面状発熱体及びこれを用いた冷凍冷蔵庫の庫内仕切り板並びに面状発熱体の製造方法
【課題】部品点数の削減と繁雑な抵抗体パターンの製作工程を廃してより安価にすることができるとともに、より均一な特性にできる面状発熱体及びその製造方法を得て、さらに、その面状発熱体を冷凍冷蔵庫の庫内仕切り板に用いることを目的とする。
【解決手段】導電性材料を混合して、導電性を発現させた熱可塑性樹脂を成形してなる平板状の発熱体１と、発熱体１の両端の面上に設けられた平板状の電極２と、電極２に接続された通電用の電源コード５と、粘着層４を有し、粘着層４を介して電極２及び発熱体１の全面を覆うように積層した電気絶縁性の保護シート３とを備えたものとする。
【解決手段】導電性材料を混合して、導電性を発現させた熱可塑性樹脂を成形してなる平板状の発熱体１と、発熱体１の両端の面上に設けられた平板状の電極２と、電極２に接続された通電用の電源コード５と、粘着層４を有し、粘着層４を介して電極２及び発熱体１の全面を覆うように積層した電気絶縁性の保護シート３とを備えたものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、被保温物にシート状のヒーターを装着して被保温物を加熱する面状発熱体に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来の面状発熱体の一形態として、絶縁性のフィルム上に抵抗体パターンを形成した可撓性の発熱体を設け、発熱体の抵抗体パターン形成面に重ね合わせて柔軟性を有する絶縁性の保護シートを積層形成したものがある。
【０００３】
発熱体は、ＰＥＴ樹脂からなる絶縁性のフィルム上に薄膜状あるいは箔からなる抵抗体パターンを被着形成してなるものであり、この抵抗体パターンは、ステンレス等の抵抗体箔を貼り付けた後、エッチングによってパターン形成されたり、あらかじめパターン状に形成された版を用いることによって絶縁性のフィルム上に印刷もしくは金属蒸着によって形成されている。
【０００４】
この抵抗体パターンは、フィルム上にほぼ全面にわたって引き回され、単一の導電路で形成されており、電極部に電源コードを設け、この電源コードによって電源と接続されて発熱体が発熱するものである。面状発熱体は、このように形成された抵抗体パターン形成面にゴムシートやスポンジシート等の柔軟性を有する絶縁性の保護シートを接着剤により貼着して積層形成してなるものであり、抵抗体パターンが絶縁性のフィルムと保護シートによって被覆された絶縁構造となる。（例えば、特許文献１参照）
【０００５】
【特許文献１】特開平８−１３８８４２（第２−３頁、図１−図６）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
従来の面状発熱体は、抵抗体パターンとして金属抵抗体箔を貼り付けた後にエッチングによりパターン形成、あるいは版を用いて印刷、蒸着するなどの工程を要し、またこれらのパターンを絶縁フィルム上に形成するため、繁雑な工程と部品点数が多くなることによりコストが高くなるという課題を有する。
【０００７】
また、抵抗体パターンを熱伝導の悪い樹脂フィルム上に形成しているため、均一な特性の面状発熱を得ることが困難であるなどの課題を有する。
【０００８】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、部品点数の削減と繁雑な抵抗体パターンの製作工程を廃してより安価にすることができるとともに、より均一な特性にできる面状発熱体及びその製造方法を得て、さらに、その面状発熱体を冷凍冷蔵庫の庫内仕切り板に用いることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
本発明に係る面状発熱体は、導電性材料を混合して、導電性を発現させた熱可塑性樹脂を成形してなる平板状の発熱体と、
上記発熱体の両端の面上に設けられた平板状の電極と、
上記電極に接続された通電用の電源コードと、
粘着層を有し、上記粘着層を介して上記電極及び発熱体の全面を覆うように積層した電気絶縁性の保護シートと、
を備えたものである。
【００１０】
本発明に係る面状発熱体の製造方法は、導電性材料を混合して、導電性を発現させた熱可塑性樹脂を押し出し成形または射出成形により成形して平板状の発熱体を得る工程と、
