説明

面状発熱体及び面状発熱体の製造方法

【課題】発熱金属細線と接続するリード線をシート状基材に固定するものにおいて、金属製固定具を用いたり、ホットメルトを吐出して成形冶具で固める等の手段を用いず簡単確実に固定できしかもリード線を傷つけることがない面状発熱体の製造方法を提供する。
【解決手段】面状発熱体1は、不織布より成るシート状基材2と、前記シート状基材2に適宜パターンにて縫製等により装着された発熱金属細線4と、前記発熱金属細線4と接続されたリード線5等から成りリード線5とシート状基材2との固定部8において予めホットメルト10を塗布した樹脂小片シート9を超音波加熱することによりシート状基材2に接着させることによりリード線5を固定するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば自動車の座席に組み込まれて保温座席を構成する面状発熱体ならびにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車における暖房の一手段として座席に面状の発熱体を組み込んだものが既に採用されている。
【0003】
このような面状の発熱体は柔軟な面状の樹脂布に発熱金属細線を縫製したものまたは絶縁被覆を施した金属細線を溶着して成るものが一般的である。
【0004】
前記面状発熱体においては発熱金属細線と引き出し電線(リード線)との接続部の絶縁固定が確実に行わなければならない、と同時に引き出し電線(リード線)も樹脂布に確実に固定されていなければならない。
【0005】
そしてその上で固定の作業性が良く、電気的な故障も生ずることなく、かつ低コストであることが要求されている。
【0006】
従来、リード線は金属性の部材で固定する方法によるもの、または熱溶融性接着剤(以下ホットメルトと称する)を施して基材(樹脂布)に接着固定する方法が一般的に行われていた。
【0007】
前者の固定方法としては図8、図9に示すものが知られている。
【0008】
図8は従来のリード線固定部の縦断面図で、図9は同じく前記固定部の一部分解拡大斜視図である。図8において51は不織布より成るシート状基材で、その上面に発熱金属細線と接続されているリード線54が金属製の固定具55により固定されている。
【0009】
前記固定具55は図9に示す如く両端に一対の折り曲げ脚56a,56bを有するステープル状の押し当て部56と、両端に前記折り曲げ脚56a,56bを差し込む差込口57a,57bを有する洞状の受け部57から成っている。
【0010】
58は前記リード線54に設けられた保護チューブである。
【0011】
この固定方法は次のようにして行われる。
【0012】
先ず、保護チューブ58を設けたリード線54をシート状基材51の上面に配置しその上に押し当て部56をまた、シート状基材51の下面には受け部57を配置した後、両者を強く押圧する。
【0013】
折り曲げ脚56a,56bが受け部57内で折り曲げられシート状基材51に機械的に固着される。このような方法によれば非常に強く固着することができ、取付強度は極めて高いものが得られる。
【0014】
また、別の方法としては固定部にホットメルトを吐出させ冶具にて押し固め、固化させる方法が行われており、確実な固着状態が得られるものであった。
【0015】
また、下記文献には固定部については詳細に示されてはいないが、基材にコードヒータを所定パターンで熱融着させるようにしたシートヒータの製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開2003−174952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前記した固定方法の内、前者の金属製の固定具55による場合は比較的コスト高である上に、高い固着強度が得られる反面、保護チューブ58内でリード線54が上下に交叉し重なった場合押圧によりリード線54の被覆がつぶれ、芯線同士が接触して電気的短絡を起こす問題が残っていた。
【0017】
また、後者の溶融ホットメルトで固める方法の場合には、ホットメルトと成形冶具との離型を容易にするためシリコン系離型剤を成形冶具に噴霧する必要があり、このシリコンが後に電気制御開閉器の作動に悪影響を及ぼすことが懸念されるものであった。
