22…カバー部材、23…両面テープ(接着部材)、27…突条、114,124,134,144…凹溝部、115,125,135,145…第1保持部、116,126,136,146…突片(第2保持部)、213…固定片部、214…ビス(固着具)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠材、下枠材および左右の縦枠材を四周枠組みして構成されるとともに面材の外周端縁を保持する枠体と、
前記枠体における前記上枠材と下枠材との間および前記左右の縦枠材間の少なくとも一方の枠材間に渡って設けられるとともに、当該枠材間の距離略全長に渡って前記面材の一方側の表面に接着される中間部材とを備え、
前記枠体の見込み方向一方側端縁よりも前記中間部材が一方側に突出して設けられている面材支持構造。
【請求項2】
前記中間部材は、中空断面を有した長尺部材から構成され、この中間部材の長手方向両端部には、それぞれ中空部に挿入される端部部材が取り付けられ、これらの端部部材を介して当該中間部材が前記枠体に連結されている請求項1に記載の面材支持構造。
【請求項3】
前記端部部材には、固着具を介して前記枠体の一方側側面に固定される固定片部が形成されるとともに、前記固着具を覆うカバー部材が係脱自在に取り付けられている請求項2に記載の面材支持構造。
【請求項4】
前記上枠材、下枠材および左右の縦枠材は、それぞれ見付け方向内方に開口して前記面材の端縁を保持する凹溝部を有して形成され、
前記凹溝部は、前記面材を見込み方向一方側から保持する第1保持部および他方側から保持する第2保持部を有して形成され、この第2保持部は、前記上下左右の各枠材における見込み方向他方側の端面と略同一面に設けられた突片で構成されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の面材支持構造。
【請求項5】
前記中間部材は、前記面材に向かって突出するとともに当該中間部材の長手方向略全長に渡る一対の突条を有して形成され、これら一対の突条間に設けられた帯状の接着部材で前記面材に接着されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の面材支持構造。
【請求項6】
建具枠と、この建具枠に左右スライド開閉自在に支持された少なくとも1枚の障子と、開放した前記障子を収納する障子収納部とを備えた建具であって、
前記障子は、四周框組みされた枠体と、この枠体内部に支持される面材とを有して構成され、この面材が請求項1から請求項5のいずれかに記載の面材支持構造で前記枠体に支持されている建具。
【請求項7】
浴室出入り口に設置される建具であって、
前記面材支持構造を構成する中間部材が前記面材における浴室と反対側の側面に接着されている請求項6に記載の建具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−179991(P2009−179991A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19206(P2008−19206)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】