上記発熱体の両端の面上に通電用の電源コードが接続された平板状の電極を設置する工程と、
粘着層を有する電気絶縁性の保護シートを、上記粘着層を介して上記電極及び発熱体の全面を覆うように積層する工程と、
を備えたものである。
【００１１】
本発明に係る冷凍冷蔵庫の庫内仕切り板は、上記本発明に係る面状発熱体を、熱可塑性樹脂により形成されたケース内表面に設置し、上記ケース内空間に断熱板を設けたものである。
【発明の効果】
【００１２】
本発明によれば、部品点数の削減と繁雑な抵抗体パターンの製作工程を廃し、より安価で均一な特性の面状発熱体を得ることができ、それを冷凍冷蔵庫の庫内仕切り板に用いることにより冷凍冷蔵庫の庫内温度管理をよりよいものにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
実施の形態１．
図１は、本発明に係る面状発熱体の実施の形態１の構成を示す平面図（ａ）及びＡ−Ａ断面図であり、図２は、本実施の形態１における他の例を示す断面図である。
【００１４】
図１に示したように、本実施の形態１における面状発熱体は、カーボン、金属粉末などの導電性材料を混合し、導電性を発現させたポリプロピレン、ポリエチレンをはじめとする種々の熱可塑性樹脂からなる平板状の発熱体１と、発熱体１の両端の面上に設けられた電極２と、電極２に接続された電源コード５と、電極２及び発熱体１の全面を覆うように積層され、粘着層４を有する電気絶縁性の保護シート３とを備える。
【００１５】
発熱体１は、上記熱可塑性樹脂を押出し成形あるいは射出成形により形成する。電極２には、例えば、銅あるいはアルミニウムのテープを用い、発熱体１との接触面に粘着層を有する粘着テープを用いることにより、製造を容易にすることができる。保護シート３は、発熱体１とほぼ同等の形状で積層形成して構成されるものである。電源コード５には、銅あるいはアルミニウムのテープあるいは線を用いる。
【００１６】
発熱体１両端の表面上に、電源コード５が接続された電極２を設置し、保護シート３を粘着層４で電極２及び発熱体１面に積層して固定する。
【００１７】
発熱体１の両端部に設置された電極２に接続された電源コード５によって、図示しない電源から通電され発熱体１が発熱する。なお、接続される電源は直流、交流のいずれでもよい。
【００１８】
発熱体１を被保温部材へ取付ける場合、図１に示したように保護シート３を発熱体１と同等の大きさとする場合には、発熱体１の被保温部材への取付け面に粘着層を設け、この粘着層によって被保温部材へ貼り付ける。また、図２に示したように、保護シート３を発熱体１の形状よりも大きくとり、発熱体１からはみ出した保護シート３のはみ出し部の粘着層４を使用して被保温部材との固定を容易にすることもできる。被保温部材が絶縁性を有する場合には、いずれの貼付け方法でも発熱体と被保温部材を直接接触させることができ、被保温部材を効率よく保温することができる。
【００１９】
以上のように、押出し成形あるいは射出成形によって所望の抵抗体パターンに成形した発熱体１と、発熱体１と同形状の保護シート３とを一体化することにより、部品点数を削減するとともに、繁雑な抵抗体パターンの製作工程を簡略化し、より安価な面状発熱体を得ることができる。
【００２０】
本実施の形態１では、平面状の被保温部材に発熱体を貼り付ける場合を例として示した。このように平面状の発熱体１を供する場合には、シート状の発熱体１を押出し成形にて形成することにより、安価な面状発熱体を得ることができる。
【００２１】
実施の形態２．
図３は、本発明に係る面状発熱体の実施の形態２の構成を示す斜視図である。本実施の形態２では、発熱体２が凹凸形状や曲面などの３次元形状を有しているが、基本的な構成は実施の形態１に示した面状発熱体と同様であり、ここに示した形状は凹凸形状の一例であり、押出し成形、プレス成形や射出成形により成形可能な形状であれば、所望の形状を自由に選択できる。なお、図３では発熱体１に貼り付ける保護シート３を示していないが、実施の形態１に示した発熱体と同様、被保温部材へ固定する際には保護シート３が貼り付けられることは言うまでもない。
【００２２】