【0018】
本願の出願人はこのような課題を解決することを目的としてシリコン系離形剤の噴霧を行うことなく、ホットメルトを用いて確実に絶縁・固定を行うことができる面状発熱体とその製造方法を提供するものとして特願2007−53419号を出願した。
【0019】
この場合は冷却した成形冶具により、急速に溶融ホットメルトを冷却固化させるものであり、別途冷却装置を設備する必要があった。
【0020】
本発明は以上の問題点に鑑み成されたもので、その目的はリード線を電気的短絡の恐れが全くなく、低コストでしかも簡単確実に固着できるようにした面状発熱体、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明の面状発熱体は、不織布より成るシート状基材と、前記シート状基材に所定パターンにて適宜装着された発熱金属細線と、一端部が前記シート状基材に固着された接続部にて前記発熱金属細線に接続されている塩化ビニル樹脂被覆されたリード線とを具えた面状発熱体であって、裏面にホットメルトが塗布された樹脂小片シートが超音波加熱により前記シート状基材に接着されており、この樹脂小片シートにより前記リード線が前記シート状基材に固着さていることを特徴とする。
【0022】
また、請求項2に係る発明の面状発熱体の製造方法は、不織布より成るシート状基材と、前記シート状基材に所定パターンにて適宜装着された発熱金属細線と、一端部が前記シート状基材に固着された接続部にて前記発熱金属細線に接続されている塩化ビニル樹脂被覆されたリード線とを具えた面状発熱体の製造方法において、前記シート状基材に配置されたリード線の上に予め裏面にホットメルトが塗布された樹脂シートを適宜サイズに切断した小片シートを被せるとともに超音波加熱を加え、前記シート状基材に接着することにより前記リード線を前記シート状基材に固着するようにしたものである。
【0023】
また、請求項3に係る発明の面状発熱体は伸縮性を有する樹脂布とポリウレタンフォームをラミネートしたシート状基材と、前記シート状基材のポリウレタンフォーム面に所定パターンにて適宜装着された発熱金属細線と、一端部が前記シート状基材に固着された接続部にて前記発熱金属細線に接続されているリード線とを具えた面状発熱体であって、前記リード線がポリウレタンフォーム面側から裏面の樹脂布面側に導出されるとともに、裏面にホットメルトが塗布された樹脂小片シートが超音波加熱により前記シート状基材の樹脂布面に接着されており、この樹脂小片シートにより前記リード線が前記シート状基材の樹脂布面に固着さていることを特徴とする。
【0024】
そして請求項4に係る発明の面状発熱体の製造方法は、伸縮性を有する樹脂布とポリウレタンフォームをラミネートしたシート状基材と、前記シート状基材のポリウレタンフォーム面に所定パターンにて適宜装着された発熱金属細線と、一端部が前記シート状基材に固着された接続部にて前記発熱金属細線に接続されているリード線とを具えた面状発熱体の製造方法において、前記リード線を前記シート状基材を貫通させてポリウレタンフォーム面側から樹脂布面側に導出するとともに、前記樹脂布面側に導出されたリード線の上に予め裏面にホットメルトが塗布された樹脂シートを適宜サイズに切断した小片シートを被せるとともに超音波加熱を加え、前記シート状基材の樹脂布面に接着することにより前記リード線を前記シート状基材に固着するようにしたものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば次のような効果がある。
【0026】
請求項1に係る面状発熱体によれば、リード線は予めホットメルトを塗布した樹脂小片シートを超音波加熱によって接着させ固定されるもので充分な引っ張り強度が得られるとともに、従来のようなリード線の傷つきによる電気的短絡が生じる恐れが全くない。
【0027】
また、ホットメルトを固定部に吐出し成形冶具で固めるものに比し安価となる利点がある。
【0028】
請求項2に係る面状発熱体の製造方法によれば、前記した如くリード線の傷つきによる電気的短絡が生じる恐れがないとともに、成形冶具等が不要であり、樹脂小片シートは予めホットメルトを塗布したものを適宜長さに切取って使用することができるので製造が簡単となり作業性が向上する。
【0029】