以上のように構成した面状発熱体では、実施の形態１で示した面状発熱体と同様、押出し成形あるいは射出成形によって所望の形状の抵抗体パターンに成形した発熱体１と、発熱体１と同形状の保護シート３とを一体化することにより、部品点数を削減するとともに、繁雑な抵抗体パターンの製作工程を簡略化し、より安価で均一な特性の面状発熱体を得ることができる。
【００２３】
さらに、押出し成形やプレス成形、あるいは射出成形などにより、所望の形状の抵抗体パターンに成形した発熱体１を簡単に得られる。
【００２４】
実施の形態３．
図４及び図５は、本発明に係る面状発熱体を冷凍冷蔵庫用の庫内仕切り板に用いた実施の形態３を示す断面図である。
【００２５】
図４に示したように、庫内仕切り板は、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂で形成された外郭を構成する上ケース１１ａ及び下ケース１１ｂと、上ケース１１ａ及び下ケース１１ｂ内部に発泡ポリスチレンで形成された断熱材１２とを備え、庫内設定温度が高い部屋に隣接する上ケース１１ａの裏面には、平面状の発熱体１と平面状の発熱体１の両端部に形成された通電用の電極２と平面状の発熱体１と通電用の電極２を覆うように配設された保護シート３とからなる面状発熱体が設置される。
【００２６】
上ケース１１ａへの面状発熱体の固定は、発熱体１と上ケース１１ａの裏面のいずれかに粘着層１３を形成してこれらを接着した後、粘着層を有する保護シート３を貼付けてもよいし、あるいは上ケース１１ａと発熱体１との間の粘着層１３を省き、図５に示したように、保護シート３の粘着層４を利用して、発熱体１と保護シート３を一体で上ケースの裏面に設置することもできる。この場合には、図５に示すように、保護シート３は発熱体１よりも大きな寸法を有し、発熱体１からはみでた外周部を利用して、上ケースの裏面に貼り付けられる。発熱体１を保護シート３で上ケース裏面に貼り付けた後、下ケース１１ｂの内部に断熱材１２を配置し、上ケース１１ａと下ケース１１ｂを嵌め、冷蔵庫の庫内仕切り板が構成される。なお、上ケース１１ａと下ケース１１ｂの嵌合は、双方の外周部に形成された周縁部１４を接着、溶着するか、あるいは上ケース１１ａと下ケース１１ｂの周縁部１４に凹凸やツメなどを設けて嵌め合わせるか、あるいはネジ、ナットなどの締結部材を用いることによって周縁部１４を締結する。
【００２７】
本実施の形態３によれば、冷凍冷蔵庫の製造コストを低減できるとともに、庫内温度管理をよりよいものとすることができる。
【００２８】
図６は、冷凍冷蔵庫の仕切り板のケースの構成の他の例を示す斜視図である。
図４および図５では、発熱体１と断熱材１２を設置するケースを上ケース１１ａと下ケース１１ｂの２部品にわけて構成する例を示したが、図６に示したように、上ケース１１ａと下ケース１１ｂの１辺をヒンジ構造としてケースを一部品で構成し、このヒンジを折り曲げ、残りの３辺の周縁部１４を上記のいずれかの方法で嵌合するように構成することもできる。このような構成とすることで、部品点数を削減するとともに組立てを簡略化することも可能である。
【００２９】
近年の冷凍冷蔵庫の多機能化にともなって、庫内をさまざまな温度に設定することができるよう、庫内の部屋の数が増加傾向にある。隣り合う部屋を異なる設定温度に制御するために、部屋の仕切りに高い断熱性能が求められるが、経済的な断熱材として実際に使用されているのは発泡ポリスチレンがほとんどである。ところが、例えば、設定温度として２０℃以上の差が生じる野菜冷蔵室と冷凍室の断熱を発泡ポリスチレンだけで担うにはかなりの厚み（例えば３０ｍｍ程度）が必要になり、断熱材の厚さを増すと、庫内の有効容積を減少させることになる。このため、図４および図５に示したように設定温度が高い側の仕切り板にヒーターを貼り付けて、庫内の設定温度を調節する構造がとられている。この温度調整用ヒーターとして、金属抵抗体を温度上昇が必要な部位に引き回し形成して、単一の導電路を構成した線ヒーターが使用されている例があるが、均一な面発熱が得にくく、また部品点数も多い。これに対し、本発明による冷蔵庫の庫内仕切り板では、発熱体全面での均一な発熱を得ることはもとより、部品点数が少なく組立ても簡単となるので、安価な冷蔵庫の庫内仕切り板を得ることができる。
【００３０】
なお、本実施の形態３では、断熱材として発泡ポリスチレン（スチロール）を使用した場合を示したが、断熱材として発泡ポリウレタンを使用することもできる。発泡ポリウレタンを使用する場合、上ケース１１ａの裏面へ面上発熱体を設置する方法は発泡スチロールを使用する場合と同じである。上ケース１１ａ裏面に発熱体を設置した後、上ケースと下ケースを嵌め合わせて、両ケース間に発泡させる空間を形成した後に、発泡ポリウレタンを注入する。発泡ポリウレタンを注入する場合には、発泡過程でのポリウレタンの漏れが生じないよう、上ケース１１ａと下ケース１１ｂの周縁部１４で形成される嵌合部は接着あるいは溶着などにより密着させるか、あるいは周縁部１４にテープなどを貼って対処する。なお、ポリウレタンで断熱層を形成する場合には、ポリウレタンを注入する穴１５を下ケース１１ｂの所定の位置に形成しておくことが必要である。
【００３１】
このように断熱材として発泡ポリウレタンを用いた場合にも、上記構成で示した庫内仕切り板と同様、部品点数が少なく組立てが容易で安価な庫内仕切り板を得ることができ、さらに、単位厚さ当たりの断熱性が発泡スチロールより優れているため、同等の断熱性を確保する場合にはより薄い構成とすることができるため、冷蔵庫の実容量の増大に寄与することができる。
【００３２】
図７は、本発明に係る面状発熱体の他の形状を示す平面図である。
図４及び図５では、仕切り板全面での均一な発熱が得られるように、仕切り板内の全面にシート状の発熱体を設置した場合の例を示したが、線状ヒーターで得られるような局所的な発熱でも庫内の温度制御に支障がない場合には、図７に示したような屈曲した形状の発熱体１をプレス成形あるいは射出成形で形成し、発熱体１の両端の表面に電極２を設け、発熱体１及び電極２の表面に保護シート３を貼り付けた面上発熱体としてもよい。この場合には、線状ヒーターと同等の発熱分布が得られる一方で、さらに安価に構成することができる。また、発熱面積が減少するため、投入電力を抑制することができ、冷凍冷蔵庫の省電力化が可能である。
【産業上の利用可能性】
【００３３】
本発明は、冷凍冷蔵庫の庫内仕切り板等の温度管理に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【００３４】
【図１】本発明に係る面状発熱体の実施の形態１の構成を示す平面図（ａ）及びＡ−Ａ断面図である。
【図２】実施の形態１における他の例を示す断面図である。
【図３】本発明に係る面状発熱体の実施の形態２の構成を示す斜視図である。
【図４】本発明に係る面状発熱体を冷凍冷蔵庫用の庫内仕切り板に用いた実施の形態３を示す断面図である。
【図５】本発明に係る面状発熱体を冷凍冷蔵庫用の庫内仕切り板に用いた実施の形態３を示す断面図である。
【図６】冷凍冷蔵庫の仕切り板のケースの構成の他の例を示す斜視図である。
【図７】本発明に係る面状発熱体の他の形状を示す平面図である。
【符号の説明】
【００３５】
１ 発熱体、２ 電極、３ 保護シート、４ 粘着層、５ 電源コード、
１１，１１ａ，１１ｂ ケース、１２ 断熱材、１３ 粘着層、１４ 周縁部、
１５ 穴。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、被保温物にシート状のヒーターを装着して被保温物を加熱する面状発熱体に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来の面状発熱体の一形態として、絶縁性のフィルム上に抵抗体パターンを形成した可撓性の発熱体を設け、発熱体の抵抗体パターン形成面に重ね合わせて柔軟性を有する絶縁性の保護シートを積層形成したものがある。
【０００３】
発熱体は、ＰＥＴ樹脂からなる絶縁性のフィルム上に薄膜状あるいは箔からなる抵抗体パターンを被着形成してなるものであり、この抵抗体パターンは、ステンレス等の抵抗体箔を貼り付けた後、エッチングによってパターン形成されたり、あらかじめパターン状に形成された版を用いることによって絶縁性のフィルム上に印刷もしくは金属蒸着によって形成されている。
【０００４】
この抵抗体パターンは、フィルム上にほぼ全面にわたって引き回され、単一の導電路で形成されており、電極部に電源コードを設け、この電源コードによって電源と接続されて発熱体が発熱するものである。面状発熱体は、このように形成された抵抗体パターン形成面にゴムシートやスポンジシート等の柔軟性を有する絶縁性の保護シートを接着剤により貼着して積層形成してなるものであり、抵抗体パターンが絶縁性のフィルムと保護シートによって被覆された絶縁構造となる。（例えば、特許文献１参照）