請求項3に係る面状発熱体によれば、伸縮性を有する樹脂布とポリウレタンフォームより成るシート状基材用いた場合でも請求項1の発明と同様の効果が得られる。
【0030】
また、請求項4に係る面状発熱体の製造方法によれば、リード線を一旦裏側へ導出し樹脂布面に樹脂小片シートを接着するものであるから問題なくリード線を固定することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下添付図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態の説明をする。尚、本発明は本実施の形態により限定されるものではない。
【0032】
図1は本発明の一実施例に係る面状発熱体の平面図を示し、図2は図1のII−II′線における断面図、図3は前記面状発熱体の製造に用いる樹脂小片シートの斜視図で、図4は図3のIV−IV′における断面図である。
【0033】
図1において1は自動車の座席等に組み込まれる面状発熱体で不織布より成るシート状基材2と前記基材2に上糸、下糸(図示せず)により所定パターンにミシン縫製された発熱金属細線4及びコネクタ7と前記発熱金属細線4を接続するリード線5等から成っている。
【0034】
リード線5は一般的なものであり芯線5aの外側にPVC被覆5bを備えたものである。
【0035】
尚、6は前記発熱金属細線4の端部4′とリード線5とを接続する接続部である。
【0036】
8はリード線5の固定部でシート状基材2の所定位置にポリプロピレン等の樹脂小片シート9を超音波加熱溶着することによりリード線5を固着しているものである。
【0037】
前記樹脂小片シート9の裏面にはホットメルト10が塗布されている。
【0038】
図3に示すように前記樹脂小片シート9は予めホットメルト10が塗布されたものを鋏み等により適宜な長さに切り取って使用する。
【0039】
また、ミシン目を入れておき千切り取るようにしてもよい。
【0040】
而して前記超音波加熱は次のようにして行う。
【0041】
先ずシート状基材2の所定位置に配置されたリード線5の上に小片シート9を重ねその状態で超音波加熱を行う。
【0042】
超音波加熱によって予め塗布されたホットメルト10が溶融し、小片シート9がシート状基材2に溶着されるためリード線5が確実に固定される。
【0043】
次に前記シート状基材2と異なるシート状基材を用いた実施例について説明する。
【0044】
図5は異なるシート状基材を用いた面状発熱体の平面図で、図6は図5のVI−VI′線における断面図、図7は図6のVII−VII′線における断面図である。
【0045】
図5において20は自動車の座席等に組み込まれる面状発熱体でシート状基材21と前記基材21に上糸、下糸(図示せず)により所定パターンにミシン縫製された発熱金属細線24及びコネクタ27と前記発熱金属細線24を接続するリード線25等から成っている。
【0046】
前記シート状基材21は例えば網目状にされた伸縮性を有する樹脂布22とこの樹脂布22と一体的にラミネートしたポリウレタンフォームシート23から成っている。
【0047】
このようなシート状基材21はシートヒータとしての快適性への要求により一般的に採用されている。
【0048】
前記発熱金属細線24はポリウレタンフォームシート23面に配設され、裏面の樹脂布22ごとミシン縫製されている。
【0049】
28はリード線25の固定部で、シート状基材21の裏面即ち樹脂布22面に設けられている点が図1の例とは異なるものである。
【0050】
詳細に説明するとリード線25はポリウレタンフォームシート23面から樹脂布22面へ導出され樹脂小片シート9の超音波加熱により樹脂布22面へ溶着されている。
【0051】
ここで樹脂小片シート9は図1の実施例の場合と同様のものが使用される。
【0052】
尚26はリード線25を導出するためのシート状基材21に設けた貫通部である。
【0053】
樹脂布22面に固定されたリード線25はその端部がコネクタ27に接続される。
【0054】
この実施例に拠ればポリウレタンフォームシートを用いたシート状基材であっても超音波加熱によってリード線を確実に固定することができる。
【0055】