【０００５】
【特許文献１】特開平８−１３８８４２（第２−３頁、図１−図６）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
従来の面状発熱体は、抵抗体パターンとして金属抵抗体箔を貼り付けた後にエッチングによりパターン形成、あるいは版を用いて印刷、蒸着するなどの工程を要し、またこれらのパターンを絶縁フィルム上に形成するため、繁雑な工程と部品点数が多くなることによりコストが高くなるという課題を有する。
【０００７】
また、抵抗体パターンを熱伝導の悪い樹脂フィルム上に形成しているため、均一な特性の面状発熱を得ることが困難であるなどの課題を有する。
【０００８】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、部品点数の削減と繁雑な抵抗体パターンの製作工程を廃してより安価にすることができるとともに、より均一な特性にできる面状発熱体及びその製造方法を得て、さらに、その面状発熱体を冷凍冷蔵庫の庫内仕切り板に用いることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
本発明に係る面状発熱体は、導電性材料を混合して、導電性を発現させた熱可塑性樹脂を成形してなる平板状の発熱体と、
上記発熱体の両端の面上に設けられた平板状の電極と、
上記電極に接続された通電用の電源コードと、
粘着層を有し、上記粘着層を介して上記電極及び発熱体の全面を覆うように積層した電気絶縁性の保護シートと、
を備えたものである。
【００１０】
本発明に係る面状発熱体の製造方法は、導電性材料を混合して、導電性を発現させた熱可塑性樹脂を押し出し成形または射出成形により成形して平板状の発熱体を得る工程と、
上記発熱体の両端の面上に通電用の電源コードが接続された平板状の電極を設置する工程と、
粘着層を有する電気絶縁性の保護シートを、上記粘着層を介して上記電極及び発熱体の全面を覆うように積層する工程と、
を備えたものである。
【００１１】
本発明に係る冷凍冷蔵庫の庫内仕切り板は、上記本発明に係る面状発熱体を、熱可塑性樹脂により形成されたケース内表面に設置し、上記ケース内空間に断熱板を設けたものである。
【発明の効果】
【００１２】
本発明によれば、部品点数の削減と繁雑な抵抗体パターンの製作工程を廃し、より安価で均一な特性の面状発熱体を得ることができ、それを冷凍冷蔵庫の庫内仕切り板に用いることにより冷凍冷蔵庫の庫内温度管理をよりよいものにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
実施の形態１．
図１は、本発明に係る面状発熱体の実施の形態１の構成を示す平面図（ａ）及びＡ−Ａ断面図であり、図２は、本実施の形態１における他の例を示す断面図である。
【００１４】
図１に示したように、本実施の形態１における面状発熱体は、カーボン、金属粉末などの導電性材料を混合し、導電性を発現させたポリプロピレン、ポリエチレンをはじめとする種々の熱可塑性樹脂からなる平板状の発熱体１と、発熱体１の両端の面上に設けられた電極２と、電極２に接続された電源コード５と、電極２及び発熱体１の全面を覆うように積層され、粘着層４を有する電気絶縁性の保護シート３とを備える。
【００１５】
発熱体１は、上記熱可塑性樹脂を押出し成形あるいは射出成形により形成する。電極２には、例えば、銅あるいはアルミニウムのテープを用い、発熱体１との接触面に粘着層を有する粘着テープを用いることにより、製造を容易にすることができる。保護シート３は、発熱体１とほぼ同等の形状で積層形成して構成されるものである。電源コード５には、銅あるいはアルミニウムのテープあるいは線を用いる。
【００１６】
発熱体１両端の表面上に、電源コード５が接続された電極２を設置し、保護シート３を粘着層４で電極２及び発熱体１面に積層して固定する。
【００１７】
発熱体１の両端部に設置された電極２に接続された電源コード５によって、図示しない電源から通電され発熱体１が発熱する。なお、接続される電源は直流、交流のいずれでもよい。
【００１８】