以上の実施の形態で述べた固定方法は樹脂小片シートを切り取って超音波加熱するだけの簡単な方法で短絡不良の心配なく確実にリード線を固定することができ、また、ポリウレタンフォームシートを用いたシート状基材であっても問題なく固定することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態における面状発熱体の平面図
【図2】図1のII−II′線における断面図
【図3】本発明の面状発熱体の製造に使用する樹脂シート小片の斜視図
【図4】図3のIV−IV′線における断面図
【図5】本発明の他の実施の形態における面状発熱体の平面図
【図6】図5のVI−VI′線における断面図
【図7】図6のVII−VII′線における断面図
【図8】従来例による面状発熱体の図2相当部分の拡大断面図
【図9】従来例によるリード線の固定に用いられる金属取付け具の分解斜視図
【符号の説明】
【0057】
1 面状発熱体
2 不織布よりなるシート状基材
4 発熱金属細線
5 リード線
6 接続部
9 樹脂小片シート
10 ホットメルト
20 面状発熱体
21 樹脂布とポリウレタンフォームをラミネートしたシート状基材
22 樹脂布
23 ポリウレタンフォームシート
24 発熱金属細線
25 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布より成るシート状基材と、前記シート状基材に所定パターンにて適宜装着された発熱金属細線と、一端部が前記シート状基材に固着された接続部にて前記発熱金属細線に接続されている塩化ビニル樹脂被覆されたリード線とを具えた面状発熱体であって、裏面にホットメルトが塗布された樹脂小片シートが超音波加熱により前記シート状基材に接着されており、この樹脂小片シートにより前記リード線が前記シート状基材に固着さていることを特徴とする面状発熱体。
【請求項2】
不織布より成るシート状基材と、前記シート状基材に所定パターンにて適宜装着された発熱金属細線と、一端部が前記シート状基材に固着された接続部にて前記発熱金属細線に接続されているリード線とを具えた面状発熱体の製造方法において、前記シート状基材に配置されたリード線の上に予め裏面にホットメルトが塗布された樹脂シートを適宜サイズに切断した小片シートを被せるとともに超音波加熱を加え、前記シート状基材に接着することにより前記リード線を前記シート状基材に固着するようにした面状発熱体の製造方法。
【請求項3】
伸縮性を有する樹脂布とポリウレタンフォームをラミネートして成るシート状基材と、前記シート状基材のポリウレタンフォーム面に所定パターンにて適宜装着された発熱金属細線と、一端部が前記シート状基材に固着された接続部にて前記発熱金属細線に接続されているリード線とを具えた面状発熱体であって、前記リード線がポリウレタンフォーム面側から裏面の樹脂布面側に導出されるとともに、裏面にホットメルトが塗布された樹脂小片シートが超音波加熱により前記シート状基材の樹脂布面に接着されており、この樹脂小片シートにより前記リード線が前記シート状基材の樹脂布面に固着さていることを特徴とする面状発熱体。
【請求項4】
伸縮性を有する樹脂布とポリウレタンフォームをラミネートして成るシート状基材と、前記シート状基材のポリウレタンフォーム面に所定パターンにて適宜装着された発熱金属細線と、一端部が前記シート状基材に固着された接続部にて前記発熱金属細線に接続されているリード線とを具えた面状発熱体の製造方法において、前記リード線を前記シート状基材の貫通部を経てポリウレタンフォーム面側から樹脂布面側に導出するとともに、前記樹脂布面側に導出されたリード線の上に予め裏面にホットメルトが塗布された樹脂シートを適宜サイズに切断した小片シートを被せるとともに超音波加熱を加え、前記シート状基材の樹脂布面に接着することにより前記リード線を前記シート状基材に固着するようにした面状発熱体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−283427(P2009−283427A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157189(P2008−157189)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(595042623)たちばな電機株式会社 (10)
【Fターム(参考)】