発熱体１を被保温部材へ取付ける場合、図１に示したように保護シート３を発熱体１と同等の大きさとする場合には、発熱体１の被保温部材への取付け面に粘着層を設け、この粘着層によって被保温部材へ貼り付ける。また、図２に示したように、保護シート３を発熱体１の形状よりも大きくとり、発熱体１からはみ出した保護シート３のはみ出し部の粘着層４を使用して被保温部材との固定を容易にすることもできる。被保温部材が絶縁性を有する場合には、いずれの貼付け方法でも発熱体と被保温部材を直接接触させることができ、被保温部材を効率よく保温することができる。
【００１９】
以上のように、押出し成形あるいは射出成形によって所望の抵抗体パターンに成形した発熱体１と、発熱体１と同形状の保護シート３とを一体化することにより、部品点数を削減するとともに、繁雑な抵抗体パターンの製作工程を簡略化し、より安価な面状発熱体を得ることができる。
【００２０】
本実施の形態１では、平面状の被保温部材に発熱体を貼り付ける場合を例として示した。このように平面状の発熱体１を供する場合には、シート状の発熱体１を押出し成形にて形成することにより、安価な面状発熱体を得ることができる。
【００２１】
実施の形態２．
図３は、本発明に係る面状発熱体の実施の形態２の構成を示す斜視図である。本実施の形態２では、発熱体２が凹凸形状や曲面などの３次元形状を有しているが、基本的な構成は実施の形態１に示した面状発熱体と同様であり、ここに示した形状は凹凸形状の一例であり、押出し成形、プレス成形や射出成形により成形可能な形状であれば、所望の形状を自由に選択できる。なお、図３では発熱体１に貼り付ける保護シート３を示していないが、実施の形態１に示した発熱体と同様、被保温部材へ固定する際には保護シート３が貼り付けられることは言うまでもない。
【００２２】
以上のように構成した面状発熱体では、実施の形態１で示した面状発熱体と同様、押出し成形あるいは射出成形によって所望の形状の抵抗体パターンに成形した発熱体１と、発熱体１と同形状の保護シート３とを一体化することにより、部品点数を削減するとともに、繁雑な抵抗体パターンの製作工程を簡略化し、より安価で均一な特性の面状発熱体を得ることができる。
【００２３】
さらに、押出し成形やプレス成形、あるいは射出成形などにより、所望の形状の抵抗体パターンに成形した発熱体１を簡単に得られる。
【００２４】
実施の形態３．
図４及び図５は、本発明に係る面状発熱体を冷凍冷蔵庫用の庫内仕切り板に用いた実施の形態３を示す断面図である。
【００２５】
図４に示したように、庫内仕切り板は、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂で形成された外郭を構成する上ケース１１ａ及び下ケース１１ｂと、上ケース１１ａ及び下ケース１１ｂ内部に発泡ポリスチレンで形成された断熱材１２とを備え、庫内設定温度が高い部屋に隣接する上ケース１１ａの裏面には、平面状の発熱体１と平面状の発熱体１の両端部に形成された通電用の電極２と平面状の発熱体１と通電用の電極２を覆うように配設された保護シート３とからなる面状発熱体が設置される。
【００２６】
上ケース１１ａへの面状発熱体の固定は、発熱体１と上ケース１１ａの裏面のいずれかに粘着層１３を形成してこれらを接着した後、粘着層を有する保護シート３を貼付けてもよいし、あるいは上ケース１１ａと発熱体１との間の粘着層１３を省き、図５に示したように、保護シート３の粘着層４を利用して、発熱体１と保護シート３を一体で上ケースの裏面に設置することもできる。この場合には、図５に示すように、保護シート３は発熱体１よりも大きな寸法を有し、発熱体１からはみでた外周部を利用して、上ケースの裏面に貼り付けられる。発熱体１を保護シート３で上ケース裏面に貼り付けた後、下ケース１１ｂの内部に断熱材１２を配置し、上ケース１１ａと下ケース１１ｂを嵌め、冷蔵庫の庫内仕切り板が構成される。なお、上ケース１１ａと下ケース１１ｂの嵌合は、双方の外周部に形成された周縁部１４を接着、溶着するか、あるいは上ケース１１ａと下ケース１１ｂの周縁部１４に凹凸やツメなどを設けて嵌め合わせるか、あるいはネジ、ナットなどの締結部材を用いることによって周縁部１４を締結する。
【００２７】
本実施の形態３によれば、冷凍冷蔵庫の製造コストを低減できるとともに、庫内温度管理をよりよいものとすることができる。
【００２８】
図６は、冷凍冷蔵庫の仕切り板のケースの構成の他の例を示す斜視図である。
図４および図５では、発熱体１と断熱材１２を設置するケースを上ケース１１ａと下ケース１１ｂの２部品にわけて構成する例を示したが、図６に示したように、上ケース１１ａと下ケース１１ｂの１辺をヒンジ構造としてケースを一部品で構成し、このヒンジを折り曲げ、残りの３辺の周縁部１４を上記のいずれかの方法で嵌合するように構成することもできる。このような構成とすることで、部品点数を削減するとともに組立てを簡略化することも可能である。
【００２９】
近年の冷凍冷蔵庫の多機能化にともなって、庫内をさまざまな温度に設定することができるよう、庫内の部屋の数が増加傾向にある。隣り合う部屋を異なる設定温度に制御するために、部屋の仕切りに高い断熱性能が求められるが、経済的な断熱材として実際に使用されているのは発泡ポリスチレンがほとんどである。ところが、例えば、設定温度として２０℃以上の差が生じる野菜冷蔵室と冷凍室の断熱を発泡ポリスチレンだけで担うにはかなりの厚み（例えば３０ｍｍ程度）が必要になり、断熱材の厚さを増すと、庫内の有効容積を減少させることになる。このため、図４および図５に示したように設定温度が高い側の仕切り板にヒーターを貼り付けて、庫内の設定温度を調節する構造がとられている。この温度調整用ヒーターとして、金属抵抗体を温度上昇が必要な部位に引き回し形成して、単一の導電路を構成した線ヒーターが使用されている例があるが、均一な面発熱が得にくく、また部品点数も多い。これに対し、本発明による冷蔵庫の庫内仕切り板では、発熱体全面での均一な発熱を得ることはもとより、部品点数が少なく組立ても簡単となるので、安価な冷蔵庫の庫内仕切り板を得ることができる。
【００３０】
なお、本実施の形態３では、断熱材として発泡ポリスチレン（スチロール）を使用した場合を示したが、断熱材として発泡ポリウレタンを使用することもできる。発泡ポリウレタンを使用する場合、上ケース１１ａの裏面へ面上発熱体を設置する方法は発泡スチロールを使用する場合と同じである。上ケース１１ａ裏面に発熱体を設置した後、上ケースと下ケースを嵌め合わせて、両ケース間に発泡させる空間を形成した後に、発泡ポリウレタンを注入する。発泡ポリウレタンを注入する場合には、発泡過程でのポリウレタンの漏れが生じないよう、上ケース１１ａと下ケース１１ｂの周縁部１４で形成される嵌合部は接着あるいは溶着などにより密着させるか、あるいは周縁部１４にテープなどを貼って対処する。なお、ポリウレタンで断熱層を形成する場合には、ポリウレタンを注入する穴１５を下ケース１１ｂの所定の位置に形成しておくことが必要である。
【００３１】
このように断熱材として発泡ポリウレタンを用いた場合にも、上記構成で示した庫内仕切り板と同様、部品点数が少なく組立てが容易で安価な庫内仕切り板を得ることができ、さらに、単位厚さ当たりの断熱性が発泡スチロールより優れているため、同等の断熱性を確保する場合にはより薄い構成とすることができるため、冷蔵庫の実容量の増大に寄与することができる。
【００３２】
図７は、本発明に係る面状発熱体の他の形状を示す平面図である。
図４及び図５では、仕切り板全面での均一な発熱が得られるように、仕切り板内の全面にシート状の発熱体を設置した場合の例を示したが、線状ヒーターで得られるような局所的な発熱でも庫内の温度制御に支障がない場合には、図７に示したような屈曲した形状の発熱体１をプレス成形あるいは射出成形で形成し、発熱体１の両端の表面に電極２を設け、発熱体１及び電極２の表面に保護シート３を貼り付けた面上発熱体としてもよい。この場合には、線状ヒーターと同等の発熱分布が得られる一方で、さらに安価に構成することができる。また、発熱面積が減少するため、投入電力を抑制することができ、冷凍冷蔵庫の省電力化が可能である。
【産業上の利用可能性】
【００３３】
本発明は、冷凍冷蔵庫の庫内仕切り板等の温度管理に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【００３４】
【図１】本発明に係る面状発熱体の実施の形態１の構成を示す平面図（ａ）及びＡ−Ａ断面図である。
【図２】実施の形態１における他の例を示す断面図である。
【図３】本発明に係る面状発熱体の実施の形態２の構成を示す斜視図である。
【図４】本発明に係る面状発熱体を冷凍冷蔵庫用の庫内仕切り板に用いた実施の形態３を示す断面図である。
【図５】本発明に係る面状発熱体を冷凍冷蔵庫用の庫内仕切り板に用いた実施の形態３を示す断面図である。
【図６】冷凍冷蔵庫の仕切り板のケースの構成の他の例を示す斜視図である。
【図７】本発明に係る面状発熱体の他の形状を示す平面図である。
【符号の説明】
【００３５】
１ 発熱体、２ 電極、３ 保護シート、４ 粘着層、５ 電源コード、
１１，１１ａ，１１ｂ ケース、１２ 断熱材、１３ 粘着層、１４ 周縁部、
１５ 穴。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
導電性材料を混合して、導電性を発現させた熱可塑性樹脂を成形してなる平板状の発熱体と、
上記発熱体の両端の面上に設けられた平板状の電極と、
上記電極に接続された通電用の電源コードと、
粘着層を有し、上記粘着層を介して上記電極及び発熱体の全面を覆うように積層した電気絶縁性の保護シートと、
を備えた面状発熱体。
【請求項２】
上記平板状の発熱体が、屈曲部を有する請求項１記載の面状発熱体。
【請求項３】
上記保護シートが、上記平板状の発熱体からはみ出したはみ出し部を有する請求項１記載の面状発熱体。
【請求項４】
導電性材料を混合して、導電性を発現させた熱可塑性樹脂を押し出し成形または射出成形により成形して平板状の発熱体を得る工程と、
上記発熱体の両端の面上に通電用の電源コードが接続された平板状の電極を設置する工程と、
粘着層を有する電気絶縁性の保護シートを、上記粘着層を介して上記電極及び発熱体の全面を覆うように積層する工程と、
を備えた面状発熱体の製造方法。
【請求項５】
上記請求項１ないし３のいずれかに記載の面状発熱体を、熱可塑性樹脂により形成されたケース内表面に設置し、上記ケース内空間に断熱板を設けた冷凍冷蔵庫の庫内仕切り板。
【請求項６】
上記断熱板に、発砲ポリウレタンを用いた請求項５記載の冷凍冷蔵庫の庫内仕切り板。
【請求項１】
導電性材料を混合して、導電性を発現させた熱可塑性樹脂を成形してなる平板状の発熱体と、
上記発熱体の両端の面上に設けられた平板状の電極と、
上記電極に接続された通電用の電源コードと、
粘着層を有し、上記粘着層を介して上記電極及び発熱体の全面を覆うように積層した電気絶縁性の保護シートと、
を備えた面状発熱体。
【請求項２】
上記平板状の発熱体が、屈曲部を有する請求項１記載の面状発熱体。
【請求項３】
上記保護シートが、上記平板状の発熱体からはみ出したはみ出し部を有する請求項１記載の面状発熱体。
【請求項４】
導電性材料を混合して、導電性を発現させた熱可塑性樹脂を押し出し成形または射出成形により成形して平板状の発熱体を得る工程と、
上記発熱体の両端の面上に通電用の電源コードが接続された平板状の電極を設置する工程と、
粘着層を有する電気絶縁性の保護シートを、上記粘着層を介して上記電極及び発熱体の全面を覆うように積層する工程と、
を備えた面状発熱体の製造方法。
【請求項５】
上記請求項１ないし３のいずれかに記載の面状発熱体を、熱可塑性樹脂により形成されたケース内表面に設置し、上記ケース内空間に断熱板を設けた冷凍冷蔵庫の庫内仕切り板。
【請求項６】
上記断熱板に、発砲ポリウレタンを用いた請求項５記載の冷凍冷蔵庫の庫内仕切り板。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【公開番号】特開２００８−１９８５３８（Ｐ２００８−１９８５３８Ａ）
【公開日】平成２０年８月２８日（２００８．８．２８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−３４１８８（Ｐ２００７−３４１８８）
【出願日】平成１９年２月１５日（２００７．２．１５）
【出願人】（０００００６０１３）三菱電機株式会社 (33,312)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年８月２８日（２００８．８．２８）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年２月１５日（２００７．２．１５）
【出願人】（０００００６０１３）三菱電機株式会社 (33,312)
【Ｆターム（参考）】
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